JP2019129120A - セラミックヒータ及びグロープラグ - Google Patents

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章夫 井原
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【課題】急速昇温性と耐久性とを両立できるセラミックヒータを提供する。【解決手段】セラミックヒータ10は、絶縁材料を含む絶縁性セラミックからなり軸線方向に沿って延びる基体11と、絶縁材料と導電材料とを含む導電性セラミックからなり基体の内部に軸線方向に沿って埋め込まれた導体14と、を備えている。導体の軸線方向に垂直な断面における所定の10000μm2の範囲を見たときに、絶縁材料が偏析した偏析部が1個または複数個存在し、全ての偏析部は偏析部の内側に接する内接円の直径が20μm以下であり、偏析部の内側に接する内接円の直径が6μm以上である第1偏析部が少なくとも1個存在する。【選択図】図1

Description

本発明はセラミックヒータ及びグロープラグに関し、特に絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる導体が埋め込まれたセラミックヒータ及びそれを備えるグロープラグに関するものである。
絶縁材料と導電材料とを含む導電性セラミックからなる導体が、絶縁材料を含む絶縁性セラミックからなる基体の内部に埋め込まれたセラミックヒータが知られている。セラミックヒータでは、短時間で所定温度まで上昇させる性能(以下「急速昇温性」と称す)の向上が求められている。これに対し、特許文献1には、導電性セラミックに占める導電材料の含有率をより高くして導体の抵抗値を低下させる技術が開示されている。セラミックヒータの発熱量は導体の抵抗値に反比例するので、導体の抵抗値を低下させることにより急速昇温性を向上できる。
特開2006−127995号公報 特開平10−32079号公報
一方、特許文献2に開示されるように、導電性セラミックに占める導電材料の含有率がより高くなると、導体中の絶縁材料からなる粒子と導電材料からなる粒子との熱膨張率の違いによって、両粒子の境界に生じる応力が高まり、加熱・冷却のサイクルを繰り返したときの耐久性に問題が生じるおそれがある。
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、急速昇温性と耐久性とを両立できるセラミックヒータ及びグロープラグを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のセラミックヒータは、絶縁材料を含む絶縁性セラミックからなり軸線方向に沿って延びる基体と、絶縁材料と導電材料とを含む導電性セラミックからなり基体の内部に軸線方向に沿って埋め込まれた導体と、を備え、導体は、軸線方向の先端側に配置された発熱部と、発熱部よりも軸線方向の後端側に配置されて発熱部に電力を供給するリード部と、を備える。導体の軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲を見たときに、絶縁材料が偏析した偏析部が1個または複数個存在し、全ての偏析部は偏析部の内側に接する内接円の直径が20μm以下であり、偏析部の内側に接する内接円の直径が6μm以上である第1偏析部が少なくとも1個存在する。
本発明のグロープラグは、前記セラミックヒータと、前記セラミックヒータを保持するハウジングと、を備える。
請求項1記載のセラミックヒータによれば、導体の軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲を見たときに、絶縁材料が偏析した偏析部を導体に1個または複数個存在させ、さらに、内接円の直径が6μm以上である第1偏析部を少なくとも1個存在させる。これにより、偏析部が存在しない導体、即ち導電性セラミック中に絶縁材料を一様に分散させた導体のように、導電性セラミックに占める導電材料の含有率を高めなくても、偏析部以外の部分に導電材料を集中させられる。その結果、導体の抵抗値を低下させて急速昇温性を向上できる。なお、第1偏析部の内接円の直径が6μm未満であれば、絶縁材料の偏析が不十分なので、急速昇温性を向上させることが難しい。
さらに、上述の範囲において、全ての偏析部の内接円の直径は20μm以下なので、絶縁材料と導電材料の熱膨張率の差によって偏析部の界面に生じる応力を抑制できる。よって、加熱・冷却のサイクルを繰り返したときの耐久性を向上できる。なお、偏析部(又は第1偏析部)の内接円の直径が20μmを超えると、偏析部の界面に生じる応力を抑制でないので、耐久性の向上を図ることが難しい。
なお、上述の範囲を取得するための導体の断面としては、セラミックヒータの軸線方向に垂直な断面であれば、セラミックヒータの軸線方向におけるどの位置の断面であっても良いが、発熱部の断面であることが好ましい。また、上述の範囲は、得られた導体の断面において10000μmの面積を確保できれば、どのような形状・位置であっても良いが、例えば導体の中央付近における100μm×100μmの正方形の範囲を取得することが好ましい。
請求項2記載のセラミックヒータによれば、上述の範囲を見たときに、第1偏析部の数は10個以下である。これにより、第1偏析部による導体の応力が過大にならないようにできる。よって、請求項1の効果に加え、耐久性をさらに向上できる。
請求項3記載のセラミックヒータによれば、リード部の断面積は発熱部の断面積よりも大きく、発熱部の軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲およびリード部の軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲を見たときに、偏析部がそれぞれに存在する。そして、第1偏析部の数は、リード部が発熱部よりも多い。これにより、発熱部の熱膨張率に比べて、リード部の熱膨張率を基体の熱膨張率に近づけることができる。よって、熱膨張率の差によってリード部と基体との界面に生じる応力を抑制できる。その結果、発熱部に比べて断面積が大きいリード部と基体との界面にクラックを生じ難くできるので、請求項1又は2の効果に加え、耐久性をさらに向上できる。
請求項4記載のグロープラグによれば、請求項1から3のいずれかに記載のセラミックヒータを備えるので、請求項1から3のいずれかと同様の効果がある。
本発明の一実施の形態におけるセラミックヒータの断面図である。 図1のII−II線におけるセラミックヒータの断面図である。 セラミックヒータを備えるグロープラグの断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるセラミックヒータ10の軸線Oを含む断面図であり、図2は図1のII−II線におけるセラミックヒータ10の断面図(軸線Oに垂直な断面図)である。図2に示す部分拡大図は、走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察される組織を模式的に図示したものである。図1では紙面下側をセラミックヒータ10の先端側、紙面上側をセラミックヒータ10の後端側という。図1に示すようにセラミックヒータ10は、基体11と、基体11の内部に埋め込まれた導体14と、を備えている。
基体11は、絶縁材料を含む絶縁性セラミックからなる部材であり、本実施の形態では略円柱状に形成されている。基体11を構成する絶縁性セラミックに含まれる絶縁材料は、例えばSi,AlN,サイアロン,Al等が挙げられる。本実施の形態では、基体11はSiを主成分とする絶縁性セラミックである。
導体14は、導電材料19及び絶縁材料20(いずれも図2参照)を含む導電性セラミックからなる部材である。導体14を構成する導電性セラミックに含まれる絶縁材料20は、例えばSi,AlN,サイアロン,Al等から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。なお、基体11と導体14の物理的性質や化学的性質を近づけるため、絶縁材料20の材質は、絶縁性セラミックに含まれる絶縁材料の材質と同一であることが好ましい。本実施の形態では絶縁材料20はSiを主成分とする。絶縁材料20には、主成分のSi,AlN,Al等の他、通常、希土類元素やアルカリ土類金属の酸化物などの焼結助剤の成分が含まれる。
導体14を構成する導電性セラミックに含まれる導電材料19(図2参照)は、例えばW,Ta,Nb,Ti,Mo,Zr,Hf,V,Crの各珪化物、炭化物、ホウ化物および窒化物などから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。基体11を構成する絶縁性セラミックがSiやAlNを主成分とする場合には、導電材料19はWC等のW炭化物やMoSi等のMo珪化物が好適である。W炭化物やMo珪化物はSiやAlNと熱膨張率が近いからである。本実施の形態では導電材料19はW炭化物を主成分とする。
導体14に占める導電材料19の割合は、要求される導体14の抵抗値に応じて、適宜設定される。なお、導電材料19の熱膨張率は絶縁材料20(図2参照)の熱膨張率に比べて大きいので、熱膨張率の差によって導体14に生じる応力を抑制するため、導体14の全体の体積に占める導電材料19の体積の割合は20〜40体積%に設定されるのが好ましい。
導体14は、基体11の先端側に配置された発熱部15と、発熱部15から後端側へ向けて延びる一対のリード部16と、を備えている。発熱部15はU字状に形成され、リード部16は棒状に形成されると共に発熱部15の両端に接続する。リード部16は、発熱部15に電力を供給する部位である。発熱部15の軸線Oに垂直な断面積は、リード部16の軸線Oに垂直な断面積より狭いので、発熱部15を構成する導電性セラミックの材質とリード部16を構成する導電性セラミックの材質とが同じでも、発熱部15の抵抗をリード部16の抵抗よりも大きくできる。その結果、発熱部15の発熱量をリード部16の発熱量よりも大きくできるので、発熱部15を選択的に発熱させることができる。
なお、発熱部15及びリード部16の断面積を異ならせるのではなく、比抵抗がリード部16の比抵抗よりも高い材質を発熱部15に採用して、発熱部15を選択的に発熱させることは当然可能である。
一対のリード部16の後端側には、径方向の外側に延びる電極部17,18がそれぞれ設けられている。電極部17,18は、電源電圧が印加される端子の役目を果たす部位である。電極部17,18は、基体11に形成された孔12,13にそれぞれ収容され、基体11の表面に露出している。電極部18は、電極部17よりも軸線O方向の後端側に配置されている。
図2の部分拡大図は、導体14(発熱部15)の所定の10000μmの範囲を取得したものである。本実施形態では、導体14(発熱部15)の断面における略中央部の、100μm×100μmの正方形の領域が図示されている。但し、所定の10000μmの範囲を取得する位置は、導体14の断面の中央部に限られない。
図2(部分拡大図)に示すように発熱部15(導体14)は、導電材料19と絶縁材料20とが混在する組織を有している。絶縁材料20は、ほぼ一様な大きさの均質部21と、均質部21の各々よりも面積が広い偏析部22と、を備えている。導体14の断面に現出する導電材料19及び絶縁材料20(均質部21及び偏析部22)は、いずれも不定形である。図2では、偏析部22は複数個存在する。なお、これに限られるものではなく、偏析部22は1個であっても良い。
セラミックヒータ10は、導体14の断面の10000μmの範囲(つまり、図2の部分拡大図)において、全ての偏析部22の内接円23の直径が20μm以下であり、また、内接円23の直径が6μm以上である第1偏析部24が少なくとも1個存在する。但し、内接円23の直径が6μm以上である第1偏析部24の数は、導体14の断面の10000μmの範囲に10個以下である。内接円23は、偏析部22の内側に接する最大面積の円である。内接円23の直径は、SEM等の顕微鏡やマイクロスコープ等で得られた10000μmの範囲の画像を基に、例えば画像解析ソフトを用いて測定できる。
本実施形態では、図2の部分拡大図における偏析部22の内接円23の直径が20μm以下であるだけでなく、導体14に設けられる全ての偏析部22の内接円23の直径が20μm以下となっている。
セラミックヒータ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、基体11及び導体14の原料を調製する。基体11の原料は、絶縁性セラミックの原料粉末を混合粉砕し、ニーダー(混練機)を用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して得られる。
導体14の原料は、導電材料19の原料粉末と絶縁材料20の原料粉末とを混合粉砕し、ニーダーを用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して得られる。混練の終盤に、絶縁材料20の原料粉末の顆粒または凝集体をニーダーへ投入することにより、原料中の絶縁材料20の偏析を調整できる。混練の終盤に投入された顆粒または凝集体は解砕され難いので、これらが偏析部22となる。偏析部22の大きさは、投入する顆粒または凝集体の大きさにより調整できる。偏析部22の数は、投入する顆粒または凝集体の量によって調整できる。
導体14の原料を射出成形することにより、導体14の成形体を得る。次いで、導体14の成形体を金型のキャビティ内に配置した後、基体11の原料を射出成形することにより(いわゆる2色成形)、基体11の成形体に導体14の成形体が埋め込まれたセラミックヒータ10の成形体が得られる。
セラミックヒータ10の成形体を所定の温度で焼成することにより、セラミックヒータ10が得られる。いわゆるホットプレス焼成を行っても良い。焼成後、必要に応じて、切断加工や研磨加工が行われる。電極部17,18が基体11に埋没している場合には、基体11の外周面の研磨により、電極部17,18を基体11の表面に露出させることができる。
なお、この製造方法は一例であり、公知の他の製造方法を採用できる。例えば、射出成形ではなく、導体14や基体11の原料粉末のプレス成形により成形体を得ることは当然可能である。また、射出成形とプレス成形とを組み合わせて成形体を得ることは当然可能である。
また、絶縁材料20の偏析状態が異なる原料を用いて発熱部15及びリード部16をそれぞれ成形することにより(いわゆる2色成形)、発熱部15とリード部16に存在する偏析部22の数を異ならせることができる。特に、リード部16に存在する偏析部22の数を、発熱部15に存在する偏析部22の数より多くすることが好ましい。
具体的には、発熱部15の軸線O方向に垂直な断面およびリード部16の軸線O方向に垂直な断面のそれぞれにおいて、導体14の断面の10000μmの範囲に偏析部22をそれぞれ存在させる。そして、内接円23の直径が6〜20μmである偏析部22の数は、リード部16が発熱部15よりも多くなるようにする。この場合も、全ての偏析部22は内接円23の直径が20μm以下である。
本実施形態におけるセラミックヒータ10では、導体14の軸線O方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲を見たときに、絶縁材料20が偏析した偏析部22が1個または複数個存在し、さらに内接円23の直径が6μm以上である第1偏析部24が少なくとも1個存在する。これにより、偏析部22が存在しない導体、即ち導電性セラミック中に絶縁材料を一様に分散させた導体のように、導電性セラミックに占める導電材料19の含有率を高めなくても、第1偏析部24以外の部分において導電材料19を集中させることができる。その結果、導体14の抵抗値を低下させて急速昇温性を向上できる。
さらに、上述の10000μmの範囲において、偏析部22の内接円23の直径は20μm以下なので、絶縁材料20と導電材料19の熱膨張率の差によって偏析部22の界面に生じる応力を抑制できる。よって、加熱・冷却のサイクルを繰り返したときのセラミックヒータ10の耐久性を向上できる。従って、急速昇温性と耐久性とを両立できる。
また、上述の10000μmの範囲を見たときに、第1偏析部24の数は10個以下なので、第1偏析部24による導体14の応力が過大にならないようにできる。よって、セラミックヒータ10の耐久性をさらに向上できる。
さらに、導体14の断面の10000μmの範囲に存在する第1偏析部24の数を、リード部16が発熱部15よりも多くなるようにすると、リード部16と発熱部15の熱膨張率を異ならせることができる。より具体的には、リード部16の熱膨張率を、発熱部15の熱膨張率よりも基体11の熱膨張率に近づけることができる。
通電により上昇するリード部16の温度は発熱部15の温度よりも低いが、リード部16の断面積は発熱部15の断面積よりも広いので、熱膨張率の差によってリード部16と基体11との界面に生じる応力がクラックの原因になることがある。これを防ぐため、偏析部22によってリード部16の熱膨張率を基体11の熱膨張率に近づけることにより、熱膨張率の差によってリード部16と基体11との界面に生じる応力を抑制できる。その結果、リード部16と基体11との界面にクラックを生じ難くできるので、セラミックヒータ10の耐久性をさらに向上できる。
本実施形態では、リード部16の断面における10000μmの範囲は、発熱部15の断面における範囲と同様に、リード部16の断面の略中央部から取得される。
図3を参照してグロープラグ30について説明する。図3はセラミックヒータ10を備えるグロープラグ30の軸線Oを含む断面図である。図3では紙面下側をグロープラグ30の先端側、紙面上側をグロープラグ30の後端側という。グロープラグ30は、セラミックヒータ10、主体金具31、中軸35及び外筒42を備えている。主体金具31及び外筒42は、セラミックヒータ10を保持するハウジングの一部である。
主体金具31は、軸線Oに沿う軸孔32が形成された略円筒状の金属製(例えば炭素鋼やステンレス鋼等)の部材である。主体金具31は、軸線O方向の略中央の外周面にねじ部33が形成され、ねじ部33よりも後端側の外周面に工具係合部34が形成されている。ねじ部33は、エンジン(図示せず)に形成されたねじ穴に係合する部位である。工具係合部34は、エンジンのねじ穴にねじ部33を締め付けるときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。
中軸35は金属製の円柱状の部材である。中軸35の先端側は軸孔32に収容され、中軸35の後端側は主体金具31から突出する。中軸35は、他の部分に比べて外径が小さい小径部36が先端に設けられている。
絶縁部材37は中軸35を囲むリング状の部材であり、主体金具31の軸孔32に配置されている。絶縁部材37は主体金具31に中軸35を固定する。絶縁部材37は、主体金具31と中軸35との間を電気的に絶縁すると共に、主体金具31と中軸35との間を気密封止する。
絶縁部材38は中軸35を囲む筒状部39及びフランジ部40を備える部材であり、絶縁部材37よりも後端側の軸孔32に配置されている。フランジ部40は、筒状部39よりも後端側において中軸35を囲んで配置されている。絶縁部材38は、主体金具31と中軸35との間、及び、主体金具31とスリーブ41との間を電気的に絶縁する。
スリーブ41は略円筒状の金属製の部材であり、フランジ部40に接した状態で、主体金具31の後端から突出した中軸35を囲む。スリーブ41は塑性変形され、中軸35に加締め固定されている。スリーブ41は絶縁部材38の脱落を防止する。
外筒42は主体金具31の先端に接合される略円筒状の金属製(例えばステンレス鋼等)の部材である。外筒42は後端側に厚肉部43及び係合部44が形成されている。係合部44は厚肉部43よりも後端側に配置され、係合部44の外径は厚肉部43の外径よりも小さい。外筒42は、係合部44が主体金具31の軸孔32に嵌められ、厚肉部43が主体金具31の先端に突き当てられる。
外筒42は、セラミックヒータ10の先端側を突出させた状態でセラミックヒータ10を保持する。外筒42は、セラミックヒータ10の電極部17(図1参照)に接触する。セラミックヒータ10の後端側は、外筒42から突出して主体金具31の軸孔32に収容される。電極リング45はセラミックヒータ10を囲む金属製の部材であり、セラミックヒータ10の電極部18(図1参照)に接触する。中軸35の小径部36と電極リング45との間はリード線46によって電気的に接続される。
グロープラグ30の中軸35と主体金具31との間に電圧が印加されると、セラミックヒータ10の電極部17,18(図1参照)から発熱部15に通電される。グロープラグ30は主体金具31及び外筒42がセラミックヒータ10を保持するので、急速昇温性と耐久性とを両立できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
絶縁材料20の偏析状態が異なる導体14が内蔵されたセラミックヒータ10を保持する種々のグロープラグ30のサンプル1〜6を作成した。まず、Siを主成分とする絶縁性セラミックの原料粉末を混合粉砕し、ニーダー(混練機)を用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して基体11の原料を調製した。同様に、WCの原料粉末(導電材料19)とSiの原料粉末(絶縁材料20)とを混合粉砕し、ニーダーを用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して導体14の原料を調製した。導体14の原料の混練の終盤に、Siの原料粉末の顆粒または凝集体をニーダーへ投入することにより、導体14の原料内の絶縁材料20の偏析状態を調整した。
導体14の原料を射出成形することにより、導体14の成形体を得た。この成形体を金型のキャビティ内に配置した後、基体11の原料を射出成形することにより、基体11の成形体に導体14の成形体が埋め込まれたセラミックヒータ10の成形体を得た。この成形体を所定の温度で焼成することにより、種々のセラミックヒータ10を得た。主体金具31、中軸35及び外筒42等をセラミックヒータ10に組み付け、サンプル1〜6におけるグロープラグ30を得た。
なお、サンプル1〜6は、導体14に含まれる絶縁材料20の偏析状態の違いによる特性を評価するため、各サンプル間での導体14の抵抗値の差が±1%以内となるように導電材料19の割合を調整すると共に、各種原料粉末の粒径、セラミックヒータ10やグロープラグ30の各部の寸法や形状等は一定にした。
次いで、加熱・冷却のサイクルを繰り返す試験(後述する)を行うサンプルと同じ条件のもとで製造されたサンプルについて、軸線Oと直交する平らな断面が現れるようにセラミックヒータ10の発熱部15の部分を研磨し、SEMによる組成像による画像を得た。画像解析ソフトを用いて、得られた画像の10000μmの範囲(100μm×100μmの正方形)に現出する偏析部22に内接円23を描き、内接円23の直径の最大値(μm)を求めた。また、その画像の10000μmの範囲に現出する偏析部22のうち、内接円23の直径が6μm以上の第1偏析部24の数を数えた。その結果は表1に記した。
Figure 2019129120
各サンプルを2本ずつ準備し、各サンプルに加熱・冷却のサイクルを繰り返す試験1及び試験2を行った。試験1は、セラミックヒータ10の先端近傍の表面の温度が常温から1000℃まで1.0秒間で上昇するように中軸35と主体金具31との間に所定の電圧を印加し、そのまま1250℃まで上昇させた後、電圧の印加を止め、30秒間強制空冷した。これを1サイクルとして10万サイクルまで繰り返した。なお、セラミックヒータ10の温度測定は放射温度計を用いて行った。
試験1を行ったサンプルとは別のサンプルに試験2を行った。試験2は、セラミックヒータ10の先端近傍の表面の温度が常温から1000℃まで0.8秒間で上昇するように中軸35と主体金具31との間に所定の電圧を印加し、そのまま1250℃まで上昇させた後、電圧の印加を止め、30秒間強制空冷した。これを1サイクルとして10万サイクルまで繰り返した。セラミックヒータ10の温度測定は放射温度計を用いて行った。
試験者は、試験1及び試験2を行ったサンプルについて、導体14の20℃における抵抗値(測定器のプローブを電極部17,18に接触させて測定した電極部17,18間の抵抗値)を4端子法により測定し、試験前の抵抗値R1に対する試験後の抵抗値R2の変化率ΔR=(R2−R1)/R1・100(%)を求めた。そして、ΔR≦10%のサンプルは「良い(〇)」、ΔR>10%のサンプルは「悪い(×)」と評価した。結果は表1に記した。
表1に示すように試験1においては、偏析部22の内接円23の直径の最大値が20μm以下であり、且つ、第1偏析部24が1個以上存在するサンプル2〜5が良い評価であった。サンプル2〜5は、第1偏析部24を設けることにより、第1偏析部24以外の部分において導電材料19を集中させることができ、その結果、導体14の抵抗値が低下し、急速昇温性を確保できたと推察される。さらに、内接円23の直径の最大値は20μm以下なので、絶縁材料20と導電材料19の熱膨張率の差によって偏析部22の界面に生じる応力が抑制され、耐久性が向上したと推察される。これに対し、第1偏析部24が0個であったサンプル1や、内接円23の直径の最大値が20μmを超えたサンプル6は悪い評価であった。
試験2においては、偏析部22の内接円23の直径の最大値が20μm以下であり、且つ、第1偏析部24が1〜10個存在するサンプル2〜4が良い評価であった。サンプル2〜4は、第1偏析部24が1〜10個なので、第1偏析部24による導体14の応力が過大にならないようにすることができ、耐久性がさらに向上したと推察される。
(実施例2)
サンプル7におけるセラミックヒータ10は、発熱部15及びリード部16の絶縁材料20の偏析状態が同じサンプルである。サンプル7は、サンプル1〜6におけるセラミックヒータ10と同様に製造した。
サンプル8におけるセラミックヒータ10は、発熱部15及びリード部16の絶縁材料20の偏析状態が異なるサンプルである。サンプル8は、まず、Siを主成分とする絶縁性セラミックの原料粉末を混合粉砕し、ニーダー(混練機)を用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して基体11の原料を調製した。
また、WCの原料粉末(導電材料19)とSiの原料粉末(絶縁材料20)とを混合粉砕し、ニーダーを用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化して発熱部15の原料を調製した。混練の終盤に、Siの原料粉末の顆粒または凝集体をニーダーへ投入することにより、発熱部15の原料内の絶縁材料20の偏析状態を調整した。
同様に、WCの原料粉末(導電材料19)とSiの原料粉末(絶縁材料20)とを混合粉砕し、ニーダーを用いてこの混合物にバインダ等を混練し、その後ペレット化してリード部16の原料を調製した。混練の終盤に、Siの原料粉末の顆粒または凝集体をニーダーへ投入することにより、リード部16の原料内の絶縁材料20の偏析状態を調整した。リード部16の原料内の絶縁材料20の偏析状態を、発熱部15の原料内の絶縁材料20の偏析状態と異ならせた。
発熱部15の原料およびリード部16の原料をそれぞれ射出成形する、いわゆる2色成形により導体14の成形体を得た。この成形体を金型のキャビティ内に配置した後、基体11の原料を射出成形することにより、基体11の成形体に導体14の成形体が埋め込まれたセラミックヒータ10の成形体を得た。この成形体を所定の温度で焼成することによりサンプル8におけるセラミックヒータ10を得た。
なお、サンプル7,8は、発熱部15及びリード部16に含まれる絶縁材料20の偏析状態の違いによる特性を評価するため、導体14(発熱部15及びリード部16)の抵抗値の各サンプル間の差、及び、発熱部15の抵抗値に対するリード部16の抵抗値の割合の各サンプル間の差が±1%以内になるように導電材料19の割合を調整すると共に、各種原料粉末の粒径、セラミックヒータ10の各部の寸法や形状等は一定にした。
次いで、加熱試験(後述する)を行うサンプルと同じ条件のもとで製造されたサンプルについて、軸線Oと直交する平らな断面が現れるようにセラミックヒータ10の発熱部15の部分およびリード部16の部分をそれぞれ研磨し、SEMによる組成像による画像を得た。画像解析ソフトを用いて、得られた画像の10000μmの範囲(100μm×100μmの正方形)に現出する偏析部22に内接円23を描き、内接円23の直径が6μm以上の第1偏析部24の数を数えた。その結果は表2に記した。なお、全ての内接円23の直径の最大値は20μm以下であった。
Figure 2019129120
各サンプルを1000本ずつ準備し、全てのサンプルを炉に入れ大気中で加熱・冷却した。加熱は10分/℃の速度で450℃(雰囲気温度)まで昇温した後、450℃で2時間維持し、その後、炉内で約3時間かけて常温まで冷却した。冷却後のサンプルについて、超音波探傷法によりクラックの有無を確認し、クラックの発生率(%)を算出した。結果は表2に記した。
表2に示すように、第1偏析部24の数が、発熱部15よりもリード部16に多いサンプル8は、第1偏析部24の数が発熱部15とリード部16との間で変わらないサンプル7に比べて、クラックの発生率が低かった。クラックは、主にリード部16の部分に生じていた。サンプル8は、第1偏析部24により、発熱部15の熱膨張率に比べてリード部16の熱膨張率を基体11の熱膨張率に近づけることができたと推察される。その結果、熱膨張率の差によってリード部16と基体11との界面に生じる応力を抑制し、発熱部15に比べて断面積が大きいリード部16と基体11との界面にクラックを生じ難くできたと推察される。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施の形態では、基体11が略円柱状に形成されるセラミックヒータ10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。基体11の形状は適宜設定できる。例えば、基体の軸線Oに直交する断面を楕円状、多角状等の形状にすることは当然可能である。また、セラミックヒータは棒状の基体をもつものに限られない。例えば、板状の基体間に導体を挟み込んだいわゆる板状のセラミックヒータとすることは当然可能である。
実施の形態では、セラミックヒータ10がグロープラグ30に用いられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。バーナーの着火用ヒータ、ガスセンサの加熱用ヒータ、DPF(Diesel particulate filter)にセラミックヒータ10を用いることは当然可能である。
実施の形態では、セラミックヒータ10を保持する外筒42が主体金具31に固定されたグロープラグ30について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、セラミックヒータが外筒と共に変位可能となるように主体金具に保持されるグロープラグ(いわゆるヒータ付き圧力センサ)とすることは当然可能である。
10 セラミックヒータ
11 基体
14 導体
15 発熱部
16 リード部
19 導電材料
20 絶縁材料
22 偏析部
23 内接円
24 第1偏析部
30 グロープラグ
31 主体金具(ハウジングの一部)
42 外筒(ハウジングの一部)
O 軸線

Claims (4)

  1. 絶縁材料を含む絶縁性セラミックからなり軸線方向に沿って延びる基体と、
    前記絶縁材料と導電材料とを含む導電性セラミックからなり前記基体の内部に前記軸線方向に沿って埋め込まれた導体と、を備え、
    前記導体は、前記軸線方向の先端側に配置された発熱部と、前記発熱部よりも前記軸線方向の後端側に配置されて前記発熱部に電力を供給するリード部と、を備えるセラミックヒータであって、
    前記導体の前記軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲を見たときに、
    前記絶縁材料が偏析した偏析部が1個または複数個存在し、前記偏析部は全てが前記偏析部の内側に接する内接円の直径が20μm以下であり、前記偏析部の内側に接する内接円の直径が6μm以上である第1偏析部が少なくとも1個存在するセラミックヒータ。
  2. 前記範囲を見たときに、前記第1偏析部の数は10個以下である請求項1記載のセラミックヒータ。
  3. 前記発熱部の前記軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲および前記リード部の前記軸線方向に垂直な断面における所定の10000μmの範囲のそれぞれを見たときに、前記偏析部がそれぞれ存在し、
    前記第1偏析部の数は、前記リード部が前記発熱部よりも多い請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
  4. セラミックヒータと、前記セラミックヒータを保持するハウジングと、を備えるグロープラグであって、
    前記セラミックヒータは、請求項1から3のいずれかに記載のセラミックヒータであるグロープラグ。
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