JP2019120213A - オイルレス圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ライナ部及び摺接リップの交換頻度が低く経済的なオイルレス圧縮機を提供する。【解決手段】ピストンリップ(29,30)は、円盤状の外縁部(31)がカップ型に立体成形されてライナ部(12)に摺接して気密機能を有する摺接リップ(32)と、それより内周側に位置して摺接しない非摺接部(37,38)とにより構成され、非摺接部(37,38)は、屈曲部(34)と固定部(35,36)とに区別され、円盤状の外縁部(31)から内周側へと、摺接リップ(32)、屈曲部(34)、及び固定部(35,36)の順に延在し、摺接リップ(32)の厚さJと、屈曲部(34)の厚さNとの関係をJ>Nで規定する。非摺接部(37,38)の厚さKは、屈曲部(34)の厚さNと、固定部(35)の厚さM,Lとに区別され、各厚さJ,N,M,Lの関係が、J>N=M、N<J≦L、又はN<L<Jで規定される。【選択図】図4

Description

本発明は、オイルレス圧縮機に関し、より詳細には、シリンダ潤滑油を必要としない往復式の気体圧縮機であるオイルレス圧縮機に関するものである。
弗素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分とするピストンリップ(「ピストンパッキン」、又は「周縁シール」とも呼ばれる)が用いられているオイルレス圧縮機が、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
ピストンリップは、円盤状の外縁部をカップ型に立体成形され、シリンダライナの内周面(以下、「ライナ部」ともいう)に摺接する部分(以下、「摺接リップ」ともいう)と、より内周側に位置して摺接しない部分(以下、「非摺接部」ともいう)と、より構成されている。また、非摺接部は、屈曲部と固定部とに区別できる。ピストンリップは、円盤状の外縁部から内周へと、摺接リップ、屈曲部、及び固定部の順に延在する。
特開平10−115283号公報 特開昭50−115314号公報 特開昭51−039407号公報
しかしながら、従来のオイルレス圧縮機において、摺接リップの寿命を延ばすためには、摺接リップ全体の板厚を厚くした場合、屈曲部のしなやかさが著しく低下して、シリンダライナの内周面と摺接リップとの接触圧力が増加する。これにより、シリンダのライナ部と摺接リップとの摺動抵抗が大きくなり、ピストンの駆動源である電動機等の負荷が大きくなって、この電動機等のエネルギー消費効率が低下する。また、摺接リップの摺動に対するライナ部の耐磨耗性も低下し、ライナ部及び摺接リップの交換頻度が高くなり、その結果、オイルレス圧縮機の運転経費が増加するという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シリンダのライナ部及び摺接リップの寿命を延ばして、交換頻度、及び運転経費を低減できるオイルレス圧縮機を提供することにある。そのために、ライナ部と摺接リップとの摺動抵抗、及びピストンの駆動負荷を低減すると共に、ライナ部の耐磨耗性を維持することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に係る発明は、シリンダ(10)と、該シリンダ(10)内に密嵌されて往復運動することにより圧縮空気を生成するピストン(20)と、該ピストン(20)を駆動する駆動部(50)と、を備えたオイルレス圧縮機(100,200)であって、
前記シリンダ(10)の内周面に前記ピストン(20)を摺接受容するライナ部(12)が形成され、
前記ピストン(20)は、
前記ライナ部(12)の内径(D)に対して隙間(G)の分だけ縮径された外径(F)のピストン本体(21)と、
前記ピストン本体(21)の外径(F)からはみ出して前記隙間(G)を塞ぐピストンリップ(29,30)と、
該ピストンリップ(29,30)を前記ピストン本体(21)の頭部(22)との間に挟持して固定するためのリップ固定板(23)と、
を備え、
前記ピストンリップ(29,30)は、
円盤状の外縁部(31)がカップ型に立体成形されて前記ライナ部(12)に摺接して気密機能を有する摺接リップ(32)と、
該摺接リップ(32)より内周側に位置して摺接しない非摺接部(37,38)と、により構成され、
該非摺接部(37,38)は、屈曲部(34)と固定部(35,36)とに区別され、
円盤状の前記外縁部(31)から前記内周側へと、前記摺接リップ(32)、前記屈曲部(34)、及び前記固定部(35,36)の順に延在し、
前記摺接リップ(32)を厚さJとし、前記屈曲部(34)を厚さNとし、
前記各厚さJ,Nの関係が、J>N、で規定されるものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のオイルレス圧縮機(100,200)において、前記摺接リップ(32)の厚さJは、前記屈曲部(34)に近い所から前記外縁部(31)へ近づくにつれて厚みを増すように形成されたものである。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のオイルレス圧縮機(100,200)において、前記摺接リップ(32)の厚さJは、前記屈曲部(34)の厚さNに対し、圧接方向(E)に突出して肉厚に形成されたものである。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のオイルレス圧縮機(100,200)において、前記ピストンリップ(29)における前記非摺接部(37)の厚さ(K)は、前記屈曲部(34)の厚さNと、前記固定部(35)の厚さMとに区別され、
前記各厚さJ,N,Mの関係が、J>N=M、で規定されるものである。
請求項5に係る発明は、請求項1に記載のオイルレス圧縮機(200)において、前記ピストンリップ(30)における前記非摺接部(38)の厚さ(K)は、前記屈曲部(34)の厚さNと、前記固定部(36)の厚さLとに区別され、
前記各厚さJ,N,Lの関係が、N<J≦L、又はN<L<Jで規定されるものである。
請求項6に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載のオイルレス圧縮機(100)において、前記リップ固定板(23)の下側外周には段差を設けた切欠部(3)が形成され、
ピストン本体(21)の頭周部(221)が一段高く凸条(4)で縁取りされ、
該凸条(4)は前記切欠部(3)に密嵌可能であり、
該切欠部(3)に環状のピストンリップ(29)を嵌着した状態で前記リップ固定板(23)がピストン本体(21)の頭部(22)に固定されるものである。
請求項7に係る発明は、請求項1〜3及び5の何れかに記載のオイルレス圧縮機(200)において、前記固定部(36)の厚さLと、前記切欠部(3)の高さを同じに揃えたものである。
本発明によれば、シリンダのライナ部及び摺接リップの寿命を延ばして、交換頻度、及び運転経費を低減できるオイルレス圧縮機を提供できる。特に、ライナ部と摺接リップとの摺動抵抗、及びピストンの駆動負荷を低減すると共に、ライナ部の耐磨耗性を維持するようにしたオイルレス圧縮機を提供できる。
本発明の一実施形態に係るオイルレス圧縮機(以下、「本機」ともいう)の全体形状を説明する図であり、図1(A)は側断面図、図1(B)はX−X´切断面による平面断面図である。 図1の本機におけるピストンの要部分解斜視図である。 図1の本機における圧縮室を示す側断面図である。 図1の本機に装着されたピストンリップ周辺(丸囲み)の要部拡大断面図であり、図4(A)は第1実施形態に係る本機を構成し、全体的に薄く形成されたピストンリップ、図4(B)は第2実施形態に係る本機を構成し、固定部が厚く形成されたピストンリップ、をそれぞれ示している。 図4(B)に示す第2実施形態のピストンリップを、図4(A)に示す第1実施形態のピストン本体に固定した変形実施例の要部拡大断面図である。 図4のピストンリップが使用に応じて摩耗した状態を説明する要部拡大断面図であり、図6(A)は図4(A)のピストンリップが摩耗した状態、図6(B)は図4(B)のピストンリップが摩耗した状態、をそれぞれ示している。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。まず、本発明を説明する上で、本機の必要最小限の要件について、図1〜図3を用いて簡単に説明する。つぎに、本発明の核心部分については、要部を拡大した図4及び図6を用いて重点的に説明する。最後に、必ずしも本発明の本質でない箇所の概略構成については、再度、図1〜図3を用いてより詳細に説明する。なお、各図にわたって、同一効果の部位には同一符号を付して説明の重複を避ける。
図1は、本発明の一実施形態に係るオイルレス圧縮機(以下、「本機」ともいう)の全体形状を説明する図であり、図1(A)は側断面図、図1(B)はX−X´切断面による平面断面図である。図1(A)に示すように、オイルレス圧縮機200は、シリンダ10と、そのシリンダ10内に密嵌されて往復運動することにより圧縮空気を生成するピストン20と、ピストン20を駆動する駆動部50と、を備えて構成されている。なお、図1(A)は第2実施形態に係る本機200を示しているが、第1実施形態に係る本機100にも概ね共通しており、両者の相違点については、図4及び図6を用いて後述する。
図1(B)に示すように、オイルレス圧縮機100,200は、シリンダ10の上端を弁シート41で封じられ、下側の圧縮室43と上側の気体室53とに区切られている。その気体室53は分離壁81により吸入口55側と吐出口56側との2区画に分離され、弁シート41の各区画に対応するところにリード弁46,47がそれぞれ配設されている。吸入口55側のリード弁46は弁シート41の下面に配設され、上から下向きに開弁して吸気のみを通過させる。吐出口56側のリード弁47は弁シート41の上面に配設され、下から上向きに開弁して排気のみを通過させる。
図2は、図1の本機におけるピストンの要部分解斜視図である。図2に示すように、ピストンリップ29,30は、リップ固定板23により、ピストンリップ29,30をピストン本体21の頭部22との間に挟持して固定される。ピストン本体21の頭部22には、その中心部で垂直方向にネジ孔2が穿設され、雌ねじが切られている。リップ固定板23にも中心にねじ孔5が穿設されているので、そこを通してねじ1をネジ孔2に締めることにより、ピストンリップ29,30をピストン本体21に挟持するように固定できる。
図3は、図1の本機における圧縮室を示す側断面図である。図3に示すように、シリンダ10は、その内周面にピストン20を摺接受容する内径Dのライナ部12が形成されている。ピストン20は、ピストン本体21と、ピストンリップ30と、リップ固定板23と、備えて構成されている。ピストン本体21は外径Fであり、この外径Fは、ライナ部12の内径Dに対して隙間Gだけ縮径されて構成されている。
図4は、図1の本機に装着されたピストンリップ周辺(丸囲み)の要部拡大断面図であり、図4(A)は第1実施形態に係る本機を構成し、全体的に薄く形成されたピストンリップ、図4(B)は第2実施形態に係る本機を構成し、固定部が厚く形成されたピストンリップ、をそれぞれ示している。図4に示すように、リップ固定板23の下側外周には段差を設けた切欠部3が形成され、その切欠部3に環状のピストンリップ29,30を予め嵌着した状態で、リップ固定板23がピストン本体21の頭部22にねじ止めされる(図2)。
図4に示すように、このピストンリップ29,30は、摺接リップ32と、その摺接リップ32より内周側に位置して摺接しない非摺接部37,38と、により構成されている。摺接リップ32は、円盤状の外縁部31がカップ型に立体成形されてライナ部12に摺接することにより気密機能を有する。非摺接部37,38は、屈曲部34と固定部35,36とに区別される。
ピストンリップ29,30は、2種類の何れか一方をピストン本体21に取り付ければ足りる。ピストンリップ29は、第1実施形態に係る本機100を構成する。ピストンリップ30は、第2実施形態に係る本機200を構成する。ピストンリップ29,30は、ピストン本体21の外径Fから所定寸法だけはみ出して隙間Gを塞ぐことにより、気密性を高める。なお、隙間Gの全部について、常時稠密に閉塞された状態とせず、内周方向にあそびTだけの余裕を残すように構成した方が、円滑なピストン動作ができる。
図4(A)に示す第1実施形態に係る本機100では、ピストンリップ29を用い、図4(B)に示す第2実施形態に係る本機200では、ピストンリップ30が用いられている。これらのピストンリップ29,30の相違点については後述する。また、ピストンリップ29,30それぞれの特徴ある形状に対応して特化するように、ピストン本体21の頭部22における装着部分が、僅かに異なる専用形状であるが、装着部分以外の大部分は略共通する形状であるため、同一の符号でピストン本体21及びその頭部22を示している。
[第1実施形態]
図4(A)に示す第1実施形態に係る本機100では、ピストン本体21の頭周部221が一段高く凸条4で縁取りされ、その凸条4がリップ固定板23の下側外周に形成された切欠部3に密嵌可能である。ただし、密嵌する箇所にも最小限のあそびを設けると共に、所定の締めしろも残してある。これら凸条4と切欠部3の間に環状のピストンリップ29の固定部35が挟持された状態でリップ固定板23がピストン本体21の頭部22に固定される。
リップ固定板23の切欠部3には、まずピストンリップ29の固定部35を密着させるように嵌着し、それを凸条4で精密に挟持するように構成されている。これら凸条4と切欠部3の間に、薄く形成されたピストンリップ29の固定部35が精密に位置規制された状態で固定される。このような構成の本機100では、ピストンリップ29の芯ずれが生じる不具合を軽減できる。
これらのピストンリップ29,30は、円盤状の外縁部31から内周側へと、摺接リップ32、屈曲部34、及び固定部35,36の順に延在して構成されている。摺接リップ32を厚さJとし、屈曲部34の厚さNとするならば、これら各厚さJ,Nの関係は、J>N、で規定される。ピストンリップ29,30が、このような形状であることの作用効果については後述する。
ここで、図4(A)に示すように、第1実施形態を示す本機100は、非摺接部37の厚さKは、屈曲部34の厚さNと、固定部35の厚さMとに区別される。これら各厚さJ,N,Mの関係が、J>N=M、で規定される。また、図4(B)に示すように、第2実施形態を示す本機200は、非摺接部38の厚さKは、屈曲部34の厚さNと、固定部36の厚さLとに区別される。これら各厚さJ,N,Lの関係は、N<J≦L、又はN<L<Jで規定される。
ここで、ピストンリップ29,30が、上述したような形状であることの作用効果について説明する。まず、図2で示したように、ピストンリップ29,30は外縁31がカップ型に開いた形状である。すなわち、外縁31は斜め上方に開いている。しかし、図1、図3及び図4に示すように、ライナ部12の内周面が垂直であり、斜め上方に開いた外縁31は、その垂直な壁面に押されて略垂直、すなわち屈曲部34の開き角θ≒90度に押し曲げられる。
このように、ピストンリップ29,30は、ピストン本体21の頭部22で水平に固定された固定部35,36に対し、屈曲部34が直角に押し曲げられ、屈曲部34の端に延在する摺接リップ32が隙間Gと概ね同じ厚さJになって、その隙間Gを塞ぐ。また、屈曲部34は、その材質及び形状で定まる弾力性により、無応力状態の皿型形状を維持しようとする。ただし、上述のように、隙間Gの全部について、常時稠密に閉塞された状態とせず、内周方向にあそびTだけの余裕を残すように構成された方が、円滑なピストン動作ができる。
[第1,2実施形態]
本機100,200において、摺接リップ32の厚さJは、屈曲部34に近い所から外縁部31へ近づくにつれて厚みを増すように形成された形状でも良い。また、本機100,200において、摺接リップ32の厚さJは、屈曲部34の厚さNに対し、圧接方向Eに突出して肉厚に形成されていることが好ましい。このような形状のピストンリップ29,30は、使用に伴って摺接リップ32の外周側が摩耗しても、圧接方向Eへと開いて密閉性を維持できるので、交換寿命をさらに伸ばすことが可能である。
[第2実施形態]
図4(B)に示す第2実施形態に係る本機200では、そのピストンリップ30が、固定部36の厚さLが屈曲部34の厚さNよりも厚く形成されている。この本機200において、固定部36の厚さLと、切欠部3の高さを同じに揃えていることにより、精密な組み立て状態が維持されるので好ましい。本機200に用いられるピストンリップ30は、第1実施形態に係る本機100専用に薄く形成されたピストンリップ29に対し、環状の全体形状について剛性が高く、比較的安定した形状が維持され易い。
そのため、固定部35が薄く形成されたピストンリップ29よりも、位置規制の精度を緩やかにすることが容認される。したがって、ピストン本体21の頭表部222は平坦のままであり、その周縁部に対する面取りも省略する等、より簡素な加工で済ませることが可能である。
[変形実施例]
図5は、図4(B)に示す第2実施形態のピストンリップを、図4(A)に示す第1実施形態のピストン本体に固定した変形実施例の要部拡大断面図である。図5に示す変形実施例は、図4(B)のピストンリップ30を、図4(A)の頭周部221に固定したものである。すなわち、図4(A)に示すピストン本体21の頭周部221は、一段高く凸条4で縁取りされ、その凸条4がリップ固定板23の下側外周に形成された切欠部3に密嵌可能である。上述のように、密嵌する箇所にも最小限のあそびを設けると共に、所定の締めしろも残してある。
図5に示す変形実施例においても、凸条4と切欠部3の間に環状のピストンリップ30の固定部36が挟持された状態でリップ固定板23がピストン本体21の頭部22に固定される。その結果、図4(B)のピストンリップ30も、図4(A)で上述したように精密に位置規制された状態で固定される。したがって、ピストンリップ30の芯ずれが生じる不具合も軽減できる。
図6は、図4のピストンリップが使用に応じて摩耗した状態を説明する要部拡大断面図であり、図6(A)は図4(A)のピストンリップが摩耗した状態、図6(B)は図4(B)のピストンリップが摩耗した状態、をそれぞれ示している。
図6に示すように、摺接リップ32は、ピストン本体21の外周から放射方向に広がるような弾性作用により、ライナ部12の内周面に圧接される。この圧接力によって、ピストン20の気密性を保持できる代わりに、その摺動により摺接部分が少しずつ摩耗する。このような摩耗について、本機100,200が摺動部を有する機械装置である以上、ある程度は不可避であるが、少ないに超したことはない。そこで、本機100,200では、以下の点について改善し、ピストンリップ29,30の摩耗を軽減させることにより、摩耗交換頻度を低くするようにした。
屈曲部34は、摩耗した分だけが圧接方向Eへと広がることにより、ある程度まで摩耗しても隙間Gを塞ぐので、ピストン20の気密性を保持する作用効果は持続する。ここで、圧接方向Eへと広がろうとする圧接力について、より正確には、屈曲部34が、その弾力性により、図2に示した無応力状態の皿型形状に戻ろうとする弾性力である。このときの圧接力は、屈曲部34の弾性力に基づくので、その大きさは、屈曲部34の形状及び厚さNに影響される。ここで、屈曲部34を厚さNの板バネとみなせるので、屈曲部34の弾性力は、厚さNが厚い程大きく、薄い程小さい。
ピストンリップ29,30を平面視認した形状は、図示しない従来のものと大差ないが、屈曲部34の断面形状については、その厚さNを薄く形成している点に特徴がある。このように、従来のものと材質及び平面視認形状が同じであっても、屈曲部34の厚さNが薄ければ、屈曲部34は、その繊細な弾性力に基づいて、よりしなやかな柔軟性を発揮する。したがって、屈曲部34における、圧接方向Eへの圧接力が弱められるため、同じ条件ならば、摺接リップ32の摩耗が軽減される。その結果、ピストンリップ29,30は、摩耗交換の頻度を低くすることが可能となり、本機100,200の運転経費を削減することができる。なお、圧接力を弱める限度は、気密性を維持できる限界よりも少し大きめに設定する。
上述のように、摺接リップ32を厚さJとし、屈曲部34の厚さNとするならば、これら各厚さJ,Nの関係は、J>N、で規定される。ピストンリップ29,30が、このような形状であることの作用効果は、以上のとおりである。
オイルレス圧縮機では、シリンダ潤滑油が必要とされないので、圧縮気体中に油が混入しない。このため、オイルレス圧縮機は、単に圧縮気体を得るという用途の他に、計器用や制御用にも利用することができ、爆発のおそれや腐食のおそれがあるガス以外の総てのガスを圧縮することにも利用することができる。最後に、本機200の全体構成について、図1〜図3を用いてより詳細に説明する。
図1、図3には、図4(B)及び図6(B)に示した第2実施形態に係る本機200のみを示しており、本機100は示されていないが、両者の相違点は図4及び図6を用いて上述したとおりであり、大部分は共通している。図1に示すように、本機200は、単一のシリンダ10が用いられておりピストン20の駆動源が電動機であるオイルレス圧縮機200である。以下、主に図1〜図3を用い、本機200の概略構成をまとめて説明する。
この本機200では、直流型の電動機70が用いられている。交流型の電動機(4極電動機の場合)の回転数が50Hzまたは60Hzの電源周波数に応じて毎分1500または1800回転以下に固定されているのに対して、直流型の電動機70の回転数は使用者の希望に応じて制御盤での操作によって可変である。直流型の電動機70は交流型の電動機に比べて元々消費電力が少ないが、電動機70の回転数が低ければ消費電力が更に少なくてすむ。電動機70の回転数は、本機200の場合、毎分500〜2000回転であることが好ましい。
電動機70の固定子13が電動機筐体14の内部に固定されており、電動機70の回転子15に回転軸16が固定されている。本体筐体17及び電動機カバー18にはそれぞれ玉軸受24,25が取り付けられている。また、電動機筐体14が本体筐体17に嵌合されて回転軸16の一端側が玉軸受24に挿入されている。また、電動機カバー18が電動機筐体14に嵌合されて回転軸16の他端側が玉軸受25に挿入されている。この状態で本体筐体17の鍔部(不図示)を貫通しているねじ(不図示)が電動機カバー18に螺入されることによって、本体筐体17と電動機筐体14と電動機カバー18とが互いに固定されている。回転軸16のうち玉軸受24を貫通している部分に回転翼19及び釣合い重り27が固定されており、釣合い重り27の偏心部に玉軸受26が外挿されている。
玉軸受26にはピストン棒28が外挿されている。このピストン棒28の上方先端部には円盤状の頭部22が形成されている。この頭部22にリップ固定板23が対向しており、これらの頭部22とリップ固定板23とがピストンリップ30を挟持している状態で、ねじ1によってリップ固定板23が頭部22に固定されている。したがって、頭部22及びリップ固定板23がピストン20の加圧機能部を形成している。ピストンリップ30の主成分はポリテトラフルオロエチレンである。ピストンリップ30の形状はワッシャー状のものを機械的にカップ型にしたものであり、ピストンリップ30の底面の周辺近傍部が上述の様に頭部22とリップ固定板23とに挟持されている。
本体筐体17のうちのシリンダ10内にライナ部12が配置されている。ライナ部12の内径は、20〜90mmであることが好ましい。ライナ部12内におけるピストン20の行程量は、4〜15mmであることが好ましい。ライナ部12の内周面の中心線平均粗さは、0.4μm以下0.05μm以上であることが好ましい。また、ライナ部12の内周面のビッカース硬さは、350以上900以下であることが好ましい。
上述の中心線平均粗さ及びビッカース硬さで測定できる金属材料であればどの様な材料でライナ部12が形成されていてもよいが、より好ましいビッカース硬さを得るための具体例としては、ガス軟窒化を機械構造用炭素鋼S45Cに施す処理方法等がある。このS45C自体のビッカース硬さは204であるが、ガス軟窒化をS45Cに施して得られる材料の表面におけるビッカース硬さは557程度に向上する。
ただし、ライナ部12の内周面における中心線平均粗さの下限及びビッカース硬さの上限は製造経費の増加を抑制する観点から設けられているだけであるので、製造経費が増加しても問題ない場合には、これらの下限及び上限は特に必要ない。ピストンリップ30の厚さは0.5〜1.0mmであり、ライナ部12の内周面の円周上において摺接リップ32が接触している幅は1.5〜3mmであることが好ましい。
ライナ部12の端面部及びOリング63が弁シート41の溝42内に嵌入されており、ピストン20、ライナ部12及び弁シート41に囲まれている空間が圧縮室43を形成している。弁シート41の平面的に異なる位置に二つの貫通孔44,45が設けられており、一方の貫通孔44の下面を覆うリード弁46と他方の貫通孔45の上面を覆うリード弁47とがそれぞれねじ48で弁シート41に固定されている。弁シート41上に気体室カバー51が載置されており、不図示のねじによって気体室カバー51及び弁シート41が本体筐体17の上部80に固定されており、弁シート41と気体室カバー51とに囲まれている空間が気体室53を形成している。ただし、気体室53は、貫通孔44,45を分離して配置するため分離壁81を具備している。
気体室カバー51には複数の放熱用のひれ54が設けられており、溝61内にパッキン62が嵌入されている。気体室カバー51には吸入口55及び吐出口56が設けられており、気体室53内へ延びている管57が吸入口55と吐出口56との両方に取り付けられている。気体室カバー51の内壁から突出している管57の長さは、吸入口55及び吐出口56の軸心方向における気体室カバー51の内壁間の距離の50〜90%であることが好ましい。吸入口55及び吐出口56が設けられている気体室カバー51の壁面とは反対側の壁面であって管57の延長線上に一対の連結口58が設けられているが、この本機200の連結口58は閉塞されている。
以上のような本機200において、電動機70に通電してこの電動機70の回転子15を回転させると、回転子15と共に回転軸16及び釣合い重り27も回転する。既述の様に釣合い重り27の偏心部に玉軸受26が外挿されているので、釣合い重り27の回転に伴って玉軸受26の軸心が回転軸16の軸心の回りを回転し、玉軸受26のこの回転に伴ってピストン棒28が揺動と往復動とを行う。ピストン棒28が往復動を行うと、ピストンリップ30をライナ部12の内周面に圧接摺動させるようにピストン20もライナ部12内で往復動を行う。
ピストン棒28が揺動を行うので、ピストン20及びピストンリップ30がある程度の首振り運動を行う。しかし、ピストンリップ30は樹脂製であってある程度の弾性を有しており、この弾性によってピストンリップ30のうち摺接リップ32がライナ部12に接触するので、ライナ部12とピストン20との間の気密は十分に保持される。したがって、ピストン20及び摺接リップ32が首振り運動を行わない構造のオイルレス圧縮機に比べてこの本機200の構造が簡単で製造経費が少ないにも拘らず、ピストンリップ30がある程度の首振り運動を行うことは実質的には問題にならない。
ピストン20がその往復動において上死点から下死点へ向かう行程では、圧縮室43内の圧力が低下するので、リード弁47が弁シート41の貫通孔45を閉塞したままでリード弁46が弁シート41のもう一つの貫通孔44を開放し、吸入口55、管57、気体室53及び貫通孔44を通って圧縮室43内に気体が吸入される。そして、ピストン20が下死点から上死点へ向かう行程では、圧縮室43内の圧力が上昇するので、リード弁46が弁シート41の貫通孔44を閉塞したままでリード弁47が弁シート41のもう一つの貫通孔45を開放し、貫通孔45、気体室53、管57及び吐出口56を通ってこの本機200から圧縮気体が吐出される。
単一のシリンダ10が用いられているこの本機200では、吐出状態の値で毎分80リットル以下の割合の圧縮気体が吐出される。なお、回転軸16が回転すると回転翼19も回転し、この回転翼19の回転によって電動機70やピストン20やライナ部12の外周面等へ外気が送られて、電動機70やピストン20やライナ部12等が冷却される。また、管57が気体室53内へ長く延びているので、吸入口55から吸入される気体と吐出口56から吐出される気体とに対して管57が消音効果を有している。ただし、気体を導く壁面を気体室53内に設け、気体室53内における気体の通過経路を長くすることによって、吸入口55から吸入される気体と吐出口56から吐出される気体とに対する消音効果を生じさせてもよい。
なお、上述の本機200では単一のシリンダ10しか用いられていないが、二つのシリンダが用いられているオイルレス圧縮機にも本発明を適用することができる。この場合は、回転軸16が電動機カバー18側へも長く延びると共に電動機カバー18の代わりに本体筐体17と同様なもう一つの本体筐体が電動機筐体14に固定されており、このもう一つの本体筐体における気体室カバーには連結口しか設けられておらず、本体筐体17における気体室カバー51の連結口58と対向している連結口が本体筐体17の連結口58と連結管で連結されており、一方の本体筐体17の吸入口55から吸入されて二つの本体筐体内で圧縮された気体が一方の本体筐体17の吐出口56から吐出される。この様なオイルレス圧縮機では、吐出状態の値で毎分160リットル以下の圧縮気体が吐出される。
また、上述の本機200では、シリンダ10とライナ部12が別体から構成されているが、シリンダ10とライナ部12が一体であって、シリンダ10の内周面にライナ処理が施されていてもよい。また、上述の本機200ではピストンリップ(29,)30の主成分がポリテトラフルオロエチレンであるが、ピストンリップ(29,)30の製造方法を変更し、ピストンリップ(29,)30の耐磨耗性を高めることができれば、ポリテトラフルオロエチレン以外の弗素樹脂がピストンリップ(29,)30の主成分になっていてもよい。また、上述の本機200ではピストン20の駆動源が電動機70であるが、電動機以外の駆動源がピストン20の駆動源として用いられてもよい。以上、本機200の概略について説明したが、本機100の概略も同様である。
本発明に係るオイルレス圧縮機は、吐出気体に潤滑油の混入を嫌う用途として、例えば医療器具等のほか、計器用や制御用にも採用される可能性がある。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、オイルレス圧縮機の構成、動作も本発明の実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
1,48 ねじ、2,5 ねじ孔、3 切欠部、4 凸条、10 シリンダ、12 ライナ部、13 (電動機70の)固定子、14 電動機筐体、15 (電動機70の)回転子、16 回転軸、17 本体筐体、18 電動機カバー、19 回転翼、20 ピストン、21 ピストン本体、22 (ピストン本体21の)頭部、23 リップ固定板、24,25,26 玉軸受、27 釣合い重り、 玉軸受、28 ピストン棒、29,30 ピストンリップ、31 外縁部、32 摺接リップ、34 屈曲部、35,36 固定部、37,38 非摺接部、41 弁シート、42 (弁シート41の)溝、43 圧縮室、44,45 二つの貫通孔、46,47 リード弁、50 駆動部(電動機70)、51 気体室カバー、53 気体室、54 ひれ、55 吸入口、56 吐出口、58 連結口、57 管、53 気体室、61 溝、62 パッキン、63 Oリング、70 電動機、80 (本体筐体17)の上部、81 分離壁、100,200 オイルレス圧縮機(本機)、221 (ピストン本体21の頭周部)、222 (ピストン本体21の頭表部)、E 圧接方向、D (ライナ部12の)内径、F (ピストン本体21の)外径、G 隙間、J (摺接リップ32の)厚さ、K (非摺接部37,38の)厚さ、L (固定部36の)厚さ、M (固定部35の)厚さ、N (屈曲部34の)厚さ、T あそび、X−X´ 切断面、θ (屈曲部34の)開き角

Claims (7)

  1. シリンダと、該シリンダ内に密嵌されて往復運動することにより圧縮空気を生成するピストンと、該ピストンを駆動する駆動部と、を備えたオイルレス圧縮機であって、
    前記シリンダの内周面に前記ピストンを摺接受容するライナ部が形成され、
    前記ピストンは、
    前記ライナ部の内径に対して隙間の分だけ縮径された外径のピストン本体と、
    前記ピストン本体の外径からはみ出して前記隙間を塞ぐピストンリップと、
    該ピストンリップを前記ピストン本体の頭部との間に挟持して固定するためのリップ固定板と、
    を備え、
    前記ピストンリップは、
    円盤状の外縁部がカップ型に立体成形されて前記ライナ部に摺接して気密機能を有する摺接リップと、
    該摺接リップより内周側に位置して摺接しない非摺接部と、により構成され、
    該非摺接部は、屈曲部と固定部とに区別され、
    円盤状の前記外縁部から前記内周側へと、前記摺接リップ、前記屈曲部、及び前記固定部の順に延在し、
    前記摺接リップを厚さJとし、前記屈曲部を厚さNとし、
    前記各厚さJ,Nの関係が、J>N、で規定されるオイルレス圧縮機。
  2. 前記摺接リップの厚さJは、前記屈曲部に近い所から前記外縁部へ近づくにつれて厚みを増すように形成された請求項1に記載のオイルレス圧縮機。
  3. 前記摺接リップの厚さJは、前記屈曲部の厚さに対し、圧接方向に突出して肉厚に形成された請求項1又は2に記載のオイルレス圧縮機。
  4. 前記ピストンリップにおける前記非摺接部の厚さは、前記屈曲部の厚さNと、前記固定部の厚さMとに区別され、
    前記各厚さJ,N,Mの関係が、J>N=M、で規定される請求項1に記載のオイルレス圧縮機。
  5. 前記ピストンリップにおける前記非摺接部の厚さは、前記屈曲部の厚さNと、前記固定部の厚さLとに区別され、
    前記各厚さJ,N,Lの関係が、N<J≦L、又はN<L<Jで規定される請求項1に記載のオイルレス圧縮機。
  6. 前記リップ固定板の下側外周には段差を設けた切欠部が形成され、
    ピストン本体の頭周部が一段高く凸条で縁取りされ、
    該凸条は前記切欠部に密嵌可能であり、
    該切欠部に環状のピストンリップを嵌着した状態で前記リップ固定板がピストン本体の頭部に固定される請求項1〜4の何れかに記載のオイルレス圧縮機。
  7. 前記固定部の厚さLと、前記切欠部の高さを同じに揃えた請求項1〜3及び5の何れかに記載のオイルレス圧縮機。
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