以下、ポンプ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るポンプ装置1の一例を示す正面図である。図2は、本発明の実施形態に係るポンプケーシング30の内部構造の一例を示す縦断面図である。
図1に示すように、ポンプ装置1は、水を汲み上げるポンプ2と、ポンプ2の背面側に設けられ、ポンプ2を駆動する電動機3(後述する図3及び図4参照)と、ポンプ2の動作を制御する制御ユニット4と、ポンプ2の吐出し圧力を検出する圧力センサ42(後述する図2及び図3参照)と、ポンプ2の吐出し圧力を保持する圧力タンク43(後述する図3参照)と、を有する。ポンプ2、電動機3、制御ユニット4は、ユニットベース5に支持され、ユニットカバー6によって略全体を覆われている。
ポンプ2は、摩擦ポンプとも称されるカスケードポンプであって、図2に示すように、羽根車20と、羽根車20を収納するポンプ室31を形成するポンプケーシング30と、を有する。ポンプケーシング30の正面側には、図1に示すように、ポンプケーシングカバー50が取り付けられており、これを取り外すと羽根車20にアクセスすることができる。羽根車20は、図2に示すように、周縁部に多数の溝21が切られた円板状に形成されており、その周縁部によって、ポンプ室31に存在する水を、ほぼ1回転させながら昇圧させるものである。
このポンプ2は小型であるが、1個の羽根車20で数段の渦巻ポンプに匹敵する揚程を得られ、小容量高揚程の目的に適している。また、カスケードポンプは、自吸性を有するので、ポンプ2よりも低い位置に設置された受水槽に蓄えた水や井戸水を汲み上げるのに適している。
図1に示すように、ポンプ装置1の正面には、ユニットカバー6から露出する吸込口7と、吐出し口8とが設けられている。吸込口7は、図2に示すポンプケーシング30の内部に形成された内部流路32の一端部32aと連通し、吐出し口8は、この内部流路32の他端部32bと連通している。内部流路32には、ポンプ室31と、気水分離室33とが形成されている。
内部流路32のうち、一端部32aからポンプ室31までの吸込流路34には、フローチェッキ弁35が設けられている。フローチェッキ弁35は、ポンプ室31よりも高い位置に設けられ、ポンプ2の駆動に先立ち、ポンプ室31の内部を満水させて自吸に必要な水位を確保すると共に、ポンプ2の停止時の水の逆流を防止し、常にポンプ室31を満水にする役割を有する。すなわち、フローチェッキ弁35は、ポンプ2の停止時、自重によって吸込流路34を閉じ、ポンプ2の駆動時には、吸込流路34を上ってくる水(始動時は空気を含む)によって押し上げられて吸込流路34を開く。
ポンプ室31の下流側には、気水分離室33が配置されている。内部流路32のうち、ポンプ室31と気水分離室33との間の接続流路36には、ポンプ室31から吐出された液体が衝突するバッフル37が配置されている。気水分離室33の底部には、ポンプ室31に連通する孔部33aが形成されている。孔部33aは、ポンプ2の始動時の自吸運転時に、気水分離室33で空気と分離した水を、ポンプ室31に再び戻すものであり、これによりポンプ室31における負圧を発生させ、吸込流路34内の空気をなくし、水を吸い上げる。
気水分離室33の上方には、呼び水口38が形成されている。呼び水口38は、呼び水栓39によって閉止されている。呼び水栓39は、ポンプ2の設置時等でポンプケーシング30内に水が満たされていない状態で、且つ、ポンプ2の始動前に開けられ、呼び水口38から呼び水を注水することにより、気水分離室33は呼び水時水位40まで満水となる。上述したポンプ2の駆動によって、自吸運転が行われ、吸込流路34内の空気がなくなり、水が上がってくると、自吸運転は終わり、気水分離室33及び気水分離室33より下流側が水で満たされた後は、ポンプ2の駆動によって揚液運転がなされる。
内部流路32のうち、気水分離室33から他端部32bまでの吐出流路41には、圧力センサ42が設けられている。圧力センサ42は、呼び水時水位40よりも上方に配置され、自吸運転が完了し、水で満たされた吐出流路41の圧力(吐出し圧力)を検出する。
また、吐出流路41には、圧力タンク43が設けられている。圧力タンク43は、耐圧容器内にゴム製のブラダが内蔵されており、吐出流路41の圧力が上昇するとブラダの外側の空気を圧縮し水が加圧状態で貯留される。また、例えば、水の使用に伴い、吐出流路41内の圧力が低下するにつれて、圧縮された空気が膨張し、貯留された水を吐出流路41に押し出す。このようにして、ポンプ2の始動直後で、給水に十分な回転速度まで上昇していなくても、しばらくの間は圧力タンク43から吐出流路41に水を供給することができる。
図3は、本発明の実施形態に係るポンプ装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。図4は、本発明の実施形態に係る制御ユニット4の構成の一例を示すブロック図である。図5Aは、本発明の実施形態に係る制御装置60の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御ユニット4は、電動機3に電力を供給するインバータ装置70と、インバータ装置70に制御信号を出力してポンプ2の動作を制御する制御装置60と、を有する。インバータ装置70には商用電源100が接続されており、当該商用電源100から供給される交流電力は、インバータ装置70によって所望の周波数を持つ交流電力に変換されて電動機3に供給される。なお、上述したフローチェッキ弁35は、図3に示すように、水の逆流を防止するチェッキ弁35aと、ポンプ2に流れる水の流量の低下(過少水量Qmin以下)を検出するフローセンサ35bと、を有する。
制御装置60は、図5Aに示すように、I/O部61、演算部62並びに記憶部63(制御用メモリ)を備える。I/O部61は、圧力センサ42、フローセンサ35b、電圧センサ71、電流センサ72並びに温度センサ80,81,82等の各種センサと接続されており、各種センサの検出結果を入力する入力部61aを備え、入力部61aにて入力した検出結果は演算部62に出力する。また、I/O部61は出力部61bを備え、制御装置60は、演算部62からの指令信号(例えば、ポンプ2の回転速度)を、出力部61bを介してインバータ装置70へ出力する。また、I/O部61は、ポンプ装置1の状態を接点信号や通信を用いて、外部へ出力する不図示の外部出力端子を備えてもよいし、ユーザーがポンプ装置1の運転不可を選択もしくは解除することが可能な接点入力を備えてもよい。制御装置60の演算部62は、例えばCPU(中央処理装置)によって実現され、ポンプ装置1の各種制御プログラムが実行される。演算部62は、例えば、I/O部61を介して入力される各種センサ等の検出結果に基づいて、インバータ装置70へ出力する指令信号を演算し、その指令信号をI/O部61に出力する。なお、I/O部61は、接点信号もしくはアナログ信号にて入出力を行ってもよいし、無線または有線の通信にて入出力を行ってもよい。
制御装置60の演算部62では、I/O部61より入力された情報や記憶部63の情報に基づいて、記憶部63に記憶された各種制御プログラムが実行される。演算部62で実行される制御プログラムの例としては、吐出し圧力PVとフローセンサ35bの過少水量Qminの信号にてポンプ2の運転停止を指令したり、吐出し圧力PVをうけて設定圧力PAに対して該知の吐出圧力一定制御または推定末端圧力一定制御の演算を行い、目標圧力SVを算出して、現在の吐出し圧力PVが目標圧力SVとなるように、ポンプ2の回転速度を制御する。また、演算部62は、ポンプ装置1の状態を示す情報(吐出し圧力、回転速度、積算運転時間、積算運転回数等)を求めて記憶部63に記憶させる。記憶部63は、I/O部61の情報、演算部62で実行される各種制御プログラム、演算部62で用いられる各種情報、及び演算部62で求められた各種情報等を記憶する各種メモリを備える。なお、上述した制御装置60のI/O部61、演算部62並びに記憶部63は、ポンプ制御部60aとインバータ制御部60bのそれぞれに備えても、併用してもよい。
更に、制御装置60は、運転パネル64および通信部65を備えてもよい。運転パネル64は設定部64aと表示部64bとを備える。設定部64aは、例えば、操作ボタン、スイッチ及びタッチパネル等にて構成され、ポンプ装置1のユーザーは設定部64aを介してポンプ装置1の運転不可の選択解除や設定圧力の変更等のポンプ装置1の記憶部63に記憶される各種情報を設定変更することができる。表示部64bは、例えば、7セグメントLED、表示灯および液晶表示器等によって構成され、ポンプ装置1のユーザーは表示部64bを介して記憶部63に記憶されたポンプ装置1の各種情報を視認することができる。
通信部65は、有線(RS485,RS232C、USB等)または無線通信(NFC,Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi等)の任意の通信方式にて外部端末66等の外部機器との通信を行う。通信部65にて送受信する情報の一例としては、ポンプ装置1を制御するための制御プログラム及びポンプ装置1の装置情報、設定値情報、メンテナンス情報、履歴情報、異常情報、運転情報等である。なお、運転パネル64並びに通信部65は、ポンプ制御部60aとインバータ制御部60bのそれぞれに備えても、併用してもよい。また、制御装置60は、複数の通信部65を備えてもよい。例えば、演算部62と運転パネル64を別々の基板で構成し、運転パネル64はCPU並びに通信部を備え、演算部62とは通信部65を介して接続されてもよい。演算部62と通信部65は、別々の基板で構成されてもよい。
外部端末66は、例えば、PDA等の汎用機器であっても、遠方監視器等の専用端末であってもよい。外部端末66は、通信部65との通信にて記憶部63に記憶されたポンプ装置1に関する各種情報を取得するとともに表示操作部67に表示する。また、外部端末66は、ユーザーの表示操作部67の操作によりポンプ装置1の記憶部63に記憶された各種情報の変更要求を通信部65へ送信する。
ここで、記憶部63に記憶される各種情報には、少なくとも、ポンプ2を制御する情報(停止圧力P1、設定圧力PA、目標圧力SV、始動圧力P0等)と、後述する電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータと、を含む。また、記憶部63をポンプ制御部60aとインバータ制御部60bのそれぞれに備えている場合は、ポンプ制御部60aの記憶部には、少なくともポンプ2を制御する情報を設定値として記憶し、インバータ制御部60bの記憶部には、少なくとも当該駆動制御に関連する制御パラメータを記憶するとよい。なお、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータには、詳細を後述するトルクブースト電圧、過電流保護レベル、ソフトスタート時間、間隔時間が含まれ、更には、最高周波数、基底周波数、加速時間、減速時間、電子サーマル動作レベルや電子サーマルのリトライ回数、ストール防止動作レベル、インバータ定格電流値および運転開始周波数等が含まれるとよい。
図4に示すように、制御装置60は、ポンプ制御部60aと、インバータ制御部60bと、を有する。ポンプ制御部60aと、インバータ制御部60bとには、上述したI/O部61、演算部62、記憶部63(制御用メモリ)、運転パネル64および通信部65をそれぞれに備えてもよいし、一部あるいは全てを併用してもよい。ポンプ制御部60aとインバータ制御部60bは、通信や信号線によって接続されてもよいし、共通の記憶部を介して各種情報を共有してもよい。
ポンプ制御部60aには、上述したように、フローセンサ35bの信号および圧力センサ42の測定値が入力されるようになっており、ポンプ2の吐出し圧力PVが目標圧力SVとなるように、インバータ制御部60bにポンプ2の運転、停止並びに目標回転速度の指令を発する。また、後述する電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータを算出し、当該制御パラメータをインバータ制御部60bへ送るとよい。具体的には、インバータ制御部60bは、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータ等に基づいてポンプ2を始動し、更に、ポンプ制御部60aから送られるポンプ2の目標回転速度に基づいて指令周波数を算出し、この指令周波数と電動機3の実際の周波数との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。
インバータ装置70は、インバータ制御部60bからのPWM信号に基づいて交流電圧を生成し、この交流電圧を電動機3に印加するインバータ回路であり、コンバータ部70aと、直流電圧平滑回路70bと、インバータ部70cと、ゲートドライバ70dと、を備えている。コンバータ部70aは、商用電源100から供給される3相の交流電圧を直流電圧に変換するために、ダイオードなどにより構成される整流回路を有する。直流電圧平滑回路70bは、コンデンサを備えており、コンバータ部70aにより変換された直流電圧を平滑化する。
インバータ部70cは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー素子、およびパワー素子に並列に接続されるダイオードを複数有しており、直流電圧平滑回路70bによって平滑化された直流電圧から3相の交流電圧を生成するように構成されている。ゲートドライバ70dは、インバータ制御部60bからのPWM信号に基づいて、インバータ部70cの各パワー素子をスイッチング動作させるためのゲートドライブ信号を生成する。
インバータ制御部60bには、インバータ回路の二次側に配置された電圧センサ71と、電流センサ72とが接続されている。電圧センサ71および電流センサ72で得られた電圧および電流の測定値は、インバータ制御部60bに入力される。インバータ制御部60bは、フィードバックされた電流の測定値から電動機3(およびポンプ2)の実際の回転速度を推定し、この推定された回転速度と目標回転速度との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。なお、制御装置60にてインバータ回路の二次側の電圧と電流が予測できるのであれば、電圧センサ71並びに電流センサ72はなくてもよい。
また、以降の説明にて用いるインバータ装置70に流れる電流とは、インバータ回路の二次側の電流を示すが、これに代えて、電動機3を流れる電流を用いてもよい。また、本実施形態では、インバータ制御部60bから電動機3に出力する電圧と周波数が、ほぼ正比例関係となる「Vf制御」を行ってもよい。ここで、出力周波数が低くなると、電圧降下の影響が大きくなることからトルクが低下するので、それを補償するため低周波数領域では出力電圧を上げるため、制御装置60は、ポンプ制御部60aおよび外部入力にて設定変更可能な制御パラメータの一つとしてトルクブースト電圧を有する。
なお、図4では、ポンプ2、電動機3、インバータ装置70に、これらの温度を測定する温度センサ80,81,82がそれぞれ取り付けられている。ポンプ制御部60aは、温度センサ80,81,82のうちの少なくとも1つの温度の測定値が所定の上限に達したときは、ポンプ2の回転速度を定常運転時よりも低下させる若しくはポンプを加熱保護として停止させるようにインバータ制御部60bに指令を発してもよい。
上述した制御装置60は、ポンプ装置1の運転不可が選択されていない時に、自動制御にてポンプの運転停止を行う。具体的には、制御装置60は、ポンプ2を始動するための所定の始動条件を有し、該始動条件が満たされたときに、インバータ装置70に制御信号を出力してポンプ2を始動させ、ポンプ2の運転を制御し、停止条件が満たされたときにポンプ2を停止させる。
図5Bは、本発明の実施形態に係る制御装置60により実行される自動制御の一例を示す制御フローである。
図5Bの制御フローは、ポンプ装置1が設置された後、異常が解除された後、もしくは使用者にてポンプ装置1の運転不可が解除された後等に、ポンプ2が運転された等でポンプ2の吐出し圧力PV(後述する図6参照)が所定の停止圧力P1(後述する図6参照)となった後に開始されるとよい。また、図5Bの制御フローが開始されるときは、ポンプ2は停止している。
先ず、制御装置60は、第1始動条件が満たされているか否かを判断する(ステップS101)。第1始動条件は、ポンプ2の吐出し圧力PVが所定の始動圧力P0(後述する図6参照)より高い圧力から、当該始動圧力P0以下にまで低下した小停再始動時のポンプ2の始動条件である。例えば、給水先の蛇口が開くことで第1始動条件が満たされる。始動圧力P0は、ユーザーによって設定変更が可能な設定値であるとよい。
制御装置60は、第1始動条件が満たされない場合(ステップS101が「NO」の場合)、第1始動条件が満たされるまで待機する。一方、第1始動条件が満たされた場合(ステップS101が「YES」の場合)、ポンプ2を小停再始動として始動させる(ステップS102)。具体的には、ステップS102の小停再始動では、制御装置60は、後述する電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの値を設定し、当該制御パラメータの値に基づいてポンプ2を始動させる。ポンプ2を小停再始動するとき、制御装置60の電子部品の性能のバラツキ、ポンプ2の使用状況及び設置環境等によって電動機3側で始動時に必要なトルクが異なる。そのため、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータを変更してポンプ2を小停再始動するとよい。ポンプ2を始動してから停止するまでの間、制御装置60は運転指令をインバータ装置70へ出力する。
ステップS102においてポンプ2を始動した後、ポンプ2が揚水運転を行い、正常に始動したと判断した場合(ステップS103が「YES」の場合)、制御装置60は、吐出し圧力一定制御によりポンプ2を運転させる(ステップS104)。なお、ステップS104におけるポンプ2の回転速度の制御方法の例としては、目標圧力SVを所定の設定圧力PAとし、ポンプ2の吐出し圧力PVを設定圧力PAとするようにポンプ2を制御する吐出し圧力一定制御、給水先の末端の圧力が所定の設定圧力PAとなるように目標圧力SVを算出しポンプ2の吐出し圧力PVを算出した目標圧力SVとするようにポンプ2を制御する推定末端圧力一定制御、電流センサ72の値が所定の値となるようにポンプ2を制御する電流一定制御、不図示の流量計を用いてポンプ2の吐出し流量が所定の値となるようにポンプ2を制御する流量一定制御、電動機3の回転速度が所定の値となるようにポンプ2を制御する回転数一定制御等が挙げられる。以下の説明では、一例として、ステップS104にて吐出し圧力一定制御を行うとして説明する。
次に、制御装置60は、ポンプ2に流れる水の流量が過少水量以下であるか否かを判断する(ステップS105)。具体的には、給水先にて水の使用量が少なくなり、フローセンサ35bにて過少水量Qmin以下を検知した場合、ポンプ2に流れる水の流量が過少水量以下である(ステップS105が「YES」)と判断する。ステップS105が「YES」の場合、ポンプ2に流れる水の流量が過少水量以下であるポンプ2を小水量停止させる(ステップS106)。
すなわち、ポンプ2の停止条件には、ポンプ2に流れる水の流量が過少水量以下であるケース(小水量停止:ステップS106)を含む。例えば、給水先の蛇口が閉じられる等して給水先にて水の使用量が少なくなり、フローセンサ35bにて過少水量Qmin以下を検知(ステップS105が「YES」の場合)すると、ポンプ2の停止条件を満たしたとしてポンプ2は停止する。
ここで、ステップS106における小水量停止について説明する。ステップS106において、制御装置60は、所定時間で吐出し圧力PVが停止圧力P1に達するようにポンプ2の回転数を制御する蓄圧運転を行い、吐出し圧力PVが停止圧力P1以上に達したら、圧力タンク43に蓄圧できたと判断して蓄圧運転を終了し、ポンプ2の運転を停止する。小水量停止時の目標圧力SVである停止圧力P1は、ユーザーによって設定変更が可能な設定値であり、始動圧力P0及び設定圧力PAよりも高い値に設定されている。そして、ステップS106にてポンプ2を小水量停止させた後は、ステップS101に戻る。
そして、ポンプ2が小水量停止した後に、再び供給先の建物内で水が使用されると、吐出し圧力PVが始動圧力P0以下に低下し、第1始動条件が満たされ(ステップS101が「YES」)、ポンプ2が始動する小停再始動を行う(ステップS102)。小停再始動のとき、ポンプ2が給水可能な回転速度まで上昇するまでの間は、圧力タンク43に貯留された水で給水されることで、ポンプ2の吐出し圧力PVを保持することができる。また、ステップS105の過少水量を検知する方法としては、フローセンサ35bの過少水量Qmin以下の検知を用いずに、電動機3の電流値による低負荷や締切揚程等その他の手段を用いてもよい。
ステップS105にて、ポンプ2に流れる水の流量が過少水量以下でない場合(ステップS105が「NO」の場合)、制御装置60は、給水先にて水の使用が継続されているとして、ステップS105−1にて保護停止条件か否かを判断する。保護停止条件が肯定の判断(ステップS105−1が「YES」)の場合、制御装置60はポンプ2を保護停止させる(ステップS107)。具体的には、所定の過電流保護レベル以上の電流がインバータ装置70に流れた場合(過電流トリップ)やポンプ2の温度が所定の値以上になった場合(ポンプ過熱保護)等のポンプ2が所定の規定揚程での運転を継続できない何らかの不具合が発生したと判断したとき、保護停止条件の肯定の判断を行う。また、保護停止条件が否定の判断(ステップS105−1が「NO」)の場合は、ステップS104に戻り給水を継続する。
ここで、ステップS103に説明を戻す。ステップS103にてポンプ2の始動時に、ポンプ2が始動できないと判断した場合(ステップS103が「NO」の場合)、制御装置60は、保護停止(ステップS107)としてポンプ2を停止する。具体的には、過電流トリップやポンプ過熱保護等の何らかの不具合にて、所定の規定揚程で揚水できる回転速度まで羽根車20が回転できない場合に、制御装置60は、ポンプ2が始動できないと判断(ステップS103が「NO」)し、ステップS107の保護停止に移行する。
ステップS107の保護停止では、電動機3、インバータ装置70、ポンプ2等のポンプ装置1内の各機器を保護するためにポンプ2を停止状態にて待機させる。具体的には、ポンプ2の羽根車20が回転しているか否かに関わらず、制御装置60は、保護停止となったインバータ装置70に対して運転指令を中止し停止指令を出力し、所定の解除条件を満たすまでは停止指令の出力を継続する。なお、保護停止の解除条件は、所定時間でもよいし、保護停止に至った不具合によってもよい。たとえば、過電流トリップにて保護停止となった場合は、所定時間だけ保護停止を継続し、ポンプ過熱保護にて保護停止となった場合は、ポンプ2の温度が所定の値以下となるまで保護停止を継続する等、不具合の原因が解消されたと判断するまでは、制御装置60はポンプ2を停止する。以降、ポンプ装置1の保護として、制御装置60がポンプ2を停止状態にて待機させる動作を「保護停止」と記す。
ステップS107にて保護停止の復帰条件が満たされて保護停止が解除されると、次に、制御装置60は、第2始動条件が満たされるか否かを判断する(ステップS108)。第2始動条件が満たされるまで(ステップS108が「NO」)は、ステップS107に戻り保護停止の状態で待機する(ステップS107)。一方、第2始動条件が満たされた場合(ステップS108が「YES」の場合)、制御装置60は、ポンプ2を再始動させるリトライ動作を実行させる(ステップS109)。このように、保護停止したポンプ2を第2始動条件によって再始動(リトライ動作)させることで、ポンプ装置1は断水を極力避けることができる。
具体的には、ステップS108の第2始動条件は、ポンプ2の保護停止を解除した後に、吐出し圧力PVが始動圧力P0以下であるポンプ2の始動条件である。制御装置60は、保護停止を解除した後、ポンプ2の吐出し圧力PVが所定の始動圧力P0以下であれば、第2始動条件を満たした(ステップS108が「YES」)として、ポンプ2を再始動させるリトライ動作(ステップS109)を行う。詳細は後述するが、ステップS109のリトライ動作では、制御装置60は、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの値をリトライ回数や吐出し圧力PV等に応じて設定した後に、当該設定した制御パラメータの値に基づいてポンプ2を始動する信号をインバータ装置70に出力する。リトライ動作にてポンプ2を始動するときも、制御装置60の電子部品の性能のバラツキやポンプ2の使用状況(環境)により電動機3側で必要なトルクが異なる。よって、制御パラメータを変更してポンプ2を始動すればポンプ2の保護停止を抑制できる。なお、ステップS109におけるリトライ動作中は、運転パネル64及び外部端末66の少なくともいずれか一方に、リトライ中である旨を示す表示を行ってもよい。
次に、制御装置60は、リトライ動作によってポンプ2が正常に始動したか否かを判断する(ステップS110)。具体的には、揚水できる回転速度まで羽根車20が回転してポンプ2が揚水運転を行ったら、制御装置60は、ポンプ2が正常に始動していると判断(ステップS110が「YES」)し、過電流トリップやポンプ過熱保護等の何らかの不具合にて、揚水できる回転速度まで羽根車20が回転できないと判断した場合には、ポンプ2が正常始動しないと判断(ステップS110が「NO」)する。制御装置60は、リトライ動作によってポンプ2が正常に規定揚程で揚水運転を行い、始動したと判断した場合(ステップS110が「YES」の場合)は、ポンプ2を運転させる(ステップS104)。
一方、リトライ動作によってポンプ2が正常に始動しなかった場合(ステップS110が「NO」の場合)、制御装置60は、リトライ終了であるか否かを判断する(ステップS111)。詳細を後述するリトライ動作では、連続してリトライ動作(ステップS109)を行う回数をリトライ回数としてカウントし、該リトライ回数が所定のN回に至ったときリトライ終了を確定する。制御装置60は、リトライ回数がN回未満の場合(ステップS111が「NO」)は、ステップS107の保護停止に戻る。また、ステップS111にてリトライ終了(リトライ回数がN回)の場合(ステップS111が「YES」の場合)は、ポンプ2の故障確定(ステップS112)とし、図5Bの制御フローを終了する。ここで、ポンプ2の故障確定の後は、制御装置60は、運転パネル64及び外部端末66の少なくともいずれか一方に故障表示を行うとよい。故障確定のポンプ2は、ユーザーがリセットボタンを押すか電源再始動等の故障リセット操作がなされるまで運転不可となるとよい。
ここで、ポンプ2の停止条件には、上述したステップS106の小水量停止やステップS107の保護停止に至る条件に加えてユーザーの操作による運転不可の選択がなされ、制御装置60が図5Bの制御フローを中断したケースを含むとよい。すなわち、ポンプ2が運転中(ステップS104)、リトライ動作(ステップS109)、小水量停止(ステップS106)の蓄圧運転中のいずれかにてポンプ2が運転中にもかかわらず、ユーザーが運転パネル64若しくはI/O部61を介して運転不可の選択を行った場合には、制御装置60は、蓄圧運転を行わずに直ちにポンプ2を停止させる。そして、制御装置60は、ユーザーによるポンプ装置1の運転不可の解除がなされるまで、ポンプ2を停止状態にて待機させる。
以下の実施形態並びに変形例では、上記のように構成されたポンプ装置1の動作(ポンプ装置1の制御方法)のうち、具体的には、電動機3の始動時のトルク不足等によりポンプ2の保護停止(ステップS107)に至るのを抑制し、ステップS112における異常確定による断水を極力回避するための制御装置60の制御フローについて詳しく説明する。
(第1実施形態)
図6は、第1実施形態に係るポンプ2の吐出し圧力PVと、電動機3に印加する電圧との関係の一例を示すタイムチャートである。図6の(A)に示すタイムチャートは、縦軸は圧力、横軸は経過時間であり、経過時間による吐出し圧力PVの変化を示す。図6の(B)に示すタイムチャートは、縦軸は電圧、横軸は経過時間であり、時間経過による制御装置60が電動機3に印加する電圧の変化を示す。また、図6の実線、点線は、小停再始動時に給水先にて水が使用されて吐出し圧力PVが低下(ステップS101が「YES」)し、更に、ポンプ2の始動(ステップS103が「YES」)し、ポンプの揚水運転によって給水を行う(ステップS104)場合の吐出し圧力PVの変化を示す。図7は、第1実施形態に係る制御装置60により実行されるポンプ始動動作の一例を示す制御フローであり、図5Bの制御フローのステップS101からS103に至るまでの詳細を示す制御フローである。
図6では、前回、ポンプ2が小水量停止(ステップS106)した際に、停止圧力P1まで加圧されたポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0より高い圧力から始動圧力P0以下にまで低下(ステップS101が「YES」)し、ポンプ2を小停再始動(ステップS102)した後に、ポンプ運転(ステップS104)に至ったケースを例示する。図7に示すように、制御装置60は、先ず、圧力センサ42の測定値に基づいて、ポンプ2の吐出し圧力PVが所定の閾値である圧力レベルPL0にまで低下するか否かを判断する(ステップS1)。ここで、圧力レベルPL0は、停止圧力P1よりも低い圧力値とし、始動圧力P0よりも高い圧力値であるとよい。
制御装置60は、ポンプ2の吐出し圧力PVが圧力レベルPL0にまで低下しない場合(ステップS1が「NO」の場合)、ポンプ2の吐出し圧力PVが圧力レベルPL0に低下するまで待機する。ポンプ2の吐出し圧力PVが圧力レベルPL0に低下すると(ステップS1が「YES」の場合)、制御装置60は、時間ΔTの計測を開始する(ステップS2)。時間ΔTは、ポンプ2の吐出し圧力PVが圧力レベルPL0から始動圧力P0に低下するまでの時間である。制御装置60は、次のステップS3において、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0にまで低下するか否かを判断しており、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0にまで低下しない場合(ステップS3が「NO」の場合)、ステップS2に戻り時間ΔTの計測を継続すると共に、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0に低下するまで待機する。すなわち、ステップS1からS3の工程は、ポンプ2の始動条件が満たされる(図5BのステップS101が「YES」)まで待機する小水量停止の状態である。
ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0にまで低下することで、ポンプ2の第1始動条件が満たされる(ステップS3が「YES」)と、図5BのステップS101が「YES」となり、制御装置60は、ポンプ2が始動した後の吐出し圧力PVの最低値を推定する(ステップS4)。そして、推定した吐出し圧力PVの最低値である始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルを判断する(ステップS4−1〜S4−2)。
ここで、図6の実線にて示す例では、ステップS1の「YES」のタイミングからポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0以下となるまでの時間ΔTはΔT1であって、始動時吐出し圧力PSはPS1であり、圧力レベルPL0からΔT1だけ遅れて電動機3に電力が供給される。また、図6の破線にて示す例では、時間ΔTはΔT2であり始動時吐出し圧力PSはPS2である。そして、揚水できる回転速度まで羽根車20の回転速度が上昇すると、吐出し圧力PVが下降から上昇する。この吐出し圧力PVが下降から上昇するタイミングにおけるポンプ2の吐出し圧力PVが、ポンプ2が始動した後の吐出し圧力PVの最低値であり、始動時吐出し圧力PSである。すなわち、ステップS3のタイミングで推定した最低値が、始動時吐出し圧力PSとなる。
この始動時吐出し圧力PSは、時間ΔTと、圧力レベルPL0と始動圧力P0との差分から算出した、吐出し圧力PVが圧力レベルPL0から始動圧力P0にまで低下する傾きに基づいて推定することが可能であり、この傾きは給水先の高さや管路抵抗、もしくは、水の使用水量に依る。なお、第1始動条件が満たされたときに算出された始動時吐出し圧力PSは、記憶部63に記憶され、ポンプ2が正常に給水するか、もしくは後述するリトライ動作が完了し故障が確定するまで保持されるとよい。
なお、本実施形態では、制御装置60は、始動時吐出し圧力PSは、吐出し圧力PVが圧力レベルPL0から始動圧力P0にまで低下する傾きに基づいて推定したが、圧力レベルPL0に代えて、任意の圧力PZ(PL0>PZ>P0)まで低下する傾きに基づいて推定してもよい。その場合、ステップS4におけるPSの推定は、ステップS3「YES」の条件に依らず、吐出し圧力PVが圧力PZ以下且つ始動圧力P0以上(始動圧力P0≦吐出し圧力PV≦圧力PZ)の任意のタイミングで実施されればよい。このように、始動時吐出し圧力PSは、第1始動条件にて吐出し圧力PVが低下した傾きに基づいて推定されるとよい。
次に、制御装置60は、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて、ポンプ2の始動時に電動機3に印加するトルクブースト電圧を設定する(ステップS5−1〜S5−2)。具体的には、ステップS4−1にて始動時吐出し圧力PSがPL1の範囲内である(ステップS4−1が「YES」)と判断すれば、トルクブースト電圧をV1に設定し、ステップS4−1にて始動時吐出し圧力PSがPL1の範囲外(ステップS4−1が「NO」)であり、且つ、ステップS4−2にてPL2の範囲内(ステップS4−2が「YES」)であれば、トルクブースト電圧をV1より大きい値であるV2に設定する。トルクブースト電圧は、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの一つであり、トルクブースト電圧が大きい程、電動機3は始動トルクが大きくなる。制御装置60は、トルクブースト電圧を、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた値に設定する。
図6の実線で示すように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1の範囲内と算出された場合、制御装置60は、トルクブースト電圧をV1に設定する。また、図6の点線で示すように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1よりも高い圧力値である圧力レベルPL2の範囲内と算出された場合、制御装置60は、トルクブースト電圧をV1よりも大きい値であるV2に設定する。なお、圧力レベルPL1,PL2は、始動圧力P0以下の圧力値であって、所定の幅を持つ圧力値であってもよい。
次に、制御装置60は、設定したトルクブースト電圧に基づき、ポンプ2を小停再始動させる(ステップS6)。ステップS5−1〜S5−2において、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて、ポンプ2の始動時に電動機3に印加するトルクブースト電圧が設定されているため、電動機3は適切な始動トルクを得ることができる。すなわち、図6に示す例では、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが高い状態の方が、羽根車20の回転が開始し難く始動トルクを要する。そのため、始動時吐出し圧力PSがPS2の時に、トルクブースト電圧がPS1の時に用いるV1であると、一時的にトルクが不足して許容電流よりも大きい電流が流れ、制御装置60は、ポンプ2を過電流トリップやポンプ過熱保護で保護停止してしまうおそれがあるので、始動時吐出し圧力PSがPS2のときには、トルクブースト電圧をV1より大きいV2に設定している。このように、トルクブースト電圧をポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた値に設定し、ポンプ2を小停再始動させることで、始動時の過渡的なトルク不足によるポンプ2の保護停止を抑制することができる。
また、トルクブースト電圧を増加させると、ポンプ2の始動時にインバータ装置70に流れる電流も増加するため、トルクブースト電圧に応じた過電流保護レベルを設定してもよい。具体的には、制御装置60は、トルクブースト電圧に比例した過電流保護レベルを設定するとよい。これにより、第1始動条件にて始動したポンプ2の過電流トリップによる保護停止を抑制することができる。
このように、上述した第1実施形態によれば、ポンプ2と、ポンプ2を駆動する電動機3と、電動機3に電力を供給するインバータ装置70と、インバータ装置70にポンプ2の制御信号を出力する制御装置60と、を備えるポンプ装置1であって、制御装置60は、ポンプ2の吐出し圧力PVを入力する入力部61aと、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの値を記憶する記憶部63と、を備えており、制御装置60は、ポンプ2を始動させる条件として、吐出し圧力PVが所定の始動圧力P0より高い圧力から、当該始動圧力P0以下にまで低下した第1始動条件を有すると共に、当該第1始動条件にてポンプ2の始動した後の吐出し圧力PVの最低値である始動時吐出し圧力PSを推定し、当該始動時吐出し圧力PSに応じて制御パラメータの値の一つであるトルクブースト電圧を設定し、第1始動条件が満たされたとき、当該設定したトルクブースト電圧に基づいてポンプ2を始動させる、という構成を採用することによって、ポンプ2の始動時に過渡的に発生するトルク不足を解消して、ポンプ2の始動時に保護停止に至るのを抑制し、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1が得られる。
なお、図6では、始動時吐出し圧力PS1が始動時吐出し圧力PS2よりも小さい値であるときに、トルクブースト電圧V1をV2より小さい値としたが、これに依らず、始動時吐出し圧力PSに応じてトルクブースト電圧が決定されればよい。ポンプ装置1の設置環境や負荷の状態によっては、始動時吐出し圧力PS1が始動時吐出し圧力PS2よりも小さい値であるにも関わらず、V2よりもV1を大きい値とすることで、始動時の保護停止を回避できる場合がある。
そのため、演算部62にて実行されるプログラムとして、始動時吐出し圧力PSから適切なトルクブースト電圧を算出するための関数を、少なくともひとつ記憶部63に記憶するとよい。更に、複数の関数のうち何れの関数を用いるかは、変更可能な設定値として記憶部63に記憶してもよい。例えば、設定変更可能な引数を用いて、始動時吐出し圧力PSに応じて、設定した引数を用いて加算、減算、乗算および除算等の少なくともひとつを行い、起動時に設定するトルクブースト電圧を決定してもよい。
ここで、図6の実線で示すグラフは、例えば、給水先でフラッシュ弁などが設置されていて小停再始動時に大量の水が使用される場合であり、点線で示す吐出し圧力PVは、実線に比べて水量が少ない場合(給水先に蛇口等が接続されている)の吐出し圧力PVの変化を示していると考えられる。図6の実線で示すグラフは、小停再始動時に大量の水が使用される場合のグラフであり、点線で示す吐出し圧力PVは、実線に比べて水量が少ない場合の吐出し圧力PVの変化を示す。実線で示すグラフは、小停再始動時に大量の水が使用されるため、ステップS6にてポンプ2を始動させ吐出し圧力PVが目標圧力SVの近傍に到達するまでにトルク不足となる場合が考えられる。
具体的には、電動機3はトルクブースト電圧V1にて適切な始動トルクを得て羽根車20が一旦回転しても、その後の電動機3の加速にてトルク不足となると、ポンプ2の羽根車20が揚水できる回転速度まで上昇する前に保護停止してしまう。すなわち、ポンプ装置1が設置される環境、ポンプ2の性能および電動機3の出力や効率等によっては、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが低い状態の方が始動時に過渡的にトルクが不足となって、ポンプ2が保護停止する場合がある。
このような環境において、始動時吐出し圧力PSが例えばPL1と推測された場合のトルクブースト電圧を例えばV11とし、始動時吐出し圧力PSが例えばPL1よりも大きい値であるPL2と推測された場合のトルクブースト電圧を例えばV12とし、V12より大きい値をV11の値とするとよい。インバータ制御部60bは「Vf制御」を行っているので、電動機3はトルクブースト電圧V11を上げることで羽根車20が一旦回転した後のトルク不足も防止することができる。このように、始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた値とすることで、始動時の過渡的なトルク不足によるポンプ2の保護停止を抑制し、所定の規定揚程で揚水できる回転速度まで羽根車20の回転速度を上昇することが可能となる。
このように、吐出し圧力PVが始動圧力P0にまで低下した傾きに基づいて始動時吐出し圧力PSを推定することで、ポンプ2の始動後に電動機3に必要なトルクを推定することができるため、ポンプ2の始動後の電動機3に必要なトルクに応じた制御パラメータの値を設定することができる。
なお、ステップS6は、図5BのステップS102に相当し、図7の制御フローが終了した後に、制御装置60は、図5BのステップS103を実行する。本実施形態で示したように、トルクブースト電圧V11を始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた値とすることで、始動時の過渡的なトルク不足によるポンプ2の保護停止を抑制することができる。
また、第1実施形態では、次のような変形例を採用し得る。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成及びステップについては同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図8は、第1実施形態の第1の変形例に係るポンプ2の吐出し圧力と、電動機3に印加する電圧と、インバータ装置70に流れる電流との関係の一例を示すタイムチャートである。図8の(A)に示すタイムチャートでは、縦軸は圧力値、横軸は経過時間であり、時間経過による吐出し圧力PVの変化を示す。図8の(B)に示すタイムチャートでは、縦軸は電圧、横軸は経過時間であり、経過時間による制御装置60が電動機3に印加する電圧の変化を示す。図8の(C)に示すタイムチャートでは、縦軸は電流値、横軸には経過時間であり、経過時間によるインバータ装置70に流れる電流の変化を示す。図9Aは、第1実施形態の第1の変形例に係る制御装置60により実行されるリトライ動作の一例を示す制御フローであり、図5Bの制御フローにおけるステップS109におけるリトライ動作の詳細である。
図8では、第1実施形態にて、ポンプ2の吐出し圧力PVが停止圧力P1から始動圧力P0以下にまで下がり(図5BのステップS101が「YES」)、ポンプ2を始動(図5BのステップS102)しようとしたときに、始動時のトルク不足等によって、所定の規定揚程で揚水できる回転速度まで羽根車20の回転速度を上昇できず(図5BのステップS103が「NO」)、ポンプ2は保護停止(図5BのステップS107)され、その後、ポンプ2を再始動させるリトライ動作(図5BのステップS109)を行うケースを例示する。
具体的には、制御装置60は、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0以下となったタイミング(tr1、図5BのステップS101が「YES」)で電動機3にトルクブースト電圧VL0で電力を供給したが、ポンプ2の羽根車20が正常に回転できずに、インバータ装置70に流れる電流が過電流保護レベルAL0(保護レベル)に達した(tr2、図5BのステップS103が「NO」)ため過電流トリップにて、ポンプ2をtr2からtr3の間、保護停止(図5BのステップS107)させた。その後、制御装置60は、ポンプ2の保護停止を解除した(tr3)後に、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0以下である第2始動条件を満たして(図5BのステップS108が「YES」)おり、ポンプ2を再始動させるリトライ動作(図5BのステップS109)を行った。その結果、1回目のリトライ動作(tr3〜tr4)では、再度、ポンプ2の羽根車20が正常に回転できずに、インバータ装置70に流れる電流が過電流保護レベルAL1(保護レベル)に達し(tr4、図5BのステップS110が「NO」)過電流トリップにて、ポンプ2をtr4からtr5の間、保護停止(図5BのステップS107)させたが、2回目のリトライ動作(tr5、図5BのステップS109)にて、ポンプ2が正常始動(tr6、図5BのステップS110が「YES」)して規定揚程である設定圧力PAで給水を行えた(tr7、図5BのステップS104)ケースを例示している。
図8(B)及び図8(C)のタイムチャートに示すように、制御装置60は、リトライ動作(図5BのステップS109)が連続した回数に応じて、トルクブースト電圧および/または過電流保護レベルを増加させる。具体的には、図8(B)に示すように、リトライ回数が0回目(tr1)、すなわち小停再始動の場合、トルクブースト電圧は基準値であるVL0である。このVL0は、上述した第1実施形態においてポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて、ポンプ2の小停始動時に電動機3に印加するトルクブースト電圧(例えばV1またはV2)であってもよい。リトライ回数が1回目(tr3)の場合、制御装置60は、トルクブースト電圧をVL0よりも大きいVL1に設定する。また、制御装置60は、リトライ回数が2回目(tr5)の場合、トルクブースト電圧をVL1よりも大きいVL2に設定する。なお、リトライ回数に応じて、VL1、VL2はVL0に所定の値を加算もしくは乗算して求めてもよい。リトライ回数が増えるごとにトルクブースト電圧を大きくすることで、第2始動条件にて始動したポンプ2のトルク不足による保護停止を抑制し、更には異常確定による断水を極力回避することができる。
また、図8(C)のタイムチャートに示すように、リトライ動作の度に増加するトルクブースト電圧に対応するため、過電流保護レベルを増加させる。具体的には、制御装置60は、トルクブースト電圧VL0、VL1、VL2(VL0<VL1<VL2)にそれぞれ対応した過電流保護レベルであるAL0、AL1、AL2(AL0<AL1<AL2)を設定する。トルクブースト電圧を増加させると、ポンプ2の始動時にインバータ装置70に流れる電流も増加するため、トルクブースト電圧に対応した過電流保護レベルを設定することで、第2始動条件にて始動したポンプ2の過電流トリップによる保護停止を抑制し、更には異常確定による断水を極力回避することができる。また、過電流保護レベルであるAL0、AL1、AL2(AL0<AL1<AL2)は、トルクブースト電圧に依らずに、リトライ回数に応じて設定してもよい。
次に、図8におけるリトライ動作(図5BのステップS109)について、図9Aにて詳細に説明する。具体的には、図9Aに示すリトライ動作の制御フローにおいて、図8に示す例のtr3からtr4およびtr5からtr6のリトライ動作について詳細に説明する。図9Aに示すリトライ動作は、ポンプ2の保護停止(図5BのステップS107)を解除した後に、ポンプ2の吐出し圧力PVが始動圧力P0以下である第2始動条件を満たした(tr3、tr5、図5BのステップS108が「YES」)ときに実行される。図8に示すリトライ動作では、制御装置60は、先ず、リトライ回数をカウントする(ステップS11)。リトライ回数は、連続して保護停止(図5BのステップS107)が発生しリトライ動作を行う回数であって、例えば、ポンプ2の小停再始動(図5BのステップS102)、ポンプ2の正常始動(図5BのステップS110)、および、ポンプ装置1の電源断等にてリセットするとよい。
制御装置60は、現在のリトライ回数を判断する(ステップS12−1〜S12−N)。そして、制御装置60は、現在のリトライ回数に応じて、ポンプ2の始動時に電動機3に印加するトルクブースト電圧を設定する(ステップS13−1〜S13−N)。具体的には、リトライ回数が1回目(ステップS12−1が「YES」)であれば、基準値VL0よりも大きな値であるVL1をトルクブースト電圧に設定する(ステップS13−1)。リトライ回数が2回目(ステップS12−2が「YES」)であれば、ステップS13−1にてリトライ回数が1回目に設定したVL1よりも大きな値であるVL2を設定する(ステップS13−2)。もしくは、リトライ回数の何回かに1回だけトルクブースト電圧を増加させてもよい。トルクブースト電圧は、上述したように電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの一つであり、トルクブースト電圧が大きい程、電動機3は始動トルクが大きくなる。そのため、リトライ回数に応じてトルクブースト電圧を増加することで、トルク不足による保護停止を抑制できる。
次に、制御装置60は、リトライ回数に応じて、過電流保護レベルを増加させる(ステップS14−1〜S14−N)。例えば、図8に示すように、リトライ回数が0回目、すなわち小停再始動(tr1、図5BのステップS102)の場合、過電流保護レベルは基準値であるAL0である。リトライ回数が1回目(tr3、図9AのステップS12-1が「YES」)の場合、制御装置60は、過電流保護レベルをAL0よりも大きいAL1に設定する(ステップS14−1)。また、制御装置60は、リトライ回数が2回目(tr5、図9AのステップS12-2が「YES」)の場合、過電流保護レベルをAL1よりも大きいAL2に設定する(ステップS14−2)。なお、AL1、AL2はAL0に所定の値を加算もしくは乗算して求めてもよい。
次に、制御装置60は、リトライ実行として、設定したトルクブースト電圧の値及び過電流保護レベルの値を用いてポンプ2を始動させる(ステップS15)。具体的には、制御装置60は、インバータ装置70に対して、設定したトルクブースト電圧でポンプ2を始動させる運転信号を出力する。次にステップS16にて、制御装置60は、ポンプ2が始動して規定揚程にて揚水し正常に給水を行うと判断(ステップS16が「YES」)したら、ポンプ2の正常始動として図9Aの制御フローを終了する。
一方、ステップS16にてポンプ2の規定揚程での揚水運転による給水を判断する前に、過電流トリップやポンプ過熱保護等で正常始動が否定の判断となった場合(ステップS16が「NO」の場合)、制御装置60は、リトライ回数を確認し(ステップS18)、リトライ回数が所定のN回未満の場合(ステップS18が「NO」の場合)であれば、図9Aの制御フローを終了する。リトライ回数がN回以上(ステップS18が「YES」の場合)であれば、リトライ終了を確定させ(ステップS100)、図9Aの制御フローを終了する。ステップS100におけるリトライ終了が確定した後は、図5BのステップS110にて正常始動が「NO」と判断され、更に、ステップS111にてリトライ終了が「YES」と判断され、ステップS112にてポンプ2の故障が確定する。なお、ポンプ2の故障を確定させるまでのリトライ回数であるNは、例えば、N=5程度であり、ユーザーによって設定変更が可能な設定値であるとよい。
ここで、ステップS13−1〜S13−Nにおいて、リトライ回数に応じて、図8に示すようにトルクブースト電圧が高く設定されているため、リトライ回数が増えるほど、始動トルクは大きくなる。また、リトライ回数が増える程、時間が経過するため、吐出し圧力PVは低下している。図8に示すケースでは、1回目のリトライ動作では始動トルク不足によってポンプ2の復帰ができなかったが、2回目のリトライ動作では1回目のリトライ動作のトルクブースト電圧VL1よりも高いトルクブースト電圧VL2が設定され、且つ、吐出し圧力PVがPV1よりも低下しているため、インバータ装置70に流れる電流が設定された過電流保護レベルまで達して保護停止することなくポンプ2による給水を復帰させることができている。このように、リトライ回数に応じて、トルクブースト電圧、および/または、過電流保護レベルを増加させることにより、リトライ回数が増える度に、ステップS15のリトライ実行にてポンプ2が正常始動できる確率が増え、第2始動条件にて始動したポンプの保護停止を抑制し、更には、異常確定による断水を極力回避することができる。なお、本実施形態では、リトライ回数が増えるほどトルクブースト電圧が高く設定されると共に過電流保護レベルを上昇させているが、トルクブースト電圧もしくは過電流保護レベルのどちらか一方のみを上昇させてもよい。
また、制御装置60は、図9Aに示すように、リトライ回数の何回かに一回(例えばリトライ回数が3×m回目:mは自然数)は、ポンプ2を通常の回転方向とは逆方向に回転させてもよい(ステップS17)。すなわち、通常の回転方向では、異常の原因(例えば、羽根車20の固着や異物の噛み込み等)が取り除かれない場合であっても、通常の回転方向とは逆方向にポンプ2(電動機3)を回転させることにより、異常の原因が取り除かれて正常始動ができ、ステップS16が「YES」となるケースがある。これにより、ポンプ2が保護停止(図5BのステップS107)や故障確定(図5BのS112)に至るのを抑制できる。なお、ステップS17にてポンプ2を逆回転させる場合、トルクブースト電圧は、上述したようにリトライ回数に応じた値であってもよいし、逆回転用に予め設定された値を使用してもよい。
このように、上述した第1実施形態の第1の変形例によれば、制御装置60は、ポンプ2を始動させる条件として、ポンプ装置1の保護としてポンプ2を停止状態にて待機させる保護停止(図5BのステップS107)を解除した後に、吐出し圧力PVが始動圧力P0以下である第2始動条件(図5BのステップS108が「YES」)を有し、制御装置60は、図9Aに示すように、第2始動条件にてポンプ2を始動させる回数をリトライ回数としてカウント(ステップS11)すると共に、第1始動条件にて最低値である始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて設定した制御パラメータの値の一つであるトルクブースト電圧をリトライ回数に応じて変更し、第2始動条件が満たされたとき、リトライ回数に応じて変更したトルクブースト電圧に基づいてポンプ2を始動させる、という構成を採用することによって、ポンプ2の保護停止や故障確定を抑制し、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1が得られる。
ここで、図9AのステップS13−1〜S13−Nにおけるトルクブースト電圧の算出方法の一例について、図9Bを参照して説明する。なお、図9Bに示す制御フローは、図9AのステップS13−1のトルクブースト電圧を算出する処理の一例を示している。なお、図9AのステップS13−2〜S13−Nにおいても、同様の処理が行われる。
制御装置60の記憶部63は、リトライ回数に応じてトルクブースト電圧を変更するための係数PL1V,PL2Vを有し、始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて係数PL1V,PL2Vを補正してもよい。始動時吐出し圧力PSは、第1始動条件が満たされたときに推定(図7のステップS4)され、その値は記憶部63に記憶されているとする。
図9Bに示すように、先ず、制御装置60は、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルを判断する(ステップS13−1−1〜S13−1−2)。ここで、本実施形態におけるステップS13−1−1に示す圧力レベルPL1及びステップS13−1−2に示す圧力レベルPL2は、図6(A)に示す圧力レベルPL1、圧力レベルPL2と同じとするが、これに限らず任意の範囲もしくは値としてもよい。但し、PL2はPL1よりも高い値であるとする。
次に、制御装置60は、始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL1の範囲内であればステップS13−1−3にて、また、始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL2の範囲内であればステップS13−1−4にて、リトライ回数が1回目の始動時に電動機3に印加するトルクブースト電圧であるVL1を算出する。
ここで、制御装置60は、ポンプ2の保護停止(図5BのステップS107)を解除した後、第2始動条件が満たされた(図5BのステップS108が「YES」)ときの吐出し圧力PVに応じて、ポンプ2の始動時に印加するトルクブースト電圧(制御パラメータ)を設定してもよい。具体的には、ステップS12−1の判断を行う際の吐出し圧力PVがPV1(図8(A)参照)であるため、ステップS13−1−3では、制御装置60は、吐出し圧力PV(PV1)に応じたトルクブースト電圧VL1Bを設定する。このとき、始動圧力P0と吐出し圧力PV(PV1)の差分に比例してトルクブースト電圧VL1Bを増加させるとよい。また、ステップS12−2〜S12−Nも同様に、ステップS12−2〜S12−Nの判断を行う際の吐出し圧力PVに応じたトルクブースト電圧VL2B〜VLNBを設定するとよい。これにより、VL0<VL1B<VL2B<・・・<VLNBとなる。ステップS12−1〜S12−Nの判断を行う際の吐出し圧力PV(PV1,PV2、、、PVN)は供給先や設置現場等によって異なってくるため、制御装置60は、トルクブースト電圧VL1Bは吐出し圧力PV(PV1、PV2、、、PVN)に応じた所定の値をVL0に加算もしくは乗算することで算出してもよいし、吐出し圧力PVに加えてリトライ回数に応じた所定の値をVL0に加算もしくは乗算することでトルクブースト電圧VL1Bを算出してもよい。
次に、制御装置60は、リトライ回数に応じてトルクブースト電圧を変更する係数PL1V,PL2Vを、始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正する(ステップS13−1−3〜S13−1−4)。具体的には、ステップS13−1−1にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL1の範囲内(ステップS13−1−1が「YES」)であれば、ステップS13−1−3を実行する。ステップS13−1−3に示すPL1Vは、VL1を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL1の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS13−1−3では、係数PL1Vが、リトライ回数や吐出し圧力PVに応じて設定したトルクブースト電圧であるVL1B(図9AのVL1のベース値)に加算される。なお、係数PL1Vは、VL1Bに乗算してもよい。
また、ステップS13−1−2にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL2の範囲内(ステップS13−1−1が「NO」且つステップS13−1−2が「YES」)であれば、ステップS13−1−4を実行する。ステップS13−1−4に示すPL2Vは、VL1を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL2の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS13−1−4では、制御装置60は、係数PL2Vをリトライ回数に応じて設定したトルクブースト電圧であるVL1Bに加算してVL1を算出する。なお、ステップS13−1−4においても、係数PL2Vは、VL1Bに乗算してもよい。これにより、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合よりも高い値であるPL2の場合の方が、ステップS13−1において設定されるトルクブースト電圧VL1を大きな値とすることができる。
なお、係数PL1Vと係数PL2Vは異なる算出式を用いてもよいし、または、リトライ回数が増えるごとに大きな値となるようにしてもよい。また、VL1Bや係数PL1V,PL2Vは、一定の値としてもよいし、先述したように、ポンプ2の始動時の吐出し圧力PVが高い状態の方が、羽根車20の回転が開始し難く始動トルクを要する場合には、始動時吐出し圧力PSがPL1のときのよりもPL2のときのトルクブースト電圧を上げるとよい。具体的には、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合のVL1〜VLN(VLNはN回目のリトライにおけるトルクブースト電圧)よりも、始動時吐出し圧力PSがPL2の場合のVL1〜VLNを大きな値となる係数PL1V,PL2Vとすればよい。
このように、リトライ回数に応じて制御パラメータであるトルクブーストの値を変更するための係数PL1V,PL2Vを、第1始動条件が満たされたときに推定した始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正するとよい。また、本実施形態における始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1と圧力レベルPL2の2通りの算出方法を示したが、これに依らず圧力レベルをX(Xは1以上の任意の自然数)通りとし、圧力レベルPL1〜PLXに対応する係数としてPL1V〜PLXVを算出してもよい。
また、第1実施形態では、次のような第2の変形例を採用し得る。
図10は、第1実施形態の第2の変形例に係る制御装置60により実行されるリトライ動作の一例を示す制御フローである。
図10に示す制御フローは、上述した第1実施形態の図7に示すステップS4−1〜S4−2を、ステップS24−1〜S24−Xに拡張し、ステップS5−1〜S5−2を、ステップS25−1〜S25−Xに置き換えたものである。なお、ここでいうステップS24−X及びステップS25−Xの「X」は、図6では圧力レベルPL1とPL2の2段階に分けた始動圧力P0以下の圧力範囲をX(Xは1以上の任意の自然数)段階に分けたときの、X段階目を意味する。図7に示すステップS1,S2,S3,S4−1〜S4−2,S6と、図10に示すステップS21,S22,S23,ステップS24−1〜S24−X,S26は、同様の処理であるため、説明は省略する。
ステップS25−1〜S25−Xにおいて、制御装置60は、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて、電動機3の回転速度の増加率であるソフトスタート時間を設定する。ソフトスタート時間は、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの一つであり、本実施形態の制御装置60は、電動機3を加速する際に、このソフトスタート時間に基づいて電動機3の回転速度の増加を制限する。ソフトスタート時間は、例えば、電動機3の回転速度が、0の値から所定の回転速度(例えば、最高出力回転速度)に到達する時間とするとよい。ソフトスタート時間が長い程、電動機3の加速を抑制することができ、加速時にインバータ装置70に流れる電流を抑えることできる。制御装置60は、ソフトスタート時間を、始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた値に設定する。
制御装置60は、例えば、図6(A)の実線の例に示すように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1と算出された場合、ソフトスタート時間をST1に設定する。また、制御装置60は、図6(A)の実線の例に示すように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1よりも高い圧力値である圧力レベルPL2と算出された場合、制御装置60は、ソフトスタート時間をST1よりも長いST2に設定する。このように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて、ソフトスタート時間を設定することで、ポンプ2の始動時にインバータ装置70に流れる電流が過電流保護レベルまで達することを抑制できるので、ポンプ2が所定の規定揚程に達するまでに保護停止に至るのを抑制することができる。
ここで、始動時吐出し圧力PSが、PL2よりも小さいPL1であるときに、ソフトスタート時間ST1をST2より小さい値としたが、これに依らず、上述したトルクブースト電圧V1またはV2と同様に、設置環境等によりソフトスタート時間ST1をST2以上の値とする等、始動時吐出し圧力PSに応じたソフトスタート時間が決定されればよい。
なお、図10に示す制御フローと図7に示す制御フローは、並列に実行されてもよい。図10に示す制御フローは、上述した本発明の実施形態の図7に示すステップS4−1〜S4−2を、ステップS24−1〜S24−Xに拡張し、ステップS5−1〜S5−2を、ステップS25−1〜S25−Xに置き換えたものであるが、図10に示す制御フローと図7に示す制御フローとが並列に実行されると、図7にステップS25−1〜S25−Xの処理を追加した制御フローとなる。具体的には、図7のステップS4−1〜S4−2をS4−Xまで拡張し、それに加えてステップS5−1〜S5−2もS5−Xまで拡張する。そして、ステップS5−1〜S5−Xの後に、ステップS25−1〜S25−Xを追加して実行してもよい。
制御装置60は、例えば、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1と算出された場合(ステップS4−1が「YES」の場合)、トルクブースト電圧をV1に設定する(ステップS5−1)とともにソフトスタート時間をST1に設定して(ステップS25−1)、ポンプ2を始動させる(ステップS6)。また、制御装置60は、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1よりも高い圧力値である圧力レベルPL2と算出された場合(ステップS4−2が「YES」の場合)、制御装置60は、トルクブースト電圧をV1より高いV2に設定する(ステップS5−2)とともにソフトスタート時間をST1よりも長いST2に設定して(ステップS25−2)、ポンプ2を始動させるとよい(ステップS6)。
このように、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSの大きさに応じた制御パラメータを設定することで、ポンプ2の始動時にインバータ装置70に流れる電流を抑制し、ポンプ2の保護停止を抑制することが可能となる。なお、第1実施形態における第1の変形例に加えて第2の変形例を実施してもよい。また、トルクブースト電圧の基準値であるVL0は、始動時吐出し圧力PSに依らず一定の値としたり、その値や算出方法を設定部64a等によりユーザーが設定変更できるようにしてもよい。
なお、制御装置60は、設定変更可能な始動圧力P0がユーザーによって設定変更されたときに、該設定された始動圧力P0に応じて、上述した制御パラメータ(例えば図8に示すVL0)を設定(例えば制御パラメータの初期値として設定)変更してもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成及びステップについては同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図11は、第2実施形態に係るポンプ2の吐出し圧力PVと、制御装置60のインバータ制御部60bによる指令周波数との関係の一例を示すタイムチャートである。図11の(A)のタイムチャートでは、縦軸は圧力値、横軸は経過時間を示し、経過時間による吐出し圧力PVの変化を示す。図11の(B)に示すタイムチャートでは、縦軸は周波数、横軸は経過時間を示し、経過時間による制御装置60からインバータ装置70に出力する指令周波数の変化を示す。図12Aは、第2実施形態に係る制御装置60により実行されるリトライ動作(図5BのステップS109)の一例を示す制御フローである。
図11では、小水量停止(tr11、図5BのステップS106)後に、停止圧力P1に加圧された吐出し圧力PVが始動圧力P0以下にまで下がり(tr12、図5BのステップS101が「YES」)、ポンプ2を小停再始動しようとしたときに、過電流トリップ等の不具合にて(図5BのステップS103が「NO」)、ポンプ2が保護停止(tr13、図5BのステップS107)を起こし、その後、リトライ動作(図5BのステップS109)にてポンプ2を始動させ(tr14)たが、ポンプ2が正常始動できず(図5BのステップS110が「NO」)、且つ、リトライ終了でない(図5BのステップS111が「NO」)との判断を経て、再びポンプ2が保護停止(tr15、図5BのステップS107)を起こし、その後、2回目のリトライ動作にてポンプ2を始動させ(tr16、図5BのステップS109)たときに、ポンプ2が正常に始動(tr17、図5BのステップS110が「YES」)したケースを例示している。
図11に示すように、制御装置60は、リトライ回数が1回目の場合、ポンプ2の保護停止(図5BのステップS107)が終了してから始動させるまでの間隔時間をT1に設定する。また、制御装置60は、リトライ回数が2回目の場合、ポンプ2を始動させるまでの間隔時間をT1よりも長いT2に設定する。このように、制御装置60は、リトライ回数に応じて、間隔時間を増加させる。なお、本実施形態では、説明を容易にするために、図5BのステップS107における保護停止は、ポンプ2が停止したら直ちに解除されるものとする。
次に、図11におけるリトライ動作について図12Aにて詳細に説明する。図12Aは、図11に示すtr13もしくはtr15にてポンプ2が停止した後で、ポンプ2の保護停止が解除されたタイミングにて実行される制御フローであり、図5BのステップS109のリトライ動作の詳細を説明した制御フローである。図12Aに示すリトライ動作の制御フローでは、制御装置60は、先ず、リトライ回数をカウントする(ステップS31)。次に、制御装置60は、現在のリトライ回数を判断する(ステップS32−1〜S32−N)。そして、制御装置60は、現在のリトライ回数に応じて、ポンプ2の保護停止を解除したときから、リトライ実行にてポンプ2を再始動させるまでの間隔時間を設定する(ステップS33−1〜S33−N)。
具体的には、リトライ回数が1回目(ステップS32−1が「YES」)では、間隔時間を初期値であるT1に設定(ステップS33−1)し、リトライ回数が2回目(ステップS32−1が「NO」且つステップS32−2が「YES」)では、間隔時間をT1より大きい値であるT2を設定(ステップS33−2)する。このように、リトライ回数が増える毎に間隔時間を増加させる(T1<T2<・・・<TN)とよい。なお、T2からTNは、初期値であるT1に所定の値を加算もしくは乗算して算出した値でもよいし、記憶部63にテーブルを持ち、その値を保有してもよい。
給水先の管路が解放されている状態(例えば、蛇口が開状態)にてポンプ2が始動できずに(図5BのステップS103が「NO」)となり、ポンプ2を保護停止(図5BのステップS107)した後には、蓄圧運転にて加圧されていた吐出し圧力PVが徐々に低下していく。間隔時間を設定してポンプ2を始動するときの吐出し圧力PVが低下していくことで、電動機3の始動トルクが低減される。よって、間隔時間は、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの一つである。
次に、制御装置60は、設定した間隔時間が経過したか否かを判断する(ステップS34)。制御装置60は、間隔時間が経過したら(ステップS34が「YES」)、始動条件を確認(ステップS35aが「YES」)して、リトライ実行を行う(ステップS35)。具体的には、制御装置60は、ステップS34にて間隔時間の間(ステップS34が「NO」の間)は運転不可としてポンプ2を停止状態にて待機させる。制御装置60は、間隔時間が経過したら(ステップS34が「YES」)、運転不可を解除した時点で、始動条件が満たされたか否かを判断する。始動条件が満たされた(ステップS35aが「YES」の場合)と判断したら、ステップS35のリトライ実行の処理にてポンプ2を始動する。ここで、ステップS35aでは、ポンプ2を保護停止させた後に吐出し圧力PVが始動圧力P0以下(第2始動条件)もしくは後述する第3始動条件が満たされた場合に「YES」とし、第2始動条件もしくは第3始動条件が満たされるまではステップS35aを「NO」と判断して待機するとよい。次にステップS36にて、制御装置60は、ポンプ2の揚水運転によって正常始動を確認し、ポンプ2の給水を判断した場合(ステップS36が「YES」の場合)、リトライ動作を終了する。
一方、ステップS36にてポンプ2が規定揚程で揚水できる回転速度まで、回転速度が上昇する前に、過電流トリップ等が発生した場合(ステップS36が「NO」の場合)、制御装置60は、リトライ回数を確認し(ステップS38)、リトライ回数がN回未満の場合(ステップS38が「NO」の場合)であれば、図12Aの制御フローを終了する。リトライ回数がN回以上(ステップS38が「YES」の場合)であれば、リトライ終了(ステップS100)として、図12Aの制御フローを終了し、図5BのステップS110にて正常始動が「NO」となり、ステップS111にてリトライ終了が「NO」の判断がなされ、再びステップS107の保護停止となる。ステップS100にてリトライ終了となると、図5BのステップS110にて正常始動が「NO」となり、ステップS111にて「YES」の判断がなされ、ポンプ2の故障が確定する(ステップS112)。
ここで、ステップS33−1〜S33−Nにおいて、リトライ回数に応じて、間隔時間が長く設定されているため、リトライ回数が増えるほど、リトライ動作が遅れて実行される。図11に示すように、時間の経過と共にポンプ2の吐出し圧力PVが低下していくため、間隔時間が長ければ長くなるほど、電動機3の始動トルクが小さく済む。このように、リトライ回数に応じて、間隔時間を増加させることにより、ポンプ装置1は、リトライ回数が設定回数(例えばN=5)を超えてポンプ2が故障確定する前に、ポンプ2が規定揚程にて運転できる確率が増える。なお、制御装置60は、上述した第1実施形態の第1の変形例と同様に、リトライ回数の何回かに一回(例えばリトライ回数が3×m回目:mは自然数)は、ポンプ2を通常の回転方向とは逆方向に回転させてもよい(ステップS37)。
なお、制御装置60は、ポンプ2の保護停止の判断後に、所定の間(図11のtr13からtr14及びtr15からtr16)はポンプ2を運転不可として、ポンプ2を保護停止の状態にて待機させてもよい。この場合、保護停止による運転不可の時間に加えて間隔時間を設定してもよい。
このように、上述した第2実施形態によれば、制御装置60は、第2始動条件にてポンプ2を始動させる回数をリトライ回数としてカウントすると共に、ポンプ2の保護停止を解除したときからポンプ2を再始動させるまでの間隔時間を、リトライ回数に応じて変更し、第2始動条件が満たされたとき、リトライ回数に応じて変更した間隔時間に基づいてポンプ2を始動させる、という構成を採用することによって、ポンプ2の保護停止を抑制し、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1が得られる。
また、制御装置60は、リトライ回数に応じて間隔時間を変更するための係数PL1T,PL2Tを、第1始動条件が満たされたときに推定した最低値である始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正してもよい。始動時吐出し圧力PSは、上述したように第1始動条件が満たされたとき推定され(図7のステップS4)、記憶部63に記憶されている。具体的に、この処理は、図12Bに示す制御フローに沿って実行される。なお、図12Bに示す制御フローは、図12AのステップS33−1の間隔時間を算出する処理の一例を示している。なお、図12AのステップS33−2〜S33−Nにおいても、同様の処理が行われる。
図12Bに示すように、先ず、制御装置60は、始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルを判断する(ステップS33−1−1〜S33−1−2)。ここで、本実施形態におけるステップS33−1−1に示す圧力レベルPL1及びステップS33−1−2に示す圧力レベルPL2は、図6(A)に示す圧力レベルPL1、圧力レベルPL2と同じとするが、これに限らず任意の範囲もしくは値としてもよい。但し、PL2はPL1よりも高い値であるとする。
次に、制御装置60は、リトライ回数に応じて間隔時間を変更する係数PL1T,PL2Tを、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正する(ステップS33−1−3〜S33−1−4)。具体的には、ステップS33−1−1にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL1の範囲内(ステップS33−1−1が「YES」)であれば、ステップS33−1−3を実行する。ステップS33−1−3に示すPL1Tは、間隔時間T1を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL1の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS33−1−3では、係数PL1Tが、リトライ回数に応じて設定した間隔時間であるT1B(図12AのT1のベース値)に加算される。なお、係数PL1Tは、T1Bに乗算してもよい。
また、ステップS33−1−2にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL2の範囲内(ステップS33−1−1が「NO」且つステップS33−1−2が「YES」)であれば、ステップS33−1−4を実行する。ステップS33−1−4に示すPL2Tは、T1を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL2の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS33−1−4では、係数PL2Tが、リトライ回数に応じて設定した間隔時間であるT1Bに加算される。なお、ステップS33−1−4においても、係数PL2Tは、T1Bに乗算してもよい。これにより、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合よりも高い値であるPL2の場合の方が、ステップS33−1において設定される間隔時間T1を大きな値とすることができる。
なお、この係数PL1Tと係数PL2Tは異なる算出式を用いてもよいし、または、リトライ回数が増えるごとに大きな値となるようにしてもよい。すなわち、給水先にて水が使用されたにも関わらずポンプ2が運転していないときの吐出し圧力PVの低下の傾きは一定であると推測できるため、始動時吐出し圧力PSがPL1のときのよりもPL2のときの方が、ポンプ2の保護停止を解除したときの吐出し圧力PVが大きくなるためである。先述したように、ポンプ2の始動時の吐出し圧力PVが高い状態の方が、羽根車20の回転が開始し難く始動トルクを要する場合には、始動時吐出し圧力PSがPL1のときのよりもPL2のときの間隔時間を長くするとよい。具体的には、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合のT1〜TN(TNはN回目のリトライにおける間隔時間)よりも、始動時吐出し圧力PSがPL2の場合のT1〜TNを大きな値となる係数PL1T,PL2Tとすればよい。
このように、リトライ回数に応じて制御パラメータである間隔時間の値を変更するための係数PL1T、PL2Tを、第1始動条件が満たされたときに推定した始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正するとよい。また、本実施形態における始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1と圧力レベルPL2の2通りの算出方法を示したが、これに依らず圧力レベルをX(Xは1以上の任意の自然数)通りとし、圧力レベルPL1〜PLXに対応する係数としてPL1T〜PLXTを算出するとよい。
また、第2実施形態では、次のような変形例を採用し得る。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成及びステップについては同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図13Aは、第2実施形態の第1の変形例に係る制御装置60により実行される第3始動条件の確認の一例を示す制御フローである。
図13Aに示す制御フローは、リトライ動作(図5BのステップS109)におけるポンプ2の始動条件である第2始動条件が満たされ、更に、吐出し圧力PVが始動圧力P0未満に設定された後述するリトライ開始圧力RPL以下である第3始動条件を満たしたケースを示す。例えば、図13Aに示す制御フローは、図12Aに示すステップS35aにて第2始動条件の判断後に実行されてもよいし、図5BのステップS108の第2始動条件の判断時に実行されてもよい。制御装置60は、第3始動条件の判断として、吐出し圧力PVが、図11に示すリトライ開始圧力RPLにまで低下したか否かを判断する(ステップS41)。
リトライ開始圧力RPLとは、始動圧力P0より低い圧力値であり、リトライ動作によって始動トルク不足にならない圧力であることが好ましい。このリトライ開始圧力RPLは、ユーザーによって設定変更可能な設定値としてもよいし、リトライ回数に応じて制御装置60にて変更してもよい。また、保護停止時の吐出し圧力PVから所定の値を減算もしくは除算することでリトライ開始圧力RPLを算出してもよい。制御装置60が、リトライ開始圧力RPLをリトライ回数に応じて変更する場合は、リトライ回数が増えるとリトライ開始圧力RPLは小さい値となるとよい。
制御装置60は、吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPL以下にまで低下していない場合(ステップS41が「NO」の場合)、吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPL以下に低下するまで待機する。リトライ実行によるポンプ2の始動時の吐出し圧力PVが高い状態の方が、羽根車20の回転が開始し難く始動トルクを要するので、吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPLに下がったタイミングで(ステップS41が「YES」)リトライ動作を行う(ステップS42)ことで、始動圧力P0にてポンプ2を始動する場合と比べて、ポンプ2の始動時のトルク不足による保護停止を抑制することができる。
図13AのステップS42に示す処理を、上述した図5BのステップS109のリトライ動作に適用する例を説明する。この処理は、図13Bに示すフローに沿って実行されるとよい。なお、図13Bに示すフローは、上述した図5BのステップS107(保護停止)からステップS109(リトライ動作)までに代えて実行される処理を示している。具体的には、上述した第2始動条件(ステップS108が「YES」)に加えて、図13AのステップS41に示す第3始動条件が満たされたとき(ステップS108−1が「YES」の場合)に、図5BのステップS109のリトライ動作を実行するとよい。これにより、リトライ実行しポンプ2を始動するときに吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPL以下に低下しているので、ポンプ2の始動時のトルク不足による保護停止を抑制することができる。また、第2始動条件が否定の判断(ステップS108が「NO」)または、図13AのステップS41に示す第3始動条件が否定の判断(ステップS108−1が「NO」)の場合には、ステップS107の保護停止に戻る。
また、図13AのステップS42に示す処理を、上述した図12AのステップS35のリトライ実行に適用する例について説明する。具体的には、図12AのステップS35aでは、図13AのステップS41に示す第3始動条件が満たされたとき(ステップS41が「YES」の場合)に、図12AのステップS35のリトライ実行の処理をするとよい。また、図13AのステップS41において吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPLより大きい場合は、第3始動条件が否定の判断(ステップS108−1が「NO」)となり、吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPL以下となるまで待機する。
このように、ポンプ2の始動条件には、第2始動条件に加えて、吐出し圧力PVが始動圧力P0未満に設定されたリトライ開始圧力RPL以下である第3始動条件が含まれるとよい。これにより、第3始動条件が満たされてポンプ2を始動する時に吐出し圧力PVがリトライ開始圧力RPL以下に低下しているので、ポンプ2の始動時のトルク不足による保護停止を抑制することができる。
また、第2実施形態では、次のような第2の変形例を採用し得る。
図14は、第2実施形態の第2の変形例に係るポンプ2の吐出し圧力PVと、制御装置60からインバータ制御部60bへの指令周波数との関係の一例を示すタイムチャートである。図14の(A)に示すタイムチャートは、縦軸は圧力、横軸は経過時間であり、経過時間による吐出し圧力PVの変化を示す。図14の(B)に示すタイムチャートは、縦軸は周波数、横軸は経過時間であり、経過時間による制御装置60からインバータ装置70に対する指令周波数の変化を示す。図15Aは、第2実施形態の第2の変形例に係る制御装置60により実行されるリトライ動作(図5BのステップS109)の一例を示す制御フローである。
図14では、上述した第2実施形態と同様に、小水量停止(tr20、図5BのステップS106)後に、停止圧力P1に加圧されたポンプ2の吐出し圧力PVが停止圧力P1から始動圧力P0にまで下がり(tr21、図5BのステップS101が「YES」)、第1始動条件が満たされてポンプ2を小停再始動(図5BのステップS102)しようとしたときに、始動トルク不足によってポンプ2が始動できず(図5BのステップS103が「NO」)に、ポンプ2が保護停止(tr22、図5BのステップS107)を起こし、その後、第2始動条件が満たされ、リトライ動作(図5BのステップS109)にてポンプ2を再始動させるケースを例示する。
制御装置60は、ポンプ2を再始動させるリトライ回数に応じて、ソフトスタート時間を増加させる。例えば、図14に示すように、リトライ回数が0回目(tr21)、すなわち第1始動条件が満たされた小停再始動の場合、ソフトスタート時間は基準値であるST0である。リトライ回数が1回目(tr23)の場合、制御装置60は、ソフトスタート時間をST0よりも長いST11に設定する。また、制御装置60は、リトライ回数が2回目(tr25)の場合、ソフトスタート時間をST11よりも長いST12に設定する。なお、ST11、ST12はST0に所定の値を加算もしくは乗算して求めてもよいし、上述した図10にて、ポンプ2の始動時吐出し圧力PSに応じて設定した値(ST1〜STN)をST0として、このST0に所定の値を加算もしくは乗算して求めてもよい。
ここで、ソフトスタート時間は、上述したように、電動機3の駆動制御に関連する制御パラメータの一つであり、ソフトスタート時間が長い程、電動機3の加速を抑制することができ、加速時に必要なインバータ装置70に流れる電流を抑えることできる。本実施形態では、一例として、ソフトスタート時間は、図14に示すように、設定圧力PAとするときのインバータ制御部60bによる指令周波数をPAFとしたときに、初期値(ゼロ)からその指令周波数PAFに達するまでにかける指令時間の長さ(例えば、tr25〜tr26までのST12)に対応している。ただし、ソフトスタート時間は、指令周波数PAFによらず、例えば、電動機3の回転速度が、0(ゼロ)の値から所定の回転速度(例えば、最高出力回転速度)に到達する時間としてもよい。
次に、図14におけるリトライ動作について図15Aにて詳細に説明する。図15Aに示すリトライ動作の制御フローは、ポンプ2を保護停止した(tr22、tr24)後、当該保護停止が解除されたときに(tr23、tr25)、吐出し圧力PVが始動圧力P0以下と判断して開始されるフローであり、図5BのステップS109のリトライ動作の詳細を説明した制御フローである。図15Aに示すリトライ動作の制御フローでは、制御装置60は、先ず、リトライ回数をカウントする(ステップS51)。次に、制御装置60は、現在のリトライ回数を判断する(ステップS52−1〜S52−N)。そして、制御装置60は、現在のリトライ回数に応じて、ソフトスタート時間を設定する(ステップS53−1〜S53−N)。
次に、制御装置60は、設定したソフトスタート時間に基づき、リトライ実行を行う(ステップS54)。具体的には、制御装置60は、ポンプ2を始動し、ソフトスタート時間の増加率によって電動機3を加速し、ポンプ2の吐出し圧力PVが設定圧力PAとなるよう運転を行う。次にステップS55にて、制御装置60は、ポンプ2の規定揚程での揚水運転となる正常始動を確認し、ポンプ2の給水を判断した場合(ステップS55が「YES」の場合)、図15Aの制御フローを終了する。一方、ステップS55にてポンプ2の規定揚程による給水を判断する前に、過電流トリップ等で正常始動を確認できない場合(ステップS55が「NO」の場合)、制御装置60は、リトライ回数を確認し(ステップS57)、リトライ回数がN回未満の場合(ステップS57が「NO」の場合)であれば、図15Aの制御フローを終了する。リトライ回数がN回以上(ステップS57が「YES」の場合)であれば、ポンプ2の故障を確定させるためリトライ終了(ステップS100)として、図15Aの制御フローを終了する。
ここで、ステップS53−1〜S53−Nにおいて、リトライ回数に応じて、ソフトスタート時間が長く設定されているため、リトライ回数が増える程、電動機3の加速に伴う電流を抑えることができるので、インバータ装置70に流れる電流が設定された過電流保護レベルまで達して保護停止することを抑制できる。このように、リトライ回数に応じて、ソフトスタート時間を増加させることにより、リトライ回数が設定回数Nを超える前に、ポンプ2が復帰できる確率が増える。なお、制御装置60は、上述した第1実施形態の第1の変形例と同様に、リトライ回数の何回かに一回(例えばリトライ回数が3×m回目:mは自然数)は、ポンプ2を通常の回転方向とは逆方向に回転させてもよい(ステップS56)。
このように、上述した第2実施形態の第2の変形例によれば、制御装置60は、図15Aに示すように、第2始動条件にてポンプ2を始動させる回数をリトライ回数としてカウント(ステップS51)すると共に、第1始動条件にて最低値である始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて設定した制御パラメータの値の一つであるソフトスタート時間をリトライ回数に応じて変更し、第2始動条件が満たされたとき、リトライ回数に応じて変更したソフトスタート時間に基づいてポンプ2を始動させる、という構成を採用することによって、ポンプ2の保護停止や故障確定を抑制し、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1が得られる。
また、制御装置60は、リトライ回数に応じてソフトスタート時間を変更するための係数PL1ST,PL2STを、第1始動条件が満たされたときに推定した最低値である始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正してもよい。始動時吐出し圧力PSは、上述したように第1始動条件が満たされたとき推定され(図7のステップS4)、記憶部63に記憶されている。具体的に、この処理は、図15Bに示す制御フローに沿って実行される。なお、図15Bに示す制御フローは、図15AのステップS53−1のソフトスタート時間を算出する処理の一例を示している。なお、図15AのステップS53−2〜S53−Nにおいても、同様の処理が行われる。
図15Bに示すように、先ず、制御装置60は、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルを判断する(ステップS53−1−1〜S53−1−2)。ここで、本実施形態におけるステップS53−1−1に示す圧力レベルPL1及びステップS53−1−2に示す圧力レベルPL2は、図6(A)に示す圧力レベルPL1、圧力レベルPL2と同じとするが、これに限らず任意の範囲もしくは値としてもよい。但し、PL2はPL1よりも高い値であるとする。
次に、制御装置60は、リトライ回数に応じてソフトスタート時間を変更する係数PL1ST,PL2STを、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正する(ステップS53−1−3〜S53−1−4)。具体的には、ステップS53−1−1にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL1の範囲内(ステップS53−1−1が「YES」)であれば、ステップS53−1−3を実行する。ステップS53−1−3に示すPL1STは、ST11を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL1の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS53−1−3では、係数PL1STが、リトライ回数に応じて設定したソフトスタート時間であるST11B(図15AのST11のベース値)に加算される。なお、係数PL1STは、ST11Bに乗算してもよい。
また、ステップS53−1−2にて始動時吐出し圧力PSにおける圧力レベルがPL2の範囲内(ステップS53−1−1が「NO」且つステップS53−1−2が「YES」)であれば、ステップS53−1−4を実行する。ステップS53−1−4に示すPL2STは、ST11を算出するための係数であって、第1始動条件が満たされたときの始動時吐出し圧力PSもしくは圧力レベルPL2の大きさに応じて算出されるとよい。ステップS53−1−4では、係数PL2STが、リトライ回数に応じて設定したソフトスタート時間であるST11Bに加算される。なお、ステップS53−1−4においても、係数PL2STは、ST11Bに乗算してもよい。これにより、ステップS53−1では、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合よりもPL2の場合の方が、ソフトスタート時間ST11を大きな値とすることができる。
なお、この係数PL1STと係数PL2STは異なる算出式を用いてもよいし、または、リトライ回数が増えるごとに大きな値となるようにしてもよい。すなわち、給水先にて水が使用されたにも関わらずポンプ2が運転していないときの吐出し圧力PVの低下の傾きは一定であると推測できるため、始動時吐出し圧力PSがPL1のときのよりもPL2のときの方が、ポンプ2の保護停止を解除したときの吐出し圧力PVが大きくなるためである。先述したように、ポンプ2の始動時の吐出し圧力PVが高い状態の方が、羽根車20の回転が開始し難く始動トルクを要する場合には、始動時吐出し圧力PSがPL1のときのよりもPL2のときのソフトスタート時間を長くするとよい。具体的には、制御装置60は、始動時吐出し圧力PSがPL1の場合のST11〜ST1Nよりも、始動時吐出し圧力PSがPL2の場合のST11〜ST1Nを大きな値となる係数PL1ST,PL2STとすればよい。
このように、リトライ回数に応じて制御パラメータであるソフトスタート時間の値を変更するための係数PL1ST,PL2STを、第1始動条件が満たされたときに推定した始動時吐出し圧力PSの大きさに応じて補正するとよい。また、本実施形態における始動時吐出し圧力PSが圧力レベルPL1と圧力レベルPL2の2通りの算出方法を示したが、これに依らず圧力レベルをX(Xは1以上の任意の自然数)通りとし、圧力レベルPL1〜PLXに対応する係数としてPL1ST〜PLXSTを算出してもよい。
また、上述した図12Aの処理に、図15Aの処理を追加してもよい。具体的には、図15Cに示すように、ステップS33−1〜S33−Nの後にステップS53−1〜S53−Nを実施してソフトスタート時間にST11〜ST1Nを設定し、ステップS35aにて第2始動条件(「YES」の場合)を満たしたら、ステップS35にてリトライ実行を実施するとよい。このように、リトライ回数に応じて間隔時間とソフトスタート時間を変更することによって始動時のポンプ2の保護停止を抑制し、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1が得られる。 さらに、図15Cの処理に、図13Aの処理を追加してもよい。具体的には、ステップS35aにて、上述した第3始動条件が満たされたときに、図13Aに示すフローを実行するとよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成及びステップについては同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図16は、第3実施形態に係る制御装置60により実行される制御パラメータ初期化の一例を示す制御フローである。
第3実施形態では、上述した各実施形態において変更した制御パラメータを、ポンプ2の運転中に小停再始動にて用いた初期の制御パラメータに戻す制御フローについて説明する。上述したリトライ動作(図5BのステップS109)にて始動時の過渡的な状態による保護停止を回避(図5BのステップS110が「YES」)でき、その後、継続して給水を行う(図5BのステップS104)ときには、リトライ動作にて変更した制御パラメータを初期の制御パラメータ(小停再始動時の制御パラメータ)に戻すことで、適切にポンプ2を運転することができる。
具体的には、図8に示すケースでは、2回目のリトライ動作で設定したトルクブースト電圧VL2をポンプ2による給水が復帰した後にトルクブースト電圧VL0に戻す。このように、リトライ時に変更したトルクブースト電圧を小停再始動時のトルクブースト電圧に下げることで、最適な「Vf制御」で電動機3を駆動することができるので、電動機3の駆動エネルギーの省力化ができる。また、図15Aに示すリトライ回数に応じて設定したソフトスタート時間ST11〜ST1Nを、図14に示すST0に戻すとよい。ソフトスタート時間が短くなることで、給水先での流量変動に伴う吐出し圧力PVの追従性が向上する。なお、図16のフローを実行中にポンプ2が小水量停止または保護停止した場合は、図16のフローを中断する。
図16に示す制御フローは、図5BのステップS110「YES」の判断後に実行され、図5BのステップS104と並行して実施される。図5BのステップS110「YES」の判断は、上述した図9AのステップS16「YES」、図12AのステップS36「YES」、図15AのステップS55「YES」などに対応するステップである。制御装置60は、ポンプ2が揚水運転で正常に給水を行っていることを確認するために、吐出し圧力PVが所定の規定揚程の圧力の付近まで達しているかを確認するとよい。また、吐出し圧力PVが下降から上昇に転じて所定時間経過した、もしくは、フローセンサ35bにて過少水量で無い且つ吐出し圧力PVが所定の圧力に達した等を確認するとよい。
ステップS62では、制御装置60は、電動機3に供給する電流(具体的には、電流センサ72の測定値)が所定の電流制限レベル以下であるか否かを判断する。図8におけるtr5からtr6に示すように、ポンプ2の始動時には過渡的にインバータ装置70に流れる電流が上昇する。また、ポンプ2の羽根車20に異物が挟まってロックしたりして電動機3の負荷が正常範囲より大きくなった場合には、インバータ装置70に流れる電流が上昇するため、制御装置60は、インバータ装置70に流れる電流が所定の電流制限レベル以下である場合(ステップS62が「YES」の場合)に電動機3の負荷が正常範囲内であると判断して、次のステップS63に移行する。一方、ステップS62の判断が「NO」の場合、制御装置60は、インバータ装置70に流れる電流が所定の電流制限レベル以下になるまで待機する。ここで、電流制限レベルは、過電流トリップの閾値である過電流保護レベル(例えば、AL0、AL1、AL2等)より小さい値であり、ポンプ2が規定揚程で給水を行った際にインバータ装置70に流れる電流にマージンを加えた値とするとよい。
次のステップS63では、制御装置60は、ポンプ2に流れる水量が所定の水量以上であるか否かを判断する。具体的には、制御装置60は、フローセンサ35bが過少水量Qmin以下を検知したか否かを判断する。制御装置60は、フローセンサ35bが過少水量Qminを検知しておらずポンプ2に流れる水量が過少水量以上である場合(ステップS63が「YES」の場合)は、ポンプ2が揚水運転にて給水していると判断して、次のステップS64に移行する。一方、ステップS63の判断が「NO」の場合は、ポンプ2が揚水していないか、もしくは、供給先に先にて水の使用がなくなり圧力タンク43に蓄圧するのみであり、蓄圧運転後はポンプ2が小水量停止され制御フローを抜ける。ステップS63の判断が「NO」の場合は、制御装置60は、ステップS62の判断に戻る。ポンプ2に流れる水量が少ない場合は、インバータ装置70に流れる電流が少なく該電流が電流制限レベル以下であっても正常に揚水を行えているか否かの判断が困難となるため、ステップS63では、制御装置60は、ポンプ2に流れる水量を確認する。ただし、正常に揚水を行えているか否かの判断ができるのであれば、ステップS63は省略してもよい。
次のステップS64では、制御装置60は、インバータ装置70に流れる電流が電流制限レベル以下および/またはフローセンサ35bが過少水量Qminを検知していない状態(ステップS62および/またはステップS63が「YES」)にて、所定時間経過したか否かを判断する。制御装置60は、所定時間が経過した場合(ステップS64が「YES」の場合)、次のステップS65に移行する。一方、ステップS64の判断が「NO」の場合、ステップS62に戻り、制御装置60は、インバータ装置70に流れる電流が電流制限レベル以下および/またはフローセンサ35bが過少水量Qminを検知していない状態になったことを確認しつつ、所定時間が経過するまで待機する。
ステップS62〜S64においていずれも「YES」の場合、制御装置60は、異常の原因が取り除かれたと判断し、制御パラメータを初期化する(ステップS65)。具体的には、上述したリトライ動作(図5BのステップS109)にて変更した各種制御パラメータを小停再始動(図5BのステップS102)にて用いた制御パラメータに戻す。一方、ステップS62〜S64においていずれか一つが「NO」の場合、未だ異常の原因が取り除かれていない可能性があるため、制御装置60は、リトライ動作時に変更した制御パラメータを継続して用いる。
このように、上述した第3実施形態によれば、ポンプ2と、ポンプ2を駆動する電動機3と、電動機3に電力を供給するインバータ装置70と、インバータ装置70に制御信号を出力してポンプの動作を制御する制御装置60と、を備えるポンプ装置1であって、制御装置60は、電動機の駆動制御に関連する制御パラメータを変更する制御パラメータ変更手段と、インバータ装置70に流れる電流が、設定された電流制限レベル以下に一定時間収まっている場合および/または過少水量Qminを検知していない状態で一定時間経過した場合に、変更した制御パラメータを小停再始動時の制御パラメータに戻すリセット手段と、を有する、という構成を採用することによって、制御パラメータが変更された後に、メンテナンス作業者がわざわざ現場に行って制御パラメータのリセット作業を行わなくてもよくなり、ポンプ装置1の利便性が高くなる。また、ポンプ2の始動時には、ポンプ2の軸封部の摺動面の摩擦等によりトルク不足が発生するため、ポンプ2が正常始動して運転し、一定時間電流が安定してしまえば、リトライ動作時に変更した各種制御パラメータを小停再始動時の値に戻すことができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
例えば、上述した各実施形態の制御フローの組み合わせ、置換は適宜可能である。
また、例えば、上述した各種の制御パラメータは、制御装置60の記憶部63に記憶されるとともにI/O部61より設定変更が可能とするとよい。なお、リトライ動作時に用いる上述した各種の制御パラメータの値は、第2始動条件を判断する前に算出してもよい。例えば、制御装置60は、保護停止(図5BのステップS107)やリトライ終了(図5BのステップS111)したとき等の第2始動条件(図5BのステップS108)を判定する前に、制御パラメータの値を算出して記憶部63に保存し、リトライ動作(図5BのステップS109)には、記憶部63に保存した制御パラメータの値に基づいてポンプ2を始動させるとよい。
また、上記実施形態で説明したポンプ装置1は、1台のポンプを備えるものであったが、ポンプの数は2台以上であっても良い。その場合、電動機3並びにインバータ装置70は、ポンプの台数に応じた数だけ設ければ良い。更にインバータ装置70は始動するポンプに接続を切り替えて用いてもよい。また、ポンプ2はカスケードポンプによらずターボポンプであればよい。
図17は、本開示のポンプ装置1の第1使用例を示す模式図である。
図17に示すポンプ装置1は、水供給源である井戸103aから水を汲み上げ、建物101の中の異なる高さの複数の蛇口102に対して給水を行う構成となっている。ポンプ装置1は、地上103に設置されており、蛇口102aは地上103から高さh1で設置され、蛇口102bは地上103から高さh2で設置され、蛇口102cは地上103から高さh3で設置されている。蛇口102の設置高さが高いほど、小停再始動時のポンプ2の始動時吐出し圧力PSが高くなり、ポンプ2の保護停止が起こり易くなる。そのため、小停再始動時にどの蛇口102a〜102cが開かれたかによって最適な制御パラメータが異なるため、このような使用例の場合に、本開示のポンプ装置1を設置すると効果が高い。
図18は、本開示のポンプ装置1の第2使用例を示す模式図である。
図18に示すポンプ装置1は、地上ユニット170と水中モータポンプ180とを備えており、これら地上ユニット170と水中モータポンプ180とが揚水管TBによって接続された構成である。このようなポンプ装置1は、いわば上述したポンプ2及び電動機3を水中モータポンプ180としてユニットカバー6の外部に設けたものであり、例えば深井戸DWから水を汲み上げるのに適したものである。水中モータポンプ180は、例えば、片吸込遠心形または斜流形の深井戸用水中モータポンプであるポンプ181の下部に水中三相誘導電動機である電動機182を軸継手によって直結している。
地上ユニット170は、概して上述したポンプ装置1からポンプ2及び電動機3を省略した構成である。具体的に、地上ユニット170は、ユニットベース5上に固定された制御装置60及び圧力タンク43、これらを覆うユニットカバー6、制御装置60の上部に設けられた表示器制御部140、及びユニットカバー6に取り付けられた表示器150を備える。尚、図18では、ユニットカバー6内にて、用水の流路を形成するケーシングや配管及び圧力タンク43の図示を省略している。このような地上ユニット170は、水中モータポンプ180から揚水される水を、揚水管TBを介し、更には、吐出し管111を介して給水先に給水する。
地上ユニット170は、表示器制御部140と表示器150との間で第1近距離通信C1を行って、ポンプ装置1の状態を示す情報をユニットカバー6に取り付けられた表示器150に表示することが可能である。また、地上ユニット170は、外部表示器160と第2近距離通信C2を行って、ポンプ装置1の状態を示す情報を外部表示器160の表示画面DPに表示することが可能である。
水中モータポンプ180は、ポンプ181及び電動機182を備える外径形状が略円柱形状のものであり、水中に没した状態で使用される。ポンプ181は、例えばステンレス製のポンプであり、電動機182によって駆動される。電動機182は、制御装置60の制御の下で、ポンプ181を駆動する。水中モータポンプ180は、例えば図18に示す通り、窪み101から下方に掘られた深井戸DWにおいて、水面WLよりも下方に位置する(水中に没する)ように配置され、揚水管TBを介して地上ユニット170に水を揚水する。尚、電動機182は、揚水管TBと略平行に配線される水中ケーブル(図示省略)を介して地上ユニット170に接続される。制御装置60にて演算された制御信号及び電動機182の電力は、この水中ケーブルを介して電動機182に入力されるようになっている。また、ポンプ181の吐出し流路である揚水管TBまたは吐出し管111には、不図示の圧力センサと流量検出器が取り付けられており、ポンプ181の吐出し圧力は該圧力センサによって検出され、ポンプ181の流量(過少水量Qmin以下)は該流量検出器によって検出される。これら圧力センサと流量検出器は、制御装置60のI/O部61(図5A参照)に電気的に接続されている。
以上の通り、図18に示すポンプ装置1は、第1近距離通信C1及び第2近距離通信C2が可能な表示器150をユニットカバー6の上面115Uに取り付け、ポンプ装置1の状態を示す情報を、表示器150から外部表示器160に第2近距離通信C2によって送信して外部表示器160の表示画面DPに表示するようにしている。これにより、ポンプ装置1が作業性の悪い環境に設置されていたとしても、ユニットカバー6を外すことなく、運転状態や警報等の多様な情報を容易に確認することができる。尚、表示器150に代えて、通信器を適用することができ、更には、表示器150のために形成されたユニットカバー6の窓部115aを省略し、通信器との間のNFCが可能な部位(視認可能部)である旨を示すマークをユニットカバー6の上面に付すのが望ましい。このような構成であっても、本発明を適用すれば、ポンプ181の始動時に保護停止に至るのを抑制できるため、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1となる。
図19は、本開示のポンプ装置1の第3使用例を示す模式図である。
図19に示すポンプ装置1は、2台のポンプ2を備えている。2台のポンプ2は、2つに分岐した吸込流路34に並列接続されている。2つに分岐した吸込流路34の上流側は合流して、水源110に接続された吸込口7と連通している。2台のポンプ2の下流側には、それぞれチェッキ弁35a及びフローセンサ35bが配置され、これら2台のフローセンサ35bの下流側で吐出流路41が合流し、該合流した吐出流路41には、ポンプ2の吐出し圧力PVを検出する圧力センサ42と圧力タンク43が設けられている。圧力センサ42にて検出されたポンプ2の吐出し圧力PVは、信号線を介してポンプ制御部60a(図4参照)に入力される。
ユニットカバー6の内部には、2台のポンプ2をそれぞれ駆動する2台の電動機3と、2台の電動機3にそれぞれ電力を供給する2台のインバータ装置70が設けられている。インバータ制御部60bは、2台のインバータ装置70に対応して2台設けられている。一方、ポンプ制御部60aは、1台であり、2台のインバータ制御部60bを統括して制御し、2台のインバータ装置70に対して、2台のポンプ2の制御信号をそれぞれ出力する。このような構成においては、図5BのステップS102の小停再始動時に1台もしくは複数台のポンプ2が起動されるとよい。また、供給先の使用水量の変化に伴い、ポンプ2の運転台数を追加したり解列したりするとよい。また、このような構成であっても、本発明を適用すれば、ポンプ2が始動時に保護停止に至るのを抑制できるため、断水を極力避けることができる利便性の高いポンプ装置1となる。なお、ユニットカバー6は、インバータ装置70とポンプ制御部60aのみを収容してもよい。