JP2019131657A - ゴム部材およびそれを用いたダンパー - Google Patents

ゴム部材およびそれを用いたダンパー Download PDF

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Abstract

【課題】低温から通常使用温度高温までの広範囲での優れた共振周波数特性、減衰特性及び耐久性の3つを兼ね備えたゴム部材およびそれを有するダンパーを提供する。【解決手段】ゴム成分としてエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)を主成分とするゴム組成物を過酸化物加硫したゴム部材であって、56重量%以下のエチレンの重量比率と、28を超えるムーニー粘度(ML1+4、125℃)とを有するEPDM100重量部に対し、ヨウ素吸着量が70mg/g以上185mg/g以下であり、DBP吸油量が40ml/100g以上120ml/100g以下であるカーボンブラック100乃至180重量部を含むゴム組成物の過酸化物加硫成形物である、ゴム部材とする。【選択図】図1

Description

本発明は、車両のエンジンのクランクシャフトやカムシャフトなどの回転軸に装着され、回転軸の捩じり振動を吸収するダンパーに関する。
車両のエンジンのクランクシャフトやカムシャフトなどの回転軸の回転を被駆動機器に伝達するトーショナルダンパーは、回転軸に取り付けられるハブと、ハブの径方向外方に配置される慣性リングとを有し、ハブの外周面と慣性リングの内周面との間隙部にはゴム部材が介在している。このゴム部材は、車両の走行中に発生する回転軸の捩り振動を低減させて回転軸の破損を防止し、エンジン振動の騒音や振動を低減する役割をする。
特許文献1には、エチレン・プロピレン系共重合ゴムのプロピレン/(エチレン+プロピレン)比率を35〜50重量%とし、よう素吸着量70g/kg以上のカーボン種を添加することにより、ダンパーの共振周波数が60℃における値を1とした場合に−30℃において1.65以下となり、これにより、低温域における制振性能の低下が許容できる、制振性に優れたダンパーが得られることが開示されている。
特許文献2には、エチレン・プロピレン系共重合ゴムにおいて、プロピレン/(エチレン+プロピレレン)比率を51重量%以下とし、可塑剤として脂肪族二塩基酸エステルをゴム100重量部に対して5〜30重量部添加することにより、ダンパーゴム温度−30℃と+60℃の固有振動数比を1.5以下、使用するゴムの貯蔵弾性率比を3以下とできることが開示されている。
特許文献3には、エチレン・プロピレン合計量中のプロピレン含量が35〜50重量%であり、かつムーニー粘度(ML100)が40以上のEPDM100重量部に対して、数平均分子量Mnが300〜1400のα−オレフィンオリゴマーを5〜50重量部、有機過酸化物架橋剤を1〜10重量部含む組成物の架橋物を用いることにより、低温から常用使用温度領域までの減衰特性のバランスのとれたダンパーが得られることが開示されている。
特開2005−172029号公報 特開2005−172165号公報 国際公開第2005/057045号
ところで、車両に使用するトーショナルダンパーは、低温側から高温側までの広い範囲にわたり、良好な減衰特性と共振周波数特性が要求されるが、一般的にトーショナルダンパーに使用するダンパーゴム部材は、低温側の共振周波数特性を改善すると、高温側の減衰特性が劣化するため、広い温度範囲にわたり、良好な減衰特性と共振周波数特性が得られないという欠点を有する。
特許文献1及び特許文献2においては、低温から常用温度までの共振周波数特性をフラットにして振動特性を良好にしているものの、高温側(例えば、約120℃)における減衰特性についての課題の認識がない。さらに実使用においては耐久性、特に高温耐久性も非常に重要なファクターであるところ、低温側を重視するあまり、高温側の耐久性が悪化してしまうという欠点を有する。
特許文献3は、低温から常用使用温度として−30℃〜+100℃として、共振周波数特性を改善しているが、近年の車両の小型化あるいは高出力化に伴い、エンジン周辺の温度は100℃以上の高温になり、当然ダンパー自体も100℃以上までの共振周波数特性と減衰特性、及び耐久性が要求される。ところが、本文献3においては、更なる改善がない限り、100℃以上の高温側までの共振周波数特性、減衰特性および耐久性が悪化するという欠点を免れない。
そこで、本発明は、低温(例えば、−30℃)から高温(例えば、+120℃)までの広範囲での優れた共振周波数特性、減衰特性及び耐久性の3つを兼ね備えたゴム部材およびそれを用いたダンパーを提供することを目的とする。
本発明は以下を包含する。
[1] ゴム成分として エチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)を主成分とするゴム組成物を過酸化物加硫したゴム部材であって、
下記式(1)を満たすエチレンの重量比率と、下記式(2)を満たすムーニー粘度(ML1+4、125℃)とを有するエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)100重量部に対し、ヨウ素吸着量が70mg/g以上185mg/g以下であり、DBP吸油量が40ml/100g以上120ml/100g以下であるカーボンブラック100乃至180重量部を含むゴム組成物の過酸化物加硫成形物である、ゴム部材。

(式中、
Eiはi番目のEPDMにおけるエチレンとプロピレンの合計に対するエチレンの重量比率(重量%)であり、
miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)

(式中、
Viはi番目のEPDMのムーニー粘度(ML1+4、125℃)であり、
miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)
[2] 前記ゴム組成物がEPDM100重量部に対してプロセスオイル60重量部乃至100重量部を更に含み、前記EPDMのポリマー分率が前記ゴム組成物の20重量%以上40重量%以下である、[1]に記載のゴム部材。
[3] 前記ゴム部材の低温側使用温度における貯蔵弾性率(E’pl)の使用標準温度における貯蔵弾性率(E’pi)に対する比(E’pl/E’pi)が3.9以上6.5未満であり、前記ゴム部材の使用標準温度における損失係数(tanδi)が0.34以上であり、前記ゴム部材の高温側使用温度における損失係数(tanδh)の使用標準温度における損失係数(tanδi)に対する比(tanδh/tanδi)が0.86以上である、[1]又は[2]に記載のゴム部材。
[4] 前記ゴム部材のJIS K6261準拠のゲーマン捩じり試験によるT100が−49℃より小さく、前記ゴム部材の使用標準温度における損失係数(tanδi)が0.34以上であり、前記ゴム部材の高温側使用温度における損失係数(tanδh)の使用標準温度における損失係数(tanδi)に対する比(tanδh/tanδi)が0.86以上である、[1]又は[2]に記載のゴム部材
[5] 前記ダンパーゴム部材は、JIS K6251準拠の伸びが340%以上である、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のゴム部材。
[6] 前記ゴム部材のJIS K6251準拠の100%モジュラスが1.2以上2.3以下である、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のゴム部材。
[7] 前記ゴム部材のJIS K6251準拠の50%伸長時のモジュラスと300%伸長時のモジュラスの比が5.4以上8.2未満である、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のゴム部材。
[8] 回転軸に取り付けられ、前記回転軸と一体的に回転するダンパーハブと、前記ダンパーハブにダンパーゴム部材を介して装着された慣性リングとを有するトーショナルダンパーであって
ダンパーゴム部材の低温側表面使用温度における固有振動数の標準表面使用温度における固有振動数に対する比が1.57以上2.15未満である、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のゴム部材を有するトーショナルダンパー。
[9] 前記ダンパーゴム部材の標準表面使用温度における損失係数(tanδpi)が0.28以上であり、
前記ダンパーゴム部材の高温側表面使用温度120℃における損失係数(tanδph)の標準表面使用温度における損失係数(tanδpi)に対する比(tanδph/tanδpi)が0.63以上0.68以下である、[1]乃至[8]のいずれか一項に記載のゴム部材を有するトーショナルダンパー。
[10] 前記ダンパーゴム部材が前記ダンパーハブと前記慣性リングとの間に10%以上の圧縮率で圧入されている、[7]乃至[9]のいずれか一項に記載のトーショナルダンパー。
本発明によれば、EPDM中のエチレンの重量比率とEPDMのムーニー粘度とを制御することにより、ダンパーの低温側の共振周波数特性(−30℃/60℃Fn比)が向上し、低温(−30℃)から使用標準温度(60℃)を経て高温(120℃)に至るまでの広範囲において優れた減衰性能(捩じり振動低減特性)と耐久性とを両立させたゴム部材及びダンパーを提供することができる。
本発明の一実施の形態であるトーショナルダンパーを示す斜視図である。 図1に示すトーショナルダンパーの一部破断斜視図である。 図1に示すトーショナルダンパーの組み立て方法を示す一部破断斜視図である。
[トーショナルダンパー]
初めに、本発明に係る1つの実施例として、トーショナルダンパーについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるトーショナルダンパーを示す斜視図であり、図2は、図1に示すトーショナルダンパーの一部破断斜視図である。
トーショナルダンパー10は、自動車のエンジンのクランクシャフトの先端に装着され、当該クランクシャフトの回転をオルタネータやパワーステアリングなどの被駆動機器に伝達するために使用されるものであり、ダンパーハブ11と、慣性リング12と、環状のダンパーゴム部材13とを備える。
ダンパーハブ11は、径方向に伸びるディスク部11aと、その径方向中央部に一体に設けられたボス部11bとを有し、ボス部11bがクランクシャフトの先端に締結されて中心軸Cを中心に回転駆動される。ダンパーハブ11は、典型的にはFC250、FCD450などの鋳鉄からなる。
慣性リング12は、ダンパーハブ11の径方向外方に配置されており、その外周面にベルトが掛かるプーリ溝12aが設けられて動力伝達用のプーリを構成している。慣性リング12は、典型的にはFC250などの鋳鉄からなる。
ダンパーハブ11と慣性リング12との間に介在する環状のダンパーゴム部材13は、ダンパーハブ11の中心軸Cに同軸の外周面と、この外周面に対向する慣性リング12の内周面との間隙部に挿入され、自動車の走行中に発生するクランクシャフトの捩り振動を低減させて破損を防止し、エンジン振動の騒音や振動を低減する。
トーショナルダンパー10は、後述するダンパーゴム組成物を加硫成形して環状のダンパーゴム部材13を作製した後、図3に示すように、ダンパーハブ11のボス部11bが鉛直方向となるようにダンパーハブ11と慣性リング12とを支持台(図示せず)上に配置した状態で、プレスなどの圧入治具を用いてダンパーハブ11の外周面と慣性リング12の内周面との間隙部14にダンパーゴム部材13を圧入することによって製造される。このようにして製造されたダンパーを圧入タイプトーショナルダンパーという。
ダンパーハブ11と慣性リング12との間隙部14にダンパーゴム部材13を圧入する際の圧力は、ダンパーゴム部材13の圧縮率が10%以上50%以下になるようにすることが好ましい。ダンパーゴム部材13の圧縮率が10%未満の場合は、トーショナルダンパー10のスリップトルクが所望の値とならず、ベルトに動力が伝わり難くなることがある。また、50%より大きな圧縮率では、ダンパーゴム部材13に応力集中が発生し、耐久性が劣化してしまうことがある。
ダンパーゴム部材13の圧縮率は、10%以上30%未満がより好ましい。圧縮率がこの範囲内であれば、特に、耐久試験において、慣性リング12あるいはダンパーハブ11との摩擦によるゴム摩耗粉の発生を抑えることができ、良好な耐久性が得られやすくなる。更に、ダンパーゴム部材の圧入性が良好であり、安定した寸法精度を実現しやすくなる。
トーショナルダンパー10の製造方法としては、上記した圧入法の他、ダンパーゴム部材13を構成するダンパーゴム組成物をダンパーハブ11と慣性リング12との間隙部14に注入して加熱する加硫接着法がある。加硫接着法により製造されたダンパーを加硫接着タイプトーショナルダンパーという。
加硫接着法によれば、圧入法に比べてダンパーゴム部材の本来の特性を発揮しやすいが、接着不良を引き起こしやすく、ダンパーハブ11や慣性リング12との接着力を高めるための調整が必要となる。圧入法ではダンパーゴム部材13が圧縮されるので、ダンパーゴム組成物本来の特性が多少犠牲になるが、圧入という簡易な工程で接着不良を低減できる利点がある。
本発明の実施においては、圧入法、加硫接着法のいずれも利用可能である。
[ダンパーゴム部材]
本発明に係るダンパーゴム部材は、ゴム成分としてエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)を主成分とするゴム組成物を過酸化物加硫したゴム部材であって、下記式(1)を満たすエチレンの重量比率と、下記式(2)を満たすムーニー粘度(ML1+4、125℃)とを有するエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)100重量部に対し、ヨウ素吸着量が70mg/g以上185mg/g以下であり、DBP吸油量が40ml/100g以上120ml/100g以下であるカーボンブラック100乃至180重量部を含むゴム組成物の過酸化物加硫成形物である。ダンパーゴム組成物の過酸化物加硫成形方法に特に制限はなく、常法により、所望の形状(例えば、円筒形)で行うことができる。

(式中、
Eiはi番目のEPDMにおけるエチレンとプロピレンの合計に対するエチレンの重量比率(重量%)であり、
miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)

(式中、
Viはi番目のEPDMのムーニー粘度(ML1+4、125℃)であり、
miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)
当該ダンパーゴム部材は更に以下の特性を有することが好ましい。
(1) JIS K6253に準拠し、デュロメータAを使用して、1秒以内に読み取る方式で測定した「硬さ」:60以上80以下
(2) JIS K6251に準拠して測定した「引張強さ」:10MPa以上20MPa以下
(3) JIS K6251に準拠して測定した「伸び(%)」:340%以上500%以下
(4) JIS K6251に準拠して測定した「50%伸長時のモジュラス」:0.9以上1.3以下
(5) JIS K6251に準拠して測定した「100%伸長時のモジュラス」:1.4以上3.0以下
(6) JIS K6251に準拠して測定した「300%伸長時のモジュラス」:5.5以上9.8以下
(7) 「300%伸長時のモジュラス」/「50%伸長時のモジュラス」:5.4以上8.2未満
(8) JIS K6394に準拠して測定した標準使用温度における「損失係数(tanδi)」:0.34以上0.45以下
(9) JIS K6394に準拠して測定した高温側使用温度における「損失係数(tanδh)」:0.3以上0.4以下
(10) 「損失係数比(tanδh/tanδi)」:0.86以上0.9以下
(11) JIS K6394に準拠して測定した低温側使用温度℃における貯蔵弾性率(E’pl)の標準使用温度における貯蔵弾性率(E’pi)に対する比「(E’pl/E’pi)」:3.9以上6.5未満
(12) JIS K6261に準拠して測定した「ゲーマン捩じり試験によるT100
:−49℃未満
ここで、「標準使用温度」とは実使用時の標準的な温度を意味し、代表的な例としては、60℃におけるダンパーゴム部材13の測定温度、ダンパーゴム部材13をトーショナルダンパー10に装着した場合には、60℃±5℃におけるダンパーゴム部材13の表面測定温度が挙げられる。
「高温側使用温度」とは実使用時に想定される温度を意味し、代表的な例としては、120℃におけるダンパーゴム部材13の測定温度、ダンパーゴム部材13をトーショナルダンパー10に装着した場合には、120℃±5℃におけるダンパーゴム部材13の表面測定温度が挙げられる。
「低温側使用温度」とは寒冷地における実使用時の標準的な温度を意味し、代表的な例としては、−30℃におけるダンパーゴム部材13の測定温度、ダンパーゴム部材13をトーショナルダンパー10に装着した場合には、−30℃±5℃におけるダンパーゴム部材13の表面測定温度が挙げられる。
「損失係数(tanδ、損失正接ともいう)」は、ダンパーゴム部材13の動的粘弾性(=損失弾性率/貯蔵弾性率)から測定される数値である。この数値が大きいほど、ダンパーゴム部材の振動低減性能が高いことを意味する。
「損失係数比」は損失係数(tanδ)の温度依存性を表す指標である。高温側使用温度における損失係数(tanδh)に対する使用標準温度における損失係数(tanδi)の比(tanδh/tanδi)が大きい(1に近い)ことは、標準使用温度から高温側使用温度までの温度範囲における損失係数(tanδ)の温度依存性が小さい、言い換えると、温度変化に伴う損失係数(tanδ)の低下が少ないことを意味する。
「貯蔵弾性率比」は、低温領域から通常使用温度までの貯蔵弾性率の変化の度合いを表すものである。貯蔵弾性率比が小さい(例えば、6.9以下)ほど低温での共振周波数特性が良好にできることを意味する。
[ダンパーゴム組成物]
次に、本発明に係るダンパーゴム部材の製造に使用するダンパーゴム組成物について説明する。ダンパーゴム部材の製造に使用するダンパーゴム組成物は、弾性体としてエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)、充填材としてカーボンブラック、加硫剤として架橋剤(過酸化物)及び任意選択的に共架橋剤を含み、更に各種添加剤(プロセスオイル(鉱物油)、可塑剤、亜鉛華、ステアリン酸亜鉛、老化防止剤など)を含有するのが一般である。本発明において所望の効果を挙げるためには、特定の成分を選択して配合する必要があるので、これらについて以下に説明する。
<EPDM>
本発明に係るダンパーゴム組成物においては、上記式(1)を満たすエチレンの重量比率と、上記式(2)を満たすムーニー粘度(ML1+4、125℃)とを有するエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)を用いる。
式(1)、式(2)に表現したように、EPDMは1種のみを単独で使用することもでき、2乃至4種を混合して使用することもできる。2乃至4種を混合して使用した場合に、EPDM混合物全体のエチレンの重量比率とムーニー粘度(ML1+4、125℃)を、各EPDMの重量基準の配合割合に比例させて算出し、定義するのが式(1)、式(2)の趣旨である。
式(1)、式(2)におけるnは、好ましくは1乃至3である。
例えば、2種類以上のEPDMを混合する場合、エチレン量が56重量%以下でムーニー粘度(ML1+4、125℃)が28よりも大きいグレードに、エチレン量が56重量%以下でムーニー粘度(ML1+4、125℃)が28以下のグレードやエチレン量が56重量%以上のグレードを混合する事ができる。
種々の特性を有するEPDMが市販されているので、これらの中から上記条件に従って適切なものを選択し、本発明に使用することができる。例えば、エチレン量が56重量%以下でムーニー粘度(ML1+4、125℃)が28よりも大きいグレードとして、JSR(株)製EP104E、EP35、EP65、住友化学(株)製エスプレン505などを挙げることができる。エチレン量56重量%以下、ムーニー粘度(ML1+4、125℃)28以下のグレードとして、JSR(株)製EP33、住友化学(株)製エスプレン505Aなどを挙げることができる。エチレン量が56以上のグレードとして、JSR(株)製EP98、住友化学(株)製エスプレン601F、三井化学(株)製EPT X−3042E などを挙げる事ができる。
EPDMは更に以下の特性を有することが好ましい。
(1) ジエン量:2重量%若しくは3重量%以上、及び/又は10重量%若しくは9重量%以下
(2) 油展量:120重量部以下
EPDMの油展量は0重量部でも良いが、油展グレードのEPDMを使用することにより、後述するプロセスオイル量を油展グレードのEPDMに含まれるオイル量を勘案して低減することができ、かつ、EPDM自体やカーボンブラックの分散性を向上させることができる。
ダンパーゴム組成物中のEPDMの重量比率(%)は、EPDM重量部÷ダンパーゴム組成物重量部合計×100で算出されるものである。ダンパーゴム組成物中のEPDMの重量比率(ポリマー分率ともいう)は、20%以上40%以下とする必要がある。EPDMの重量比率が20%未満では、ダンパーゴム組成物の粘着性が上がり、製造上の練り加工性が悪化することがある。一方、EPDMの重量比率が40%より大きいと、カーボン添加量が少なくなり、損失係数が低下してしまうことがある。
本発明に係るゴム組成物中には上記EPDM以外の汎用のゴム成分を配合しても良いが、ゴム成分の主成分は上記EPDMとする。ここで、主成分とは、全ゴム成分の中で最大量を占めることをいい、好ましくは過半を占めることをいう。
<カーボンブラック>
本発明においては、ヨウ素吸着量が70mg/g以上185mg/g以下であり、DBP(可塑剤:フタル酸ジブチル(Dibutyl phthalate))吸油量が40ml/100g以上120ml/100g以下であるカーボンブラックを用いることが必要である。
種々の特性を有するカーボンブラックが市販されているので、これらの中から上記条件に従って適切なものを選択し、本発明に使用することができる。例えば、東海カーボン(株)製、シースト600(ヨウ素吸着量:111mg/g、DBP吸油量:75ml/100g)シースト3(ヨウ素吸着量:80mg/g、DBP吸油量:101ml/100g)などを挙げることができる。
カーボンブラックの粒径とダンパーゴム組成物の損失係数(tanδ)との間には相関関係があり、カーボンブラックの粒径が小さいほど、損失係数が大きくなる。換言すると、カーボンブラックのヨウ素吸着量が多いほど、カーボンブラックの粒径が小さくなり、ダンパーゴム組成物の損失係数が大きくなる。
また、DBP吸油量が多いほど、カーボンブラックのストラクチャーが大きくなり、導電性が向上するため、ダンパーゴム部材をトーショナルダンパーに装着したときに、トーショナルダンパーの帯電を防止し、耐久性を向上させることができる。
ダンパーゴム組成物中のカーボンブラック量とダンパーゴム部材の損失係数(tanδ)との間には相関関係があり、カーボンブラック量の増加に比例して損失係数(tanδ)も大きくなる。したがって、ダンパーゴム組成物にはEPDM100重量部に対してカーボンブラック100重量部以上を添加することが必要である。
<加硫剤>
ダンパーゴム組成物には、加硫剤として、過酸化物、共架橋剤などを添加することができる。加硫剤を添加したダンパーゴム組成物を加熱して架橋反応を行うことにより、強靭なダンパーゴム部材が形成される。
過酸化物としては、例えば、
1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、
1,3−ジ(2−tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、
ジtert−ブチルペルオキシド、
ジクミルペルオキシド、
N−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、
tert−ブチルクミルペルオキシド、
などを用いることができ、これらはいずれも市販品として入手可能である。例えば、日油(株)製パーヘキサ25B、パーブチルP、パークミルDなどを挙げることができる。
共架橋剤としては、例えば、
トリアリルイソシアネート、
エチレングリコールジメタクリレート、
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリアリルシアヌレート、
キノンジオキシム、
1,2−ポリブタジエン、
イオウ、
ビスマレイミド、
などを用いることができ、これらはいずれも市販品として入手可能である。例えば、日本化成(株)製TAIC、三新化学工業(株)製サンエステルTMP、大内新興化学工業(株)製バルノックPMなどを挙げることができる。
<その他の添加剤>
ダンパーゴム組成物には、上記成分以外に周知のゴム添加剤(プロセスオイル(鉱物油)、可塑剤、亜鉛華、ステアリン酸亜鉛、老化防止剤など)を配合することができる。プロセスオイルの配合量は50重量部以上が好ましい。これらはいずれも市販品として入手可能である。例えば、プロセスオイルとして出光興産製ダイアナプロセスオイルPW−380、可塑剤として大八化学工業(株)製DOS、老化防止剤として大内新興化学工業(株)製ノクラック224やノクラックCDを挙げることができる。
ダンパーゴム組成物は、慣用の方法により各成分を混合することによって調製することができ、その後加熱等の慣用の手段により加硫することができる。具体的な方法については実施例において述べる。
以下に実施例等を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例等によってなんら制限を受けるものではない。なお、以下においてムーニー粘度はJIS K6300−1:2013に準拠して測定した値である。
(実施例1)
<ダンパーゴム組成物の調製>
まず、3.5リットルのバンバリーミキサーにEPDM1(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:3.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):58、油展量:30重量部)100重量部(油展量30重量部を除くEPDM単独の重量部)を投入し、回転数40rpmで1分間素練りした後、カーボンブラック1(ヨウ素吸着量:111mg/g、DBP吸油量:75ml/100g)100重量部、プロセスオイル60重量部(EPDMの油展量30重量部に、プロセスオイル30重量部を加えた合計が60重量部となる様に調整)、亜鉛華5重量部、ステアリン酸亜鉛1重量部、老化防止剤2重量部を投入して2分間混練し、さらに1分間混練した後、混練物をバンバリーミキサーから排出した。続いて、排出した混練物をロール間隔5mmとした12インチロールに巻き付けてシート状に成形し、成形した生地を室温にて12時間以上放置した。
次に、上記の生地をロール間隔4mmとして6インチロールに巻き付けて過酸化物として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン3.5重量部、及び共架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート2重量部を練り込み、切り返しを左右3回ずつ行い、続いて丸め通しを5回行った後、シート状に成形し、ダンパーゴム組成物を得た。
<ダンパーゴム部材の製造>
次に、上記ダンパーゴム組成物のシートを金型にセットし、180℃にて10分間のプレス加硫を行って2mm厚のゴムシートを作製し、さらに150℃の恒温槽にて6時間の加熱処理を行い、ダンパーゴム部材を得た。
<圧入タイプトーショナルダンパーの作製>
ダンパーゴム部材と同一組成の環状のダンパーゴム部材(13)を作製し、ハブ(11)と慣性リング(12)との間隙部に圧縮率10〜50%で圧入してトーショナルダンパーを得た。
(実施例2乃至7)
カーボンブラック1の量をそれぞれ120、140、160、180重量部に変え、プロセスオイルの量をそれぞれ70、80、90、100重量部に変えた以外は実施例1と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。
(実施例8、9及び比較例3、4)
カーボンブラック1をそれぞれ下記カーボンブラック2乃至5に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。
カーボンブラック2(ヨウ素吸着量:185mg/g、DBP吸油量:112ml/100g)
カーボンブラック3(ヨウ素吸着量:80mg/g、DBP吸油量:101ml/100g)
カーボンブラック4(ヨウ素吸着量:44mg/g、DBP吸油量:115ml/100g)
カーボンブラック5(ヨウ素吸着量:26mg/g、DBP吸油量:68ml/100g)
(実施例10)
EPDM1を、EPDM1(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:3.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):58、油展量:30重量部)50重量部(油展量30重量部を除くEPDM単独の重量部)とEPDM2(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:8.1重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):28、油展量:0重量部)50重量部との混合物に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。なお、この混合物の式(1)の左辺の計算値は52重量%、式(2)の左辺の計算値は43である。
(実施例11)
EPDM1を、EPDM1(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:3.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):58、油展量:30重量部)75重量部(油展量30重量部を除くEPDM単独の重量部)とEPDM3(エチレンの重量比率:66重量%、ジエン含量:4.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):69、油展量:75重量部)25重量部(油展量75重量部を除くEPDM単独の重量部)との混合物に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。なお、この混合物の式(1)の左辺の計算値は56重量%、式(2)の左辺の計算値は61である。
(実施例12)
EPDM1を、EPDM1(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:3.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):58、油展量:30重量部)50重量部(油展量30重量部を除くEPDM単独の重量部)と、EPDM2(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:8.1重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):28、油展量:0重量部)25重量部と、EPDM3(エチレンの重量比率:66重量%、ジエン含量:4.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):69、油展量:75重量部)25重量部(油展量75重量部を除くEPDM単独の重量部)との混合物に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。なお、この混合物の式(1)の左辺の計算値は56重量%、式(2)の左辺の計算値は53である。
(比較例1)
EPDM1をEPDM2(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:8.1重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):28、油展量:0重量部)に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。
(比較例2)
EPDM1を、EPDM1(エチレンの重量比率:52重量%、ジエン含量:3.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):58、油展量:30重量部)50重量部(油展量30重量部を除くEPDM単独の重量部)とEPDM3(エチレンの重量比率:66重量%、ジエン含量:4.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4、125℃):69、油展量:75重量部)50重量部(油展量75重量部を除くEPDM単独の重量部)との混合物に変えた以外は実施例3と同様にして、ダンパーゴム組成物、ダンパーゴム部材及びトーショナルダンパーを得た。なお、この混合物の式(1)の左辺の計算値は61重量%、式(2)の左辺の計算値は64である。
<ダンパーゴム部材の評価>
ダンパーゴム部材の硬さは、JIS K6253に準拠して、デュロメータAを使用し、1秒以内に読み取る方式で測定した。結果を表1に示す。
ダンパーゴム部材試験片の引張強さ(MPa)、伸び(%)及びモジュラス(50%、100%、300%伸長時のモジュラス及びこれらの間の比)は、JIS K6251に準拠して測定した。なお、試験片形状は、JIS5号ダンベルを使用した。
結果を表1に示す。
ダンパーゴム部材の60℃における損失係数(tanδi)、120℃における損失係数(tanδh)及び損失係数比(tanδh/tanδi)、並びに60℃における貯蔵弾性率(E’pi)に対する−30℃における貯蔵弾性率(E’pl)の比(E’pl/E’pi)は、下記条件によりJIS K6394に準拠して測定した。結果を表1に示す。
測定器:上島製作所製 粘弾性アナライザYR−7130
変形方法:引張
周波数:100Hz
振幅:±1%
プレロード:480mN
試験片形状:加硫成形後のシート状ゴム部材から採取した
20mm(つかみ間隔)×4mm(幅)×2mm(厚さ)の短冊形状片
ダンパーゴム部材のゲーマン捩じり試験は、JIS K6261に準拠し、(株)東洋精機製作所製ゲーマンステフネステスタにて測定した。溶媒はエタノールを使用した。結果を表1に示す。
<圧入タイプトーショナルダンパーの評価>
トーショナルダンパーに装着されたダンパーゴム部材の表面温度60℃における損失係数(tanδpi)、ダンパーゴム部材の表面温度120℃における損失係数(tanδph)及び損失係数比(tanδph/tanδpi)並びに低温性(−30℃/60℃Fn比)は、高周波振動試験機((株)サム電子機械製防振ゴムねじり動特性試験機)による共振スイープ法(固有振動数測定)で測定した。結果を表1に示す。低温性(−30℃/60℃Fn比)とは、−30℃における固有振動数と60℃における固有振動数との比であり、低温時の捩り振動特性に影響する。測定条件は下記のとおりである。
ゴム温度:60±5℃、120±5℃、−30±5℃
加振振幅:±1.7×10−3rad(±0.1°)
スイープ速度:100Hz/min
トーショナルダンパーのクランク捩じれ低減効果及び耐久性の評価は、市販の捩じり振動試験機((株)サム電子機械製防振ゴムねじり動特性試験機)を用い、下記測定方法及び測定条件により行った。クランク捩じれ低減効果については、tanδが0.27未満のものを「△(三角)」、tanδが0.27以上のものを「○(丸)」と、0.31以上のものを「◎(2重丸)」とした。耐久性については、規定回数前にゴムの破損のあったものを「×(バツ)」と、規定回数後にゴム部の表面に凹凸のあったものを「△(三角)」と、規定回数後に僅かなゴム摩耗粉の付着のあったものを「○(丸)」と、規定回数後にゴム部の外観に異常のなかったものを「◎(2重丸)」とした。結果を表1に示す。
<測定方法>
・雰囲気温度100℃の恒温槽中でダンパーゴム部材の温度を安定させる。
・ハブを固定した状態でトーショナルダンパーを一定荷重で左右に捩り振幅を加える。
<測定条件>
・雰囲気温度:100±5℃
・加振振幅(一定ひずみ):ダンパーゴム部材の剪断歪みが45%相当
・加振周波数:20Hz
・耐久回数:1×10
<ダンパーゴム部材の伸び>
表1に示すように、比較例1と比較例3の伸びは330%以下となっており、実施例1乃至12の伸びよりも劣っていた。また、実施例1乃至12のトーショナルダンパーは、比較例1、3のトーショナルダンパーより耐久性が勝っていた。これらの結果から、優れた耐久性を示すトーショナルダンパーを製造するためには、340%以上の伸びを有するダンパーゴム部材を組み込むことが好ましいことが判明した。
<カーボンブラックの配合量>
実施例1乃至実施例7の結果から、EPDM100重量部に対し、カーボンブラック100乃至180重量部の範囲の配合では、ダンパーゴム部材の60℃における損失係数(tanδi)は0.34以上、ゴム部材の120℃における損失係数(tanδh)と60℃における損失係数(tanδi)との損失係数比(tanδh/tanδi)が0.86以上、かつ、ゴム部材の−30℃における貯蔵弾性率(E’pl)と60℃における貯蔵弾性率(E’pi)に対する比(E’pl/E’pi)が3.9以上と、低温領域から高温領域にわたって優れた特性を示すことが判明した。
<カーボンブラックの種類>
実施例3、6、7、8、9及び比較例3、4の結果から、特定のカーボンブラックを選択しなければ、ダンパーゴム部材の60℃における損失係数(tanδi)を0.34以上、トーショナルダンパーに装着されたダンパーゴム部材の表面温度60℃における損失係数(tanδpi)を0.28以上が達成出来ず、良好なクランク捩じれ低減効果を実現できないことがわかる。
<EPDMのムーニー粘度>
実施例3、10、11、12及び比較例1の結果から、EPDMが式(2)を満足する所定のムーニー粘度を満たさないと、トーショナルダンパーの耐久性に問題が生じることがわかる。
<EPDM中のエチレンの重量比率>
実施例3、10、11、12及び比較例2の結果から、EPDM中のエチレンの重量比率が高すぎると、ダンパーゴム部材の60℃における貯蔵弾性率(E’pi)に対する−30℃における貯蔵弾性率(E’pl)の比(E’pl/E’pi)とゲーマン捩じり試験によるT100に悪影響を及ぼし、トーショナルダンパーの低温性が劣ることがわかる。
<まとめ>
実施例1乃至12のダンパーゴム部材は、ダンパーゴム部材の低温側使用温度における貯蔵弾性率(E’pl)の標準使用温度における貯蔵弾性率(E’pi)に対する比(E’pl/E’pi)が6.5未満と、低温領域においても優れた貯蔵弾性率を示し、優れた共振周波数特性を実現できる。このようなダンパーゴム部材をトーショナルダンパーに組み込むことにより、トーショナルダンパーの低温性(−30℃/60℃Fn比)が向上した。
同時に、実施例1乃至12のダンパーゴム部材は、60℃での損失係数が0.34以上で、120℃における損失係数と60℃における損失係数との損失係数比が0.86以上である優れた特性を示す。さらに、実施例1乃至9のダンパーゴム部材を組み込んだトーショナルダンパーでは、損失係数が圧入前のダンパーゴム部材よりもやや低下するのが通常であるが、このようなダンパーゴム部材をトーショナルダンパーに組み込むことにより、ダンパーゴム部材の表面温度60℃での損失係数は0.28以上を維持しており、トーショナルダンパーとして、使用標準温度領域から高温領域にわたり優れた捩じり振動低減特性と耐久性を達成した。
以上、本発明に係るトーショナルダンパー、ダンパーゴム部材及びダンパーゴム組成物について説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明に係るトーショナルダンパーは、クランクシャフトのみならず、エンジンのカムシャフトなどの種々の回転軸における捩り振動を低減するために適用することができ、外周面にプーリ溝が形成されていないタイプの慣性リングを有するトーショナルダンパーや、ボス部を備えていないハブを有するトーショナルダンパーなどにも適用することができる。また、本発明に係るゴム部材は、ハンドル、車体、ブラケット、エキゾーストなどの振動する構造物に取り付けて、その構造物の特定の周波数の振動を小さく抑えるダイナミックダンパー(動的吸振器)、あるいは騒音抑制のための各種の防振ゴム部材にも適用できることは勿論である。
本発明に係るゴム部材およびそれを用いたダンパーは、低温(−30℃)から高温(120℃)までの広範囲において優れた共振周波数特性と減衰特性と耐久性の3つを同時に実現できるため、産業上の利用価値が極めて高いものである。
10 トーショナルダンパー
11 ダンパーハブ
11a ディスク部
11b ボス部
12 慣性リング
12a プーリ溝
13 ダンパーゴム部材
14 間隙部

Claims (10)

  1. ゴム成分としてエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)を主成分とするゴム組成物を過酸化物加硫したゴム部材であって、
    下記式(1)を満たすエチレンの重量比率と、下記式(2)を満たすムーニー粘度(ML1+4、125℃)とを有するエチレン・プロピレン・ジエン三元コポリマー(EPDM)100重量部に対し、ヨウ素吸着量が70mg/g以上185mg/g以下であり、DBP吸油量が40ml/100g以上120ml/100g以下であるカーボンブラック100乃至180重量部を含むゴム組成物の過酸化物加硫成形物である、ゴム部材。

    (式中、
    Eiはi番目のEPDMにおけるエチレンとプロピレンの合計に対するエチレンの重量比率(重量%)であり、
    miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
    MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
    nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)

    (式中、
    Viはi番目のEPDMのムーニー粘度(ML1+4、125℃)であり、
    miはi番目のEPDMの配合量(重量部)であり、
    MtはEPDMの配合量(重量部)の合計であり、
    nは配合するEPDMの数であり、1≦n≦4である。)
  2. 前記ゴム組成物がEPDM100重量部に対してプロセスオイル60重量部乃至100重量部を更に含み、前記EPDMのポリマー分率が前記ゴム組成物の20重量%以上40重量%以下である、請求項1に記載のゴム部材。
  3. 前記ゴム部材の低温側使用温度における貯蔵弾性率(E’pl)の使用標準温度における貯蔵弾性率(E’pi)に対する比(E’pl/E’pi)が3.9以上6.5未満であり、前記ゴム部材の使用標準温度における損失係数(tanδi)が0.34以上であり、前記ゴム部材の高温側使用温度における損失係数(tanδh)の使用標準温度における損失係数(tanδi)に対する比(tanδh/tanδi)が0.86以上である、請求項1又は2に記載のゴム部材。
  4. 前記ゴム部材のJIS K6261準拠のゲーマン捩じり試験によるT100が−49℃より小さく、前記ゴム部材の使用標準温度における損失係数(tanδi)が0.34以上であり、前記ゴム部材の高温側使用温度における損失係数(tanδh)の使用標準温度における損失係数(tanδi)に対する比(tanδh/tanδi)が0.86以上である、請求項1又は2に記載のゴム部材
  5. 前記ダンパーゴム部材は、JIS K6251準拠の伸びが340%以上である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のゴム部材。
  6. 前記ゴム部材のJIS K6251準拠の100%モジュラスが1.2以上2.3以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のゴム部材。
  7. 前記ゴム部材のJIS K6251準拠の50%伸長時のモジュラスと300%伸長時のモジュラスの比が5.4以上8.2未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のゴム部材。
  8. 回転軸に取り付けられ、前記回転軸と一体的に回転するダンパーハブと、前記ダンパーハブにダンパーゴム部材を介して装着された慣性リングとを有するトーショナルダンパーであって
    ダンパーゴム部材の低温側表面使用温度における固有振動数の標準表面使用温度における固有振動数に対する比が1.57以上2.15未満である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のゴム部材を有するトーショナルダンパー。
  9. 前記ダンパーゴム部材の標準表面使用温度における損失係数(tanδpi)が0.28以上であり、
    前記ダンパーゴム部材の高温側表面使用温度120℃における損失係数(tanδph)の標準表面使用温度における損失係数(tanδpi)に対する比(tanδph/tanδpi)が0.63以上0.68以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のゴム部材を有するトーショナルダンパー。
  10. 前記ダンパーゴム部材が前記ダンパーハブと前記慣性リングとの間に10%以上の圧縮率で圧入されている、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のトーショナルダンパー。
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