JP2019119704A - 害虫忌避剤の空間拡散方法及び送風機装着型害虫忌避シート - Google Patents

害虫忌避剤の空間拡散方法及び送風機装着型害虫忌避シート Download PDF

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Abstract

【課題】害虫忌避剤を効率的に拡散させることができ、空間内の気相濃度を忌避効果を発揮する有効濃度に短時間に到達させ得るとともに、その有効濃度を長時間維持させることができる害虫忌避剤の空間拡散方法を提供すること。【解決手段】本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法は、下記の成分(A)を0.1質量%以上20質量%以下含む害虫忌避用水性組成物を、基材シートの質量に対して68質量%以上750質量%以下保持させた送風機装着型害虫忌避シート1を、送風機2の回転する羽根4と接触せず、かつ、送風機2の前方への空気の流れを妨げない状態に送風機2に取り付ける工程と、該送風機2を室内で運転する工程とを含む。(A)25℃における蒸気圧が0.00006Pa〜210Paである害虫忌避剤。【選択図】図2

Description

本発明は、害虫忌避剤の空間拡散方法に関する。また本発明は、害虫忌避剤の空間拡散に用いる送風機装着型害虫忌避シートに関する。
従来、扇風機やエアコン等の送風機から発生する気流によって周囲の空気を強制対流させ、芳香剤や害虫忌避剤等の揮発性物質を空間に拡散させる方法が知られている。
例えば、特許文献1には、扇風機のカバーにバンドを用いて固定する扇風機用揮散物質放散装置の発明が開示されている。また、特許文献2には、ハネーカム構造体の基質にピレスロイド等の駆虫成分を含浸させて、エアコン等の送風口に設置し、駆虫成分を空気中に拡散(受動蒸発)させる発明が開示されている。また、特許文献3には、忌避剤や芳香剤を含浸させたタブレットを扇風機に装着して揮発させる装置の発明が開示されている。さらに、特許文献4には、薬剤を含む液体を微細霧状に噴霧し、扇風機を用いて室内に拡散させる方法の発明が開示されている。
特開2007−051552号公報 特表平11−504627号公報 国際公開第2004/028249号パンフレット 特開2009−119335号公報
しかしながら、送風機を利用した芳香剤や忌避剤の拡散装置に関し、これまで提案されている発明は、扇風機等の送風装置に装着する担持体や噴霧器等を用いて、芳香剤や忌避剤を揮発させる方法の改良に関するものが多く、人の居住空間に忌避剤を拡散させて害虫の忌避空間を形成させるとともに、その忌避空間を長時間維持するとの観点や、室内に好ましい芳香を付与しつつ、同時に忌避空間を形成させるという観点等において、改良の余地がある。
一般に害虫の忌避効果を有する香料や精油が、空間において忌避効果を発揮する空間濃度(有効忌避量)は、ピレスロイドのような殺虫忌避剤よりも数倍から十数倍以上高く、人が匂いを感じられないような低濃度領域では、忌避効果を発揮しないものが多い。また、芳香を知覚することにより、忌避効果が持続していること認知することが可能となる。従って、速やかに忌避効果を発揮する空間濃度に到達させ、一定時間、その空間濃度を保持することや、加えて、人が適度な感覚強度で匂いを感知できる空間濃度を一定時間保持することが求められる。
特許文献1の発明は、揮散物質放散容器を扇風機のカバーに固定する方法であり、特許文献2の発明は、トランスフルスリン,プラレスリン等のピレスロイド系駆虫成分を揮発させる方法であって、引用文献1及び2のいずれにおいても、忌避効果を有する香料の空間濃度や匂いの感覚強度の調整に関しては言及されていない。特許文献3の発明は、忌避剤や芳香剤を含浸させたタブレットを扇風機背面に装着する方法であって、加熱装置によりタブレットからの忌避成分の揮発を促進させるものである。また、特許文献4に記載の方法は、建物の解体現場、産廃や一般ごみ処理場等の粉塵が飛散する場所に薬剤を含む多量の水分をミストとして噴霧するものであり、人が居住している室内での使用、ましてや芳香を付与することを考慮していない。
このように、害虫の忌避効果を有する香料等の揮発性化合物の空間濃度を、比較的短時間に、忌避効果を発揮するのに十分な量であり、かつ、人が匂いを強すぎると感じない水準に到達させ、一度拡散させた後は数時間程度、忌避効果及び好適な嗅覚強度を数時間維持できる方法が求められていた。
本発明者は、送風機を利用した芳香剤や忌避剤の拡散方法として、香料等の害虫忌避剤を分散させた水溶液を、水分保持能力を有するシートに含浸させ、送風機に装着することにより、送風機から離れた室内空間において、すみやかに一定の気相濃度に到達させることができ、さらに空間濃度を維持しつつ室内が適度な強さの芳香で満たされることを見出した。
本発明は、害虫忌避剤の空間拡散方法に関するものである。また、本発明は、害虫忌避剤の空間拡散に用いる送風機装着型害虫忌避シートに関するものである。
本発明は、下記の成分(A)を0.1質量%以上20質量%以下含む害虫忌避用水性組成物を、基材シートに質量に対して68質量%以上750質量%以下保持させた送風機装着型害虫忌避シートを、送風機の回転する羽根と接触せず、かつ、該送風機の前方への空気の流れを妨げない状態に該送風機に取り付ける工程と、該送風機を室内で運転する工程とを含む、害虫忌避剤の空間拡散方法を提供するものである。
(A)25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下である害虫忌避剤
また、本発明は、吸水性の基材シートに、シート1cmあたりに含まれる害虫忌避剤の量が0.00037g/cm以上0.177g/cm以下の範囲となるように、下記の成分(A)、(B)及び(C)を下記の割合で含む害虫忌避用水性組成物を保持させてあり、前記害虫忌避用水性組成物の保持量が、前記基材シートの質量に対して68質量%以上750質量%以下である、送風機装着型害虫忌避シートを提供するものである。
(A)25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下である害虫忌避剤:0.1質量%以上20質量%以下
(B)水:70質量%以上99.8質量%以下
(C)水溶性アルコール:0.1質量%以上29.9質量%以下
本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法及び送風機装着型害虫忌避シートによれば、害虫忌避剤を効率的に拡散させることができ、空間内の気相濃度を忌避効果が発揮する有効濃度に短時間に到達させ得るとともに、その有効濃度を長時間維持させることができる。また、害虫忌避剤を放散させるのに加熱の必要がないために、芳香成分を配合した場合、その芳香の強さの調節も容易である。
図1は、本発明の実施に好ましく用いられる扇風機の一例を示す斜視図である。 図2(a)及び図2(b)は、図1に示す扇風機を保護カバーの背面部側から視た図であり、図2(a)は、本発明の一実施形態である送風機装着型害虫忌避シートを保護カバーの背面部に取り付ける前の状態を示し、図2(b)は、前記送風機装着型害虫忌避シートを保護カバーの背面部に取り付けた状態を示す。 図3は、扇風機の保護カバーの背面部と羽根と該背面部に取り付けた送風機装着型害虫忌避シートの投影図である。 図4(a)〜図4(c)は、それぞれ、送風機装着型害虫忌避シート1を、扇風機の保護カバーの背面部に、シートを取り付けた第2領域の面積が該シートを取り付け可能な第1領域の面積の60%以下となるように取り付けた状態を示す図である。 図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、送風機装着型害虫忌避シート1を、扇風機の保護カバーの背面部に、シートを取り付けた第2領域の面積が該シートを取り付け可能な第1領域の面積の75%超となるように取り付けた状態を示す図である。 図6は、扇風機で室内空気を強制対流させた場合の害虫忌避剤の拡散試験の結果として、扇風機から50cm離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図7は、同拡散試験の結果として、扇風機から1m離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図8は、同拡散試験の結果として、扇風機から2m離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図9は、忌避率の計測に用いた装置の概略を示す模式図である。 図10は、扇風機を使用しない場合の害虫忌避剤の拡散試験の結果として、扇風機から50cm離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図11は、同拡散試験の結果として、扇風機から1m離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図12は、同拡散試験の結果として、扇風機から2m離れた地点における害虫忌避剤の気相濃度の計測結果を示す図である。 図13は、香りの強さの官能評価の結果を示す図であり、扇風機から50cm離れた地点についての結果を示す図である。 図14は、香りの強さの官能評価の結果を示す図であり、扇風機から1m離れた地点についての結果を示す図である。 図15は、香りの強さの官能評価の結果を示す図であり、扇風機から2m離れた地点についての結果を示す図である。
以下、本発明(害虫忌避剤の空間拡散方法及び送風機装着型害虫忌避シート)をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法は、成分(A)の害虫忌避剤を含む害虫忌避用水性組成物(以下、水性組成物ともいう)を基剤シートに保持させた送風機装着型害虫忌避シート(以下、害虫忌避シートともいう)を用いる。
本発明において、成分(A)の害虫忌避剤は、害虫に対する忌避効果を有する化合物であって、25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下のものである。ここで、忌避対象の害虫としては、蚊、ハエ、サシバエ、チョウバエ、ブヨ、ゴキブリ等が挙げられる。
成分(A)の害虫忌避剤の前記蒸気圧は、送風機により害虫忌避剤を室内に十分に揮散することができ、室内の気相濃度を保持する観点から、好ましくは0.001Pa以上、より好ましくは0.1Pa以上である。また、気相濃度を維持する観点から、好ましくは100Pa以下、より好ましくは20Pa以下である。さらに、斯かる観点から、前記蒸気圧は、好ましくは0.001Pa以上100Pa以下であり、より好ましくは0.1Pa以上20Pa以下である。
成分(A)の害虫忌避剤としては、具体的には下記の化合物を挙げることができる。また、表1にこれら害虫忌避剤の蒸気圧を示す。
2−メトキシ−4−プロピルフェノール(ジヒドロオイゲノール)、オクタヒドロ−7−メチル−1,4−メタノナフタレン−6(2H)−オン(プリカトン)、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール(フロラロール)、2,4,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−カルボアルデヒド(イソシクロシトラール)、エチル−2−フェニルアセテート、(2,4,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)メタノール(イソシクロゲラニオール)、3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロクロメン−2−オン(オクタヒドロクマリン)、シトラール、シトロネロール、デカン酸、ゲラニオール、リナロール、p−メンタン−3,8−ジオール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルプロピオネート、スチラリルプロピオネート、1,8−シネオール、(3aR,5aS,9aS,9bR)−3a,6,6,9a−テトラメチル−2,4,5,5a,7,8,9,9b−オクタヒドロ−1H−ベンゾ[e][1]ベンゾフラン(アンブロキサン:登録商標)、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸 1−メチルプロピルエステル(ピカリジン)、d−アレスリン、ピレトリンI、トランスフルトリン、メトフルトリン、(1R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル(エンペントリン)
本発明において、成分Aの害虫忌避剤の含有率は、水性組成物中0.1質量%以上20質量%以下である。この範囲とすることにより、成分Aの害虫忌避剤を、害虫忌避シートから蒸散させやすくすることができる。
また、成分(A)の含有率は、忌避効果をより確実に得る観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。また、害虫忌避剤の蒸散性を高め、送風機を設置した空間内の気相濃度を、忌避効果を発揮する有効濃度に早期に到達させるとともに、その有効濃度が維持されやすくする観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。また、それらの両立の観点から、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上7質量%以下である。
さらに、本発明で用いる水性組成物は、成分(A)の害虫忌避剤として、十分な忌避効果を付与する観点から、少なくとも、2−メトキシ−4−プロピルフェノール(ジヒドロオイゲノール;以下、DHEとも示す)、オクタヒドロ−7−メチル−1,4−メタノナフタレン−6(2H)−オン(プリカトン)、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール(フロラロール)、3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロクロメン−2−オン(オクタヒドロクマリン)、シトラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロールから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。成分(A)中の上記化合物の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましく30質量%以上である。
さらに、成分(A)の害虫忌避剤は、DHEと、前述の2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール(フロラロール)、3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロクロメン−2−オン(オクタヒドロクマリン)、シトラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、1,8−シネオールから選ばれる1種以上を併用することが好ましい。また、忌避効果と香りの強さの観点から、成分(A)害虫忌避剤の合計量中のDHEと前記化合物の合計量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、成分(A)の害虫忌避剤は、25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下の害虫忌避効果を有する化合物を有効成分として含む植物精油等を用いることができる。斯かる植物精油としては、ゼラニウムオイル(有効成分:ゲラニオール等)、ローズオイル(有効成分:ゲラニオール、シトロネロール等)、ユーカリオイル(有効成分:1,8-シネオール)、ローズマリーオイル(有効成分:1,8-シネオール等)、ローレルオイル(有効成分:1,8-シネオール等)等が挙げられる。これらを水性組成物に含有させる場合、水性組成物中における害虫忌避剤の含有率は、該植物精油等に含まれる、25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下の害虫忌避効果を有する化合物(有効成分)の、水性組成物全量に対する割合(質量%)である。
また、水性組成物を構成する水性媒体は、純水、イオン交換水、アルカリイオン水、天然水などの水や水溶性アルコール類が挙げられる。水性組成物中の成分(B)の水の含有率は、好ましくは70質量%以上99.8質量%以下であり、より好ましくは83質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、天然水等を用いることができ、蒸留水又はイオン交換水を用いることが好ましい。
また、本発明の水性組成物は、成分(A)の害虫忌避剤の分散性を高める目的で、成分(C)の水溶性アルコールを含むことが好ましい。成分(C)の水溶性アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2〜3の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6の多価アルコール等を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、成分(C)の水溶性アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールを用いることが好ましく、また、シートに含浸させた際に、べたつきにくく、忌避剤や水と共に室内に揮発しやすく、アルコール自体のニオイも強すぎないという観点から、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールを用いることが更に好ましい
成分(C)の水溶性アルコールの含有量は、水性組成物中に、好ましくは0.1質量%以上29.9質量%以下であり、成分(A)害虫忌避剤の分散性を高める観点から、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、アルコール自体のニオイも強すぎないという観点から、より好ましくは10質量%以下である。
また、本発明において、成分(B)と成分(C)との合計含有率は、水性組成物中、好ましくは60質量%以上99.8質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上99.8質量%以下である。
本発明で用いる水性組成物には、害虫忌避剤の分散性を高める目的で、さらに、成分(D)の界面活性剤を含むことができる。
成分(D)の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の中から選ばれる界面活性剤の1種以上を用いることができ、害虫忌避剤や香料成分の水系への分散性、溶解性に優れるという観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。また、害虫忌避剤を水系に分散させた際の分散安定性を高めるという観点から、非イオン性界面活性剤と共に両性界面活性剤を併用しても良い。
非イオン性界面活性剤は、HLB値が9〜16のものが好ましく、9〜15がよりこのましく、10〜15であるものがさらに好ましい。ここで、HLB値はグリフィン氏の方法(界面活性剤便覧、昭和35年7月発行、産業図書株式会社、第307〜312頁参照)を採用し、グリフィン氏の方法で求めることができない化合物は、実験(界面活性剤便覧、第319〜320頁参照)で求めた値とする。
具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルモノアルキルエーテルが挙げられ、エチレンオキサイドの平均付加モル数は6〜10が好ましく、またアルキルの炭素数は12〜14がこのましい。
陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、直鎖又は分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル多価アルコールエーテル硫酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキル基又はアルケニル基を有する、アミドプロピルアミンオキシド(ラウリン酸とジメチルアミノプロピルアミンとのアミド化合物を過酸化水素と反応させて得たもの)、アルキル又はアルケニルアミンオキサイド、又はジメチルラウリルアミンオキシド;ジメチルアミノ酢酸ベタイン、又はイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で又は1種以上を組み合わせて用いることもできる。害虫忌避用水性組成物中の界面活性剤の含有率は、好ましくは0.001質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0.005質量%以下である。
本発明で用いる水性組成物には、さらに成分(E)として、芳香成分を添加しても良い。芳香成分としては、好ましくは、δ−ノナラクトン、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタン−3−エンイル)ブタン−2−エン−1−オール(バンガロール)、E)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタン−3−エンイル)ブタン−2−エン−1−オール(サンダルマイソルコア)、3−[5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル]シクロヘキサン−1−オール(Sandal synth=イソボルニルシクロヘキサノール)からなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。
水性組成物中の成分(E)芳香成分の含有率は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは14質量%以下、より好ましく7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
本発明で用いる吸水性の基材シートとしては、吸水性が高い基材シートを用いることが、水性組成物中の害虫忌避剤の濃度を低く抑える一方、その水性組成物を担持させる量を多量とすることによって、害虫忌避剤を効率的に蒸散させ、送風機を設置した空間内の気相濃度を忌避効果を発揮する有効濃度に早期に到達させ得るとともに、その有効濃度を長時間維持させることが可能となるため好ましい。
斯かる観点から、基材シートの最大保水率は、68質量%以上1000質量%以下であることが好ましく、より好ましくは200質量%以上800質量%以下であり、好ましくは200質量%以上750質量%以下である。
なお、最大保水率は、JIS L1913:2010 一般不織布試験方法の6.9.2「保水率の測定法」に準拠して測定される。具体的手順は以下の通り。
<手順>
1)試料から100mm×100mmの試験片を3枚採取し、その質量を1mgまで測定した。
2)2Lのビーカーに精製水約1Lを入れ、試験片を15分間浸せきし、ピンセットで試験片の一つの角をつまんで水中から取り出して試験片を器壁に接触させずに5分間放置して水を滴り落とした後、その質量を1mgまで測定した。
3)次の式によって保水率を算出し、更にその平均値を求め、四捨五入法によって小数点以下1けたの値を算出した。
保水率m(%)=(m2−m1)/m1 ×100
m1:試験片の標準状態での質量(mg)
m2:試験片を湿潤し、水を滴り落とした後の質量(mg)
また本発明において、基材シートに対して保持させる水性組成物の量は、基材シートの質量の68質量%以上750質量%以下が好ましく、より好ましくは180質量%以上750質量%以下がより好ましく、更に好ましくは200質量%以上750質量%以下である。水性組成物中の害虫忌避剤の濃度を低く抑える一方、その水性組成物を担持させる量を多量とすることによって、害虫忌避剤を効率的に蒸散させ、送風機を設置した空間内の気相濃度を忌避効果を発揮する有効濃度に早期に到達させ得る。なお、水性組成物の量は、害虫忌避用水性組成物を保持させる前の基材シートの質量に対する、該基材シートに保持させる害虫忌避用水性組成物の質量の割合を百分率で表した値であり、表2中に、保持率(%)として示す。
基材シートは、繊維から構成された繊維シートから構成されていることが好ましく、該繊維シートは、不織布製シート又は織布製シートであることが好ましい。不織布製シートを構成する不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ヒートロール不織布などが挙げられる。不織布製シートには、単層構造の不織布の他、複数枚の不織布の積層体や、不織布とネット状物との積層体等も含まれる。
基材シートを構成する不織布製シート等の繊維シートは、最大保水率が高い繊維シートとする観点から、親水性繊維を、繊維シートの構成繊維中に30質量%以上100質量%以下含むことが好ましく、親水性繊維を、繊維シートの構成繊維中に70質量%以上100質量%以下含むことがより好ましい。親水性繊維としては、パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維等の親水度が比較的高い合成繊維等が挙げられる。基材シートを構成する繊維シートは、パルプ、レーヨン、コットン系繊維からなる群から選ばれる1種以上の親水性繊維を上記の割合で含むことが更に好ましい。
不織布製シート等の繊維シートとして、所定のパターンで複数の開孔が形成されているものを用いることもできる。例えば、特開2014−108307号公報の図1に示された繊維シートを、本発明における基材シートとして用いることもできる。
基材シートの坪量は、特に制限されないが、高い保水率を得る観点から、30g/m以上が好ましく、より好ましくは40g/m以上であり、更に好ましくは50g/mである。また、取扱性の容易等の観点から500g/m以下が好ましく、より好ましくは200g/m以下である。
水性組成物を基材シートに担持(保持)させる方法は、特に制限されず、例えば、スプレーによる噴霧法、刷毛塗り法、浸漬法の他、バーコーター、グラビアコーター、各種ロールコーター等を用いた塗布法等が挙げられる。これらの中でも、繊維の微細な空隙構造をできるだけ圧縮せず、繊維の保水率を高めるという観点から、噴霧法ないしは浸漬法が好ましい。
害虫忌避用水性組成物は、シート1cmあたりに含まれる成分(A)害虫忌避剤の量が0.00037g/cm以上0.177g/cm以下の範囲となるように担持させることが好ましい。
担持量が斯かる範囲になるように担持させることで、一定時間、空間中の忌避剤の濃度を保持でき、有効濃度を常に保持可能となる。
水性組成物を基材シートに担持させることにより本発明の送風機装着型害虫忌避シートが得られる。害虫忌避シートは、一枚を単独で又は複数枚を重ねた状態として、密閉容器に収容して販売や保管、運搬することが好ましい。
次に、前述した害虫忌避シートの使用方法について説明する。当該使用方法の説明は、本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法の一実施態様の説明でもある。
害虫忌避シートを使用する際には、当該害虫忌避シートを、例えば前記の密閉容器から取り出して、送風機に取り付ける。
送風機としては、扇風機、サーキュレーター、エアコン等が挙げられるが、広く普及している扇風機を用いることが手軽に害虫忌避剤の放散を行うことができる観点から好ましい。
害虫忌避シートを扇風機等の送風機に取り付ける工程では、型害虫忌避シートを、送風機の回転する羽根と接触せず、かつ、該送風機の前方への空気の流れを妨げない状態に取り付ける。例えば、図1に示すように、一般に、扇風機2は、モーター部3内に配された電動モーター(図示せず)と、該電動モーターによって回転する羽根4と、該羽根4の前側に配された前カバー51及び該羽根4の後側に配された後カバー52からなる羽根の保護カバー5と、モーター部3等を下方から支持する支持部6とを有するが、送風機装着型害虫忌避シート1を、斯かる扇風機2に取り付ける場合は、例えば図2(b)又は図2(c)に示すように、害虫忌避シート1を、後カバー52からなる保護カバー5の背面部に、該背面部を部分的に覆った状態に取り付けることが好ましい。そのような状態に取り付けることで、害虫忌避シート1は、扇風機2(送風機)の回転する羽根4と接触せず、且つ扇風機2(送風機)の前方への空気の流れを妨げない状態に取り付けられる。害虫忌避シート1を、後カバー52からなる保護カバー5の背面部に取り付けることは、害虫忌避シート1を、容易に、扇風機2(送風機)の前方への空気の流れを妨げない状態に取り付けることができるため好ましい。
送風機が、扇風機である場合、害虫忌避シート1を、扇風機2(送風機)の前方への空気の流れを妨げない状態に取り付けるためには、図3に示すように、保護カバー5の背面部と、保護カバー5の背面部側(羽根の後側)に取り付けた害虫忌避シート1を、羽根4の回転軸の中心線41と平行に該中心線41に直交する平面上に投影した投影図において、モーター部3が固定されていることによって、保護カバー5の背面部の中央部に形成されている非通気部43の投影部の輪郭線43cと羽根4の最外端の軌跡の投影線である円42との間の領域を、シートを取り付け可能な第1領域とし、第1領域上に投影された送風機装着型害虫忌避シート1の面積をシートを取り付けた第2領域としたときに、第2領域の面積S2が、第1領域の面積S1の75%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。他方、第2領域の面積S2は、第1領域の面積S1の3%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上であることが好ましい。
図4(a)〜図4(c)は、第2領域の面積S2が第1領域の面積S1の60%以下となるように、害虫忌避シート1を取り付けた例、図5(a)及び図5(b)は、第2領域の面積S2が第1領域の面積S2の75%超となるように、害虫忌避シート1を取り付けた例を示す図であり、害虫忌避シート1を、第2領域の面積S2が第1領域の面積S1の60%以下となるように取り付けた場合は、扇風機2の前方2mの位置まで空気の流れが到達したことが確認され、害虫忌避シート1を、第2領域の面積S2が第1領域の面積S1の75%超となるように取り付けた場合は、扇風機2の前方よりも上下方向に空気が流れ、前方への空気の流れが明らかに妨げられることが確認された。
このように、害虫忌避シート1と取り付けたときに、シートを取り付けた第2領域の面積S2が、シートを取り付け可能な第1領域の面積の60%以下である場合は、少なくとも、送風機の前方への空気の流れを妨げない状態に取り付けたと言える。ここで、空気の流れを妨げない程度とは、送風機から2m離れた地点で、少なくとも頬に風を感じる程度(ビューフォートの風力階級表;至経風)の風速である。
本発明の送風機装着型害虫忌避シート及び本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法の一実施態様によれば、このように、害虫忌避シートを、送風機の回転する羽根と接触せず、かつ、該送風機の前方への空気の流れを妨げない状態に該送風機に取り付けることによって、基材シートに担持させた害虫忌避剤を、該シートを取り付けた送風機の近傍で効率的に放散させることができ、該送風機による送風によって該送風機を設置した空間内の気相濃度を忌避効果を発揮する有効濃度に短時間に到達させ得るとともに、その有効濃度を長時間維持させることができる。また、害虫忌避剤を放散させるのに加熱の必要がなく、また芳香成分を配合した場合、その芳香の強さの調節も容易である。
本発明においては、送風機に害虫忌避シートを装着した後、当該送風機を室内で運転する。その送風機の運転は、5分間以上連続運転することが、室内の広い範囲に害虫忌避剤を有効濃度以上に保持させる観点から好ましく、より詳しくは、送風機に害虫忌避シートを装着した後、120分間以上連続運転することが好ましい。
また、害虫忌避シートを、扇風機の保護カバーの背面部に用いた場合、扇風機を運転させながら、害虫忌避シートに、害虫忌避用水性組成物を補充することも可能である。たとえば、スプレー容器に充填した害虫忌避用水性組成物を、数時間毎に害虫忌避シートに噴霧することにより、扇風機に装着された害虫忌避シートからの害虫忌避剤の拡散を継続させることができる。
本発明の送風機装着型害虫忌避シート及び本発明の害虫忌避剤の空間拡散方法は、上述した実施形態に何ら制限されず、適宜変更可能である。
例えば、図2(b)又は図2(b)に示す状態に害虫忌避シートを取り付ける方法としては、環状の一枚のシートを取り付けても良いし、複数枚のシートが並んで環状をなすように取り付けても良い。また、複数枚の害虫忌避シートを、一つの扇風機に取り付ける場合、個々のシートの形状は、円形、三角形、四角形、ひし形、扇形等、任意の形状とすることができる。害虫忌避シートを取り付ける方法としては、ダブルクリップ等のクリップを用いる以外に、紐、ゴム、磁石等を用いて固定しても良い。また、害虫忌避シートは、その一部を、保護カバーの前側に位置させた状態に固定することもできる。但し、その場合も、保護カバーの背面部側に前面部側より多くのシートを存在させることが好ましい。
また本発明における送風機装着型害虫忌避シートを、害虫忌避用水性組成物を保持する前の基材シートと害虫忌避用水性組成物とに分け、該基材シートと、容器に収容した害虫忌避用水性組成物のセットとして販売することもできる。その場合、当該セットには、害虫忌避用水性組成物を基材シートに含浸させる旨、及び害虫忌避用水性組成物を含浸させた基材シートを送風機の裏側(扇風機の背面部等)に固定して用いる旨を記載した説明を添付することが好ましい。添付の方法は、セットを収容した包装箱に説明書を同封しても良いし、当該包装箱や害虫忌避用水性組成物を収容した容器等に当該説明を表示しても良い。害虫忌避用水性組成物を収容する容器は、スプレー容器であっても良い。
前述した本発明の実施形態(態様)に関し、更に以下の複合シートの製造方法及び複合シートの製造装置を開示する。
以下、本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明する。但し、本発明は、斯かる実施例により何ら限定されるものではない。
<害虫忌避用水性組成物の調製>
害虫忌避用水性組成物として、表2に示す組成物(a)〜(e)を調製した。組成物(a)〜(e)は、組成物中に害虫忌避剤を、順に3.9質量%、13.9質量%、60質量%、60質量%、4.0質量%含むものである。表2に示す組成物の調製に、成分(A)の害虫忌避剤として用いた化合物は、2−メトキシ−4−プロピルフェノール(別名:ジヒドロオイゲノール:dihydro eugenol)と、オクタヒドロ−7−メチル−1,4−メタノナフタレン−6(2H)−オン:(プリカトン:Plicatone)であり、これらの化合物は、香料としても用いられており、市販の試薬または香料化合物として入手可能である。
<扇風機で室内空気を強制対流させた場合の害虫忌避剤の拡散試験>
表2に示す害虫忌避用水性組成物を、それぞれ、13cm×20.5cmに裁断したセルロース製の不織布6枚に含浸させ、扇風機(三洋電機製EF−S30R2(L)型30cmリビング扇)の保護カバーの背面部に、図2(b)に示すように、羽根の回転軸の中央部分が同心円状に空くような状態にクリップ(図示せず)で装着した。不織布は、シートを取り付けた第2領域の面積が、シートを取り付け可能な第1領域の面積の60%となるように組合せて装着した。各不織布は、いずれもスパンレース不織布で、坪量が60g/mであった。
不織布に含浸させた害虫忌避用水性組成物の総量は、組成物(a)が40g、組成物(b)が11.2g、組成物(c)が2.6g、組成物(d)が1.3g、組成物(e)11.2gであり、組成物(a)〜(c)については、不織布に含浸させた害虫忌避剤の総量が、いずれも1.56gとなるように調整し、組成物(d)については、不織布に含浸させた害虫忌避剤の総量が0.78gとなるように調整した。組成物(e)については、不織布に含浸させた害虫忌避剤の総量が、組成物(a)〜(c)の約3分の1弱である0.44gに調製した。
また、この時のシート1cmあたりに含まれる害虫忌避剤の量は、組成物(a)、(b)、(c)は0.0023g/cm、組成物(d)は0.0011g/cm、組成物(e)は0.00065g/cmであった。
拡散試験を実施した場所は、間口2.5m、奥行き5.5m、床面積が7.5畳(約13.7m)、高さが2.5m、容積が42.5mの室内(室温20.0〜23.3℃、相対湿度52〜60%)であり、室外から扇風機によらない対流が生じることを防ぐため、窓は閉めきった。
扇風機の設置場所は、扇風機前面カバーの位置が入口から約0.8mの場所とし、扇風機の回転軸は、床面から90cmの高さとし、室内側に扇風機からの送風が床面に並行に入口の対面に向かって直進するように(首を振らないように)設置した。さらに、扇風機前面カバーから、距離0.5m、1.0m、2.0mの各地点に、扇風機の回転軸と同じ90cmの高さにおける室内の空気を捕集するための吸着管を、金属製のスタンドを用いて設置した。吸着管(TDUチューブ)は、外径6mm(内径4mm)、長さ5cmのガラス管で、内部に吸着剤としてTenax樹脂を充填した。吸着管はそれぞれ小型吸引ポンプに接続し、吸引流速70mL/minで吸引した。吸着管による空気の捕集は、扇風機のスイッチを入れた直後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後に実施し、1回の捕集に要した時間は約7分間であった。
捕集に用いた吸着管は、そのまま加熱脱着装置にセットして、捕集した害虫忌避剤をGC−MS装置に注入し、定量分析を行った。
GC−MS分析条件を表3に示す。
Tenax管に吸着した害虫忌避剤の定量値は、分析対象とする化合物のイオンフラグメントのピークエリアを、予め算出した検量線に代入し算出することで求めた。ジヒドロオイゲノールの定量においては、イオンフラグメント137(M/Z)のピークを検出に用いた。
また、拡散試験では、害虫忌避剤として有臭の香料化合物を用いているため、室内で使用した場合の香りの強さを、吸着管による空気の捕集と同時に官能評価した。評価は2〜3名の専門パネルによって、下記の6段階強度尺度で行い、パネルの協議によって香りの強さを決定した。
<香りの強さの評価尺度>
香りの強さは下記の6段階強度尺度で評価した。
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:何のにおいかわかる
3:楽に感知できるにおい
4:においをはっきり感知できる
5:強烈に感知できるにおい
組成物(a)〜(d)をそれぞれ不織布に含浸させ、扇風機に装着して揮散させた時のジヒドロオイゲノール(以下「DHE」と略記する)の気相濃度の計測結果を図6〜図8に示す。図6〜図8は、扇風機からTenax管の配置位置が50cm,1m,2mでの測定結果を示している。
組成物(a)と組成物(c)及び(d)の気相濃度計測結果を比較すると、組成物(a)(DHE1.9%水溶液,害虫忌避剤濃度3.9%)は、組成物(c)(DHE30%水溶液,害虫忌避剤濃度60%)及び組成物(d)(DHE60%水溶液,害虫忌避剤濃度60%)のいずれよりもDHEの気相濃度が高く、ほぼ全ての地点で蚊の忌避有効濃度を超えていることが判った。蚊の忌避有効濃度は、DHE単体で蚊の忌避率が50%となる気相濃度1.3nmol/Lという値を用いた。
これに対し、DHEの30%又は60%水溶液である組成物(c)及び(d)については、図6〜図8に示すように、全ての計測位置で全ての測定時間にて蚊の忌避有効濃度を超えるものはなかった。
本試験結果から、害虫忌避剤の含有量は同等であっても水分量及び水溶液量が異なることで揮散挙動が変化すること、及び組成物中の害虫忌避剤の含有率を20質量%以下とすることで、送風機を設置した空間内の気相濃度を忌避効果を発揮する有効濃度に短時間に到達させ得るとともに、その有効濃度を長時間維持させることができることが判る。
なお、蚊の忌避率は、下記方法により求めた。
幅、奥行きおよび高さが、いずれも内寸170cmの箱型装置と、内寸60cmの小箱を準備する。図9に示すように、箱型装置と小箱は隣接して配置し、接する面に縦14.5×横24cmの連通口を設けた。該連通口の箱型装置内に、吸着管(TDUチューブ)を取り付けた。吸着管には、シリコンチューブを介して小型吸引ポンプに接続した。また、連通口には仕切り板を設け、開閉可能とした。箱型装置の連通口が設けられた面と対応する面の下部に縦14.5×横24cmの給気窓を設け、該給気窓の前面に、被験者のふくらはぎが位置するようにパイプ椅子と、パイプ椅子横に市販のディフーザー(1.67ml/min)を設置した。小箱は、連通口が設けられた面と対応する面の中央付近に、直径15cmの排気口を設け、該排気口の外側に小型扇風機を設置した。また、小箱内には、メスの蚊を20匹入れておいた。
試験は、表4に示すコントロールを用いた場合及びDHE水溶液を用いた場合の2回行った。
パイプ椅子に被験者を座らせ、表4に示す水溶液300mlを充填したディフーザーを5分後作動させた。その後、仕切り板と給気窓を開け、小型扇風機を作動させ、吸着管に接続した小型ポンプを、吸引流速100mL/minで作動させて、連通口付近の気流を吸引した。5分間後に、仕切り板と吸気窓を閉じ、小型扇風機を止め、吸引を停止した。
試験後の吸着管は、そのまま加熱脱着装置にセットして、捕集した害虫忌避剤をGC−MS装置に注入し、定量分析を行った。DHE水溶液を用いた場合のDHE濃度は、1.3nmol/Lであった。
小箱から箱型装置に移動した蚊の数は、コントロール試験は10匹であったのに対して、DHE水溶液試験は、3匹で、コントロール試験に比して移動する蚊の数が、70%抑制された。DHE濃度1.3nmol/Lであれば、試験の誤差等を含めても十分に移動する蚊の数が50%抑制されるため、余裕を見て、この1.3nmol/Lという値を、本試験におけるDHE濃度を50%忌避有効濃度とした。
また、組成物(e)を不織布に含浸させ、扇風機に装着して揮散させた時のジヒドロオイゲノールの気相濃度の計測結果を、前述した組成物(a)及び(b)の結果とともに表5に示す。表5には、扇風機から1mおよび2m離れた地点における害虫忌避剤(DHE)の30分後の気相濃度の計測結果が示されている。
組成物(e)は、保持率が200%で組成物(b)と保持率が同じであり、害虫忌避剤の濃度は、組成物(a)と同濃度である。すなわち、組成物a、bに比べて組成物eの基材シートに担持している成分(A)の質量がおおよそ1/3程度とはるかに少ない。
表5の結果より、組成物(e)についても、扇風機から1m又は2mの扇風機から離れた位置の30後の気相濃度が十分高く、害虫忌避剤の濃度が低い薄い水溶液を基材シートに担持させたシートを用いることで、高い揮散性は得られたことが確認された。
害虫忌避用水性組成物は、これらの結果から、基材シートの質量に対して少なくとも200%以上の量を担持させることが好ましい。
<扇風機を使用しない場合の害虫忌避剤の拡散試験>
扇風機によって室内空気を強制対流させた場合と扇風機を使用せず、自然対流のみの場合とで、害虫忌避剤の室内への拡散挙動を比較するため、不織布を扇風機に装着して、送風しなかった場合について比較対照試験を行った。
図10〜図12に、扇風機からTenax管の配置位置が50cm,1m,2mでの気相濃度の測定結果を示す。各図中、送風は、扇風機のスイッチを入れて送風させた時を示し、静止は、扇風機のスイッチを切って静止させている時の結果を示す。送風及び静止とも、上述した組成物(a)と同組成の組成物を用いた。
扇風機の風の有無での気相濃度計測結果を比較すると、扇風機を静止して送風されない状態では、全ての計測位置で全ての測定時間にて蚊の忌避有効濃度を超えるものはなかった。
<害虫忌避物質のにおいの強さの評価結果>
気相濃度計測におけるサンプリング時に同時に行った香りの強さの官能評価結果を以下に図13〜15に示す。
本試験の結果によれば、本発明の実施形態のシート又は方法により、害虫忌避剤を拡散させた時に室内に充満する忌避剤のにおいは不快ではないレベルであることが示された。
1 送風機装着型害虫忌避シート
2 扇風機(送風機)
3 モーター部
4 羽根
5 保護カバー
51 前カバー
52 後カバー
6 支持部

Claims (10)

  1. 下記の成分(A)を0.1質量%以上20質量%以下含む害虫忌避用水性組成物を、基材シートの質量に対して68質量%以上750質量%以下保持させた送風機装着型害虫忌避シートを、
    送風機の回転する羽根と接触せず、かつ、該送風機の前方への空気の流れを妨げない状態に該送風機に取り付ける工程と、該送風機を室内で運転する工程とを含む、害虫忌避剤の空間拡散方法。
    (A)25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下である害虫忌避剤
  2. 前記害虫忌避用水性組成物が、
    成分(B)水と、成分(C)水溶性アルコールとを含む、請求項1に記載の害虫忌避剤の空間拡散方法。
  3. 前記送風機装着型害虫忌避シートは、シート1cmあたりに含まれる成分(A)の量が0.00037g/cm以上0.177g/cm以下である、請求項1又は2に記載の害虫忌避剤の空間拡散方法。
  4. 前記送風機が扇風機であり、前記送風機装着型害虫忌避シートを取り付ける位置が前記扇風機の保護カバーの背面部である、請求項1〜3の何れか1項に記載の害虫忌避剤の空間拡散方法。
  5. 前記背面部における前記送風機装着型害虫忌避シートを取り付け可能な第1領域の面積(S1)に対する、前記送風機装着型害虫忌避シートを取り付けた第2領域の面積(S2)の比率が75%以下である、請求項4に記載の害虫忌避剤の空間拡散方法。
  6. 吸水性の基材シートに、シート1cmあたりに含まれる害虫忌避剤の量が0.00037g/cm以上0.177g/cm以下の範囲となるように、下記の成分(A)、(B)及び(C)を下記の割合で含む害虫忌避用水性組成物を保持させてあり、前記害虫忌避用水性組成物の保持量が、前記基材シートの質量に対して68質量%以上750質量%以下である、送風機装着型害虫忌避シート。
    (A)25℃における蒸気圧が0.00006Pa以上210Pa以下である害虫忌避剤:0.1質量%以上20質量%以下
    (B)水:70質量%以上99.8質量%以下
    (C)水溶性アルコール:0.1質量%以上29.9質量%以下
  7. 成分(C)の水溶性アルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールからなる群から選ばれるアルコールの1種以上である、請求項6に記載の送風機装着型害虫忌避シート。
  8. 前記害虫忌避用水性組成物が、さらに以下の成分(D)を以下の割合で含有する、請求項6又は7に記載の送風機装着型害虫忌避シート。
    (D)界面活性剤:0.001質量%〜20質量%
  9. 成分(A)の害虫忌避剤が、害虫忌避効果の有効成分として、
    2−メトキシ−4−プロピルフェノール、オクタヒドロ−7−メチル−1,4−メタノナフタレン−6(2H)−オン、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロクロメン−2−オン、シトラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、からなる群から選ばれる1種以上を全有効成分中に合計で20質量%以上含む、請求項6〜8の何れか1項に記載の送風機装着型害虫忌避シート。
  10. 前記害虫忌避用水性組成物が、さらに成分(E)として、以下の化合物からなる群から選ばれる1種以上の芳香成分を0.001質量%以上14質量%以下含有する、請求項6〜9の何れか1項に記載の送風機装着型害虫忌避シート。
    δ−ノナラクトン、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタン−3−エンイル)ブタン−2−エン−1−オール、E)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタン−3−エンイル)ブタン−2−エン−1−オール、3−[5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル]シクロヘキサン−1−オール。
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