JP2019127555A - 表面改質高強度繊維及びその製造方法並びに樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

表面改質高強度繊維及びその製造方法並びに樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 樹脂との親和性が良く、その強度が劣化することが無く、樹脂組成物としての機能を向上させた表面改質した繊維の製造法、及びその繊維を含有する樹脂組成物の製造法の提供【解決手段】 本発明の表面改質高強度繊維の製造方法は、プラズマ処理して繊維表面に官能基を生成させた高強度繊維に、環状酸無水物又はジイソシアネートを反応させることを特徴とする。また、本発明の表面改質高強度繊維は、高強度繊維の表面を末端にカルボキシル基を有する有機化合物がエステル結合又はアミド結合した表面改質高強度繊維又は高強度繊維の表面を末端にイソシアネート基を有する有機化合物がウレタン結合又はウレア結合した表面改質高強度繊維である。【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維と樹脂からなる樹脂組成物に関し、具体的には、表面改質された繊維に関する。
石油資源を中心とした環境負荷低減への取り組みが進むのに伴い、自動車や航空機の燃費向上への要求が高まっている。それに対し、軽量化を目的としてアラミド繊維や炭素繊維を使用した繊維強化プラスチック(FRP)によるバンパーやバックドア等で一部金属代替が始まっている。しかしながら、FRPの物理的強度は鉄などの金属に比べると低く、また、繊維と樹脂の複合材であるため、繊維と樹脂との界面接着が良好でない場合、クラックの発生や耐衝撃性が低下するという問題がある。また、そのような界面接着性の問題があるため、FRPそのものの強度も繊維本来の強度に比べると低い値に留まっており、繊維表面と樹脂との接着性向上が課題となっている。
すなわちアラミド繊維や炭素繊維などの繊維は、分子構造上繊維表面に官能基が非常に少ないため、樹脂との親和性が低く結合しにくい。そのため、樹脂と強固に結合できず、樹脂が繊維表面を覆っているだけの状態になり、衝撃や応力等が加わると繊維表面と樹脂との界面で剥離が起こって空隙ができやすい。
繊維と樹脂の接着性を向上させる公知の方法として、カップリング剤を用いることが多いが、アラミド繊維等は分子構造上繊維表面に官能基が非常に少ないため、カップリング剤がアラミド繊維などに作用せず、接着力は向上しにくい。
特許文献1には、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させるために、炭素繊維に反応性ガスを吹き付けてプラズマ処理し、表面にカルボキシル基と酸無水物を導入した表面処理炭素繊維に関する開示がある。
一方、本発明者らはプラズマ処理により活性炭の表面を処理して表面疎水性の活性炭を製造する方法に関して特許出願を行っている(特許文献2)。
また、本発明者らはプラズマ処理によりアラミド繊維、炭素繊維等の高強度繊維表面の改質し、樹脂組成物を製造する検討を進めてきたが、高強度繊維をプラズマ処理して樹脂組成物を製造しても、プラズマ処理によって繊維表面に生成する水酸基やアミノ基が有する活性水素の寿命は短く、時間経過とともに失活し、繊維と樹脂の接着性が低下するという課題があった。
WO2016/093250号 特開2017−160074号公報
高強度繊維をプラズマ処理して樹脂組成物を製造しても、繊維と樹脂の接着性が繊維処理後の時間経過とともに低下するという課題があった。本発明の目的は、樹脂との親和性が良く、その強度が劣化することが無く、樹脂組成物としての機能を向上させた表面改質した繊維の製造法、及びその繊維を含有する樹脂組成物の製造法を提供することにある。
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、以下の技術的手段で構成される。
〔1〕 プラズマ処理して繊維表面に官能基を生成させた高強度繊維に、環状酸無水物又はジイソシアネートを反応させることを特徴とする表面改質高強度繊維の製造方法。
〔2〕 高強度繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを特徴とする前記〔1〕に記載の表面改質高強度繊維の製造方法。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載の方法で製造した表面改質高強度繊維を樹脂に含有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
〔4〕 樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする前記〔3〕に記載の樹脂組成物の製造方法。
〔5〕 高強度繊維の表面を末端にカルボキシル基を有する有機化合物がエステル結合又はアミド結合した表面改質高強度繊維。
〔6〕 高強度繊維の表面を末端にイソシアネート基を有する有機化合物がウレタン結合又はウレア結合した表面改質高強度繊維。
〔7〕 前記〔5〕及び/又は前記〔6〕に記載の表面改質高強度繊維を含有する樹脂組成物。
本発明の表面改質高強度繊維の製造方法は、高強度繊維をプラズマ処理によって高強度繊維の表面に生成した水酸基やアミノ基が有する活性水素と環状酸無水物又はジイソシアネートを添加するだけで反応させて化学処理を施すことで、エステル結合やアミド結合を有した化合物に変換し、官能基の失活を抑制することができ、一定期間経過後に樹脂組成物を作製しても高い接着強度を維持することができる。
本発明の表面改質高強度繊維およびその製造方法によれば、製造される表面改質高強度繊維は、末端にカルボキシル基を有する有機化合物がエステル結合若しくはアミド結合した表面改質高強度繊維又は末端にイソシアネート基を有する有機化合物がウレタン結合若しくはウレア結合した表面改質高強度繊維であり、繊維が表面処理され繊維と樹脂との親和性が向上する。また、本発明の樹脂組成物は、高強度繊維の表面に存在する有機物の末端カルボキシル基又は末端イソシアネート基が樹脂と反応して繊維と樹脂とが強固な共有結合を形成するため、繊維表面と樹脂との界面接着性が向上し、配合された樹脂組成物の強度を向上することができる。また、本発明で処理した高強度繊維は経時変化による失活を抑制できるため、製造される樹脂組成物は、繊維の処理後一定期間を経ても樹脂との接着性は低下することがなく、強度を維持することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
本発明の表面改質繊維の製造方法は、高強度繊維をプラズマ処理して繊維表面に官能基を生成させた高強度繊維に、環状酸無水物又はジイソシアネートを反応させることを特徴とする。
本発明に用いる高強度繊維は、炭素繊維及びポリアミド(ナイロン、アラミドなど)などであり、繊維表面の官能基が少なく、引っ張り強度などの繊維自体の物理的強度が高いものである。繊維の処理自体はプラズマ処理が可能な繊維であれば特に制限はないが通常の繊維は表面に官能基が存在することが多いため、アラミド繊維や炭素繊維のような表面に官能基が少ない繊維の方がより効果的である。
また、これらの繊維を2種類以上混合してプラズマ処理をしてもよい。
本発明の繊維の形態については、撹拌しながらプラズマ処理及び化学処理(前記環状酸無水物又はジイソシアネートを反応させる処理)ができるものであれば特に制限はなく、チョップドファイバー、ミルドファイバーのような短繊維から、フィラメントなどの長繊維が選択できる。本発明では、樹脂組成物のフィラーとして表面改質高強度繊維を用いることが好ましいので、短繊維を原料として用いる場合が多い。
本発明に用いられるプラズマ処理は、プラズマ照射できれば特に制限はなく、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理などのプラズマ処理が適用できる。繊維表面に均一にプラズマ照射できる方が、繊維上により多くの官能基を生成することができるため、好ましくは、撹拌しながらプラズマ処理する方法が良く、撹拌しながら繊維表面全体を処理可能な回転式の真空プラズマ発生装置や、撹拌釜中で下から大気圧プラズマを含んだ気泡を供給する流動床式プラズマ処理装置を用いて処理するのがより効果的である。
プラズマ処理の時間は装置の大きさや繊維の投入量にもよるが、表面が活性化され、かつ過度に物理的エッチングが進行しない程度であればよく、1〜120分の範囲であり、好ましくは5〜60分、さらに好ましくは10〜30分が望ましい。
プラズマ処理時の導入ガスは、例えば、空気、酸素、水蒸気、アンモニア、窒素、水素、二酸化炭素、ヘリウムなど通常の導入ガス、またはその混合ガスが使用できるが、本発明においては、プラズマ処理後に環状酸無水物又はジイソシアネートで化学処理を行うため、繊維表面が水酸基、またはアミノ基に改質される、酸素、アンモニア、水蒸気などがよい。
本発明に用いられるプラズマ処理後の化学処理については、基本的には、プラズマ処理後にアラミド繊維に生成するアミノ基や水酸基、カルボキシル基等が有する活性水素と反応する化合物である環状酸無水物又はジイソシアネートである。両末端に官能基を有する化合物、例えば、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸、及びジエステルをプラズマ処理した高強度繊維と反応させることもできるが、それらを反応させるには反応助剤がないと通常反応しない。しかし、本発明に用いる環状酸無水物又はジイソシアネートは、反応助剤なしで添加するだけでプラズマ処理によって高強度繊維の表面に生成した水酸基、アミノ基等が有する活性水素と反応して化学処理することができる。
本発明の表面改質繊維は、化学処理後の繊維表面に官能基を有する。例えば、ジイソシアネートの場合は、プラズマ処理した繊維上の水酸基とウレタン結合を形成し、アミノ基とウレア結合を形成して反応し、反応した側と反対側の末端にイソシアネート基が残っている。環状酸無水物の場合は、プラズマ処理した繊維上の水酸基やアミノ基と反応し、環状酸無水物の開環によるエステル結合やアミド結合を有した化合物となる。反応した側と反対側の末端の官能基はカルボキシル基となる。これらのウレタン結合、ウレア結合又はエステル結合、アミド結合を有した化合物が存在することにより官能基の失活を抑制することができ、一定期間経過後に樹脂組成物を作製しても高い物理強度を維持することができる。
化学処理に用いる環状酸無水物としては芳香族、脂環式のいずれでもよく、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、グルタル酸無水物、ナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4−無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸などがある。また、環状酸無水物を2つ以上分子内に有する環状酸無水物でピロメリット酸二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート、3,3‘,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などのポリイミド、ポリアミドイミド原料を用いることができる。
化学処理に用いる両末端に官能基を有する化合物であるジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を例示することができる。
化学処理に用いる環状酸無水物又はジイソシアネートの中でも、好ましい化合物は、環状酸無水物である。環状酸無水物は繊維上に水酸基やアミノ基があると開環してエステル結合やアミド結合を含んだ化合物になる。その反対側はカルボン酸として官能基が残っているので、特に熱硬化性樹脂と反応しやすくなる。また、繊維上の官能基がアミノ基である場合、環状酸無水物を2つ以上分子内に有する分子構造であると、反応後にポリイミドと同じ構造を持つことになるため、さらに物理的強度だけでなく、耐熱性も向上する。
一方、無水プロピオン酸のような脂肪族の酸無水物は水酸基やアミノ基と反応すると、カルボン酸が脱離して末端に官能基が残らないため、樹脂と反応しにくくなる。また、環状酸無水物の構造が複雑になると、繊維上の官能基との反応性が悪くなるため、好ましくは、適度な分子量を持つ無水コハク酸や、ポリイミドの結合を形成するピロメリット酸二無水物などがよい。
本発明に用いられるプラズマ処理後の化学処理については、非水系の溶剤中で行うのが望ましい。ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど芳香族炭化水素、クロロホルム、クロルベンゼン、1.1.1―トリクロルエタン、1.2−ジクロロエタン、1.2−ジクロロプロパンなどのハロゲン系の溶媒が使用できる。この反応は水分があると水分子と反応するため、使用する溶媒は蒸留して無水化するか、溶媒の沸点以上で還流を行いながら反応させるのがより好ましい。
本発明に用いられるプラズマ処理後の化学処理については、反応に必要な温度と時間があればよい。反応温度は室温から化学処理を行う環状酸無水物又はジイソシアネートの分解点以下であればよい。処理時間は処理容器の大きさや繊維の投入量にもよるが、5分〜24時間の範囲であり、好ましくは30分〜15時間であり、さらに好ましくは1時間〜12時間が望ましい。
表面改質高強度繊維の化学処理は、プラズマ処理後の繊維を2種類以上混合して化学処理をしてもよい。
表面改質した繊維は、X線光電子分光(XPS)、滴定、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)等の手法を用い、処理前の繊維と比較することで、処理の可否を判断することができる。
以上、説明した本発明の表面改質高強度繊維の製造方法により、製造された表面改質高強度繊維は、高強度繊維の表面を末端にカルボキシル基を有する有機化合物がエステル結合又はアミド結合した表面改質高強度繊維又は高強度繊維の表面を末端にイソシアネート基を有する有機化合物がウレタン結合又はウレア結合した表面改質高強度繊維である。
さらには、前記表面改質高強度繊維を含有する樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物である。
続いて、前記方法で製造した表面改質高強度繊維を樹脂に含有させて樹脂組成物を製造する方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は、本発明の表面改質高強度繊維を樹脂に混合することによって製造することができる。本発明の表面改質高強度繊維は、1種類であっても良いし、表面改質高強度繊維を2種類以上混合して化学処理をしたものであっても良いし、別々に化学処理した表面改質高強度繊維を樹脂への混合時に混合して使用してもよい。
本発明の表面改質繊維を樹脂と混合することによって、高強度樹脂組成物を得ることができる。繊維の添加量は、樹脂組成物の1〜80体積%、好ましくは10〜70体積%、より好ましくは20〜60体積%である。1体積%より少ないと強度向上が得られない。また、繊維の配合量は多い方が強度は高くなるが、ある一定量以上になると樹脂が繊維表面を覆うことができず強度が低下するため、上限は80体積%以下が好ましい。
本発明の表面改質繊維と混合する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ABS,ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。好ましくは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などと反応するエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が望ましい。熱可塑性樹脂においても、分子鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などと反応する官能基を導入することにより接着性が向上する。
本発明の表面改質高強度繊維を樹脂と混合する方法として、熱可塑性樹脂のように混合前の樹脂が固体の場合は、これらと表面改質高強度繊維を紛体で混合した後、ニーダーや二軸押出機などを用いて溶融混合する乾式プロセス、あるいは、樹脂を適切な溶剤に溶解して表面改質繊維と混合・撹拌またはホモジナイザーやビーズミルを用いた分散処理をする湿式プロセスで行うことができる。これらの方法は、用いる樹脂の性状によって適宜選択することができる。
また、一部のエポキシ樹脂モノマーやフェノール樹脂モノマーのように硬化前の状態が液状のモノマーの場合は、液状モノマーと表面改質繊維とを撹拌羽根、または3本ロールやニーダー、ホモジナイザー、ビーズミル、ボールミルなどを用いて混合できる。また、適切な溶剤または希釈剤で希釈した樹脂と表面改質繊維をホモジナイザーや撹拌羽根、ビーズミル、ボールミルなどを用いて分散処理できる。
前記樹脂組成物は、必要に応じてさらにフィラー、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤、重合開始剤、物性を調整するための高分子化合物または低分子化合物を含むことができる。
樹脂の成形に関しては、熱可塑性樹脂であれば、押し出し成形、射出成形など、熱硬化性樹脂に関しては、射出成形、トランスファー成形、注型など、または本発明の処理を施した高強度繊維を用いた織布などの基材に熱硬化性樹脂を含浸し、乾燥後にプレス成形するなど一般的な成形方法が適用できる。熱硬化性樹脂は硬化剤等と混合し、金型またはプレス内で加熱硬化することで、樹脂組成物が作製できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。
(実施例1)
(アラミド繊維のプラズマ処理1)
回転式小型真空プラズマ装置(魁半導体製:YHS−DφS)の中に、アラミド繊維のチョップドファイバー(東レ・デュポン製:ケブラー(登録商標)、0.6mm長)を10g投入し、回転速度を8rpmで60分間処理を行った。導入ガスはO/HOとした。投入前は繊維が凝集した塊が見られたが、処理後は凝集が少なくなり、残った凝集もスパチュラ等で触れると崩れるようになった。プラズマ処理後のアラミド繊維のX線光電子分光(XPS)を測定したところ、酸素濃度が上昇していたことより、アラミド繊維表面に水酸基が生成しているものと考える。
(アラミド繊維の化学処理)
300mlのナス型フラスコにトルエンを100ml加え、上記でプラズマ処理を行ったアラミド繊維を2g投入した。さらに、無水コハク酸(ナカライテスク製:無水コハク酸)0.02gを添加し、室温中、500rpmで2時間撹拌した。
撹拌を停止し沈殿した繊維を濾別してトルエン100mlで洗浄後、105℃で2時間乾燥した(表面改質アラミド繊維とする)。得られた表面改質アラミド繊維のX線光電子分光(XPS)を測定したところ、酸素および炭素濃度が上昇していたことより、無水コハク酸でエステル化処理されたアラミド繊維が得られているものと考えられる。
(表面改質繊維を含む樹脂組成物の作製)
PETフィルム上に50mm角の金枠を置き、表面改質アラミド繊維を20重量部量り取って枠に入れ、プレス機でゲージ圧20MPa/30秒、40MPa/30秒、室温で加圧して素形体を得た。ビスフェノールA型エポキシ(三菱化学製:Ep828) 51重量部とフェノールノボラック(DIC製:TD2090)28重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(ナカライテスク製:2E4MZ)1重量部を乳鉢でよく混ぜ合わせ、PETフィルムに500mm角に塗布した。エポキシ樹脂を塗布したPETフィルムを、素形体の上に重ね、乾燥機で120℃/4分間乾燥すると、素形体にエポキシ樹脂が含浸した。素形体を取り出し、真空プレス機で140℃/0.1MPa/5分間、180℃/0.5MPa/2時間プレスを行い、アラミド繊維添加量17vol%のエポキシ樹脂組成物を得た。
(実施例2)
(アラミド繊維のプラズマ処理2)
実施例1で作製したプラズマ処理において導入ガスをNHにする以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。NHプラズマ処理後のアラミド繊維のX線光電子分光(XPS)を測定したところ、窒素濃度が上昇していたことより、アラミド繊維表面にアミノ基が生成しているものと考える。また、無水コハク酸処理後の表面改質アラミド繊維のX線光電子分光(XPS)を測定したところ、酸素および炭素濃度が上昇していたことより、無水コハク酸でアミド化されたアラミド繊維が得られているものと考えられる。
(比較例1)
アラミド繊維にプラズマ処理及び化学処理をしない以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。
(比較例2)
アラミド繊維にプラズマ処理を行う際に導入ガスをO/HOとし、化学処理を行わない以外は、比較例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。
(比較例3)
アラミド繊維にプラズマ処理を行う際に導入ガスをNHとし、化学処理を行わない以外は、比較例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。
(曲げ強度)
曲げ試験はミネベア製「LTS−1kNB」を用いて、JIS C 6481(1996)に準拠して測定した。試料の厚さh及び幅wをそれぞれ0.01mm単位で測定した。次に、支点間距離(16h±0.5mm)で試料を支え、その中央部に加圧具で力を加え、試料が折れたときの力を1Nの精度で測定した。試料に力を加える速度は、2h±0.2mm/分とした。比較例1の曲げ強度を100としたときの各測定強度の割合を%で示した。
Figure 2019127555
表1に示すように、比較例1と比較例2および比較例3では、プラズマ処理をすることによりエポキシ樹脂組成物の強度が向上している。これは、XPSでの測定結果より、プラズマ処理によって表面に水酸基やアミノ基が生成し、それがエポキシ樹脂と反応したため、未処理のものと比較して強度が向上したと考えられる。しかしながら、その効果は持続せず、プラズマ処理後1か月経過すると、曲げ強度は未処理のものと同程度まで低下する。
それに対し、実施例1では、プラズマ処理をO/HOガスで行い、無水コハク酸で化学処理することによって、曲げ強度が1.5倍に向上した。アラミド繊維表面の水酸基が無水コハク酸によってエステル化され、強固な結合を形成することによってエポキシ樹脂との接着性も向上し、曲げ強度も向上したと考えられる。一方、実施例2において、プラズマ処理をNHガスで行い、無水コハク酸で化学処理したところ、曲げ強度は比較例3と同程度であったが、処理後1か月経過しても曲げ強度は110%程度を保持していた。このことより、アラミド繊維の表面改質自体はできており、無水コハク酸処理によって活性の低下が抑えられているためと考えられる。
(処理1か月経過後成形品)
本発明による表面処理が経時変化で失活するかどうかを確認するため、各種処理を行った後、室温にて1か月放置し、その後実施例1と同様に樹脂組成物を作製し、曲げ強度を測定した。
その結果、実施例1、2のプラズマ処理後に化学処理を行ったものは、強度の低下がほとんどなかったのに対し、プラズマ処理だけのもの(比較例2、3)は未処理のもの(比較例1)と同等レベルにまで低下した。これはプラズマ処理表面が時間の経過とともに失活したためと考える。
本発明の表面改質繊維は、プラズマ処理後に環状酸無水物又はジイソシアネートで化学処理を行うことにより、樹脂との親和性が向上し、配合された樹脂組成物の繊維と樹脂との界面接着性を改善することができる。それにより物理強度の優れた熱硬化性樹脂組成物を提供できる。



Claims (7)

  1. プラズマ処理して繊維表面に官能基を生成させた高強度繊維に、環状酸無水物又はジイソシアネートを反応させることを特徴とする表面改質高強度繊維の製造方法。
  2. 高強度繊維が、アラミド繊維又は炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質高強度繊維の製造方法。
  3. 請求項1又は2のいずれかに記載の方法で製造した表面改質高強度繊維を樹脂に含有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  4. 樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 高強度繊維の表面を末端にカルボキシル基を有する有機化合物がエステル結合又はアミド結合した表面改質高強度繊維。
  6. 高強度繊維の表面を末端にイソシアネート基を有する有機化合物がウレタン結合又はウレア結合した表面改質高強度繊維。
  7. 請求項5及び/又は請求項6に記載の表面改質高強度繊維を含有する樹脂組成物。



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