本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は衛生洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観図であり、図2はノズルユニット20の正面側の外観斜視図であり、図3は第2ノズル24の裏面側の外観斜視図である。また、図4は駆動装置41および従動装置45が組み付けられたベース30の正面側の外観斜視図であり、図5は駆動装置41および従動装置45が組み付けられたベース30の裏面側の外観斜視図であり、図6〜図10はノズルユニット20を動作の様子を示す説明図である。なお、図2において、上下方向は、便器1に設置された衛生洗浄便座装置10(ノズルユニット20)の鉛直方向と平行な方向であり、前後方向は、第1および第2ノズル22,24の進退方向であり、左右方向は、上下方向および前後方向に直交する方向である。
便器1は、洋式便器であり、便器1の上面に衛生洗浄便座装置10が設置されている。衛生洗浄便座装置10は、図1に示すように、便器1の後方に設置される便座装置本体12と、便座装置本体12に回動自在に支持された便座14と、便座装置本体12に回動自在に支持された便蓋16と、使用者により操作される操作パネル18と、を備える。
便座装置本体12は、給水管(水道配管)に接続された洗浄水流路、止水弁、熱交換ユニット、洗浄の強さを調整する脈動ポンプ、水を噴出するノズルユニット20などを備えており、これらは樹脂製のハウジング内に収容されている。熱交換ユニットは、水タンクやヒータ、温度センサが設けられ、給水管からの水をヒータによって温水にする。
また、便座装置本体12は、衛生洗浄便座装置10を制御する図示しない制御装置を備える。制御装置は、操作パネル18や着座センサ13(図1参照)、水タンクの温度センサなどからの信号に基づいて、水タンク内のヒータや脈動ポンプ、ノズルユニット20(後述する切替バルブのモータやノズル駆動ユニット40のモータ44)を制御する。操作パネル18には、図示しないが、おしり洗浄を指示するおしり用洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ用洗浄スイッチ、洗浄の強さを調整するための洗浄強さ調整スイッチ、洗浄の停止を指示する停止スイッチなどが設けられている。
ノズルユニット20は、図2〜図5に示すように、第1および第2ノズル22,24や、第1および第2ノズル22,24を支持するベース30、ベース30から前方へ進出した洗浄位置とベース30内に収容された収容位置との間で第1および第2ノズル22,24を選択的に進退させるノズル駆動ユニット40、図示しない切替バルブなどを備える。
ベース30は、図4に示すように、前後方向に延在するノズル載置部としての2つの凹条部32,34が幅方向(左右方向)に並んで設けられている。各凹条部32,34には、第1ノズル22,第2ノズル24がそれぞれ載置される。なお、ベース30の後端部には、図5に示すように、開口30oが形成されている。
第1および第2ノズル22,24は、図2に示すように、互いに平行に延在する伸縮しない単段式のノズルであり、凹条部32,34の延在方向(前後方向)に沿って進退が可能となっている。本実施形態では、第1ノズル22は、おしり洗浄用のノズルとして構成され、第2ノズル24は、第1ノズル22よりも長尺に形成されたビデ洗浄用のノズルとして構成されている。第1および第2ノズル22,24の後端部には給水口22i,24iが設けられ、給水口22i,24iには図示しないホースの一端が接続される。ホースの他端には、切替バルブが接続される。切替バルブは、脈動ポンプよりも下流の洗浄水流路の洗浄水の供給先を第1および第2ノズル22,24のいずれから噴出させるかを切り替えるものであり、例えば、モータにより駆動されるロータリバルブとして構成される。なお、第1および第2ノズル22,24は、例えば給水時の水圧などにより伸縮が可能な多段式のノズルで構成されてもよい。この場合、第1および第2ノズル22,24は、収縮時に同じ長さとなるように構成されてもよい。
また、第1および第2ノズル22,24は、図3,図6〜図10に示すように、後端(基端)部から前端(先端)側へ向かって延在すると共に互いの歯先が向かい合うラック26,28を有する。ラック26,28は、本実施形態では、いずれも直線歯形であり、同じモジュール,圧力角(基準線上の圧力角)および歯数により形成されている。なお、ラック26,28の基準線は、モジュールをmとしたときに、基準線から歯先までの距離が1.00・mとなり、基準線から歯底までの距離が1.25・mとなるように定義される。
ノズル駆動ユニット40は、第1および第2ノズル22,24を選択的に前後に進退させるものであり、図2〜図5に示すように、駆動装置41と従動装置45と付勢部材としてのコイルスプリング48とを備える。
駆動装置41は、第1および第2ノズル22,24の両ラック26,28と係合(噛合)可能に2つの凹条部32,34の幅方向中央部における前端側に回転自在に支持された駆動ギヤ42と、ベース30の裏面に取り付けられ駆動ギヤ42を正逆両回転方向に駆動可能なモータ44と、を有する。駆動ギヤ42は、本実施形態では、インボリュート歯形の平歯車であり、両ラック26,28と同じモジュールおよび圧力角(基準円上の圧力角)により形成されている。歯車の基準円は、モジュールをmとし、歯数をzとしたときに、基準円直径dがm・zとなるように定義される。駆動ギヤ42は両ラック26,28のそれぞれに対して係合(噛合)と分離とが可能となっており、駆動装置41は、駆動ギヤ42が両ラック26,28と係合した状態で駆動ギヤ42を回転駆動することにより、両ラック26,28に対して一方のラックを前進させると共に他方のラックを後退させるように対称な運動伝達が可能であり、駆動ギヤ42が両ラック26,28のうち一方のラックと係合し且つ他方のラックと分離した状態で駆動ギヤ42を回転駆動することにより、当該一方のラックのみを前後に進退させることが可能である。
従動装置45は、第1および第2ノズル22,24の両ラック26,28と係合(噛合)可能に2つの凹条部32,24の幅方向中央部における後端側に回動可能に支持された従動ギヤ46を有する。従動ギヤ46は、ラック26,28の長さよりも若干短い間隔で駆動ギヤ42と離間して配置される。これにより、ラック26,28は、駆動ギヤ42と従動ギヤ46とに対して同時に係合可能な区間(オーバーラップ区間)を有する。従動ギヤ46は、本実施形態では、インボリュート歯形の平歯車であり、駆動ギヤ42と同じモジュールおよび圧力角(基準円上の圧力角)で、且つ、駆動ギヤ42よりも少ない歯数となるように形成されている。すなわち、従動ギヤ46は、図11に示すように、隣接する歯同士の角度間隔θ2が駆動ギヤ42の隣接する歯同士の角度間隔θ1よりも大きくなるように形成されている。ここで、ラック26またはラック28の基準線から駆動ギヤ42の回転中心までの距離を基準距離Aとすると、基準距離Aは、駆動ギヤ42の基準円直径dの1/2(基準円半径)に駆動ギヤ42の転位係数xとモジュールmとを乗じた値(転位量x・m)を加えて計算される。同様に、ラック26またはラック28の基準線から従動ギヤ46の回転中心までの距離を基準距離Bとすると、基準距離Bは、従動ギヤ46の基準円直径dの1/2に従動ギヤ46の転位係数xとモジュールmとを乗じた値を加えて計算される。上述したように、基準円直径dは、歯数zとモジュールmとを乗じたものであり、駆動ギヤ42および従動ギヤ46は、同一のモジュールで構成される。したがって、従動ギヤ46の転位係数xを駆動ギヤ42よりも大きくすることにより、従動ギヤ46の歯数を駆動ギヤ42よりも少なくしつつ、基準距離Bを基準距離Aと等しくする、すなわちラック26,28(第1および第2ノズル22,24)を平行に配置することができる。例えば、従動ギヤ46の転位係数xを駆動ギヤ42よりも値1.0大きく定めることで、基準距離Aと基準距離Bとが等しい関係を維持しつつ、従動ギヤ46の歯数zを駆動ギヤ42よりも2歯分少なくすることができる。これにより、従動ギヤ46は、駆動ギヤ42に対して共通のラック26,28と係合(噛合)すると同時に駆動ギヤ42よりも速い回転角速度で回転(回動)する不思議歯車として構成される。従動ギヤ46は両ラック26,28のそれぞれに対して係合(噛合)と分離とが可能となっており、従動装置45は、従動ギヤ46が両ラック26,28と係合した状態で一方のラックの直線運動により回動操作を伴って他方のラックに対して一方のラックと対称な運動伝達を行ない、他方のラックを駆動ギヤ42に係合させることが可能である。
図12は、ノズルユニット20の要部を拡大した要部拡大図である。なお、図12(a)は正面図であり、図12(b)は裏面図であり、図12(c)は側面図である。従動ギヤ46の端面(ベース30側の端面)には、図示するように、回転中心から径方向に離間した位置に、ベース30の開口30oに挿通して外方へ突出する突起46pが設けられている。従動ギヤ46は、突起46pと開口30oとにより回動範囲が定められ、回動範囲の両回動端にて突起46pが開口30oの端縁に当接し位置決めされる。また、従動ギヤ46の突起46pには、コイルスプリング48の一端が係止されており、コイルスプリング48の他端は、ベース30の裏面に設けられた突起30pに支持されている。突起30pは、ベース30の表面に形成された2つの凹条部32,34の幅方向中央部における裏側に位置するように形成されている。これにより、図12に示すように、従動ギヤ46の周方向にはコイルスプリング48の引っ張り荷重による付勢力(トルクT)が付与される。従動ギヤ46に付与される周方向の付勢力(トルクT)は、突起46pが従動ギヤ46の回転中心と突起30pとを通る直線上の中立点に位置しているときにはゼロとなり、突起46pが中立点よりも時計回り側に位置しているときには、時計回りの方向のトルクとなり、突起46pが中立点よりも反時計回り側に位置しているときには、反時計回りの方向のトルクとなる。
次に、こうして構成された本実施形態の衛生洗浄便座装置10(ノズルユニット20)の動作について図6〜図10を用いて説明する。本実施形態のノズルユニット20では、第2ノズル(ビデ洗浄用ノズル)24の方が第1ノズル(おしり洗浄用ノズル)22よりも長尺に形成され、第1および第2ノズル22,24がいずれも非作動の待避状態では、図6に示すように、第1および第2ノズル22,24の先端が前後同じ位置で揃い、第2ノズル24の後端が第1ノズル22の後端よりも後退側に突出している。このとき、駆動ギヤ42は、第1ノズル22のラック26と係合していると共に第2ノズル24のラック28と分離している。一方、従動ギヤ46は、コイルスプリング48により付与される図中、反時計回り方向の付勢力によって、突起46pがベース30の開口30oにおける一方の端縁に当接した状態で位置決めされ、第1ノズル22のラック26と分離(厳密には、ラック26の最も後端にある歯の後端側の歯面が従動ギヤ46との作用線(接触線)上の最も駆動ギヤ42側にある位置で接触)していると共に第2ノズル24のラック28と係合している。これにより、第2ノズル24は、コイルスプリング48から従動ギヤ46に付与される反時計回り方向の付勢力によって後退側に保持され、駆動ギヤ42と分離した状態が維持される。ここで、本実施形態では、コイルスプリング48から従動ギヤ46に付与される周方向に付勢力により従動ギヤ46の突起46pがベース30の開口30oの端縁に当接されることでコイルスプリング48の荷重をベース30のみで受けているから、当該荷重が第2ノズル24に作用することはない。これにより、ノズルに対する応力による変形や損傷を抑制し、ノズルの耐久性を向上させることができる。
衛生洗浄便座装置10の制御装置は、着座センサ13により使用者が便座14に着座していると判定し、かつ、操作パネル18のおしり用洗浄スイッチが押下されたと判定すると、図6の待機状態からモータ44により駆動ギヤ42を正回転(図中、反時計回りに回転)させて、駆動ギヤ42と係合するラック26を前進させる。ラック26に連結された第1ノズル(おしり洗浄用ノズル)22は、図7に示すように、ラック26の前進に伴って洗浄位置に向かって前進する。第1ノズル22が洗浄位置に到達すると、制御装置は、第1ノズル22の噴出孔に脈動ポンプからの洗浄水が供給されるよう切替バルブ(モータ)を制御する。これにより、第1ノズル22の噴出孔から人体の肛門部に向かって洗浄水が噴出され、おしり洗浄が開始される。制御装置は、操作パネル18の停止スイッチが押下されて、おしり洗浄の停止が指示されると、第1ノズル22への給水を停止する。そして、モータ44により駆動ギヤ42を逆回転(図中、時計回りに回転)させて、駆動ギヤ42と係合するラック26を後退側へ引き込む。ラック26に連結された第1ノズル22は、ラック26の後退に伴って収容位置に向かって後退し、ベース30内に収容されて図6の待機状態に戻る。
また、制御装置は、着座センサ13により使用者が便座14に着座していると判定し、かつ、操作パネル18のビデ用洗浄スイッチが押下されたと判定すると、図6の待機状態からモータ44により駆動ギヤ42を逆回転(図中、時計回りに回転)させて、駆動ギヤ42と係合するラック26(第1ノズル22)を後退させる。ビデ洗浄を行なう際の駆動ギヤ42,従動ギヤ46,コイルスプリング48,第1ノズル22および第2ノズル24の各動作範囲を図13に示す。ラック26は、後退により従動ギヤ46と係合し、従動ギヤ46を時計回りに回転させる。ここで、従動ギヤ46にはコイルスプリング48から反時計回り方向に付勢力(図13中、「スプリング→従動ギヤ」の点線矢印参照)が付与されており、従動ギヤ46と係合したラック26には前進側の付勢力が作用するから、制御装置は、モータ44によりラック26の付勢力に打ち勝つ駆動力で駆動ギヤ42を逆回転駆動することにより、ラック26(第1ノズル22)を更に後退させることができる。従動ギヤ46は、ラック26の後退によって時計回りに回動することにより、従動ギヤ46と係合している他方のラック28(第2ノズル24)を前進させる。ラック28が前進すると、図8に示すように、ラック28が駆動ギヤ42と係合し、両ラック26,28が駆動ギヤ42および従動ギヤ46と同時に係合され、第1および第2ノズル22,24,駆動ギヤ42および従動ギヤ46が同時に動作する状態(図13中、「オーバーラップ区間」参照)となる。従動ギア46に付与される周方向の付勢力は、中立点で反時計回りの方向から時計回りの方向に切り替わり(図13中、「スプリング→従動ギヤ」の実線矢印参照)、ラック26を後退側へ付勢すると共にラック28を前進側へ付勢する推力となる。従動ギヤ46は、やがて突起46pがベース30の開口30oにおける他方の端縁に当接して位置決めされ、図9に示すように、ラック28が従動ギヤ46から分離すると共にラック26が駆動ギヤ42から分離した状態となる。このため、従動ギヤ46に付与される時計回り方向の付勢力により、駆動ギヤ42から分離した待機側ラック26は、後退側に保持され、駆動ギヤ42との干渉が抑制される。そして、制御装置は、モータ44により駆動ギヤ42が更に逆回転(図中、反時計回りに回転)させて、ラック28を更に前進させる。ラック28に連結された第2ノズル(ビデ洗浄用ノズル)24は、図10に示すように、ラック28の前進に伴って洗浄位置に向かって前進する。第2ノズル24が洗浄位置に到達すると、制御装置は、第2ノズル24の噴出孔に脈動ポンプからの洗浄水が供給されるよう切替バルブ(モータ)を制御する。これにより、第2ノズル24の噴出孔から人体のビデ部に向かって洗浄水が噴出され、ビデ洗浄が開始される。制御装置は、操作パネル18の停止スイッチが押下されて、ビデ洗浄の停止が指示されると、第2ノズル24への給水を停止する。そして、モータ44により駆動ギヤ42を正回転(図中、反時計回りに回転)させて、駆動ギヤ42と係合するラック28を後退側へ引き込む。ラック28に連結された第2ノズル24は、ラック28の後退に伴って収容位置に向かって後退し、ベース30内に収容されて図6の待機状態に戻る。
ここで、コイルスプリング48から従動ギヤ46に付与される付勢力(トルクT)の方向は、図14に示すように、駆動ギヤ42,従動ギヤ46および両ラック26,28が同時に係合している状態(オーバーラップ区間)で切り替わる。そして、オーバーラップ区間を外れ、両ラック26,28のうちの一方のラック(待機側ラック)が駆動ギヤ42から分離すると、待機側ラックは、従動ギヤ46により付与される周方向の付勢力(トルクT)によって後退側に保持される。図15は従動ギヤ角度θと従動ギヤ46に作用するトルクTとの関係を示す説明図である。なお、図中、横軸は、コイルスプリング48から従動ギヤ46の周方向に作用する付勢力がゼロになる中立点を基準とした従動ギヤ46の回動角度(従動ギヤ角度θ)を示し、縦軸は、従動ギヤ46の周方向に作用する付勢力すなわちトルクTを示す。また、「θe」および「−θe」は、それぞれ従動ギヤ46の一方側の回動端および他方側の回動端にあるときの従動ギヤ角度を示す。したがって、従動ギヤ46は、−θeからθeの動作範囲内で回動する。コイルスプリング48により従動ギヤ46に付与される周方向の付勢力(トルクT)は、図示するように、オーバーラップ区間内に定められた従動ギヤ角度θの中立点を境に正負(トルクTの方向)が切り替わる。このように、コイルスプリング48により従動ギヤ46に付与する付勢力(トルクT)の方向をオーバーラップ区間中に切り替えることで、オーバーラップ区間を外れて駆動ギヤ42と分離した待機側ラックに対して後退側の推力を直ちに付与することが可能となる。これにより、第1および第2ノズル22,24にそれぞれにスプリングを設けて後退側に付勢するものに比して、部品点数を削減することができ、ユニット全体をよりコンパクトにすることができる。
また、図15に示すように、コイルスプリング48から従動ギヤ46に付与される付勢力(トルクT)は、従動ギヤ角度θが回動端(θe)に近づくにつれて正側に大きくなり、従動ギヤ角度θが回動端(−θe)に近づくほど負側に大きくなる。本実施形態では、従動ギヤ46の動作範囲のうちオーバーラップ区間の境界において、従動ギヤ46に付与されるトルクTの絶対値が待機側ラックを後退側に保持するのに必要な推力(F,−F)の絶対値よりも大きくなるように、コイルスプリング48のばね定数が定められている。これにより、オーバーラップ区間外のどの従動ギヤ角度θにおいても、駆動ギヤ42と分離した待機側ラックを後退側に保持するのに必要な推力を確保することができる。
図16は、オーバーラップ区間における駆動ギヤ42および従動ギヤ46の連動の様子を示す説明図である。図示するように、従動ギヤ46は駆動ギヤ42の駆動による待機側ラック(図中、ラック26)の後退によって図中、時計回りに回動し、コイルスプリング48から従動ギヤ46に付与される時計回りの付勢力(トルクT)、すなわち待機側ラックに付与される後退側の推力は、従動ギヤ46の回動角度が時計回り側の回動端に近づくほど大きくなる。本実施形態では、上述したように、共通のラック26,28と係合しつつも従動ギヤ46が駆動ギヤ42よりも速い角速度で回動するように従動ギヤ46を駆動ギヤ42に比して少ない歯数(不思議歯車)で構成したから、待機側ラックの少ない後退量で従動ギヤ46を回動端まで回動させることが可能となる。これにより、待機側ラックの少ない後退量で待機側ラックを後退側で保持するための十分な推力を発生させることが可能となり、待機側ラックが後退するための余分なスペースを必要とせず、ユニット全体をよりコンパクトにすることができる。
以上説明した実施形態のノズルユニット20では、それぞれにラック26,28を有する第1および第2ノズルに加えて、両ラック26,28に対してそれぞれ係合と分離とが可能な駆動装置41および従動装置45と、従動装置45に対して回動方向に付勢力を付与するコイルスプリング48とを有するノズル駆動ユニット40を備える。コイルプリング48は、一端が従動ギヤ46の回動中心から径方向に離間した位置に設けられると共に他端がベース30に支持される。これにより、コイルプリング48から従動ギヤ46に付与される付勢力の方向が従動ギヤ48の回動角度によって切り替わり、1つのコイルプリング48で両ラック26,28のうち駆動ギヤ42と分離した待機側ラックを後退側に保持することができる。また、従動ギヤ46に付与される付勢力は従動ギヤ46の回動角度に応じて大きさが変化するため、従動ギヤ46には、待機側ラックの保持に必要な推力を得るために一定以上の回動角度を必要とする。本実施形態のノズルユニットでは、駆動ギヤ42により待機側ラックを後退させて従動ギヤ46と係合させた際に、従動ギヤ46が駆動ギヤ42よりも速い角速度で回動するため、待機側ラックの少ない後退量で従動ギヤ46に付与される付勢力を大きくし、待機側ラックの保持に必要な推力を発生させることができる。したがって、待機側ラックの後退量を小さくでき、待機側ラックの後退を許容するための大きなスペースは必要とされない。これらの結果、1つのモータ44により第1および第2ノズル22,24を選択的に進退可能なものにおいて、待機側ノズルを適切に保持すると共にユニット全体をよりコンパクトにすることができる。
また、実施形態のノズルユニット20では、従動ギヤ46は、駆動ギヤ42よりも両ラック26,28の進退方向における後退側に配置されており、第1および第2ノズル22,24の両ラック26,28は、それぞれ駆動ギヤ42および従動ギヤ46が係合する共通の歯面を有する。これにより、駆動ギヤ42により一方のラック(駆動側ラック)を前進させる際に、駆動側ラックが従動ギヤ46と干渉しないようにすることができる。また、ラック26,28には、それぞれ駆動ギヤ42および従動ギヤ46が係合する単一の歯面を有すればよいため、ユニット全体を更にコンパクトにすることができる。更に、単一の歯面により駆動ギヤ42と従動ギヤ46とをラック26,28を介して精度良く連動させることができる。
更に、実施形態のノズルユニット20では、従動ギヤ46は、コイルスプリング48から周方向に付与される付勢力により突起46pがベース30の開口30oの端縁に当接されることでコイルスプリング48の荷重をベース30のみで受けているから、コイルスプリング48の荷重がノズルに作用しないようにすることができる。これにより、ノズルに対する応力による変形や損傷を抑制し、ノズルの耐久性を向上させることができる。
実施形態では、駆動装置41は、モータ44により駆動ギヤ42を直接駆動するものとしたが、これに限定されるものではなく、駆動ギヤ42とモータ44との間に1つ以上の中間ギヤを設けるものとしてもよい。また、従動装置45は、コイルスプリング48の一端を従動ギヤ46の突起46pに係止することで、従動ギヤ46に周方向の付勢力を付与するものとしたが、これに限定されるものではなく、従動ギヤ46とコイルスプリング48(付勢部材)との間に1つ以上の中間ギヤを設けるものとしてもよい。更に、従動装置45は、従動ギヤ46によって一方のラックの運動を他方のラックへ伝達するものとしたが、一方のラックの運動を回動動作を伴って他方のラックに対して対称な運動伝達が可能なものであれば、如何なるものでも構わない。
実施形態では、従動ギヤ46は、全周に亘って等間隔に歯を有する歯車により構成されたが、これに限定されるものではなく、図17の変形例の従動ギヤ146に示すように、ラック26,28とそれぞれ噛み合う部分に歯を有し、その他の部分において歯が欠落した欠歯歯車により構成されてもよい。
実施形態では、第1および第2ノズル22,24は、それぞれ平行に配置されたが、これに限定されるものではなく、先端に向かうにつれて両者が近接するように配置されてもよい。すなわち、駆動ギヤ42の後方に配置される従動ギヤ46の直径(基準円直径に転位量を加えた径)を、駆動ギヤ42の直径以上とすればよい。また、第1および第2ノズル22,24は、それぞれ幅方向(左右方向、水平方向)の並びで配置されたが、上下方向の並びで配置されてもよい。
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、ベース30が「ベース」に相当し、ラック26,28が「ラック」に相当し、第1ノズル(おしり洗浄用ノズル)22および第2ノズル(ビデ洗浄用ノズル)24が「一対のノズル」に相当し、駆動ギヤ42やモータ44を含む駆動装置41が「駆動装置」に相当し、従動ギヤ46を含む従動装置45が「従動装置」に相当し、コイルスプリング48が「付勢部材」に相当する。
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。