JP2019116404A - Mwf型ゼオライト - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶格子の歪みや欠陥が少なく、結晶の微細構造と、高次構造の8員環が明瞭に形成され、炭化水素の重合反応において、コーキングが少なく長寿命な重合触媒として使用できる、MWF型ゼオライトを提供する。【解決手段】X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1及び13.8°付近のピーク高さをそれぞれA及びBとしたとき、0.30≦B/A<0.61を満たす、MWF型ゼオライト。【選択図】図1

Description

本発明は、MWF型ゼオライトに関する。
ゼオライトは、吸着剤、乾燥剤、分離剤、触媒、触媒用担体、洗剤助剤、イオン交換剤、排水処理剤、肥料、食品添加物、化粧品添加物などとして用いることができ、中でも触媒用途として有用なものである。
ここで、MWF型ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでMWF構造のゼオライトを意味する。特許文献1において、MWF型ゼオライトの一種であるZSM−25が開示されており、オレフィンのオリゴマー化反応やn−ヘキサンのクラッキングの触媒性能を有することが示されている。また、特許文献2、非特許文献1にあるように、近年になってMWF型ゼオライトの一種であるZSM−25の構造が明らかとなった。該構造は、正六面体結晶系のIm3mの空間群を有し、酸素8員環で構成された細孔を有するゼオライトであると報告されている。
米国特許4,247,416 韓国特許101555149
Peng Guo, Jiho Shin, Alex G. Greenaway, Jung Gi Min, Jie Su, Hyun June Choi, Leifeng Liu, Paul A. Cox, Suk Bong Hong, Paul A. Wright, Xiaodong Zou. "A zeolite family with expanding structural complexity and embedded isoreticular structures" Nature. 2015, 524, 74−78.
近年はシェールガスの開発や天然ガスの開発が進み、炭素数が1や2の炭化水素の生産量が増加している。さらにバイオマスから製造可能なエタノールを原料とし、脱水素反応によりエチレンを得る方法も、固体触媒によって効率よく行える。有用な化学品の製造には、ブテン、ブタジエンなど炭素数が4以上の炭化水素も重要な原料であり、低炭素数の炭化水素から高炭素数の炭化水素を製造する重合反応(特にオリゴマー化反応)への期待が高まっている。
しかしながら、炭化水素のオリゴマー化反応はポリマー状の炭化水素が生成するコーキングが発生し、触媒の活性点を塞ぐため、触媒の寿命が短いという課題がある。コーキングは活性点に炭化水素が長時間存在することでオリゴマー化反応が過剰に進行するために起きる。MWF型ゼオライトの8員環細孔は3.6Åと小さい為、炭化水素分子が細孔内に侵入し、内部に長時間留まってしまうために起きるコーキングが比較的少ない。しかし、8員環構造が不明瞭で欠陥等が含まれている場合は狭い細孔内で長時間炭化水素が留まってしまい、コーキングが発生すると考えられる。特許文献1、特許文献2、非特許文献1等で開示されているMWF型ゼオライトでは、触媒寿命という観点では十分な性能ではない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、結晶格子の歪みや欠陥が少なく、結晶の微細構造と、高次構造の8員環が明瞭に形成され、炭化水素の重合反応において、コーキングが少なく長寿命な重合触媒として使用できる、MWF型ゼオライトを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、MWF型ゼオライトをX線回折測定に供して得られる回折パターンにおいて、特定の回折ピークの強度比が所定値の範囲にある場合に、本願課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1及び13.8°付近のピーク高さをそれぞれA及びBとしたとき、0.30≦B/A<0.61を満たす、MWF型ゼオライト。
〔2〕
X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1°付近のピークの半値幅が0.31以下を満たす、〔1〕に記載のMWF型ゼオライト。
本発明によれば、結晶格子の歪みや欠陥が少なく、結晶の微細構造と、高次構造の8員環が明瞭に形成され、炭化水素の重合反応において、コーキングが少なく長寿命な重合触媒として使用できる、MWF型ゼオライトを提供することができる。
実施例1で得られたMWF型ゼオライトのX線回折(XRD)図である。 本発明の一実施形態に係るMWF型ゼオライトを用いて炭化水素のオリゴマー化反応を行う場合の反応装置構成を例示する概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔X線回折ピーク〕
本実施形態のMWF型ゼオライトは、X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1及び13.8°付近のピーク高さをそれぞれA及びBとしたとき、0.30≦B/A<0.61を満たす。
ここで、X線回折パターンとはゼオライトを粉末用無反射試料板上に均一に固定した表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。
2θ=11.1°付近のピークとは11.1°±0.1°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=13.8°付近のピークとは13.8°±0.2°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
本実施形態のMWF型ゼオライトの25℃におけるX線回折ピークのうち、2θ=11.1及び13.8°付近のピークはそれぞれ、(4 4 0)及び(5 5 0)の回折ピークである。すなわち、これらはそれぞれ平行な結晶格子面による回折であり、(4 4 0)及び(5 5 0)の回折ピークの高さをそれぞれA、Bとした場合、B/Aが大きい場合はより微細な構造が明瞭であることを示している。すなわち、Si−OあるいはAl−O結合に欠損が少なく、結合距離と角度の均一性が高く、炭化水素分子が結晶格子内に侵入するような欠陥や、所望の反応以外に寄与して選択率を低下させるような活性点が発生しにくい為、触媒寿命の低下が少ないとともに高い反応選択率を得られると考えられる。この観点から、B/Aは0.30以上であり、0.35以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましい。
一方、ピーク高さAの値が大きいことは、8員環構造等の高次構造が明瞭である、すなわち、微細な構造が規則正しく配列し、細孔が適切に形成されていることを示唆していると考えられる。細孔構造が適切に欠損なく形成されることで、大きさの異なるガス分子に対するMWF型ゼオライトの分子篩効果が働き、炭化水素分子は細孔内に入りにくくなるため細孔内での過剰なオリゴマー化反応を低減し、コーキングによる触媒寿命低下を抑えられるとともに、触媒反応を触媒の表面のみで行えるようになるため、所望の反応の選択率を向上させることができると考えられる。この観点から、Aの値が相対的に大きいことも重要であり、B/Aは0.61未満であり、0.58以下であることが好ましく、0.56以下であることがより好ましい。
つまり、B/Aの範囲は、微細な構造が明瞭で、Si−OあるいはAl−O結合に欠損が少ないこと、及び高次構造が明瞭で、細孔が適切に形成されていることによりコーキングを低減して触媒寿命を長くすることと所望の反応選択率を向上させる観点から0.30以上0.61未満の範囲である。
なお、上記B/Aの値は、後述する実施例に記載の方法により測定することができ、いずれも、混合ゲルの組成比、水熱合成時の条件(加熱温度や加熱時間)等を後述する好ましい範囲に調整する方法等により、上記範囲に調整することができる。
X線回折により得られるピーク半値幅は、その回折が発生する結晶格子面の結晶性を示しており、狭い方が好ましい。その中でも特に2θ=11.1°付近のピークは8員環構造等の高次構造を示しており、細孔の適切な形成を表していることから、MWF型ゼオライトの細孔での大きなガス分子の遮蔽による分子篩効果に影響を与えるため、その半値幅が狭いことは特に重要である。2θ=11.1°付近のピーク半値幅の範囲は、0.31deg以下であることが好ましく、より好ましくは、0.28deg以下であり、さらに好ましくは、0.25deg以下である。このようなピーク半値幅を有することにより示唆されるMWF型ゼオライトの構造によれば、炭化水素分子が結晶格子内に侵入することなく、過剰なオリゴマー化反応によるコーキング量が少なくなり、所望の反応以外の反応に寄与する活性点となる欠損も無くなることで、所望の反応の選択率を最大限にすることができると発明者は推定している。
なお、上記ピーク半値幅の値は、混合ゲルの組成比、水熱合成時の条件(加熱温度や加熱時間)等を後述する好ましい範囲に調整する方法等により、上記範囲に調整することができる。
〔合成方法〕
本実施形態に係るMWF型ゼオライトの製造方法は、珪素を含むシリカ源、アルミニウムを含むアルミ源、アルカリ金属(M1)及びアルカリ土類金属(M2)から選ばれる少なくとも1種を含むアルカリ金属源、及び水を含有する混合ゲルの調製工程を含むものである。
以下、混合ゲル及びこれに含まれる各成分について説明する。
〔混合ゲルの調製工程〕
混合ゲルの調製工程は、特に限定されないが、例えば、シリカ源、アルミ源、アルカリ金属源、水、及び必要に応じて有機構造規定剤を一時にあるいは多段階で混合する混合工程と、この混合工程で得られた混合物の熟成工程とを含んでもよい。
混合工程は、シリカ源、アルミ源、アルカリ金属源、水、及び必要に応じて有機構造規定剤を含むこれら成分を一時にあるいは多段階で混合することができる。
多段階で混合する際の順序は限定されず、用いる条件により適宜選択すればよい。多段階で混合する際には、撹拌あるいは無撹拌のどちらで行ってもよいが、MWF型ゼオライトの構成要素であり、有機構造規定剤を含有しないと考えられるgis構造を形成させる前駆体を作る観点から、アルカリ金属源、アルミ源、シリカ源を含む混合液を用い、撹拌工程と熟成工程があることが好ましい。アルミ源とシリカ源を混合し、熟成する際には、AlとSiの過度な縮合反応を抑制し、前駆体の形成と均一混合を両立させる観点から、低温にすることが好ましい。具体的には、混合、撹拌、熟成工程の温度は15℃以下であることが好ましい。混合、撹拌、熟成工程の時間は、過度な縮合反応を防げ、十分に均一混合できる観点から、10分以上、24時間以下が好ましく、20分以上、12時間以下がさらに好ましく、30分以上、8時間以下が最も好ましい。
MWF型ゼオライト内部構造であるgis構造の前駆体を形成してから、それらを囲み、有機構造規定剤を含有するltaやpau構造の前駆体を形成させてMWF型ゼオライトの骨格形成を促す観点から、アルカリ金属源、アルミ源、シリカ源を先に混合させて、これらを含む混合液に有機構造規定剤を添加することが好ましい。アルカリ金属源、アルミ源、シリカ源に有機構造規定剤を混合した混合ゲルの混合、撹拌、熟成工程の温度および時間は過度な縮合反応を防げ、十分に均一混合できる観点から、15℃以下、10分以上、24時間以下が好ましく、12℃以下、20分以上、12時間以下がさらに好ましく、10℃以下、45分以上、8時間以下が最も好ましい。以上により、微細構造と長周期構造が適切に形成され、高結晶化することで、B/Aと半値幅が最適化され、耐コーキング性向上による触媒高寿命化と高反応選択性が得られると推定している。
撹拌する際には、一般的に使用される撹拌方法であれば特に限定されないが、具体例としては、翼撹拌、振動撹拌、揺動撹拌、遠心式撹拌などを用いる方法が挙げられる。
撹拌の回転速度は一般的に用いられる撹拌速度であれば特に限定されないが、例えば、1rpm以上2000rpm未満であることが挙げられる。
混合工程の時間は、特に限定されず、混合工程の温度により適宜選択することができるが、例えば、0分を超え、1000時間以下が挙げられる。
混合工程における原料の添加速度は、経済性に優れる観点から、速い方が、生産効率が高く好ましい。一方で、AlとSiの過度な縮合反応を抑制し、前駆体の形成と均一混合を両立させる観点から、添加速度は遅い方が好ましい。これらの観点から、100cc程度の混合ゲルを調整する場合、0.1cc/min以上100cc/min以下であることが好ましく、0.2cc/min以上50cc/min以下であることがさらに好ましく、0.5cc/min以上10cc/min以下であることが最も好ましい。
熟成工程は静置あるいは撹拌のどちらで行ってもよい。
熟成工程で撹拌する際には、一般的に使用される撹拌方法であれば特に限定されないが、具体例としては、翼撹拌、振動撹拌、揺動撹拌、遠心式撹拌などを用いる方法が挙げられる。
撹拌の回転速度は一般的に用いられる撹拌速度であれば特に限定されないが、例えば、1rpm以上2000rpm未満であることが挙げられる。
〔混合ゲル〕
本実施形態における混合ゲルとは、シリカ源、アルミ源、アルカリ金属源、及び水を必須成分として含み、好ましくは有機構造規定剤を含む混合物のことである。
シリカ源とは、該混合ゲルから製造されたゼオライトに含まれる珪素の原料となる該混合ゲル中の成分をいい、アルミ源とは、該混合ゲルから製造されたゼオライトに含まれるアルミニウムの原料となる該混合ゲル中の成分をいい、アルカリ金属源とは、該混合ゲルから製造されたゼオライトに含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の原料となる該混合ゲル中の成分をいう。
〔シリカ源〕
シリカ源としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、具体例としては、無定形シリカ、コロイダルシリカ、湿式法シリカ、乾式法シリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。ここで、無定形アルミノシリケートゲルは、シリカ源であるとともにアルミ源となる。
これらの中でも、結晶化度の高いゼオライトが得られる傾向にあることから、無定形シリカ、コロイダルシリカ、湿式法シリカ、乾式法シリカ、シリカゲルであることが好ましい。同様の観点から、コロイダルシリカ、湿式法シリカ、乾式法シリカであることがより好ましい。
コロイダルシリカとしては、以下に限定されないが、例えば、Ludox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)、Snowtex(登録商標)が挙げられる。
湿式法シリカとしては、以下に限定されないが、例えば、Hi−Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron−Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)、Zeosil(登録商標)、Carplex(登録商標)、Mizukasil(登録商標)、Sylysia(登録商標)、Syloid(登録商標)、Gasil(登録商標)、Silcron(登録商標)、Nipgel(登録商標)、Nipsil(登録商標)が挙げられる。
乾式法シリカは、例えば、HDK(登録商標)、Aerosil(登録商標)、Reolosil(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)、ArcSilica(登録商標)が挙げられる。
〔アルミ源〕
アルミ源としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、具体例としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、金属アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、結晶化度の高いゼオライトが得られる傾向にあることから、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムアルコキシドであることが好ましい。同様の観点からアルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウムであることがより好ましく、アルミン酸ナトリウムであることがさらに好ましい。
〔アルカリ金属源〕
アルカリ金属源におけるアルカリの種類は特に限定されず、任意のアルカリ金属、及び/又は任意のアルカリ土類金属化合物を使用することができる。
アルカリ金属源は、以下に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩などが挙げられる。これらの化合物は、単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
アルカリ金属源として用いるアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、通常Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba等を用いることができる。MWF型骨格の結晶形成がより容易となる観点から、Na、Kであることが好ましく、Naであることがより好ましい。また、アルカリ金属源として用いるアルカリ金属及びアルカリ土類金属は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
具体的には、アルカリ金属源としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、水酸化ルビジウム、酢酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、硝酸ルビジウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸セシウム、硫酸セシウム、硝酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、水酸化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸水素バリウム等が挙げられる。
これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムがより好ましく、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。
〔有機構造規定剤〕
混合ゲルを水熱合成することによってゼオライトを製造する場合の有機構造規定剤は、ゼオライト構造への結晶化を促進する作用をする化合物である。ゼオライトの結晶化においては、必要に応じて有機構造規定剤を用いることができる。MWF型骨格の結晶形成がより容易となる、及び/又は合成時間が短くなり、ゼオライトを製造する際の経済性に優れる点から、有機構造規定剤を含む混合ゲルを用いて合成する方が好ましい。
有機構造規定剤は、所望のMWF型ゼオライトを形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、有機構造規定剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
有機構造規定剤としては、以下に限定されないが、例えば、アミン類、4級アンモニウム塩類、アルコール類、エーテル類、アミド類、アルキル尿素類、アルキルチオ尿素類、シアノアルカン類、ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物類を用いることができ、好ましくは4級アンモニウム塩、より好ましくはテトラアルキルアンモニウム塩、さらに好ましくはテトラエチルアンモニウム塩を用いる。
このような塩は、アニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、以下に限定されないが、例えば、Cl-、Br-、I-などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン及び炭酸水素イオンが含まれる。これらの中で、MWF型骨格の結晶形成がより容易となる観点からハロゲンイオン、水酸化物イオンであることが好ましく、ハロゲンイオンであることがより好ましい。
〔混合ゲルの組成比〕
混合ゲル中のシリカ源とOH-の比は、SiO2に対するOH-のモル比、すなわちOH-/SiO2で表す(OH-はアルカリ金属源、及び/又は有機構造規定剤に含まれる水酸化物イオンである)。本実施形態のMWF型ゼオライトを合成するには、前駆体オリゴマーを合成する条件を制御することが望ましい。
8員環構造が欠損なく形成されることで耐コーキング性向上による触媒高寿命化と高反応選択性が得られる。8員環構造等の高次構造に由来するピークAの強度比が高い、すなわち、8員環構造を明瞭に形成させるためには、gis構造等やその前駆体が崩壊することなく組み上がって高次構造を形成することが望ましい。これらの観点から、成長したゼオライトの再溶解を防ぐことが好ましく、溶解を抑制するためにはOH-が少ない方が好ましい。
一方で、8員環や骨格を構成する微細構造、すなわち、Si−OやAl−Oの結合に欠損や歪みがあると所望とする反応以外の反応に寄与する活性点が増加し、所望の反応選択率が低減する可能性がある。この様な微細構造が欠損や歪みなく形成された場合は、ピークAに帰属する面と平行で、より微細な構造に由来するピークBが相対的に高くなる。Si−OあるいはAl−Oの欠損や結合の歪を発生させないためには、原料となるシリカ源やアルミ源をより溶解させる方が好ましく、これらをより溶解させるためにはOH-が多い方が好ましい。
したがって、耐コーキング性向上による触媒高寿命化と同時に高反応選択性が得られるMWF型ゼオライトはB/Aが特定の範囲にある場合に限られる。発明者が鋭意検討した結果、合成液中に存在するOH-の量は、SiO2に対し、0.10≦OH-/SiO2≦0.53であれば、Si−OあるいはAl−Oの欠損や結合の歪を発生させることなく、B/Aを特定比にすることができるMWF型ゼオライトを合成できる。
OH-/SiO2は上記の範囲の中でも、0.15以上であることがより好ましく、0.18以上であることがさらに好ましい。
OH-/SiO2は上記の範囲の中でも、0.50未満であることがより好ましく、0.40以下であることがさらに好ましい。
混合ゲル中のシリカ源とアルミ源の比は、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO2/Al23として表す。
このSiO2/Al23は、ゼオライトが形成可能な比であれば特に限定されないが、MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる傾向にあることから、5.0以上が好ましく、6.0以上であることがより好ましい。同様の観点から、6.8以上であることがさらに好ましい。
SiO2/Al23は、MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる傾向にあることから、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。同様の観点から、7.8以下であることがさらに好ましい。
混合ゲル中のアルミ源とアルカリ金属源の比は、Al23に対するM12OとM2Oの加算モル比、すなわち(M12O+M2O)/Al23として表す(ここで、M1はアルカリ金属を示し、M2はアルカリ土類金属を示す)。なお、この(M12O+M2O)/Al23は、MWF型骨格の結晶形成がより容易となる観点から、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。同様の観点から、1.7以上であることがさらに好ましい。
(M12O+M2O)/Al23は、MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から3.1未満であることが好ましく、2.7未満がより好ましい。同様の観点から、2.6未満であることがさらに好ましい。
混合ゲル中に有機構造規定剤を含む場合は、混合ゲル中のアルミ源と有機構造規定剤の比は、Al23に対する有機構造規定剤のモル比、すなわちR/Al23として表す(ここでRは有機構造規定剤を示す)。MWF型骨格の結晶形成がより容易となる、及び/又は合成時間が短くなり、ゼオライトを製造する際の経済性に優れる点から、2.0以上であることが好ましく、3.0以上がより好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、4.0以上であることがさらに好ましい。
R/Al23は、合成時間が短くなり、ゼオライトを製造する際の経済性に優れる点から、50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、20以下であることがさらに好ましい。
混合ゲル中のアルミ源と水の比は、Al23に対する水のモル比、すなわちH2O/Al23として表す。混合ゲル中の成分がより均一に分散される傾向にあることから、70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、90以上であることがさらに好ましい。
2O/Al23は合成時間が短くなり、ゼオライトを製造する際の経済性に優れる点から、3000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、500以下であることがさらに好ましい。
以上のとおり、本実施形態に係るMWF型ゼオライトの製造方法は、珪素を含むシリカ源と、アルミニウムを含むアルミ源と、アルカリ金属(M1)及びアルカリ土類金属(M2)から選ばれる少なくとも1種を含むアルカリ金属源と、水と、を含有する混合ゲルの調製工程を含み、前記混合ゲルにおける各成分のモル比を、前記珪素、アルミニウム、アルカリ金属(M1)及びアルカリ土類金属(M2)については各元素の酸化物として算出するとき、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるモル比α、β、γ、δが、5.0≦α≦12、1.3≦β<3.1、70≦γ≦3000及び0.10≦δ≦0.53を満たすことがとりわけ好ましい。本実施形態に係るMWF型ゼオライトは、上述した本実施形態に係るMWF型ゼオライトの製造方法により得られるものであることが特に好ましい。
α=SiO2/Al23 (1)
β=(M12O+M2O)/Al23 (2)
γ=H2O/Al23 (3)
δ=OH-/SiO2 (4)
さらに、本実施形態に係るMWF型ゼオライトの製造方法において、モル比α、β、γ、δが上記範囲を満たし、かつ、混合ゲルが、さらに有機構造規定剤Rを含み、かつ、下記式(5)で表されるモル比εが、2.0≦ε≦50を満たすことが一層好ましい。
ε=R/Al23 (5)
必ずしも混合ゲル中に種結晶を存在させる必要は無いが、予め製造したMWF型ゼオライトを種結晶として混合ゲルに添加して、本実施形態のMWF型ゼオライトを得ることもできる。
〔水熱合成工程〕
本実施形態に係るMWF型ゼオライトの製造方法において、水熱合成温度が100℃〜170℃である水熱合成工程をさらに含むことが好ましい。すなわち、好ましくは、調製工程により得た混合ゲルを所定の温度で、所定の時間、撹拌又は静置状態で保持することにより水熱合成する。
水熱合成の温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、合成時間が短くなり、ゼオライト製造する際の経済性に優れる点から、100℃以上であることが好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、110℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることがさらに好ましい。
有機構造規定剤の分解を抑制できる傾向にあることから、170℃以下であることが好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、155℃以下であることがより好ましく、145℃以下であることがさらに好ましい。
水熱合成の温度は一定でもよいし、段階的に変化させてもよい。
水熱合成の時間は一般的に用いられる時間であれば特に限定されず、水熱合成の温度により適宜選択することができる。
水熱合成の時間は、MWF骨格が形成される点から、3時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましい。MWF型ゼオライトの収量が高まり、経済性に優れる観点から、さらに好ましくは24時間以上である。
有機構造規定剤の分解を抑制できる傾向にあることから、30日以下であることが好ましく、20日以下であることがより好ましい。MWF型骨格と異なる骨格を有するゼオライトの形成が抑制できる観点から、10日以下であることがさらに好ましい。
水熱合成工程において、混合ゲルを入れる容器は一般的に用いられる容器であれば特に限定されないが、所定の温度において容器内の圧力が高まる場合、又は、結晶化を阻害しない気体加圧下とする場合には、耐圧容器に入れ、水熱合成することが好ましい。
耐圧容器は、特に限定されず、例えば、球形状、縦長状、横長状等の各種の形状を用いることができる。
耐圧容器内の混合ゲルを撹拌する際には、耐圧容器を上下方向に及び/又は左右方向に回転させるが、好ましくは上下方向に回転させる。
耐圧容器を上下方向に回転させる場合、その回転速度は一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、1〜50rpmが好ましく、10〜40rpmであることがより好ましい。
水熱合成工程において、混合ゲルを好ましく撹拌するには、耐圧容器として縦長のものを用い、これを上下方向に回転させる方法が挙げられる。
〔分離・乾燥工程〕
水熱合成工程後、生成物である固体と水を含む液体とを分離するが、その分離方法は一般的な方法であれば特に限定されず、濾過、デカンテーション、噴霧乾燥法(回転噴霧、ノズル噴霧及び超音波噴霧など)、回転蒸発器を用いた乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、又は自然乾燥法等を用いることができ、通常は濾過又はデカンテーションにより分離することができる。
分離されたものはそのまま用いても、水、又は所定の溶剤で洗浄しても構わない。必要に応じ、分離されたものを乾燥することができる。
分離されたものを乾燥する温度は、一般的な乾燥する温度であれば特に限定されないが、通常、室温から150℃以下である。
乾燥する際の雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定されないが、通常、空気雰囲気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気が用いられる。
〔焼成工程〕
必要に応じて、MWF型ゼオライトを焼成して用いることができる。焼成する温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、有機構造規定剤を除去したい場合、その残っている割合を少なくできることから、300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。焼成の時間が短くなり、ゼオライトを製造する際の経済性に優れる点から、400℃以上であることがさらに好ましい。
ゼオライトの結晶性が保持される傾向にあることから、550℃未満であることが好ましく、530℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましい。
焼成する時間は、有機構造規定剤が十分除去される時間であれば特に限定されず、焼成の温度により適宜選択することができるが、有機構造規定剤が残っている割合を少なくできる傾向にあることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、3時間以上であることがさらに好ましい。
ゼオライトの結晶性が保持される傾向にあることから、20日以下であることが好ましく、10日以下であることがより好ましく、7日以下であることがさらに好ましい。
焼成の雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定されないが、通常、空気雰囲気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気が用いられる。
〔カチオン交換〕
必要に応じて、MWF型ゼオライトを、所望のカチオン型へカチオン交換を行うことができる。カチオン交換は、以下に限定されないが、例えば、NH4NO3、LiNO3、NaNO3、KNO3、RbNO3、CsNO3、Be(NO32、Ca(NO32、Mg(NO32、Sr(NO32、Ba(NO32など硝酸塩、あるいは前記硝酸塩に含まれる硝酸イオンがハロゲン化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオンである塩、硝酸や塩酸などの酸を用いることができる。
カチオン交換の温度は、一般的なカチオン交換の温度であれば特に限定されないが、通常、室温から100℃以下である。
カチオン交換後のゼオライトを分離する際、その分離方法は一般的な方法であれば特に限定されず、濾過、デカンテーション、噴霧乾燥法(回転噴霧、ノズル噴霧及び超音波噴霧など)、回転蒸発器を用いた乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、又は自然乾燥法等を用いることができ、通常は濾過又はデカンテーションにより分離することができる。
分離されたものはそのまま用いても、水、又は所定の溶剤で洗浄しても構わない。必要に応じ、分離されたものを乾燥することができる。
分離されたものを乾燥する温度は、一般的な乾燥する温度であれば特に限定されないが、通常、室温から150℃以下である。
乾燥する際の雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定されないが、通常、空気雰囲気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気が用いられる。
さらに、アンモニウム型ゼオライトは該ゼオライトを焼成することによりプロトン型ゼオライトに変換することもできる。
(重合触媒)
本実施形態のMWF型ゼオライトは、炭化水素の重合反応における重合触媒として好適に用いることができる。特に、炭化水素のオリゴマー化反応におけるオリゴマー化触媒として用いることが好ましく、エチレンのオリゴマー化反応におけるオリゴマー化触媒として用いることがより好ましい。
〔反応器及び反応条件〕
MWF型ゼオライトを重合触媒として用いた炭化水素の重合反応に使用できる反応装置としては、特に限定されないが、例えば、原料タンク、原料を移送するポンプ、原料が供給されて反応を行うための反応器等を備えるものとすることができる。反応器としては、特に限定されないが、例えば、固定床型反応器、撹拌型反応器等を用いることができる。本実施形態における炭化水素の重合反応に用いられる反応装置の一例の概略図を図2に示す。炭化水素の重合反応は、例えば、原料タンク1に入っている原料を、ポンプ2により固定床型反応器3に供給し、固定床型反応器3内で原料と触媒とを接触させて原料炭化水素を重合することで行なうことができる。その後、反応器と、重合された炭化水素や高沸点成分等を分離する装置、及び必要に応じてその他の装置等を備えた設備において重合された炭化水素や高沸点成分から所望の重合された炭化水素を除去することができる。その他の装置等としては、特に限定されないが、例えば、圧縮機及び熱交換器等の重合された炭化水素や高沸点成分を含むガスを圧縮して液化する装置、放散塔や高沸点物分離塔等不純物を除去する装置等が挙げられる。なお、反応器の大きさなどは精製する重合された炭化水素や高沸点成分の量によって適宜選択すればよい。
固定床型反応器を用いる場合の反応温度は、150℃以上450℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましく、250℃以上350℃以下がさらに好ましい。温度が上記範囲内であることにより、適度な反応活性が得られ、安定した炭化水素の重合反応が行える傾向にある。
反応圧力は、0.01〜0.4MPa/Gが好ましく、0.01〜0.2MPa/Gがより好ましい。圧力が上記範囲内であることにより、重合された炭化水素の収率がより向上する傾向にある。
原料ガスと触媒との接触時間は0.5〜20g・sec/cm3が好ましい。接触時間が上記範囲内であることにより、重合された炭化水素の収率がより向上する傾向にある。
以下に実施例等を挙げて本実施形態を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本実施形態として実施することができ、かかる変更は本実施形態の所定の要件を満たす限りにおいて、本発明の範囲に包含される。
〔結晶構造解析〕
結晶構造解析は以下の手順で行った。
(1)各実施例及び比較例で得られた乾燥物(MWF型ゼオライト)を試料として、メノウ乳鉢で粉砕した。
(2)上記(1)の試料を粉末用無反射試料板上に均一に固定し、下記条件で結晶構造解析を行い、所定のピーク強度及び半値幅を測定した。
X線回折装置(XRD):リガク社製粉末X線回折装置「RINT2500型」(商品名)
X線源:Cu管球(40kV、200mA)
測定温度:25℃
測定範囲:5〜60°(0.02°/step)
測定速度:0.2°/分
スリット幅(散乱、発散、受光):1°、1°、0.15mm
〔実施例1〕
(MWF型ゼオライトの製造)
水67.85gと50質量%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH、和光純薬工業株式会社製)1.46gとアルミン酸ナトリウム(NaAlO2、和光純薬工業株式会社製)1.64gを添加して溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を10℃で撹拌しながらアエロジル(アエロジル300、日本アエロジル社製)4.33gを1cc/minの速度で添加した。この溶液を10℃で1時間撹拌した後、有機構造規定剤としてテトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)11.15gを添加して混合し、10℃で3時間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=SiO2/Al23=7.2、β=Na2O/Al23=1.9、γ=H2O/Al23=381、δ=OH-/SiO2=0.25、ε=R/Al23=5.3であった。混合ゲルをフッ素樹脂内筒の入った200mLのステンレス製オートクレーブに仕込み、上下撹拌回転数20rpmで保持しながら125℃で7日間水熱合成し、生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。
得られたゼオライトのXRDスペクトルを図1に示す。スペクトルより、得られたゼオライトがMWF型ゼオライトであることを確認した。さらに、他のゼオライトや非晶質シリカアルミナなどに由来するピークが見られなかったことから、高純度のMWF型ゼオライトであると評価した。XRDパターンから得られるピーク強度比については、B/A=0.55であり、ピーク半値幅については、Aは0.14deg、Bは0.24degであった。
(固定床触媒の製造)
得られたMWF型ゼオライト5gを0.1Nの塩化アンモニウム水溶液1000mLに入れ、60℃、100rpmで3時間撹拌した。生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状の触媒前駆体を得た。
得られた触媒前駆体の一部および塩化アンモニウム水溶液で処理する前のMWF型ゼオライトをそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液あるいは王水で熱溶解し、適宜希釈した液を用いてICP−発光分光分析(セイコーインスツル株式会社製SPS3520UV−DD:装置名)によってゼオライト中のナトリウム濃度を測定したところ、それぞれ0.2質量%および2.1質量%であった。
このナトリウム量を減らした触媒前駆体の粉末を40MPaで圧縮成形し、1mm以上3mm以下の粒子としたものを、後述するエチレンのオリゴマー化反応用の固定床触媒とした。
〔エチレンのオリゴマー化反応〕
エチレンオリゴマーの製造装置として、図2に示されるものと同様の構成を有する装置を使用した。すなわち、原料タンク1にポンプ2を介して接続された固定床型反応器3を備える装置を使用した。固定床型反応器3としては、3/8インチ、長さ10cmのSUS306製の管を用いた。この固定床型反応器3に実施例1の固定床触媒1gを入れ、両端にガラスウールを詰めて固定した。原料のエチレンはHeでエチレン:He=1:9になるように希釈して原料タンク1に供給した後、ポンプ2により、固定床型反応器3の上部から15mL/minで供給した。固定床型反応器3の内部圧力は常圧、反応温度は350℃としてエチレンのオリゴマー化反応を行った。
〔生成物の分析〕
反応により得られた生成物の一部をガスクロマトグラフィーに導入することで、生成物の組成分析を行った。当該分析には、HEWLETT PACKARD社製の「HP6890」(商品名)を用いた。カラムとしては、AGIRENT社製の「HP−AL/S 19091P−S12」(商品名)[内径0.32mm、長さ25m]を用いた。サンプリングラインの温度は150℃に保持し、サンプルガス量は1mLとした。キャリアガスはHeとし、カラム流量は30mL/分とした。カラムの昇温プログラムは、分析開始から4分間は90℃に保持、その後10℃/分で200℃まで昇温した後、200℃で15分保持した。
反応開始後、1時間経過した時の生成物は、ブテン類(C4=:イソブテン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン)の選択率が83.2%、C5以上の選択率が4.1%、C3類の選択率が2.2%、エチレンの転化率が18.2%であった。さらに反応開始から12時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が82.8%、C5以上の選択率が5.2%、C3類の選択率が1.9%、エチレンの転化率が17.8%であった。
〔実施例2〕
水72.05gと50質量%水酸化ナトリウム水溶液4.75gとアルミニウムイソプロポキシド(C9213Al、アルドリッチ社製)6.90gを添加して溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を10℃で撹拌しながらコロイダルシリカ(Nalco2326、Nalco社製)48.7gを1cc/minの速度で添加した。この溶液を10℃で1時間撹拌した後、有機構造規定剤としてテトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)17.60gと30質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京化成工業株式会社製)1.35gを添加して混合し、10℃で4時間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=SiO2/Al23=7.2、β=Na2O/Al23=1.75、γ=H2O/Al23=384、δ=OH-/SiO2=0.53、ε=R/Al23=5.3であった。実施例1と同様に水熱合成、濾過、乾燥してゼオライトを合成した。得られたMWF型ゼオライトのXRDパターンから、B/A=0.35であり、ピーク半値幅については、Aは0.16deg、Bは0.19degであった。
得られたゼオライトを実施例1と同様に硝酸アンモニウム水溶液で処理、乾燥し、粉末状の触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体のNa量を実施例1と同様に測定したところ、0.2質量%であった。
この触媒前駆体を実施例1と同様に圧縮成型して固定床触媒を作成し、実施例1と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行った結果、反応開始後、1時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が82.6%、C5以上の選択率が3.9%、C3類の選択率が2.3%、エチレンの転化率が15.6%であった。さらに反応開始から12時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が82.6%、C5以上の選択率が3.2%、C3類の選択率が1.7%、エチレンの転化率が13.9%であった。
〔比較例1〕
水69.76gと水酸化ナトリウム(NaOH、和光純薬工業株式会社製)0.85gとアルミン酸ナトリウム(NaAlO2、和光純薬工業株式会社製)1.64gを添加して溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を28℃で撹拌しながらコロイダルシリカ(Ludox AS−40、Grace社製)13.53gを1cc/minの速度で添加した。この溶液を28℃で1時間撹拌した後、有機構造規定剤としてテトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)39.36gを添加して混合し、28℃で3時間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=SiO2/Al23=9.0、β=Na2O/Al23=3.1、γ=H2O/Al23=428、δ=OH-/SiO2=0.47、ε=R/Al23=18.7であった。混合ゲルを撹拌しながら125℃で7日間水熱合成し、生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。
得られたMWF型ゼオライトのXRDパターンから、B/A=0.88であり、ピーク半値幅については、Aは0.45deg、Bは0.36degであった。
得られたゼオライトを実施例1と同様に硝酸アンモニウム水溶液で処理、乾燥し、粉末状の触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体のNa量を実施例1と同様に測定したところ、0.2質量%であった。
この触媒前駆体を実施例1と同様に圧縮成型して固定床触媒を作成し、実施例1と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行った結果、反応開始後、1時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が78.8%、C5以上の選択率が4.3%、C3類の選択率が2.1%、エチレンの転化率が12.2%であった。さらに反応開始から12時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が72.6%、C5以上の選択率が4.2%、C3類の選択率が2.3%、エチレンの転化率が2.6%であった。
〔比較例2〕
水20.00gと水酸化ナトリウム(NaOH、和光純薬工業株式会社製)1.52gと有機構造規定剤としてテトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)11.15gを混合したものと、水42.00gと水酸化アルミニウム(Al(OH)3、Aldrich社製)1.94gとコロイダルシリカ(Ludox AS−40、Grace社製)10.67gを混合したものを混合し、28℃で24時間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=SiO2/Al23=7.1、β=Na2O/Al23=1.9、γ=H2O/Al23=380、δ=OH-/SiO2=0.54、ε=R/Al23=5.3であった。混合ゲルを撹拌しながら125℃で7日間水熱合成し、生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。
得られたMWF型ゼオライトのXRDパターンから、B/A=0.62であり、ピーク半値幅については、Aは0.21deg、Bは0.22degであった。
得られたゼオライトを実施例1と同様に硝酸アンモニウム水溶液で処理、乾燥し、粉末状の触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体のNa量を実施例1と同様に測定したところ、0.2質量%であった。
この触媒前駆体を実施例1と同様に圧縮成型して固定床触媒を作成し、実施例1と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行った結果、反応開始後、1時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が79.2%、C5以上の選択率が3.3%、C3類の選択率が2.6%、エチレンの転化率が15.3%であった。さらに反応開始から12時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が80.1%、C5以上の選択率が3.2%、C3類の選択率が2.1%、エチレンの転化率が5.8%であった。
〔比較例3〕
水62.02gとアルミン酸ナトリウム1.64gを添加して溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を10℃で撹拌しながらコロイダルシリカ(Ludox AS−40、Grace社製)10.67gを1cc/minの速度で添加した。この溶液を10℃で1時間撹拌した後、有機構造規定剤としてテトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)11.15gを添加して混合し、10℃で3時間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルの組成は、α=SiO2/Al23=7.1、β=Na2O/Al23=1.1、γ=H2O/Al23=380、δ=OH-/SiO2=0.32、ε=R/Al23=5.3であった。混合ゲルをフッ素樹脂内筒の入った200mLのステンレス製オートクレーブに仕込み、上下撹拌回転数20rpmで保持しながら130℃で8日間水熱合成し、生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。
得られたゼオライトのXRDスペクトルを図1に示す。スペクトルより、得られたゼオライトがMWF型ゼオライトであることを確認した。さらに、他のゼオライトや非晶質シリカアルミナなどに由来するピークが見られなかったことから、高純度のMWF型ゼオライトであると評価した。XRDパターンから得られるピーク強度比については、B/A=0.29であり、ピーク半値幅については、Aは0.28deg、Bは0.31degであった。
得られたゼオライトを実施例1と同様に硝酸アンモニウム水溶液で処理、乾燥し、粉末状の触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体のNa量を実施例1と同様に測定したところ、0.1質量%であった。
この触媒前駆体を実施例1と同様に圧縮成型して固定床触媒を作成し、実施例1と同様にエチレンのオリゴマー化反応を行った結果、反応開始後、1時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が65.8%、C5以上の選択率が4.7%、C3類の選択率が8.6%、エチレンの転化率が6.7%であった。さらに反応開始から12時間経過した時の生成物は、ブテン類の選択率が63.8%、C5以上の選択率が4.2%、C3類の選択率が9.1%、エチレンの転化率が2.7%であった。
表1中におけるα〜εは次のモル比を表す。
α=SiO2/Al23
β=(M12O+M2O)/Al23
γ=H2O/Al23
δ=OH-/SiO2
ε=R/Al23 (Rは有機構造規定剤を表す。)
また、表1中におけるB/Aは次のように求められる。
B/A=(2θ=13.8°付近のピーク強度)/(2θ=11.1°付近のピーク強度)
本発明に係るMWF型ゼオライトは、炭化水素のオリゴマー化反応触媒、各種ガス及び液などの分離剤、燃料電池などの電解質膜、各種樹脂成形体のフィラー、メンブランリアクター、あるいはハイドロクラッキング、アルキレーションなどの触媒、金属、金属酸化物などの担持用触媒担体、吸着剤、乾燥剤、洗剤助剤、イオン交換剤、排水処理剤、肥料、食品添加物、化粧品添加物等として産業上利用の可能性を有する。

Claims (2)

  1. X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1及び13.8°付近のピーク高さをそれぞれA及びBとしたとき、0.30≦B/A<0.61を満たす、MWF型ゼオライト。
  2. X線回折により得られるピークにおいて、2θ=11.1°付近のピークの半値幅が0.31以下を満たす、請求項1に記載のMWF型ゼオライト。
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