JP2019112669A - 酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
Description
光学設計とは光ディスクを構成する各層の屈折率と膜厚を調整することにより、情報の記録や再生のために光ディスクに照射されるレーザーの反射、吸収、透過を最適化することである。これにより、たとえば再生信号品質の最適化や、複数の記録層を備える多層ディスクの場合には各層からの信号強度のバランスを最適化することなどができる。
例えば、特許文献1,2においては、酸化チタン(TiOX)からなる高屈率膜を成膜する酸化物焼結体スパッタリングターゲットが提案されている。なお、これら特許文献1、2においては、酸化チタンに対して、クロム、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、珪素、アルミニウムから選ばれる金属の酸化物を添加した酸化物膜も提案されている。
さらに、特許文献4においては、酸化チタンと酸化ニオブを含有する酸化物膜を成膜する薄膜成膜用スパッタリングターゲットが提案されている。
(1)式:f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)≧0.35
(2)式:0.3≧f(2)=a/(1−b/2)≧0.1
(3)式:f(3)=d/(1−b/2)≧0.1
上述の(1)式、(2)式、(3)式を満足することを特徴としている。
また、上述の(2)式を満足しているので、屈折率が高い酸化物膜を成膜することが可能となる。
さらに、上述の(2)式及び(3)式を満足しているので、熱を加えても結晶化せずに非晶質膜となり、膜表面の平滑性を維持することができる。
この構成の酸化物スパッタリングターゲットによれば、比抵抗値が0.1Ω・cm以下であるので、DCスパッタ法によって酸化物膜を安定して成膜することができる。
本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、例えば光ディスク等に用いられる高屈折率の酸化物膜を成膜するものである。本実施形態では、屈折率が2.1以上である酸化物膜を成膜するものとしている。
(2)式:0.3≧f(2)=a/(1−b/2)≧0.1
(3)式:f(3)=d/(1−b/2)≧0.1
なお、Si、Nb、Ti及びZrの全原子数に対するSiの原子数比をa、Nbの原子数比をb、Tiの原子数比をc、Zrの原子数比をdとしていることから、a+b+c+d=1となる。
Nb及びTiを主とする酸化物(例えばNb2O5、TiO2)は、化学量論比から若干還元された状態(例えばNb2O4.8等、TiO1.8等)とすることで、導電性を有することになり、酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗値が低くなる。
ここで、f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)が0.35より小さいと、Nb及びTiの含有量が少なく、導電性が不十分となり、酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗値が高くなって、DCスパッタによって安定して成膜することができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、
(1)式:f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)≧0.35
を満足するものとしている。
なお、導電性をさらに向上させるためには、f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)を0.40以上とすることが好ましく、0.50以上とすることがさらに好ましい。
成膜した酸化物膜は、Siを含むことによって非晶質膜となり、熱を加えた場合であっても結晶化しにくくなる。一方、Siの含有量が多くなると、成膜した酸化物膜の屈折率が低下する傾向にある。
ここで、f(2)=a/(1−b/2)が0.1よりも小さいとSiの含有量が少なくなり、熱を加えた際に酸化物膜が結晶質になりやすく、膜表面の平滑性が低下してしまうおそれがある。一方、f(2)=a/(1−b/2)が0.3よりも大きいとSiの含有量が多くなり、成膜した酸化物膜の屈折率を2.1以上とすることができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、
(2)式:0.3≧f(2)=a/(1−b/2)≧0.1
を満足するものとしている。
なお、熱を加えた際の酸化物膜の結晶化をさらに抑制するためには、f(2)=a/(1−b/2)を0.12以上とすることが好ましく、0.15以上とすることがさらに好ましい。一方、成膜した酸化物膜の屈折率をさらに高くするためには、f(2)=a/(1−b/2)を0.25以下とすることが好ましく、0.20以下とすることがさらに好ましい。
成膜した酸化物膜は、Zrを含むことによって非晶質膜となり、熱を加えた場合であっても結晶化しにくくなる。
ここで、f(3)=d/(1−b/2)が0.1よりも小さいとZrの含有量が少なくなり、熱を加えた際に酸化物膜が結晶質になりやすく、膜表面の平滑性が低下してしまうおそれがある。以上のことから、本実施形態においては、
(3)式:f(3)=d/(1−b/2)≧0.1
を満足するものとしている。
なお、熱を加えた際の酸化物膜の結晶化をさらに抑制するためには、f(3)=d/(1−b/2)を0.15以上とすることが好ましく、0.20以上とすることがさらに好ましい。
また、f(3)=d/(1−b/2)が大きくなる過ぎるとZrの含有量が多くなり過ぎターゲットの比抵抗が増大して異常放電が発生しやすくなるおそれがある。以上のことから、f(3)=d/(1−b/2)は0.5より小さくすることが好ましく、0.4以下とすることがさらに好ましい。
酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗値が0.1Ω・cmを超えると、DCスパッタを安定して行うことができなくおそれがあった。また、異常放電が発生しやすくなり、これに起因してパーティクルが発生するおそれがあった。
以上のことから、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットにおいては、比抵抗値を0.1Ω・cm以下とすることが好ましく、0.05Ω・cm以下とすることがさらに好ましい。
そして、これらの酸化物粉末を、上述の(1)式、(2)式、(3)式を満足する組成比となるように、ボールミル等を用いて混合して、混合原料粉末を準備する(混合原料粉末準備工程S01)。
この焼結工程S02により、酸化ニオブ粉末及び酸化チタン粉末の一部が還元され、焼結体の導電性が確保されることになる。
(1)式:f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)≧0.35
を満足しているので、酸化ニオブ及び酸化チタンの含有量が確保され、酸化ニオブ及び酸化チタンの一部が焼結工程S02で還元されることにより、焼結体の導電率が向上する。よって、酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗値が低くなり、DCスパッタによって安定して成膜することが可能となる。
(2)式:0.3≧f(2)=a/(1−b/2)≧0.1
を満足しているので、Siの含有量が低く抑えられ、屈折率が高い酸化物膜を成膜することが可能となる。また、Siを一定量以上含有することで、熱を加えた場合でも酸化物膜が結晶化しにくく、膜表面の平滑性を向上させることができる。
(3)式:f(3)=d/(1−b/2)≧0.1
を満足しているので、Zrを一定量以上含有することで、熱を加えた場合でも酸化物膜が結晶化しにくく、膜表面の平滑性を向上させることができる。
これらの酸化物粉末を、所定の組成比となるように、秤量した。
得られた焼結体に対して機械加工を施して、直径152.4mm、厚さ6mmの円板状の酸化物スパッタリングターゲットをそれぞれ2枚作製した。
作製した2枚の酸化物スパッタリングターゲットのうちの1枚を比抵抗値の測定に用いた。また、比抵抗値の測定を実施した後、この酸化物スパッタリングターゲットから試料片を採取し、金属元素の分析を実施した。さらに、残りの1枚をスパッタ試験及び膜評価に用いた。
上述の酸化物スパッタリングターゲットから採取した試料片を蛍光X線分析装置(XRF)により分析して、Si,Nb,Ti,Zrの原子比を得た。また、この分析結果から上述のf(1)、f(2)、f(3)を算出した。算出結果を表1に示す。
比抵抗値は、四探針法により測定した。測定は、ターゲットスパッタ面(円)の中心点で実施した。測定結果を表2に示す。
酸化物スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これをマグネトロン式のスパッタ装置に装着し、以下の条件でスパッタ成膜を行った。以下の条件で60分間連続放電させ、その間の異常放電回数をDC電源に搭載されている異常放電計測機能によって計測した。この間異常放電が検出されても放電が持続すればDC可と判断した。評価結果を表2に示す。
到達真空度:5×10−5Pa以下
放電ガス流量:Ar=47sccm、O2=3sccm
放電ガス全圧:0.67Pa
放電電力:DC1000W
上記とは別に直径12センチのポリカーボネート基板上に酸化物膜を膜厚500nmで成膜し、得られた酸化物膜を、誘導結合プラズマ発光分光(ICP)装置を用いて分析した。その結果、酸化物膜は、ほぼ酸化物スパッタリングターゲットの組成と同じであることを確認した。
上述のスパッタ条件で、Si基板上に膜厚30nmの酸化物膜を成膜した。このとき、基板−ターゲット間距離を70mmとした。
この酸化物膜の屈折率を、分光エリプソメーターを用いて、入射角度75°、測定波長405nmで測定した。評価結果を表2に示す。
上述のスパッタ条件で、Si基板上に膜厚100nmの酸化物膜を成膜した。このとき、基板−ターゲット間距離を70mmとした。
熱処理前の酸化物膜が非晶質であることをXRD(θ−2θ法)で確認後、上記酸化物膜に対して、下記に示す条件で熱処理し、熱処理後の酸化物膜についてXRD(θ−2θ法)によって非晶質であるか否かを評価した。評価結果を表2に示す。なお、熱処理後の酸化物膜が非晶質であった本発明例1のXRD結果を図2に、熱処理後の酸化物膜が結晶質であった比較例7のXRD結果を図3に示す。
使用炉:赤外線ゴールドイメージ炉
雰囲気:真空
保持温度:600℃
保持時間:30分
Claims (2)
- 金属元素として、Siと、Zrと、NbおよびTiの少なくともいずれかと、を含む酸化物からなり、
Si、Nb、Ti及びZrの全原子数に対するSiの原子数比をa、Nbの原子数比をb、Tiの原子数比をc、Zrの原子数比をdとした場合に、
(1)式:f(1)=(b/2)/(1−b/2)+c/(1−b/2)≧0.35
(2)式:0.3≧f(2)=a/(1−b/2)≧0.1
(3)式:f(3)=d/(1−b/2)≧0.1
上述の(1)式、(2)式、(3)式を満足することを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。 - 比抵抗値が0.1Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物スパッタリングターゲット。
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