JP2019121514A - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料の処理の歩留まりを向上させたプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】プラズマ処理装置1は、真空容器104内に配置されプラズマが形成される処理室115と、処理室115の下部に配置される試料台106と、処理室115の上方に配置されマイクロ波の電界が透過する軸対称形状の窓部材103と、窓部材103の上方に配置され導波管(円形導波管109)を含む導波路と、窓部材103の上方に配置され導波管よりも径が大きい空洞部102と、真空容器104および導波管の外周に配置されソレノイドコイル112およびヨーク113(第1ヨーク)を含む磁界発生装置(電磁石101)と、空洞部102内に配置され軸対称形状の磁性体製のヨーク201(第2ヨーク)と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマ処理装置の技術に関する。また、本発明は、真空容器内の処理室内に配置された半導体ウエハ等の基板状の試料を処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置において、処理室内に導入した処理用ガスに対し処理室内に供給した電界および磁界を用いてプラズマを形成する技術に関する。
半導体集積回路素子等の半導体デバイスの生産にプラズマ処理装置が用いられている。プラズマ処理装置は、真空容器内の処理室内に形成したプラズマを用いて、処理室内に配置した試料(被処理基板と記載する場合がある)を処理する。従来、半導体デバイスの性能向上およびコスト低減のため、回路構造の微細化が進展してきた。2次元的微細化によって、デバイスあたりの面積が低減し、1枚のウエハから製造できる素子数が増加して、デバイスあたりの製造コストが下がる。それと共に、デバイスの配線長の短縮等によって性能向上が達成されてきた。しかし、2次元的微細化によるコスト低減および性能向上と、この技術開発に要する費用とを考慮して、新しい回路用材料や3次元的回路構造等の適用が進んでいる。
半導体デバイスは、製造工程の途中で微小な異物や汚染物質が付着すると、回路動作に致命的な影響を及ぼす欠陥が生じやすい。そのため、その異物等を排除し温度や湿度を最適に制御したクリーンルーム内で製造されることが多い。デバイスの微細化に伴い、製造に必要なクリーンルームの清浄度は高くなり、クリーンルームの建設や維持運用に莫大な費用が必要となる。そのため、クリーンルーム空間を効率よく利用した生産が求められる。この観点から、半導体デバイスの製造装置は、小型化と低コスト化が厳しく求められている。
従来のプラズマ処理装置として、処理室内に処理用のガス(処理用ガスと記載する場合がある)を供給しつつ、電界と共に磁界を供給して、プラズマを形成するものが広く用いられている。特に、マイクロ波等の所定の周波数の高周波の電界と共に静磁界を供給して、ガスの原子または分子を励起し、電離または解離させてプラズマを形成するものが用いられている。静磁界の供給によってプラズマの損失を抑制できる他に、処理室内でのプラズマの強度または密度の分布の調節も可能となる利点があるためである。さらに、電界と静磁界との相互作用を用いることで、他の技術ではプラズマの発生が困難である低い圧力の条件でも、プラズマを形成可能にする効果がある。
マイクロ波帯の周波数の電界に対して電子のサイクロトロン運動の周期とマイクロ波の周波数とを一致させる静磁界を供給する場合、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECRと記載する)と呼ばれる現象が起きることが知られている。この現象を用いてプラズマを形成する場合、ECRが起きる領域で主にプラズマが発生することから、静磁界の分布の調節によってプラズマを発生させる領域の調節が可能となる。またその他に、ECR現象によってプラズマ生成可能な条件が広く確保できる効果がある。
一般に、処理室内に形成されるプラズマを構成する粒子は、処理室内の壁面に接触するとエネルギーを消失する。そのため、処理室内の壁面付近ではプラズマの密度が低くなり、壁面から離れた処理室の中央部ではプラズマの密度が高くなる、いわゆる中高の分布(凸分布)となる傾向を有する。このような分布を持つプラズマを用いた試料の処理では、その処理の特性が、試料の面内の径方向(半径方向)において不均一となってしまう課題があった。処理の特性とは、例えば、処理の速度や、処理結果として得られる加工後の表面形状等である。径方向とは、処理室や試料の面内の中心軸から外周に向かう方向である。
上記プラズマ処理装置に係わる先行技術例として、特開平7−147199号公報(特許文献1)や特開平10−163173号公報(特許文献2)が挙げられる。
特許文献1では、ECRプラズマ処理装置として、以下の旨が記載されている。その装置では、静磁場を形成する励磁コイルの外周囲を覆って配置されたヨークは、処理室の外周を囲んでリング状に配置された励磁コイルの側面の外周側のみでなく上面の上方および内周側を覆って配置され、その内周側を覆う部分の下端部がマイクロ波導入部の近傍まで延在した構成を有する。その装置では、真空容器内のプラズマ生成室内で形成されるECR面の高さ方向の位置が、中央部で高くなる凸形状となることを抑制して、マイクロ波導入窓に対し平坦または凹形状にできる。ひいては、その装置では、プラズマの密度または強度の分布を平坦または均一にできる、等の旨が記載されている。
特許文献2では、半導体処理装置として、プラズマ密度分布を制御する旨や、以下の旨が記載されている。その装置では、真空容器の上部に配置されたリング状のマイクロ波導入窓の上方に配置されたリング状の電磁石と、電磁石の外周側の側面、上面、内周側の側面を覆って配置されたヨークとを備える。ヨークの内周、外周側の部分の下端同士の間でミラー磁場を形成して、その内部にプラズマを閉じ込めることで、リング状のプラズマを形成する、等の旨が記載されている。
特開平7−147199号公報 特開平10−163173号公報
前述のように、処理室内で電界および磁界を用いてプラズマを形成するプラズマ処理装置では、処理室内の試料の面内の径方向でのプラズマの密度や強度の分布が、いわゆる中高の分布(凸分布)のように不均一となる傾向を有する。そのため、試料の処理の特性に関して径方向でのばらつきに影響する等の課題がある。そのような課題に対し、従来技術例のプラズマ処理装置では、室内に供給される静磁界の強度や向きの分布を調節することで、分布の不均一を抑制して特性のばらつきの低減を図るものが検討されている。しかし、従来技術例のプラズマ処理装置では、以下のような点について考慮が不十分であったため、いくつか課題が生じていた。
従来技術例のプラズマ処理装置では、電界や磁界の強度や方向、ひいてはこれらによってガスの原子や分子が励起され解離や電離した粒子の密度または強度の分布を、どのように調節するかについて、考慮されていなかった。そのため、従来技術例のプラズマ処理装置では、室内の径方向でのプラズマの密度や強度の分布の不均一に関する抑制や、それに応じた処理の特性のばらつきの低減等を、充分には実現できず、限界があった。これにより、試料の処理の歩留まりが損なわれる等の課題があった。
本発明の目的は、試料の処理の歩留まりを向上させたプラズマ処理装置を提供することである。
本発明のうち代表的な実施の形態は、プラズマ処理装置であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。一実施の形態のプラズマ処理装置は、真空容器内に配置されプラズマが形成される処理室と、前記処理室の下部に配置され前記プラズマを用いた処理の対象となる試料が載置される試料台と、前記処理室の上面部を構成し前記プラズマを形成するための電界が透過し前記処理室の中心軸に対し軸対称形状を持つ誘電体製の窓部材と、前記窓部材の上方に前記中心軸に沿って配置され前記電界が伝播する導波管を含む導波路と、前記窓部材の上方に前記中心軸に沿って配置され前記導波管の下端部と連通して接続され前記電界を伝播し前記導波管よりも径が大きい軸対称形状を持つ空洞部と、前記真空容器の側壁における前記処理室を囲む部分、および前記導波管の外周を囲むように配置され、前記プラズマを形成するための磁界を発生するコイルと、前記コイルを囲むように配置され下端が少なくとも前記窓部材よりも下方の位置にある磁性体製の第1ヨークとを含む磁界発生装置と、前記空洞部内に前記中心軸に沿って配置され軸対称形状を持つ磁性体製の第2ヨークと、を備える。
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、試料の処理の歩留まりを向上させたプラズマ処理装置を提供できる。本発明のうち代表的な実施の形態によれば、異なる処理の条件に対応して適切に試料の上面の上方でのプラズマの強度または密度の分布が調節されたプラズマを室内に形成することができる。これにより、試料の面内の径方向での処理の特性のばらつきを低減でき、好適な特性を実現できる。
本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。 実施の形態の第1変形例のプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。 実施の形態の第2変形例のプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
[課題等]
前提や課題等について補足説明する。前述のように、室内で電界および磁界を用いてプラズマを形成するプラズマ処理装置では、室内の面内の径方向でのプラズマの密度や強度の分布が、いわゆる中高の分布(凸分布)のように不均一となる傾向を有する。このような課題に対し、従来技術例のプラズマ処理装置では、室内に供給される静磁界の強度や向きの分布を調節することで、室内の分布の不均一の抑制を図るもの等が検討されている。
例えば、特許文献1の装置では、以下のような構成を有する。その装置では、プラズマ生成室と処理対象の試料が配置された試料室とが仕切り板によって仕切られている。その装置では、仕切り板の中央部に形成されたプラズマ引き出し窓からプラズマ生成室内に形成されたプラズマが、励磁コイルによって生成された磁界の向きに沿って引き出される。このため、この従来技術例では、プラズマ生成室内の中央部分でのECR面の形状の分布のみを考慮して、プラズマが試料室内の試料の上面の処理の径方向についての分布を調節するものといえる。
しかし、特許文献1のように、真空容器内において試料が載置される試料台を含む処理室(試料室)の内側でプラズマが生成される構成の場合、以下のような特性を有する。すなわち、試料の上面での処理の特性を示すパラメータの分布は、ECR面の形状のみに支配的な影響を受けるものになるとは限らず、電界や磁界の強度、あるいは電子やイオン、活性を有したラジカル等の粒子の分布にも影響を受けるものとなる。特許文献1のような構成では、試料の処理の特性に関する径方向でのばらつきの低減のために、以下のような点は考慮されていなかった。すなわち、上記電界または磁界、ひいてはこれらによりガスの原子や分子が励起されて解離や電離した粒子の密度または強度の分布を、どのように調節するかについて、考慮されていなかった。少なくとも、どのような装置構造とすればそれらの好適な調節が実現できるか、充分には考慮されておらず、改善余地があった。
一方、例えば特許文献2の装置では、プラズマが形成される真空容器内の下方に試料である半導体基板が配置され、真空容器の上部においてマイクロ波導入窓とその窓の上方に配置された電磁コイルおよびヨークとがリング状に配置された構成を有する。この構成では、真空容器内でリング状の分布を持つようにプラズマが形成される。この構成で、例えばマイクロ波導入窓から導入される電界の強度を変動させたとしても、真空容器内の下方の試料から見たリング内部のプラズマの密度や強度の分布の調節は困難となってしまう。このため、試料室内の圧力に応じて変動するプラズマの密度や強度の分布に応じて、試料の処理の特性の径方向でのばらつきを低減するには、限界があった。
上記のように、従来技術のプラズマ処理装置では、室内の試料の径方向でのプラズマの密度や強度の分布の不均一の抑制および改善によって処理の特性のばらつきを低減することが充分には実現できない。そのため、処理の歩留まりが損なわれる等の課題があった。
(実施の形態)
図1〜図3を用いて、本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置について説明する。なお、以下では、説明上、方向として、Z方向、R方向、C方向等を用いる。Z方向は、装置を構成する真空容器等の円筒や円柱や円板等の軸対称形状における中心軸方向、鉛直方向に対応する。R方向は、水平方向のうち、円筒等の軸対称形状における半径方向(径方向)に対応し、C方向は、円周等の周方向に対応する。また、平面視とは、Z方向で水平面をみる場合を指す。
[概要等]
本実施の形態のプラズマ処理装置では、軸対称形状を持つ真空容器および導波管の外周を囲むように、コイルおよびヨーク(第1ヨーク)を含む静磁界発生装置が配置されている。そして、本実施の形態のプラズマ処理装置では、特に、真空容器等の中心軸方向に沿って、処理室と導波管との間の空洞部内に、軸対称形状の磁性体製の第2ヨークが配置されている。第1ヨークは、鉛直方向で窓部材よりも下方で試料台の試料の付近まで達する位置に下端があり、導波管の外周とコイルの内周との間に配置される内周部を含む。第1ヨークの内周部の下端部から下方へ延長する領域に、第2ヨークが配置されている。静磁界発生装置による磁界は、第1ヨークの内周部の下端部から、第2ヨーク、窓部材等を経由して、処理室内を通って試料台の試料の外周部付近を通過する磁力線を有する。
本実施の形態のプラズマ処理装置では、処理室内の上側の空間で、第2ヨークの下端部の付近のリング状の領域に、相対的に強い静磁界が形成される。これに対応して、本実施の形態のプラズマ処理装置では、処理室内の上側の空間で、第2ヨークの下端部の付近のリング状の領域で相対的に強度または密度が大きいプラズマの分布が形成される。これにより、本実施の形態のプラズマ処理装置では、処理室内の試料の面に近い空間では、径方向でのプラズマの分布として、従来の中高の分布(凸分布)が抑制されて、より均一で平らな分布に近付けられる。
本実施の形態の構成において実現できる上記特性や効果に関して、本発明者は、以下のような知見を得た。一般に、プラズマは、静磁界の方向に対し垂直な方向の拡散が抑制され、強い静磁界に対しては、より抑制効果が高くなる。そのため、プラズマは、静磁界の強い箇所への拡散が抑制される。そのため、空間内で強い磁場が形成された領域では相対的にプラズマの密度等が大きくなる傾向がある。
このことに基づいて、本実施の形態のプラズマ処理装置では、上記空洞部内に第2ヨークが配置された構成を有する。この構成では、第2ヨークの位置に対応して、処理室内の上側の空間の径方向での静磁界の分布としては、リング状に相対的に強い静磁界が形成された分布になる。そのため、この構成では、処理室内の上側の空間において、プラズマの強度または密度の分布としてリング状の分布が形成される。この分布では、リング状の領域でプラズマの強度等が相対的に大きく、そのリング状の領域の外側にある領域ではプラズマの強度等が相対的に小さくなる。また、そのリング状のプラズマの分布に基づいて、鉛直方向では上側から下側へ行くにつれて、プラズマが径方向で拡散する作用が大きい。そのため、処理室内の試料の面に近い空間では、プラズマの強度または密度の分布として、均一で平らな分布に近付けられる。
また、処理室内で形成されるプラズマは、主にマイクロ波の電界によって加速された電子が、処理室内に供給されたガスの原子または分子に衝突して、電離または解離されることで生起される。このため、空間内でこのような粒子の密度が高い箇所ではプラズマがより生成されやすい。本実施の形態のプラズマ処理装置では、上記第2ヨークを含む構成によって、リング状の静磁界に対応させて、リング状のプラズマ領域を生成可能である。本実施の形態のプラズマ処理装置は、上記のような知見に基づいて為されたものである。
また、従来技術のプラズマ処理装置では、真空容器の外側に配置され静磁界を供給するための電磁石(特にコイル)と、プラズマが形成される処理室との間には、所定の空間または空洞、それらを構成する構造物等が介在し、その空間等の分の距離が介在する。そのため、従来技術では、電磁石から処理室内へ静磁界を供給、印加する際に、近い距離での効率的な供給、印加は難しい。そのことにも影響されて、上記のように、処理室内のプラズマ密度分布が中高の分布のように不均一になる傾向を有する。これに関して、本実施の形態では、電磁石および第2ヨーク等の配置を工夫した構成によって、電磁石から処理室内へ静磁界を好適に供給、印加して、好適なプラズマ分布等を実現する。
用語について補足する。一般的に、「ヨーク」(継鉄)は、磁石と組み合わせて使用される鉄や鋼等の部材である。磁石とヨークとの組み合わせで、磁気回路が形成される。その磁気回路では、磁束を必要な箇所に集中させることができる。本実施の形態におけるヨークである第1ヨーク(図1のヨーク113)や第2ヨーク(ヨーク201)は、静磁界の分布を調整する部材である。
[(1)真空容器、処理室]
図1は、一実施の形態のプラズマ処理装置1の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。この縦断面図は、真空容器104等の中心軸(一点鎖線で示す)を通る断面であり、R方向とZ方向とで成すR−Z平面で示される。図1のZ方向の矢印の起点が下側、矢側が上側を示す。R方向の矢印の起点が中心軸側、矢側が外周側を示す。なお、真空容器104等は、円筒形状等の軸対称形状を有するため、周方向(C方向)の各位置での縦断面は概ね同様である。
プラズマ処理装置1は、マイクロ波ECRを用いたプラズマエッチング処理装置である。プラズマ処理装置1は、真空容器104内に配置および構成されている処理室115内に、ECRを用いてプラズマを形成し、試料2に対するエッチング処理を行う。処理室115内に配置されている試料台106の載置面である上面には、半導体ウエハ等の基板状の試料2(被処理基板)が載置および保持される。試料台106および試料2は、平面視で特に円形状を有する。プラズマ処理装置1は、試料台106の試料2の上面に予め配置されたマスク層およびその下方の処理対象の膜層を有する膜構造における処理対象の膜層を、プラズマを用いてエッチング処理する。
プラズマ処理装置1は、真空容器104、プラズマ形成部、ガス供給系、真空排気部、高周波電力供給部、等を備える。
真空容器104は、概略円筒形状を有し、図示しないガス供給系等が接続されている。真空容器104内、特に空洞部102を除く下部には、真空状態とされるプラズマ処理室である処理室115が構成されている。処理室115の上面部は窓部材103およびガス分散板114で構成されている。処理室115内には、中心軸に沿って、下部に試料台106が配置されている。処理室115内には、上部の側面に、内筒117およびアース電極105が配置されている。
真空容器104内の上部には、空洞部102が構成されている。空洞部102内には、円筒形状のヨーク201が配置されている。空洞部102の上方には、中心軸に沿って、円形導波管109を含む導波路が接続されている。また、真空容器104の円筒形状の側壁の外周、および円形導波管109の外周には、それらを覆うように近接して電磁石101が配置されている。電磁石101は、ソレノイドコイル112およびヨーク113を含む。
プラズマ処理装置1では、真空容器104等の中心軸に沿って、軸対称形状の各部が配置されている。軸対称形状または軸対称配置の各部として、真空容器104、処理室115、試料台106(基板電極を含む)、試料2、内筒117、アース電極105、窓部材103、空洞部102、ヨーク201、円形導波管109、電磁石101(ソレノイドコイル112、ヨーク113)を含む。
プラズマ形成部は、真空容器104の上方や側方に配置されている、導波路や電磁石101等を含む部分である。プラズマ形成部は、真空容器104内の処理室115内に、処理用ガスに基づいてプラズマを形成するためのマイクロ波の電界および静磁界を供給する。そして、プラズマ形成部は、電界および静磁界の相互作用によるECRを用いてプラズマを形成する。導波路は、マイクロ波源110、アイソレータ111、方形導波管107、方形円形変換器108、および円形導波管109等で構成される。
マイクロ波源110は、マイクロ波の電界を形成し、導波路へ供給する。アイソレータ111は、マイクロ波源110への反射波の入射を防止する。方形導波管107は、水平方向のうちの一方向(図示のR方向)に沿ってマイクロ波の電界を伝播する、断面が方形の導波管である。円形導波管109は、中心軸に対応する鉛直方向(Z方向)に沿って上から下へマイクロ波の電界を伝播する、断面が円形の導波管である。方形円形変換器108は、方形導波管107からの方向の電界を、円形導波管109の方向の電界へと変換する変換器であり、コーナーを兼ねる。
電磁石101は、ソレノイドコイル112等の励磁コイルと、磁界を調整するヨーク113とを有する。電磁石101は、ソレノイドコイル112で生起されてヨーク113によって調整された静磁界を、処理室115へと供給する。この静磁界の方向は、中心軸方向(Z方向)に対し概ね平行な方向である。
図示しないガス供給系は、プラズマ形成のためのガスである処理用ガスを供給する。真空容器104のガス分散板114は、ガス供給系の管路と接続されている。処理用ガスは、ガス分散板114を介して処理室115内に供給される。また、図示しない真空排気部は、真空容器104の底面と連結されて、処理室115と連通している。真空排気部は、真空ポンプ、流量調節バルブ等を含む。真空ポンプは、処理室115内のガスやプラズマ等の粒子を排気して減圧するターボ分子ポンプ等である。流量調節バルブは、排気の流量または速度を調節する。
高周波電力供給部として、高周波電源119、および自動整合器118を有する。試料台106の内部の基板電極は、自動整合器118を介して高周波電源119と電気的に接続されている。高周波電源119は、高周波(Radio Frequency:RF)によるバイアス電位を形成するための高周波電力(RF電力)を供給する。
[(2)導波路、マイクロ波の電界]
マイクロ波源110は、マイクロ波の電界を発振して形成するマグネトロン等の発振器で構成される電界源である。本実施の形態の一例では、マイクロ波の電界として周波数が2.45GHzのものが用いられる。
円形導波管109は、処理室115、窓部材103、空洞部102、およびヨーク201等の中心軸に沿って上方に配置されている。円形導波管109の上端部は、方形円形変換器108の一方端部と連通して接続されている。円形導波管109の下端部は、空洞部102の上面部の中央部の開口と連通して接続されている。方形円形変換器108の他方端部は、方形導波管107の一方端部と連通して接続されている。方形導波管107の両端部の間には、自動整合器およびアイソレータ111が配置されている。方形導波管107の他方端部にはマイクロ波源110が接続されている。
マイクロ波の電界は、マイクロ波源110で発振されて形成された後、方形導波管107内を伝播して、方形円形変換器108で方向が変換されて、円形導波管109内に伝播する。マイクロ波の電界は、Z方向で円形導波管109内を伝播して、空洞部102内(特にヨーク201内の空洞211)に導入される。マイクロ波の電界は、空洞部102内で電界の分布が調節される。その後、マイクロ波の電界は、空洞部102から窓部材103およびガス分散板114を透過してZ方向で処理室115内に放射状に導入される。放射状は、中心軸から外周へ拡がる軸対称形状である。処理室115内のマイクロ波の電界は、後述の静磁界と相互作用し、これによってECR現象が生起される。処理室115内の処理用ガスに対し、ECR現象によって、プラズマが形成される。
[(3)窓部材、ガス分散板]
窓部材103は、プラズマ形成用のマイクロ波の電界が透過する材料として誘電体製の材料で構成され、マイクロ波を処理室115へ導入するマイクロ波導入窓である。窓部材103は、処理室115の中心軸に沿って上方に配置されている。窓部材103は、一定の厚さの円板形状を有する。窓部材103の外周端は、真空容器104の側壁の一部と接続されている。
窓部材103の下面に対し、Z方向で所定の距離の隙間を空けて、ガス分散板114が配置されている。ガス分散板114は、窓部材103と同様に円板形状を有する。窓部材103およびガス分散板114は、真空状態を構成する要素として、処理室115の上面部となる蓋を構成している。窓部材103は、空洞部102の底面部も構成している。ガス分散板114は、処理室115内の上面を構成している。
窓部材103およびガス分散板114は、誘電体製の材料として、本実施の形態の一例では石英が用いられる。この材料は、条件として、処理室115内に形成されるプラズマとの間で処理室115内の処理に悪影響を与える相互作用を生起しにくい材料が用いられる。
ガス源であるガス供給系と、真空容器104の側壁およびガス分散板114等の部分とは、図示しないガス供給用管路で連結されている。ガス源からのガスは、その管路を通じて供給されて、真空容器104の側壁を介してガス分散板114の流路に導入される。ガスは、例えばガス分散板114の上面と窓部材103の下面との隙間を用いた流路を通じて、ガス分散板114の導入口へと供給される。ガスは、その流路を通じて拡散される。なお、変形例としては、ガス分散板114の内部にガスの流路が設けられていてもよい。
ガス分散板114には、ガスを分散させて処理室115内に供給するための流路や導入口が設けられている。ガス分散板114にはガスの導入口を有する。導入口には、複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、R方向で中心軸位置に近いほど多く形成されている。ガスは、導入口の複数の貫通孔を通じて分散されて処理室115内に導入される。そのガスは、処理室115内で上から下へシャワー状に供給される。そのガスは、供給の際に、所定の流量や速度に調節されて供給される。ガスの流量または速度、あるいはガス分散板114の貫通孔の数、形状、および配置位置等が、適切に調節されている。これにより、処理室115内に供給されるガスの分布が処理用に好適になるように調節されている。
[(4)試料台、RFバイアス技術]
処理室115の下部には、中心軸の位置に、円柱状の試料台106が配置されている。試料台106は、基材や基板電極で構成されている。試料台106の上面である載置面には、処理対象の半導体ウエハ等の試料2が載せられて保持される。本実施の形態の一例では、試料2として、直径300mmの円板形状を持つシリコン製の基板が用いられる。試料台106の上面である載置面は、図示しない誘電体製の膜と、その膜内に配置された膜状の電極とで構成されている。試料2は、試料台106の上面の膜上に載せられて、膜状の電極に直流電源から電力が供給されて生起された静電気力によって、膜状に吸着され保持された状態となる。
試料台106の内部には、金属等の導電体材料で構成された円板形状または円筒形状を有する基板電極が配置されている。試料台106の基板電極には、自動整合器118を介して高周波電源119から所定の周波数のRF電力が供給される。本実施の形態では、高周波電源119からのRF電力の周波数は、400KHz〜1.2MHzの範囲から選択される周波数である。自動整合器118は、ローパスフィルタを含む。RF電力の供給により、基板電極は、試料2の面の上方にRFバイアス電位を形成するための電極として機能する。
試料台106に試料2が保持されている状態で、処理室115内には、ガス供給系からガス分散板114を介して処理用ガスが供給される。また、その状態で、導波路から、空洞部102内を伝播して、窓部材103およびガス分散板114を透過して、処理室115内にマイクロ波の電界が供給される。また、その状態で、電磁石101により生起された磁界である静磁界が処理室115内に供給される。その状態で、処理室115内の処理用ガスが、マイクロ波の電界と磁界との相互作用によって生起したECRによって励起され、電離や解離して、プラズマが形成される。
また、処理室115内にプラズマが形成された状態で、試料台106の基板電極にRF電力が供給される。これにより、試料2の上面の上方にプラズマの電位に応じたRFバイアス電位が形成される。そして、RFバイアス電位との電位差に応じて、プラズマ内のイオン等の荷電粒子が、試料2の表面に誘引され、その表面上の膜構造の処理対象の膜層表面に入射する。これにより、試料2の膜層の処理が特定の方向に促進される。
このように、RFバイアス技術では、処理中の試料2にRF電力を印加し、プラズマ中の荷電粒子を試料2の表面に誘引することで、処理の高速化や品質向上が実現される。例えば、処理対象の膜層をエッチング処理する場合、RFバイアス電位が形成されることで、試料2の上面に垂直な方向にイオンが入射する。そのため、エッチングが試料2に垂直な方向に大きく進む異方性の加工が達成される。
このようなRFバイアス電位の形成を効果的に処理に適用する上では、試料2と、所定の電位を持つプラズマを介したアース(対応するアース電極)との間の見かけ上の電流の経路のインピーダンスが重要となる。すなわち、試料2とプラズマとの間の試料2の上面に形成されるシースは、非線形性のインピーダンスを持つことが知られている。このシース内をRF電力によるRFバイアス電流が流れることで、試料2の実効値としての電位である直流電位が下がり、プラズマ中の荷電粒子を効果的に引き込むことができる。
このようにRFバイアス電流を効率よく流すために、処理室115の側壁の内側の面には、導電体製のアース電極105が配置されている。このアース電極105は、試料台106の試料2の高さ方向(Z方向)の上方の位置で、試料2の上方の空間を囲むように、リング形状の部材として設けられている。リング形状は、言い換えれば、平面視の円周面で所定の幅を持つ円筒形状である。特に、アース電極105は、内筒117と一部重なるようにして、内筒117の下側の位置に配置されている。
[(5)内筒]
真空容器104の円筒形状の側壁の内側壁面において、窓部材103およびガス分散板114の外周部の下方の位置には、処理室115の上部(特に上側の空間)の側壁を構成するように、内筒117が配置されている。内筒117は、真空容器104の側壁の内側の面に近接して配置されている。内筒117は、誘電体製の材料、本実施の形態の一例では石英で構成される、円筒形状の構造物である。内筒117は、言い換えると、軸対称形状の内壁部である。内筒117は、処理室115内のプラズマが形成される空間との間で、真空容器104の側壁の内側の面を覆うように配置されている。これにより、内筒117は、その真空容器104の側壁の面を、プラズマによるけずれや消耗等から保護する機能を持つ。
また、実施の形態では、真空容器104の処理室115を囲む側壁部分の面と、アース電極105の上端部とで形成される窪み(凹部)内に、内筒117の下部の一部が挿入されて、内筒117がアース電極105上に載せられるようにして保持されている。アース電極105のR方向での所定の内径と、内筒117のR方向での所定の内径とを有する。アース電極105の内径の方が内筒117の内径よりも小さい。アース電極105の周方向で延在する円周部分におけるR方向の所定の幅と、内筒117の周方向で延在する円周部分におけるR方向の所定の幅とを有する。アース電極105の幅の方が内筒117の幅よりも大きい。また、Z方向で、アース電極105の所定の高さ寸法と、内筒117の所定の高さ寸法とを有する。
なお、処理室115内の空間は、大別して、上部の空間と、下部の空間とを有する。下部の空間は、試料台106の試料2の面以下の部分とする。上部の空間は、試料台106の試料2の面以上の部分とする。上部の空間は、さらに、窓部材103等に近い上側の空間と、試料2の面に近い下側の空間とを含む。上側の空間には、リング状の領域203を含む。リング状の領域203は、静磁界やプラズマの分布の概要を説明するために、一部の空間領域を、破線の楕円を用いて模式的に示したものである。
[(6)静磁界発生装置]
プラズマ処理装置1は、静磁界発生装置として電磁石101を有する。電磁石101は、静磁界を生成する磁界生成器である。電磁石101は、真空容器104の外周、および円形導波管109の外周を囲むように、概略リング状に配置されている。電磁石101によって生起された静磁界は、真空容器104内の処理室115内にECRを生起するために供給される。
電磁石101は、複数のソレノイドコイル112と、ヨーク113とを含む、多段構造物として、本実施の形態の例では概略的に2段の構造物として、構成されている。複数の各々のソレノイドコイル112には、プラズマ処理装置1の図示しない制御部によって直流電力の大きさが調節されて供給される。複数のソレノイドコイル112は、多段のコイルとして構成され、第1コイル12Aと、第2コイル12Bとを有する。第1コイル12Aは上段部を構成しており、第2コイル12Bは下段部を構成している。
第1コイル12Aは、空洞部102の中央部を除く上面部の上方(空間212の上方)に近接して配置され、かつ円形導波管109の外周をリング状に囲むように配置されている。第1コイル12Aの外径は、真空容器104の外径よりも大きく、第2コイル12Bの外径と同程度である。第2コイル12Bは、空洞部102および処理室115の上部を含む部分を囲む真空容器104の側壁の外周を囲むように近接して配置されている。
ソレノイドコイル112の各々のコイルに供給される直流電力の大きさが調節されることで、電磁石101が発生する磁場の強さの分布が調節される。これにより、処理室115内での静磁界の強度あるいは磁力線の密度の分布が調節される。電磁石101は、処理室115の中心軸方向(Z方向)に対し概略的に平行な方向の成分を含む磁場(静磁界)を発生させる。この磁場(静磁界)における磁力線の一部の一例として、磁力線202を有し、点線曲線で模式的に示している。
ヨーク113は、多段の複数のソレノイドコイル112の周囲を一体的に囲むように配置された、磁性体製、導電体製の第1ヨークである。ヨーク113は、ソレノイドコイル112による磁場が外部に漏洩することの抑制、および磁界を処理室115内に効率良く供給する調整のために設けられている。ヨーク113は、飽和磁束密度の高い材質で作製されていることが望ましく、価格や入手のしやすさから、本実施の形態の一例では純鉄が用いられる。ヨーク113は、処理室115内に効率よく静磁界を加えるために、複数のソレノイドコイル112の全体を囲むように一体的な部材で構成されている。
ヨーク113は、詳しくは、複数の壁部として、外周部13A、上面部13B、および内周部13Cを有する。外周部13Aは、第1コイル12Aの外周および第2コイル12Bの外周を覆うように配置されている、円筒形状の部分である。上面部13Bは、第1コイル12Aの円周形状の上面を覆うように配置されている、所定の幅を持つ円周形状の部分であり、開口の中央部を持つリング形状の部分である。内周部13Cは、第1コイル12Aの内周と円形導波管109の外周との間で、第1コイル12Aの内周を覆うように配置されている、円筒形状の部分である。外周部13Aの上端部と上面部13Bの外周端部とが接続されている。上面部13Bの内周端部と内周部13Cの上端部とが接続されている。
内周部13Cは、円形導波管109の外周の側壁に近接して配置されている。内周部13Cは、円形導波管109の上端部の位置に対応して配置されている上端部からZ方向で下向きに下端部まで延在している。内周部13Cは、下端部が、空洞部102の上面部の上面に対して所定の距離の隙間を持って対向するように配置されている。内周部13Cの下端面は、上段の第1コイル12Aの底面の高さ位置以下の位置とされる。本実施の形態の一例では、内周部13Cの下端面は、第1コイル12Aの底面と同じ高さ位置としている。内周部13Cの下端部は、空洞部102の上面部を介して、ヨーク201の上端部に対向している。内周部13Cの下端部は、Z方向の延長上に、ヨーク201を介して、窓部材103の上面の一部に向いている。
実施の形態では、下段の第2コイル12Bおよびヨーク113の外周部13Aは、処理室115の上部の周囲を含むように、リング状に配置されている。第2コイル12Bおよびヨーク113(外周部13A)の下端は、Z方向の高さ位置として、少なくとも窓部材103の下面よりも下方の位置とされる。本実施の形態の例では、第2コイル12Bおよびヨーク113(外周部13A)の下端は、概略的に試料2の高さ位置付近で、アース電極105の下端面以下の位置まで延伸されている。ヨーク113の外周部13Aの下端面は、第2コイル12Bの下端面以下の位置とされる。第2コイル12Bの上端は、処理室115の上方の窓部材103の高さ位置よりも上方で、概略的に空洞部102の上面部の位置まで延伸されている。外周部13Aの上端は、第1コイル12Aの上面の位置まで延伸されている。第1コイル12Aおよびヨーク113の内周部13Cは、Z方向の高さ寸法としては、円形導波管109の高さ寸法と同程度である。
なお、複数のソレノイドコイル112およびヨーク113は、上記構成例に限らず、各種の変形が可能である。
本実施の形態で、電磁石101による静磁界は、磁力線の向きが、処理室115へのマイクロ波の電界の投入方向である中心軸方向(Z方向)と概ね平行となるように設定されている。マイクロ波の電界によるECRは、マイクロ波の進行方向と平行な静磁界によって効率よく起きることが知られているためである。この結果、本実施の形態で、処理室115内の静磁界は、処理室115内の中心軸を含む中央部において、概ね中心軸方向に沿った方向に磁力線が形成される構成となっている。
実施の形態の構成では、特に、電磁石101の中心軸に沿ってZ方向で上側から下側へ単調に弱くなる静磁界(発散磁場と称する)が発生する。電磁石101における複数のソレノイドコイル112は、上段の第1コイル12Aが相対的に強い静磁界を発生し、下段の第2コイル12Bが相対的に弱い静磁界を発生する。このため、上段の第1コイル12Aの起磁力は、下段の第2コイル12Bに比べ、相対的に大きくされている。
[(7)空洞部、第2ヨーク]
空洞部102は、円形導波管109の下端部と接続され、導波路の一部を構成している概略円筒形状の部分である。空洞部102は、円筒形状の側壁(真空容器104の上部側壁部)と、中央部に開口を持つリング状の上面部と、窓部材103による底面部とを有する。空洞部102は、真空容器104の一部、または真空容器104の側壁から上方に延長された部分として構成されている。空洞部102は所定の高さ寸法を有する。空洞部102の側面部および上面部は、真空容器104の壁部で構成されている。真空容器104の壁部は金属等の導電体製である。
実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理室115内のリング状の領域203に対応するリング状の分布を形成する作用を実現するための工夫として、空洞部102内にヨーク201を設けた。ヨーク201は、磁性体製、導電体製の部材により構成される円筒形状の構造物(言い換えると円筒構造部)である。本実施の形態の一例では、ヨーク201の材料として、ヨーク113と同様に、純鉄を用いた。ヨーク201は、電磁石101から処理室115へ供給される静磁界を調整する機能を有する。ヨーク201は、内部の空洞211が円形導波管109と連通していて、導波路の一部も構成しており、円形導波管としての機能も兼ねている。
ヨーク201の表面、すなわち側壁の内側面および外側面は、マイクロ波の電界の損失を低減し、電界の伝播の効率を高めるために、表面処理の膜として、導電率の高い材料として例えば銀がメッキ(被膜)されている。
空洞部102の径は、窓部材103や真空容器104の径と概略同程度に大きい。本実施の形態では、真空容器104の円筒形状の側壁において、処理室115の上部の外周を覆う側壁部分(下部側壁部)の所定の厚さと、空洞部102の外周を構成する側壁部分(上部側壁部)の所定の厚さとを有し、それらの厚さが異なる。下部側壁部の厚さよりも上部側壁部の厚さの方が小さい。それに対応して、処理室115内の空間の径よりも、空洞部102の内径の方が大きい。下部側壁部では、内側面に近接して内筒117およびアース電極105が設けられている。そのため、処理室115内の上部の空間の径よりも、空洞部102内の空間212の径(外径)の方が大きい。ガス分散板114および窓部材103は、処理室115の外周の側壁部分(下部側壁部)および内筒117の上端部の上に、外周端部が載るようにして保持されている。
ヨーク201の高さ寸法は、空洞部102の高さ寸法と同程度である。ヨーク201の円周形状の上端面は、空洞部102の上面部(中央部の開口の近傍)の下面に概ね接している。ヨーク201の円周形状の下端面は、窓部材103の上面の対応する一部に概ね接しており、言い換えると上面に載せられるようにして配置されている。ヨーク201の径は、円形導波管109の径よりも大きい。ヨーク201の径は、空洞部102や窓部材103や処理室115の径、試料台106および試料2の径よりも小さい。本実施の形態の例では、ヨーク201の内径は、ヨーク113の内周部13Cの径と同程度としている。
円筒形状の空洞部102内は、円筒形状のヨーク201の配置によって区画されることで、ヨーク201の内側の空洞211(円柱状空洞部)と、ヨーク201の外側の空間212(リング状空洞部)とを有する。空洞211は、円形導波管109と連通しており、底面は窓部材103の中央部によって構成されている。ヨーク201の外周は、リング状の空間212によって囲まれている。空間212は、底面が窓部材103の外周部によって構成されている。空洞211および空間212は、それぞれマイクロ波の電界が伝播する。マイクロ波の電界は、空洞211から下方の処理室115内の領域へ、窓部材103およびガス分散板114を介して透過する。同様に、マイクロ波の電界は、空間212から下方の処理室115内の領域へ、窓部材103およびガス分散板114を介して透過する。また、変形例として、ヨーク201の下端部や上端部に隙間の空間を設ける構成としてもよく、その場合、空洞部102内で、マイクロ波の電界がR方向で空洞211から空間212へその空間を通じて伝播する成分を持つ。
ヨーク201の内径および外径を含む寸法および形状は、下記のように選択されて設計されている。ヨーク201の内周の径、および空洞211の径は、空洞211をマイクロ波の電界が伝播する円形導波管として機能、動作させるために、円形導波管109内のマイクロ波の電界の最低次モードであるTE11モードが伝播できる寸法にされている。磁力線202は、内周部13Cの下端部から、ヨーク201の内部を通り、試料2の外周端の付近を貫通するように、Z方向の上から下へしだいに拡がる形状を持つ。このような磁力線202が形成されるように、ヨーク113およびヨーク201を含む構成要素の寸法や形状が選択されている。
電磁石101により形成される磁場は、処理室115内において発散磁場となる。そのため、図示のように、ヨーク201の内径は、試料2の直径(例えば300mm)よりも小さい値、本実施の形態の例では220mmにされている。このヨーク201の内径の値は、マイクロ波の周波数である本例での2.45GHzに対し、マイクロ波の電界がヨーク201の空洞211を最低次モードであるTE11モードで伝播できる条件を満たす。
図1のように、本実施の形態では、第2ヨークであるヨーク201は、内部に空洞211を構成する円筒形状を有し、円形導波管109の下方に連通して連続的に配置されている。そのため、このヨーク201は、円形導波管(第2円形導波管)として機能する。円形導波管109からの電界は、Z方向でヨーク201内の空洞211に導入されて空洞211内や空間212内を伝搬する。その電界は、さらに下方にある窓部材103の部分を透過して処理室115内の上部に放射状に導入される。その電界は、処理室115内のリング状の領域203では、相対的に強い静磁界の作用によって、相対的に強度が大きくなる。これにより、処理室115内の上部のリング状の領域203に対応して、プラズマの強度または密度の分布として、リング状の分布が形成される。
また、図1のように、本実施の形態では、電磁石101のヨーク113(第1ヨーク)と、空洞部102内のヨーク201(第2ヨーク)とは、磁界に関する機能や作用の点で関連した部分であり、それらを含めて1つのヨーク構造物として捉えることもできる。形状としては、ヨーク113の内周部13Cの下端からZ方向に延長する領域にヨーク201が配置されている。この内周部13Cとヨーク201とによるヨーク構造物は、磁力線202のように所定の好適な磁界を形成するように、ソレノイドコイル112による磁界を調整する。
なお、ヨーク201と窓部材103については、上記のように略接する構成に限らず、ヨーク201の下端面と、窓部材103の上面との間に、所定の距離の隙間を設けるようにしてもよい。あるいは、ヨーク201の上端面と、空洞部102の上面部との間に、所定の距離の隙間を設けるようにしてもよい。
[(8)電界、静磁界、およびプラズマの分布]
本発明者は、従来技術のプラズマ処理装置に対し、処理室115内の試料2の上方の空間にリング状の分布を持つプラズマを生成するための改良を検討した。本発明者は、そのリング状の分布のプラズマを生成するために、処理室115内の試料2の上方の空間(特に窓部材103に近い上側の空間)に、相対的に磁場の強い領域をリング状に形成することを検討した。この検討の結果、本発明者は、試料2の外周部付近をZ方向に貫通する磁力線202が窓部材103と交わる点の位置を基準にして、ヨーク201を用いて、相対的に磁場の強い領域をリング状に形成する構成を想起した。
図1で、処理室115の上部の空間のうち、窓部材103およびヨーク201に近い上側の空間における、リング状の領域203を模式的に示している。磁力線202を中心としてそれに沿うようにリング状の領域203を有する。ヨーク113の内周部13Cに沿った磁力線202は、ヨーク201に沿って概ねZ方向に延在しつつ、しだいにR方向の外周側へ放射状に拡大するように延在し、試料台106の試料2の外周端の付近を通る。図1のヨーク113およびヨーク201の形状および配置によって、磁力線202を含む静磁界の磁場が形成される。特に、ヨーク113の内周部13C、ヨーク201の下端部、およびヨーク113の外周部13Aの下端部等の配置から、Z方向で外周側へしだいに拡散する形状の磁力線202が形成される。
前述のマイクロ波の電界および電磁石101からの静磁界に基づいて、ヨーク201を含む構成の作用によって、ヨーク201の下方の処理室115内の窓部材103等に近い上側の空間に、リング状の静磁界の分布が形成される。このリング状の領域203は、処理室115内の空間での静磁界の分布を考えた場合に、静磁界が相対的に強い領域であり、相対的に強い磁場が形成される領域である。この領域203では、磁力線202の付近で静磁界が一番強い。R方向でこのリング状の領域203の外側にある領域(すなわち中心軸を含む中央部の領域や内筒117の近傍の領域)では、静磁界が相対的に弱い領域となっている。
これにより、そのリング状の領域203では、相対的にプラズマの形成が促進され、そのリング状の領域203の外側にある領域では、相対的にプラズマの形成が抑制される。すなわち、そのリング状の領域203の静磁界の分布に対応させて、マイクロ波の電界と静磁界との相互作用に基づいて、プラズマの強度や密度の分布として、リング状の分布が形成される。リング状の領域203では相対的にプラズマの強度または密度が大きく、そのリング状の領域203の外側にある領域(中央部や内筒117の近傍の領域)では相対的に強度または密度が小さい分布となる。
一般に、プラズマは、磁力線に垂直な方向には拡散が抑制され、磁力線に沿った方向には拡散しやすい。そのため、試料2の外周部付近(例えば外周端またはその近傍の箇所)を貫通する磁力線202を含む静磁界に沿って、上記のようにリング状の領域203に対応したプラズマの分布となる構成とする。これにより、磁力線202に沿った拡散によって、試料2の径方向での特定の位置またはその位置を含む範囲で、プラズマの強度または密度が相対的に高い値となる。
このプラズマの強度または密度は、処理室115内の上部の空間において、窓部材103に近いZ方向で上側の位置から試料2の面に近い下側の位置に行くに伴って低下する、あるいは値のばらつきが緩和される。図1のように、磁力線202に沿ったリング状の領域203からさらに下側の空間(試料2の面に近い下側の空間)を考えた場合、4つの実線矢印で模式的に示すように、プラズマの強度や密度は、R方向で中央部や外周部へ拡散する。これにより、試料2の面内のR方向でのプラズマの強度または密度は、上側の空間のリング状の分布から、下側の空間では、より均一で平らな分布へ変化する。
したがって、実施の形態のプラズマ処理装置1では、処理室115内の上部の空間、特に試料2に近い下側の空間でのプラズマの強度や密度の分布としては、従来技術の中高の分布(凸分布)が抑制されることで、より均一で平らな分布に近付けられる。すなわち、実施の形態では、試料2の上面の付近でのR方向でのプラズマの強度または密度の分布としては、中央部でも外周部でも同程度の平らな分布が実現できる。これにより、試料2の面内のR方向でのエッチング等の処理の特性のばらつきが低減されて、より均一な特性(例えば処理速度や加工形状)が実現できる。よって、試料2の処理の歩留まりを向上できる。また、プラズマ分布の設計としては、上記平らな分布に限らず、静磁界等の設計に応じて凹分布(R方向で中央部よりも外周部で強度等が大きい分布)等に設計することも可能である。
磁化プラズマ中のマイクロ波の伝播特性は、理論的にある程度解明されている。すなわち、静磁界に沿う方向に伝播するR波と呼ばれる円偏波(右円偏波)は、ECR条件の静磁界を越える強磁場領域でプラズマ密度に関係なくプラズマ中を伝播できることが知られている。また、前述のECR条件を満たす箇所で、マイクロ波の電力は、電子にきわめて効率よく吸収されることが知られている。そのため、ECR条件を満たす箇所に、マイクロ波の電力を効率よく伝播させるために、強磁場領域からマイクロ波を導入し、プラズマ中を伝播させることが行われる。
本実施の形態では、処理室115の上部の空間(特に窓部材103に近い上側の空間)に、上記リング状に相対的に強い静磁界が形成され、処理室115の下部の空間に相対的に弱い静磁界が形成される。そのような静磁界が形成されるように、電磁石101の各段のソレノイドコイル112に供給される直流電流の大きさが調節される。さらに、上記処理室115の上部と下部との中間部分において、ECR条件を満足する磁束密度となるように、各段のソレノイドコイル112に供給される直流電流の大きさが調節される。ECR条件を満足する磁束密度は、マイクロ波の周波数が本例での2.45GHzの場合、0.0875テスラである。各段のソレノイドコイル112に供給される直流電流の大きさは、前述の制御部から指令信号に基づいて調節される。
上記のように、実施の形態のプラズマ処理装置1では、電磁石101およびヨーク201を含む設計によって、処理室115内で好適な静磁界の分布(リング状の分布)を形成できる。そして、実施の形態のプラズマ処理装置1によれば、異なる処理の条件に対応して、処理室115内の試料2の上面の上方の空間で、適切に強度または密度の分布が調節されたプラズマを形成することができる。すなわち、異なる各種の処理に応じた、好適な各種の特性が実現できる。
本実施の形態のプラズマ処理装置1では、円形導波管109と処理室115の上面部である窓部材103との間にマイクロ波の電界を伝播する空洞部102を有し、空洞部102内に、円形導波管としての機能も持つ所定の径を持つヨーク201が配置されている。ヨーク201の径は、窓部材103等の径よりも小さく、それにより、空洞部102内にはリング状の空間212が構成されている。ヨーク201の外周がリング状の空間212によって囲まれている。マイクロ波の電界は、ヨーク201内の空洞211およびヨーク201外の空間212を伝播し、窓部材103等を透過して処理室115内に導入される。処理室115内の外周部の空間にも電界が導入される。上記空洞部102およびその中のヨーク201は、磁力線202を形成するように設計されている。そして、ヨーク201の下端部に近い下方の位置に対応したリング状の領域203に強い静磁界が形成され、対応してそのリング状の領域203で強度が大きいプラズマ分布が形成される。
[第1変形例]
実施の形態のプラズマ処理装置1の変形例として以下が挙げられる。実施の形態の構成で、マイクロ波の電界の反射が大きく、処理に適したプラズマの発生や維持が難しい場合等には、以下のような第1変形例を採用してもよい。
図2は、第1変形例のプラズマ処理装置1の構成概要を図1と同様に縦断面で示す。図2に示すように、第1変形例の構成では、実施の形態と異なる構成要素として、テーパ導波管301、誘電体板302を有する。第1変形例の構成では、円形導波管109の下端部と、ヨーク201の上端部および空洞部102の上面部の中央部の開口との間に、両者を接続するように、テーパ導波管301が配置されている。図2の円形導波管109は、図1の円形導波管109よりも高さ寸法が小さい。テーパ導波管301の上面の開口は、円形導波管109の下面の開口と連通しており、両者の径が同じである。テーパ導波管301の下面の開口は、ヨーク201の上面の開口および空洞部102の上面部の開口と連通しており、両者の径が同じである。
テーパ導波管301は、縦断面で台形であり、Z方向で上から下へ径が一定に拡大する形状を有し、側壁が一定の傾きを持つ斜面であるテーパ形状または円筒形状を有する導波管である。テーパ導波管301の側壁の外周には、ヨーク113の内周部13Cの下端部が配置されている。テーパ導波管301は、Z方向で円形導波管109から伝播されたマイクロ波の電界を、空洞部102内、特にヨーク201内の空洞211へ伝播する。
第1変形例の構成で、電磁石101のヨーク113の内周部13Cからの磁力線202は、テーパ導波管301を通って、実施の形態と同様に、ヨーク201に達し、ヨーク201に沿って概略的にZ方向に延在して放射状に拡大しながら、試料台106の試料2の外周端付近へと達する。このことから、テーパ導波管301の材料としては、透磁率および飽和磁束密度の高い材料で構成することが望ましく、第1変形例では純鉄を用いた。
また、第1変形例の構成では、円筒形状のヨーク201内の空洞211の下部において、窓部材103の上面に接するように、誘電体板302が配置されている。誘電体板302は、マイクロ波を透過する誘電体製の円板形状の部材であり、マイクロ波の電界の反射波の制御および調整用の部材である。誘電体板302として本例では石英を用いた。誘電体板302は、外径がヨーク201の内径および空洞211の径と同程度である。誘電体板302の外周端面の形状は、円筒形状のヨーク201の側壁の内周面の形状と合致している。誘電体板302は、窓部材103の上面に載せられるようにして保持されている。誘電体板302は、外周端部がヨーク201の下端部の側壁の内周面に接続されるようにして保持されてもよい。
図2の厚さH2は、窓部材103の一定の厚さ(Z方向の高さ寸法)を示す。厚さH3は、誘電体板302の一定の厚さを示す。厚さH1は、窓部材103の厚さH2と誘電体板302の厚さH3とを合わせた厚さを示す(H1≒H2+H3)。誘電体板302のZ方向の厚さH3は、ヨーク201を含む空洞部102内を伝播するマイクロ波の電界による窓部材103またはプラズマからの反射を抑制できる値に設計されている。
上記のような第1変形例の構成によって、処理室115内にプラズマを安定して生成および維持させることができる。図1の実施の形態および図2の第1変形例のプラズマ処理装置1において、本発明者が、試料2の上面の径方向についてのイオン電流の値の分布を検出したところ、以下のようなことが判明した。前述のように、従来技術のプラズマ処理装置の構成では、処理室内の試料の径方向でのプラズマの密度や強度の分布として、中高の分布(凸分布)となる。それに対し、実施の形態および第1変形例の構成では、従来の中高の分布が抑制および改善されて、処理室115内の試料2の面の近くの径方向でのプラズマの密度および強度の分布として、平らに近い分布が実現できる。
[第2変形例]
図3は、第2変形例のプラズマ処理装置1の構成概要を図1と同様に縦断面で示す。第2変形例では、第1変形例に対し、異なる構成要素としては、ヨーク401および誘電体板402を有する。
図1の実施の形態または図2の第1変形例のプラズマ処理装置1の構成において、ヨーク201の直下の領域に、集中した強い静磁界を形成するためには、ヨーク201の下端を窓部材103の上面にできるだけ近い位置に配置することが望ましい。しかしながら、ヨーク201と窓部材103とが接触して配置される構成とする場合、例えばヨーク201が加熱によって膨張することで窓部材103が破損する恐れがある。あるいは、電磁石101に通電が開始された際等、磁場の強度が変更された際に、ヨーク201に静磁界による力が加わることで窓部材103が破損する恐れがある。
そこで、図3の第2変形例を採用してもよい。第2変形例の構成では、空洞部102内のヨーク201に代わるヨーク401(円筒形状構造部)は、ヨーク401の下端と窓部材103の上面との間に、所定の距離K1での隙間403の空間が生じるように、所定の形状で配置されている。この構成では、隙間403の空間があるので、窓部材103の破損等が防止される。また、この構成では、空洞部102内に隙間403の空間があるので、ヨーク401内の空洞211からその隙間403の空間を通じて外側のリング状の空間212へマイクロ波の電界が伝播する成分を有する。
さらに、第2変形例の構成では、ヨーク401内の空洞211の下端部には、誘電体製の円板形状の誘電体板402が配置されている。誘電体板402として本例では石英を用いた。誘電体板402の外周端部がヨーク401の下端部と接続されている。誘電体板402も、ヨーク401と同様に、誘電体板402の下面と窓部材103の上面との間に、所定の距離(距離K1と同程度の距離)での隙間403の空間が生じるように、所定の形状で配置されている。
ヨーク401および誘電体板402と窓部材103との隙間403の空間の所定の距離は、マイクロ波の電界の反射を考慮して適切な距離に設計されている。
第2変形例でも、ヨーク401は、円形導波管として機能している。ヨーク401の下端面の位置ではマイクロ波の電界の反射波が生じる。一方、窓部材103の上面の位置でも同様にマイクロ波の電界の反射波が生じる。
そこで、第2変形例では、ヨーク401の下端面からの反射波と窓部材103の上面からの反射波とで相互の振幅を打ち消し合うような位相差が生じるように、ヨーク401および誘電体板402の下面の位置、および上記隙間403の距離が適切に設計されている。その設計に対応させて、ヨーク401および誘電体板402の寸法や形状等が選択されている。これにより、上記ヨーク401の下端面の反射波と窓部材103の上面の反射波との両方の反射波を互いに打ち消し合わせて、全体の反射波の量が低減できる。
例えば、180度の位相差は、行路差で半波長に相当する。よって、窓部材103の上面でのマイクロ波の電界については、ヨーク401の下端と窓部材103の上面との間の距離K1での往復が行路差に一致することになる。このため、距離K1を、マイクロ波の電界の四分の一波長にすることで、全体的に反射波が低減できることになる。また、距離K1は、図3のような誘電体板402の併用によって、短縮することができる。すなわち、図3の隙間403の距離K1は、マイクロ波の電界の四分の一波長よりも短い距離である。この場合、ヨーク401の下端を、処理室115の方により近付けて配置することができる。よって、ヨーク401の直下の領域(図1でのリング状の領域203)に、強い静磁界を発生させやすく、処理室115内の強い静磁界を有効に利用して、好適なプラズマ分布を形成することができる。
上記のような考察に基づいて、第2変形例の構成では、ヨーク401の下端と窓部材103の上面との間の隙間403の距離K1が、適切に設計されている。すなわち、距離K1は、ヨーク401と窓部材103との機械的な接触や衝突を避けるとともに、ヨーク401および窓部材103で生じる反射波を効果的に抑制できる値に設計されている。マイクロ波の周波数が2.45GHzである構成では、隙間403の距離K1は3mmである。
また、図3の構成では、特に、ヨーク401の下端部は、内周側に出た部分を有し、その出た部分の上に、誘電体板402の外周端が載せられるようにして保持されている。ヨーク401の下端面の位置から、その出た部分の高さ寸法に対応した距離の位置に、誘電体板402の下面が配置されている。誘電体板402の下面と窓部材103の上面との距離は、距離K1と、その出た部分の高さ寸法とを合わせた距離である。
第2変形例の構成によれば、上記のような窓部材102の破損等を防止しつつ、マイクロ波の電界の反射波を抑制する効果が得られる。なお、上記のようにZ方向でヨーク401と窓部材103との間に距離K1を設ける構成とする場合、空洞部102内で共振が生起できる条件を満たす所定の距離以下の距離とされる。
[第3変形例]
第3変形例として以下の構成も可能である。図2を用いて説明する。第3変形例の構成では、図2の第1変形例の誘電体板302および平らな円板状の窓部材103に代えて、厚さが異なる部分を含む軸対称形状の窓部材(凸状窓部材)を有する。この凸状窓部材は、第1変形例の誘電体板302および窓部材103を一体にした部材に対応する。この凸状窓部材は、ヨーク201の内径に対応する部分である中心軸を含む中央部に凸部を有する。この凸部は、外周部よりも厚さが大きい円板状または円柱状の部分である。この凸部は、凸状窓部材のうち、ヨーク201の内径に対応する面以内にあり、空洞211の下にある部分である。この凸状窓部材の外周部の厚さが厚さH2であり、凸部の厚さが厚さH1である。凸部の上面の高さ位置は、外周部の上面の高さ位置よりも、厚さH3の差で上の位置である。第3変形例によれば第1変形例と同様の効果が得られる。
[第4変形例]
第4変形例として以下の構成も可能である。図3を用いて説明する。図3の第2変形例のように誘電体板402がヨーク401の下端部で保持される構成に限らず可能である。上記反射波が充分に低減される条件の範囲内で、誘電体板402のZ方向の位置、および円板の厚さ等が選択可能である。第4変形例の構成では、誘電体板402の下面が窓部材103の上面に接するように、誘電体板402が窓部材103の上面に載せられている構成とする。この構成の場合、誘電体板402の外周端面は、ヨーク401の下端面と窓部材103の上面との隙間403の空間を介して、ヨーク401の外側の空間212に面する。第4変形例によれば第2変形例等と近い効果が得られる。
[他の変形例]
他の変形例として、空洞部102内に配置されるヨーク201について、ヨーク201の上端部と空洞部102の上面部等の対応する部分との間に、所定の距離での空間を設けてもよい。この構成でも、窓部材103とヨーク201との接触に基づいた破損等を防止できるとともに、マイクロ波の電界が空洞211からその空間を通じて空間212へ伝播する成分を設けることができる。
他の変形例として、空洞部102内のヨーク201は、Z方向で径が異なる複数のヨーク部材を用いて多段のヨークとして構成されてもよい。例えば、Z方向で上側には第1径を持つヨークを有し、その下側には第1径よりも大きい第2径を持つヨークが接続されている構成が挙げられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1…プラズマ処理装置、2…試料、101…電磁石、102…空洞部、103…窓部材、104…真空容器、105…アース電極、106…試料台、107…方形導波管、108…方形円形変換器、109…円形導波管、110…マイクロ波源、112…ソレノイドコイル、12A…第1コイル、12B…第2コイル、113…ヨーク、13A…外周部、13B…上面部、13C…内周部、114…ガス分散板、115…処理室、117…内筒、201…ヨーク、202…磁力線、203…領域、211…空洞、212…空間。

Claims (15)

  1. 真空容器内に配置されプラズマが形成される処理室と、
    前記処理室の下部に配置され前記プラズマを用いた処理の対象となる試料が載置される試料台と、
    前記処理室の上面部を構成し前記プラズマを形成するための電界が透過し前記処理室の中心軸に対し軸対称形状を持つ誘電体製の窓部材と、
    前記窓部材の上方に前記中心軸に沿って配置され前記電界が伝播する導波管を含む導波路と、
    前記窓部材の上方に前記中心軸に沿って配置され前記導波管の下端部と連通して接続され前記電界を伝播し前記導波管よりも径が大きい軸対称形状を持つ空洞部と、
    前記真空容器の側壁における前記処理室を囲む部分、および前記導波管の外周を囲むように配置され、前記プラズマを形成するための磁界を発生するコイルと、前記コイルを囲むように配置され下端が少なくとも前記窓部材よりも下方の位置にある磁性体製の第1ヨークとを含む磁界発生装置と、
    前記空洞部内に前記中心軸に沿って配置され軸対称形状を持つ磁性体製の第2ヨークと、
    を備える、プラズマ処理装置。
  2. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークの下端部の径は、前記導波管の径よりも大きく、前記窓部材、前記試料台、および前記試料の径よりも小さい、
    プラズマ処理装置。
  3. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記空洞部内には、前記第2ヨーク内の空洞と、前記第2ヨークの外周側にあるリング状空間とを有し、
    前記電界は、前記空洞および前記リング状空間を伝播する、
    プラズマ処理装置。
  4. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記磁界発生装置は、
    前記コイルとして、前記導波管の外周かつ前記空洞部の上面部の外側に配置されている第1コイルを含み、
    前記第1ヨークは、前記第1コイルの内周側で前記導波管の外周を囲むように配置されている内周部を含み、
    前記磁界は、前記中心軸の方向に対し概ね平行な方向に供給される成分を含む、
    プラズマ処理装置。
  5. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記磁界発生装置は、
    前記コイルとして、前記導波管の外周かつ前記空洞部の上面部の外側に配置されている第1コイル、および前記真空容器の側壁の外周に配置されている第2コイルを含み、
    前記第1ヨークは、前記第1コイルの内周側で前記導波管の外周を囲むように配置されている内周部、前記第1コイルの上面外側に配置されている上面部、および前記第2コイルの外周に配置されている外周部を含み、
    前記磁界は、前記中心軸の方向に対し概ね平行な方向に供給される成分を含む、
    プラズマ処理装置。
  6. 請求項4記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークの径と前記第1ヨークの前記内周部の径とが同程度である、
    プラズマ処理装置。
  7. 請求項4記載のプラズマ処理装置において、
    前記第1ヨークの前記内周部は、前記中心軸に対し軸対称形状を有し、下端面が、前記第1コイルの下面以下の位置にあって、前記空洞部の上面部の上面に対向するように配置されている、
    プラズマ処理装置。
  8. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨーク内の空洞の下部で前記中心軸に沿って配置されている軸対称形状を持つ誘電体板を有する、
    プラズマ処理装置。
  9. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記窓部材は、前記第2ヨークの内径に対応する面以内にあって第1厚さを持つ凸状中央部と、前記凸状中央部の外周側にあって前記第1厚さよりも小さい第2厚さを持つ外周部と、を有する、
    プラズマ処理装置。
  10. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークの下端部の下面と前記窓部材の上面との間に所定の第1距離の第1空間を有する、
    プラズマ処理装置。
  11. 請求項10記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨーク内の空洞の下部で前記中心軸に沿って配置されている軸対称形状を持つ誘電体板を有し、
    前記誘電体板は、前記第2ヨークの下端部に接続され、下面と前記窓部材の上面との間に所定の第2距離の第2空間を有する、
    プラズマ処理装置。
  12. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記導波管は、一定の径の円形導波管と、前記円形導波管の下端部に連通して接続され下方向で径が増加して下端部が前記第2ヨークの上端部に接続されるテーパ形状導波管と、を有する、
    プラズマ処理装置。
  13. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークは、側壁の少なくとも内周側の表面に導電性材料製の膜を有する、
    プラズマ処理装置。
  14. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークの上端部の上面と前記空洞部の上面部の下面との間に所定の距離の空間を有する、
    プラズマ処理装置。
  15. 請求項1記載のプラズマ処理装置において、
    前記第2ヨークは、前記中心軸の方向で、径が異なる複数のヨーク部材を用いて多段のヨークとして構成されている、
    プラズマ処理装置。
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