JP2019109448A - 光偏向器の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】回動部の最大回動角の増大と、回動部の共振周波数の増大とを両立させつつ、均一な厚みの圧電膜を得ることができる光偏向器の製造方法を提供する。【解決手段】SOI板40に対し、表面Si層43の表面側より、少なくともミラー部2の形成領域は除外しつつ、表面Si層43の外側圧電アクチュエータ5の形成領域をエッチングして、底面51aが表面粗さでRa1.0nmである凹部51を形成する。次に、表面側の全面に圧電膜を成膜する。次に、表面側から圧電膜をエッチングすることにより凹部51の表面側に外側圧電アクチュエータ5の圧電構造58を形成する。次に、裏面側からのエッチングより回動ブロック65、外側圧電アクチュエータ5及び固定枠6の側面輪郭及び裏面輪郭を形成する。【選択図】図3

Description

本発明は、ミラー部を往復回動させつつ、入射光をミラー部で反射して出射する光偏向器の製造方法に関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の光偏向器が知られている。
一般的な構造のMEMSの光偏向器は、光を反射するミラー部と、ミラー部を第1軸線の回りに往復回動させる第1駆動部と、及びミラー部を第1軸線とは別の第2軸線の回りに往復回動させる第2駆動部とを備えている。
特許文献1の光偏向器は、ミラー部を軸線の回りに高速で往復回動するために、ミラー部の共振を利用する。該光偏向器は、SOI(Silicon on Insulator)板から製造され、圧電式駆動部のカンチレバーの基板部としてのSi(ケイ素)層は、該SOI板の表面Si層の厚みをそのまま利用している。
特開2005−128147号公報
圧電構造でカンチレバーを変形させる駆動部では、カンチレバーは、薄い方が、電圧印加時の変形量が増大し、同一の駆動電圧に対するミラー部の回動角(振れ角)を大きくすることができる。一方、ミラー部を共振周波数で往復回動させる場合、厚いカンチレバーの方が剛性(スティフネス)が高くなり、高い共振周波数でミラー部を回動させることができる。
特許文献1の光偏向器を含む従来の光偏向器では、複数の駆動部の共通の基板部としてのSOI板の表面Si層の厚みは同一である。したがって、ミラー部を一方の軸線の回りで高い共振周波数で往復回動させることと、他方の軸線の回りで最大回動角を増大させることとを両立させることは、困難になっている。
本発明の目的は、一方の軸線の回りのミラー部の共振周波数の増大と他方の軸線の回りの最大回動角の増大とを両立させつつ、均一な厚みの圧電膜を得ることができる光偏向器の製造方法を提供することである。
本発明の製造方法は、
光を反射するミラー部と、
第1圧電構造を有し、該第1圧電構造に供給される第1駆動電圧により変形して、前記ミラー部を第1軸線の回りに往復回動させる第1駆動部と、
第2圧電構造を有し、該第2圧電構造に供給される第2駆動電圧により変形して、前記ミラー部を第2軸線の回りに往復回動させる第2駆動部とを備える光偏向器の製造方法において、
表面側から裏面側の方へ順番に表面Si層、SOI層及び裏面Si層を有するSOI板に対し、前記表面Si層の表面側の第1部位とは別の第2部位をエッチングすることにより、前記表面Si層の前記第2部位に底面が、表面粗さでRa1.0nm以下である凹部を形成する第1工程と、
次に、表面Si層の表面側を覆う圧電膜を成膜する第2工程と、
次に、表面側から前記圧電膜をエッチングすることにより前記第1部位及び前記第2部位にそれぞれ前記第1駆動部の前記第1圧電構造及び前記第2駆動部の前記第2圧電構造の輪郭を形成する第3工程と、
次に、裏面側からの前記裏面Si層及び前記SOI層のエッチングより前記第1駆動部及び前記第2駆動部の輪郭を完成させる第4工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、第2部位における凹部の形成により、第2部位に形成する第2駆動部が、第1部位に形成する第1駆動部より薄くされる。これにより、第1駆動部の剛性を大きく、第2の駆動部の剛性は小さくなる。この結果、第1軸線の回りのミラー部の共振周波数の増大と第2軸線の回りの最大回動角の増大とを両立させることができる。
一方、本発明者は、凹部に形成する圧電構造の圧電膜の厚みの均一化について知見を得た。該知見とは、該凹部の底面を、表面粗さでRa1.0nm以下にすれば、該底面の上に圧電膜を成膜するときに、圧電膜の厚みを安定的に均一化できるということである。
本発明によれば、この知見に基づいて、第2駆動部を薄くするために表面Si層に形成した凹部は、底面が表面粗さでRa1.0nm以下とされる。こうして、凹部の形成にもかかわらず、該凹部に成膜する圧電膜の厚みを均一化することができる。
本発明の製造方法において、前記第1工程の前記エッチングは、ウェットエッチングとすることが好ましい。
この構成によれば、ウェットエッチングで第1圧電アクチュエータがエッチングされるので、ドライエッチングに比してRa1.0nm以下である底面を有する凹部を支障なく形成することができる。
本発明の製造方法において、前記第1工程の前記SOI板は、劈開の結晶方位を[111]に設定されていることが好ましい。
この構成によれば、エッチングにより形成した凹部の側壁を垂直壁でなく、傾斜面にすることができる。これにより、凹部の圧電構造に配線層を引き回すときに、断線し難い配線層を形成することができる。
光偏向器の正面図。 光偏向器の圧電アクチュエータのSOI板厚と各種特性との関係についての説明に関し、図2Aは、共振周波数と振れ角とがトレードオフの関係にあることを示す表、図2Bは共振周波数とSOI板厚との関係のグラフ、図2Cは光偏向器のミラーの角度と駆動電圧との関係のグラフ。 光偏向器の製造方法の工程図。
(光偏向器/構成)
図1は、光偏向器1の正面図である。なお、平板状の光偏向器1に対し、ミラー部2の反射面が視認できる側を「正面」、その反対側を「背面」ということにする。
以下、光偏向器1について上下左右というとき、光偏向器1の正面視での上下左右をいうものとする。光偏向器1の構成の把握の便宜のため、図1等に三軸直交座標を記載している。原点Oは、ミラー部2の中心に設定している。Z軸は、光偏向器1の厚み方向に対応している。X軸及びY軸は、左右方向及び上下方向に対応している。Z軸は、背面から正面に向かう向きとされる。X軸は、左から右に向かう向きとされる。Y軸は、下から上に向かう向きとされる。以下、光偏向器1の構成は、ミラー部2の静止時、すなわちミラー部2の反射面の法線がZ軸に一致している時を基準として説明する。
光偏向器1は、ミラー部2、第1駆動部としての内側圧電アクチュエータ3a,3b、可動支持部としての可動枠4、第2駆動部としての外側圧電アクチュエータ5a,5b、及び固定枠6を備える。固定枠6は、正面視で横長の矩形となっている。固定枠6の長辺及び短辺は、それぞれX軸及びY軸に平行である。
図1において、軸線Lx及び軸線Lyは、ミラー部2が往復回動(正逆転)する2つの軸線である。軸線Lyは本発明の第1軸線に相当し、軸線Lxは本発明の第2軸線に相当する。軸線Lx及び軸線Lyは、ミラー部2の中心において直交する。外側圧電アクチュエータ5a,5bは、図示していない駆動部から第2駆動電圧を供給されて、ミラー部2を軸線Lxの回りに第2周波数で往復回動させる。内側圧電アクチュエータ3は、駆動部から第1駆動電圧を供給されて、ミラー部2を軸線Lyの回りに第1周波数で往復回動させる。
内側圧電アクチュエータ3a,3bは、圧電構造付きのカンチレバーから構成され、正面視においてY軸に対して左右対称の構造になっている。内側圧電アクチュエータ3a,3bは、Y軸方向の両端部において相互に結合し、全体では、ミラー部2を包囲するY軸方向に縦長の楕円環を構成する。可動枠4は、内外周がY軸方向に縦長の楕円輪郭の環状枠として形成され、内周側において内側圧電アクチュエータ3a,3bから構成される楕円環を包囲する。
トーションバー21a,21bは、ミラー部2からy軸に沿って上下に直線状に突出し、中間部において内側圧電アクチュエータ3a,3bの結合部に結合し、突出端において可動枠4の内周に結合する。軸線Lyは、トーションバー21a,21bの中心線に一致する。
外側圧電アクチュエータ5a,5bは、矩形の固定枠6の内周側でかつX軸方向に可動枠4に対して左右対称に配設される。外側圧電アクチュエータ5a,5bの各々は、ミアンダ配列の複数のカンチレバー23から構成される。カンチレバー23も、内側圧電アクチュエータ3a,3bのカンチレバーと同様に、圧電構造付きとなっている。
具体的には、各カンチレバー23は、長手方向をY軸方向に揃えて、X軸方向に一列に配列される。複数のカンチレバー23は、全体として直列の結合となるように、Y軸方向の端部においてX軸方向に左隣り又は右隣りのカンチレバー23に結合している。なお、配列におけるX軸方向の両端のカンチレバー23は、長さが中間のカンチレバー23の半分となっており、Y軸上で固定枠6及び可動枠4にそれぞれ結合している。固定枠6に結合しているカンチレバー23の端部は、外側圧電アクチュエータ5a,5bの基端部を構成し、可動枠4に結合しているカンチレバー23の端部は、外側圧電アクチュエータ5a,5bの先端部を構成する。
電極パッド16a,16bは、固定枠6の短辺部の表面に複数ずつ配設されている。電極パッド16aは、光偏向器1の左半部の電気素子(例:内側圧電アクチュエータ3a及び外側圧電アクチュエータ5a)に積層方向下側(裏面側)の連続導電層や積層方向上側(表面側)の配線層(各圧電アクチュエータでは、上側電極層に接続される。図示せず。)を介して接続されている。なお、積層方向下側の連続導電層は、アース配線層を形成し、各圧電アクチュエータでは、アース電位の下側電極層を構成する。電極パッド16bは、光偏向器1の右半部の電気素子(例:内側圧電アクチュエータ3b及び外側圧電アクチュエータ5b)に積層方向下側の連続導電層や積層方向上側の配線層を介して接続されている。
(光偏向器/作用)
光偏向器1の作用について説明する。なお、以下、内側圧電アクチュエータ3a,3bを特に区別しないときは、「内側圧電アクチュエータ3」と総称する。外側圧電アクチュエータ5a,5bを特に区別しないときは、「外側圧電アクチュエータ5」と総称する。電極パッド16a,16bを特に区別しないときは、「電極パッド16」と総称する。
光偏向器1は、二次元スキャナとして、映像器や車両用前照灯等に装備される。光偏向器1は、パッケージ内に収納されて、光偏向器1の電極パッド16とパッケージの端子とは、ボンディングワイヤ(図示せず)により接続されている。内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5には、それらの圧電膜層に電極パッド16から駆動電圧が供給される。
図示していない光源(例:レーザ光源)からの光(例:レーザ光)が、光偏向器1のミラー部2の中心(三軸座標系の原点O)に入射する。
外側圧電アクチュエータ5は、電極パッド16からの駆動電圧により作動して、可動枠4をX軸の回りに第2周波数で往復回動させる。この結果、ミラー部2は、軸線Lxの回りを第2周波数で往復回動する。なお、軸線LxとX軸とは、一致しない。ミラー部2は、後述するように、軸線Lyの回りに往復回動しているので、軸線Lxも軸線Lyの往復回動に伴い、回転する。これに対して、X軸は、固定されている。
外側圧電アクチュエータ5の作動について詳説する。各外側圧電アクチュエータ5は、ミアンダ配列の複数のカンチレバー23から成る。外側圧電アクチュエータ5の基端側(固定枠6側)から先端側(可動枠4側)との結合端の方に順番にカンチレバー23に番号を付けると、奇数番のカンチレバー23と偶数番のカンチレバー23とは、駆動電圧を逆位相にして、湾曲変形の向きが逆になるように設定される。
この結果、ミアンダ配列を構成する各カンチレバー23は、外側圧電アクチュエータ5の作動時に、湾曲変形に伴い、X軸方向に隣接するもの同士で逆向きに湾曲する。この時、各カンチレバー23における基端側(固定枠6の方に結合する側)の回転量に対する先端側(可動枠4の方に結合する側)の回転量の差分が、外側圧電アクチュエータ5の全体で累積される。これにより、可動枠4は、外側圧電アクチュエータ5の圧電膜の印加電圧(外側圧電アクチュエータ5の駆動電圧)の第2周波数(例:60Hz)でX軸の回りに往復回動する。
軸線Lxの回りの可動枠4の往復回動により、ミラー部2及び可動枠4は軸線Lxの回りに一体的に往復回動する。
一方、内側圧電アクチュエータ3は、電極パッド16からの外側圧電アクチュエータ5とは別の駆動電圧によりトーションバー21をその中心軸線としての軸線Lyの回りに第1周波数(例:30kHz)で往復回動させる。第1周波数は、高い周波数を確保するためには、軸線Lyの回りのミラー部2の共振周波数に設定される。軸線Lyの回りのミラー部2の共振周波数は、主に、内側圧電アクチュエータ3のカンチレバーの剛性により決定される。
こうして、ミラー部2は、軸線Lyの回りに共振周波数で往復回動しつつ、軸線Lxの回りに非共振周波数で往復回動する。この結果、ミラー部2は、正面視で、左右には共振周波数で、上下には非共振周波数で首振りする。
なお、ミラー部2の反射面の法線がZ軸に一致したときのみ、軸線LxはX軸に一致し、軸線LyはY軸に一致する。図示しない光源からの光は、ミラー部2の中心で反射して、その時々の軸線Lx及び軸線Lyの回りの回動角に対応する方向に偏向された走査光として出射する。
(SOI板厚と圧電アクチュエータの特性との関係)
図2は、光偏向器1の圧電アクチュエータのSOI板厚と各種特性との関係についての説明に関する。図2Aは、共振周波数と振れ角(ミラー部2の最大回動角)とがトレードオフの関係にあることを示す表、図2Bは共振周波数とSOI板厚との関係のグラフ、図2Cは光偏向器のミラーの角度と駆動電圧との関係のグラフである。なお、図2Aの振れ角は、ミラー部2が光偏向器1の左右対称面に対して振れるとき、該左右対称面に対する最大傾斜角(最大回動角)をレーザ光を反射させて測定した光学的な測定角を意味する。図2Cの機械半角は、固定枠6に対するミラー部2の角度を機械的に測定した角度を意味する。したがって、実質的には、図2Aの振れ角は、機械半角に相当する。
図2において、SOI板厚とは、内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5が基板部(後述の図3では、表面Si層43に相当する。)とその表面側に形成された圧電構造との上下の積層から成る場合の基板部の厚みをいうものとする。
光偏向器1は、車両用前照灯等として車両に搭載される場合には、通常、X軸方向のミラー部2の振れ(軸線Lyの回りのミラー部2の往復回動)を車両の水平方向に対応させ、Y軸方向のミラー部2の振れ(軸線Lxの回りのミラー部2の往復回動)を車両の垂直方向に対応させて、配置される。
図2Aの水平軸の振れは、内側圧電アクチュエータ3の作動による共振で行われる。また、垂直軸方向のミラー部2の振れは、外側圧電アクチュエータ5の作動による非共振で行われる。したがって、第1周波数及び第2周波数は、図2等の共振周波数及び非共振周波数を意味する。
図2Aに示すように、例えば、内側圧電アクチュエータ3を5Vppの駆動電圧(内側圧電アクチュエータ3の圧電膜の印加電圧でもある。)で駆動したときは、共振周波数は、内側圧電アクチュエータ3の厚みとしてのSOI板厚の厚みが大きいときほど、増大する。
一方、外側圧電アクチュエータ5の駆動を50Vppの駆動電圧(外側圧電アクチュエータ5の圧電膜の印加電圧でもある。)で駆動したときは、垂直軸方向の振れ角は、外側圧電アクチュエータ5の厚みとしてのSOI板厚の厚みが小さいときほど、増大する。
光偏向器1では、軸線Lyの回りのミラー部2の共振周波数及び軸線Lxの回りのミラー部2の振れ角は共に大きいことが好ましい。しかしながら、両者の関係は、図2Aの2つの矢印の向きに示されるように、相反する関係(トレードオフの関係)にある。
(製造方法)
光偏向器1は、図2の分析を踏まえた構造を有するように、MEMSの製造技術を使って、製造される。すなわち、次の図3において説明するように、内側圧電アクチュエータ3の形成部位としての表面Si層43の第1部位A1は、エッチングを施すことなく、表面Si層43の元々の厚みを維持している(厚くする)。これに対し、外側圧電アクチュエータ5の形成部位としての表面Si層43の第2部位A2は、エッチングを施して、表面Si層43を薄くしている。
図3は光偏向器1の製造方法の工程を示している。なお、図3の説明において、表面側及び裏面側は、図1においてそれぞれ正面側及び背面側に相当する。図3において、上側が表面側であり、下側が裏面側である。
STEP1では、SOI板40が用意される。SOI板40は、半導体の製造で周知のSOI(Silicon on Insulator)板である。裏面側から表面側に順番に裏面Si(ケイ素)層41、BOX(Buried Oxide)層42及び表面Si(ケイ素)層43が配設される3層の積層構造を有している。なお、BOX層42は、SiO(二酸化ケイ素)から成る。裏面Si層41は、ウェハーにおいて表面Si層43よりも厚く形成され「支持層」とも呼ばれる。表面Si層43は、ウェハーにおいて「活性層」とも呼ばれる。BOX層は、「酸化膜層」又は「中間酸化膜層」とも呼ばれる。また、SOI板40は、実際には、表面及び裏面にSiOを形成してから次のSTEP2に移行するが、図3には、これらのSiOの層は図示を省略している。
次のSTEP2では、内側圧電アクチュエータ3の形成領域としての表面Si層43の第1部位A1は、除外して外側圧電アクチュエータ5の形成領域としての表面Si層43の第2部位A2に対し、表面側から所定量のエッチングを行う。なお、ミラー部2及び可動枠4の形成領域は、第1部位A1に含まれる。第1部位A1がミラー部2、内側圧電アクチュエータ3及び可動枠4の形成領域に相当し、第2部位A2が外側圧電アクチュエータ5の形成領域に相当する。
STEP2における第1部位A1の非エッチングと第2部位A2のエッチングとにより、表面Si層43の表面において、第1部位A1は非凹部52となり、第2部位A2は凹部51となる。この結果、第2部位A2の表面Si層43は、第1部位A1の表面Si層43より薄くなる。
STEP2のエッチングは、ウェットエッチングが採用される。凹部51は、底面51aと側面51bとにより画成される。底面51aは、ウェットエッチングにより表面粗さとしてRa1.0nm以下にされる。側面51bは傾斜面となるようにエッチングされる。
底面51aをRa1.0nm以下にした理由は、本発明者の知見に基づいている。すなわち、本発明者は、凹部51の底面51aをRa1.0nm以下にすれば、STEP2より後で、底面51aの上に圧電膜を成膜するときに、圧電膜の厚みを安定的に均一化できるということを見出した。
なお、底面51aがRa1.0nm以下にされれば、ドライエッチングにより凹部51を形成することもできる。ただし、ドライエッチングの場合には、追加工として、平滑化処理が必要になる。平滑化処理として、例えば、CMP(chemical mechanical polishing)やCGIB(Gas Cluster Ion Beam )がある。また、側面51bを傾斜面とするのは難しい。よって、ウエットエッチングにより凹部を形成することが好ましい。ウエットエッチングならばエッチング液の種類、濃度及び温度等を調整して容易にシリコン異方性エッチングを行うことで必要な形状を形成することができる。
次のSTEP3では、前半に、SOI板40の表面側を覆うように、表面側全体に所定の成膜を行い、後半に、所定のエッチングを行って、表面Si層43の表面上に圧電構造58,59の輪郭を形成する。
所定の成膜では、圧電構造58,59の下側電極層、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)層、及び上側電極層に相当する下側導電膜、PZT膜、及び上側導電膜の3層を順番に形成する。
なお、STEP3における圧電膜としてのPZTの成膜の処理は、STEP2の終了時のSOI板40の表面に凹部51及び非凹部52が形成されているため、段差付きのSOI板40に対する処理となる。この成膜処理を支障なく行うため、段差は20μmよりも大きくしないことが好ましい。段差が20μmを超えると段差の上に成膜するPZTを良好な膜質で成膜できなくなる。また、段差が10μmよりも小さいと、非共振駆動の駆動部である外側圧電アクチュエータ5を薄くして振れ角を大きくする効果が得られにくくなる。PZTの成膜は、スパッタリングやイオンプレーティングで行うことが好ましい。ただし、ゾルゲルでPZTの成膜を行っても、コーティング条件やスピン回転数を適切に調整することにより、膜厚の均一なPZTを成膜することができる。
STEP3の前半の成膜処理は、段差付きのSOI板40に対する成膜処理であるので、PZT等の成膜後も凹部51及び非凹部52の段差による段差が残る。このため、STEP3の後半における圧電構造58,59の輪郭形成も、段差付きのSOI板40に対する輪郭形成になる。これに支障なく対処するため、圧電構造58,59の輪郭形成のパターニングに使用するレジストコートは、凹部51の段差を埋めることができるスプレーコートが望ましい。
しかしながら、シリコン加工をウエットエッチング処理した際にできる劈開面の結晶方位を[111]とし、その結果得られる凹部51の側面51bの傾斜(傾斜角度=54.7°)を利用することも可能である。傾斜面の側面51bの利用例としては、電極パッド16から圧電構造58,59の下側電極層及び上側電極層への配線部としての下側導電膜及び上側導電膜がある。すなわち、これらの配線部は、凹部51−非凹部52間の側面51bを渡ることになる。その場合、側面51bは、垂直面であるよりも、傾斜面である方が、断線防止上、有利となる。
なお、下側導電膜は、圧電構造58,59の下側電極層を兼ねるので、電極パッド16から圧電構造58,59の下側電極層への配線部は、凹部51及び非凹部52の表面に形成されていることになる。これに対し、電極パッド16から圧電構造58,59の上側電極層への配線部は、上側導電膜を成膜後に成膜される層間膜(図示せず。例:絶縁膜)の表面に形成される。層間膜の表面には、表面Si層43の表面の段差が転写された段差が残っているので、電極パッド16から圧電構造58,59の上側電極層への配線部は、側面51bの傾斜が残っている層間膜の表面を渡ることになる。
さらに、該層間膜の厚みを増やすことにより(例:10um以上の厚みの層間膜)、電極パッド16から圧電構造58,59の上側電極層への配線部は、凹部51−非凹部52間において、層間膜の平坦な表面に形成することができる。
圧電構造58,59は、それぞれ外側圧電アクチュエータ5及び内側圧電アクチュエータ3に対応する。圧電構造58,59は、共に、下側から順番に少なくとも下側電極層、PZT層、及び上側電極層の3層を含む積層構造から構成される。該PZT層は、圧電膜層として、両面の印加電圧に応じて面方向に伸縮して表面Si層43を厚み方向(Z軸方向)に変形させる。
次のSTEP4では、SOI板40の裏側から裏面Si層41及びBOX層42に対してエッチングを行う。これにより、圧電構造58,59の裏側範囲に裏側空間62が形成されるとともに、光偏向器1のミラー部2、内側圧電アクチュエータ3、可動枠4、外側圧電アクチュエータ5及び固定枠6の各素子の側面輪郭及び裏面輪郭が形成される。
こうして、STEP4の終了に伴い、内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5の輪郭が完成する。図3のSTEP4では、ミラー部2、内側圧電アクチュエータ3及び可動枠4は、回動ブロック65として1つにまとめて図示している。
最終的に、内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5は、上部構造としての圧電構造59,58と、基板部として機能する下部構造としての表面Si層43との上下2層構造となる。内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5は、機能的には、上部構造の圧電構造59,58の圧電膜に所定の駆動電圧を供給して、面方向に伸縮させる。これにより、下部構造のカンチレバーが厚み方向に撓んで、各カンチレバーにおいて先端側が基端側に対して変位し、変位力がアクチュエータとしての作用力として被作用物体としてのトーションバー21及び可動枠4に作用する。
裏側空間62は、光偏向器1がパッケージに収納されたときに、ミラー部2、内側圧電アクチュエータ3、可動枠4及び外側圧電アクチュエータ5の運動を許容させる空間となる。
完成状態の光偏向器1では、外側圧電アクチュエータ5の基板部としての表面Si層43aの裏面と回動ブロック65に含まれる内側圧電アクチュエータ3の基板部としての表面Si層43bの裏面とは、Z軸方向に同一位置にある。これに対し、外側圧電アクチュエータ5の表面Si層43aの表面は、内側圧電アクチュエータ3の表面Si層43bの表面よりZ軸方向に裏面側にある。すなわち、外側圧電アクチュエータ5の基板部は、内側圧電アクチュエータ3の基板部より薄い。これは、外側圧電アクチュエータ5のカンチレバーとしての剛性が、内側圧電アクチュエータ3のカンチレバーの剛性より十分に小さいことを意味する。
この結果、図2の水平軸方向の共振周波数に対応する軸線Lyの回りのミラー部2の往復回動の周波数は、十分に高められる。一方、図2の垂直軸方向の振れ角に対応する軸線Lxの回りの振れ角は、十分に増大する。
なお、外側圧電アクチュエータ5の基板部を内側圧電アクチュエータ3の基板部より薄くするために、図3では、表面Si層43aの表面側をエッチングして、表面Si層43aに凹部51を形成している。凹部51を表面Si層43aの表面側ではなく、表面Si層43aを裏面側からエッチングして、凹部51を表面Si層43aの裏面側に形成し、これにより、外側圧電アクチュエータ5の基板部を内側圧電アクチュエータ3の基板部より薄くすることもできる。この場合は、SOI板40の表面が平坦面であるので、圧電膜の成膜が簡単になるとともに、凹部51の底面51aをRa1.0nm以下にすることが不要になる。
(補足及び変形例)
圧電構造58,59は、それぞれ本発明の第2圧電構造及び第1圧電構造に相当する。圧電構造58,59は、圧電膜の材料としてPZTが用いられている。しかしながら、本発明の圧電構造の圧電膜の材料は、PZTに限定されず、他の材料であってもよい。
図3のSTEP1〜4に図示しているSOI板40は、それぞれSTEP1〜4の処理済み後の状態で示している。STEP2は、本発明の第1工程に相当する。
STEP3における前半の成膜の工程は本発明の第2工程に相当する。STEP3における後半のエッチングの工程は本発明の第3工程に相当する。STEP4は、本発明の第4工程に相当する。本発明では、各工程間に所定の処理工程を追加することも可能である。
内側圧電アクチュエータ3及び外側圧電アクチュエータ5は、それぞれ本発明の第1駆動部及び第2駆動部に相当する。本発明の第1駆動部及び第2駆動部の相対位置関係は、内側及び外側の関係に限定されない。本発明では、第1駆動部及び第2駆動部が、それぞれ外側及び内側の位置関係で配設されてもよい。
内側圧電アクチュエータ3の作動による軸線Lyの回りのミラー部2の往復回動は、共振が利用されている。本発明では、第1軸線の回りのミラー部の往復回動は、共振でなくてもよい。本発明は、第1軸線の回りのミラー部の往復回動の周波数を第2軸線の回りのミラー部の往復回動の周波数に対して十分に高めたい光偏向器に適用することができる。
可動枠4は、本発明において回動部を支持する固定支持部に相当する。本発明の固定支持部は、枠体でなくてもよい。
可動枠4は、本発明の可動支持部に相当する。本発明の可動支持部は、可動枠4のように、楕円環状でなくてもよいし、枠体でなくてもよい。可動支持部は、第1駆動部と第2駆動部との間に介在していれば、形状は任意でよい。
1・・・光偏向器、2・・・ミラー部(回動部)、3・・・内側圧電アクチュエータ(第1駆動部)、4・・・可動枠(可動支持部)、5・・・外側圧電アクチュエータ(第2駆動部)、40・・・SOI板、41・・・裏面Si層、42・・・SOI層、43・・・表面Si層、51・・・凹部、51a・・・底面、58,59・・・圧電構造、Lx・・・第1軸線、Ly・・・第2軸線。

Claims (3)

  1. 光を反射するミラー部と、
    第1圧電構造を有し、該第1圧電構造に供給される第1駆動電圧により変形して、前記ミラー部を第1軸線の回りに往復回動させる第1駆動部と、
    第2圧電構造を有し、該第2圧電構造に供給される第2駆動電圧により変形して、前記ミラー部を第2軸線の回りに往復回動させる第2駆動部とを備える光偏向器の製造方法において、
    表面側から裏面側の方へ順番に表面Si層、SOI層及び裏面Si層を有するSOI板に対し、前記表面Si層の表面側の第1部位とは別の第2部位をエッチングすることにより、前記表面Si層の前記第2部位に底面が、表面粗さでRa1.0nm以下である凹部を形成する第1工程と、
    次に、表面Si層の表面側を覆う圧電膜を成膜する第2工程と、
    次に、表面側から前記圧電膜をエッチングすることにより前記第1部位及び前記第2部位にそれぞれ前記第1駆動部の前記第1圧電構造及び前記第2駆動部の前記第2圧電構造の輪郭を形成する第3工程と、
    次に、裏面側からの前記裏面Si層及び前記SOI層のエッチングより前記第1駆動部及び前記第2駆動部の輪郭を完成させる第4工程とを備えることを特徴とする光偏向器の製造方法。
  2. 請求項1に記載の光偏向器の製造方法において、
    前記第1工程の前記エッチングは、ウェットエッチングとすることを特徴とする光偏向器の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の光偏向器の製造方法において、
    前記第1工程の前記SOI板は、劈開の結晶方位を[111]に設定されていることを特徴とする光偏向器の製造方法。
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