JP2019111556A - 熱交換器用片面ろうフィン材および熱交換器 - Google Patents
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Abstract
Description
ろう付けタイプの熱交換器は、偏平管を用いてコルゲート型のフィンを上下から挟み込むようにろう付け接合する構成であるのに対し、拡管タイプの熱交換器は、丸孔を設けたフィンに銅管を差し込み、差し込み後に銅管を機械的に拡管することでフィンと銅管を接合する構成を採用している。
このブレージングシートは、ろう付け加熱後の強度、ろう付け性、繰り返し曲げ性に優れた上に耐孔食性にも優れるという特徴を有している。
この熱交換器は、ブレージングシートをろう付けした場合、ろう材表面にSiが一部残留し、ここに結露水などが存在すると、Si残渣によりろう材層の表面電位が貴となり、フィンの芯材とろう材層との間に電位差が生じ、フィンの腐食摩耗量が多くなるという不具合を改善している。
偏平管の短側面側に犠牲防食層を設けていない場合、偏平管の上下両面に犠牲防食層を設けていたとしても、短側面側の長さや幅の大きさによっては犠牲防食効果が不充分となり、短側面側の一部に腐食を生じるおそれがある。
また、長期間に渡り、熱交換器の性能を維持するためには、腐食によるフィンの脱落やフィンの伝熱面積の減少を抑制する必要がある。
本発明の熱交換器用フィン材は、先に記載のSiの濃度勾配による表裏面の電位差が10mV以上生成され、熱交換器用チューブにろう付けされることを特徴とする。
本発明の熱交換器用片面ろうフィン材において、前記Si含有層が質量%で、Si:5〜10%、Zn:0.3%以下、Sr:0.01〜0.1%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることが好ましい。
本発明の熱交換器用片面ろうフィン材において、前記芯材が、質量%で、Mn:0.7〜2%、Zn0.2〜3%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることが好ましい。
本発明の熱交換器において、前記チューブが偏平管であり、その短側面側と前記フィンの卑側の電位差が10mV以上あり、前記短側面側よりも前記フィンの卑側が卑であることが好ましい。
また、フィンの芯材を電位的に卑として面状腐食とすることができ、フィンの伝熱面積を長期間維持し、優れた熱交換性能を長期間維持することができ、更にフィン脱落も生じ難い熱交換器を提供できる。
図1は、本発明に係わるフィン材を適用した熱交換器の一例を示すものである。この熱交換器100は左右に離間し平行に配置されたヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ(偏平管)3と、各チューブ3にろう付けされた波形のフィン(コルゲートフィン)4を主体として構成されている。ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4は、後述するアルミニウム合金から構成されている。
即ち、図2に示す如く、ヘッダーパイプ1、2のスリット6に対してチューブ3の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット部8が形成され、ヘッダーパイプ1、2に対しチューブ3がろう付されている。また、波形のフィン4において波の頂点の部分を隣接するチューブ3の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット部9が形成され、チューブ3の表面側と裏面側に波形のフィン4がろう付されている。
<Si粉末>
Si粉末は、チューブ3を構成するAlと反応し、フィン4とチューブ3を接合するろうを形成するが、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にフラックス中のZnが拡散し、チューブ3の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ3表面のZn濃度がほぼ均一となり、これにより均一なZn溶融拡散層(犠牲陽極層)3Eが形成され、チューブ3の耐食性を向上することができる。
Si粉末の塗布量が1g/m2未満であると、ろう付性が低下する。一方、Si粉末の塗布量が5g/m2を超えると、過剰なろう形成によりフィレットにZnが濃縮しやすくなり、未反応Si残渣が発生するとともに、チューブの腐食深さが大きくなり、フィンの分離を防止しようとする目的の効果が得られない。このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1〜5g/m2とする。好ましくは、塗膜におけるSi粉末の含有量は、1.5〜4.5g/m2、より好ましくは2.0〜4.0g/m2である。ここで用いるSi粉末の粒径は、一例としてD(99)で15μm以下である。D(99)は小径粒側からの体積基準の積算粒度分布が99%となる径である。
Zn含有フラックスは、ろう付に際し、チューブ3の表面に犠牲陽極層3Eを形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付時にチューブ3の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。
非Zn含有フラックスは、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2SiF6等のフッ化物系に加えて、KCl、BaCl、NaCl等の塩化物系がある。市販されている商品(製品)では、例えば、フッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスがあり、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られており、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、Cs(x)K(y)F(z)などを例示できる。また、他に、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2AlF5・5H2O等のフッ化物を添加したフッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを用いることもできる。
Zn含有フラックスを用いるか、Zn含有フラックスに加えてこれらの非Zn含有フラックスを添加することでろう付け性向上に寄与する。
Zn含有フラックスの塗布量が3.0g/m2未満であると、犠牲陽極層の形成が不十分になり、第1のフィレット部8の耐食性が低下する。一方、塗布量が20g/m2を超えると、フィレット部におけるZn濃縮が顕著になり、フィレット部の耐食性が低下して、フィン分離を加速する。このため、Zn含有フラックスの塗布量を3.0〜20g/m2とする。
Zn含有フラックスは、KZnF3を主体として用いることが好ましいが、KZnF3に、必要に応じて、K1−3AlF4−6、Cs0.02K1−2AlF4−5、AlF3、KF、K2SiF6などのZnを含有しないフラックスを混合した混合型のフラックスを用いても良い。塗布量はZn含有フラックスが3.0〜20g/m2の範囲であれば良い。
なお、本明細書において数値範囲を表示するために、上限値と下限値を「〜」を用いて連続表記した場合、特に説明しない限り、上限値と下限値を含むものとする。このため、3.0〜20g/m2は3.0g/m2以上20g/m2以下を意味する。
非Zn含有フラックス塗布量が1g/m2未満であると、非Zn含有フラックスを添加した効果が得られず、非Zn含有フラックス塗布量が10g/m2を超えると、ろうの流動性が過剰に向上する事によって想定以上のZnがフィレットに濃縮して、フィン剥離に繋がる問題がある。
ろう付用塗膜7には、Si粉末、Zn含有フラックス、非Zn含有フラックスに加えてバインダーを含む。また、非Zn含有フラックスは略しても良い。バインダーの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
「バインダー塗布量:0.2〜8.3g/m2」
バインダーの塗布量が0.2g/m2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダーの塗布量が8.3g/m2を超えると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付性が低下する。このため、バインダーの塗布量は、0.2〜8.3g/m2とすることが好ましい。なお、バインダーは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
以下、チューブ3を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
SiはMnと同様に強度向上効果を有する元素である。
Siの含有量が0.05%未満では、強度向上の効果が不十分である。一方、Siが1.0%を超えて含有されると、押出性が低下する。従って本発明におけるチューブ3のSi含有量は、0.05〜1.0%に設定することが好ましい。
<Mn:0.1〜1.5%>
Mnは、チューブ3の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させる元素である。また、Mnは、押出し成形時の押出性を向上する効果をも有する。更にMnは、ろうの流動性を抑制し、フィレットとチューブ表面のZn濃度差を小さくする効果がある。
Mnの含有量が0.1%未満では、耐食性及び強度向上の効果が不十分であり、ろうの流動性を抑制する効果も低下する。一方、Mnを1.5%を超えて含有させると、押出圧力増により押出性が低下する。従って本発明におけるMn含有量は、0.1〜1.5%にすることが好ましい。
Cuは、チューブ3の耐食性に影響を与える元素であり、0.1%未満では問題ないが0.1%以上含有させると自己腐食速度の増加により耐食性が低下し、チューブ表面の犠牲陽極層作製が困難になる傾向となる。
芯材4aは、質量%で、Mn:0.7〜2%を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金から形成されていることが好ましい。また、芯材4aは、質量%で、Mn:0.7〜2%、Zn:0.2〜3%を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金から形成されていても良い。なお、前記アルミニウム合金において、Fe:0.2%以下、あるいは、Si:0.15%以下であることが好ましい。
以下、芯材4aを構成するアルミニウム合金の各構成元素含有量とそれらの限定理由について個別に説明する。
Mnはフィン3を構成するアルミニウム合金の強度に影響があり、0.7%未満では強度低下によりプレス成型性に劣り、2%を超える含有量では強度が高くプレス成型性に劣り、生産性に問題を生じ易い。
<Zn:0.2〜3%>
Znはフィン3を構成するアルミニウム合金の耐食性(犠牲防食効果)に影響があり、0.2%未満では犠牲防食効果が不足し、3%を超える含有量では自己腐食速度の劣化から、犠牲防食効果の不足になり易いなどの問題がある。
Feはフィン3を構成するアルミニウム合金の自己耐食性に影響があり、0.2%を超える含有量では自己腐食速度の劣化から、犠牲防食効果の不足になり易い。
<Si:0.15%以下>
Siはフィン3を構成するアルミニウム合金の強度に影響があり、0.15%を超える含有量では、心材との電位差が得られにくくなるという面で問題がある。
Si含有層4bは、質量%でSi:2〜12%を含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることが好ましい。また、このアルミニウム合金において、Zn:0.3%以下、あるいは、Sr:0.01〜0.1%を含んでいても良い。
<Si:2〜12%>
SiはSi含有層4b中にSi粒子として含まれる。Si含有層4b中にSiを2〜12%含有させるのは、SiがSi含有層4bの融点を下げ、溶融ろうとしての流動性を高めるとともに、ろう付け時の加熱温度で溶融したSi含有層から芯材4aの厚さ方向にSiを拡散させ、ろう付け後のフィン4の厚さ方向にSi濃度の傾斜を生成するためである。Si濃度の傾斜を生成することでSi含有層4bを設けた側のフィン4の表面とSi含有層4bを設けていない側のフィン4の表面の電位差を10mV以上生成することができる。
Zn含有量を0.3%以下とするのは、Si含有層との電位差を取りやすくし、面状腐食の効果を得るためである。
<Sr:0.01〜0.1%>
Srは、Si含有層4b中に添加することによりSi粒子を微細化する効果を奏する。また、SrはマトリックスのSi固溶量を大きくするので、電位を貴にできる。これにより、フィン4とチューブ3の電位差を設け易くすることができる。
ヘッダーパイプ1、2を構成するアルミニウム合金は、Al−Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。
例えば、Mn:0.05〜1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.15%を含有することができる。
図3は、フィン材4Aとの接合面にろう付用塗膜7を塗布したチューブ3を使用し、ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン材4Aを組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、ろう付けする前の状態を示している。
図3に示す熱交換器組立体101において、チューブ3はその一端をヘッダーパイプ1に設けたスリット6に挿入し取り付けられている。また、ヘッダーパイプ1、2の芯材11の表面側にろう材層13が設けられている。
ろう付の条件は特に限定されない。一例として、炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体101を昇温速度5℃/分以上でろう付温度(実体到達温度)580〜620℃に加熱し、ろう付温度で必要時間保持し、ろう付温度から常温まで冷却すればよい。
なお、ろう付け時の加熱によりSi含有層4bに含まれているSiが芯材4a側に拡散される。
即ち、芯材4aの厚さ方向においてSi含有層4bを形成していた側に高い濃度のSiが含有され、芯材4aの厚さ方向においてSi含有層4bを形成していない側には殆どSiが拡散されず、殆どSiを有していないか、芯材4aに元々含まれていたSiが存在する。一例として、後述する実施例において得られたSiの濃度勾配について図8に示すように、芯材4aの厚さ方向一側のみの厚さ半分ほどの領域にSiの濃度勾配を有するSi拡散層が形成される。
ろう付けがなされて構成された熱交換器100において、上述の組成のチューブ3とフィン4と犠牲陽極層3Eであるならば、一例として、芯材4aの表面電位が−767mV〜−770mV、チューブ3の表面の犠牲陽極層3Eの表面電位が−900mV、チューブ3において短側面側の表面電位が−710mV〜−740mVの電位関係とすることができる。
このような電位バランスを有することにより、耐食性に優れた熱交換器100とすることができる。具体的には、腐食環境にあると、フィン4が面状腐食となるので、フィン4に近い位置であるチューブ3の短側面側を防食できる。
フィン4の表面電位とチューブ3の短側面側の表面電位の差が10mV未満の場合、フィン3を面状に腐食させる効果が不足し、チューブ3の短側面側の孔食に繋がるおそれがある。
図6にチューブ3の上面側にろう付けされているフィン4についてSi含有層4bが設けられていた側の位置を鎖線で示し、図7にチューブ3の下面側にろう付けされているフィン4についてSi含有層4bが設けられていた側の位置を鎖線で示す。
図6に示す構造において、チューブ3の短側面3D側にろう付け前にろう付塗膜7が形成されていないため、チューブ3の短側面3D側には犠牲陽極層3Eが形成されていない。このため、チューブ3の短側面側の電位は近傍のフィン4の電位よりも貴となる。
図7に示す構造においても、チューブ3の短側面3D側には犠牲陽極層3Eが形成されていないため、チューブ3の短側面3D側の電位は近傍のフィン4の電位より貴となる。
従って、図6に示す構造と図7に示す構造のいずれにおいてもチューブ3の短側面3D側に対し近傍のフィン4を面状腐食とすることができ、チューブ3の短側面3D側に腐食による貫通孔を生成し難い構造を提供できる。このため、腐食環境において長期間使用してもチューブ3に貫通孔の生成し難い、冷媒漏れの生じ難い熱交換器100を提供できる。
Si含有層4bにはろう付け前の状態でSi粒子が含まれており、Si粒子は硬度が高い。このため、金型による打ち抜き加工を想定すると、Si粒子を含むSi含有層4bをフィン材4Aの両面に形成する構造よりも片面側にのみ形成する構造の方が金型の摩耗を抑制することができる。
表1に示す組成のアルミニウム合金からなる厚さ0.13mm、幅17mmのコルゲートフィンを複数作成した。また、コルゲートフィンの片面に表1に示す組成のSi含有層(アルミニウム合金層)をクラッド層として貼り合わせた。
得られた熱交換器について、vsカロメル飽和電極による電位測定(2.67%AlCl3水溶液)、耐食性、貫通孔発生時期、金型摩耗、ろう付け性について試験した。
「フィン材面積減少率」
SWAAT試験(40日)後の評価を行った。腐食によるフィン材面積の残存率は投射面積で評価を行い、SWAAT試験40日後の残存率90%以上は合格と判断できる。
SWAAT試験により偏平管(前述の供試材からなる偏平管)に貫通孔が発生した日数を計測した。200日以上であれば合格と判断できる。
「金型摩耗性」
10万ショット切断加工を行い切断金型の直角部が摩耗し丸みを帯びるため、表面粗さ径で任意の箇所の丸みの形状を測定し10万ショット前の形状と比較し、摩耗面積を求める。A1200(JIS)を比較材として測定し、A1200の摩耗量を100とし、供試材の摩耗面積)が80以上の場合、金型摩耗性を良好と判断した。
「ろう付け性」
ろう付けされた各フィンをチューブからはぎ取り、チューブ表面に残存するフィン接合跡を観察した。そして、未接合箇所(ろう付を行なったが接合部跡が残らなかった箇所)の数をカウントした。一つの試験体に対して100か所の観察を行ない、90か所以上(90%以上)が正常に接合されているものを良好なろう付性を有すると判断した。
「プレス成型性」
コルゲートフィン成型において、所定のフィンピッチが得られているかを評価し、設定値に対し±3%以内であれば○と判断し、±3%を超える場合は×と判断した。
表1のNo.7の試料はSi含有層のSi含有量を多くした試料であるが、金型摩耗が増加した。
表1のNo.9の試料はSi含有層のSr含有量を少なくした試料であるが、フィン表裏面の電位差を10mV以上にできないため、フィン残存面積が小さく、貫通に至る日数が短く、耐食性に問題を生じた。
表1のNo.17の試料は芯材のMn含有量を少なくした試料であるが、強度が低く、プレス成型性が劣る結果となった。
表2のNo.23の試料は芯材のZn含有量を低くした試料であるが、フィン表裏面の電位差を10mV以上にできず、偏平管とフィンの電位差を10mV以上にできないため、フィン残存面積が小さく、貫通に至る日数が短く、耐食性に問題を生じた。
表2のNo.31の試料は芯材のZn含有量を多くした試料であるが、フィン残存面積が小さく、貫通に至る日数が短く、耐食性に問題を生じた。
表2のNo.32の試料は、Si含有層を両面に形成した例である。この例では金型摩耗が増加した。
No.4の試料の芯材の厚さ方向について、Si含有層に近い側にピーク濃度2.0%前後、ピーク幅20μm程度、Si分布幅40μm程度のSi濃度勾配層が形成されていることが判る。また、この試料の芯材に含まれているZn濃度は0.5質量%前後であり、Mn含有量は1.5質量%前後であることがわかる。
No.32の試料の芯材の厚さ方向について、ろう材層に近い側とろう材層から離れた側の両方にピーク濃度を示すようにSiが含有され、芯材に含まれているZn濃度は0.5質量%前後であり、Mn含有量は1.5質量%前後であることがわかる。
これらの対比から明らかなように、芯材の両面側にろう材層を設けた場合、両方のろう材層からSiが芯材側に拡散され、芯材の表裏面両側にSi濃度のピークを生じるため、芯材の表裏面に電位差10mV以上を確保できないことがわかる。
Claims (8)
- 芯材の片面側のみにSi含有層を有し、ろう付け後に、その厚さ方向片面側でSi濃度が高く、反対面側でSi濃度が低いSiの濃度勾配が生成され、熱交換器用チューブにろう付けされることを特徴とする熱交換器用片面ろうフィン材。
- 請求項1に記載のSiの濃度勾配による表裏面の電位差が10mV以上生成され、熱交換器用チューブにろう付けされることを特徴とする熱交換器用片面ろうフィン材。
- 前記Si含有層が質量%で、Si:2〜12%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用片面ろうフィン材。
- 前記Si含有層が質量%で、Si:5〜10%、Zn:0.3%以下、Sr:0.01〜0.1%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用片面ろうフィン材。
- 前記芯材が、質量%で、Mn:0.7〜2%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器用片面ろうフィン材。
- 前記芯材が、質量%で、Mn:0.7〜2%、Zn0.2〜3%、残部アルミニウムと不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器用片面ろうフィン材。
- 複数のフィンと、これら複数のフィンがろう付けされたチューブとを有し、前記フィンがろう付け前の状態において芯材の片面側のみにSi含有層を有したフィン材からなり、前記フィンにろう付け後において、その厚さ方向片面側でSi濃度が高く、反対面側でSi濃度が低いSiの濃度勾配が生成され、表裏面の電位差が10mV以上生成されていることを特徴とする熱交換器。
- 前記チューブが偏平管であり、その短側面側と前記フィンの卑側の電位差が10mV以上あり、前記短側面側よりも前記フィンの卑側が卑であることを特徴とする請求項7に記載の熱交換器。
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