JP2019112703A - 熱間圧延線材 - Google Patents

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Abstract

【課題】伸線材もしくはブルーイング材において優れた強度及び延性を有することができる、熱間圧延線材を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.90〜1.10%、Si:0.40%超0.80%以下、Mn:0.10〜0.70%、Cr:0.10〜0.40%を含有し、Al:0.003%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下に制限し、かつ「Si+Cr」が0.50〜0.90%、「Cr+Mn」が0.40〜0.80%であり、残部はFeおよび不可避の不純物よりなり、金属組織は、パーライトを主組織とし、残部組織が初析セメンタイト、粒界フェライトおよびベイナイトのいずれか1種又は2種以上からなり、線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部において、ラメラセメンタイト長さが1.5μm以下の領域が面積率で20%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱間圧延線材に関し、特に、熱間圧延後に冷間伸線加工工程を経て製造される高強度鋼線(例えば、スチールコード、ビードワイヤ、ワイヤロープ、PC鋼線、ソーワイヤ等)の素材となる熱間圧延線材に関するものである。
ビードワイヤをはじめとしたスチールコードやワイヤロープなどに使用される高強度鋼線は、それぞれの仕様に応じて種々の線径、強度を有している。これら高強度鋼線は、単線で使用されることは少なく、最終的に複数本を撚り合わせる加工(撚り加工)を施した状態で使用される。そのため、高強度鋼線は撚り加工に耐えうるだけの延性(捻回特性)を必要とされる。
また、これら高強度鋼線の製品は、通常、C量が0.7〜0.9%程度の高炭素鋼線材を素材として、伸線加工や熱処理、めっき、撚り加工など様々な工程を経て製造される。特にスチールコードなどは、伸線加工し細径化するが、このときの加工量が大きくなると捻回特性をはじめとした延性が低下し、断線が発生しやすくなる。この断線を抑制するために、伸線加工前の熱処理や乾式伸線の途中の熱処理(いわゆる「中間熱処理」)を行うが、コストや生産性の観点から、この熱処理は省略することが望まれている。
一方、これら高強度鋼線は、製造コスト低減や製品の差別化のため、更なる高強度化が求められている。このような鋼線の高強度化の要求に対しては、C量の増加などの手段があるが、C量が0.9%超の過共析鋼では、熱間圧延線材に初析セメンタイトが析出し、延性が低下するとされている。そのため、過共析鋼において、伸線加工後の強度と延性を両立すべく、これまで様々な開発が行われてきた。
特許文献1は、SiとCrの合計含有量やラメラ間隔を制御することで、高強度と高延性を有する伸線用線材が得られるとしている。また、この伸線用線材の製造方法として、加熱した線材を10〜20℃/sで冷却するとしている。
特許文献2は、鉛パテンティングの条件によりラメラセメンタイトの形状を制御することで、伸線加工後に強度と延性に優れた鋼線が得られるとしている。
国際公開第2009/084811号 国際公開第2016/024635号
しかし、特許文献1記載の実施例においては、延性を評価した水準は、熱間圧延線材に鉛パテンティングを施した後に伸線加工した伸線材であり、熱間圧延線材を用いての伸線材は評価されていない。また、特許文献1に記載のようなSi量およびCr量の制御とラメラ間隔の制御では、伸線材の強度と延性の確保は不十分であった。
また、特許文献2は、鉛パテンティングを前提としており、熱間圧延線材を対象としたものではない。
また、特許文献2は、湿式伸線加工で製造された伸線材を評価したものである。一方、加工発熱の高い乾式伸線加工で製造された伸線材では、素材である熱間圧延線材の成分や組織を制御することで、伸線加工性や伸線材の延性を更に向上することが期待できると言われているが、その詳細については未だ解明されておらず、さらなる検討が望まれている。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、伸線材もしくは伸線後ブルーイング処理を施したブルーイング材(鋼線)において優れた強度及び延性を有することができる、過共析組成の熱間圧延線材を提供することを課題とする。
本発明者らは炭素濃度0.90%〜1.10%の過共析鋼を用い、種々の熱間圧延条件で金属組織と引張強度を制御した熱間圧延線材を作製した。これら熱間圧延線材を用いて、伸線加工およびブルーイング処理を行い、熱間圧延線材の組織及び引張強度が伸線材およびブルーイング材の機械的特性に及ぼす影響について詳細に検討した。その結果、熱間圧延線材のC量やSi量、Cr量、Mn量、ラメラセメンタイトの形状、初析セメンタイトおよびベイナイトの面積率を制御し、引張強度を適正範囲することで、このような熱間圧延線材を素材とし、加工歪2.0以上の伸線加工を行った伸線材およびその伸線材をブルーイング処理したブルーイング材(鋼線)において、高強度かつ高延性の特性を得ることができるという知見を得て、本発明に至った。
本発明は、以上の知見に基づいて完成したものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.90〜1.10%、Si:0.40%超0.80%以下、Mn:0.10〜0.70%、Cr:0.10〜0.40%を含有し、Al:0.003%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下に制限し、かつ質量%で下記式(1)、(2)を満たし、残部はFeおよび不純物よりなり、線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部における金属組織は、パーライトと、残部組織が初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのいずれか1種又は2種以上からなり、かつ前記中心部において、ラメラセメンタイト長さが1.5μm以下の領域が面積率で20%以下であり、かつ前記中心部において、初析セメンタイトの面積率が0.50%以下、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率が8.0%以下であることを特徴する熱間圧延線材。
0.50≦Si(%)+Cr(%)≦0.90 ・・・(1)
0.40≦Cr(%)+Mn(%)≦0.80 ・・・(2)
上記の(1)、(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
[2]更に、質量%で、Ni:0.50%以下、Co:1.00%以下、Mo:0.20%以下、B:0.0030%以下、Cu:0.15%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の熱間圧延線材。
[3]線材の一端から500m離れた位置と前記一端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第1部分とし、線材の他端から500m離れた位置と前記他端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第2部分としたとき、前記第1部分及び前記第2部分それぞれの引張強度の平均である平均引張強度TSaveが下記の式(3)を満たし、さらに、前記第1部分及び前記第2部分をそれぞれ、長さ方向に5等分した各区間において、最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差が100MPa以下であり、かつ、隣接する区間の平均引張強度の差が20MPa以下であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の熱間圧延線材。
1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+200<TSave(MPa)<1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+300…(3)
上記の(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
[4]前記中心部において観察されるラメラ間隔Lが下記の式(4)を満たし、かつ前記ラメラ間隔Lの標準偏差が30nm以下であることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の熱間圧延線材。
−65×(Si(%)+Cr(%))+130<L(nm) ・・・(4)
上記の(4)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
本発明の熱間圧延線材を素材として用いることにより、伸線材もしくは伸線後ブルーイング処理を施したブルーイング材において優れた強度及び延性を得ることができる。
また本発明の熱間圧延線材を素材として用いることにより、PC鋼線やスチールコードなどの用途に好適な、伸線加工性に優れて、かつ伸線後およびブルーイング後の延性に優れた高強度鋼線を安定的に生産することができる。
以下、本発明の熱間圧延線材(以下、単に「線材」、と記載する場合がある)の実施形態について説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をよりよく理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
<成分組成>
まず、本実施形態の熱間圧延線材の鋼組成について説明する。以下、各元素の含有量の単位は質量%である。
C:0.90〜1.10%
Cは、鋼材の必要強度を付与するために必須の元素である。0.90%未満では伸線材およびブルーイング材の引張強度の低下を招くため、Cを0.90%以上含有する。好ましくは、C量は0.95%以上であり、より好ましくは1.00%以上である。
一方、C量が1.10%を超えると、初析セメンタイトが増加して断線が多発するのに加え、熱間圧延線材の強度が過度に高くなり、伸線加工性の低下や、伸線材の延性低下を招く。そのため、C量は1.10%以下とする。好ましくは、C量は1.08%以下である。
Si:0.40%超0.80%以下
Siは、パーライト中のフェライト強度を増加させる他、伸線材の延性向上、またはブルーイング処理時の引張強度の低下を抑制する効果がある。これらの作用を有効に発揮させるためには、Siは0.40%超含有することが必要である。好ましくは、Si量は0.50%以上である。
しかしながら、Siを過剰に含有すると、伸線加工性に有害なSiO系介在物が発生し易くなる他、フェライト強度が過剰に増加し、伸線材の延性が低下する。そのため、Si量の上限を0.80%以下に定めた。好ましくは、Si量は0.70%以下である。
Mn:0.10〜0.70%
Mnは、脱酸及び脱硫に有用であるのみならず、オーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、パーライト主体の組織を得るために有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるには、Mnを0.10%以上含有することが必要である。好ましくは、Mn量は0.15%以上である。
但し、Mnを過剰に含有しても上記効果が飽和する他、熱間圧延後の冷却過程で、ベイナイト、マルテンサイトなどの過冷組織が発生しやすくなることや変態完了までの時間が長時間となり、生産性の低下や設備コストの増加につながる。そのため、Mn量の上限を0.70%以下に定めた。好ましくは、Mn量は0.50%以下である。
Cr:0.10〜0.40%
Crはパーライトの加工硬化率を高め、低ひずみ量の伸線加工でより高い引張強度を得ることができる。また、Crはオーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、パーライト主体の組織を得るために有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるには、Crを0.10%以上含有することが必要である。好ましくは、Cr量は0.15%以上である。
しかし、Cr量が0.40%超ではこれら効果が飽和する他、焼入れ性が高くなり、熱間圧延後の冷却過程でベイナイト、マルテンサイトなどの過冷組織が発生しやすくなることや変態完了までの時間が長時間となり、生産性の低下や設備コストの増加につながる。そのため、Cr量の上限を0.40%以下に定めた。好ましくは、Cr量は0.30%以下である。
Si+Cr:0.50〜0.90%
更に、上記のSiとCrを複合添加することで、伸線材およびブルーイング材の強度と延性を向上させることができる。SiとCrの合計量が0.50%未満では伸線材およびブルーイング材の引張強度が不足し、一方、SiとCrの合計量が0.90%超では伸線材およびブルーイング材の延性が低下する。そのため、SiとCrの合計量が下記式(1)を満たすようにする。なおSiとCrの合計量の好ましい下限は0.55%以上であり、上限は0.80%以下である。
0.50≦Si(%)+Cr(%)≦0.90 ・・・(1)
Mn+Cr:0.40〜0.80%
上記のMnとCrを複合添加することで、熱間圧延時における初析セメンタイト、粒界フェライトの生成を抑制する効果が向上する他、熱間圧延線材や伸線材の引張強度が上昇する効果が得られる。MnとCrの合計量が0.40%未満では、これら効果が十分得られず、一方、MnとCrの合計量が0.80%超では、焼入れ性が過剰に高くなり、熱間圧延時にベイナイトやマルテンサイトなどの過冷組織が発生しやすくなることや変態完了までの時間が長時間となり、生産性の低下や設備コストの増加につながる。そのため、MnとCrの合計量が下記式(2)を満たすようにする。なおMnとCrの合計量の好ましい下限は0.45%以上であり、上限は0.60%以下である。
0.40≦Cr(%)+Mn(%)≦0.80 ・・・(2)
Al:0.003%以下
Alは、Oと反応し、Alなどの硬質な酸化物が発生し、伸線加工性や伸線材の延性の低下要因となる。そのため上限を0.003%以下に制限する。
P:0.020%以下
Pは不純物である。P含有量が0.020%を超えると、結晶粒界に偏析して伸線加工性を損ねる恐れがある。したがって、P含有量を0.020%以下に制限する。好ましくは、P含有量を0.015%以下に制限する。また、P含有量は少ないほど望ましいので、P含有量の下限が0%であってもよい。しかし、P含有量を0%にするのは、技術的に容易でなく、また、安定的に0.001%未満とするにも、製鋼コストが高くなる。よって、P含有量の下限を0.001%以上としてもよい。
S:0.010%以下
Sは不純物である。S含有量が0.010%を超えると、粗大なMnSが形成されて伸線加工性を損ねる恐れがある。したがって、S含有量を0.010%以下に制限する。好ましくは、S含有量を0.008%以下に制限する。また、S含有量は少ないほど望ましいので、S含有量の下限が0%であってもよい。しかし、S含有量を0%にするのは、技術的に容易でなく、また、安定的に0.001%未満とするにも、製鋼コストが高くなる。よって、S含有量の下限を0.001%以上としてもよい。
本実施形態に係る熱間圧延線材の基本的な成分組成は上記のとおりである。下記に示す元素Ni、Co、Mo、B、Cuは含有しなくてもよい。下記に記す効果を得たい場合には、Ni:0.5%以下、Co:1.00%以下、Mo:0.20%以下、B:0.0030%以下、Cu:0.15%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
Ni:0.50%以下
Niは、オーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、パーライト主体の組織を得るために有用な元素である。その他、伸線材の靭性を高める元素である。これらの効果を得るためにはNiは0.10%以上含有することが望ましい。一方、Niを過剰に含有すると、焼入れ性が過大となり、熱間圧延後の冷却過程でベイナイト、マルテンサイトなどの過冷組織が発生し、伸線加工性が低下するため、上限を0.50%以下とした。好ましくは、Ni量は0.30%以下とする。
Co:1.00%以下
Coは、圧延線材における初析フェライトの析出を抑制するのに有効な元素である。また、伸線材の延性を向上させるのに有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるには0.10%以上含有することが好ましい。一方、Coを過剰に含有してもその効果は飽和して経済的に無駄であるので、その上限を1.00%以下とした。好ましくは、Co量は0.90%以下とする。
Mo:0.20%以下
Moは、オーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、パーライト主体の組織を得るために有用な元素である。この効果を得るためにはMoは0.05%以上含有することが望ましい。しかしながら、Mo量が0.20%超では、焼入れ性が過大となり、熱間圧延後の冷却過程でベイナイト、マルテンサイトなどの過冷組織が発生しやすくなるため、その上限を0.20%以下とした。好ましくは、Mo量は0.15%以下とする。
B:0.0030%以下
Bは粒界に濃化して、初析フェライトの抑制に有効な元素である。この効果を得るためにはBは0.0002%以上含有することが好ましい。一方、Bを過剰に含有するとオーステナイト中にFe23(CB)などの炭化物を形成し、伸線加工性を低下させるので、その上限を0.0030%以下とした。好ましくは、B量は0.0005〜0.0020%である。
Cu:0.15%以下
Cuは析出硬化などにより、圧延線材や伸線材の強度を上昇させる効果が期待できる元素である。この効果を発揮させるためには少なくとも0.05%以上含有することが好ましい。一方、Cuを過剰に含有すると粒界脆化を引き起こし、疵の発生要因となる。そのため、上限を0.15%以下とした。好ましくは、Cu量は0.12%以下とする。
本実施形態の熱間圧延線材は上記成分を含有し、残部は実質的にFeおよび不純物で形成される。なお、本発明の作用効果を害さない範囲内で、他の元素を微量に含有することができる。
ここで、不純物とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ又は製造環境などから混入するものを指す。
<金属組織>
次に、本実施形態に係る熱間圧延線材の金属組織について説明する。
本実施形態にかかる熱間圧延線材の金属組織は、前記のように、熱間圧延線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部において、パーライトと残部組織とからなる。残部組織以外の組織はパーライトである。残部組織は、初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのいずれか1種もしくは2種以上からなる。
更に、伸線加工後の伸線材または伸線加工後にブルーイング処理を施したブルーイング材の引張強度と延性(捻回特性)を両立させるためには、線材中心部のセメンタイトの形状を制御することが重要である。具体的には、熱間圧延線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部において、パーライト中のセメンタイト(ラメラセメンタイト)の長さが1.5μm以下の領域(以下、「微小領域」とも称する)を低減させる。この微小領域の面積率が20%超では、伸線材およびブルーイング材において、強度と捻回特性を両立することが困難であるため、中心部の微小領域の面積率を20%以下とする。より安定して、強度と捻回特性を両立するためには、好ましくはラメラセメンタイトの長さが1.5μm以下の領域が面積率で15%以下であり、更に好ましくは10%以下である。
また、初析セメンタイトや粒界フェライト、ベイナイト、マルテンサイトは破壊の伝播経路となる可能性があり、面積率が大きくなれば、伸線材の引張強度や延性の低下要因となる。そのため、線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部において、初析セメンタイトの面積率を0.50%以下とし、かつ粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を8.0%以下とする。好ましくは、初析セメンタイトの面積率を0.25%以下、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を5.0%以下とする。更に好ましくは初析セメンタイトの面積率を0.10%以下、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を4.5%以下とする。なお、パーライトの面積率は100%から残部組織の面積率を差し引いたものとなる。
なお、初析セメンタイトや粒界フェライト、ベイナイト、マルテンサイトの面積率は0%(すなわちパーライト組織の面積率が100%)であってもよいが、上述したような本発明の成分系で、初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイト、マルテンサイトの析出を完全に抑制することは困難であり、これらの面積率0%を実現しようとすると、非常に優れた冷却能力が要求され、設備コストの増加につながる。
また、中心部以外の組織については本発明が目指す特性に特に影響を与えないため、特に限定する必要はないが、パーライトを主組織とし、残部が初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのいずれか1種もしくは2種以上からなることが好ましい。また、中心部以外の組織の面積率は、中心部のおける組織の面積率と同じでもよく、異なっていてもよい。
<引張強度>
熱間圧延線材は、熱間圧延直後に冷却コンベアに載置される際、連続的にずれながら一部が重なったリング状態となり、その状態で冷却される。すなわち、複数のリング状に成形された線材は、リング同士の一部の重なりや疎密差ができるため、冷却中のリング状の熱間圧延線材には、各リング内および隣接するリング間でそれぞれ温度分布が生じ、その結果、引張強度のばらつきが発生する。
熱間圧延線材の加工硬化能などは引張強度に依存するため、熱間圧延線材の引張強度ばらつきが増加すれば、伸線材の引張強度のばらつきは更に大きくなり、実機製造における伸線加工時や撚り加工時の断線、最終製品の特性のばらつきにつながる。
そこで本実施形態では、熱間圧延線材の引張強度について次のように規定することが望ましい。
熱間圧延線材の一端から500m離れた位置と前記一端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第1部分とし、線材の他端から500m離れた位置と前記他端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第2部分としたとき、第1部分及び第2部分における平均引張強度TSaveが下記の式(3)を満たし、さらに、第1部分及び第2部分をそれぞれ、長さ方向に5等分した各区間において、最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差が100MPa以下であり、かつ、隣接する区間の平均引張強度の差が20MPa以下である。
1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+200<TSave<1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+300 ・・・(3)
熱間圧延線材の第1部分および第2部分における平均引張強度TSave(MPa)はCやSi、Crの含有量(質量%)に応じて、上記の式(3)で規定する範囲内に入ることが好ましい。熱間圧延線材のTSaveが式(3)に示す下限値を下回ると、伸線材やブルーイング材の引張強度が低くなるおそれがある。一方、熱間圧延線材のTSaveが式(3)に示す上限値を上回ると、伸線時の加工硬化率が高くなり、伸線材やブルーイング材の引張強度が過剰に増加して延性が低下するおそれがある。より好ましくは式(3)の左辺の定数項は+210MPa、右辺の定数項は+290MPaであり、更に好ましくは式(3)の左辺の定数項は+220MPa、右辺の定数項は+280MPaである。式(3´)により好ましいTSaveの範囲を示す。なお、式(3)、(3´)中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+210<TSave<1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+290 ・・・(3´)
また、熱間圧延線材の第1部分及び第2部分をそれぞれ、長さ方向に5等分した各区間において、最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差が100MPa以下とし、かつ、隣接する区間の平均引張強度の差が20MPa以下とすることが望ましい。
このように成分を本発明内に制御し、焼入れ性を制御し、かつ、後述する650℃以下の冷却速度を制御することで、熱間圧延線材の引張強度ばらつきが低減され、その結果、伸線材の引張強度のばらつきを抑えることができる。その上、実機製造における伸線加工時や撚り加工時の断線、最終製品の特性のばらつきの低減にもつながる。これにより、熱間圧延ままで伸線加工をしても、伸線材やブルーイング材の品質や特性を安定化することができる。
<ラメラ間隔>
また本実施形態では、延性および強度の両立の観点から線材中心部におけるラメラ間隔Lおよびラメラ間隔Lの標準偏差を制御することが望ましい。具体的には、線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部におけるラメラ間隔Lは下記式(4)を満たし、かつラメラ間隔Lの標準偏差を30nm以下とすることが好ましい。
ラメラ間隔Lが小さいと、伸線材およびブルーイング材の強度が増す一方で、延性が低下する。また、ラメラ間隔Lのばらつきが大きくなると、伸線材およびブルーイング材の延性が低下する。そのため、ラメラ間隔Lは下記式(4)を満たし、かつラメラ間隔Lの標準偏差が30nm以下とすることが好ましい。一方、ラメラ間隔Lが過剰に大きければ、熱間圧延線材の引張強度の低下や伸線加工時の加工硬化率の低下により、伸線材およびブルーイング材の引張強度が低下するため、ラメラ間隔Lの上限は150nm以下が好ましい。
−65×(Si(%)+Cr(%))+130<L(nm) ・・・(4)
熱間圧延線材の線径は、巻取り後の冷却速度に影響し、その結果として、金属組織や引張強度などに影響する。線材の直径が6.0mm超では、線材中心の冷却速度が遅くなり易く、初析セメンタイトが生成しやすくなる。一方、線材の直径が3.0mm未満では、製造が困難である他、生産効率が低下し、熱間圧延線材のコストが上昇する。したがって、本実施形態の熱間圧延線材の線径は3.0〜6.0mmとする。
<金属組織の面積率の測定方法>
初析セメンタイトや粒界フェライト、ベイナイトの面積率およびラメラセメンタイトの長さが1.5μm以下の領域の面積率の測定は、以下のように行うことができる。
熱間圧延線材を切断し、長手方向と垂直な横断面を観察できるように樹脂埋めした後、研磨紙やアルミナ砥粒で研磨して鏡面仕上げした試料とする。これを3%ナイタール溶液もしくはピクラールで腐食して、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、試料の中心部(線材の半径をRとして、線材の中心からR/3以下の距離)を倍率2000倍以上で、総観察視野面積が0.08mm2以上となるように複数視野撮影する。撮影した各視野において、面積率を測定したい対象(初析セメンタイトや粒界フェライト、ベイナイトの面積率およびラメラセメンタイトの長さが1.5μm以下の領域)をマーキングし、そのマーキング部分を画像解析して組織の面積率の測定を行う。その後、各視野の面積率の平均をその熱間圧延線材の各組織の面積率とした。画像解析には、たとえば「LUZEX」(株式会社ニレコ製)など、通常の画像解析装置を用いることができる。
なお、本発明において「ラメラセメンタイトの長さ」は長径方向の長さであり、「ラメラセメンタイトの長さが1.5μm以下の領域」とは、最大長さが1.5μm以下であるラメラセメンタイトの面積とする。
<ラメラ間隔Lおよびその標準偏差の測定方法>
ラメラ間隔Lおよびその標準偏差の測定は、以下のように行うことができる。
熱間圧延線材を切断し、長手方向と垂直な横断面を観察できるように樹脂埋めした後、研磨紙やアルミナ砥粒で研磨して鏡面仕上げしたものを試料とし、5個作製する。これらを3%ナイタール溶液もしくはピクラールで腐食して、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、各試料の中心部(線材の半径をRとして、線材の中心からR/3以下の領域)を倍率5000倍以上で観察する。
次に、その観察視野内において、ラメラセメンタイトの向きがそろい、かつ、ラメラセメンタイトが観察面に対して、傾斜していないと判断される箇所を倍率10000倍以上で撮影を実施する。なお、同じ観察視野において複数のラメラセメンタイトが条件を満たす場合は、最もラメラ間隔が小さい箇所を撮影する。同様の方法で、各試料で視野が重ならないように5視野分の撮影を行う。
それぞれの撮影した写真において、ラメラセメンタイトの長手方向に対して垂直に、ラメラの10間隔分の長さの直線をひいて、その直線の長さを測定する。その直線の長さを10で除することで、その箇所のラメラ間隔を測定することができる。
作製した5個の試料かつ各試料5視野分、全25箇所において、同様の方法でラメラ間隔を測定し、その平均をその熱間圧延線材のラメラ間隔Lとし、さらに全25箇所のラメラ間隔の標準偏差を、熱間圧延線材における標準偏差とする。
<熱間圧延線材の引張強度の測定方法>
まず、コイル状に巻き取られた熱間圧延線材(線材コイル)から非定常部を除き、線材の一端から500m離れた位置と、この一端から600m離れた位置との間から、長さ20mの線材(第1部分)を採取する。採取した20m線材(第1部分)を長さ方向に更に5分割した各区間から、等間隔となるよう8本以上の複数のサンプルを採取し、引張試験に供する。それらの平均を第1部分の引張強度とする。また、線材の他端から500m離れた位置と、この他端から600m離れた位置との間から、長さ20mの線材(第2部分)を採取し、以後同様にして第2部分の引張強度を求める。得られた第1部分と第2部分それぞれの引張強度の平均を熱間圧延線材の平均引張強度TSaveとする。
また、前述した第1部分と第2部分それぞれにおいて、各区間における最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差を各区間で測定し、その中で最も大きい値を区間内の引張強度のばらつきと評価する。
また、上記引張試験の結果から、第1部分および第2部分それぞれを5分割した前述の各区間における平均の引張強度を測定し、隣接する区間の平均引張強度の差分を線材の長さ方向の引張強度のばらつきとする。
なお、本実施形態に係る熱間圧延線材(線材コイル)は、その全長が1200m以上であることが好ましい。
次に、本実施形態に係る熱間圧延線材の製造方法について説明する。
なお、以下に説明する熱間圧延線材の製造方法は一例であり、以下の手順および方法で限定するものではなく、本発明の熱間圧延線材の構成を実現できる方法であれば、如何なる方法を採用することも可能である。
本実施形態に係る熱間圧延線材を製造する場合、金属組織の面積率、パーライト中のセメンタイトの形状等、上述した各条件を満たし得るように、鋼の成分や各工程、及び各工程における条件を設定すればよい。
また、伸線加工後の伸線材の線径や必要とされる強度と延性に応じて、製造条件を設定することができる。
まず、熱間圧延に供する材料は、通常の製造条件を採用することができる。例えば、上記成分の鋼を鋳造し、鋳造片を分塊圧延にて、線材圧延に適した大きさの鋼片(一般にビレットと呼ばれる線材圧延前の鋼片)を製造し、熱間圧延に供する。
線材の圧延に際しては、上記鋼片を950〜1150℃に加熱し、仕上圧延開始温度を800℃以上950℃以下に制御する。線材の圧延温度は放射温度計により測定されたものであり、鋼材の表面温度を意味する。
仕上げ圧延後の線材は加工発熱のため、仕上圧延開始温度よりも上昇するが、巻取り温度を800℃以上940℃以下に制御する。巻取り温度が800℃未満では、オーステナイト粒径が微細化し、初析セメンタイトや粒界フェライトが析出しやすくなる他、メカニカルなスケールはく離性も低下する。一方、940℃超ではオーステナイト粒径が過剰に大きくなり、伸線加工性が低下する。巻取り温度は、より好ましくは830℃以上920℃以下であり、更に好ましくは850℃以上900℃以下である。
熱間圧延線材は、巻取り後の冷却中に、オーステナイトからパーライトへ変態する。そのため、巻取り後の冷却速度は、組織や強度、延性を制御する重要な因子である。
具体的には、巻取り後、650℃までの冷却速度1を10.0℃/s以上、40.0℃/s以下とし、650℃から590℃までの冷却速度2を5.0℃/s以上、10.0℃/s以下とし、590℃から400℃までの冷却速度3を10.0℃/以上で冷却する。
冷却速度1が10.0℃/s未満では初析セメンタイトの抑制が困難であるため10.0℃/s以上とする。好ましくは15.0℃/s以上である。一方、冷却速度1を40.0℃/s超とすると、メカニカルなスケールはく離性の低下が起きる可能性が大きくなる他、また冷却の設備コストが増加するため、40.0℃/s以下とする。好ましくは、30.0℃/s以下である。
また、冷却速度2において、10.0℃/s超では変態温度が低下し、ラメラ間隔が過剰に小さくなり、引張強度が過剰に高くなったり、引張強度のばらつきが大きくなる他、ラメラセメンタイト長さが1.5μm以下の領域が増加する。そのため、冷却速度2は10.0℃/s以下とする。好ましくは、9.5℃/s以下、より好ましくは9.0℃/s以下、さらに好ましくは8.0℃/s以下とする。一方、冷却速度2が5.0℃/s未満では引張強度が低くなりすぎ、伸線材やブルーイング材の引張強度が不足する可能性が高くなる。また、ラメラ間隔Lの標準偏差が大きくなり、伸線材やブルーイング材の延性が低下する可能性がある。そのため、冷却速度2は5.0℃/s以上、好ましくは6.0℃/s以上、である。
さらに、冷却速度3が10.0℃/s未満では、セメンタイトが分断し、ラメラセメンタイト長さが1.5μm以下の領域が増加する。そのため、冷却速度3は10.0℃/s以上とする。好ましくは、11.0℃/s以上である。
なお、圧延線材の温度は放射温度計により測定した。また、一般に線材の圧延においては、圧延後、リング状に巻き取られて冷却されており、圧延線材の重なりが多い密部と、重なりが少ない疎部がある。本発明では巻取り後の圧延線材の温度は、リングが重なっている箇所(密部)を測定した。
本発明の成分組成を有し、製造条件を上記のように調整することにより、熱間圧延線材の組織や引張強度を本発明の範囲内とすることができる。
以下、本発明に係る熱間圧延線材の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
表1A、Bに化学組成を、表2A、Bに熱間圧延条件を、表3A、Bに熱間圧延線材の組織評価を、表4A、Bに引張特性および伸線材やブルーイング材の引張特性および捻回特性を評価した結果を示す。表2A、Bにおける冷却速度1〜3は下記の通りである。また、表1〜表4で本発明範囲および好適な範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
冷却速度1:巻取り後650℃までの冷却速度
冷却速度2:650℃から590℃までの冷却速度
冷却速度3:590℃から400℃までの冷却速度
A1〜24は本発明例であり、B1〜17は成分または熱間圧延条件のいずれかが適正範囲外となり、熱間圧延線材の組織や機械的特性が本発明の適正範囲から外れたものである。
Figure 2019112703
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本発明例、比較例とも、ビレットを加熱炉にて1000〜1200℃まで加熱したのち、仕上げ圧延前温度および仕上圧延にて加工発熱で上昇した鋼材温度を制御し熱間圧延を行った。
その後、リング状に巻取り冷却するが、このときの巻取り温度、巻取り後650℃までの冷却速度(表1の冷却速度1)、650℃から590℃までの冷却速度(冷却速度2)、590℃からから400℃までの冷却速度(冷却速度3)を表1に示す値とした。
得られた熱間圧延線材の中心部の初析セメンタイト面積率および粒界フェライト、ベイナイト、マルテンサイトの合計面積率は、前述の方法に従い評価した。なお、本発明例、比較例いずれも、線材中心部の組織は、パーライトを主組織とし、残部が初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイト、およびマルテンサイトの1種又は2種以上の複合組織であった。
また、ラメラ間隔Lやラメラ間隔Lの標準偏差の測定も、前述の方法に従った。測定に際しては、各熱間圧延線材から5サンプル採取し、各サンプルから5視野ずつ合計25視野で倍率10000〜20000倍で撮影し、ラメラ間隔およびラメラ間隔の標準偏差測定を行った。
また、得られた熱間圧延線材の引張試験は以下のようにして行った。
まず、得られた熱間圧延線材のうち、圧延先端から尾端側へ550mの位置(フロント部)から前後10mずつ長さ20mの熱間圧延線材(第1部分)を採取する。同様にして、圧延尾端から先端側へ550mの位置(テール部)から前後10mずつ長さ20mの熱間圧延線材(第2部分)を採取する。
次に、採取した各20m熱間圧延線材(第1部分および第2部分)を長さ方向に5分割(1区間;4m)し、各区間から、等間隔になるようにサンプルを8本、各20m熱間圧延線材(第1部分および第2部分)で合計80本採取し、引張試験に供した。その80本のサンプルの引張強度の平均を熱間圧延線材の引張強度TSaveとした。
なお、第1部分ならびに第2部分それぞれにおいて、各区間における最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差を測定し、その中で最も大きい値を「区間内の引張強度ばらつき」とした。
また、第1部分および第2部分それぞれを5分割(1区間;4m)した前述の各区間における平均引張強度をそれぞれ測定し、隣接する区間の平均引張強度を比較し、その差分をそれぞれ求めた。その中で最も大きい差分を「隣接する区間の平均引張強度の差」とした。
なお、サンプル長さは400mmとし、クロスヘッドスピードを10mm/min、治具間を200mmとして、引張試験を行った。
なお、一般的に、熱間圧延線材は、熱間圧延後に冷却する際、連続的にずれながら一部が重なったリング状態(線材コイル)とされることが多い。この場合の1リングの長さは、線材の線径や製造装置等によって異なるが、一般的には1リング数m程度としてリング状にされることが多く、そのような場合は、本実施例における第1部分や第2部分を分割(1区間;4m)した各「区間」というのはこの1リングに相当する。すなわち、1リングの長さが例えば4mm程度の熱間圧延線材であった場合は、上記「区間内の引張強度ばらつき」が大きいものは「1リング内の引張強度ばらつき」が大きいものとして評価することも可能である。同様に、上記「隣接する区間の平均引張強度の差」が大きいものは「隣接するリング間の差(ばらつき)」が大きいものとして評価することも可能である。
上記のようにして得られた熱間圧延線材を用いて、パテンティング処理を施すことなく、伸線加工(乾式伸線加工)を行い伸線材とした。
乾式伸線加工は、熱間圧延線材10リングを用いて真歪2.0以上の加工を行った。なお、乾式伸線加工は伸線前処理として、スケール除去は酸洗で行い、その後、石灰皮膜処理を行い、1パス当たりの減面率を17〜23%として伸線した。
得られた伸線材、およびこの伸線材をソルト浴にて450℃で10秒間保持するブルーイング処理をしたブルーイング材それぞれを用いて、引張試験および捻回試験を実施した。
引張試験は、サンプル数3本、サンプル長さ200mmとし、クロスヘッドスピード10mm/min、治具間100mmで行い、それらの平均で引張強度を評価した。
なお、本発明においては、伸線材で引張強度2300MPa以上、ブルーイング材で引張強度2100MPa以上を良好とした。
捻回試験はサンプルの直径をd(mm)とした際、治具間100×d(mm)で、各サンプルの引張強度の1%の荷重を付与しながら、破断するまで捻りを加えた。この試験を各3本ずつ行い、破断するまでの捻った総回転数の平均(以下、捻回値と称する)およびデラミネーションが生じたかどうかで評価した。
なお、本発明では、伸線材で捻回値31回転以上、ブルーイング材で26回転以上を良好とした。
表2において、試験例のA1〜24は、いずれも本発明例であり、すべての熱間圧延線材で、パテンティング処理を施すことなく真歪2.0以上の伸線加工を施したうえで、伸線材およびブルーイング材ともに、強度と延性に優れた特性を得られた。
一方、B1〜17の試験例は、本発明の要件のいずれかを満たしていないため、伸線材やブルーイング材の強度や延性が劣位であった。
B1〜B12は本発明の成分範囲が外れており、伸線材もしくはブルーイング材の引張強度や捻回特性が低下した例である。
B1はCが過剰に添加されたため、初析セメンタイトが増加し、さらにはラメラ間隔が小さくなり、結果、伸線材やブルーイング材の捻回特性が低下した例である。
B2はSi量が、B3、B4はSi量およびSi+Cr量が低下し、伸線材やブルーイング材の引張強度や捻回特性が低下した例である。
B5、B8は、SiやSi+Crが過剰に添加されたため、伸線材やブルーイング材の捻回特性が低下した例である。
また、B6、B7およびB9はCr量、Mn量、Cr+Mn量の少なくとも1つが過剰であるため、熱間圧延線材にマルテンサイトが析出し、断線が発生した例である。
B10はCr量が低下したため、粒界フェライトやベイナイトの面積率が増加し、結果、伸線材やブルーイング材の引張強度や捻回特性が低下した例である。
B11はCr+Mn量が小さく、熱間圧延線材の引張強度が低下したため、伸線材やブルーイング材の引張強度や延性が低下した例である。
B12はCuが過剰に添加されたため、熱間圧延線材に粗大な表面疵が生成し、伸線材やブルーイング材の捻回特性が低下した例である。
B13〜17については、成分は本発明の範囲内であるものの組織が範囲外であるため、伸線材やブルーイング材の引張強度や捻回特性が低下した例である。
本発明の高強度鋼線用熱間圧延線材は、伸線材もしくは伸線後ブルーイング処理を施したブルーイング材(鋼線)において優れた強度及び延性を有することができる。そのため、本発明の熱間圧延線材を素材として用いることにより、PC鋼線やスチールコードなどの用途に好適な、伸線後およびブルーイング後の延性に優れた高強度鋼線を安定的に生産することができ、産業上の貢献が極めて顕著である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.90〜1.10%、
    Si:0.40%超0.80%以下、
    Mn:0.10〜0.70%、
    Cr:0.10〜0.40%
    を含有し、
    Al:0.003%以下、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下
    に制限し、かつ質量%で下記式(1)、(2)を満たし、残部はFeおよび不純物よりなり、
    線材の半径をRとした時、線材横断面の中心からR/3以内の中心部における金属組織は、パーライトと、残部組織が初析セメンタイト、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのいずれか1種又は2種以上からなり、
    かつ前記中心部において、ラメラセメンタイト長さが1.5μm以下の領域が面積率で20%以下であり、
    かつ前記中心部において、初析セメンタイトの面積率が0.50%以下、粒界フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率が8.0%以下であることを特徴する熱間圧延線材。
    0.50≦Si(%)+Cr(%)≦0.90 ・・・(1)
    0.40≦Cr(%)+Mn(%)≦0.80 ・・・(2)
    上記の(1)、(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
  2. 更に、質量%で、Ni:0.50%以下、Co:1.00%以下、Mo:0.20%以下、B:0.0030%以下、Cu:0.15%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延線材。
  3. 線材の一端から500m離れた位置と前記一端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第1部分とし、
    線材の他端から500m離れた位置と前記他端から600m離れた位置との間で任意に選択した20mの長さの領域を第2部分としたとき、
    前記第1部分及び前記第2部分それぞれの引張強度の平均である平均引張強度TSaveが下記の式(3)を満たし、
    さらに、前記第1部分及び前記第2部分をそれぞれ、長さ方向に5等分した各区間において、最大引張強度TSmaxと最小引張強度TSminの差が100MPa以下であり、かつ、隣接する区間の平均引張強度の差が20MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延線材。
    1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+200<TSave(MPa)<1000×C量(%)+100×Si量(%)+125×Cr量(%)+300 ・・・(3)
    上記の(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
  4. 前記中心部において観察されるラメラ間隔Lが下記の式(4)を満たし、かつ前記ラメラ間隔Lの標準偏差が30nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱間圧延線材。
    −65×(Si(%)+Cr(%))+130<L(nm) ・・・(4)
    上記の(4)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。
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