JP2019119843A - 粘着シートおよび磁気ディスク装置 - Google Patents

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博基 家田
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明 知念
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Abstract

【課題】高温での接着信頼性とアウトガス量低減とが両立された粘着シートを提供する。【解決手段】本発明により提供される粘着シートは、基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える。この粘着シートは、60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が1N/20mm以上である。また、ガスクロマトグラフ/質量分析法により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、粘着シートおよび該粘着シートを備える磁気ディスク装置に関する。
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、例えば、支持基材上に粘着剤層を有する基材付き粘着シートの形態で、電子機器等の各種用途において、接合や固定、保護、シール等の目的で広く利用されている。例えば、磁気ディスク装置の内部空間を気密にシールする粘着シートに関する技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。この用途では、上限温度の制約があるため、圧着時に加熱を必要としない粘着剤が接着手段として好ましく用いられている。
特開2014−162874号公報 特開2017−014478号公報 特開2017−160417号公報
例えば、上記従来の粘着シートはいずれも非通気性の基材を備える粘着シートであり、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気ディスク装置において、磁気ディスク(典型的にはHD)が収容された内部空間をシールする態様で使用される。具体的には、磁気ディスクを収容するハウジング本体とカバー部材間等に存在し得る空隙を、一枚の粘着シートを被せてシールすることで、装置内部空間の気密性が得られる。そのような気密性は、装置内部空間にヘリウム等の低密度ガスを充填し、ディスク回転に伴う気流の影響を低減したタイプでは特に重要な要求特性となり得る。また、上記の粘着シートを用いた構成は、ガスケットを用いて気密性を確保していた従来の磁気ディスク装置よりもシール構造の薄厚化が可能であるため、磁気ディスク装置の高密度化、大容量化の点で有利である。この構成では、液状ガスケットを用いる必要がなく、ガスケットに由来するアウトガス(ガス放出)の問題を解消することができる。
その種のアウトガス(材料由来の揮発性ガス)量の低減は、シール材として用いられる粘着シートにも当然求められ得る。例えば、上述のHDD等の磁気ディスク装置の内部空間をシールする用途では、シロキサンガス等の揮発性ガスは、装置の故障の原因となり得るため、かかる用途に用いられる粘着シートにはそのようなガス発生量が許容量以下に制限されている必要がある。また、シール材による気密性は、上述の磁気ディスク装置分野においては防湿性を兼ね備えることが望ましい。具体的には、この分野では、さらなる高容量化のためにHAMR(熱アシスト磁気記録:Heat Assist Magnetic Recording)を採用した磁気ディスク装置の検討が進められている。HAMRは、端的には、レーザービームを利用して面記録密度を高める技術である。この技術では、系内に水分が存在するとレーザー減衰が生じ、書込み寿命に悪影響を与える。そのため、HAMRでは水分が極力排除されていることが望ましい。そのような防湿性の観点からは、非極性で、かつ疎水性に優れるゴム系粘着剤の使用が有利である。
ところで、粘着剤は、その適用用途によって様々な温度変化に曝され得る。例えば、上記磁気ディスク装置等の電子機器内部は、駆動時に40〜60℃程度の高温状態となり得る。そのため、かかる用途に用いられる粘着剤には、上記温度に曝されても所定以上の接着性能(粘着力や保持力等)を維持することが求められる(高温での接着信頼性)。上記の温度域では、スチレン系ブロック共重合体を用いた粘着剤はその疑似架橋状態をある程度保持し得るので、非架橋ゴム等に比べて接着信頼性に優れる。しかし、上記ブロック共重合体は、スチレン等のモノマー残渣が粘着剤形成後も揮発放散する傾向がある。スチレン系ブロック共重合体を含む粘着剤が有するような高温での接着信頼性と、アウトガス量低減とを両立することができれば有意義である。
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、高温での接着信頼性とアウトガス量低減とが両立された粘着シートを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、上記粘着シートを用いた磁気ディスク装置を提供することである。
本明細書によると、基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える粘着シートが提供される。この粘着シートは、60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が1N/20mm以上である。また、ガスクロマトグラフ/質量分析法(GC−MS法)により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下である。上記の構成によると、対SUS60℃粘着力が1N/20mm以上であるので、高温での接着信頼性に優れる。また、加熱ガス発生量が10μg/cm2以下であるので、アウトガス量が制限されている。すなわち、上記構成の粘着シートによると、高温での接着信頼性とアウトガス量低減とを両立することができる。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が2N/20mm以上である。上記特性を満足する粘着シートは、高温での接着信頼性がより優れたものとなり得る。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記粘着剤層はスチレン系ブロック共重合体を含む。スチレン系ブロック共重合体を用いることで、高温での接着信頼性に優れた粘着剤が好ましく得られる。前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体およびそれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記粘着剤層の厚さは20μm以下である。ここに開示される技術によると、粘着剤層の厚さを制限してアウトガス量を低減しつつ、高温での接着信頼性を得ることができる。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記基材層は、MOCON法(JIS K7129:2008)に基づき、40℃、90%RHの条件で測定される透湿度(厚さ方向への水蒸気透過速度)が5×10-1g/(m2・24時間)未満である非透湿層を含む。これにより、粘着シート厚さ方向の透湿を防止することができる。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、荷重1kg、60℃、1時間の条件で行われるせん断保持力試験におけるズレ距離が2mm未満である。この特性を満足する粘着シートは、比較的高温で使用される場合であっても良好な保持力を発揮し、高温での接着信頼性により優れる。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、MOCON法に基づき、透湿距離2.5mmの条件で測定される粘着シート接着面方向の透湿度が90μg/(cm2・24時間)未満である。この特性を満足する粘着シートは防湿性に優れるので、水分や揮発ガスの存在が望ましくない用途に好ましく利用され得る。例えば、ここに開示される粘着シートを磁気ディスク装置のシール材として用いた場合には、当該磁気ディスク装置駆動時に達するような高温域において接着信頼性を有し、かつ系内へのアウトガス混入(シロキサンガス等)を制限しながら、該装置の正常かつ高精度作動に影響を及ぼし得る系内の湿度変化(典型的には湿度上昇)を高度に制限することができる。
ここに開示される粘着シートは、高温での接着信頼性とアウトガス量低減とを両立し得るので、その内部が40〜60℃程度の高温状態に曝されることがあり、またガス混入が制限されていることが望ましい各種電子機器のシール材として好ましく用いられる。例えば、ガス混入が制限されていることを要する磁気ディスク装置の内部空間をシールするために好ましく用いられる。ここに開示される技術によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートを備える電子機器(例えば磁気ディスク装置)が提供される。上記粘着シートは、上記磁気ディスク装置の内部空間をシールするものであり得る。そのような構成を有する磁気ディスク装置は、比較的薄厚の粘着シートによって気密性が得られるので、従来のガスケットタイプに比べて高容量化が可能であり、またガス発生量も少ない。
粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。 透湿度測定方法の模式説明図である。 透湿度測定で使用する測定サンプルを拡大して示す上面図である。 一態様に係る磁気ディスク装置を模式的に示す断面図である。 他の一態様に係る磁気ディスク装置を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートや磁気ディスク装置、透湿度測定装置のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamentals and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
また、本明細書における粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1に示す断面構造を有する片面接着性の粘着シートの形態であり得る。この粘着シート1は、基材層10と、基材層10の一方の表面に支持された粘着剤層20とを備える。基材層10は、具体的には、第1樹脂層12、無機層14および第2樹脂層16がこの順で積層された積層体(積層フィルム)であり、厚さ方向に対して非透湿の非透湿層である。無機層14の一方の表面側に配置された第1樹脂層12は、粘着シート1の外表面を構成しており、第2樹脂層16は、無機層14の他方の表面側であって粘着剤層20側に配置されている。粘着剤層20は、防湿性の観点から、少なくとも被着体との接着面においては、基材層10の一方の表面全体にわたって連続的に形成されている。使用前(被着体への貼り付け前)の粘着シート1は、少なくとも粘着剤層20側の表面が剥離面となっている剥離ライナー(図示せず)で保護された形態であり得る。
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、JIS Z 0237:2009に準じて60℃にて測定されるステンレス鋼板に対する180度剥離強度(対SUS60℃粘着力)が1N/20mm以上であることによって特徴づけられる。上記対SUS60℃粘着力を有する粘着シートは、常温よりも高温域であっても被着体との接着状態を良好に保持し得るので、高温での接着信頼性に優れる。このことは、高温域においても良好なシール性を発揮することに通じる。上記対SUS60℃粘着力は、好ましくは凡そ1.5N/20mm以上、より好ましくは凡そ2N/20mm以上、さらに好ましくは凡そ2.5N/20mm以上、特に好ましくは凡そ3N/20mm以上である。上記対SUS60℃粘着力の上限は特に制限されず、糊残り防止性の観点から、凡そ20N/20mm以下が適当であり、例えば凡そ15N/20mm以下であってもよく、凡そ10N/20mm以下であってもよく、凡そ5N/20mm以下であってもよい。
粘着シートの対SUS60℃粘着力は、下記の方法で測定される。測定対象である粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試料片を作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記試料片の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)に圧着して測定サンプルを得る。上記圧着は、2kgのローラを1往復させることにより行う。上記測定サンプルを、60℃の環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2009に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm]を測定する。なお、引張試験機としては、島津製作所社製の「精密万能試験機 オートグラフ AG−IS 50N」またはその相当品を用いるとよい。後述の実施例においても上記の方法で測定される。
また、ここに開示される粘着シートは、JIS Z 0237:2009に準じて測定されるステンレス鋼板に対する180度剥離強度(対SUS常温粘着力)が、1N/20mm以上であることが好ましい。上記粘着力を有する粘着シートは、被着体に対して良好に接着し、良好なシール性を発揮し得る。上記対SUS常温粘着力は、より好ましくは2N/20mm以上、さらに好ましくは4N/20mm以上、特に好ましくは6N/20mm以上(例えば7N/20mm以上)である。上記対SUS常温粘着力の上限は特に制限されず、糊残り防止性の観点から、凡そ20N/20mm以下(例えば凡そ15N/20mm以下)が適当である。
粘着シートの粘着力は、下記の方法で測定される。測定対象である粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試料片を作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記試料片の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)に圧着して測定サンプルを得る。上記圧着は、2kgのローラを1往復させることにより行う。上記測定サンプルを、23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2009に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm]を測定する。なお、引張試験機としては、島津製作所社製の「精密万能試験機 オートグラフ AG−IS 50N」またはその相当品を用いるとよい。後述の実施例においても上記の方法で測定される。
また、ここに開示される粘着シートは、GC−MS法により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下(具体的には0〜10μg/cm2)であることによって特徴づけられる。このように、加熱ガス発生量も高度に制限された粘着シートは、揮発ガスの存在が望ましくない用途(典型的には磁気ディスク装置)に好ましく利用され得る。上記特性を満足する粘着シートを磁気ディスク装置のシール材として用いた場合には、装置に悪影響を及ぼすシロキサンガスその他のガスの系内への混入を高度に抑制することができる。上記加熱ガス発生量は、好ましくは凡そ7μg/cm2以下、より好ましくは凡そ5μg/cm2以下であり、例えば凡そ3μg/cm2以下であってもよく、凡そ1μg/cm2以下であってもよい。
上記加熱ガス発生量は、ダイナミックヘッドスペース法に基づき測定される。具体的には、測定対象である粘着シートを7cm2サイズに切り出し、これを測定サンプルとする。この測定サンプルを50mLバイアル中に封入し、ヘッドスペースオートサンプラーを用いて、130℃、30分間の条件で加熱する。ヘッドスペースオートサンプラーとしては、市販品を特に制限なく使用することができる。例えば、JEOL社製の製品名「EQ−12031HSA」またはその相当品を使用することができる。測定サンプルから発生するガスの総量は、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC−MS)を用いて測定する。GC−MSは市販品を使用するとよい。なお、上記加熱ガス発生量は、粘着シートの単位面積当たりの発生ガス量(単位:μg/cm2)である。後述の実施例においても上記の方法で測定される。
また、ここに開示される粘着シートは、MOCON法(等圧法)に基づき、透湿距離2.5mmの条件で測定される粘着シート接着面方向の透湿度が凡そ90μg/(cm2・24時間)未満であることが好ましい。これによって、接着面方向(粘着シート厚さ方向に直交する方向)の透湿が制限され、優れた防湿性が好ましく得られる。上記接着面方向の透湿度は、好ましくは50μg/cm2未満であり、例えば30μg/cm2未満であり得る。
上記接着面方向の透湿度は、具体的には下記の方法で測定される。
(1)中央に50mm角の正方形の開口を有する金属板を用意する。図2は、透湿度測定に用いる透湿度測定装置50の概略構成を示しており、図2中、符号56が金属板、符号58が金属板56に設けられた開口を示している。開口58を有する金属板56の上面図を図3に示す。
(2)測定対象である粘着シートを55mm角の正方形にカットし、上記金属板の開口を覆うように貼りつけて測定サンプルを作製する。このとき、上記粘着シートの上記金属板への貼付けは、上記開口の各辺において粘着シート貼付け幅が2.5mmとなるように行う。粘着シートの貼付けは、2kgのローラを1往復することによって行う。粘着シート貼付け幅は、開口の各辺において、粘着シートと金属板との帯状接着面の幅であり、粘着シートの接着面方向の透湿距離[mm]を意味する。また、金属板における開口の周長を貼付け長さ[mm]という。貼付け長さ[mm]は、水蒸気に曝される帯状接着面の総長さである。測定サンプルは、具体的には図3に示されるような、金属板56と、金属板56に貼りつけられた粘着シート1とからなる符号60で示す構造を有する。
(3)JIS K 7129:2008のB法に準拠して、透湿度測定装置の低湿度チャンバと高湿度チャンバとの間に上記測定サンプルを装着する。具体的には、図2に示すように、低湿度チャンバ54と高密度チャンバ52との間に測定サンプル60は配置される。図2中、符号WVは水蒸気である。
(4)MOCON法(等圧法)に基づき、3時間のコンディショニングを実施した後、図2に示すように、40℃、90%RHにおける1時間当たりの粘着シート接着面方向の透湿量[μg]を測定する。
(5)上記測定値の24時間換算透湿量および粘着剤層の面積(透湿距離×貼付け長さ)を、式:
透湿度[μg/(cm2・24時間)]=透湿量[μg]/(透湿距離[cm]×貼付け長さ[cm]×24時間)
;に代入することにより、接着面方向の透湿度[μg/(cm2・24時間)]は求められる。
本明細書において、「MOCON法(等圧法)に基づき、透湿距離2.5mmの条件で測定される粘着シート接着面方向の透湿度[μg/(cm2・24時間)]」とは、24時間の測定で得られる値であってもよく、しかしそれに限定されず、上記のように、所定時間(例えば1時間)の測定を24時間換算した値であり得る。測定時間として1時間よりも長い時間(好ましくは凡そ6時間。後述の実施例も同じ。)を採用して、測定値を24時間当たりの値に換算したものを採用することもできる。
なお、金属板の種類は特に限定されず、例えばアルミニウム板を用いることができる。また、金属板のサイズは特に限定されず、測定装置のサイズ等に応じて、例えば100mm角の正方形状のものを用いることができる。金属板は表面が平滑なものであればよく、例えば算術平均粗さRaが3μm以下程度のものを用いるとよい。測定装置としては、MOCON社製の製品名「Permatran3/34G」またはその相当品を用いるとよい。この種の測定装置では、高湿度チャンバに90%RHのNガスを供給することができ、低湿度チャンバに0%RHのNガスを供給することができ、これによって上記測定サンプルによって分画された2つのチャンバは等圧条件に維持される。上記測定装置では、水蒸気濃度は赤外線センサ(図2中、符号IRで示す。)を用いて測定されるが、検出手段はこれに限定されない。測定装置における測定サンプルの配置は特に限定されず、高湿度チャンバ側に粘着シート貼付け面が配置されてもよく、低湿度チャンバ側に粘着シート貼付け面が配置されてもよい。後述の実施例においても上記の方法で測定される。
上記の測定方法は、本発明者らによって創作された方法であり、この方法によると、従来は不可能であった接着面方向の透湿量を精度よく測定することができる。より具体的には、従来のカップ法による透湿量測定では同程度の値を示していた異なるサンプルであっても、接着面方向の透湿度の違いを有意差として検出することができる。この方法を採用することで、より高レベルな防湿性の評価が可能となる。例えば、HAMRに影響するような微量の水蒸気透過を定量することができる。
また、ここに開示される粘着シートは、荷重1kg、60℃、1時間の条件で行われるせん断保持力試験におけるズレ距離が2mm未満であることが好ましい。この特性を満足する粘着シートは、比較的高温で使用される場合であっても、良好な保持力を発揮し得る。上記せん断保持力試験におけるズレ距離は、より好ましくは1mm未満、さらに好ましくは0.7mm未満(例えば0.5mm未満、さらには0.1mm未満)である。特に好ましい一態様に係る粘着シートは、上記せん断保持力試験においてズレが生じない(すなわち、ズレ距離が約0mm)。
粘着シートのせん断保持力は下記の方法で測定される。すなわち、測定対象である粘着シートを幅10mm、長さ20mmにカットして試験片を作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記試料片の粘着面をステンレス鋼板に圧着して測定サンプルを得る。上記圧着は、2kgのローラを1往復させることにより行う。上記測定サンプルを垂下させた状態で、60℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、上記試験片の下側自由端に1kgの錘を取り付けて試験を開始する。試験は1時間行い、1時間経過後における試験片のずれた距離(ズレ距離)を測定する。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
ここに開示される粘着シートは、単位幅当たりの引張弾性率が所定の範囲内に設定されていることが好ましい。具体的には、上記引張弾性率は、好ましくは1000N/cmよりも大きく、より好ましくは1400N/cm超、さらに好ましくは1800N/cm超、特に好ましくは2200N/cm超である。上記引張弾性率を有する粘着シートは、適度な剛性を有してシワになりにくい。ハンドリング性にも優れる傾向がある。上記引張弾性率は、好ましくは3500N/cm未満、より好ましくは3000N/cm未満、さらに好ましくは2800N/cm未満(例えば2600N/cm未満)である。上記引張弾性率を有する粘着シートは、良好な被着体追従性を有し、例えば被着体の角を含む領域に対して、折り曲げた状態でよく追従し得る。
粘着シートの単位幅当たりの引張弾性率は、次のようにして測定される。すなわち、粘着シートを幅10mm、長さ50mmの短冊状にカットして試験片を作製する。この試験片の長手方向の両端を引張試験機のチャックに固定し、23℃雰囲気下で、チャック間距離20mm、速度50mm/分の条件で引張試験機にて引張試験を行い、応力−ひずみ曲線を得る。得られた応力−ひずみ曲線の初期傾きにつき、規定された2点のひずみε1およびε2の間の曲線の線形回帰によってヤング率(N/mm2=MPa)を求める。得られた値と粘着シートの厚さとの積から、単位幅当たりの引張弾性率[N/cm]は求められる。引張試験機としては公知または慣用のものを使用することができる。例えば、島津製作所社製の「オートグラフ AG−IS型」またはその相当品を用いることができる。
<粘着シートの総厚>
ここに開示される粘着シートの総厚は特に限定されず、凡そ6μm以上とすることが適当であり、防湿性、シワ防止性等の観点から、好ましくは25μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは60μm以上である。また、上記総厚は、凡そ1.2mm以下が適当であり、被着体追従性や、薄膜化、軽量化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下(例えば100μm未満)である。ここで粘着シートの総厚とは、基材層と粘着剤層との合計厚さをいい、後述する剥離ライナーの厚さは含まない。
<粘着剤層>
ここに開示される技術において、粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。上記粘着剤は、粘着剤の分野において公知のゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。防湿性、アウトガス低減の観点から、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含むゴム系粘着剤、またはアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤を好ましく採用し得る。他の例として、ベースポリマーとしてゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む粘着剤が挙げられる。なかでも、防湿性に優れるゴム系粘着剤層がより好ましい。ここに開示される粘着シートを、磁気ディスク装置に用いる場合、シロキサンガスを生成し得るシリコーン系ポリマーを実質的に含まないことが望ましい。
以下、ゴム系粘着剤層を有する粘着シートについて主に説明するが、ここに開示される粘着シートの粘着剤層をゴム系粘着剤により構成されたものに限定する意図ではない。
なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50重量%超を占める成分)をいう。
ここに開示される粘着剤層は、ゴム系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたゴム系粘着剤層であることが好ましい。上記ベースポリマーの例としては、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR);ポリイソプレン;ブテン(1−ブテン、およびcis−もしくはtrans−2−ブテンを指す。)および/または2−メチルプロペン(イソブチレン)を主モノマーとするブテン系ポリマー;A−B−A型ブロック共重合体ゴムおよびその水素化物、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SIBS)、スチレン−ビニル・イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SVIS)、SBSの水素化物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、SISの水素化物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS)やスチレン−イソプレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SIPS);等の種々のゴム系ポリマーが挙げられる。これらのゴム系ポリマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ブロック共重合体)
好ましい一態様に係る粘着剤層は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。本明細書において「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50重量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるポリマーの代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(A−B−A構造のトリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるジブロック構造の共重合体(A−B構造のジブロック体)等が挙げられる。
上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に一つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
また、上記モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、その少なくとも一部が水素化(水素原子が付加)した水素化物であり得る。上記ブロック共重合体の水素化物は、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位が有する炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が単結合化されている。このようなブロック共重合体のBセグメント(ソフトセグメント)の少なくとも一部は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリ(エチレン・プロピレン)、ポリ(エチレン・ブチレン)等のポリオレフィン単位から構成されたものであり得る。上記ブロック共重合体の水素化物は、熱安定性、耐候性に優れる。上記ブロック共重合体の水素化は、合成ゴムの分野において公知の水素添加触媒(例えば、Ni、Co系Ziegler触媒、メタロセン系触媒、Pt等を担持した貴金属系触媒)を用いるなどして、公知ないし慣用の手法、条件で実施することができる。
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が凡そ70重量%以上(より好ましくは凡そ90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(その水素化物を包含し、2種以上を併用し得る。)の共重合割合が凡そ70重量%以上(より好ましくは凡そ90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な接着シートが実現され得る。
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体や放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。
(スチレン系ブロック共重合体)
ここに開示される技術の好ましい一態様では、粘着剤層はスチレン系ブロック共重合体を含む。本明細書において「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。
好ましい一態様に係る粘着剤層は、スチレン系ブロック共重合体として、例えば、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体、その水素化物から選択される少なくとも1種を含む。本明細書において「スチレンイソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(トリブロック体)、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック構造の共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。「スチレンブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の水素化物とは、そのイソプレンブロックの少なくとも一部が水素化された共重合体をいう。同様に、スチレンブタジエンブロック共重合体の水素化物とは、そのブタジエンブロックの少なくとも一部が水素化された共重合体をいう。
ここに開示される技術は、粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が凡そ50重量%以上(例えば70重量%以上)であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が50重量%以上(例えば70重量%以上)であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が凡そ50重量%以上(例えば70重量%以上)である態様で好ましく実施される。
他の好ましい一態様では、粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレン系ブロック共重合体の水素化物の割合が凡そ50重量%以上であり、より好ましくは凡そ75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。より好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば凡そ95〜100重量%)がスチレン系ブロック共重合体の水素化物である。スチレン系ブロック共重合体の好適例としては、スチレンイソプレンブロック共重合体の水素化物およびスチレンブタジエンブロック共重合体の水素化物が挙げられる。なかでも、スチレンイソプレンブロック共重合体の水素化物がより好ましい。
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、凡そ5〜40重量%であり得る。凝集性を高めて高温での接着信頼性を得る観点から、通常は、スチレン含有量が凡そ8重量%以上(より好ましくは10重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、常温での剥離強度、アウトガス低減の観点から、スチレン含有量は凡そ30重量%以下(典型的には凡そ20重量%以下、より好ましくは凡そ15重量%以下)が好ましい。なお、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体重量に占めるスチレン成分の重量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
ここに開示される技術において、ベースポリマーとして、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)を用いる場合、上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマーを1種または2種以上含有し得る。かかるゴム状ポリマーは、粘着剤の分野において公知のアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、オレフィン系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、ビニルアルコール系、ビニルアセタール系、ビニルブチラール系等の各種ポリマーであり得る。上記ゴム系のゴム状ポリマーの例としては、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、再生ゴム等が挙げられる。
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、粘着剤に含まれるポリマー成分の50重量%より多く(例えば70重量%以上、さらには85重量%以上)が上記ブロック共重合体である。ここに開示される技術は、上記粘着剤層が上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマーを実質的に含有しない態様(例えば、上記ブロック共重合体100重量部当たりの含有量が0〜1重量部である態様)で好ましく実施され得る。
他の好ましい一態様では、上記粘着剤層が上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマーを含む組成であり得る。その場合、上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマーの使用量は、通常、上記ブロック共重合体100重量部あたり凡そ500重量部以下とすることが適当であり、上記ブロック共重合体による効果を好ましく発揮する観点から、好ましくは凡そ300重量部以下、より好ましくは凡そ100重量部以下であり、例えば凡そ50重量部以下であってもよく、凡そ30重量部以下であってもよく、凡そ10重量部以下であってもよい。また、アウトガス低減の観点から、上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマー(好適にはゴム系ポリマー、例えばリイソブチレン、ブチルゴム等)を、上記ブロック共重合体100重量部に対して凡そ10重量部以上(例えば凡そ50重量部以上)含有させることができる。
上記ベースポリマー(例えばスチレン系ブロック共重合体)の分子量は特に制限されず、例えば重量平均分子量(Mw)が凡そ5×10以上(好ましくは凡そ15×10以上、例えば凡そ20×10以上)のものを適宜選択して使用することができる。上記Mwの上限は特に限定されず、凡そ150×10以下(好ましくは凡そ100×10以下、例えば凡そ50×10以下)であり得る。互いにMwの異なる複数のポリマーをベースポリマーとして組み合わせて使用してもよい。Mwが上記範囲内であることにより、粘着剤の弾性率を好ましい範囲に調節しやすく、また良好な凝集力を発揮しやすい。
特に限定するものではないが、ベースポリマー(例えばスチレン系ブロック共重合体)としては、重量平均分子量(Mw)に対する数平均分子量(Mn)の比として表される分散度(Mw/Mn)が凡そ7未満であることが適当であり、好ましくは凡そ5未満、より好ましくは凡そ3未満、さらに好ましくは凡そ2未満である。上記Mw/Mnは理論上1以上であり、通常は1.1以上である。ここに開示される技術は、ベースポリマーのMw/Mnが凡そ1.3以上(例えば凡そ1.5以上)である態様で実施することができる。互いにMw/Mnの異なる複数種類のポリマーをベースポリマーとして組み合わせて使用してもよい。
なお、ここでイソブチレン系ポリマーのMwおよびMnとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定に基づいて求められる、ポリスチレン換算の値をいう。GPC測定装置としては、例えば、東ソー(TOSOH)社製、型式「HLC−8120GPC」を使用することができる。
好ましい一態様において、上記粘着剤層は、ベースポリマーの総量が該粘着剤層の全重量(すなわち、この粘着剤により構成される粘着剤層の重量)の50重量%超を占める組成であり得る。例えば、上記ベースポリマーの総量は、上記粘着剤層の全重量の凡そ75重量%以上であることが好ましく、凡そ85重量%以上がより好ましく、凡そ90重量%以上(例えば95重量%以上)がさらに好ましい。
(添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じて粘着付与剤(粘着付与樹脂)、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色材、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。ここに開示される技術では、粘着シートからのアウトガス量が所定値以下に制限されている。したがって、アウトガス発生要件となるような低分子量成分の使用は避けることが望ましい。そのような観点から、粘着剤層におけるその他の添加剤(例えば粘着付与樹脂)の含有量は、凡そ10重量%以下(例えば5重量%以下、典型的には3重量%以下)に制限されていることが好ましい。ここに開示される技術は、粘着剤層がその他の添加剤(例えば粘着付与樹脂)を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
粘着剤層の形成は、公知の粘着シートにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、上述のような粘着剤層形成材料が適当な溶媒に溶解または分散した粘着剤組成物を基材(例えば非透湿層)に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、上記粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を支持基材(例えば非透湿層)に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は、典型的には連続的に形成される。
粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、上述のような粘着剤層形成材料を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態(水分散型、典型的には水性エマルション型)の粘着剤組成物、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等の種々の形態であり得る。塗工性や粘着性能の観点から、溶剤型の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物(典型的には芳香族炭化水素);酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素;等から選択されるいずれか一種の溶媒、または二種以上の混合溶媒を用いることができる。特に限定するものではないが、上記溶剤型粘着剤組成物を不揮発分(NV)5〜30重量%に調整することが適当である。NVが低すぎると製造コストが高くなりがちであり、NVが高すぎると塗工性等の取扱性が低下することがある。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。
ここに開示される技術において、粘着面を構成する粘着剤層の厚さは特に限定されない。上記粘着剤層の厚さを凡そ3μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ5μm以上、より好ましくは凡そ8μm以上、さらに好ましくは凡そ10μm以上であり、例えば凡そ15μm以上であってもよい。粘着剤層の厚さの増大により、被着体への粘着力が高くなる傾向にある。また、所定以上の厚さを有する粘着剤層は、被着体表面の粗さを吸収して密着する。厚さが凡そ10μm以上の粘着剤層によると、例えば、算術平均表面粗さRaが凡そ1〜5μm(例えば3μm)程度の表面を有する被着体に対して良好な密着性を実現することができる。また、粘着面を構成する粘着剤層の厚さは、例えば凡そ150μm以下とすることができ、凡そ100μm以下が適当であり、凡そ50μm以下が好ましい。粘着剤層の厚さを小さくすることにより、粘着剤層の側面から該粘着剤層への水蒸気浸入を抑制する性能が向上する傾向にあり、また粘着剤層に由来するアウトガス発生量の低減にも通じる。粘着剤層の厚さを小さくすることは、粘着シートの薄膜化や軽量化の観点からも有利である。アウトガス量低減の観点から、粘着剤層の厚さは30μm未満とすることができ、25μm以下(例えば20μm未満)が適当である。
(粘着剤層の特性)
ここに開示される粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G´(25℃)は特に限定されず、要求特性等に応じて適切な範囲に設定され得る。好ましい一態様では、上記G´(25℃)は0.5MPa未満である。G´(25℃)が所定値以下の粘着剤層を用いることにより、常温域において粘着剤層は被着体表面によく濡れて密着する。上記G´(25℃)は、より好ましくは0.4MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.25MPa以下である。上記G´(25℃)は、最も好ましくは0.2MPa以下(例えば0.15MPa以下)である。上記G´(25℃)は特に限定されず、凡そ0.01MPaよりも大きいことが適当であり、常温での粘着特性および糊残り防止性等の観点から、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.07MPa以上(例えば0.1MPa以上)である。
ここに開示される粘着剤層の60℃における貯蔵弾性率G´(60℃)は特に限定されず、要求特性等に応じて適切な範囲に設定され得る。好ましい一態様では、上記G´(60℃)は0.5MPa未満である。G´(60℃)が所定値以下の粘着剤層を用いることにより、常温よりも高温域においても良好な接着状態を維持し得る。上記G´(60℃)は、より好ましくは0.3MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。上記G´(60℃)は特に限定されず、凡そ0.01MPaよりも大きいことが適当であり、高温での接着信頼性の観点から、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上である。
ここに開示される技術において、粘着剤層の貯蔵弾性率G´(25℃)およびG´(60℃)は、動的粘弾性測定により求めることができる。具体的には、測定対象である粘着剤層を複数枚重ね合わせることにより、厚さ約2mmの粘着剤層を作製する。この粘着剤層を直径7.9mmの円盤状に打ち抜いた試料をパラレルプレートで挟み込んで固定し、粘弾性試験機(例えば、ティー・エー・インスツルメント社製、ARESまたはその相当品)により以下の条件で動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G´(25℃)およびG´(60℃)を求める。なお、測定対象である粘着剤層は、対応する粘着剤組成物を剥離ライナーの剥離面等に層状に塗布し、乾燥または硬化することにより形成することができる。測定に供する粘着剤層の厚さ(塗布厚)は2mm以下であれば特に限定されず、例えば50μm程度とすることができる。
・測定モード:せん断モード
・温度範囲 :−50℃〜150℃
・昇温速度 :5℃/min
・測定周波数:1Hz
後述の実施例においても上記の方法で測定される。
<基材層>
ここに開示される技術における基材層を構成する材料は特に制限されない。基材層としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。
好ましい一態様に係る基材層は非透湿層である。本明細書における非透湿層とは、MOCON法(JIS K7129:2008)に基づき、40℃、90%RHの条件で測定される透湿度(厚さ方向への水蒸気透過速度)が5×10-1g/(m2・24時間)未満である層(フィルム)をいう。ここに開示される技術における非透湿層は、上記透湿度を満足するように適切に材料や積層形態を選定して形成される。上記非透湿層を用いることにより、厚さ方向に対して防湿性を有する粘着シートが得られる。上記透湿度は、好ましくは5×10-2g/(m2・24時間)未満、より好ましくは5×10-3g/(m2・24時間)未満、例えば5×10-5g/(m2・24時間)未満である。上記透湿度の測定装置としては、MOCON社製の「PERMATRAN W3/33」またはその相当品を用いることができる。
好ましい一態様では、ここに開示される基材層として、無機層を含むものが用いられる。上記無機層の材質や構造は特に限定されず、使用目的や使用態様に応じて選択することができる。防湿性、気密性の観点から、上記無機層は実質的に非多孔質であることが有利である。また、典型的には実質的に無機材料からなる無機層が好ましい。例えば、その95重量%以上(より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上)が無機材料からなる無機層が好ましい。基材層に含まれる無機層の数は特に限定されず、1層であっても2層以上(例えば2〜5層程度)であってもよい。製造容易性や入手容易性の観点から、基材層に含まれる無機層の数を1〜3層程度とすることが好ましく、1層または2層とすることがより好ましい。基材層が複数の無機層を含む場合、それらの無機層の材質や構造(厚さ等)は、互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
無機層を構成する無機材料としては、例えばアルミニウム、銅、銀、鉄、スズ、ニッケル、コバルト、クロム等の金属の単体またはそれらの合金等の金属材料;珪素,アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、マグネシウム等の金属または半金属の酸化物、窒化物、フッ化物等の無機化合物;等を用いることができる。上記無機化合物の具体例としては、酸化珪素(SiO、典型的にはSiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化珪素(Si)、酸化窒化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)等が挙げられる。
上記金属材料は、例えば、圧延機による圧延等、公知の方法により形成された金属箔(例えばアルミニウム箔)の形態で上記無機層として利用され得る。あるいは、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、あるいはメッキ法等の公知の成膜方法を利用して層状に形成した金属材料を無機層として利用してもよい。
上記無機化合物は、典型的には、公知の方法により形成された薄膜の形態で、上記無機層として利用され得る。上記無機化合物の薄膜の形成方法としては各種の蒸着法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)や、化学蒸着法(CVD)等を採用することができる。上記基材層は、蒸着層の上にさらに樹脂層を有していてもよい。この樹脂層は、例えば、上記蒸着層の保護等を目的として設けられたトップコート層であり得る。
防湿性や製造容易性、入手容易性等の観点から、金属材料からなる無機層として、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる無機層を好ましく採用し得る。また、防湿性や製造容易性、入手容易性等の観点から、無機化合物からなる無機層として、例えば酸化珪素層や酸化アルミニウム層を好ましく採用し得る。また、光透過性の高い無機層を構成し得るという観点から好ましい無機層として、酸化珪素層、酸化アルミニウム層およびITO層等が例示される。
無機層の厚さの上限は特に限定されない。被着体形状への追従性を得る観点からは、無機層の厚さを50μm以下とすることが有利である。粘着シートの薄膜化や軽量化の観点から、無機層の厚さは15μm以下が適当であり、好ましくは13μm以下、より好ましくは11μm以下、さらに好ましくは9μm以下である。基材層が複数の無機層を含む場合には、それらの無機層の合計厚さを上記範囲とすることが好ましい。無機層の厚さの下限は特に限定されず、使用目的や使用態様に応じた防湿性を示す粘着シートが得られるように適宜設定することができる。無機層の厚さを1nm以上とすることが適当であり、防湿性、気密性等の観点から2nm以上とすることが好ましく、5nm以上とすることがより好ましい。基材層が複数の無機層を含む場合には、それらのうち少なくとも一つの無機層の厚さを上記範囲とすることが好ましい。上記複数の無機層の各々の厚さがいずれも上記範囲にあってもよい。
無機層の厚さの好ましい範囲は、該無機層の材質や形成方法等によっても異なり得る。例えば、金属箔(例えばアルミニウム箔)からなる無機層(金属層ともいう。)の厚さは、防湿性や製造容易性とシワ防止性等を考慮して、1μm以上が適当であり、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、被着体追従性に通じる可撓性を考慮して、金属層の厚さは50μm以下が適当であり、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。また、無機化合物の蒸着により形成された無機層の厚さは、粘着シートの防湿性と、基材層の製造容易性や可撓性とのバランスを考慮して、1nm〜1000nmの範囲が適当であり、2nm〜300nmの範囲が好ましく、5nm以上100nm未満の範囲がより好ましい。
ここに開示される基材層は、上記無機層に加えて樹脂層を含んでもよい。上記樹脂層は、粘着シートの曲げ変形や摩擦により上記無機層が損傷することを防止する保護層として役立ち得る。したがって、基材層が無機層に加えて樹脂層を含むことは、防湿性能の耐久性や信頼性の観点から好ましく、上記基材層または粘着シートの取扱い容易性の観点からも好ましい。また、基材層の粘着剤層側表面に樹脂層を配置することにより、該粘着剤層の投錨性を向上させ得る。また、無機層を蒸着法やスパッタリング法等により形成する場合には、上記樹脂層を無機層形成の土台として利用することができる。
樹脂層の構造は特に限定されない。例えば、織布または不織布等のような繊維集積体やポリエチレンフォーム等の発泡体のように空隙を含む樹脂層であってもよく、実質的に空隙を含まない樹脂層(樹脂フィルム)であってもよい。粘着シートの薄膜化の観点から、実質的に空隙を含まない樹脂層を好ましく採用し得る。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂;ポリイミド(PI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有ポリマー;ナイロン、アラミド等のポリアミド系樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリスチレン系樹脂;アクリル系樹脂;フッ素樹脂;セルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;等を用いることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合、それらの樹脂は、ブレンドして用いてもよく、別々に用いてもよい。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも使用可能である。成膜容易性等の観点から、熱可塑性樹脂の使用がより好ましい。
樹脂層を含む基材層では、粘着シートの端面において、上記樹脂層の側面から該樹脂層に水蒸気が浸入することがあり得る。かかる水蒸気浸入を抑制する観点から、樹脂層を構成する樹脂材料としては、防湿性の高い材料を好ましく採用し得る。例えば、PET等のポリエステル樹脂や、PE、PP等のポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料を用いて形成された樹脂層が好ましい。好ましい一態様において、樹脂層としてPETフィルムを好ましく採用することができる。他の好ましい一態様において、PPを主成分とする樹脂材料をフィルム上に形成した後に二軸延伸してなるBOPP(Biaxially Oriented PolyPropylene)フィルムを、上記樹脂層として好ましく採用することができる。当該樹脂層よりも被着体側に無機層が存在しない構成の粘着シートでは、樹脂層の側面からの水蒸気浸入を抑制することが特に有意義である。かかる構成の粘着シートの典型例として、基材層の粘着剤層側表面が樹脂層により構成されている粘着シートが挙げられる。
樹脂層には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
基材層に含まれる樹脂層の数は特に限定されず、1層であっても2層以上(例えば2層〜5層程度)であってもよい。製造容易性や入手容易性の観点から、基材層に含まれる樹脂層の数を1層〜3層とすることが好ましく、1層または2層とすることがより好ましい。基材層が複数の樹脂層を含む場合、それらの樹脂層の材質や構造(厚さ、空隙含有の有無等)は、互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
樹脂層の形成方法は特に限定されない。例えば、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイキャスト成形法、カレンダーロール成形法、湿式キャスティング法等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用して樹脂層を形成することができる。樹脂層は、無延伸であってもよく、一軸延伸や二軸延伸等の延伸処理が施されていてもよい。
樹脂層の厚さの下限は特に限定されない。シワ防止性や成膜容易性等の観点から、樹脂層の厚さを1μm以上とすることが適当であり、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましく、7μm以上とすることがさらに好ましい。基材層が複数の樹脂層を含む場合には、それらのうち少なくとも一つの樹脂層の厚さを上記範囲とすることが好ましい。上記複数の樹脂層の各々の厚さがいずれも上記範囲にあってもよい。
樹脂層の厚さの上限は特に限定されず、例えば100μm以下とすることができる。粘着シートの薄膜化や軽量化の観点から、樹脂層の厚さは70μm以下が適当であり、55μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましい。基材層が複数の樹脂層を含む場合には、それらの樹脂層の合計厚さを上記範囲とすることが好ましい。一般に、樹脂層の透湿度は上述した無機層の透湿度に比べて高いことから、樹脂層の合計厚さを小さくすることは、粘着シートの端面において樹脂層の側面から該樹脂層に水蒸気が浸入することを防止する観点からも好ましい。
無機層と樹脂層とは接合していることが好ましい。接合方法は特に限定されず、当該分野で公知の方法を適宜採用することができる。例えば、あらかじめ成形した無機層(典型的には金属箔)とともに樹脂層形成用の樹脂材料を溶融状態で押し出す方法(押出ラミネート法)、あらかじめ成形した無機層に樹脂層形成用の樹脂材料の溶液または分散液を塗布して乾燥させる方法等を採用し得る。また、あらかじめ成形した樹脂層上に無機層を蒸着する方法、独立して成形した樹脂層と無機層とを接合する方法等を用いてもよい。上記接合は、例えば熱プレスにより行うことができる。また、接着剤層または粘着剤層を介して樹脂層と無機層とを接合してもよい。
樹脂層と無機層とを接合するための接着剤層は、プライマー等の下塗り剤を樹脂層に塗布して形成された下塗り層であり得る。下塗り剤としては、例えば、ウレタン系下塗り剤、エステル系下塗り剤、アクリル系下塗り剤、イソシアネート系下塗り剤等の、当該分野で公知のものを利用することができる。下塗り層の厚さは、粘着シートの薄膜化および軽量化の観点から、7μm以下とすることが適当であり、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましい。下塗り層の厚さの下限は特に限定されず、例えば0.01μm以上(典型的には0.1μm以上)とすることができる。
上記樹脂層には、上記接合に先立って、慣用の表面処理、例えば、マット処理、コロナ放電処理、架橋処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、高圧電撃曝露、イオン化放射線処理等の、化学的または物理的処理が施されていてもよい。
なお、基材層を構成する層の間に配置されてこれらを接合する粘着剤層は、粘着シートの表面に露出しないため、上記粘着シートの粘着面を構成する粘着剤層には該当しない。ここに開示される粘着シートにおいて、このように基材層内で用いられる粘着剤層の材質や物理特性は特に限定されない。該粘着剤層は、例えば、粘着面を構成する粘着剤層と同様の粘着剤により構成されていてもよく、異なる粘着剤により構成されていてもよい。その厚さも特に制限されず、例えば上記下塗り層と同程度の厚さであり得る。
ここに開示される粘着シートに用いられる基材層の好適例として、無機層と、該無機層の上下に積層された第1樹脂層および第2樹脂層とを含む積層体からなる基材層が挙げられる。基材層を構成する第1樹脂層および第2樹脂層は、無機層の上下に積層されている。このような積層関係を実現し得るのであれば、第1樹脂層および第2樹脂層が直接無機層に接触していてもよいし、第1樹脂層および第2樹脂層と無機層との密着を実現するために、上述のような下塗り層を介在していてもよい。ここに開示される粘着シートにおいて、第1樹脂層は、無機層からみて粘着シートの背面(基材層のおもて面)側に配置される樹脂層であり、第2樹脂層は、粘着剤層側に配置される樹脂層である。
上記無機層としては、上述の金属材料からなる金属層が挙げられ、例えばアルミニウム層が好ましい。また、第1樹脂層および第2樹脂層は、互いに同じ材料によって形成された層であることが好ましく、例えば、上記で例示した熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1樹脂層および第2樹脂層の各々は、2層以上の積層構造でもよいが、単層であることが好ましい。なかでも、第1樹脂層および第2樹脂層を形成する材料は、PET、PP、ポリスチレン等が好ましく、PET、PPがより好ましい。
第1樹脂層の厚さTR1と第2樹脂層の厚さTR2との比(TR1/TR2)は、特に限定されず、0.5以上とすることが適当であり、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。また、上記比(TR1/TR2)は、凡そ10以下とすることが適当であり、好ましくは7.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。上記比(TR1/TR2)を上記の範囲内とすることによって、被着体追従性とシワ防止性とが好ましく両立される。第1樹脂層の厚さTR1は、凡そ10μm以上が適当であり、好ましくは15μm以上、より好ましくは18μm以上、さらに好ましくは20μm以上(例えば22μm以上)である。上記TR1は、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは35μm以下である。第2樹脂層の厚さTR2は、凡そ1μm以上が適当であり、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上である。上記TR2は、凡そ25μm以下が適当であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下(例えば10μm以下)である。
無機層の厚さTに対する第1樹脂層の厚さTR1と第2樹脂層の厚さTR2の和(合計厚さT)の比(T/T)は、特に限定されず、シワ防止性、無機層の保護等の観点から、1以上とすることが適当であり、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上である。上記比(T/T)は、被着体形状に応じて折り曲げて貼りつける場合の被着体への追従性を考慮して、10以下とすることが適当であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。第1樹脂層の厚さTR1と第2樹脂層の厚さTR2の和(T)は、凡そ15μm以上とすることが適当であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。上記Tは、凡そ100μm以下とすることが適当であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下(例えば50μm以下)である。上記構成を有する基材層によると、薄膜状の無機層(例えばアルミニウム層)を、折れ、皺、破断等から効果的に保護することができる。このことによって、粘着シートが製造工程等において様々な負荷にさらされても、あるいは、使用時において長期にわたって厳しい環境下にさらされても、防湿膜としての特性をより確実に維持することができる。
無機層、第1樹脂層および第2樹脂層を有する積層体を形成する方法としては、上述したように、各層を公知の方法によって膜状に形成し、それらを上述した下塗り層の形成によりドライラミネートする方法や、第1樹脂層上に無機層を密着状態で形成し、その上に第2樹脂層をドライラミネートするか押出ラミネートする方法等の、種々の方法を利用することができる。
基材層の厚さの下限は特に限定されない。粘着シートの製造容易性や取扱い容易性の観点から、基材層の厚さは、凡そ3μm以上であり、凡そ5μm以上(例えば10μm以上)が適当である。防湿性や、シワが生じ難い剛性を有するためには、基材層の厚さは大きい方がよい。そのような観点から、基材層の厚さは、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。基材層の厚さの上限も特に限定されず、凡そ1mm以下、凡そ300μm以下(例えば150μm以下)とすることが適当である。粘着シートの被着体追従性や、薄膜化、軽量化の観点から、上記基材層の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下、特に好ましくは65μm以下(例えば55μm以下)である。上記のように厚さが制限された基材層によると、被着体と粘着シートとの間に隙間が生じにくくなるので、該隙間を通じての水蒸気浸入を防止することができる。
基材層の粘着剤層側表面には、慣用の表面処理、例えば、マット処理、コロナ放電処理、架橋処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、高圧電撃曝露、イオン化放射線処理等の、化学的または物理的処理が施されていてもよい。また、基材層の粘着剤層側表面には、プライマー等の下塗り剤を樹脂層に塗布して形成された下塗り層が配置されていてもよい。下塗り剤としては、例えば、ウレタン系、エステル系、アクリル系、イソシアネート系等の、当該分野で公知のものを利用することができる。下塗り層の厚さは、粘着シートの薄膜化および軽量化の観点から、7μm以下とすることが適当であり、5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましい。
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(PE、PP等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。粘着シートを磁気ディスク装置のシール材として用いる場合には、シロキサンガスを生じ得るシリコーン系剥離処理剤を含まない非シリコーン系剥離ライナーを用いることが好ましい。
<用途>
ここに開示される粘着シートは、高温での接着信頼性とアウトガス量低減とを両立し得るので、ガス混入が制限されていることが望ましく、かつ系内の温度上昇がある各種用途に好ましく用いられる。ここに開示される粘着シートは、例えば、各種電子機器に好ましく用いられる。より具体的には、上記電子機器における封止材料(例えば内部空間をシールするためのシール材)に好ましく用いられる。より好ましい一態様では、粘着シートは、例えば、HDD等の磁気ディスク装置の内部空間をシールするために好ましく用いられる。この用途では、例えばシロキサンガス等の混入ガスは、装置の故障の原因となり得るため、そのようなガス混入が防止されていることが重要である。また、ここに開示される好ましい一態様に係る粘着シートは防湿性にも優れ、この特徴も上記用途における有利な特徴となり得る。具体的には、例えばHAMRを採用した磁気ディスク装置では、書込み寿命に悪影響を与える水分の混入が防止されていることが重要である。このような用途、すなわちHAMR型の磁気ディスク装置のシール材(カバーシールともいう。)用途に、ここに開示される粘着シートを用いることにより、より高密度な磁気記憶装置を実現することができる。
ここに開示される技術の適用対象の好適例としての磁気ディスク装置の一態様を図4に示す。図4は、一態様に係る磁気ディスク装置を模式的に示す断面図である。磁気ディスク装置100は、データを記憶する磁気ディスク110と、磁気ディスク110を回転させるスピンドルモータ112、磁気ディスク110に対してデータの読み書きを行う磁気ヘッド114、磁気ヘッド114の動力源となるアクチュエータ116と、を備える。アクチュエータ116には、図示しないリニアモータが内蔵されている。この構造例では、磁気ディスク110は2枚内蔵されているが、これに限定されず、3枚以上の磁気ディスクを内蔵するものであり得る。
これらの磁気ディスク装置100の構成部品は、磁気ディスク装置100のケースというべきハウジング120内に配置されている。具体的には、磁気ディスク装置100の構成部品は、上面が開口した箱形状のハウジング本体(支持構造体)122に収容されており、ハウジング本体122上面の開口には、剛性のカバー部材124が被せられている。より具体的には、ハウジング本体122上面の開口の内周側には段差126が設けられており、この段差126の底部にカバー部材124の外周端を載置することによって、カバー部材124は開口を覆っている。粘着シート101は、カバー部材124の上面から、カバー部材124とハウジング本体122の上面(開口の外周)、すなわちハウジング120の上面全体をまとめて覆うように貼りつけられている。これによって、ハウジング本体122とカバー部材124との間に存在する隙間140やその他磁気ディスク装置100の内外に通じる孔や空隙をシールし、装置内部を気密状態に保つ。このような粘着シート101をシール材(カバーシール)として用いたシール構造は、カバー部材とガスケットを用いて気密性を確保していた従来のものよりも薄厚化が可能である。また液状ガスケットを用いる必要がないため、ガスケット由来のアウトガス発生も解消することができる。上記の構成において、ハウジング本体122上面における開口周縁(枠状の面)の幅(ハウジング本体122上面の開口外縁から該上面の端辺までの距離)は、最短部分で凡そ0.1〜5mm(例えば3mm以下、さらには2mm以下)である。粘着シート101をカバーシールとして、ハウジング本体122の上面に貼りつける場合、ハウジング本体122上面の開口周縁部分は、粘着シート101との接着面となり、磁気ディスク装置100の内部空間と外部とを隔てる領域となる。ここに開示される技術によると、上記のように接着面の幅(接着面方向の透湿距離)が制限された使用態様であっても、内部空間の気密性かつ乾燥状態(防湿)を確保することができる。
ここに開示される技術を適用し得る磁気ディスク装置の他の一態様を図5に示す。この磁気ディスク装置200は、粘着シート201の貼り付け状態以外は上記一態様に係る構成と基本的に同じであるので、異なる点について説明する。磁気ディスク装置200では、ハウジング220の上面を覆う粘着シート201は、カバー部材224とハウジング本体222の上面(開口の外周)をまとめて覆いつつ、そこからさらにハウジング220の側面に延びる部分(延設部ともいう。)を有する。この延設部は、具体的には、ハウジング本体222の上面からハウジング本体222の上面端部の角に沿って折れ曲がって、ハウジング本体222の側面に到達している。このような延設部は、ハウジング220の上面外周を構成する各一辺の全体に設けられていてもよく、該一辺に部分的に設けられていてもよい。すなわち、粘着シート201は、少なくとも部分的に、磁気ディスク装置200においてハウジング220の上面および側面にコの字状に貼りつけられている。この粘着シート201は、上記一態様に係る粘着シート101と同様、ハウジング本体222とカバー部材224との間に存在する隙間240やその他磁気ディスク装置200の内外に通じる孔や空隙をシールしつつ、ハウジング本体222の側面に延びて貼り付けられることで、そのシール状態を接着面方向に延長している。そのため、隙間240等と外部とを隔てる粘着シート201の接着面の距離はより長くなり、粘着シート201接着面からの透湿が抑制されて、防湿性がより向上する。この構成では、ハウジング220の上面端部(側面上端)からハウジング220の側面下方に延びる粘着シート201の距離(上記側面を覆う粘着シート201の長さ)は、凡そ1mm以上(例えば2mm以上、さらには3mm以上)である。
なお、上記の態様では、カバー部材124,224は、磁気ディスク110,210やアクチュエータ116,216をまとめて覆う一部材であったが、これに限定されず、磁気ディスク110,210、アクチュエータ116,216、その他の部材を別々にカバーするものであってもよく、アクチュエータ116,216はカバーせず磁気ディスク110,210をカバーするものであってもよい。そのような構成であっても、上記カバー部材の上から粘着シートを貼りつけることで、装置内部の防湿、気密性を得ることができる。そのような構成を有する磁気ディスク装置は、薄厚の粘着シートの使用によって防湿性、気密性が得られるので、シール構造が薄厚化されている。それによって、磁気ディスクの収容性が向上し、磁気ディスク装置の高密度化、大容量化を実現することができる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) データを記憶する1以上の磁気ディスクと;
前記磁気ディスクを回転させるモータと;
前記磁気ディスクに対してデータの読み書きの少なくとも一方を行う磁気ヘッドと;
前記磁気ヘッドを作動させるアクチュエータと;
前記磁気ディスクと前記モータと前記磁気ヘッドと前記アクチュエータとを収容するハウジングと;を備える磁気ディスク装置であって、
ここで、前記ハウジングにはカバーシールが設けられており、
前記カバーシールは、基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える粘着シートであり、
前記粘着シートは、
60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が1N/20mm以上であり、
ガスクロマトグラフ/質量分析法により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下である、磁気ディスク装置。
(2) 前記ハウジングは、上面が開口した箱形状のハウジング本体と、該開口を覆うカバー部材と、を備える、上記(1)に記載の磁気ディスク装置。
(3) 前記ハウジング本体上面の開口の内周側には段差が設けられており、該段差の底部に前記カバー部材の外周端が載置されている、上記(2)に記載の磁気ディスク装置。
(4) 前記カバー部材には孔が形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
(5) 前記粘着シートは、前記磁気ディスク装置の内部空間をシールしている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
(6) 前記粘着シートは、前記磁気ディスク装置のハウジング本体の上面をカバーし、かつシールする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
(7) 熱アシスト磁気記録が可能である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
(8) 基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備え、
60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が1N/20mm以上であり、
ガスクロマトグラフ/質量分析法により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下である、粘着シート。
(9) 前記60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が2N/20mm以上である、上記(8)に記載の粘着シート。
(10) 前記粘着剤層はスチレン系ブロック共重合体を含む、上記(8)または(9)に記載の粘着シート。
(11) 前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体およびそれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1種である、上記(10)に記載の粘着シート。
(12) 前記粘着剤層の厚さは20μm以下である、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の粘着シート。
(13) 前記基材層は、MOCON法(JIS K7129:2008)に基づき、40℃、90%RHの条件で測定される透湿度(厚さ方向への水蒸気透過速度)が5×10-1g/(m2・24時間)未満である非透湿層を含む、上記(8)〜(12)のいずれかに記載の粘着シート。
(14) 荷重1kg、60℃、1時間の条件で行われるせん断保持力試験におけるズレ距離が2mm未満である、上記(8)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) MOCON法に基づき、透湿距離2.5mmの条件で測定される粘着シート接着面方向の透湿度が90μg/(cm2・24時間)未満である、上記(8)〜(14)のいずれかに記載の粘着シート。
(16) 磁気ディスク装置の内部空間をシールするために用いられる、上記(8)〜(15)のいずれか一項に記載の粘着シート。
(17) 上記(8)〜(16)のいずれかに記載の粘着シートと、該粘着シートの粘着面を保護する剥離ライナーとを備え、
前記剥離ライナーは、シリコーン系剥離処理剤を含まない非シリコーン系剥離ライナーである、剥離ライナー付き粘着シート。
(18) 上記(8)〜(15)のいずれかに記載の粘着シートを備える、磁気ディスク装置。
(19) 前記粘着シートは、前記磁気ディスク装置の内部空間をシールしている、上記(18)に記載の磁気ディスク装置。
(20) 前記粘着シートは、前記磁気ディスク装置のハウジング本体の上面をカバーし、かつシールするカバーシールである、上記(18)または(19)に記載の磁気ディスク装置。
(21) 熱アシスト磁気記録が可能である、上記(18)〜(20)のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
≪実験1≫
実験1では、高温での接着信頼性、加熱ガス発生量を含む評価項目に関して、粘着剤のベースポリマー種の影響を検討した。
<例1>
(基材層の作製)
第1樹脂層として厚さ25μmのPETフィルム(PET層)、無機層として厚さ7μmのアルミニウム箔(Al層)、および第2樹脂層として厚さ9μmのPETフィルム(PET層)を、この順で表側(外表面側)から裏側(粘着剤層側)にかけてドライラミネート接着により積層した。各樹脂層と無機層との間には、それぞれ厚さ3μmの接着剤層が積層されている。このようにして、厚さ47μmの基材層(非透湿層)を作製した。
(粘着シートの作製)
ベースポリマーとしての水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIPS;綜研化学社製の商品名「2563NS」、Mw約24万、Mw/Mn約2.0、スチレン含有量11%)をトルエンに溶解して、NV25%の粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を基材層の片面(第2樹脂層側表面)に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着シートを得た。粘着剤層の表面(粘着面)の保護には、離型処理された熱可塑性フィルムからなる剥離ライナー(フジコー社製、商品面「HP−S0」、厚さ50μm)を用いた。
<例2>
粘着剤として日東電工社製の粘着テープ「VR5300」(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)を主成分とするゴム系粘着剤、スチレン含有量10%)を用いた他は例1と同様にして例2に係る粘着シートを得た。
<例3および4>
SIPSに代えて、例3ではポリイソブチレン(PIB;BASF社製の商品名「Oppanol N50」、Mw約34万、Mw/Mn5.0)を、例4ではブチルゴム(IIR;JSR社製の商品名「JSR BUTYL 268」、Mw約54万、Mw/Mn約4.5)を用いた。その他は例1と同様にして例3,4に係る粘着シートを得た。
[粘着剤層の透湿度(カップ法)]
粘着剤層の厚さ方向の透湿度を、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して測定した。具体的には、各例の粘着剤組成物を剥離性表面に塗布、乾燥し、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、厚さ2μmのPETフィルム(三菱プラスチック社製「ダイヤホイル」)にゴムローラを用いて貼り合わせた。このPET層付き粘着剤層を、試験用カップ(アルミニウム製、直径30mm、JIS Z0208のカップ法で用いられるカップ)の口径に合わせて、直径30mmの円形状に切り取った。これを試験サンプルとして用いた。そして、上記カップの内部に所定量の塩化カルシウムを入れた状態で、上記で作製した試験サンプルでカップの口を密閉した。試験サンプルで覆われたカップを60℃、90%RHの恒温高湿チャンバー内に入れて、24時間放置した前後における塩化カルシウムの重量変化を測定することにより、透湿度[g/(cm2・24時間)]を求めた。
各例に係る粘着剤の種類、透湿度(カップ法)[g/(cm2・24時間)]、貯蔵弾性率G´(25℃)[MPa]、G´(60℃)[MPa]、粘着シートの接着面方向の透湿度[μg/(cm2・24時間)]、常温粘着力[N/20mm]、60℃粘着力[N/20mm]、せん断保持力[mm]および加熱ガス発生量[μg/cm2]の評価結果を表1に示す。
Figure 2019119843
表1に示されるように、スチレン系ブロック共重合体を使用した例1,2は、PIBやIIRを用いた例3,4よりも60℃粘着力が高く維持され、高温での接着信頼性に優れることがわかる。接着方向の透湿度も低い傾向が認められた。しかし例1,2は、加熱ガス発生量が例3,4に係る粘着シートよりも多くなる傾向があった。
≪実験2≫
実験2では、スチレン系ブロック共重合体を用いた粘着剤層の厚さを変更して、高温での接着信頼性、加熱ガス発生量を含む評価項目の検討を行った。
<例5>
表2に示す粘着剤層厚さとした他は例1と同様にして例5に係る粘着シートを得た。表2にその評価結果を示す。表2には例1の粘着剤層厚さおよび評価結果も併記した。
Figure 2019119843
表2に示されるように、粘着剤層の厚さを制限することにより、60℃粘着力を所定値以上に保持しつつ加熱ガス発生量を低減することができた。具体的には、粘着剤層の厚さが10μmであった例5では、60℃粘着力を1N/20mm以上(より具体的には2N/20mm以上)に保持しつつ加熱ガス発生量を10μg/cm2以下(より具体的には5μg/cm2以下)まで低減することができた。これらの結果から、ここに開示される技術によると、高温での接着信頼性とアウトガス量低減とを両立した粘着シートが提供されることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。
1,101,201 粘着シート
10 基材層
12 第1樹脂層
14 無機層
16 第2樹脂層
20 粘着剤層
50 透湿度測定装置
52 高湿度チャンバ
54 低湿度チャンバ
56 金属板
58 (金属板の)開口
60 測定サンプル
100,200 磁気ディスク装置
110,210 磁気ディスク
112,212 スピンドルモータ
114,214 磁気ヘッド
116,216 アクチュエータ
120,220 ハウジング
122,222 ハウジング本体
124,224 カバー部材
126,226 段差
140,240 隙間

Claims (10)

  1. 基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備え、
    60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が1N/20mm以上であり、
    ガスクロマトグラフ/質量分析法により130℃、30分間の条件で測定される加熱ガス発生量が10μg/cm2以下である、粘着シート。
  2. 前記60℃でのステンレス鋼板に対する180度剥離強度が2N/20mm以上である、請求項1に記載の粘着シート。
  3. 前記粘着剤層はスチレン系ブロック共重合体を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
  4. 前記スチレン系ブロック共重合体は、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体およびそれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の粘着シート。
  5. 前記粘着剤層の厚さは20μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着シート。
  6. 前記基材層は、MOCON法(JIS K7129:2008)に基づき、40℃、90%RHの条件で測定される透湿度(厚さ方向への水蒸気透過速度)が5×10-1g/(m2・24時間)未満である非透湿層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着シート。
  7. 荷重1kg、60℃、1時間の条件で行われるせん断保持力試験におけるズレ距離が2mm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シート。
  8. MOCON法に基づき、透湿距離2.5mmの条件で測定される粘着シート接着面方向の透湿度が90μg/(cm2・24時間)未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着シート。
  9. 磁気ディスク装置の内部空間をシールするために用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着シート。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着シートを備える、磁気ディスク装置。
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