JP2019115957A - 硬質被覆層が優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑性を有し優れた耐摩耗性を備えた表面被覆切削工具の提供。【解決手段】平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を含み、複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を含み、(Ti1−xAlx)(C1−yNy)で表した場合、0.65≦x≦0.95、0.995<y≦1.000、Clの含有割合αは、0.001≦α≦0.020、Sの含有割合βは、0.002≦β≦0.050、β/α≧2.0であり、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の{111}面の法線がなす傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度のものを0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在して、その度数の合計が度数全体の40%以上の表面被覆切削工具。【選択図】なし

Description

本発明は、高速断続切削加工に用いても、硬質被覆層が優れた耐摩耗性を備えることにより、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合炭窒化物層を物理蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi−Al系の複合炭窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の潤滑性の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、単層又は多層の層系で被覆された、金属、超硬合金、サーメット又はセラミックスからの被覆物品であって、該層系が、少なくとも1の硬質材料複合層を有しており、該複合層が、主相として立方晶TiAlCN及び六方晶AlNを含有している被覆物品において、該立方晶TiAlCNが、≧0.1μmの結晶子サイズを有する微晶質fcc−Ti1-xAlxyz(ここで、x>0.75、y=0〜0.25であり、かつz=0.75〜1である)であり、かつ、該複合層がさらに粒界領域内に非晶質炭素を0.01%〜20%の質量割合で含有していることを特徴とする、被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、硬質被覆層とその直上に硬質炭素膜、非晶質の硬質炭素膜、Ti、Cr、Al、Si、Mo、Wより選択される1種以上の元素を含有した酸化物、硼化物、硫化物及び窒化硼素、から選択される少なくとも1種以上の潤滑性皮膜との界面から硬質被覆層の膜厚方向に500nm未満の領域における結晶粒径の平均値が2〜14nmとした被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、基体表面にX線回折において最強回折強度を(200)面に有するTiとAlを主成分とする窒化物、炭窒化物、窒酸化物、窒硼化物を1層以上被覆した被覆工具において、前記少なくとも1層の硬質皮膜のTiの一部をSで置き換えたことを特徴とする耐摩耗皮膜被覆工具が記載されている。
特表2013−510946号公報 特許第4083102号公報 特開2002−331406号公報
特許文献1に記載された単層又は被覆工具は、摩擦の低減、すなわち、潤滑性を付与するために非晶質炭素を含んでいるが、この非晶質炭素を含むことにより被覆の硬さが十分に得られず、高速断続切削加工において耐摩耗性が十分とはいえなかった。
特許文献2に記載された被覆工具は、上部層のみが潤滑性を有しているために靱性が十分とはいえず、また、硬さも十分ではなく、特許文献1と同様に、高速断続切削加工において逃げ面の耐摩耗性が十分とはいえなかった。
特許文献3には、S添加は、表面に拡散したSとSが添加された(TiAlS)Nそのものとの潤滑性の相乗効果により潤滑性が高いこと、細密充填面である{111}面が工具表面と平行に存在する確率が高い場合は潤滑性がよくなく、被覆条件を考慮すると結晶面が{200}面に配向することが望ましいとの開示があり、結晶面が{111}面に配向することが多いCVD皮膜では、特許文献3に記載された切削工具のように単純にTiの一部をSで置き換えて潤滑性を向上させることは難しい。
そこで、本発明は、CVDにより成膜された硬質被覆層であっても、当該被覆層が潤滑性を有し硬質被覆層が優れた耐摩耗性を備え、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する切削工具を提供することを目的とする。
本発明者は、硬質被覆層としてのTiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層の潤滑性向上について鋭意検討を行ったところ、前記特許文献3において潤滑性を与えると説明されているSの他に、CVDによる成膜により硬質被覆層の中に含まれる塩素を特定量含有させることによって、前記特許文献3では潤滑性が十分に起こりえないとされる、CVDによる成膜では配向の起こりやすい{111}面配向を硬質被覆層が含むときであっても、十分な潤滑性が得られ、高速断続切削加工において耐摩耗性が向上するという新規な知見を得た。
本発明は、この知見に基づくものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の結晶粒を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層を組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xとNのCとNの合量に占める平均含有割合y、(ここで、x、yはいずれも原子比)がそれぞれ、0.65≦x≦0.95、0.995<y≦1.000を満足し、
(d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、微量のClを含有し、ClのTiとAlとCとNとClの合量に占めるClの含有割合α(但し、αは原子比)は、0.001≦α≦0.020を満足し、
(e)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、微量のSを含有し、SのTiとAlとCとNとClとSの合量に占めるSの含有割合β(但し、βは原子比)が、0.002≦β≦0.050を満足し、
(f)前記複合窒化物または複合炭窒化物層におけるClとSの前記含有割合αとβの比が、β/α≧2.0であり、
(g)前記複合窒化物または複合炭窒化物層の工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の40%以上の割合を占める、ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの前記複合窒化物または複合炭窒化物の前記結晶粒の占める割合が60面積%以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。」
である。
本発明の被覆工具は、CVDにより成膜された硬質皮膜を有しているにもかかわらず、当該皮膜が潤滑性を有し硬質被覆層が優れた耐摩耗性を備え、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する。
以下、本発明の切削工具について、より詳細に説明する。
硬質被覆層の平均層厚:
本発明の硬質被覆層は、組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表されるTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「TiAlCN」とも表記する)層を少なくとも含む。このTiAlCN層は、硬さが高く、すぐれた耐摩耗性を有するが、特に平均層厚が1.0〜20.0μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1.0μm未満では、層厚が薄いため長期の使用にわっての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20.0μmを越えると、TiAlCN層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
TiAlCN層内のNaCl型の面心立方晶構造を有する結晶粒の面積割合:
前記TiAlCN層におけるNaCl型の面心立方晶構造を有する結晶粒が存在することが必要であり、その面積割合として少なくとも40面積%以上が好ましい。これにより、高硬度であるNaCl型の面心立方晶構造を有する結晶粒の面積比率がある程度存在するため、硬さが向上する。さらに、この面積割合が60面積以上となると、NaCl型の面心立方晶構造を有する結晶粒が六方晶構造の結晶粒に比べて相対的に高くなり、硬さがより向上するという効果を得ることができる。この面積率は、より好ましくは75面積%以上である。
ここで、NaCl型の立方晶構造を有する結晶粒の面積割合は、測定範囲を、縦断面方向(縦断面に垂直な方向(工具基体表面に平行な方向))に100μm、膜厚の測定範囲で十分な長さの範囲とし、前記TiAlCN層の縦断面を研磨し、電子線後方散乱回折像装置を用いて、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、電子線を0.01μm間隔で照射して得られる電子線後方散乱回折像に基づき個々の結晶粒の結晶構造を解析することにより求めた。
TiAlCN層の組成:
本発明のTiAlCN層は、上記組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xおよびNのCとNの合量に占める平均含有割合y(但し、x、yはいずれも原子比)が、それぞれ、0.65≦x≦0.95、0.995<y≦1.000を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合xが0.65未満であると、TiAlCN層は耐酸化性に劣るため、合金鋼等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合xが0.95を超えると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。
また、TiAlCN層に含まれるN成分の平均含有割合yは、0.995<y≦1.000の範囲の微量であるとき、TiAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてTiAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、N成分の平均含有割合yが0.995<y≦1.000の範囲を外れると、TiAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下するため好ましくない。また、TiAlCN層のAlの平均含有割合x、後述するClの平均含有割合αおよびSの平均含有割合βについては、電子線マイクロアナライザ(Electron−Probe−Micro−Analyser:EPMA)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均から求めた。
Nの平均含有割合yについては、二次イオン質量分析(Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy:SIMS)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。Nの平均含有割合yはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
ただし、Nの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはCの供給量を0とした場合のTiAlCN層に含まれるCの含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、Cを意図的に供給した場合に得られるTiAlCN層に含まれるNの含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をyとして求めた。
TiAlCN層中のCl含有量:
TiAlCN層中には微量のClが含まれ、Ti、Al、C、N、Clの合量に対するClの平均含有割合α(原子比)は、0.001≦α≦0.020でなくてはならない。この範囲とした理由は、0.001以上でなければ潤滑性の向上が期待できず、一方、0.020を超えると靱性が低下して耐チッピング性が低下してしまうためである。
TiAlCN層中のS含有量:
TiAlCN層中にはSが含まれ、Ti、Al、C、N、Clの合量に対するSの平均含有割合β(原子比)は、0.002≦β≦0.050でなくてはならない。この範囲とした理由は、0.002以上でなければ潤滑性の向上が期待できず、一方、0.050を超えると結晶粒中の六方晶が増え硬さが低下して耐摩耗性が低下してしまうためである。
TiAlCN層中のCl含有量とS含有量との関係:
TiAlCN層中のCl含有量とS含有量との関係は、β/α≧2.0を満足しなければならない。この関係を満足しなければ、十分な潤滑性を得ることができない。
TiAlCN層の結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角の度数分布:
TiAlCN層の結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、前記0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の40%以上の割合を占めている。
これは、{111}面に配向しても潤滑性を有するCVD法によって成膜した硬質被覆層を得るという本発明の前提を表現したものである。
ここで、前記傾斜角度分布は次のようにして求めたものである。
まず、面心立方晶構造のTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含む硬質被覆層の工具基体表面に垂直な断面(縦断面)を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットした。前記研磨面(断面研磨面)において、工具基体表面と水平方向に長さ100μm、工具基体表面と垂直な方向に膜厚に対して、十分な長さの範囲を測定範囲とし、この測定範囲の研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に0.01μm/stepの間隔で照射し、得られた電子線後方散乱回折像に基づき、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定点(電子線を照射した点)毎にそれぞれ測定した。そして、この測定結果に基づいて、測定された傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより、傾斜角度数分布を求めた。得られた傾斜角度数分布から、0〜10度の範囲内に存在する度数の最高ピークの有無を確認し、かつ0〜45度の範囲内に存在する度数(傾斜角度数分布における度数全体)に対する0〜10度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。なお、傾斜角度分布グラフにおいて、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の50%以上であることがより好ましい。
その他の層:
本発明は、硬質被覆層として前記TiAlCN層は十分な耐チッピング性、耐摩耗性を有するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を含む下部層を工具基体に隣接して設けた場合、および/または、少なくとも酸化アルミニウム層が1.0〜25.0μmの合計平均層厚で上部層として前記TiAlCN層の上に設けられた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、一層優れた耐摩耗性および熱的安定性を発揮することができる。
ここで、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20.0μmを超えると下部層の結晶粒が粗大化しやすくなり、チッピングを発生しやすくなる。また、酸化アルミニウム層を含む上部層の合計平均層厚が1.0μm未満では、上部層の効果が十分に奏されず、一方、25.0μmを超えると上部層の結晶粒が粗大化しやすくなり、チッピングを発生しやすくなる。
成膜方法(条件):
本発明のCl及びSを含んだTiAlCN層は、例えば、工具基体もしくは当該工具基体上にあるTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の少なくとも一層以上の上に、例えば、NHとHとNからなるガス群Aと、TiCl、AlCl、N、C,HS,Hからなるガス群Bをそれぞれ供給することによって得ることができる。
ガス組成の一例として、%は容量%(ガス群Aとガス群Bの和を全体としている)として、
ガス群A:NH:1.0〜3.0%、N:0.0〜6.0%、H:60〜65%、
ガス群B:AlCl:0.3〜0.9%、TiCl:0.1〜0.4%、
:0.0〜10.0%、C:0.0〜0.5%
S:0.1〜2.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:700〜900℃
供給周期:4.0〜10.0秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15〜0.25秒
ガス群Aとガス群Bの供給の位相差:0.10〜0.20秒
をあげることができる。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明被覆工具の具体例として、工具基体としてWC基超高圧焼結体を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、TiCN基サーメット、cBN基超高圧焼結体を用いた場合であっても同様であるし、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
<実施例1>
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
次に、これら工具基体A〜Cの表面に、CVD装置を用いて、Cl及びSを含んだTiAlCN層をCVDにより形成し、表5に示される本発明被覆工具1〜10を得た。
成膜条件は、表2に記載したとおりであるが、概ね、次のとおりである。ガス組成の%は容量%(ガス群Aとガス群Bの和を全体としている)である。
ガス群A:NH:1.0〜3.0%、N:0.0〜6.0%、H:60〜65%、
ガス群B:AlCl:0.3〜0.9%、TiCl:0.1〜0.4%、
:0.0〜10.0%、C:0.0〜0.5%
S:0.1〜2.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:700〜900℃
供給周期:4.0〜10.0秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15〜0.25秒
ガス群Aとガス群Bの供給の位相差:0.10〜0.20秒
なお、本発明被覆工具は4〜9は、表3に記載された成膜条件により、表4に示された下部層および/または上部層を形成した。
また、比較の目的で、工具基体A〜Cの表面に、表2に示される条件によりCVDを行うことにより、表5に示されるTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成して比較被覆工具1〜10を製造した。
なお、比較被覆工具4〜9については、表3に示される形成条件により、表4に示された下部層および/または上部層を形成した。
さらに、前記本発明被覆工具1〜10および比較被覆工具1〜10の硬質被覆層について、前述した方法を用いて、平均Al含有割合x、平均N含有割合y、Cl平均含有割合α、S平均含有割合βを求めた。また、前述した方法により、{111}面の法線がなすそれぞれの傾斜角度数分布において、傾斜角が0〜10度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。これらの結果を表5にまとめた。
なお、平均層厚は、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の各構成層の工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(例えば倍率5000倍)を選択して観察し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めた。
続いて、前記本発明被覆工具1〜10および比較被覆工具1〜10について、いずれもカッター径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下に示す、合金鋼の乾式高速高送り正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工
被削材:JIS・SCM430幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度:1019min−1
切削速度:400m/min
切り込み:1.5mm
一刃送り量:0.15mm/刃
切削時間:8分
(通常の切削速度は、150〜200m/min、通常の一刃送り量:0.1〜0.2mm/刃)
表6に、切削試験の結果を示す。なお、比較被覆工具1〜10については、チッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
<実施例2>
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表7に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した。その後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結した。焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体α〜γをそれぞれ製造した。
次に、これらの工具基体α〜γの表面に、実施例1と同様の方法により表2に示される条件で、CVD装置を用いて、TiAlCN層を形成し、表9に示される本発明被覆工具11〜20を得た。
なお、本発明被覆工具は14〜19は、表3に記載された成膜条件により、表8に示された下部層および/または上部層を形成した。
また、実施例1と同様に、比較の目的で、工具基体α〜γの表面に、表2に示される条件によりCVD法を用いることにより、表9に示されるTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成して比較被覆工具11〜20を製造した。
なお、比較被覆工具14〜19については、表3に示される形成条件により、表8に示された下部層および/または上部層を形成した。
また、実施例1と同様に、前記本発明被覆工具11〜20、比較被覆工具11〜20の硬質被覆層について、平均Al含有割合x、平均N含有割合y、Cl平均含有割合α、S平均含有割合βを求めた。また、前述した方法により、{111}面の法線がなすそれぞれの傾斜角度数分布において、傾斜角が0〜10度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。これらの結果を表9にまとめた。
なお、平均層厚は、本発明被覆工具11〜20、比較被覆工具11〜20の各構成層の工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(例えば倍率5000倍)を選択して観察し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めた。
次に、前記各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具11〜20、比較被覆工具11〜20について、以下に示す、鋳鉄の湿式高速断続切削試験を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。その結果を表10に示す。なお、比較被覆工具11〜20については、チッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
切削試験:湿式高速断続切削加工
被削材:JIS・FCD600の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒
切削速度:390m/min
切り込み:2.0mm
送り:0.15mm/rev
切削時間:5分
(通常の切削速度は、250m/min、通常の一刃送り量:0.25mm/刃)
表6、表10に示される結果から、本発明被覆工具1〜20は、いずれも硬質被覆層が優れた耐チッピング性を有しているため、合金鋼等の高速高送り切削加工に用いた場合であってチッピングの発生がなく、長期にわたって優れた耐摩耗性を発揮する。これに対して、本発明の被覆工具に規定される事項を一つでも満足していない比較被覆工具1〜20は、合金鋼等の高速高送り断続切削加工に用いた場合であってチッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
前述のように、本発明の被覆工具は、合金鋼以外の高速高送り断続切削加工の被覆工具として用いることができ、しかも、長期にわたって優れた耐摩耗性を発揮するから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化及び省エネ化、さらには低コスト化に十分に満足できる対応が可能である。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
    (b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の結晶粒を少なくとも含み、
    (c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層を組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xとNのCとNの合量に占める平均含有割合y、(ここで、x、yはいずれも原子比)がそれぞれ、0.65≦x≦0.95、0.995<y≦1.000を満足し、
    (d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、微量のClを含有し、ClのTiとAlとCとNとClの合量に占めるClの含有割合α(但し、αは原子比)は、0.001≦α≦0.020を満足し、
    (e)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、微量のSを含有し、SのTiとAlとCとNとClとSの合量に占めるSの含有割合β(但し、βは原子比)が、0.002≦β≦0.050を満足し、
    (f)前記複合窒化物または複合炭窒化物層におけるClとSの前記含有割合αとβの比が、β/α≧2.0であり、
    (g)前記複合窒化物または複合炭窒化物層の工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の40%以上の割合を占める、ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの前記複合窒化物または複合炭窒化物の前記結晶粒の占める割合が60面積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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