以下、本発明の運搬車両の実施の形態を図面を用いて説明する。本実施の形態においては、運搬車両の一例として、鉱山用ダンプトラックを例に挙げて説明する。なお、本明細書で述べる前後左右の方向は、運搬車両に搭乗したオペレータから見た方向をいう。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の運搬車両の第1の実施の形態を適用した鉱山用のダンプトラックの構成を図1を用いて説明する。図1は本発明の運搬車両の第1の実施の形態を適用した鉱山用ダンプトラックを示す側面図である。
図1において、運搬車両としての鉱山用のダンプトラック1は、鉱山で採掘した鉱石や土砂等の積荷Wを運搬するものであり、車体2と、車体2の前部及び後部における左右両側にそれぞれ回転可能に設けられた車輪としての前輪3及び後輪4と、車体2上に傾転(起伏)可能に搭載され、積荷Wを積載する荷台5とで大略構成されている。前輪3は、オペレータによって操舵(ステアリング操作)される操舵輪である。後輪4は、走行モータ7によって回転駆動される駆動輪である。走行モータ7は、例えば、電動モータである。車体2と荷台5との間には、左右一対のホイストシリンダ9が設けられている。ホイストシリンダ9は、例えば、伸縮する油圧シリンダである。ホイストシリンダ9の伸長により、荷台5が車体2に対して起伏して積荷Wが放土される。
車体2は、前後方向(図1の左右方向)に延びる支持構造体である車体フレーム11と、車体フレーム11の前部に配置された建屋12と、車体フレーム11及び建屋12により支持されたキャブベッド13と、キャブベッド13上に設置されたキャブ14とを備えている。建屋12は、エンジン81(後述の図7参照)やメイン油圧ポンプ82(後述の図7参照)、発電機(図示せず)等の各種装置を収容する機械室を画成している。メイン油圧ポンプ82は、ホイストシリンダ9等の油圧アクチュエータを駆動する圧油を供給する油圧源である。発電機は、走行モータ7の駆動電力等を発電するものである。キャブ14内には、アクセルペダル、前輪3を操舵するステアリングホイール、荷台5の傾転を操作する荷台操作部等のオペレータが操作する各種の操作機器(いずれも図示せず)が配置されている。
車体フレーム11の前部と前輪3との間には、フロントサスペンション30が設けられている。フロントサスペンション30は、その詳細構成は後述するが、車体2及び荷台5を支持すると同時に、走行時に路面から受ける振動を吸収して車体2への衝撃を緩和する左右一対のフロントサスペンションシリンダ33を備えている。車体フレーム11の後部と後輪4との間には、リアサスペンション40が設けられている。リアサスペンション40は、その詳細構成は後述するが、車体2及び荷台5を支持すると同時に、走行時に路面から受ける振動を吸収して車体2への衝撃を緩和する左右一対のリアサスペンションシリンダ43を備えている。
左右のフロントサスペンションシリンダ33には、それぞれフロントサスペンションシリンダ33内の圧力を検出する第1の圧力センサ16が設けられている。左右のリアサスペンションシリンダ43には、それぞれリアサスペンションシリンダ43内の圧力を検出する第2の圧力センサ17が設けられている。キャブ14内には、車体2の前後方向の水平方向に対する傾斜角度を検出する傾斜センサ18(後述の図8参照)が設けられている。各センサ16、17、18の検出信号は、後述のコントローラ100(後述の図8参照)へ出力される。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態を適用した鉱山用ダンプトラックのサスペンションの構成及びその周辺構造を図2乃至図4を用いて説明する。図2は図1に示す鉱山用ダンプトラックの前輪側のサスペンション及びその周辺構造を車両前方から見た状態で示す斜視図、図3は図1に示す鉱山用ダンプトラックの前輪側のサスペンション及びその周辺構造を示す正面図、図4は図1に示す鉱山用ダンプトラックの後輪側のサスペンション及びその周辺構造を示す背面図である。なお、図2乃至図4において、図1に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図2乃至図4において、車体フレーム11は、車体2の前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム部21と、両サイドフレーム部21の前端部間を接続するフロントフレーム部22と、両サイドフレーム部21の後端部間を接続するリアフレーム部23と、各サイドフレーム部21における前部側から上方へ突出する左右一対の支柱部24と、車両の幅方向に延在して両支柱部24の上端部に支持される横梁部25とを含んで構成されている。横梁部25は、建屋12(図1参照)と共にキャブベッド13(図1参照)を支持するものである。両サイドフレーム部21の前端部の下面側にはそれぞれ、後述のトルクチューブ31を取り付けるブラケット部21aが設けられている。左右の支柱部24の上端部にはそれぞれ、左右のフロントサスペンションシリンダ33の上端部側を連結するためのマウント部24aが設けられている。リアフレーム部23には、左右のリアサスペンションシリンダ43の上端部側を連結するためのマウント部23aが設けられている。
左右の前輪3は、図2及び図3に示すように、フロントサスペンション30を介して車体フレーム11に懸架されている。フロントサスペンション30は、例えば、左右の前輪3が独立して動作可能な独立懸架式のものである。フロントサスペンション30は、車体フレーム11に対してトルクチューブ31を介して上下動可能に前輪3を支持するサスペンション支持部材としての左右のサスペンションアーム32と、サスペンションアーム32と車体フレーム11の支柱部24の上端部とに架け渡された左右のフロントサスペンションシリンダ33とを含んで構成されている。トルクチューブ31は、例えば、車幅方向に沿って延びる円筒形の高剛性部材で構成されており、両サイドフレーム部21のブラケット部21aに両端部がそれぞれ固定されている。
サスペンションアーム32は、例えば、トルクチューブ31に揺動可能に取り付けられた本体部34と、本体部34から側方側へ突出するアーム部35とを有している。アーム部35の上面側には、フロントサスペンションシリンダ33を連結するためのマウント部36が設けられている。アーム部35の先端部には、スピンドル37がキングピン38を介して上下方向を軸として回動可能に取り付けられている。スピンドル37には、前輪3が回動可能に取り付けられている。
左右のフロントサスペンションシリンダ33は、その下端部が左右のサスペンションアーム32のマウント部36に後述の軸受51(後述の図6参照)を介して回動可能に連結されていると共に、その上端部が車体フレーム11の支柱部24に設けたマウント部24aに後述の軸受51を介して回動可能に連結されている。フロントサスペンションシリンダ33は、例えば、内部にガスと圧縮性オイルとを封入したハイドロニューマチック式のシリンダである。フロントサスペンションシリンダ33は、圧縮荷重が負荷されると、内部のガスと圧縮性オイルが圧縮され、内圧が上昇する。
左右の後輪4は、図4に示すように、リアサスペンション40を介して車体フレーム11に懸架されている。リアサスペンション40は、例えば、左右の後輪4を1本の車軸で支持する車軸懸架式のものである。リアサスペンション40は、例えば車軸を構成する筒状体のリジッドアクスル41と、リジッドアクスル41と車体フレーム11とに接続されたラテラルリンク42と、リジッドアクスル41と車体フレーム11のリアフレーム部23とに架け渡された左右のリアサスペンションシリンダ43とを有している。
リジッドアクスル41は、車体フレーム11に対して上下動可能に後輪4を支持するサスペンション支持部材として機能するものであり、前方へ突出するアーム部41a(図1参照)を有している。アーム部41aは、車体フレーム11の前端部に設けられたジョイント部(図示せず)に対して揺動可能に連結されている。リジッドアクスル41の中央部後側には、リアサスペンションシリンダ43を連結するための左右一対のマウント部41bが設けられている。リジッドアクスル41内には、後輪4を駆動する走行モータ7(図1参照)が配置されている。リジッドアクスル41は、ラテラルリンク42により横方向移動が規制される。
リアサスペンションシリンダ43は、その下端部がリジッドアクスル41の左右のマウント部41bに後述の軸受51を介して回動可能に連結されていると共に、その上端部が車体フレーム11のリアフレーム部23に設けられたマウント部23aに後述の軸受51を介して回動可能に連結されている。リアサスペンションシリンダ43は、例えば、フロントサスペンションシリンダ33と同様に、ハイドロニューマチック式のシリンダである。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態におけるサスペンションシリンダの連結構造を図5及び図6を用いて説明する。図5は図2に示す鉱山用ダンプトラックの前輪側のサスペンションの一部構成であるサスペンションシリンダ及びサスペンションアームを拡大して示す側面図、図6は図5に示す鉱山用ダンプトラックの前輪側のサスペンションシリンダとサスペンションアームの連結構造をVI−VI矢視から見た断面図である。図6中、太い矢印は、グリースの流れを示している。なお、図5及び図6において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
ここでは、フロントサスペンションシリンダ33とサスペンションアーム32との連結構造を例に挙げて説明する。なお、フロントサスペンションシリンダ33と車体フレーム11との連結構造、リアサスペンションシリンダ43とリジッドアクスル41との連結構造、リアサスペンションシリンダ43と車体フレーム11との連結構造は、フロントサスペンションシリンダ33とサスペンションアーム32との連結構造と同様の構造であるので、その説明を省略する。
図5において、フロントサスペンションシリンダ33は、円筒状のシリンダチューブ45と、シリンダチューブ45内に摺動可能に配置されたピストン(図示せず)と、一端側がピストンに固定され他端側がシリンダチューブ45外に突出したピストンロッド46とを含んで構成されている。ピストンロッド46の先端部には、図5及び図6に示すように、サスペンションアーム32と連結するためのロッド側クレビス47が設けられている。ロッド側クレビス47には、ピン孔47aが設けられている。シリンダチューブ45のピストンロッド46とは反対側の端部には、図5に示すように、車体フレーム11のマウント部24aと連結するためのチューブ側クレビス48が設けられている。チューブ側クレビス48には、ピン孔48aが設けられている。
サスペンションアーム32のマウント部36には、図6に示すように、軸受取付孔36aが設けられている。マウント部36の軸受取付孔36aには、軸受51が圧入により取り付けられている。軸受51は、例えば、球面滑り軸受であり、外輪52と内輪53とが球面接触して摺動することで回動自在に連結するものである。
フロントサスペンションシリンダ33のロッド側クレビス47の間にサスペンションアーム32のマウント部36が配置されており、ロッド側クレビス47のピン孔47aに円柱状の連結ピン54が挿通された状態で、マウント部36に取り付けた軸受51の内輪53に連結ピン54が嵌め合わされている。連結ピン54は、フロントサスペンションシリンダ33のロッド側クレビス47に取付プレート56及びボルト57により固定されている。フロントサスペンションシリンダ33のロッド側クレビス47と軸受51と間隙には、スペーサ58が配置されている。このような構造により、フロントサスペンションシリンダ33の下端部側は、サスペンションアーム32に対して回動可能に連結された状態となっている。
軸受51には、摺動部に生じる摩擦や摩耗の低減、摺動熱の除去、摺動部に対する防塵や防錆等を目的として、潤滑剤であるグリースが供給(給脂)されている。以下に、軸受51の摺動部に給脂するための具体的な構造を説明する。
軸受51の軸受外径面及び軸受内径面には、それぞれ第1の油溝52a及び第2の油溝53aがそれぞれ周方向に設けられている。外輪52には、滑り接触面と第1の油溝52aとをつなぐ第1の油穴52bが径方向に設けられている。内輪53には、滑り接触面と第2の油溝53aとをつなぐ第2の油穴53bが径方向に設けられている。連結ピン54には、軸受51にグリースを供給するための給脂孔54aが設けられている。給脂孔54aは、連結ピン54の軸方向一端面側に開口部を有すると共に連結ピン54の外周面側に開口部を有しており、軸受51の内輪53の第2の油溝53aとつながっている。給脂孔54aは、連結ピン54の軸方向一端面側の開口部に後述の給脂ホース75(後述の図7参照)が接続可能である。取付プレート56には、連結ピン54の給脂孔54aに給脂ホース75を接続するための貫通孔56aが設けられている。
このような給脂構造により、給脂ホース75を介してフロントサスペンションシリンダ33とサスペンションアーム32との連結部分に供給されたグリースは、連結ピン54の給脂孔54a、軸受51の内輪53の第2の油溝53a、第2の油穴53bを順に経由して滑り接触面に供給される。滑り接触面に供給されたグリースは、軸受51の外輪52の第1の油穴52bを経由して第1の油溝52aに供給される。軸受51へのグリースの供給は、後述の給脂装置70(後述の図7参照)により自動的に行われる。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態の一部を構成する給脂装置の構成を図7を用いて説明する。図7は本発明の運搬車両の第1の実施の形態の一部を構成する給脂装置を示す概略構成図である。なお、図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
給脂装置70は、グリースを貯留するグリースタンク71と、グリースタンク71内のグリースを吸い込んで軸受51(フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部分)に送出する給脂ポンプ72と、給脂ポンプ72を駆動する給脂モータ73とを備えている。給脂ポンプ72と給脂モータ73は、回転軸74を介して連結されており、給脂モータ73の動力が給脂ポンプ72に伝達される。給脂ポンプ72とフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部分とは、給脂ホース75を介して接続されている。給脂ホース75の中途部分には、分岐ホース76の一端部が接続されており、分岐ホース76の他端部はグリースタンク71に接続されている。分岐ホース76には、リリーフ弁77が設けられている。リリーフ弁77は、給脂ポンプ72から送出されたグリースが設定圧以上になった場合に開弁してグリースをグリースタンク71に逃がすものである。給脂モータ73は、例えば、油圧モータであり、油圧源としてのメイン油圧ポンプ82から供給される圧油により駆動する。
メイン油圧ポンプ82は、エンジン81により駆動され、作動油タンク83内の作動油を吸い込み、弁装置84を介してホイストシリンダ9を含む油圧アクチュエータ群85に圧油を供給するものである。メイン油圧ポンプ82と弁装置84は、吐出管路86を介して接続されている。
メイン油圧ポンプ82と給脂モータ73は、吐出管路86から分岐した供給管路78を介して接続されている。供給管路78には、メイン油圧ポンプ82から給脂モータ73への圧油の供給とその供給の遮断とを切り換える給脂制御弁79が設けられている。給脂制御弁79は、例えば、供給管路78の連通を遮断する遮断位置X(図7の下側位置)と供給管路78を連通する連通位置Y(図7の上側位置)とを切り換える電磁切換弁である。給脂制御弁79は、一方側にばね79aを、他方側にソレノイド駆動部79bを有している。給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bは、コントローラ100に電気的に接続されている。
コントローラ100は、給脂装置70を制御するものであり、本実施の形態においては、給脂制御弁79の弁位置の切換えを制御する。コントローラ100が給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bへオン信号(電流)を出力すると、ソレノイド駆動部79bが励磁されることで、給脂制御弁79の弁位置がばね79aの付勢力に抗して電磁力により遮断位置Xから連通位置Yに切り換わる。これにより、メイン油圧ポンプ82から吐出された圧油が給脂制御弁79を介して給脂モータ73へ供給される。一方、コントローラ100がオン信号からオフ信号(電流をOFF)に切り換えると、電磁力が消失しばね79aの付勢力により弁位置が連通位置Yから遮断位置Xへと切り換わる。これにより、メイン油圧ポンプ82から給脂モータ73への圧油の供給が給脂制御弁79よって遮断される。
ところで、鉱山用ダンプトラック1では、積荷Wの重量及び車体の重量が非常に重く、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部分の軸受51に負荷される垂直荷重が非常に大きくなる。また、空荷状態と積載状態とを頻繁に繰り返すため、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43にかかる荷重変動が非常に大きく、軸受51には疲労強度が要求される。そのため、軸受51に対して確実且つ十分に給脂する必要がある。軸受51にグリースを効率良く十分に行き渡らせるためには、軸受51の摺動部の垂直抗力が相対的に小さい状態が望ましい。そこで、本実施の形態に係るコントローラ100は、軸受51の摺動部の垂直抗力が相対的に小さいと想定される車両状態のときに、自動的に給脂を行うように制御するものである。具体的には、車両が空荷状態の場合、積載状態のときよりも、軸受51の摺動部の垂直抗力が小さい。また、凹凸の激しい路面を走行する場合、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が変動して増大するタイミングが存在する。この圧力の増大時に軸受51の摺動部の垂直抗力が大きくなる。それに対して、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態の場合、変動状態のときよりも、当該摺動部の垂直抗力は小さくなる。そこで、車両が空荷状態かつフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態のときに、軸受51に給脂するように制御するものである。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラの機能を図8を用いて説明する。図8は図7に示す本発明の運搬車両の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラの機能を示すブロック図である。なお、図8において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態のコントローラ100は、図8に示すように、第1の圧力センサ16が検出したフロントサスペンションシリンダ33内の圧力検出値P1、第2の圧力センサ17が検出したリアサスペンションシリンダ43内の圧力検出値P2、傾斜センサ18が検出した傾斜角度検出値Iをそれぞれ取り込む。コントローラ100は、所定の演算を行う演算部及び所定の判定を行う判定部と、各種の閾値を予め記憶すると共に各センサからの検出値を格納する記憶部101と、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1を計測する第1計時部102と、給脂装置70の駆動時間T2を計測する第2計時部103と、判定部の判定結果に基づき給脂装置70を制御する制御信号を出力する給脂指令部111とを備えている。
演算部は、荷台5に積載された積荷Wの積載荷重を演算する積載荷重演算部104と、第1の圧力センサ16及び第2の圧力センサ17が検出したある時間領域内の圧力検出値の標準偏差を演算する圧力標準偏差演算部105とを備えている。
積載荷重演算部104は、例えば、第1の圧力センサ16からの圧力検出値P1及び第2の圧力センサ17からの圧力検出値P2に基づき、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43上の積荷Wの全体荷重、及び、フロントサスペンションシリンダ33上の荷重とリアサスペンションシリンダ43上の荷重との前後の荷重割合を演算する。さらに、演算結果の前後の荷重割合及び傾斜センサ18からの傾斜角度検出値Iに基づき、演算結果の全体荷重を補正する。このように、積載荷重演算部104は、第1の圧力センサ16及び第2の圧力センサ17からの圧力検出値P1、P2と傾斜センサ18からの傾斜角度検出値Iに基づき、荷台5に積載された積荷Wの積載荷重Lを演算する。積載荷重の詳細な演算方法として、公知の方法(例えば、特開2010−190617等)を用いることが可能である。
圧力標準偏差演算部105は、例えば、記憶部101に格納された第1の圧力センサ16及び第2の圧力センサ17の検出したフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力検出値P1、P2の波形データのうち、直近のある時間領域△t内の圧力検出値P1、P2の波形データをそれぞれ抽出し、その時間領域△tにおける圧力検出値P1、P2の標準偏差SD(同時間区間の平均値からのばらつき)をそれぞれ演算する。時間領域△tは、例えば、サンプリング周波数を10Hzとした場合、10秒とする。この場合、標準偏差SDの演算に用いるデータは101個となり、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力の安定状態を判定するのに十分なデータ量である。すなわち、サンプリングデータとして100個程度のデータを確保できるように、サンプリング周波数及びデータを抽出する時間領域を設定する。
判定処理部は、車両が空荷状態か否かを判定する空荷判定部107と、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力が安定状態か否かを判定するサスペンション状態判定部108と、軸受51への今回の給脂間隔が短いか否かを判定する給脂間隔判定部109と有している。空荷判定部107は、積載荷重演算部104が演算した積載荷重Lを記憶部101に予め記憶されている積載閾値Ltと比較することで、車両が空荷状態か否か(積載状態か)を判定する。サスペンション状態判定部108は、標準偏差演算部105が演算した標準偏差SDを記憶部101に予め記憶されている標準偏差閾値Dtと比較することで、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力が安定状態か否か(変動状態か)を判定する。給脂間隔判定部109は、第1計時部102が計測した経過時間T1を記憶部101に予め記憶されている第1の時間閾値Tt1と比較することで、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第1の時間閾値Tt1以上か否かを判定する。
記憶部101には、積載閾値Ltが予め記憶されている。積載閾値Ltとして、例えば、ダンプトラックの定格積載量の約80%に設定する。
記憶部101には、標準偏差閾値Dtが予め記憶されている。標準偏差閾値Dtは、例えば、空荷状態の車両が150mm程度の段差を乗り越えたときのフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力変動を目安にそれぞれ設定すればよい。例えば、定格積載量が約300トンのダンプトラックの場合において、フロントサスペンションシリンダでは400kPa程度、リアサスペンションシリンダでは150kPa程度の圧力の標準偏差が生じる。なお、標準偏差閾値Dtは、サスペンションシリンダの径や機種等に応じて変更する。
記憶部101には、第1計時部102が計測した経過時間T1と比較する第1の時間閾値Tt1が予め記憶されている。第1の時間閾値Tt1は、軸受51の仕様や要求等に応じて設定される。さらに、第2計時部103が計測した給脂装置70の駆動時間T2と比較する設定時間Tsが予め記憶されている。設定時間Tsは、例えば、1分である。
記憶部101には、また、第1の圧力センサ16が検出したフロントサスペンションシリンダ33内の圧力検出値P1の波形データ及び第2の圧力センサ17が検出したリアサスペンションシリンダ43内の圧力検出値P2の波形データが逐次格納される。
給脂指令部111は、本実施の形態においては、車両が空荷状態であると空荷判定部107が判定し、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力が安定状態であるとサスペンション状態判定部108が判定し、かつ、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が第1の時間閾値Tt1以上であると給脂間隔判定部109が判定した場合に限って、給脂装置70の駆動を開始させる。すなわち、給脂制御弁79へ制御信号のオン信号(電流)を出力する。さらに、給脂指令部111は、第2計時部103が計測した駆動時間T2を記憶部101に予め記憶されている設定時間Tsと比較することで給脂装置70の駆動を終了するか否かを判定し、駆動時間T2が設定時間Ts以上になるまで給脂制御弁79へオン信号(電流)の出力を継続する。駆動時間T2が設定時間Ts以上になると、給脂制御弁79へ制御信号のオフ信号を出力する(電流の出力を停止する)。なお、給脂指令部111が給脂制御弁79へのオン信号(電流)の出力を開始すると、第2計時部103が給脂装置70の駆動時間T2の計測を開始する。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラの制御手順を図6乃至図9を用いて説明する。図9は図8に示す本発明の運搬車両の第1の実施の形態におけるコントローラの制御手順の一例を示すフローチャートである。
図9において、コントローラ100は、先ず、経過時間T1の計測を開始する(ステップS10)。具体的には、図8に示す第1計時部102が経過時間T1の計測を開始する。次に、コントローラ100は、図8に示す第1の圧力センサ16が検出した圧力検出値P1、第2の圧力センサ17が検出した圧力検出値P2、傾斜センサ18が検出した傾斜角度検出値Iを取り込む(ステップS20)。
次いで、コントローラ100は、取り込んだ圧力検出値P1、P2及び傾斜角度検出値Iに基づき車両が空荷状態か否かを判定する(ステップS30)。具体的には、図8に示す積載荷重演算部104が、圧力検出値P1、P2及び傾斜角度検出値Iに基づき荷台5(図1参照)に積載された積荷Wの積載荷重Lを演算する。次に、空荷判定部107が、積載荷重演算部104の演算した積載荷重Lを記憶部101に予め記憶されている積載閾値Ltと比較することで、車両が空荷状態か否かを判定する。
ステップS30において、演算した積載荷重Lが積載閾値Ltよりも大きい場合には、車両が空荷状態でない(NO)と判定し、コントローラ100は、演算した積載荷重Lが積載閾値Lt以下(YES)になるまで、上記のステップS20及びS30を順に繰り返す。すなわち、コントローラ100は、車両が積載状態の場合には、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部の軸受51に対してグリースを供給しないように制御する。
一方、演算した積載荷重Lが積載閾値Lt以下の場合には、車両が空荷状態である(YES)と判定し、ステップS40に進む。ステップS40では、コントローラ100は、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態か否かを判定する。
具体的には、図8に示す圧力標準偏差演算部105が、記憶部101に格納された第1の圧力センサ16の検出した圧力検出値P1の波形データ及び第2の圧力センサ17の検出した圧力検出値P2の波形データのうち、直近のある時間領域△t内の圧力検出値の波形データをそれぞれ抽出し、その時間領域△tにおける圧力検出値の標準偏差SDを演算する。次いで、サスペンション状態判定部108が、圧力標準偏差演算部105の演算した標準偏差SDを記憶部101に予め記憶されている標準偏差閾値Dtと比較することで、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態か否かを判定する。
ステップS40において、圧力標準偏差演算部105が演算した標準偏差SDが標準偏差閾値Dtよりも大きい場合には、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない(NO)と判定し、コントローラ100は、圧力の標準偏差SDが標準偏差閾値Dt以下(YES)になるまで、ステップS20〜S40の間の処理を繰り返す。すなわち、コントローラ100は、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が変動状態にある場合には、軸受51にグリースを供給しないように制御する。
一方、ステップS40において、演算した標準偏差SDが標準偏差閾値Dt以下の場合には、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態である(YES)と判定し、ステップS50に進む。ステップS50では、コントローラ100は、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第1の時間閾値Tt1以上であるか否かを判定する。具体的には、図8に示す給脂間隔判定部109が、第1計時部102の計測した経過時間T1を記憶部101に予め記憶されている第1の時間閾値Tt1と比較することで判定する。
ステップS50において、第1計時部102が計測した経過時間T1が第1の時間閾値Tt1よりも小さい場合(NOの場合)には、コントローラ100は、第1計時部102からの経過時間T1が第1の時間閾値Tt1以上(YES)になるまで、上記のステップS20〜S50までの間の処理を繰り返す。すなわち、コントローラ100は、軸受51への給脂間隔が短すぎる場合には、軸受51にグリースを供給しないように制御する。
一方、ステップS50において、第1計時部102からの経過時間T1が第1の時間閾値Tt1以上(YES)の場合には、ステップS60に進む。ステップS60では、コントローラ100が給脂装置70の駆動を開始する。具体的には、図8に示す給脂指令部111が、図7に示す給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bへ制御信号のオン信号(電流)の出力を開始する。
これにより、給脂制御弁79の弁位置が遮断位置Xから連通位置Yに切り換わり、メイン油圧ポンプ82から吐出された圧油が吐出管路86及び供給管路78を経て給脂モータ73に供給される。圧油が供給された給脂モータ73は給脂ポンプ72を駆動し、駆動された給脂ポンプ72は、グリースタンク71内のグリースを吸い込み、給脂ホース75を介してフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部へ送出する。当該連結部へ送出されたグリースは、図6に示す連結ピン54の給脂孔54aから軸受51の内輪53の第2の油溝53a、第2の油穴53bを経由して摺動部としての滑り接触面に供給される。
次に、コントローラ100は、給脂装置70の駆動時間T2が所定時間Ts以上か否かを判定する(ステップS70)。具体的には、図8に示す給脂指令部111が、第2計時部103の計測した駆動時間T2を記憶部101に予め記憶されている設定時間Tsと比較することで判定する。給脂装置70の駆動時間T2が所定時間Ts以上でない場合(NOの場合)には、給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bへの制御信号のオン信号(電流)の出力を継続する。一方、駆動時間T2が所定時間Ts以上の場合(YESの場合)には、給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bへの制御信号のオフ信号を出力する(電流の出力を停止する)(ステップS80)。
コントローラ100からの電流の出力が停止されると、給脂制御弁79の弁位置が連通位置Yから遮断位置Xに切り換わる。これにより、メイン油圧ポンプ82から給脂モータ73へ圧油の供給が給脂制御弁79によって遮断され、給脂ポンプ72が停止し給脂装置70の駆動が終了する。このため、軸受51へのグリースの供給が終了する。
コントローラ100は、給脂装置70の駆動を停止させると、第1計時部102の計測を終了させ、経過時間T1を0にリセットする(ステップS90)。次いで、再びスタートに戻り上記制御フローを繰り返す。
次に、本発明の運搬車両の第1の実施の形態の作用、効果を図9を用いて説明する。
鉱山用ダンプトラック1(図1参照)が積荷Wを積載した状態で走行している場合、コントローラ100は、図9に示すように、車両が空荷状態ではない(NO)と判定し続けて制御手順のステップS20及びステップS30を繰り返す。したがって、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の連結部分の軸受51にはグリースが供給されない。鉱山用ダンプトラック1が積載状態の場合、空荷状態の場合よりも、軸受51の摺動部の垂直抗力が非常に大きくなるので、軸受51にグリースを供給しても軸受51の摺動部に十分に行き渡らせることができない懸念がある。本実施の形態においては、このような状況での軸受51へのグリースの供給を回避することができる。
鉱山用ダンプトラック1が空荷状態で走行している場合、コントローラ100は、図9に示すように、車両が空荷状態である(YES)と判定する(ステップS30)。このとき、凹凸の大きな路面を走行していた場合、コントローラ100は、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない(NO)と判定し(ステップS40)、凹凸の小さな路面を走行するまで制御手順のステップS20〜ステップS40を繰り返す。したがって、鉱山用ダンプトラック1が空荷状態であっても凹凸の大きな路面を走行する場合、軸受51にはグリースが供給されない。この場合、車体2の振動加速度が増減し、それに応じて軸受51の摺動部の垂直抗力も増減するので、この状況下で軸受51にグリースを供給しても、効率よく十分に軸受51の摺動部に行き渡らせることができない懸念がある。本実施の形態においては、このような状況下での軸受51へのグリースの供給を回避することができる。
一方、鉱山用ダンプトラック1が空荷状態で凹凸の小さな路面を走行している場合、コントローラ100は、図9に示すように、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態である(YES)と判定し(ステップS40)、軸受51への直近の給脂からの経過時間が第1の時間閾値Tt1以上の場合(ステップS50でYESの場合)には、オペレータの操作によらず、軸受51にグリースを供給する(ステップS60〜S80)。この状況下では、軸受51の摺動部の垂直抗力が上記した他の状況よりも比較的に小さい。本実施の形態においては、車両が空荷状態、かつ、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態の場合に限って軸受51にグリースを供給するので、軸受51の摺動部にグリースを確実に行き渡らせることができ、効率良く給脂することができる。
なお、軸受51にグリースを供給した後も、鉱山用ダンプトラック1が空荷状態で凹凸の小さな路面の走行を継続している場合、コントローラ100は、図9に示すステップS50において、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が第1の時間閾値Tt1以上でない(NO)と判定し、経過時間T1が第1の時間閾値Tt1以上になるまで制御手順のステップS20〜ステップS50を繰り返す。すなわち、給脂間隔が第1の時間閾値Tt1以上にならないと、軸受51にはグリースが供給されない。したがって、鉱山用ダンプトラック1の空荷状態での走行時に、軸受51に絶え間なくグリースが供給されることを防止ことができ、給脂装置70の非効率な駆動を防止することができる。
上述した本発明の運搬車両の第1の実施の形態によれば、鉱山用ダンプトラック1(運搬車両)の積荷Wが空荷状態かつフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43(サスペンションシリンダ)内の圧力が安定状態のときに軸受51にグリース(潤滑剤)を供給するようにコントローラ100が制御するので、軸受51の摺動部の垂直抗力が相対的に小さい状況下で給脂でき、当該摺動部に対して効率良く十分にグリース(潤滑剤)を行き渡らせることができる。
また、本実施の形態によれば、鉱山用ダンプトラック1が空荷状態かつフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態の場合であって、更に、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第1の時間閾値Tt1以上の場合に、軸受51にグリースを供給するようにコントローラ100が制御するので、鉱山用ダンプトラック1の空荷状態での走行時における軸受51への絶え間ないグリースの供給を防止ことができる。
さらに、本実施の形態によれば、第1の圧力センサ16及び第2の圧力センサ17の検出した直近のある時間領域△t内の圧力検出値P1、P2に基づき演算した標準偏差SDが予め設定した標準偏差閾値Dt以下の場合に、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態であると判定するようにコントローラ100を構成したので、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力状態を正確に判定することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の運搬車両の第2の実施の形態を図10及び図11を用いて説明する。図10は本発明の運搬車両の第2の実施の形態の一部を構成するコントローラの機能を示す機能ブロック図、図11は図10に示す本発明の運搬車両の第2の実施の形態におけるコントローラの制御手順の一例を示すフローチャートである。なお、図10及び図11において、図1乃至図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明の運搬車両の第2の実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、以下のとおりである。第1の実施の形態に係るコントローラ100は、車両が空荷状態かつフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態の場合であって、更に、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第1の時間閾値Tt1以上の場合に限って、軸受51にグリースを供給するものである。それに対して、第2の実施の形態に係るコントローラ100Aは、どのような状況下にあっても、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第2の時間閾値Tt2以上の場合には、強制的に軸受51に対してグリースを供給するものである。これは、軸受51への給脂が長時間実施されない状態を防止するためである。
第2の実施の形態に係るコントローラ100Aは、記憶部101A、第1計時部102、第2計時部103、積載荷重演算部104、圧力標準偏差演算部105、空荷判定部107、サスペンション状態判定部108、給脂間隔判定部109、給脂指令部111Aに加えて、強制給脂判定部110を更に備えている。強制給脂判定部110は、第1計時部102の計測した経過時間T1を第2の時間閾値Tt2と比較することで強制的に給脂を開始するか否かを判定する。第2の時間閾値Tt2は、記憶部101Aに予め記憶されている。第2の時間閾値Tt2は、第1の時間閾値Tt1よりも長く、例えば、鉱山用ダンプトラック1の作業の1サイクルを実行する時間に基づき設定される。具体的には、15分である。
本実施の形態においては、給脂指令部111Aは、第1の実施の形態の場合と同様に、車両が空荷状態かつフロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態の場合であって、更に、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第1の時間閾値Tt1以上の場合に、制御信号のオン信号(電流)の給脂制御弁79への出力を開始する。加えて、車両が空荷状態でない(積荷状態である)場合、又は、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない(変動状態である)場合であっても、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第2の時間閾値Tt2以上の場合、すなわち、強制給脂判定部110が強制給脂を開始すると判定した場合には、オン信号(電流)の給脂制御弁79への出力を開始する。
次に、本発明の運搬車両の第2の実施の形態の一部を構成するコントローラの制御手順を図11を用いて説明する。第2の実施の形態のコントローラ100Aの制御手順は、第1の実施の形態のコントローラ100の制御手順(図9参照)に対して、次の点で異なる。
第1の実施の形態のコントローラ100は、図9に示すステップS30において、車両が空荷状態でない(NO)と判定した場合には、車両が空荷状態(YES)になるまで、上記のステップS20及びS30を繰り返していた。
それに対して、本実施の形態においては、図11に示すステップS30において、車両が空荷状態でない(NO)と空荷判定部107が判定した場合、ステップS110に進む。ステップS110では、図10に示す強制給脂判定部110が、第1計時部102の計測した経過時間T1を記憶部101Aに予め記憶されている第2の時間閾値Tt2と比較することで、強制給脂を開始するか否かを判定する。第1計時部102からの経過時間T1が第2の時間閾値Tt2よりも小さい場合(NOの場合)には、上記ステップS20、S30、S110の処理を繰り返す。一方、第1計時部102からの経過時間T1が第2の時間閾Tt2以上(YES)の場合には、ステップS60に進み、コントローラ100Aの給脂指令部111Aが給脂制御弁79のソレノイド駆動部79bへ制御信号のオン信号(電流)の出力を開始する。それ以降の処理は、第1の実施の形態の場合と同様である。
また、第1の実施の形態のコントローラ100は、図9に示すステップS40において、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない(NO)と判定した場合には、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態(YES)になるまで、ステップS20〜S40の間の処理を繰り返していた。
それに対して、本実施の形態においては、図11に示すステップS40において、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない(NO)とサスペンション状態判定部108が判定した場合には、ステップS110に進む。ステップS110では、図10に示す強制給脂判定部110が強制給脂を開始するか否かを判定する。第1計時部102からの経過時間T1が第2の時間閾値よりも小さい場合(NOの場合)には、上記ステップS20〜S40、S110の処理を繰り返す。一方、第1計時部102からの経過時間T1が第2の時間閾値Tt2以上(YES)の場合には、ステップS60に進み、それ以降の処理は第1の実施の形態の場合と同様である。
上述した本発明の運搬車両の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が予め設定した第2の時間閾値Tt2以上の場合には、車両が空荷状態でない場合、又は、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43内の圧力が安定状態でない場合であっても、軸受51にグリースを供給するようにコントローラ100Aが制御するので、車両が積載状態で長時間走行する場合や空荷状態であっても凹凸の大きな路面を長時間に渡って走行する場合であっても、軸受51の摺動部にグリースを確実に供給することができる。
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上述した第1及び2の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した第1及び2の実施の形態においては、給脂ポンプ72を駆動する給脂モータ73として油圧モータを用いた例を示したが、給脂モータとして、電動モータを用いることも可能である。この変形例では、コントローラ100、100Aは、電動モータの駆動を制御することで、軸受51へのグリースの供給を制御することができる。この場合、図7に示す供給配管78及び給脂制御弁79が不要となる。
また、上述した実施の形態においては、コントローラ100、100Aが、車両が空荷状態であると判定し、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力が安定状態であると判定し、かつ、直近の前記軸受への給脂からの経過時間Tが第1の時間閾値Tt1以上であると判定した場合に、給脂装置70を駆動する例を示した。しかし、車両が空荷状態、かつ、フロントサスペンションシリンダ33及びリアサスペンションシリンダ43の圧力が安定状態の場合、軸受51への直近の給脂からの経過時間T1が第1の時間閾値Tt1よりも短い場合でも、給脂装置70を駆動するように制御してもよい。この場合、軸受51に対するグリースの過剰な供給が生じる可能性はあるが、軸受51の摺動部に対して効率良く十分にグリースを行き渡らせることは可能である。
また、上述した実施の形態においては、積載荷重演算部104が、第1の圧力センサ16及び第2の圧力センサ17の検出した圧力検出値P1、P2及び傾斜センサ18の検出した傾斜角度検出値Iに基づき、荷台5に積載された積荷Wの積載荷重Lを演算する例を示したが、圧力検出値P1、P2のみに基づき積載荷重Lを演算するように積載荷重演算部を構成することが可能である。この場合、正確な積載荷重Lを得ることはできないが、演算結果の積載荷重Lは、車両が空荷状態か否かを判定するために用いるものなので、判定結果に対する影響は小さい。また、傾斜センサ18が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
なお、上述した実施の形態のコントローラの各機能は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、記憶部101、101Aの他に、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。