JP7418247B2 - 炭素繊維及び炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高引張強度の炭素繊維及びその製造方法に関する。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系繊維、レーヨン系繊維、セルロース系繊維及びピッチ系繊維等から製造された前駆体繊維を焼成して製造される。例えば、ポリアクリロニトリル系繊維から製造された前駆体繊維を利用して炭素繊維を製造する場合、酸素を含む雰囲気中(耐炎化炉内)で前駆体繊維を加熱する耐炎化工程、耐炎化工程を経た繊維(以下、「耐炎化繊維」という。)を不活性雰囲気中(炭素化炉)で加熱する炭素化工程が行われる。なお、上記加熱は、耐炎化炉及び炭素化炉を繊維が通過(走行)することで行われる。
炭素化工程における加熱は例えば電気ヒータを利用している。つまり、炉内雰囲気を電気ヒータで加熱して、この加熱された炉内を耐炎化繊維が通過することで、耐炎化繊維を間接的に加熱している。
炭素化工程における温度条件や繊維の延伸条件等を調整して、引張特性や圧縮特性等の種々の特性を有する炭素繊維を提供している(例えば、特許文献1,2)。
特開平10-25627号公報 特開2002-54031号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載のように、炭素化工程の温度条件や延伸条件を調整しても高引張強度特性を有する炭素繊維が得られていない。
本発明は、上記した課題に鑑み、より高い引張強度を有する炭素繊維及び当該炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たす炭素繊維である。
29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
ただし、「TM」は炭素繊維の引張弾性率[GPa]であり、「O/C」はX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度であり、「N/C」はX線光電子分光法により測定される表面窒素濃度である。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、炭素化工程後にエネルギを付与して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造方法であって、前記エネルギ付与は、下記の式(1)の関係を満たすように、行われる。
29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
ただし、「TM」は炭素繊維の引張弾性率[GPa]であり、「O/C」はX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度であり、「N/C」はX線光電子分光法により測定される表面窒素濃度である。
本発明の一態様に係る炭素繊維は、高引張強度を有する。
本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、高引張強度の炭素繊維を製造できる。
炭素繊維の製造工程を示す概略図である。 表面処理装置の概略図である。 強度パラメータと繊維の引張強度との関係を示す図である。 他の形態の表面処理装置の概略図である。 他の形態の表面処理装置の概略図である。 他の形態の表面処理装置の概略図である。 他の形態の表面処理装置の概略図である。 他の形態の表面処理装置の概略図である。
<<概要>>
発明者らは、プラズマを利用して炭素化された繊維の表面改質の検討を行っている。なお、表面改質により、複合材料とした際の炭素繊維とマトリクス樹脂との接着力が向上する。
炭素繊維とマトリクス樹脂との接着力は、炭素繊維の表面に形成される官能基の量に影響される。接着力は、マトリクス樹脂の種類で異なるが、炭素繊維表面の炭素原子に対する酸素原子の存在比を示す表面酸素濃度(O/C)の量で規定することができる。
発明者らは、さらに、表面改質を目的に、炭素繊維表面の炭素原子に対する窒素原子の存在比を示す表面窒素濃度(N/C)に着目して検討を進めた。
その結果、表面酸素濃度(O/C)、表面窒素濃度(N/C)及び炭素繊維の引張弾性率で規定される関係式において、一定の範囲内にある場合に、炭素繊維の引張強度が高くなることを見出した。
本発明の一態様に係る炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たす炭素繊維。
29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
ただし、「TM」は炭素繊維の引張弾性率[GPa]であり、「O/C」はX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度であり、「N/C」はX線光電子分光法により測定される表面窒素濃度である。
本発明の一態様に係る炭素繊維は、前記引張弾性率が240GPa以上である。これにより、所謂、汎用品以上の炭素繊維の引張強度を高めることができる。
本発明の一態様に係る炭素繊維は、引張強度が5,000MPa以上である。これにより、高強度の炭素繊維を得ることができる。
本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、炭素化工程後にエネルギを付与して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造方法であって、前記エネルギ付与は、下記の式(1)の関係を満たすように、行われる。
29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
ただし、「TM」は炭素繊維の引張弾性率[GPa]であり、「O/C」はX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度であり、「N/C」はX線光電子分光法により測定される表面窒素濃度である。
本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、前記エネルギはプラズマである。これにより、容易に表面処理を行うことができる。また、引張強度を高めることができる。
<実施形態>
一実施形態の表面処理装置を利用した表面処理方法、炭素繊維の製造方法について説明する。ここでは、前駆体繊維の一例であるアクリロニトリル系繊維を用いる。
1.炭素繊維の製造工程
図1は、炭素繊維の製造工程を示す概略図である。
炭素繊維は、前駆体繊維であるプリカーサを用いて製造される。1本のプリカーサは、複数本、例えば、12,000本のフィラメントが束になったものである。場合によっては、前駆体繊維束や炭素繊維束ということもある。
プリカーサ1aは、アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した紡糸溶液を湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法において紡糸した後、水洗・乾燥・延伸して得られる。なお、共重合する単量体としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、アクリルアミド、イタコン酸、マレイン酸等が利用される。
通常、プリカーサ1aを製造する速さと、プリカーサ1aを炭素化して炭素繊維を製造する速さが異なる。このため、製造されたプリカーサ1aは、一旦、カートンに収容されたり、ボビンに巻き取られたりする。
プリカーサ1aは、図1に示すように、例えばボビン30から引き出され、下流側に向かって走行する。その途中で、各種の処理がなされて、炭素繊維としてボビン39に巻き取られる。
炭素繊維は、図1に示すように、プリカーサ1aを耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化された繊維(以下、「耐炎化繊維」という)1bを延伸させながら炭素化する炭素化工程と、炭素化された繊維1dの表面を改善する表面処理工程と、表面が改善された繊維(以下、「表面処理された繊維」ともいう)1eに樹脂を付着させるサイジング工程と、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる乾燥工程とを経て製造される。乾燥された繊維1gは、炭素繊維1gとしてボビン39に巻き取られる。なお、炭素繊維1gは炭素化された繊維1dに対して少なくとも表面処理を施した繊維であり、炭素化工程を終え且つ表面処理工程を経ていない炭素化された繊維1dと区別する。
ここで、プリカーサ1aを耐炎化する処理を耐炎化処理、耐炎化繊維1bを炭素化する処理を炭素化処理、炭素化された繊維1dの表面を改善する処理を表面処理、表面処理された繊維1eに樹脂を付着させる処理をサイジング処理、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる処理を乾燥処理とそれぞれいう。以下、処理、工程について説明する。
(1)耐炎化工程(耐炎化処理)
耐炎化工程は、炉内が200~350[℃]の酸化性雰囲気に設定された耐炎化炉3を利用して行う。具体的には、耐炎化は、空気雰囲気中の耐炎化炉3内をプリカーサ1aが1回又は複数回通過することで行われる。なお、酸化性雰囲気は、酸素、二酸化窒素等を含んでいてもよい。
耐炎化工程中のプリカーサ1aは、製造する炭素繊維1gに合わせて所定の張力で延伸される。耐炎化工程での延伸倍率は、例えば、0.7~1.3の範囲内である。プリカーサ1aの延伸は複数のローラにより行われる。例えば、延伸は、耐炎化炉3の入口側の2個のローラ5,7や出口側の3個のローラ9,11,13により行われる。
(2)炭素化工程(炭素化処理)
炭素化工程は、耐炎化繊維1bを加熱することで熱分解反応を生じさせて炭素化を行う工程であり、不活性雰囲気中で、最高温度が300~1,800[℃]で処理される。
炭素化は、耐炎化繊維1bが第1の炭素化炉15を通過し、さらに、第1の炭素化炉15を通過した繊維1cが第2の炭素化炉17を通過することで行われる。
ここで、第1の炭素化炉15で行われる炭素化を「第1の炭素化」や「第1の炭素化工程」とし、同様に、第2の炭素化炉17で行われる炭素化を「第2の炭素化」や「第2の炭素化工程」とする。
第1の炭素化は例えば最高温度が300~800[℃]で処理され、第2の炭素化は例えば最高温度が500~1,800[℃]で処理される。炭素化工程の加熱には、例えば、電気ヒータ、マイクロ波、プラズマ等が利用される。
第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17とは互いに独立した形態で設けられ、各炭素化炉15,17の間には繊維の張力を調整する調整手段を設けることができる。
第1の炭素化炉15の入口側にはローラ19が、第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17との間にはローラ21が、第2の炭素化炉17の出口側にはローラ23がそれぞれ設けられている。
具体的には、第1の炭素化工程では50~200[g/dtex]、第2の炭素化工程では200~1,000[g/dtex]のテンションを負荷することが好ましい。この範囲でテンションを負荷することで、より強度の高い炭素繊維1gを得ることができる。なお、炭素化された繊維1dの密度は1.5~1.9[g/cm]であり、1.75~1.82[g/cm]であることが好ましい。繊維1dの直径は4~11[μm]である。
(3)表面処理工程(表面処理)
表面処理工程は、炭素化された繊維1dが表面処理装置25内を通過することで行われる。表面処理装置25の出口側にはローラ26が設けられている。表面処理することで、炭素繊維1gを利用して複合材料とした場合、炭素繊維1gとマトリックス樹脂との親和性や接着性が向上する。
表面処理は、一般的に、炭素化された繊維1dの表面を酸化することにより行われる。表面処理として大気圧プラズマが利用されている。なお、表面処理装置25については後述する。
(4)サイジング工程(サイジング処理)
サイジング工程は、例えば、表面処理された繊維1eが樹脂液29内を通過することで行われる。樹脂液29は、樹脂浴27に貯留されている。サイジング工程により、表面処理された繊維1eの収束性が高まる。
サイジング工程中の表面処理された繊維1eは、樹脂浴27の内部や樹脂浴27の周辺に配された複数のローラ31,33等により走行方向を変更しながら樹脂液29内を通過する。樹脂液29として、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を溶剤に溶解させた液やエマルション液が利用される。
(5)乾燥工程(乾燥処理)
乾燥工程は、繊維1fが乾燥炉35内を通過することで行われる。なお、乾燥した繊維1gは、乾燥炉35の下流側のローラ37を介してボビン39に巻き取られる(巻取工程である。)。
2.表面処理装置
表面処理装置25は、図2に示すように、炭素化された繊維1dの走行方向に延伸する筒状の筒部251と、筒部251の長手方向の中間部分に設けられ且つ大気圧プラズマを照射する照射部255とを有する。なお、炭素化された繊維1dは筒部251内を走行する。
(1)筒部
筒部251は、例えば、円形状、楕円形状、長円形状の無角形状、矩形状、方形状、六角形等の多角形状等の横断面形状を有する。
筒部251の走行方向の全長は、照射部255の走行方向の寸法に対して、100~10,000倍が好ましく、200~2,000倍がより好ましい。筒部251の全長は、筒部251におけるプラズマ照射方向の寸法(直径)に対して、20~2,000倍が好ましく、40~400倍がより好ましい。筒部251の全長は、走行方向に100~10,000[mm]が好ましく、200~2,000[mm]がより好ましい。
ここでの筒部251は、その長手方向の中央(中間部分)に貫通孔253を有し、当該貫通孔253を利用して照射部255から大気圧プラズマが筒部251内に照射される。
筒部251は、横断面において、走行するすべての炭素化された繊維1dの合計の断面積に対して、5~4×10倍の内部空間を有する。
貫通孔253は、スリット形状、円形状又は楕円形状、或いは5角形等の多角形をしている。スリット形状は、炭素化された繊維1dの走行方向と交差する方向、又は走行方向と平行な方向に延伸してもよい。ここでのスリット形状は、走行方向と直交する方向に延伸している。ここでの貫通孔253は1個形成されている。
なお、貫通孔253は、プラズマ発生部位からみると、当該貫通孔253を介して炭素化された繊維1dが見える状態で設けられることが好ましい。
(2)照射部
照射部255は、例えば、誘電体バリア放電を利用している。照射部255は、少なくとも一方の電極に誘電体が配される一対の電極と、一対の電極の周辺に窒素と酸素との混合ガスを供給するノズルとを備え、ノズルから供給される混合ガス中であって大気圧下で一対の電極により放電させることで、プラズマを発生させる。
一対の電極として、例えば、平板状の対向電極(平行平板電極)を利用している。対向電極は、例えば、炭素化された繊維1dの走行方向と交差する方向、又は走行方向と平行な方向に延伸する状態で、配置されている。ここでは、スリット形状の貫通孔253に対応して、走行方向と直交する方向に配されている。
発生したプラズマは、ノズルからのガスにより筒部251の貫通孔(照射口)253から内部へと照射される。これにより、筒部251の内部を走行する炭素化された繊維1dに対して大気圧プラズマが照射される。
3.表面処理エネルギ
表面処理で利用されるプラズマのエネルギ(表面処理エネルギ)は、炭素化工程の処理温度やテンション等よって異なるが、下記の(1)式で表される強度パラメータを満たすように、与えられる。
29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
ここで、
O/C:XPSにより測定される表面酸素濃度
N/C:XPSにより測定される表面窒素濃度
TM :JIS R 7606に準拠して測定される炭素繊維の引張弾性率(GPa)
である。なお、式(1)中の「(O/C+N/C)×TM」の値を「強度パラメータ」とする。
表面処理エネルギは、炭素化工程の処理温度が高いほど、高い傾向にある。なお、供給ガスが窒素と酸素との混合ガスの場合、表面処理エネルギが高くなる程、表面酸素濃度が高くなる傾向にある。
表面処理エネルギは、炭素化工程の最高温度が1,200~1,400℃の場合、5~100(MJ/kg)の範囲内が好ましい。炭素化工程の最高温度が1,200~1,400℃の場合、表面酸素濃度が0.050~0.127の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。炭素化工程の最高温度が1,200~1,400℃の場合、表面窒素濃度が0.034~0.036の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。
このような表面処理エネルギを炭素化された(炭素化工程を終えた)繊維1dに与えることで、引張強度の高い炭素繊維が得られると共に複合材料にした際の炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性を高めることができる。
表面処理エネルギは、炭素化工程の最高温度が1,400~1,600℃の場合、20~350(MJ/kg)の範囲内が好ましい。炭素化工程の最高温度が1,400~1,600℃の場合、表面酸素濃度が0.039~0.086の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。炭素化工程の最高温度が1,400~1,600℃の場合、表面窒素濃度が0.026~0.036の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。
このような表面処理エネルギを炭素化された繊維1dに与えることで、引張強度の高い炭素繊維が得られると共に複合材料にした際の炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性を高めることができる。
表面処理エネルギは、炭素化工程の最高温度が1,600~2,000℃の場合、45~680(MJ/kg)の範囲内が好ましい。炭素化工程の最高温度が1,600~2,000℃の場合、表面酸素濃度が0.030~0.077の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。炭素化工程の最高温度が1,600~2,000℃の場合、表面窒素濃度が0.020~0.032の範囲内になるように、表面処理エネルギが設定されていることが好ましい。
このような表面処理エネルギを炭素化された繊維1dに与えることで、引張強度の高い炭素繊維が得られると共に複合材料にした際の炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性を高めることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
ここでは、炭素化された繊維1dを表面処理する表面処理工程について説明する。
まず、実施例及び比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
<炭素化された繊維1d>
実施例では、3種類の炭素化された繊維1dを使用した。
繊維1dは、24,000本の前駆体繊維(プリカーサ)1aを酸化性雰囲気中で200~350[℃]で処理する耐炎化工程を経た後に、不活性雰囲気中で温度が300~800[℃]の第1の炭素化工程と、最高温度が1,300[℃]、1,400[℃]又は1,800[℃]の第2の炭素化工程を経て製造された3種類である。
第2の炭素化工程の最高温度が1,300[℃]の繊維1dでは、炭素化された繊維1dの密度が1.80[g/cm]、繊維1dの直径は6.9[μm]、表面酸素濃度が0.047であり、表面窒素濃度が0.035である(表1の比較例1を参照)。第2の炭素化工程の最高温度が1,400[℃]の繊維1dでは、炭素化された繊維1dの密度が1.76[g/cm]、繊維1dの直径は6.4[μm]、表面酸素濃度が0.037であり、表面窒素濃度が0.018である(表2の比較例3を参照)。第2の炭素化工程の最高温度が1,800[℃]の繊維1dでは、炭素化された繊維1dの密度が1.81[g/cm]、繊維1dの直径は5.0[μm]、表面酸素濃度が0.029であり、表面窒素濃度が0.013である(表3の比較例5を参照)。
<表面酸素濃度(O/C)>
表面処理後の表面処理された繊維1eの表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従ってXPS(ESCA)によって求めることができる。測定には、日本電子株式会社製X線光電子分光装置ESCA JPS-9000MXを使用した。繊維をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6[Pa]の真空度に保った。
測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギ値B.E.を284.6[eV]に合わせる。O1sピーク面積は、527~540[eV]の範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、281~297[eV]の範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。C1sピークに対するO1sピークの感度補正係数として2.6865を用いた。炭素繊維表面の表面酸素濃度(O/C)は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。
<表面窒素濃度(N/C)>
表面処理後の表面処理された繊維1eの表面窒素濃度(N/C)は、次の手順に従ってXPS(ESCA)によって求めることができる。測定には、日本電子株式会社製X線光電子分光装置ESCA JPS-9000MXを使用した。繊維をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6[Pa]の真空度に保った。
測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギ値B.E.を284.6[eV]に合わせる。N1sピーク面積は、395~405[eV]の範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、281~297[eV]の範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。C1sピークに対するN1sピークの感度補正係数として0.97507を用いた。炭素繊維表面の表面窒素濃度(N/C)は、上記N1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求めた。
<表面処理>
表面処理装置25は筒部251と照射部255とを有する。照射部255としてリモート式大気圧プラズマ表面処理装置を1台利用し、当該1台の照射部255の上流側に600[mm]の上流側筒部と、下流側に300[mm]の下流側筒部とを有する。これらの筒部251の断面形状は矩形とし、投入している繊維の全断面積に対する筒部251の内部空間の断面積の比は40である。
表面処理装置25(筒部251)内を走行する炭素化された繊維1dの速度(供給速度)を調整したり、一対の電極に印加する電力(表面処理装置出力)を調整したりすることで、表面処理エネルギを調整できる。
<表面処理エネルギ>
表面処理エネルギは、繊維1dに付与するエネルギを繊維1dの単位時間当たりの処理量で除したものであり、以下の(2)式から算出できる。
=P×W×L/(A×LD×V×1,000,000) (2)
ここで、
:表面処理エネルギ(MJ/kg)
:表面処理装置の総出力(W)
:炭素繊維束の幅(m)
:照射部長さ(m)
:表面処理エネルギを供与する総断面積(m
LD:炭素繊維束の単位質量(kg/m)
:炭素繊維束の供給速度(m/s)
である。
<炭素繊維特性>
引張弾性率TMは、JIS R 7606に準拠して測定している。
引張強度TSは、JIS R 7606に準拠して測定している。
〔実施例1〕
1,300℃で炭素化された繊維1dを用いた。
繊維1dは、単繊維繊度が0.67dtexであり、単繊維数が24,000本である。繊維1dの引張強度は4,520MPaであり、引張弾性率は226GPaであった(比較例1参照)。また、繊維1dの密度は1.80g/cmであった。
炭素化された上記繊維1dに対して、酸素と窒素を含む混合ガス中でプラズマを用いて表面処理を行った。混合ガス中の窒素比率は99.3%であり、酸素比率が0.7%であった。表面処理エネルギは7MJ/kgであった。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.060であり、表面窒素濃度は0.036であった。繊維1eの引張弾性率は228GPaであり、引張強度は5,020MPaであった。このときの強度パラメータは、21.9であった。
上記の表面処理を行うことで、表面処理を行わなかった比較例1に対して、繊維の引張強度が1.11倍になった。これらの結果等を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例1で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、15MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.091であり、表面窒素濃度は0.034であった。繊維1eの引張弾性率は230GPaであり、引張強度は5,580MPaであった。このときの強度パラメータは、28.8であった。
上記の表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.23倍になった。これらの結果等を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例1で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、30MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.099であり、表面窒素濃度は0.035であった。繊維1eの引張弾性率は248GPaであり、引張強度は5,270MPaであった。このときの強度パラメータは、33.2であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.17倍になった。これらの結果等を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例1で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、60MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.114であり、表面窒素濃度は0.036であった。繊維1eの引張弾性率は232GPaであり、引張強度は5,180MPaであった。このときの強度パラメータは、34.8であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.15倍になった。これらの結果等を表1に示す。
〔実施例5〕
1,400℃で炭素化された繊維1dを用いた。
繊維1dは、単繊維繊度が0.57dtexあり、単繊維数が12,000本である。繊維1dの引張強度は5,410MPaであり、引張弾性率は276GPaであった(比較例3参照)。また、繊維1dの密度は1.76g/cmであった。
炭素化された上記繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、20MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.041であり、表面窒素濃度は0.026であった。繊維1eの引張弾性率は290GPaであり、引張強度は6,020MPaであった。このときの強度パラメータは、19.4であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.11倍になった。これらの結果等を表2に示す。
〔実施例6〕
実施例5で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例5と同じ混合ガス中で、40MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.048であり、表面窒素濃度は0.035であった。繊維1eの引張弾性率は322GPaであり、引張強度は6,620MPaであった。このときに、強度パラメータは、26.7であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.22倍になった。これらの結果等を表2に示す。
〔実施例7〕
実施例5で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例5と同じ混合ガス中で、120MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.062であり、表面窒素濃度は0.036であった。繊維1eの引張弾性率は318GPaであり、引張強度は6,480MPaであった。このときの強度パラメータは、31.2であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.20倍になった。これらの結果等を表2に示す。
〔実施例8〕
実施例5で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例5と同じ混合ガス中で、220MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.080であり、表面窒素濃度は0.034であった。繊維1eの引張弾性率は305GPaであり、引張強度は6,150MPaであった。このときの強度パラメータは、34.8であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.14倍になった。これらの結果等を表2に示す。
〔実施例9〕
1,800℃で炭素化された繊維1dを用いた。
繊維1dは、単繊維繊度が0.35dtexであり、単繊維数が12,000本である。繊維1dの引張強度は6,040MPaであり、引張弾性率は280GPaであった(比較例5参照)。また、繊維1dの密度は1.81g/cmであった。
炭素化された上記繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、45MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.032であり、表面窒素濃度は0.021であった。繊維1eの引張弾性率は342GPaであり、引張強度は6,720MPaであった。このときの強度パラメータは、18.1であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.11倍になった。これらの結果等を表3に示す。
〔実施例10〕
実施例9で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例9と同じ混合ガス中で、90MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.035であり、表面窒素濃度は0.032であった。繊維1eの引張弾性率は374GPaであり、引張強度は7,400MPaであった。このときの強度パラメータは、25.1であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.23倍になった。これらの結果等を表3に示す。
〔実施例11〕
実施例9で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例9と同じ混合ガス中で、250MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.055であり、表面窒素濃度は0.024であった。繊維1eの引張弾性率は364GPaであり、引張強度は7,390MPaであった。このときの強度パラメータは、28.8であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.22倍になった。これらの結果等を表3に示す。
〔実施例12〕
実施例9で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例9と同じ混合ガス中で、450MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.075であり、表面窒素濃度は0.025であった。繊維1eの引張弾性率は328GPaであり、引張強度は6,920MPaであった。このときの強度パラメータは、32.8であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.15倍になった。これらの結果等を表3に示す。
〔比較例1〕
実施例1で説明した炭素化された繊維1dに対して、プラズマ表面処理を行わなかった。つまり、実施例1で説明した炭素化された繊維1dと同じものである。
この繊維(1e)の表面酸素濃度は0.047であり、表面窒素濃度は0.035であった。繊維(1e)の引張弾性率は226GPaであり、引張強度は4,520MPaであった。このときの強度パラメータは、18.5であった。これらの結果等も表1に併せて示す。
〔比較例2〕
実施例1で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例1と同じ混合ガス中で、120MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.140であり、表面窒素濃度は0.034であった。繊維1eの引張弾性率は226GPaであり、引張強度は4,770MPaであった。このときの強度パラメータは、39.3であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.06倍になった。これらの結果等も表1に併せて示す。
〔比較例3〕
実施例5で説明した炭素化された繊維1dに対して、プラズマ表面処理を行わなかった。つまり、実施例5で説明した炭素化された繊維1dと同じものである。
この繊維(1e)の表面酸素濃度は0.037であり、表面窒素濃度は0.018であった。繊維(1e)の引張弾性率は276GPaであり、引張強度は5,410MPaであった。このときに、強度パラメータは、15.2であった。これらの結果等も表2に併せて示す。
〔比較例4〕
実施例5で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例5と同じ混合ガス中で、400MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.092であり、表面窒素濃度は0.035であった。繊維1eの引張弾性率は296GPaであり、引張強度は5,740MPaであった。このときの強度パラメータは、37.6であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.06倍になった。これらの結果等も表2に併せて示す。
〔比較例5〕
実施例9で説明した炭素化された繊維1dに対して、プラズマ表面処理を行わなかった。つまり、実施例9で説明した炭素化された繊維1dと同じものである。
この繊維(1e)の表面酸素濃度は0.029であり、表面窒素濃度は0.013であった。繊維(1e)の引張弾性率は280GPaであり、引張強度は6,040MPaであった。このときの強度パラメータは、11.8であった。これらの結果等も表3に併せて示す。
〔比較例6〕
実施例9で説明した炭素化された繊維1dに対して、実施例9と同じ混合ガス中で、900MJ/kgの表面処理エネルギでプラズマ表面処理を行った。
表面処理後の繊維1eの表面酸素濃度は0.080であり、表面窒素濃度は0.030であった。繊維1eの引張弾性率は321GPaであり、引張強度は6,320MPaであった。このときの強度パラメータは、35.3であった。本表面処理を行うことで、繊維の引張強度が1.05倍になった。これらの結果等も表3に併せて示す。
Figure 0007418247000001
Figure 0007418247000002
Figure 0007418247000003
ここで、炭素化された繊維1dに対して表面処理としてプラズマ処理を行った炭素繊維と、プラズマ処置を行わなかった炭素繊維とを区別するために、プラズマ処理を行った炭素繊維の符号を便宜上「1e」とし、プラズマ処理を行わなかった炭素繊維の符号を便宜上「1d」とする。
表1~表3の実施例及び比較例の結果から、強度パラメータと引張強度との関係を図3に示す。
図3に示すように、1,300℃で炭素化された繊維1dを用いた場合、強度パラメータが21~37の範囲にある炭素繊維1eは、プラズマ処理を行わない炭素繊維1dに対して、1.1倍以上の引張強度を有することが分かる。
同様に、1,400℃で炭素化された繊維1dを用いた場合、強度パラメータが18~36の範囲にある炭素繊維1eは、プラズマ処理を行わない炭素繊維1dに対して、1.1倍以上の引張強度を有することが分かる。
同様に、1,800℃で炭素化された繊維1dを用いた場合、強度パラメータが16~35の範囲にある炭素繊維1eは、プラズマ処理を行わない炭素繊維1dに対して、1.1倍以上の引張強度を有することが分かる。
以上のように、強度パラメータが炭素化温度に対応した所定の範囲にある場合、又は強度パラメータが炭素化温度に対応した所定の範囲となるようにプラズマ処理を行った場合、プラズマ処理を行わなかった炭素繊維1dに対して、引張強度が向上することが分かる。
図3に示すように、炭素化工程の温度が高くなるほど、引張強度が1.1倍となる強度パラメータが左側(強度パラメータが小さくなる側である)にシフトすることが分かる。
一方、第2の炭素化工程の最高温度が1,300℃の繊維1dの引張弾性率(GPa)は226~248であり、最高温度が1,400℃の繊維1dの引張弾性率(GPa)は276~322であり、最高温度が1,800℃の繊維の引張弾性率(GPa)は280~374であり、炭素化工程の最高温度が高くなるにしたがって、炭素繊維の引張弾性率が高くなる傾向にあることが分かる(表1参照)。
このことから、炭素繊維の引張弾性率が高くなるほど、引張強度が1.1倍以上となる強度パラメータが左側(強度パラメータが小さくなる側である)にシフトすることが分かる。
したがって、引張強度が1.1倍以上となる強度パラメータの範囲は、製造しようとする炭素繊維の引張弾性率で規定することができる。
具体的には、炭素繊維の強度パラメータが式(1)で規定される範囲内であれば、その炭素繊維1eの引張強度は、本発明のプラズマ処理を行わなかった炭素繊維1dに対して、1.1倍以上となる。
逆に、製造された炭素繊維の強度パラメータが式(1)で規定される範囲内であれば、当該炭素繊維は本発明の製造方法で製造されたたものと推測できる。
なお、図3において、「×」は、下記の(3)式において、各炭素化最高温度での最も引張弾性率が高かった実施例3、実施例6及び実施例10の引張弾性TMを用いた算出結果をプロットしたものであり、「*」は、下記の式(4)式において、各炭素化最高温度での最も引張弾性率が低かった実施例1、実施例5及び実施例12の引張弾性TMを用いた算出結果をプロットしたものである。
下限値:29-(0.034×TM) (3)
上限値:40-(0.016×TM) (4)
<<変形例>>
以上、実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限られない。例えば、以下で説明する変形例と実施形態の何れかを適宜組み合わせてもよいし、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。
(1)実施形態では、フィラメント数が12,000本の炭素繊維の製造方法について説明したが、フィラメント数が3,000本、6,000本、24,000本等の他の本数の前駆体繊維を利用した炭素化された繊維の表面処理方法や炭素繊維の製造方法にも適用できる。
(2)実施形態では、炭素化工程を含んだ炭素繊維の製造方法について説明したが、例えば、表面処理工程前に、さらに黒鉛化処理を行ってもよい。つまり、実施形態では、主に、引張弾性率が240~360GPaの炭素繊維の製造方法について説明したが、表面処理工程は、高弾性品、中弾性高強度品等の高性能品の炭素繊維用の炭素化された繊維にも利用できる。当然、高性能品の炭素繊維の製造方法にも利用できる。
(3)実施形態の表面処理では、プラズマを照射しているが、例えば、炭素化された繊維をプラズマ雰囲気に晒すことでエネルギを付与してもよい。
また、照射部255は、平行平板電極を利用しているが、例えば、同軸円筒電極等を利用してもよい。また、照射部255は、プラズマを発生させるために、誘電体バリア放電を利用しているが、例えば、コロナ放電、大気圧グロー放電等の他の手段を利用してもよい。
(4)実施形態の照射部255は、図2に示すように筒部251の外部で発生したプラズマを貫通孔253から内部に吹き込んでいるが、例えば、一対の電極を筒部内に配置し、一対の電極間を炭素化された繊維が走行するようにしてもよい。
(5)実施形態の表面処理装置は一例であり、下記のような表面処理装置であってもよい。
(5-1)図4を用いて説明する。
実施形態では、筒部251を有する表面処理装置25であったが、筒部を有しない表面処理装置であってもよい。
表面処理装置25aは、図4の(a)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された板部251aと、板部251aにおける走行方向の中央であって繊維1dと反対側に配された照射部255aとを備える。板部251aは繊維1dの走行方向の中間に貫通孔253aを有し、当該貫通孔253aから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
表面処理装置25bは、図4の(b)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された一対の板部251bと、一方の板部251bの走行方向の中央であって繊維1dと反対側に配された照射部255bとを備える。一方の板部251bは繊維1dの走行方向の中間に貫通孔253bを有し、当該貫通孔253bから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
表面処理装置25cは、図4の(c)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された一対の板部251cと、各板部251cの走行方向の中央であって繊維1dと反対側に配された2台の照射部255cとを備える。両板部251bは繊維1dの走行方向の中間に貫通孔253cを有し、当該貫通孔253cから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
ここでは、複数本の繊維1dが並走し、貫通孔253a~253cは、並走方向(紙面に対して直交する方向)に延伸するように設けられている。なお、板部251a~251cの貫通孔253a~253cは、1個でもよいし、複数個であってもよい。
(5-2)図5を用いて説明する。
実施形態の表面処理装置25及び図4に示す表面処理装置25a~25cは、繊維1dの走行方向の一箇所で大気圧プラズマを照射しているが、繊維1dの走行方向に沿った複数個所で大気圧プラズマを照射してもよい。ここでは、走行方向の2箇所で大気圧プラズマを照射する場合について説明する。
表面処理装置25dは、図5の(a)に示すように、板部251dと照射部255dとを備える照射ユニット250dを、繊維1dの走行方向に間隔をおいて2台有している。
表面処理装置25eは、図5の(b)に示すように、一対の板部251eと照射部255eとを備える照射ユニット250eを、繊維1dの走行方向に間隔をおいて2台有している。なお、一対の板部251eに換えて筒部としてもよい。
2台の照射ユニット250d,250eは、繊維1dに対して走行方向と直交する方向の両側に配されている。これにより、繊維1dへの大気圧プラズマの照射ムラを小さくできる。
(5-3)図6を用いて説明する。
実施形態の表面処理装置25及び図4に示す表面処理装置25a~25cは、貫通孔253,253a~cを複数本の繊維1dの並設方向(図4において紙面と直交する方向)に延伸する状態で有していたが、貫通孔を繊維1dの走行方向に延伸する状態で有してもよい。ここでは、貫通孔を複数本の繊維1dの並設方向と走行方向とに広がる形状をしている場合を説明する。
表面処理装置25fは、図6の(a)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された板部251fと、板部251dにおける繊維1dと反対側に配された照射部255fとを備える。板部251fは繊維1dの走行方向に沿って形成された貫通孔253fを有し、当該貫通孔253fから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
表面処理装置25gは、図6の(b)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された一対の板部251gと、一方の板部251gにおける繊維1dと反対側に配された照射部255gとを備える。一方の板部251gは繊維1dの走行方向に沿って形成された貫通孔253gを有し、当該貫通孔253gから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
表面処理装置25hは、図6の(c)に示すように、走行する繊維1dと対向配置された一対の板部251hと、各板部251hにおける繊維1dと反対側に配された2台の照射部255hとを備える。両板部251hは繊維1dの走行方向に沿って形成された貫通孔253hを有し、当該貫通孔253hから大気圧プラズマが走行する繊維1dに向けて照射される。
ここでは、複数本の繊維1dが並走し、貫通孔253f~253hは、並走方向にも延伸するように矩形状又は方形状に設けられている。なお、貫通孔253f~253hは、1個でもよいし、走行方向に沿った複数個であってもよい。また、一対の板部251g,251hに換えて筒部としてもよい。
(5-4)図7を用いて説明する。
実施形態の表面処理装置25及び図6に示す表面処理装置25f~25hは、繊維1dの走行方向の一箇所で大気圧プラズマを照射しているが、繊維1dの走行方向に沿った複数個所で大気圧プラズマを照射してもよい。ここでは、走行方向の2箇所で大気圧プラズマを照射する場合について説明する。
表面処理装置25jは、図7の(a)に示すように、板部251jと照射部255jとを備える照射ユニット250jを、繊維1dの走行方向に間隔をおいて2台有している。
表面処理装置25kは、図7の(b)に示すように、一対の板部251kと照射部255kとを備える照射ユニット250kを、繊維1dの走行方向に間隔をおいて2台有している。なお、一対の板部251kに換えて筒部としてもよい。
2台の照射ユニット250j,250kは、繊維1dの走行方向と直交する方向の両側に配されている。これにより、繊維1dへの大気圧プラズマの照射ムラを小さくできる。
(5-5)図8を用いて説明する。
実施形態の表面処理装置25、図5の(b)に示す表面処理装置25e及び図の7(b)に示す表面処理装置25kは、繊維1dの走行方向の2箇所で大気圧プラズマを照射しているが、複数の表面処理装置を連結して繊維1dの走行方向に沿った複数個所で大気圧プラズマを照射してもよい。ここでは、走行方向の2箇所で大気圧プラズマを照射する場合について説明する。
表面処理装置25mは、図8の(a)に示すように、一対の板部251mと照射部255mとを備える照射ユニット250mを繊維1dの走行方向に2台連結して(正確には、「各照射ユニット250mの板部251m同士を連結する」である)一体的に配置している。換言すると、表面処理装置25mは、一対の板部251mと、一対の板部251mに対して繊維1dの走行方向に間隔をおいて配された複数台(2台)の照射部255mとを備えている。なお、一対の板部251mに換えて筒部としてもよい。
表面処理装置25nは、図8の(b)に示すように、一対の板部251nと照射部255nとを備える照射ユニット250nを繊維1dの走行方向に2台連結して(正確には、「各照射ユニット250mの板部251m同士を連結する」である)一体的に配置している。換言すると、表面処理装置25nは、一対の板部251nと、一対の板部251nに対して繊維1dの走行方向に間隔をおいて配された複数台(2台)の照射部255nとを備えている。なお、一対の板部251nに換えて筒部としてもよい。
2台の照射ユニット250m,250nは、繊維1dの走行方向と直交する方向の両側に互い違いに配されている。これにより、繊維1dへの大気圧プラズマの照射ムラを小さくでき、かつ連結して配置することで、発生したプラズマを表面処理に有効に利用することができる。
なお、図4~図8に示す表面処理装置25a~25nは、照射部255a~255nよりも繊維1dの走行方向に長い板部251a~251nを有しているが、照射部255a~255nよりも繊維1dの走行方向に短い板部(筒部)を有してもよいし、板部や筒部を有していなくてよい。
1 繊維
1a プリカーサ
1b 耐炎化繊維
1d 炭素化された繊維
25 表面処理装置
251 筒部
255 照射部

Claims (1)

  1. 炭素化工程後にエネルギを付与して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造方法であって、
    前記エネルギはプラズマであり、
    前記エネルギ付与は、下記の式(1)の関係を満たすように、行われる。
    29-(0.034×TM)≦(O/C+N/C)×TM≦40-(0.016×TM) (1)
    ただし、「TM」は炭素繊維の引張弾性率[GPa]であり、「O/C」はX線光電子
    分光法により測定される表面酸素濃度であり、「N/C」はX線光電子分光法により測定される表面窒素濃度である。
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