JP2019116912A - 摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパー - Google Patents

摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパー Download PDF

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克尚 小西
伸介 山崎
Shinsuke Yamazaki
伸介 山崎
健太郎 蓑和
Kentaro Minowa
健太郎 蓑和
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Abstract

【課題】摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化させることのできる摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパーを提供すること。【解決手段】摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材を形成する相手材前駆体2は、鋼板から形成され、移着層3が形成される表面が荒れた表面2aである。相手材9は、相手材前駆体2と、荒れた表面2aに形成されている移着層3とを有する。摩擦ストッパー300は、相手材10と、摩擦材30とを有し、相手材10と摩擦材30が組み付けられ、移着層3と摩擦材30が相互に摺動自在となっている。【選択図】図3

Description

本発明は、免震建物の免震層を構成する下部構造体と上部構造体の間において、免震装置とともに配設される耐風装置を構成する摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパーに関する。
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術、免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。中でも免震技術は、構造物に入る地震力そのものを低減する技術であることから、地震時の構造物の振動は効果的に低減される。この免震技術を概説すると、下部構造体(基礎や柱−梁フレーム架構等)と上部構造体(柱−梁フレーム架構や屋根架構等)との間に免震支承(装置)を介在させ、地震による下部構造体の振動の上部構造体への伝達を低減し、上部構造体の振動を低減して構造安定性を保証するものである。なお、この免震支承は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造体への影響低減にも効果を発揮するものである。免震支承には鉛プラグ入り積層ゴム支承や高減衰積層ゴム支承、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた支承、滑り免震支承など、様々な形態の支承が存在している。その中の一種である滑り免震支承にはさらに、球面滑り支承や平面滑り支承などが存在している。例えば球面滑り支承を取り上げてその一つの形態の構成を説明すると、曲率を有する摺動面を備えた上沓および下沓と、上沓と下沓の間で、それぞれの沓と接して同じ曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成されており、上下球面滑りタイプの免震支承、あるいはダブルコンケイブ式の免震支承などと称されることもある。この種の免震支承では、上下の沓の動作性能が、それらの間に介在する摺動体との間の摩擦係数やこれに重量が乗じられた摩擦力に支配される。従来の球面滑り支承を有する免震建物では、球面滑り支承の摩擦係数が比較的小さいことから、風荷重を受けた際に球面滑り支承で支持される上部構造体(たとえば屋根架構)の変位が大きくなり、これが大きな残留変位になるといった課題があった。すなわち、球面滑り支承は地震荷重に対して高い減衰効果を発揮する一方で、風荷重に対してはその低い摩擦係数ゆえに支持する上部構造体の変位を抑制し難いといったデメリットを有していた。
ところで、地震入力を低減させ、免震層の変形を300乃至500mm程度に留めるために、ダンパー率(建物重量に対するダンパーの降伏層せん断力係数)が2乃至4%で設計されることが一般的であるが、近年、アスペクト比(幅に対する高さ)が4以上の高層ビルにも免震装置が採用されている。このようなプロポーションの高層ビルにおいては風荷重が支配的となり易く、風荷重載荷時における最大変形や残留変形、あるいはダンパーの疲労を抑えるべく、ダンパー率5乃至7%程度が必要になってくる。しかしながら、ダンパー率を5乃至7%程度に設定すると今度は地震時の建物への入力が増加してしまい、免震装置を採用する本来の意義を失ってしまう。
免震装置を備えた建物において免震性能を確保しながら耐風性能も満足するための方策として、一つはロック式のオイルダンパーの適用があり、他の一つは耐風ピンを免震層に適用する方法がある。ロック式のオイルダンパーはダンパーに電子ロックの装置が着いたものであり、台風が近づいた際に建物管理者が電子ロックのロック設定をおこなうものである。そのため、非常に設備コストが高いという課題があるとともに、建物管理者がロック設定を忘れた際に建物の耐風性能が発揮されないといった課題があり、さらには、電子制御が働くかについて常時メンテナンスする必要がある。一方、耐風ピンは一般に、円筒状のピン部材にスリットを設けて所定のせん断力になったら破断する機構を備え、風荷重に対しては耐風ピンで抵抗し、大地震時には耐風ピン以外の免震装置等で抵抗する機構を備えている。そのため、大地震時のあとには耐風ピンを点検し、耐風ピンが破断している場合には交換を余儀なくされるといったメンテナンス手間を有している。また、耐風ピンの破断時には非常に大きな音が発生することから、この大きな音が建物利用者を不安にさせるといった課題もある。さらに、耐風ピンは破断後に急激に耐力低下することから、破断後に免震層に大きな加速度が生じるといった課題もある。
そこで、建物の免震層において免震装置とともに配設される耐風装置に関し、大地震時にせん断破壊される耐風ピンを適用することなく、従って大地震後のメンテナンスを不要としながら、優れた耐風性能を発揮することのできる耐風装置が提案されている。具体的には、下部構造体に固定された被せり上がり体と、被せり上がり体に対してせり上がり自在に配設されるとともに、上部構造体に上下移動可能に取り付けられ、上部構造体から伝達される水平力によって被せり上がり体に対してせり上がるせり上がり体と、上部構造体に取り付けられた摩擦ストッパーと、を備えている。せり上がり体と摩擦ストッパーは相互に面接触した状態で締め付けられており、せり上がり体のせり上がりに伴って摩擦ストッパーに伝達される伝達荷重に対し、摩擦ストッパーの静止摩擦力が抗するように構成された耐風装置である(例えば、特許文献1参照)。
この耐風装置を具備する摩擦ストッパーは、例えば、2つの外板と、これらの外板の間に介在する中板と、を有し、外板は円形孔を備えるとともに中板側の表面に摩擦材を備えており、中板は摺動方向に延出する長孔を備えるとともに、その両面に摩擦材の相手材(滑り材とも言う)を備えている。2つの外板の円形孔と中板の長孔を串刺すようにボルトが挿通され、所定の圧接力までナット締めされることにより、摩擦材と相手材が相互に圧接された状態の摩擦ストッパーが形成される。この摩擦ストッパーでは、摩擦材と相手材が相互に摺動した際に所定の摩擦力が得られるように、所定の摩擦係数が設定される。
ところで、建物等の構造物の振動を減衰する制震部材として、摩擦ダンパーが知られている。この摩擦ダンパーも、原則的には上記する摩擦ストッパーと同様の構成を有している。この摩擦ダンパーにおいても、摩擦材と相手材が相互に摺動した際に所定の摩擦力が得られるように、所定の摩擦係数が設定される。
摩擦ダンパーと摩擦ストッパーはいずれも、供用初期から上記する所定の摩擦係数を有し、かつ所定の摩擦力を発揮することが望ましい。しかしながら、実際には、摩擦材の摺動表面が凹凸を有していて、表面粗さが一般に大きいことから、供用初期の摩擦材と相手材の面接触状態を微視的に見た場合には、双方の表面が全面で接触しておらず、このことに依拠して、供用初期の摩擦係数は低くなる傾向にあると見られていた。地震等に起因する振動を幾度か受け、摩擦材と相手材が摺動する過程で摩擦材の表面の表面粗さが徐々に小さくなり、双方の表面の接触面積が増加することにより、摩擦係数が徐々に上昇して当初予定されている摩擦係数に収束していくと考えられていた。なお、このように、摩擦係数が当初予定されている摩擦係数に収束し、一定の摩擦係数が維持されることを、摩擦係数が安定化するとも言い、摩擦係数が安定化することにより、摩擦力が安定化することになる。
そこで、摩擦ダンパーの摩擦力を供用初期から安定化させるための摩擦ダンパーの製造方法が提案されている。具体的には、予備摺動装置を用いて摩擦材と滑り材を予備摺動処理し、摩擦材を製造する方法である(例えば、特許文献2参照)。
特許第6228337号公報 特許第6111715号公報
特許文献2に記載の製造方法は、摩擦ダンパーの摩擦力の供用初期からの安定化には摩擦材の表面粗さが最も重要であるとの見解の下に、摩擦材を予備摺動することにより、摩擦材の表面を可及的に平滑にするといった技術思想である。そして、特許文献2では、摩擦ダンパーの摩擦力の供用初期からの安定化に対して、摩擦材の相手材(特許文献1の滑り材に相当)が重要であるか否かについての言及は一切ない。
ここで、相手材について検証する。摩擦材の相手材は、上記するように滑り材と称されることからも推察されるように、一般に表面が可及的に平滑であり、表面粗さが小さい。従来の見解では、供用初期の摩擦材はその表面粗さが大きいことから摩擦ダンパーや当該摩擦ダンパーと同様の構成を有する摩擦ストッパーの摩擦係数は低く、摩擦ダンパーや摩擦ストッパーが供用される過程で摩擦材の表面粗さが小さくなり、摩擦ダンパーや摩擦ストッパーの摩擦係数が徐々に上昇して所定の摩擦係数に収束していくと見られていた。これに対して本発明者等は、摩擦ダンパーや摩擦ストッパーの摩擦係数が供用初期は小さく、供用過程で徐々に上昇していく理由として、相手材の表面性状が変化することに着目した。すなわち、供用初期は表面粗さが小さくて平滑な相手材が、供用過程で摩擦材と摺動するにつれて表面が荒らされ、表面が荒れた相手材が摺動し難くなることに起因して摩擦係数が上昇するとの新たな知見を得ている。従って、摩擦ダンパーや摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化させるには、摩擦材の相手材に改良を加える必要がある。
本発明では、上記する耐風装置に適用される摩擦ストッパーに着目し、この摩擦ストッパーを構成する摩擦材の相手材に改良を加えることとした。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化させることのできる摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパーを提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の一態様は、摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材を形成する相手材前駆体であって、該相手材は該摩擦材と摺動する表面に移着層を有している、相手材前駆体において、
前記相手材前駆体は鋼板から形成されており、前記移着層が形成される表面が荒れた表面であることを特徴とする。
本態様によれば、相手材前駆体の表面が荒れた表面であることにより、この荒れた表面に移着層を形成し易くなり、密着強度の高い相手材前駆体と移着層とからなる相手材を得ることができる。ここで、「相手材前駆体」とは、相手材が形成される前の製品のことであり、「相手材」とは、相手材前駆体の表面に移着層を備えている製品のことであり、滑り材とも称される。この移着層は、トランスファーフィルムと称することもできる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の他の態様において、前記荒れた表面は、平均粗さRaが0.7μm以上であることを特徴とする。
本態様によれば、荒れた表面の平均粗さRaが0.7μm以上であることにより、相手材前駆体に対して移着層が形成され易くなり、かつ、相手材前駆体の表面に移着層を安定的に保持することができ、耐風装置を構成する摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化させることが可能になる。ここで、「摩擦係数」とは、二つの接触する部材の接触面に平行にはたらく摩擦力と、この接触面に直角にはたらく垂直抗力の比率のことであり、接触する部材の材質や、接触面の性状、状態等により変化する係数である。摩擦ストッパーでは、摩擦係数に垂直抗力(相手材と摩擦材を締付ける締付け力)を乗じることにより、摩擦力が得られる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の他の態様は、前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする。
本態様によれば、相手材として一般に適用されているステンレス鋼板から相手材前駆体が形成されていることにより、製品コストを高価にすることなく、荒れた表面を備えた相手材を得ることができる。なお、ステンレス鋼板は一般にその平均粗さRaが0.1μm程度と平滑であることより、何らかの表面処理が実行されることにより、移着層が形成され易い荒れた表面を有することになる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材の一態様は、前記相手材前駆体と、
前記荒れた表面に形成されている前記移着層と、を有していることを特徴とする。
本態様によれば、相手材が、その荒れた表面において摩擦材と摺動する移着層を備えていることにより、摩擦材の有する表面粗さの大きな表面と、相手材の移着層の有する表面粗さの大きな表面との間の摩擦係数は、摩擦ストッパーの供用初期から所望する摩擦係数に近い摩擦係数となる。従って、本態様の相手材を備えた摩擦ストッパーは、供用初期から摩擦係数の安定した耐風装置を構成する摩擦ストッパーとなる。また、移着層が摩擦材と直接摺動することから、摩擦材と相手材との摺動過程において、相手材を形成するステンレス鋼板等の鋼板が摩擦材によって摩耗されることが抑止できる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材の他の態様は、前記移着層が前記摩擦材と同材質であることを特徴とする。
本態様によれば、移着層が摩擦材と同材質であることにより、摩擦ストッパーの供用初期の摩擦係数は、摩擦材と相手材が何度か摺動されて摩擦材が相手材の表面に移着された段階の摩擦係数に近い摩擦係数となり易い。ここで、「同材質」とは、移着層が摩擦材と完全に同材質であることの他に、摩擦材を摩耗させた際に化学変化してできる成分も含む意味である。例えば、相手材前駆体の荒れた表面に摩擦材を予備摺動させて相手材の表面に移着層を形成した際に、この移着層は予備摺動の過程で化学変化し、予備摺動前の摩擦材とは異なる合金成分を含む材質となり得るが、このような材質の移着層も、摩擦材と同材質であるものとする。
また、本発明による摩擦ストッパーの一態様は、前記摩擦ストッパー用の相手材と、
前記摩擦ストッパー用の摩擦材と、を有し、
前記相手材と前記摩擦材が組み付けられ、前記移着層と前記摩擦材が相互に摺動自在であることを特徴とする。
本態様によれば、摩擦材の有する表面粗さの大きな表面と、相手材の移着層の有する表面粗さの大きな表面との間の摩擦係数は、摩擦ストッパーの供用初期から所望する摩擦係数に近い摩擦係数となり、供用初期から摩擦係数の安定した摩擦ストッパーとなる。なお、好ましい摩擦係数の範囲としては、例えば0.3乃至0.5程度が挙げられ、例えば供用初期から0.4程度の摩擦係数が維持される摩擦ストッパーが望ましい。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法の一態様において、前記相手材前駆体は、前記移着層が形成される表面が平滑である鋼板から形成されており、
前記移着層が形成される表面を荒らす処理を行って、前記相手材前駆体を製造することを特徴とする。
本態様によれば、表面が平滑である鋼板からなる相手材前駆体に対してその表面を荒らす処理を行うことにより、当初は平滑な相手材前駆体の表面に対して移着層を形成し易くなり、アンカー効果により、高い密着強度にて移着層を相手材前駆体の表面に保持することができる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法の他の態様は、前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする。
本態様によれば、相手材として一般に適用されているステンレス鋼板から相手材前駆体が形成されていることにより、製品コストを高価にすることなく、表面が荒らされた相手材前駆体を得ることができる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法の他の態様は、前記荒らす処理がブラスト処理であることを特徴とする。
本態様によれば、鋼板の表面全体を、万遍なく、そして効率的に、所望の表面粗さに荒らすことができる。なお、相手材前駆体の表面を荒らす処理としては、その他にも、凹凸のあるプレス材を鋼材表面にプレス加工し、相手材前駆体の表面に凹凸を転写して荒らす処理方法などがあるが、ブラスト処理は、効率的に表面凹凸を形成できるとともに、研削材の形状や寸法、材質、研削材を吹き付ける際の吹付力等を調整することにより、多様なバリエーションの表面粗さを実現できることから好ましい。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法の他の態様は、前記荒らす処理において、平滑な前記表面を平均粗さRaが0.7μm以上になるまで荒らすことを特徴とする。
本態様によれば、相手材前駆体に対して移着層が形成され易くなり、相手材前駆体の表面に移着層を安定的に保持することができる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材の製造方法の一態様は、前記相手材前駆体の製造方法により、相手材前駆体を製造し、
前記相手材前駆体の荒らされた前記表面に、前記移着層を形成する処理を行って前記相手材を製造することを特徴とする。
本態様によれば、相手材前駆体の表面が荒らされ、この荒らされた表面に移着層を形成することから、相手材前駆体の表面に移着層を形成し易く、高い密着強度にて移着層を相手材前駆体の表面に形成することができる。
また、本発明による摩擦ストッパー用の相手材の製造方法の他の態様は、前記移着層を形成する処理において、荒らされた前記表面に前記摩擦材を摺動させて該移着層を形成することを特徴とする。
本態様によれば、移着層が摩擦材から形成されることにより、摩擦ストッパーの供用初期の摩擦係数は、摩擦材と相手材が何度か摺動されて摩擦材が相手材の表面に移着された段階の摩擦係数に近い摩擦係数となり易く、摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の摩擦ストッパー用の相手材前駆体とその製造方法、摩擦ストッパー用の相手材とその製造方法、及び摩擦ストッパーによれば、摩擦係数が供用初期から安定した耐風装置を構成する摩擦ストッパーを提供することができる。
本発明の実施形態に係る相手材前駆体の製造方法を説明する説明図である。 図1Aに続いて相手材前駆体の製造方法を説明するとともに、本発明の実施形態に係る相手材前駆体を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る相手材の製造方法を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係る相手材の斜視図である。 本発明の実施形態に係る相手材の斜視図である。 本発明の実施形態に係る摩擦ストッパーを備えた耐風装置を免震装置とともに示す縦断面図である。 せり上がり体と被せり上がり体の構成の一例を示す縦断面図である。 摩擦ストッパーを拡大して示す縦断面図である。 摩擦ストッパーの摺動距離と摩擦係数の関係を検証する実験にて使用する摩擦ストッパーの平面図である。 実験にて使用する摩擦ストッパーの側面図である。 実験結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る摩擦ストッパー用の相手材前駆体と相手材、及びそれらの製造方法と、摩擦ストッパーについて添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
[実施形態]
<相手材前駆体とその製造方法>
はじめに、図1A及び図1Bを参照して、本発明の実施形態に係る相手材前駆体とその製造方法の一例を説明する。図1Aは、相手材前駆体の製造方法を説明する説明図であり、図1Bは、図1Aに続いて相手材前駆体の製造方法を説明するとともに、本発明の実施形態に係る相手材前駆体を示す斜視図である。製造対象の相手材前駆体は、耐風装置を構成する摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材の前駆体である。相手材前駆体の製造に際し、まず、図1Aに示すように鋼板1を用意する。鋼板1は扁平な六面体であり、クロム系ステンレスやクロム・ニッケル系ステンレス等のステンレスから形成されている。ステンレスからなる鋼板1は、やや光沢があり、平均粗度Raが0.1μm程度の平滑な表面1a、1bを備えている。なお、鋼板1は、ステンレス以外にも、チタンや鋼、鉄などから形成されてもよい。
平滑な表面1a、1bのうち、一方の平滑な表面1aに対して表面を荒らす処理を行うことにより、図1Bに示すように、荒れた表面2aを有する相手材前駆体2を製造する。ここで、表面を荒らす処理として、ブラスト処理を適用する。ブラスト処理には、粒状の鋼球等からなる研削材を鋼板1の平滑な表面1aに吹き付けるショットブラスト処理や、鋭角な形状をした鋼砕粒等からなる研削材を鋼板1の平滑な表面1aに吹き付けるグリットブラスト処理などがある。
当初は平均粗度Raが0.1μm程度のステンレス製の鋼板1の表面に対してブラスト処理を行うことにより、平均粗度Raが例えば0.7μm以上の荒れた表面2aを有する相手材前駆体2を製造する。相手材前駆体2の荒れた表面2aの平均粗度Raが0.7μm以上であることにより、以下で詳説するように、相手材前駆体2に対して移着層を形成し易くなり、かつ移着層の保持性が良好になる。
<相手材とその製造方法>
次に、図2乃至図4を参照して、本発明の実施形態に係る相手材とその製造方法の一例を説明する。図2は、相手材の製造方法を説明する説明図であり、図3は、製造された相手材の斜視図である。図2に示すように、相手材前駆体2の荒れた表面2aに対し、摩擦材同等材4をX1方向に押し込みながら、荒れた表面2a上でX2方向に摺動させる。この加工により、摩擦材同等材4が削られながら荒れた表面2aの凹部内に入り込んで凹部を閉塞し、さらに荒れた表面2a上で削られた摩擦材同等材4からなる層が形成され、図3に示すように荒れた表面2a上に移着層3が形成される。そして、相手材前駆体2と、その荒れた表面2a上に形成された移着層3により、摩擦ストッパー用の相手材9が形成される。移着層3は、トランスファーフィルムとも称され、相手材9は、滑り材とも称される。
従来の摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材としては、例えば表面が平滑なステンレス鋼板がそのまま適用されている。このように表面が平滑なステンレス鋼板からなる相手材を有する従来の摩擦ストッパーでは、摩擦ストッパーの摩擦係数が供用初期から安定しない。より詳細には、摩擦ストッパーの摩擦係数が供用初期は小さく、供用過程で徐々に上昇していき、一定の摩擦係数に収束していく。本発明者等は、その理由が相手材の表面性状の変化にあるとの知見を得ている。すなわち、供用初期は表面粗さが小さくて平滑な例えばステンレス製の相手材が、供用過程で摩擦材と摺動するにつれて表面が荒らされ、表面が荒れた相手材が摺動し難くなることに起因して摩擦係数が上昇するという知見である。実際に、従来の摩擦ストッパーを試作して相手材と摩擦材を摺動させると、摩擦材の表面にクロムや鉄、ニッケル等からなる合金成分が検出されており、これは、ステンレス製の相手材が摩擦材によって削られたことを意味している。
摩擦材同等材4は、摩擦ストッパーを構成する摩擦材と同材質の部材である。すなわち、摩擦ストッパーが製造された段階において、相手材がその表面に摩擦材と同材質の移着層3を有していることから、図示する相手材9は、従来の摩擦ストッパーが幾度か作動した後の相手材の表面状態を既に有している。そのため、摩擦ストッパーが作動して例えばステンレス製の相手材前駆体2が摩擦材と直接摺動し、相手材前駆体2が摩擦材によって削られることが抑止される。さらに、摩擦ストッパーが作動した際に、摩擦材と同材質の移着層3が摩擦材と摺動することにより、摩擦ストッパーの摩擦係数を摩擦ストッパーの供用初期から所望する摩擦係数に近い値に調整することができる。すなわち、摩擦ストッパーの摩擦係数を供用初期から安定化させることができる。
また、移着層3が形成される相手材前駆体2の荒れた表面2aの平均粗度Raが0.7以上に設定されていることにより、相手材前駆体2の表面に対して移着層3を形成し易くなり、アンカー効果により、形成された移着層3を相手材前駆体2の表面に十分に保持することができ、密着強度の高い相手材前駆体2と移着層3とからなる相手材10が形成される。
図4には、摩擦ストッパーに実際に組み込まれる相手材を示している。図4に示す相手材10は、図3に示す相手材9の中央位置においてその長手方向に延出する長孔5を有している。相手材10が摩擦ストッパーに組み込まれる際には、移着層3と不図示の摩擦材が当接した状態で相手材10と摩擦材がボルトを介して組み付けられるが、摩擦材に対して相手材10が摺動できるように、相手材10にはボルトが挿通されるとともに相手材10の摺動を可能とする長孔5が設けられている。従って、長孔5の延出方向は、相手材10の摺動方向を規定する。
<摩擦ストッパーと耐風装置>
次に、図5乃至図7を参照して、実施形態に係る摩擦ストッパーの一例を説明する。図5は、摩擦ストッパーを備えた耐風装置を免震装置とともに示す縦断面図であり、図6は、せり上がり体と被せり上がり体の構成の一例を示す縦断面図である。また、図7は、摩擦ストッパーを拡大して示す縦断面図である。図5において、上部構造体UPと下部構造体UDの間の免震層SLにおいて、耐風装置100と免震装置200が相互に離れた位置に配設されている。図示する耐風装置100と免震装置200を免震層SLに備えた免震建物は、上部構造体UPである高層地上階と下部構造体UDである基礎の間に免震層SLを備えた高層ビルや、上部構造体UPである屋根架構と、下部構造体UDである柱−梁フレーム構造の立ち上り架構の間に免震層SLを備えた体育館等の大空間建物などである。
免震層SLに配設される耐風装置100は、下部構造体UDに固定された被せり上がり体70と、被せり上がり体70に対してせり上がり自在に配設されるとともに上部構造体UPに固定具80を介して固定されたせり上がり体60と、上部構造体UPに取り付けられた摩擦ストッパー300と、を有する。上部構造体UPから伝達される大地震時の水平力Q'や例えば台風をはじめとする強風時の水平力Qがせり上がり体60に作用することにより、せり上がり体60は被せり上がり体70に対してせり上がり、このせり上がり体60のせり上がりの際に摩擦ストッパー300が作用することになる。
被せり上がり体70は上方にテーパー状の溝71(もしくは窪み)を備えており、ボルトBを介して下部構造体UDに固定されている。一方、せり上がり体60は下方に円錐状の突起61を備えており、円錐状の突起61がテーパー状の溝71にはまり込んでいる。また、せり上がり体60は、スライドブッシュ81を介し、固定具80を介して上部構造体UPに固定されている。
せり上がり体60の上面には、摩擦ストッパー300を形成する中板20が溶接やボルト等を介して取り付けられている。
ここで、被せり上がり体70に対するせり上がり体60の構成やせり上がり体60の移動態様について説明する。図6に示すように、せり上がり体60の円錐状の突起61の起点となるエッジと、突起61の先端はともにR加工を施されて曲率を有しており、被せり上がり体70の上面と溝71のエッジも同様にR加工を施されて曲率を有している。
大地震時においても風荷重時においても、被せり上がり体70に対してせり上がり体60がせり上がる過程で、双方の接点の角度が徐々に低下する。円錐状の突起61の起点となるエッジと突起61の先端がともに所定の曲率を有した滑らかな曲面となり、被せり上がり体70の上面と溝71のエッジも所定の曲率を有した滑らかな曲面となっていることにより、せり上がり体60のスムーズな移動が実現可能である。なお、このようにせり上がり体60のスムーズなせり上がりは可能であるものの、後述するように、摩擦ストッパー300に対して予め設定されている摩擦係数により、一定の静止摩擦力まではせり上がり体60のせり上がりが抑止されるように調整されている。
次に、図7を参照して、摩擦ストッパー300について説明する。摩擦ストッパー300は略コの字状のフレーム体を有し、フレーム体の上端は上部構造体UPに固定されるとともに、フレーム体を構成する左右の外板40の内側には摩擦材30が取り付けられている。左右の外板40の内側には、せり上がり体60の上面に固定されている中板20が延びており、中板20の左右の側面にはともに左右の摩擦材30に対応する相手材10が固定されている。左右の摩擦材30と相手材10は、締付けボルト50にて相互に所定の締付け力Pにて締め付けられている。すなわち、二組の相手材10及び摩擦材30によって所定の摩擦係数が設定され、この所定の摩擦係数に対して所定の締付け力Pを乗じることにより、所定の摩擦力が設定されることになる。
ここで、摩擦ストッパー300の構成をより詳細に説明する。鋼製の中板20の左右の表面にそれぞれ、相手材10が不図示のビス等で固定されている。中板20も相手材10と同形状および同寸法の長孔20aを有しており、長孔5と長孔20aが位置決めされた状態で、相手材前駆体2の平坦な表面が中板20に接触するようにして相手材10が中板20に取り付けられている。
鋼製の外板40の一方の側面には、摩擦材30が不図示のビス等で固定されている。外板40は円形のボルト孔40aを有し、摩擦材30も同形状および同寸法のボルト孔30aを有しており、双方のボルト孔40a、30aが位置決めされた状態で双方が固定されている。
ここで、摩擦材30は、モリブデンや鉛といった金属や合金の粒を、熱硬化性樹脂を結合材として結合することにより形成される。また、必要に応じてガラスファイバーやカーボンファイバー等の繊維材を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂やメラミン樹脂、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂などが適用される。
中板20の左右面にある相手材10の移着層3に対して、摩擦材30の摩擦面30bを接触させるようにして左右の外板40及び摩擦材30が配設される。
各ボルト孔40a、30aと、長孔5,20aを位置合わせし、締付けボルト50を挿通し、締付けナット51にて締付ける。この締付けにて付与された締付け力Pにより、左右の外板40と中板20が圧接され、外板40と中板20で挟持された左右二組の摩擦材30と相手材10が圧接される。
摩擦ストッパー300の摩擦係数は、左右二組の摩擦材30と相手材10の接触面の材質や性状、より詳細には、摩擦材30の摩擦面30bと移着層3の材質や、接触状態等により決定される。移着層3と摩擦材30が同材質であることにより、摩擦ストッパー300の供用初期の摩擦係数は、摩擦材30と相手材10が何度か摺動されて摩擦材30が相手材10の表面に移着された段階の摩擦係数に近い摩擦係数となり易い。すなわち、摩擦ストッパー300の摩擦係数は、供用初期から安定する。なお、摩擦係数と締付け力Pにより、摩擦ストッパー300の発揮し得る摩擦力が奏される。
締付けボルト50による締付け力を調整することにより、摩擦材30と相手材10の間の摩擦力を所望に調整することができる。この摩擦材30と相手材10の間の摩擦力に関しては、図5に示すように、所定の風荷重による上部構造体UPからの水平荷重Qに対して、被せり上がり体70の溝71のテーパー面に沿ってせり上がり体60が斜め上方(X1方向)にせり上がり、これに起因して中板20が鉛直上方(X2方向)に移動するのを抑止する摩擦力(静止摩擦力)となるように設定されている。さらに、この静止摩擦力は、レベル2地震等の大地震の際の地震荷重による上部構造体UPからの水平荷重Q'に対して、被せり上がり体70に対するせり上がり体60の斜め上方(X1方向)へのせり上がりを許容する、すなわち、このせり上がり力未満の静止摩擦力となるように設定されている。
このように、上部構造体UPから伝達された風荷重(水平荷重Q)に対してはせり上がり体60が被せり上がり体70に対してせり上がろうとする過程で摩擦ストッパー300が作用し、摩擦ストッパー300の静止摩擦力によってせり上がり体60のせり上がりを抑止もしくは抑制することにより、風荷重による上部構造体UPの揺れを効果的に解消もしくは低減することができる。
一方、大地震の際の上部構造体UPから伝達された地震荷重(水平荷重Q')に対しては作用荷重が摩擦ストッパー300の設定摩擦力を超えることで摩擦ストッパー300が地震力に対抗せず、免震層SL内にある免震装置200にて地震力の入力低減を図ることができる。
したがって、耐風装置100の構成部材である摩擦ストッパー300が大地震時に破損し難くなり、大地震後の耐風装置100(摩擦ストッパー300を含む)の部品交換もメンテナンスも不要となる。さらに、大地震の際には、作用荷重が摩擦ストッパー300の設定摩擦力を超えた段階で免震装置200に荷重が分担されることから、耐風装置100が大地震時に破断して急激に耐力低下し、免震層SLに大きな加速度が生じるといった問題も生じ難い。
<摩擦ストッパーの摺動距離と摩擦係数の関係を検証する実験とその結果>
本発明者等は、鋼板の表面に移着層を形成して相手材を製作するに当たり、鋼板の表面に対して荒らす処理を行って相手材前駆体を製作し、この相手材前駆体に移着層を形成して相手材を製作した(実施例1乃至3)。また、鋼板の表面に荒らす処理を行わずに移着層を形成して相手材を製作した(比較例)。実施例1乃至3においては、相手材前駆体の荒れた表面の平均粗さを変化させた。各相手材と摩擦材を組み付けて摩擦ストッパーを製作し、各摩擦ストッパーに対して所定の繰り返し摺動実験を行い、累積摺動距離と摩擦係数の関係を検証した。以下、実施例1乃至3と比較例に係る相手材前駆体の表面仕上げ方法と、各相手材前駆体の平均粗度を表1に示す。また、製作した摩擦ストッパーの構成について説明する。さらに、繰り返し摺動実験の実験方法と実験結果について説明する。
(相手材前駆体の製作方法および平均粗度について)
実施例1乃至3と比較例に係る相手材前駆体の製作方法と平均粗度を、以下の表1に示す。

比較例の表面状態の2Bは、2番目の工程で製作され、仕上がりがブライトであることを意味している。
比較例、実施例1乃至3ともに、SUS304からなる鋼板を使用した。表面を荒らす処理には、グリットブラスト処理を適用した。実施例1乃至3では、それぞれグリットブラスト処理時間を変化させることにより、製作された相手材前駆体の平均粗度が変化した。実施例1から実施例3へと処理時間が増加するのに応じて、平均粗度が大きくなっている。
比較例及び実施例1乃至3の各相手材前駆体の表面に、摩擦ストッパーで使用される摩擦材と同材質の摩擦材を摺動させ、比較例及び実施例1乃至3に係る相手材を製作した。
(摩擦ストッパーについて)
比較例と実施例1乃至3に係る各相手材を構成要素とする摩擦ストッパーを、相手材ごとに製作した。図8Aは、摩擦ストッパーの摺動距離と摩擦係数の関係を検証する実験にて使用する摩擦ストッパーの平面図であり、図8Bは、摩擦ストッパーの側面図である。図示するように、上下の外板OPの内側面に摩擦材FMを固定し、中板MPの上下面に比較例及び実施例1乃至3に係る相手材SMを固定した。外板OPには2つの締付けボルトB用のボルト孔を設け、載荷用プレートSP固定用のボルト孔を設けた。一方、中板MPには、中板MPの摺動方向に延出する長孔LHを設け、さらに、中板MPの上下面に歪ゲージGを取り付けた。
上下の外板OPで中板MPと載荷用プレートSPを挟持し、上下の外板OPの2つのボルト孔に対応する位置に座金Wを配し、ロードセルLCを配した状態で締付けボルトB(M16、強度区分10.5以上)を挿通し、ナット締めして所定の締付け力にて締め付けて摩擦ストッパーFDを製作した。なお、載荷用プレートSPは、ハイテンションボルトHB(M20)にて上下の外板OPに固定した。摺動実験では、中板MPの端部を固定し、載荷用プレートSPの端部を不図示の油圧シリンダー等のアクチュエータにて繰り返し摺動させた。
(実験概要)
摺動実験では、まず、最初に、3回、摩擦ストッパーの圧縮方向に摺動距離25mmの圧縮方向載荷を実施した。
次に、圧縮方向と引張り方向の往路及び復路の摺動距離25mmの繰り返し載荷を50回実施し、その後、摩擦ストッパーの温度が30℃程度になるまで放置冷却した。
次に、再度の圧縮方向載荷を6回実施した。なお、これまでの過程で、締付けボルトの軸力調整は行っていない。
次に、摩擦ストッパーを一度解体し、摩擦材と相手材の摺動面の状態や寸法を確認し、再度、締付け軸力50kNで締付けボルトを締付けた。
以上、最初の圧縮方向載荷から再度の締付けボルトの締付けまでの一連の工程を4サイクル繰り返した。すなわち、繰り返し載荷の累計が、50回×4サイクル=200回となるまで繰り返し載荷を実施した。
(実験結果)
比較例及び実施例1乃至3の相手材を備えた各摩擦ストッパーに対し、上記摺動実験を実施し、ロードセルにて随時摺動面に平行な方向に作用する水平力を測定し、締付け力との比から摩擦係数を算定した。図9に、摩擦ストッパーの累積摺動距離と摩擦係数の関係についての実験結果を示す。
図9より、ブラスト処理を行わずに移着層が形成された相手材を有する摩擦ストッパーでは、初期の摩擦係数が0.3未満であり、その後、サイクルが進行するに連れて摩擦係数が増加し、累積摺動距離が9mを超える最後の4サイクルでは、摩擦係数が0.6を超える結果となっている。
実施例1の相手材を有する摩擦ストッパーでは、初期の摩擦係数が比較例と同程度であるものの、摩擦係数の増加は2サイクル目で0.5未満にて収束し、以後のサイクルでも増加しない結果となっている。
実施例2,3の相手材を有する各摩擦ストッパーでは、初期の摩擦係数が0.3乃至0.4程度であり、以後、サイクルが進行しても摩擦係数は初期の摩擦係数の0.4程度で一定値を示す結果となっている。
この実験結果より、比較例と比べて実施例1の摩擦係数の増加が大きく抑制されていることより、鋼板の表面を荒らす処理により、平均粗度Raが0.7以上の相手材前駆体と移着層とからなる相手材を構成要素とすることにより、十分に性能の高い摩擦ストッパーを提供できることが実証されている。一方、平均粗度が3μm以上の相手材前駆体と移着層とからなる相手材を構成要素とすることにより、供用初期から安定した摩擦係数を有する摩擦ストッパーを提供できることが実証されている。
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
1 :鋼板
1a、1b :平滑な表面
2 :相手材前駆体
2a :荒れた表面
3 :移着層
4 :摩擦材同等材
5 :長孔
9、10 :相手材
20 :中板
20a :長孔
30 :摩擦材
30a :ボルト孔
30b :摩擦面
40 :外板(フレーム体)
40a :ボルト孔
50 :締付けボルト
60 :せり上がり体
61 :突起
70 :被せり上がり体
71 :溝(テーパー状の溝)
100 :耐風装置
200 :免震装置
300 :摩擦ストッパー

Claims (12)

  1. 摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材を形成する相手材前駆体であって、該相手材は該摩擦材と摺動する表面に移着層を有している、相手材前駆体において、
    前記相手材前駆体は鋼板から形成されており、前記移着層が形成される表面が荒れた表面であることを特徴とする、摩擦ストッパー用の相手材前駆体。
  2. 前記荒れた表面は、平均粗さRaが0.7μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の摩擦ストッパー用の相手材前駆体。
  3. 前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の摩擦ストッパー用の相手材前駆体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の相手材前駆体と、
    前記荒れた表面に形成されている前記移着層と、を有していることを特徴とする、摩擦ストッパー用の相手材。
  5. 前記移着層が前記摩擦材と同材質であることを特徴とする、請求項4に記載の摩擦ストッパー用の相手材。
  6. 請求項4又は5に記載の摩擦ストッパー用の相手材と、
    前記摩擦ストッパー用の摩擦材と、を有し、
    前記相手材と前記摩擦材が組み付けられ、前記移着層と前記摩擦材が相互に摺動自在であることを特徴とする、摩擦ストッパー。
  7. 摩擦ストッパー用の摩擦材の相手材を形成する相手材前駆体の製造方法であって、該相手材は該摩擦材と摺動する表面に移着層を有している、相手材前駆体の製造方法において、
    前記相手材前駆体は、前記移着層が形成される表面が平滑である鋼板から形成されており、
    前記移着層が形成される表面を荒らす処理を行って、前記相手材前駆体を製造することを特徴とする、摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法。
  8. 前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする、請求項7に記載の摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法。
  9. 前記荒らす処理がブラスト処理であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法。
  10. 前記荒らす処理において、平滑な前記表面を平均粗さRaが0.7μm以上になるまで荒らすことを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の摩擦ストッパー用の相手材前駆体の製造方法。
  11. 請求項7乃至10のいずれか一項に記載の相手材前駆体の製造方法により、相手材前駆体を製造し、
    前記相手材前駆体の荒らされた前記表面に、前記移着層を形成する処理を行って前記相手材を製造することを特徴とする、摩擦ストッパー用の相手材の製造方法。
  12. 前記移着層を形成する処理において、荒らされた前記表面に前記摩擦材を摺動させて該移着層を形成することを特徴とする、請求項11に記載の摩擦ストッパー用の相手材の製造方法。
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