JP2019116589A - 熱可塑性ポリオレフィン制振材 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、特許文献4の技術では、ミクロゲルはゴム類の架橋により得られるゴム粒子であり、不飽和結合を有するため、耐候性、耐久性が悪いという欠点がある。また、特許文献4においてはミクロゲルの乳化重合による調製に用いるモノマーとして、一般的に耐候性、耐久性の高いアクリル系モノマーも使用できることが開示されているものの、アクリル系モノマーからなる粒子は、そのままでは熱可塑性ポリオレフィン中での分散性が低く、機械的強度が大幅に低下してしまう問題もある。
一方、特許文献5、6ではミクロゲルではなくコアシェル粒子を用いる制振材が開示されているが、熱可塑性ポリオレフィンと重合体粒子との親和性を高める技術については、一切開示されていない。
[1]熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋構造を有するアクリル系重合体粒子(B)及び接着性ポリオレフィン(C)を含有する、熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[2]前記熱可塑性ポリオレフィン(A)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂、及びエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、前記[1]の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[3]前記接着性ポリオレフィン(C)が、極性基を含有するポリオレフィンであり、該極性基が水酸基、カルボキシル基、エステル基、及び無水マレイン酸に由来する官能基からなる群より選択される少なくとも1種である、前記[1]又は[2]の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[4]前記アクリル系重合体粒子(B)の平均粒子径が0.01〜1μmである、前記[1]〜[3]のいずれかの熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[5]前記熱可塑性ポリオレフィン(A)をマトリクス相とし、前記アクリル系重合体粒子(B)をドメイン相とする海島構造を有する制振材であり、該ドメイン相の平均分散径が1μm以下である、前記[1]〜[4]のいずれかの熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[6]前記アクリル系重合体粒子(B)の含有量が1〜50質量%である、前記[1]〜[5]のいずれかの熱可塑性ポリオレフィン制振材。
[7]前記接着性ポリオレフィン(C)の含有量が0.1〜20質量%である、前記[1]〜[6]のいずれかの熱可塑性ポリオレフィン制振材。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味する。
本発明の熱可塑性ポリオレフィン制振材(以下、「制振材」とも略称する)は、熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋構造を有するアクリル系重合体粒子(B)及び接着性ポリオレフィン(C)を含有する。
本発明の熱可塑性ポリオレフィン制振材は、制振性、耐候性及び耐久性に優れ、機械的強度が高く、広範な用途に適用可能となる。この理由については定かではないが、以下のように推測される。
アクリル系重合体粒子を単に熱可塑性ポリオレフィンに混合しても微細なドメイン相を形成するように分散させることは困難であり、そのため、制振性は向上するものの機械的強度が低下してしまう。そこで、本発明では、熱可塑性ポリオレフィン及びアクリル系重合体粒子に加えて、さらに接着性ポリオレフィンを含有することにより、該接着性ポリオレフィンが、アクリル系重合体粒子表面の極性基と相互作用するため、熱可塑性ポリオレフィンとアクリル系重合体粒子との親和性及び接着性を著しく向上することができる。その結果、熱可塑性ポリオレフィン中でアクリル系重合体粒子が微細に分散され、優れた制振性及び機械的強度を両立することができると考えられる。
熱可塑性ポリオレフィン(A)は、好ましくは極性基を含有しないものであり、公知のオレフィン系重合体を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体であるポリ−α−オレフィン;エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、6−メチル−1−ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエン等の炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体;エチレン−プロピレン−α−オレフィン三元共重合体;エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM);ハードセグメントとしてポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンと、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)等とを含むポリオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性ポリオレフィンは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.94〜0.98g/cm3、より好ましくは0.94〜0.97g/cm3、更に好ましくは0.94〜0.96g/cm3、より更に好ましくは0.94〜0.95g/cm3の範囲である。
(単量体)
本発明に係る架橋構造を有するアクリル系重合体粒子(B)(以下、「架橋重合体粒子(B)」とも略称する)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含み、かつ架橋構造を有する重合体粒子であり、好ましくは該(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な多官能性単量体により架橋されてなる。架橋重合体粒子(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び多官能性単量体単位のみから構成されていてもよく、さらに他の単量体単位を含んでもよい。また、架橋重合体粒子(B)は、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。該アルコールとしては、飽和脂肪族アルコール、脂環式アルコール、フェノール類、芳香族アルコール等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18の飽和脂肪族アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数5〜6の脂環式アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等のフェノール類由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、制振材として使用する温度範囲、例えば20〜60℃の温度範囲における制振性、及び機械的強度を向上させる観点から、炭素数1〜18の飽和脂肪族アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
架橋重合体粒子(B)は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な多官能性単量体により架橋されてなることが好ましい。該多官能性単量体としては、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸と、アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記不飽和モノカルボン酸と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和結合を有するジカルボン酸と、前記不飽和アルコールとのエステルなどが挙げられる。具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等が挙げられる。前記多官能単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記不飽和モノカルボン酸とグリコールとのジエステルが好ましく、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートがより好ましい。
架橋重合体粒子(B)は、単層の重合体粒子であってもよく、複数の層からなる重合体粒子であってもよいが、取扱い性の観点、並びに制振性及び機械的強度を向上させる観点から、架橋重合体粒子(B)は、内層を有し、該内層の表面の少なくとも一部を被覆する重合体被膜を有することが好ましい。なお、本明細書において、内層を有し、該内層の表面の少なくとも一部を被覆する重合体被膜を有する架橋重合体粒子(B)を被覆−架橋重合体粒子(B’)(以下、「被覆−架橋重合体粒子(B’)」とも略称する)という。また、本明細書において、「被覆」とは、重合体被膜が内層を形成する重合体粒子の表面を少なくとも一部被覆している状態をいい、該表面の全部を被覆していることが好ましい。被覆−架橋重合体粒子(B’)において、内層及び重合体被膜のいずれかが架橋構造を有すればよく、制振性及び機械的強度を向上させる観点から、内層及び重合体被膜のいずれもが架橋構造を有することが好ましい。
前記内層を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、前述で例示されたものが挙げられる。これらの中でも、所望の温度条件において制振性を最大限に発現させるために有効なtanδピーク温度Tαを有するように、単量体を選択し使用することが好ましい。具体的には、制振性の発現を必要とする温度T1に対し、前記内層を構成するアクリル系重合体のtanδピーク温度TαをT1−20≦Tα≦T1+20の範囲に調整するために、(メタ)アクリル酸エステル単量体を、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。例えば、制振性の発現を必要とする温度T1が40℃の場合、架橋重合体粒子(B)のtanδピーク温度Tαが20℃≦Tα≦60℃の範囲にあることが好ましく、そのような(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、ブチルメタアクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
前記重合体被膜を構成するアクリル系重合体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含み、1種の単量体単位からなる単独重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもあってもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記重合体被膜を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、前述で例示されたものが挙げられる。これらの中でも、制振材として使用する温度範囲、例えば20〜60℃の温度範囲における制振性、及び機械的強度を向上させる観点から、炭素数1〜18の飽和脂肪族アルコール由来の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートが更に好ましい。
前記内層及び重合体被膜は、制振性及び機械的強度を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な多官能性単量体により架橋されてなることが好ましい。該多官能性単量体としては、前述の架橋重合体粒子(B)において例示されたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
架橋重合体粒子(B)の製造方法は特に限定されないが、例えば乳化重合や懸濁重合により製造することができる。
架橋重合体粒子(B)は、製造容易性の観点から、下記工程1を有する製造方法により得ることが好ましい。
工程1:単量体混合物(i)を水中で乳化重合して、架橋重合体粒子(B)を含む乳化液1を得る工程
単量体混合物(i)は、架橋重合体粒子(B)を構成する単量体混合物であり、用いる単量体としては前述の架橋重合体粒子(B)において例示されたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
工程1’:単量体混合物(i’)を水中で乳化重合して、単層重合体粒子(b)を含む乳化液1’を得る工程
工程2’:工程1で得られた乳化液1’中に、さらに単量体混合物(ii’)を添加して水中で乳化重合して、被覆−架橋重合体粒子(B’)を含む乳化液2’を得る工程
単量体混合物(i’)は、被覆−架橋重合体粒子(B’)の内層となる単層重合体粒子(b)を構成する単量体混合物であり、用いる単量体としては前述の内層において例示されたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
単量体混合物(ii’)は、被覆−架橋重合体粒子(B’)の重合体被膜を構成する単量体混合物であり、用いる単量体としては前述の重合体被膜において例示されたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
被覆−架橋重合体粒子(B’)が3層以上からなる場合には、上記工程2’を繰り返すことにより製造することができる。
水溶性アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2−2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。
有機過酸化物と併用する遷移金属塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、チオ硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物;硫酸銅(I)、チオ硫酸銅(I)、炭酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、水酸化銅(I)、酸化銅(I)等の銅化合物、又はそれらの水和物などが使用できる。これらのうち、生産性の観点から、クメンヒドロパーオキシドと鉄化合物とを併用してもよく、クメンヒドロパーオキシドと硫酸鉄(II)の水和物とを併用してもよい。
前記還元剤の使用量は、水に対して0.0001〜1質量%の範囲が好ましく、0.001〜0.5質量%の範囲がより好ましい。
前記製造方法において、必要に応じて乳化重合の系内に増粘抑制剤として電解質を添加してもよい。具体的には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等の電解質が挙げられる。前記製造方法において、乳化剤と増粘抑制剤とを併用する場合、増粘抑制剤の使用量は、乳化液中のミセルの安定性の観点から、乳化剤に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
前記還元剤、金属イオンキレート剤及び電解質は、重合反応中に添加してもよいが、乳化重合当初から水中に添加しておくことが好ましい。
乳化重合の重合温度は、通常0〜100℃の範囲が好ましく、重合率を高める観点から、50〜90℃が望ましい。
本発明の制振材は、接着性ポリオレフィン(C)を含有する。接着性ポリオレフィン(C)としては、オレフィン単位を主成分として含むオレフィン系重合体又はその変性物であり、架橋重合体粒子(B)表面の極性基と相互作用するものであれば特に限定されない。
なお、前記「主成分」とは、前記オレフィン系重合体を構成する全構造単位中、50質量%を超える割合を占める成分を意味する。
本発明の制振剤は接着性ポリオレフィン(C)を含有することにより、架橋重合体粒子(B)の熱可塑性ポリオレフィン(A)中の分散性が向上し、優れた制振性と機械的強度が両立された制振材とすることができる。架橋重合体粒子(B)の表面には乳化剤や開始剤、あるいは極性基を含有する単量体に由来する極性基があるため、接着性ポリオレフィン(C)と相互作用することで、架橋重合体粒子(B)の表面に接着性ポリオレフィン(C)が吸着し、架橋重合体粒子(B)と熱可塑性ポリオレフィン(A)との親和性を向上することに起因すると考えられる。
無水マレイン酸に由来する官能基を有するポリオレフィンの酸価は、好ましくは1〜150mgKOH/g、より好ましくは3〜100mgKOH/g、更に好ましくは5〜60mgKOH/gの範囲である。酸価は、JIS K 0070:1992に記載の方法に準拠して測定される。
接着性ポリオレフィンの市販品としては、ユーメックスシリーズ(三洋化成工業(株)製)、モディックシリーズ(三菱ケミカル(株)製)、アドマーシリーズ(三井化学(株))、メルセンシリーズ(東ソー(株)製)等が挙げられる。
本発明の制振材の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋重合体粒子(B)及び接着性ポリオレフィン(C)を混合して製造することができる。例えば、熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋重合体粒子(B)及び接着性ポリオレフィン(C)を、タンブラー、ミキサー、ブレンダー等で混合し、スクリュー押出機、ロール等で混練することにより製造できる。
また、熱可塑性ポリオレフィン(A)と混練する前に、架橋重合体粒子(B)と接着性ポリオレフィン(C)とを予め複合化してもよい。該複合化する方法としては、特に限定されず、接着性ポリオレフィン(C)を乳化剤として架橋重合体粒子(B)を重合する方法、接着性ポリオレフィン(C)と架橋重合体粒子(B)とを予め混合する方法、制振材の製造時に架橋重合体粒子(B)と接着性ポリオレフィン(C)とを混合して添加する方法等が挙げられる。接着性ポリオレフィン(C)と架橋重合体粒子(B)とを予め混合する場合、接着性ポリオレフィン(C)の水系分散液又は溶液と、架橋重合体粒子(B)の乳化液又は分散液とを混合してもよく、接着性ポリオレフィン(C)と架橋重合体粒子(B)とをタンブラー、ミキサー、ブレンダー等で混合し、スクリュー押出機、ロール等で混練してもよい。また、接着性ポリオレフィン(C)、架橋重合体粒子(B)及び比較的少量の熱可塑性ポリオレフィン(A)をタンブラー、ミキサー、ブレンダー等で混合し、スクリュー押出機、ロール等で混練し、マスターバッチ化する方法も用いることができる。
本発明の制振材を成形してなる成形品の、130〜6,000Hzの周波数領域で測定される損失係数ηは、好ましくは0.06以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.08以上である。損失係数が前記範囲内であることにより、制振性に優れたものとなる。
本発明の制振材を成形してなる成形品の曲げ弾性率は、好ましくは0.65GPa以上、より好ましくは0.7GPa以上である。曲げ弾性率が前記範囲内であることにより、機械的強度に優れたものとなる。
前記損失係数及び前記曲げ弾性率は、実施例に記載の方法により測定される。
(単量体)
・メチルアクリレート:東京化成工業(株)製
・メチルメタクリレート:(株)クラレ製
・1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート:商品名「ライトエステル1.6Hx」、共栄社化学(株)製
(乳化剤)
・ポリオキシエチレントリデシルエーテル:商品名「ノイゲンTDS−500F」、ノニオン系界面活性剤、第一工業製薬(株)製
(ラジカル重合開始剤)
・30質量%過酸化水素水:和光純薬工業(株)製
(還元剤)
・L(+)−アスコルビン酸:和光純薬工業(株)製
(分散媒)
・イオン交換水:電気伝導率0.08×10-4S/m以下のイオン交換水
(熱可塑性ポリオレフィン)
・高密度ポリエチレン:商品名「NOVATEC HD HB111R」、日本ポリエチレン(株)製、密度0.945g/cm3
(接着性ポリオレフィン)
・無水マレイン酸変性ポリプロピレン:商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製、酸価26mgKOH/g
(単量体転化率)
重合開始から1時間毎にサンプリングした乳化液(1mL)をメタノール(20mL)に滴下することで、粒子を沈降させた。粒子の沈降後、上澄み液を除去した後に得られた固形分を、真空乾燥機(角型真空定温乾燥器 型式:DP23、ヤマト科学(株)製)を用いて0.1kPa、60℃の条件にて質量変化がなくなるまで真空乾燥を行った。
サンプリングした乳化液の質量、サンプリング時点までに添加した単量体の質量、乾燥後の固形分の質量から単量体転化率(質量%)を算出した。
架橋重合体粒子(B)の乳化液(0.1mL)とイオン交換水(10mL)の混合液を動的光散乱測定装置(装置名:FPAR−1000、大塚電子(株)製)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定し、メディアン径を平均分散粒子径として測定した。
後述する手法にて得られた制振材を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、JIS K 7391:2008に基づく試験片(幅10mm×長さ250mm×厚さ2mm)を作製し、中央加振法により、40℃における損失係数ηを測定した。数値が大きいほど制振性が良好であることを示す。
後述する手法にて得られた制振材を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ4mmの樹脂シートを得た。該シートから切削加工により幅10mm×長さ80mm×厚さ4mmの試験片を切り出し、ISO 178:2010に従い、万能試験機(装置名:AG−2000B、島津製作所(株)製)を用いて曲げ弾性率を測定した。数値が大きいほど機械的強度に優れることを示す。
後述する手法にて得られた制振材を透過型電子顕微鏡(装置名:HT7700、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察することで得られた観察像から、架橋重合体粒子(B)のドメイン相の短径と長径の平均値をドメイン相の分散径とし、100個のドメイン相の分散径の数平均値を平均分散径とした。
製造例1
(工程1’)
乾燥させた0.5Lの耐圧重合槽にイオン交換水200g、乳化剤(「ノイゲンTDS−500F」)5g、還元剤(L(+)−アスコルビン酸)0.052gを添加した後、内容物を撹拌しながら30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を60℃に昇温した後、系中の微量溶存酸素等の重合失活因子を除くため、重合開始剤として市販の30質量%過酸化水素水をイオン交換水で300倍に希釈し調製した0.1質量%過酸化水素水を0.05mL/分の速度で連続的に30分間添加した。その後、0.1質量%過酸化水素水の添加を継続したまま、メチルアクリレート32g及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート0.32gからなる単量体混合物(i’)を脱酸素処理した後、0.75mL/分の速度で連続的に添加し、乳化液1’−1を得た。
(工程2’)
工程1’で加えた単量体の転化率が99質量%を超えたことを確認した時点で、前記工程1で得られた乳化液1’−1に、0.1質量%過酸化水素水の添加を継続したまま、メチルメタクリレート8g及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート0.08gからなる単量体混合物(ii’)を脱酸素処理した後、0.75mL/分の速度で連続的に添加した。総単量体転化率が99質量%を超えたことを確認した時点で、重合槽を25℃まで冷却して、被覆−重合体粒子(B’1)の乳化液2’−1を取り出した。乳化液2’−1中の被覆−架橋重合体粒子(B’1)の平均分散粒子径は93nmであった。
該乳化液2’−1を、500mLのメタノール中に滴下することで被覆−架橋重合体粒子(B’1)を凝固させ、吸引ろ過により固形分をろ取した後、真空乾燥機で0.1kPa、40℃にて重量変化がなくなるまで乾燥を行い、被覆−架橋重合体粒子(B’1)を得た。得られた被覆−架橋重合体粒子(B’1)のtanδピーク温度Tαは37℃であった。
被覆−架橋重合体粒子(B’1)の製造に用いた各成分の配合量を表1に示す。
熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋重合体粒子(B)、接着性ポリオレフィン(C)を表2に示す割合で、ラボプラストミル(装置名「4M150」、(株)東洋精機製作所製)を用いてチャンバー温度200℃、回転数100rpmにて3分間溶融混練し、チャンバー内容物を取り出し、冷却して制振材を得た。得られた制振材を用いて各種物性評価を行った。結果を表2に示す。
Claims (7)
- 熱可塑性ポリオレフィン(A)、架橋構造を有するアクリル系重合体粒子(B)及び接着性ポリオレフィン(C)を含有する、熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記熱可塑性ポリオレフィン(A)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂、及びエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記接着性ポリオレフィン(C)が、極性基を含有するポリオレフィンであり、該極性基が水酸基、カルボキシル基、エステル基、及び無水マレイン酸に由来する官能基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記アクリル系重合体粒子(B)の平均粒子径が0.01〜1μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記熱可塑性ポリオレフィン(A)をマトリクス相とし、前記アクリル系重合体粒子(B)をドメイン相とする海島構造を有する制振材であり、該ドメイン相の平均分散径が1μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記アクリル系重合体粒子(B)の含有量が1〜50質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
- 前記接着性ポリオレフィン(C)の含有量が0.1〜20質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性ポリオレフィン制振材。
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