JP2019116505A - 注射用医薬組成物 - Google Patents

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幸裕 加藤
敦子 藤原
Atsuko Fujiwara
敦子 藤原
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Abstract

【課題】プラスチック容器に収容されたファスジル水溶液のpH変動を抑制し、高品質の注射用医薬組成物を提供すること【解決手段】プラスチック容器に収容された、0.1〜1.0mg/mlのファスジルまたはそれに相当するファスジル塩と、等張化剤と、水と、を含み、保存期間中にpHが5〜7に維持される注射用医薬組成物を提供する。注射用医薬組成物は、好ましくは、pH緩衝剤が含まれているか、または環状ポリオレフィンからなる袋状容器にファスジル水溶液充填されてるいか、脱酸素剤とともに外袋に収容されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ファスジルまたはその塩を含有する、注射用の医薬組成物に関する。
ファスジル(Fasudil)は、以下の構造を有する化合物であり;その塩酸塩水和物として、くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善を効能効果とする医薬品の有効成分として日本にて承認されている(非特許文献1を参照)。
(化1)
非特許文献1に示されるように、ファスジル塩酸塩は、エリル点滴静注液とのブランド名として承認・上市されており、ファスジル塩酸塩(塩酸ファスジル)として30mgを含む2mlの水溶液としてアンプル中に封入されている。そして、当該水溶液を希釈した後に、患者に点滴静注することで用いられる。
さらに、ファスジル塩酸塩水溶液を封入するアンプルとして、波長350nmの光の透過を制限するガラスアンプルとすることで、ファスジル塩酸塩の光安定性を高める技術も提案されている(特許文献1)。また、ファスジル水溶液のpHを5.5以下にすることで、ファスジルの光安定性を改善する技術も提案されている(特許文献2)。
特開平9−24085号公報 WO2005/087237号公報
エリル点滴静注液30mg添付文書
従来のファスジル水溶液は、15mg/ml(30mg/2ml)という高濃度のファスジル塩酸塩を含む医薬品として提供され、それを希釈してから用いる(患者に投与する)ものである。従来よりもファスジルを低濃度とした製剤は、いわゆるRTU(ready−to−use)製剤として、つまり、希釈作業が不要の製剤として提供することができ、利便性が高い。ところが、ファスジル水溶液は、ファスジルの濃度を低下させると、そのpH値が変動しやすいことが見いだされた。とりわけ、プラスチック容器に収容されたファスジル塩酸塩水溶液は、時間とともにそのpH値が変動しやすく、中性付近に調整された水溶液が、徐々に酸性を強めていく(pH値が低下する)ことが分かった。このように、pH値が変動しやすい製剤は、医薬品として非常に好ましくない。そこで本願発明は、低濃度のファスジルまたはその塩を含む注射用医薬組成物のpHを安定化することを目的とする。
本願発明は、以下の構成を有するものである。
[1]プラスチック容器に収容された、0.3〜0.6mg/mlのファスジルまたはそれに相当するファスジル塩と、等張化剤と、水と、を含み;3週間の熱苛酷安定性(60℃、なりゆき)の試験期間にわたって、pHが5〜7の範囲に維持される、注射用医薬組成物。ここで、熱苛酷安定性試験は、平成3年2月15日 薬審第43号 厚生省薬務局審査課長・新医薬品課長通知「医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績の取扱いについて」に記載された試験手順に準じて行われる。具体的には、ファスジル水溶液を充填したプラスチック容器を、60±2℃に設定された恒温恒湿器内に3週間載置する。プラスチック容器が外袋に収容されている場合には、外袋に収容された状態で恒温恒湿器内に載置する。ただし、湿度はコントロールせずに、なりゆきとする。なお、恒温恒湿器は60℃でバリデートされている。
[2]pH緩衝剤をさらに含む、前記[1]に記載の注射用医薬組成物。
[3]前記プラスチック容器は、環状ポリオレフィンからなる層を有するフィルムバッグを含む、前記[2]に記載の医薬組成物。
[4]前記プラスチック容器は、脱酸素剤とともに外袋に収容される、請求項1に記載の医薬組成物。
本発明におけるプラスチック容器であるフィルムバッグの例の概略を示すである。
本発明は、ファスジルまたはその塩と、等張化剤と、水と、を含む注射用医薬組成物に関する。
ファスジルとは、上記の構造式で示される化合物であり、その塩酸塩水和物として日本でも承認された医薬品有効成分である。本願発明におけるファスジルとは、塩ではないファスジルのフリー体であってもよいし、医薬的に許容可能な塩の形態であってもよい。好ましい塩は、塩酸塩である。また、本願発明におけるファスジルは、非晶質でも、結晶形態でもよい。また結晶形態である場合は、無水物でも、水和物その他の溶媒和物でもよいが、好ましくは、塩酸塩の水和物である。
本発明の注射用医薬組成物におけるファスジルの含有量(濃度)は、ファスジルとして0.1〜1.0mg/ml、またはファスジル塩酸塩として0.3〜0.6mg/mlである。前述の通り、ファスジル水溶液では、pHが変動しやすいが、本発明の医薬組成物では、pHの変動を抑制することができる。
等張化剤とは、ファスジル水溶液の浸透圧を調整するための剤であり、一般的に体液の浸透圧と同程度に調整するために用いられる。等張化剤は、医薬品成分として承認された等張化剤を用いればよく限定されない。このような等張化剤としては、アミノエチルスルホン酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化マグネシウム、果糖、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、水酸化ナトリウム、D−ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、ニコチン酸アミド、乳酸ナトリウム液、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、マクロゴール4000、D−マンニトール、無水ピロリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ホウ酸、ホウ砂などが例示される。好ましい等張化剤には、塩化ナトリウム、糖類または糖アルコール類(ブドウ糖、マンニトール、マルトース、ソルビトール、ラクトース)などが例示され、より好ましくは、塩化ナトリウム、ブドウ糖、またはマンニトールが挙げられる。等張化剤の配合量は、ファスジル水溶液の浸透圧を、体液の浸透圧と同程度に調整可能なように設定することができる。
本発明の注射用医薬組成物における水は、精製水、またはいわゆる滅菌注射用水(WFI)とすることができ、その量は、ファスジルの濃度を所定の範囲に調整可能なように設定することができる。
また、本発明の注射用医薬組成物には、ファスジルまたはその塩、等張化剤、及び水以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分の好ましい例には、pH緩衝剤が含まれる。pH緩衝剤とは、溶液のpHを特定の値に保持されるようにするための剤である。pH緩衝剤は、医薬品添加剤として承認されているpH緩衝剤を用いればよいが、好ましくは、クエン酸とクエン酸塩(クエン酸ナトリウムなど)との組み合わせ、酢酸と酢酸塩(酢酸ナトリウムなど)との組み合わせ、コハク酸とコハク酸塩との組み合わせ、酒石酸と酒石酸塩との組み合わせ、リン酸とリン酸塩との組み合わせ、乳酸と乳酸塩との組み合わせ、L−アルギニンとその塩との組み合わせ、安息香酸とその塩との組み合わせ、炭酸と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせが例示される。pH緩衝剤の配合量は、本発明の注射用医薬組成物の初期pH(保存期間初期のpH)を5〜7に、好ましくは5.7〜6.3の範囲となる量に設定することができる。
さらに、本発明の注射用医薬組成物には、pH緩衝剤以外の他の成分が含まれていてもよく、この様な成分としては、pH調整剤、無痛化剤、抗酸化剤、電解質成分などが挙げられる。
pH調整剤の例には、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、コハク酸、氷酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸ナトリウム液、メグルミン、モノエタノールアミン、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸、リン酸、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アジピン酸、アンモニア水、グルコノ−δ−ラクトン、グルコン酸、ジイソプロパノールアミン、酒石酸、D−酒石酸、L−酒石酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリイソプロパノールアミン、二酸化炭素、乳酸カルシウム、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、マレイン酸、dl−リンゴ酸、酢酸、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましいpH調整剤は、塩酸あるいは水酸化ナトリウムである。
無痛化剤の例には、イノシトール、クレアチニン、クロロブタノール、炭酸水素ナトリウム、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、硫酸マグネシウム、アミノ安息香酸エチル、フェノール等が含まれる。
抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アルファチオグリセリン、エデト酸ナトリウム、塩酸システイン、クエン酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、亜硝酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、エリソルビン酸、酢酸トコフェロール、ジクロルイソシアヌール酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、大豆レシチン、テノックス2、天然ビタミンE、トコフェロール、d−δ−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、1,3−ブチレングリコール、ペンタエリスリチル−テトラキスプロピオネート、没食子酸プロピル、2−メルカプトベンズイミダゾール、硫酸オキシキノリンが含まれる。
電解質成分は、医薬品用の電解質液に含まれる成分として提供される。電解質成分とは、水溶液中で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオンなどを発生させる成分をいう。典型的な電解質成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどである。市場で入手可能な電解質液は輸液製剤などとして知られており;輸液製剤には、細胞外補充液や、低張性電解質液(開始液、術後回復液、維持液、その他などに分類される)などがある。細胞外補充液としてはハルトマン液などが;低張性電解質液(開始液)としてはソルデム1号輸液などが;低張性電解質液(術後回復液)としてはソルデム6輸液などが;低張性電解質液(維持液)としてはハルトマンG3号輸液、エスロンB注、アセトキープ3G注、クリニザルツ輸液などが市販されている。
本発明の注射用医薬組成物は、そのpHが、3週間の熱苛酷安定性(60℃、なりゆき)の試験期間にわたって、pHが5〜7の範囲に維持されることが好ましく、5.7〜6.3の範囲に維持されることがより好ましい。熱苛酷安定性試験における「なりゆき」とは、湿度調整をしない環境下での試験を意味する。熱苛酷安定性の試験は、平成3年2月15日 薬審第43号 厚生省薬務局審査課長・新医薬品課長通知「医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績の取扱いについて」に記載された手順に準じて行われる。具体的には、ファスジル水溶液を充填したプラスチック容器を、60±2℃に設定された恒温恒湿器内に載置する。プラスチック容器が外袋に収容されている場合には、外袋に収容された状態で恒温恒湿器内に載置する。ただし、湿度はコントロールせずに、なりゆきとする。なお、恒温恒湿器は60℃でバリデートされている。
また、本発明の注射用医薬組成物は、医薬品としての保存期間中、5〜7の範囲に維持されることが好ましく、5.7〜6.3の範囲に維持されることがより好ましい。医薬品としての保存期間は、一般的に、2年(24ヵ月)または3年(36か月)であることが多く、この期間は、医薬品承認事項によって決定される。なお、60℃、1箇月間の保管(前述の熱苛酷安定性試験)は、アレニウスの式より、25℃3年と同等の保管期間に相当する。
ファスジルは酸性環境において安定であるから、pH7以下、好ましくはpH6.3以下の水溶液であることが好ましく、かつ患者に投与された際に、患者の痛みを軽減するために、pH5以上、好ましくはpH5.7以上の水溶液とすることが好ましい。
本発明の注射用医薬組成物は、その保存期間中にわたってpHを一定範囲に維持するために、1)前述のpH緩衝剤を含有すること、2)特定のプラスチック容器に充填されること、または3)脱酸素剤とともに外袋に収容されることが好ましい。
本発明の注射用医薬組成物は、プラスチック容器に充填されている。プラスチック容器とは、典型的には、医薬品用のフィルムバッグであるが、プラスチック製のバイアル、プラスチック製のアンプル、あるいはプラスチック製のシリンジであってもよい。医薬品用のフィルムバッグは、通常、プラスチック製のフィルムからなる袋状容器と、その一部に具備されるゴム栓とからなる。例えば、図1には、医薬品用のフィルムバッグの形態の一例が示される。フィルムバッグ1は、重ねあわされた2枚の矩形状のプラスチックフィルムの四辺が、互いに貼り合わされたプラスチック容器である。フィルムバッグ1が構成する内部空間2にファスジル水溶液が充填されている。また、フィルムバッグ1の一辺には、ポート3が設けられている。ポート3はゴム栓からなり、ゴム栓に注射針を貫通させることによって、内部空間2に充填されたファスジル水溶液を、注射針を通して外部に出すことができる。ゴム栓の素材は、例えばイソプレンゴム、フッ素樹脂で皮膜されたイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどとすることができる。また、フィルムバッグ1のプラスチックフィルムの外部表面には、ラベル4が貼りつけられていてもよい。ラベル4には、医薬品の名称などが表示されてもよい。
医薬品用のフィルムバッグのプラスチック製フィルムの材質は特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリアミド、及びポリエステルなどが例示される。また、プラスチック製フィルムは、単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。これらのうち、ポリエチレンまたはポリプロピレンのフィルムが、一般的にコスト的に有利であるため好ましい。
一方で、医薬品用のフィルムバッグのプラスチック製フィルムを、環状ポリオレフィンフィルムまたは環状ポリオレフィン層を含む単層または多層フィルムとすると、ファスジル水溶液のpH変動を抑制することができるため、好ましい。本発明者らは、中性程度のファスジル水溶液をプラスチック容器に収容すると、医薬品の保存期間中に、徐々に酸性が強くなる(pH値が低下する)という課題があることを見出し、この課題が、プラスチック容器の材質を環状ポリオレフィンとすることによって、解決できることを見出した。
環状ポリオレフィン層を含む多層フィルムにおける環状ポリオレフィン層は、最内層(ファスジル水溶液に接する層)にあってもよいし、最外層にあってもよいし、中間層にあってもよい。
環状ポリオレフィンは、シクロオレフィンポリマー(COP)であってもよいし、シクロオレフィンコポリマー(COC)であってもよい。COPとは、一種又は二種以上の環状オレフィンの重合体またはその水素添加物であり、例えば日本ゼオン株式会社製のゼオネックス、ゼオノアなどの市販品として入手可能である。COCとは、1種もしくは2種以上の環状オレフィンと1種もしくは2種以上の非環状オレフィンとの共重合体またはその水素添加物であり、例えば、三井化学株式会社製のアペル、ポリプラスチック社製のTOPASなどの市販品として入手可能である。
プラスチック容器は、UV遮光性を有していてもよい。ファスジルは、光安定性が低いことがあるので、プラスチック容器にUV遮光性を与えることで、水溶液中のファスジルの安定性をより改善することができる。プラスチック容器は、無色透明の容器であってもよいし、着色またはその他の手段で遮光性を高めた容器であってもよい。
本発明の注射用医薬組成物はプラスチック容器に充填されているが、そのプラスチック容器は、さらに外袋に覆われて収容されていてもよい。外袋も、通常はプラスチックフィルムで構成されるが、ファスジルは光安定性が低い場合があるため、外袋がUV遮光性を有していることが好ましい。UV遮光性を有する外袋とは、典型的には、黄色に着色されたプラスチックフィルム容器である。
また、外袋には、プラスチック容器とともに、脱酸素剤などが一緒に収容されていてもよい。外袋中に脱酸素剤を収容することで、プラスチック容器内のファスジル水溶液のpHが低下しにくくなる、つまりpHを維持しやすいことがあることが見いだされた。脱酸素剤は、鉄粉、亜鉛粉、ハイドロサルファイト等を主剤とする無機系の脱酸素剤、アスコルビン酸系、多価アルコール系、活性炭系等の有機系の脱酸素剤であってもよい。また、脱酸素剤は、例えば、ファーマキープ(三菱ガス化学(株)製:登録商標)やエージレス(三菱ガス化学(株)製:登録商標)などの市販品として入手可能である。
本発明の注射用医薬組成物の製造方法は、1)ファスジル水溶液を調製するステップと、2)プラスチック容器を準備するステップと、3)ファスジル水溶液をプラスチック容器に封入するステップと、を少なくとも含み、さらに通常は、ファスジル水溶液を封入したプラスチック容器を滅菌処理するステップや、プラスチック容器を外袋に収容するステップなどを含む。
各ステップの詳細は次の通りである。
ステップ1):ファスジル水溶液は、水(通常は注射用水溶液)に、所定量の等張化剤と所定量のファジルまたはその塩と、他の成分を添加して溶解させて調製される。添加の順序は特に限定されないが、まず、水に等張化剤と必要に応じてpH緩衝剤やpH調整剤を添加して溶解してから、所定量のファスジルまたはその塩を添加することができる。
ステップ2):プラスチック容器は、容器の態様によって、その製造法が異なるが、ここでは袋状のフィルムバッグを準備する例を示す。プラスチックフィルムを重ね合わせて、その外周を接着して、目的とする袋形状とする。プラスチックフィルム同士の接着は、ヒートシール(圧力をかけつつ加熱する)したり、インパルスシールしたりすればよい。ただし、ここで得られプラスチック容器は一部が開封されており、その内部にファスジル水溶液を充填することができる。
ステップ3)ファスジル水溶液は、プラスチック容器の内部に充填される。この充填は、クリーンルーム、(無菌環境下)で行われることが好ましく、充填後、プラスチック容器を密封する。
ファスジル水溶液を充填したプラスチック容器は、通常、滅菌処理される。滅菌処理は、一般的には湿熱滅菌法により行われる。その他、オーバーキル法、ハーフサイクル法、またはバイオーデン法など、任意の方法で行われうる。
ファスジル水溶液を充填したプラスチック容器は滅菌処理後、外袋に収容され、封入される。前述の通り、プラスチック容器を脱酸素剤とともに、外袋に収容してもよい。これらの手順は、滅菌環境下で行われることが好ましい。また、ファスジル水溶液を充填したプラスチック容器を外袋に収容し、その後、滅菌処理を行ってもよい。
[試験例1]
下記の処方A、B、及びCのファスジル塩酸塩水溶液を調製した。具体的には、所定量の水に塩化ナトリウムを添加して溶解させてから、ファスジル塩酸塩を添加した。
(表1)
処方A〜Cのファスジル水溶液をそれぞれ、ポリエチレン(PE)フィルム製のフィルムバッグ(ゴム栓はイソプレン)とCOPフィルム製のフィルムバッグ(ゴム栓はイソプレン)に充填し、これを、湿熱滅菌処理(115℃、30分)した。具体的には、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ HLM-36LB 株式会社平山製作所製)を用い、115℃で30分間、圧力コントロールを行い、飽和水蒸気中で加熱することによって微生物を殺滅する。その後、シャワー冷却で容器の破損を防止しながら冷やす。さらに、ファスジル水溶液を充填したフィルムバッグを、黄色に着色された遮光性外袋(株式会社細川洋行製)収容した。実施例で用いたポリエチレンフィルムは、ポリエチレン単層フィルムである。COPフィルとは、COPを内層とし、ポリエチレンを外層とする二層フィルムである。
得られたサンプルを、3週間の熱苛酷試験(60℃)に付した。熱苛酷試験の手順や条件は、前述の通りである。加熱滅菌後、熱過酷試験1週間後及び3週間後のファスジル水溶液のpH値をそれぞれ示す。
(表2)
表2に示すように、ポリエチレンフィルム製のフィルムバッグでも、COPフィルム製のフィルムバッグでも、熱苛酷試験3週間にわかってpHは5以上に維持されたが、とりわけ、COPフィルム製のフィルムバッグではpH値の変動が小さく、熱過酷試験3週間後においても約5.7以上に維持することができた。
[試験例2]
下記の処方A、D、E、及びFのファスジル塩酸塩水溶液を調製した。具体的には、所定量の水に、塩化ナトリウムを添加して溶解し、所定のpH緩衝剤(クエン酸とクエン酸ナトリウム)、またはpH調整剤(クエン酸ナトリウムまたは塩酸)を添加してから、さらにファスジル塩酸塩を添加した。
(表3)
上述の試験例1と同様に、これらをポリエチレンフィルム製のフィルムバッグまたはCOPフィルム製のフィルムバッグに充填し、湿熱滅菌し、遮光性外袋に収容した。さらに、得られたサンプルを、試験例1と同様の、3週間の熱苛酷試験(60℃)に付した。加熱滅菌後、熱苛酷試験1週間後及び3週間後のファスジル水溶液のpH値をそれぞれ示す。
(表4)
表4に示すように、いずれにおいてもpHは5以上に維持されているが、とりわけ、pH緩衝剤(クエン酸水和物とクエン酸Na水和物の組み合わせ)が配合された処方Dおよび処方FではpH値の低下が少なく、さらに処方FではpH値を5.7以上に維持できることがわかった。
[試験例3]
下記の処方A、G、及びHのファスジル水溶液を調製した。具体的には、所定量の水に、塩化ナトリウムまたはD-マンニトールを添加して溶解してから、さらにファスジル塩酸塩を添加した。
(表5)
上述の試験例1と同様に、これらをポリエチレンフィルム製のフィルムバッグまたはCOPフィルム製のフィルムバッグに充填し、湿熱滅菌し、遮光性外袋に収容した。さらに、得られたサンプルを、試験例1と同様に、3週間の熱苛酷試験(60℃)に付した。加熱滅菌後、熱過酷試験1週間後及び3週間後のファスジル水溶液のpH値をそれぞれ示す。
(表6)
表6に示すように、いずれにおいてもpHは5以上に維持されているが、特に、COPフィルムのフィルムバッグに充填した場合にpHの低下を抑制しやすく、pH5.7以上に維持できたことがわかる。
[試験例4]
下記の処方A、D、F、及びIのファスジル水溶液を調製した。調製方法は、前述の試験例に記載した通りである。
(表7)
上述の試験例1と同様に、これらをポリエチレンフィルム製のフィルムバッグに充填し、湿熱滅菌した。そしてこのフィルムバッグを、試験例1と同様の遮光性外袋に、エージレス(脱酸素剤)(三菱ガス化学(株)製:登録商標)とともに、またはエージレスなしで収容した。さらに、得られたサンプルを、3週間の熱苛酷試験(60℃)に付した。加熱滅菌後、熱苛酷試験1週間後及び3週間後のファスジル水溶液のpH値をそれぞれ示す。
(表8)
上記したように、いずれにおいても、pHは5以上に維持されているものの、とりわけ、外袋にエージレスとともに収容されたフィルムバッグ中のファスジル水溶液は、そのpHの低下が抑制されていることがわかる。
[試験例5]
前述の処方A、D、F、及びIのファスジル水溶液を、ポリエチレンフィルム製のフィルムバッグに充填し、湿熱滅菌した。これを、遮光性外袋に収容または収容せずに、3週間の光苛酷試験に付した。具体的には、遮光性外袋に収容したバッグと、収容していないフィルムバッグとを、化学光量測定システムに載置する。2000ルクス(D65ランプ)で、短期(1W及び3W)で,曝光量(1week総照度464700lux・hr,総近紫外放射エネルギー75.4W・h/m、及び3weeks総照度1006000lux・hr、総近紫外放射エネルギー161.5W・h/m)で曝光耐性評価をおこなった。総照度と総近紫外放射エネルギーは、ICH Q1B「新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドラインについて」(平成9年5月28日 薬審第422号 各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局審査課長通知)に基づいて算出した。試験期間中のファスジル水溶液の色、およびpH値を以下に示す。
(表9)
表9に示されるように、外袋に収容した場合と比較して、外袋に収容しない場合には、ファスジル水溶液のpHが低下しやすい傾向があり、かつ水溶液に着色が見られた。
[試験例5]定量試験
前述の処方A〜Iのファスジル水溶液を、ポリエチレンフィルム製のフィルムバッグまたはCOPフィルム製のフィルムバッグに充填し、遮光性外袋に、エージレス(脱酸素剤)(三菱ガス化学(株)製:登録商標)とともに、またはエージレスなしで収容し、3週間の熱苛酷試験を行い、3週間後のファスジルの定量を行った。その結果、いずれの試験においても、定量値は95.0〜105.0%の範囲に収まっており、低下は見られなかった。
本発明は、保存期間にわたってpH変動が抑制された、プラスチック容器入りの低濃度ファスジル水溶液を含む注射用医薬組成物を提供する。そのため、投与時に希釈などの用時調製を必要とせず医療現場での利便性が高いRTU(ready−to−use)医薬組成物を提供することが可能となる。
1 フィルムバッグ
2 内部空間
3 ポート
4 ラベル

Claims (5)

  1. プラスチック容器に収容された、0.1〜1.0mg/mlのファスジルまたはそれに相当するファスジル塩と、等張化剤と、水と、を含み、
    3週間の熱苛酷安定性(60℃、なりゆき)の試験期間にわたって、pHが5〜7の範囲に維持される、注射用医薬組成物。
  2. 前記0.1〜1.0mg/mlのファスジルまたはそれに相当するファスジル塩が、0.3〜0.6mg/mlのファスジル塩酸塩である、請求項1に記載の注射用医薬組成物。
  3. pH緩衝剤をさらに含む、請求項1または2に記載の注射用医薬組成物。
  4. 前記プラスチック容器は、環状ポリオレフィンからなる層を有するフィルムバッグを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の注射用医薬組成物。
  5. 前記プラスチック容器は、脱酸素剤とともに外袋に収容される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の注射用医薬組成物。
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CN110327292A (zh) * 2019-08-11 2019-10-15 天津乾丰瑞科技有限公司 一种盐酸法舒地尔注射制剂及其制备方法

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