JP2019110838A - 液体麹の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐酸性α−アミラーゼ活性の高い液体麹の製造法の提供。【解決手段】0.1w/v%以上10w/v%以下のゴマの不溶性画分を含有する液体培地で麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造法。【選択図】なし

Description

本発明は、焼酎に代表される発酵飲食品の製造に用いられる液体麹の製造法に関する。
酒類等の製造に用いられる麹には、蒸煮等の処理後の原料に糸状菌の胞子を接種して培養する固体麹と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調製し、これに麹菌の胞子又は前培養した菌糸等を接種して培養する液体麹がある。
日本酒、焼酎、しょうゆ、みそ、みりん等の製造では、固体培養法により製麹された、いわゆる固体麹が広く利用されている。この固体培養法は、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等の麹菌の胞子を、蒸煮した穀類等の固体原料へ散布し、その表面で麹菌を増殖させる培養方法である。
しかしながら、固体培養法は、酵素生産性は非常に高いものの、製麹における温度、水分量、各種栄養成分等の因子を均一にすることが困難であり、開放系で製麹されることも多く雑菌による汚染といった品質管理面の問題もある。
一方、液体培養法は、培養制御や品質管理が容易であり、効率的な生産に適した培養形態であるが、例えば焼酎製造に必要な酵素の生産性が十分でないという問題があるため、液体麹は焼酎麹として採用されていないのが現状である。
焼酎等のアルコール発酵に必要な酵素は、麹菌へのグルコース供給に必要な糖質分解酵素である白麹菌は非耐酸性α−アミラーゼと耐酸性α−アミラーゼという性質の異なる2種類のアミラーゼ遺伝子を有しているが、その発現様式は大きく異なっており、液体培養においては、非耐酸性α−アミラーゼは十分に生産されるものの、焼酎醸造の鍵酵素である耐酸性α−アミラーゼはほとんど生産されないことが知られている。焼酎製造では、焼酎もろみの腐造防止のために、例えばクエン酸を添加して低pH環境下で醸造する。しかし、非耐酸性α−アミラーゼは、低pH条件では速やかに失活してしまうため、焼酎醸造の糖質分解にはほとんど貢献しない。そのため、焼酎醸造の糖質分解に寄与していると考えられる耐酸性α−アミラーゼを、麹菌の液体培養で大量に生成させることが、焼酎製造のために不可欠である。
耐酸性のα−アミラーゼの生産性を向上させる手段としては、培養原料として表面が外皮で覆われた未加工の穀類、豆類、芋類等を含む液体培地で白麹菌及び/又は黒麹菌を培養して、培養物中にグルコアミラーゼと、耐酸性α−アミラーゼとを同時に生成、蓄積させることを特徴とする液体麹の製造方法(特許文献1、2);表面の全部が穀皮で覆われた穀類(但し、粉砕物を除く)、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムから選ばれる1種又は2種である硝酸塩、リン酸2水素カリウム及びリン酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種であるリン酸塩、並びに、硫酸マグネシウム7水和物、硫酸鉄7水和物及び硫酸アンモニウムから選ばれる1種ないし3種である硫酸塩を含有する液体培地で黄麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造方法(特許文献3);表面の全部が穀皮で覆われた大麦、裸麦または小麦を含む液体培地で白麹菌又は黒麹菌を培養する際に、前記液体培地中における大麦、裸麦または小麦の使用量を1.4〜1.8%(w/vol)とすることにより、麹菌培養物中に少なくともグルコアミラーゼと、耐酸性α−アミラーゼと、セルロース分解酵素と、キシラン分解酵素と、を同時に生成、蓄積させることを特徴とする、セルロース分解酵素及びキシラン分解酵素が増強された液体麹の製造方法(特許文献4);表面の全部が穀皮で覆われた穀類並びに硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、酵母菌体、酵母菌体処理物、穀類穀皮及び穀類糠から選ばれる1種以上の窒素源を含有する液体培地で白麹菌または黒麹菌を培養することを特徴とする酵素活性の増強された液体麹の製造方法(特許文献5)など、表面が外皮で覆われた穀類、豆類、芋類等を使用した液体麹の製造方法が多数提案されている。
しかし、通常、焼酎仕込に外皮で覆われた原材料を使用することは無いため、このような方法で液体麹を製造する場合、新たな原料保管施設や倉庫が必要となる。
また、本発明者らは、液体麹の製造法を検討し、米粉(精白米)1.0%、K2HPO4 0.1%、KCl 0.1%、トリプトン 0.6%、MgSO47H2O 0.05%、FeSO4・7H2O 0.001%、ZnSO4・7H2O 0.0003%、CaCl2 0.021%、クエン酸 0.33%、pHを3.0に調整した培地(基本液体培地)に、ヨーグルトを添加することにより耐酸性α−アミラーゼ活性は向上し、ヨーグルトの替わりに牛乳を添加した方が耐酸性α−アミラーゼ活性は更に高くなること、その主な要因は、牛乳に含まれるリン酸カリウムであることを明らかにした(非特許文献1)。
特許第3718679号公報 特許第3718681号公報 特許第4068649号公報 特許第4113252号公報 特許第4083194号公報 特願2016−125055号
第66回日本家政学会、研究発表要旨、2014年
本発明の課題は、耐酸性α−アミラーゼ活性がより向上した液体麹の製造方法及び酒類の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、リン酸カリウム以外の成分で耐酸性α−アミラーゼ活性を向上させる成分を種々探索したところ、亜鉛塩の濃度を一定濃度以上に上昇させた液体培地を用いることにより、耐酸性α−アミラーゼ活性が顕著に向上することを見出した。また、必要な濃度の亜鉛塩は、ゴマ又はゴマ加工物の添加により達成でき、スキムミルクを追加することにより、耐酸性α−アミラーゼ活性はさらに高まることも見出し、特許出願した(特許文献6)。
そしてさらに、より効率的な手段を開発すべく検討し、ゴマの代わりに硫酸亜鉛を使用して液体麹を培養したところ、ゴマを含む培地のほうが耐酸性αアミラーゼ活性値は10%以上高い値を示した。このことは、ゴマには亜鉛以外に耐酸性αアミラーゼ活性を高める要因があることを示す。そこで、さらに検討を進めた結果、ゴマの不溶性画分が硫酸亜鉛、ゴマの脂溶性画分及びゴマの水溶性画分に比べて顕著に耐酸性α−アミラーゼ活性を向上させることを見出した。さらに、ゴマの不溶性画分と同等の成分を有すると考えられたゴマ油を搾った後の残渣(脱脂ゴマ)にも同等以上の効果があることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
〔1〕ゴマの不溶性画分を0.1w/v%以上10w/v%以下の範囲で含有する液体培地で麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造法。
〔2〕ゴマの不溶性画分として、ゴマ油の搾り粕を使用する〔1〕記載の液体麹の製造法。
〔3〕液体培地中に、さらに穀類、芋類及び豆類から選ばれる原料を含有する〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載の液体麹の製造法。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の液体麹を用いて、酒類を製造することを特徴とする酒類の製造方法。
〔5〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の液体麹を用いて、焼酎を製造することを特徴とする焼酎の製造方法。
本発明の方法によれば、液体培地中のゴマの不溶性画分の濃度を所定の範囲にすることで、耐酸性α−アミラーゼ活性が向上した液体麹が効率よく製造できる。また、ゴマの不溶性画分の例としてゴマ油の搾り粕を利用することにより、スキムミルクが不要になる。
これにより、原料費を大幅に削減できると共に、培地への原料投入量が減るため培地がシンプルになり、培養管理をさらに容易にすることが可能となり、品質が一定した清酒、焼酎等を工業的に有利に製造することができる。
ゴマの各画分による耐酸性α−アミラーゼ活性の向上効果を示す図である。無処理は、標準培地(米または大麦)を示す。ゴマ無しは、標準培地(米または大麦)からゴマを除いた培地を示す。脂溶性、水溶性、不溶性は、ゴマの代わりに脂溶性画分、水溶性画分、不溶性画分をそれぞれに対応するゴマ相当量分を加えた培地で培養したものを示す。
本発明の液体麹の製造法は、0.1w/v%以上10w/v%以下のゴマの不溶性画分を含有する液体培地で麹菌を培養することを特徴とする。
本発明に用いられるゴマの不溶性画分とは、ゴマの画分であって、水に不溶であり、かつヘキサン等の脂溶性溶剤にも不溶である画分をいう。脂溶性溶剤としては、ヘキサンを用いるのが好ましい。
当該ゴマの不溶性画分の例としては、すりつぶしたイリゴマにヘキサンを加え、ソックスレー法により脂溶性成分を除去後、乾燥した固形分に加水し、水溶性成分が抽出されなくなった後、さらに乾燥したものが挙げられる。
不溶性画分の例としては、ゴマ油の搾り粕が挙げられる。ゴマ油の搾り粕は、ヘキサンなどの溶剤抽出法、圧搾法などにより製造したもの、またはそれらの混合物が挙げられるが、ヘキサンなどの溶剤が残留していないものでなければならない。このゴマ油の搾り粕には、ゴマの不溶性画分以外に一部水溶性成分を含むが、前記ゴマの不溶性画分の量として培地中に0.1w/v%以上10w/v%以下になるように液体培地中に含有すればよい。
ゴマの不溶性画分の粒度分布は、耐酸性α−アミラーゼ活性向上の点及び培地の流動性の低下防止の点から、2mm未満であるのが好ましく、95質量%以上が1mm未満であるのがより好ましく、80質量%以上が0.5mm未満であるのがさらに好ましい。
ゴマの不溶性画分の液体培地中の含有量は、耐酸性α−アミラーゼ活性向上の点及び培地の流動性の低下防止の点から0.1w/v%以上10w/v%以下である。好ましくは0.1〜5w/v%であり、より好ましくは1.0〜2.5w/v%である。
また、ゴマの不溶性画分を使用することによりスキムミルクを添加せずとも十分な耐酸性α−アミラーゼ活性の向上効果が得られる。ここで、ゴマ油の不溶性画分、例えばゴマ油の搾り粕を使用することによりスキムミルクの添加が不要になった理由として次のことが考えられる。すなわち、スキムミルクは牛乳から乳脂肪分及び水分を除去したものであり、脱脂粉乳である。スキムミルクは、タンパク質、炭水化物及びミネラルを含有し、脂質をほとんど含まないため、炭素源、窒素源となり得る。一方、ゴマは20%程度のタンパク質をはじめ、ミネラル、炭水化物を含むが、表面は殻で覆われているため、これらの成分は溶出し難い状態である。しかし、不溶性画分は殻が破砕されており、これらの成分が溶出しやすくなったことが一因と考えられる。
液体培地には、ゴマの不溶性画分以外に、穀類、芋類、豆類等の発酵原料、リン酸塩、pH調整剤、無機塩、その他の食品衛生法上認められている成分を含有させることができる。
リン酸塩の添加もまた、耐酸性α−アミラーゼ活性向上に有効である。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。
リン酸塩の液体培地中の含有量は、耐酸性α−アミラーゼ活性を向上させる点から、0.0001〜2.0w/v%が好ましく、0.001〜1.5w/v%がより好ましく、0.01〜1.0w/v%がさらに好ましい。
液体培地に添加される発酵原料としては、穀類、芋類、豆類、糖蜜等の糖質を含有する成分や糖質分解酵素の作用により糖類を生成する成分等が挙げられる。穀類としては、米、小麦、大麦、そば、ヒエ、アワ、キビ、コウリャン、トウモロコシが挙げられる。また、芋類としては、サツマイモが挙げられる。豆類としては、大豆、小豆等が挙げられる。これらの発酵原料は、特許文献1〜5のように表面が外皮で覆われた原料でなく、通常の焼酎や酒類の製麹の場合と同様に外皮を削除したものを用いるのが好ましい。例えば、米を用いる場合は、外皮がなくなるまで精米したものを用いるのが好ましい。大麦の場合も外皮がなくなるまで精白したものを用いるのが好ましい。精白したものを発酵原料に使用することで、耐酸性α−アミラーゼ活性を向上させやすくなる。精麦(白)率は、50〜99%の範囲内であることが好ましく、60〜90%の範囲内であることがより好ましく、65〜85%の範囲内であることがさらに好ましい。
これらの発酵原料の液体培地中の含有量は、液体培地の流動性低下による作業性の低下を防止する点から、0.1〜10.0w/v%が好ましく、0.5〜5.0w/v%がより好ましく、1.0〜2.0w/v%がさらに好ましい。
これらの発酵原料は、これに含まれるデンプンを糊化しておくのが好ましい。発酵原料は、例えば蒸煮法、炒ごう等により糊化するのが好ましい。なお、液体培地の殺菌工程において糊化温度以上に加熱する場合は、この処理によりデンプンの糊化も同時に行なわれる。
本発明に用いる液体培地のpHは、例えば、クエン酸、乳酸など食品衛生法で添加が認められている酸類の添加により、湿熱滅菌直後では5.0以下とするのが好ましい。培養全般を通じ、pH7.0以下が望ましく、6.0以下がさらに望ましく、5.0以下が最も望ましい。
本発明に用いる液体培地には、前記成分以外の無機塩、ビタミン類、有機酸を添加することができる。無機塩としては、硝酸ナトリウム等の硝酸塩、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硫酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。また、ビタミン類としては、チアミン塩酸塩、葉酸、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、ビオチン等が挙げられる。有機酸としては、コハク酸が挙げられる。
前記の原料を水と混合することにより得られる麹菌の液体培地は、必要に応じて滅菌処理を行なってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、121℃で15分間行なえばよい。
滅菌した液体培地を培養温度まで冷却後、麹菌を液体培地に接種する。
本発明で用いる麹菌としては、白麹菌としてはアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等、黒麹菌としてはアスペルギルス・アワモリ(Aperigillus awamori)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等が挙げられる。
また、培地に接種する麹菌の形態は任意であり、胞子又は菌糸を用いることができる。
これらの麹菌は1種類の菌株による培養、又は同種若しくは異種の2種類以上の菌株による混合培養のどちらでも用いることができる。これらは胞子又は前培養により得られる菌糸のいずれの形態のものを用いても問題はないが、菌糸を用いる方が対数増殖期に要する時間が短くなるので好ましい。
麹菌の液体培地への接種量には特に制限はないが、液体培地1mL当り、胞子であれば1×104〜1×107個程度、菌糸であれば前培養液を0.1〜10%程度接種することが好ましい。
麹菌の培養温度は、生育に影響を及ぼさない限りであれば特に限定はないが、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜40℃で行なうのがよい。培養温度が低いと、麹菌の増殖が遅くなるため雑菌による汚染が起きやすくなる。培養時間は24〜72時間が適当である。
培養装置は、液体培養を行なうことができるものであればよいが、麹菌は好気培養を行なう必要があるので、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行なう必要がある。また、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように撹拌をするのが好ましい。撹拌条件や通気量については、培養環境を好気的に保つことができる条件であればいかなる条件でもよく、培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
上記の培養法で培養することにより、デンプン分解酵素、セルロース分解酵素、タンパク分解酵素などの酵素、特に耐酸性α−アミラーゼが高生産され、焼酎等の製造に使用できる酵素活性、特に耐酸性α−アミラーゼ活性が向上した液体麹が得られる。
尚、本発明において液体麹とは、培養したそのものの他に、培養物を遠心分離等することにより得られる培養液、それらの濃縮物又はそれらの乾燥物等も包含するものとする。
本発明の製造法で得られた液体麹は、焼酎に代表される酒類等の発酵飲食品の製造に好適に用いることができる。例えば、清酒を製造する場合には、酒母や各もろみ仕込み段階において、焼酎を製造する場合には、もろみ仕込み段階において、しょうゆを製造する場合には、盛り込みの段階において、味噌を製造する場合には、仕込み段階において、みりんを製造する場合は、仕込み段階において、甘酒を製造する場合には、仕込みの段階において、液体麹を固体麹の代わりに用いることができる。
また、得られた液体麹の一部を次の液体麹製造におけるスターターとして用いることもできる。このように液体麹を連続的に製造することにより、安定的な生産が可能になると同時に、生産効率の向上も図ることができる。
また、上記した液体麹を用いて焼酎等の発酵飲食品を製造する場合には、全工程を液相で行なうことができる。全工程を液相で行なう発酵飲食品の製造方法としては、例えば、焼酎を製造する場合、トウモロコシ、麦、米、いも、さとうきび等を掛け原料に用い、該原料を約80℃の高温で耐熱性酵素剤を使用して溶かして液化した後、これに上記した液体麹、及び酵母を添加することでアルコール発酵させたもろみを、常圧蒸留法又は減圧蒸留法等により蒸留して製造する方法が挙げられる。
本発明の方法で得られた液体麹は、その高い酵素活性から、酵素製剤、並びに消化剤などの医薬品などとしての利用も可能である。この場合、得られた麹菌培養物を所望の程度に濃縮・精製し、適当な賦形剤、増粘剤、甘味料などを添加して常法により製剤化すればよい。
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.いりゴマの分画
(1)脂溶性画分の分画
受器の乾燥重量(W0)を測定しておき、ソックスレー法によりn−ヘキサンで16h抽出後に脂溶性画分+受器の乾燥重量(W1)を測定し、W1−W0より脂溶性画分の重量を算出した。今回は、いりゴマ約10gに対し、約130mLのn−ヘキサンを用いて還流させた。
(2)水溶性画分の分画
(1)の操作で、脂溶性画分を分離したゴマをイオン交換水で洗浄、撹拌、遠心分離(12000rpm,10min)、ろ過を繰り返し行った。この操作は、遠心分離後の上清が清澄となり、手持屈折計(AS ONE製 IN−10E)によるBrix測定値が0%を示すまでとした。ろ液を、乾燥重量を測定しておいた受器(W2)に入れ、エバポレーターで水分を除去し、乾燥機(105℃)で乾燥させ、水溶性画分+受器の重量(W3)を測定し、W3−W2より水溶性画分の重量を算出した。
(3)不溶性画分の分画
(2)の残渣を、乾燥重量を測定しておいた受器(W4)にいれ、乾燥機(105℃)で乾燥させ、不溶性画分+受器の重量(W5)を測定し、W5−W4により不溶性画分の重量を測定した。得られた不溶性画分の粒度分布を測定したところ、篩目2mm上が0.0質量%、1mm上が1.4質量%、0.5mm上が18.6質量%、0.15mm上が60.0質量%、0.15mm下が20.0質量%であった。
以上の操作を6回繰り返した結果、各画分の重量比は、いりゴマ100に対し、脂溶性画分62、水溶性画分7、不溶性画分31だった。
実施例2.分画した各画分を使用した液体麹の培養
ゴマを構成するどの画分が耐酸性αアミラーゼ活性を向上させるか確認するため、次の培地組成のゴマに相当する量の各画分を配合し、液体麹を培養した。
<培養条件>
培養容器:坂口フラスコ
菌株:Aspergillus kawachii NBRC 4308株
初発胞子数:1.0×107 spores/mL
培養温度:30℃、
振盪速度:200rpm、
培養時間:72h
<耐酸性α−アミラーゼ活性の測定法>
表3記載の材料を100mLの水道水に溶解し、滅菌した液体培地にAspergillus kawachii NBRC 4308株を接種して培養し、耐酸性α−アミラーゼ活性を測定した。すなわち、500mL坂口フラスコにpH3に調製した表3記載の液体培地100mLを入れ、121℃で20分滅菌後、室温まで冷却した。液体培地に胞子懸濁液を初発胞子数が1×107spore/mLになるように接種した。培養温度は30℃、振とう速度200rpmで72時間培養した。
耐酸性α−アミラーゼの活性測定法は、J. Ferment. Bioeng.,77, 483-489(1994)に記載の方法を若干改良し、培養物を酸処理することで非耐酸性α−アミラーゼ活性を失活させた後、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて行なった。より具体的には、培養液1mLに9mLの100mM酢酸緩衝液(pH3)を添加し、37℃で1時間酸処理を行なった後に、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて測定した。
その結果、図1の通り、不溶性画分に耐酸性αアミラーゼ活性を大幅に向上させる要因があると考えられた。また、脂溶性画分を使用した場合はやや低くなり、水溶性画分を添加した場合はやや高くなった。
実施例3.
ゴマの不溶性画分が耐酸性αアミラーゼ活性を高めることが分かった。一方、いりゴマ、ゴマ不溶性画分、市場に流通するゴマ油の搾り粕(脱脂ゴマ)を分析したところ、脱脂ゴマはゴマ不溶性画分を含有すると考えられた。ゴマは表4に示すように脂質を多く含むため、この脂質を10%以下にしたゴマであれば、ゴマ不溶性画分として使用することが可能である。
そこで、脱脂ゴマをゴマの不溶性画分として利用可能か確認するため、前出標準大麦培地のゴマを脱脂ゴマに置き換え、液体麹を作製し、耐酸性αアミラーゼを測定した。その結果、脱脂ゴマはゴマ不溶性画分として利用可能と判断できた。なお、脱脂ゴマはいりゴマの1/2〜1/10の価格であり、コストダウンに大きく寄与する。
実施例4.
ゴマの不溶性画分や脱脂ゴマは表面の殻が破損しており、可溶化するタンパク質が大幅に増加すると予測された。このことは、タンパク源として添加しているスキムミルクの省略が可能であることを示していると考えられた。そこで、前出の標準大麦培地からスキムミルクを除き、いりゴマを脱脂ゴマと置き換えた培地で液体麹を培養し、耐酸性αアミラーゼ活性を測定した。その結果、スキムミルクを添加しなくても同等の耐酸性αアミラーゼ活性となることがわかった。このことは、スキムミルクに掛かる費用をコストダウンできることを意味する。
実施例5.
前出の標準大麦培地からスキムミルクを除き、いりゴマをゴマの不溶性画分と置き換えた培地において、不溶性画分の配合量を、0〜20w/v%として液体麹を培養し、耐酸性αアミラーゼ活性を測定し、適正な脱脂ゴマの配合量を求めた。
その結果、不溶性画分の配合量が0.1w/v%で耐酸性αアミラーゼ活性は向上し、1.0〜2.5w/v%で最大となり、10w/v%を超えると効果は認められなくなった。培地の流動性が大幅に低下したためと考えられる。なお、焼酎製造に必要な耐酸性αアミラーゼ活性は、10U/mL程度とされていることから、実用的な配合量は0.1〜10.0w/v%と考えられ、0.1〜8.0w/v%がより好ましい。
実施例6.
固体麹仕込を対照とし、試験区1を前出標準大麦培地(液体麹−1)、試験区2を実施例5で作製した不溶性画分の配合が1.0w/v%の液体麹(液体麹−2)を用いて下表の配合により仕込を行った。大麦の精麦歩合は70%、使用酵母は鹿児島2号を用い、雰囲気温度25℃で発酵した。発酵終了後、減圧蒸留した。
出来上がったもろみの大麦1トン当たりのアルコール収得量は表9の通りとなり、同等のアルコールが得られた。
得られたもろみを減圧蒸留して得た焼酎をヘッドスペースGC分析に供し、香気成分を測定した。その結果、下表の通り、液体麹仕込は固体麹仕込に比べ、高級アルコール類が少なく、エステル類が若干多かった。一方、液体麹−1(いりごま)と液体麹−2(脱脂ゴマ)を比較すると、酢酸β−フェネチル以外、ほとんど差はなかった。なお、高級アルコール類は香りに重厚さをもたらすがオフフレーバーとして感じられる成分としても知られる。酢酸β−フェネチルは、バラの香りの特徴香として知られている。
得られた焼酎を、アルコール分20%に調整し、官能評価を行った。その結果、評点は固体麹仕込と同等だったが、香りや味の質に違いが認められ、液体麹は固体麹より香味が軽い傾向にあった。液体麹仕込焼酎は高級アルコール類が低いことが一因と考えられた。
評価良=5点、普通=3点、不良=1点とし、香り評価、味評価、総合評価について、パネラー6名で実施した。
本発明により、品質が安定した液体麹を効率良く、かつ、安価に製造する方法が提供される。しかも、この液体麹は、発酵飲食品の製造に好適である上に、耐酸性α−アミラーゼが高生産されるので、焼酎等の酒類の製造に適している。

Claims (5)

  1. ゴマの不溶性画分を0.1w/v%以上10w/v%以下の範囲で含有する液体培地で麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造法。
  2. ゴマの不溶性画分として、ゴマ油の搾り粕を使用する請求項1記載の液体麹の製造法。
  3. 液体培地中に、さらに穀類、芋類及び豆類から選ばれる原料を含有する請求項1又は2のいずれかに記載の液体麹の製造法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の液体麹を用いて、酒類を製造することを特徴とする酒類の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の液体麹を用いて、焼酎を製造することを特徴とする焼酎の製造方法。
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