JP2019108502A - 繰り返し屈曲デバイス用粘着剤、粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス - Google Patents

繰り返し屈曲デバイス用粘着剤、粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス Download PDF

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【課題】繰り返し屈曲デバイスの繰り返し屈曲および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和し屈曲部位にて発生する剥がれを抑制できる粘着剤および粘着シートの提供。【解決手段】該粘着剤11に3000Paの応力を印加した時に測定される最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)および最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)から式(I)により算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が2.79以下であり、JISK7244−1に準拠した動的粘弾性測定から得られる25℃における損失正接(tanδ)が0.328以上、0.85以下である繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。ΔlogJ(t)=logJ(t)max−logJ(t)min…式(I)【選択図】図1

Description

本発明は、繰り返し屈曲されるデバイス用の粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスに関するものである。
近年、デバイスの一種である、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイが提案されている。かかる屈曲性ディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
屈曲性ディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
上記のような屈曲性ディスプレイにおいては、当該屈曲性ディスプレイを構成する一の屈曲可能な部材(屈曲性部材)と、他の屈曲性部材とを粘着シートの粘着剤層によって貼合することが一般的であると考えられる。ここで、屈曲不可能な従来のディスプレイ用の粘着シートとしては、例えば、特許文献1及び2に示されるものが知られている。
屈曲性ディスプレイは、1回だけ曲面成形するのではなく、特許文献3に記載されているように、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)場合がある。また、かかる繰り返し屈曲性ディスプレイにおいては、長期間屈曲状態で固定される場合もある。このような用途の繰り返し屈曲性ディスプレイに従来の粘着シートを使用すると、屈曲状態から解放した後でも、粘着剤層の変形が生じて屈曲性ディスプレイが大きく屈曲したままになり、その屈曲状態で固まってしまうことがあった。また、屈曲状態にしたときに、屈曲部位にて粘着剤層と被着体との界面に剥がれが発生することも多かった。
特開2015−174907号公報 特開2016−774号公報 特開2016−2764号公報
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後、粘着剤層の変形を抑制し、繰り返し屈曲デバイスの繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができるとともに、屈曲部位にて発生する粘着剤層と被着体との界面の剥がれを抑制することのできる繰り返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後、繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができるとともに、屈曲部位にて発生する粘着剤層と被着体との界面の剥がれを抑制することのできる繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、前記粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)とし、以下の式(I)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.79以下であり、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定から得られる25℃における損失正接(tanδ)が、0.328以上、0.85以下であることを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤を提供する(発明1)。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max−logJ(t)min …(I)
上記発明(発明1)においては、上記物性を満たすことにより、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後、粘着剤層の変形が生じ難く、繰り返し屈曲デバイスが大きく屈曲した状態で固まることが抑制され、もって繰り返し屈曲デバイスの繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができる。また、上記発明(発明1)においては、上記物性を満たすことにより、高い粘着力が発揮され易くなり、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合でも、上記のように粘着剤層の変形が生じ難いこととの相互作用により、屈曲部位にて発生する粘着剤層と被着体との界面の剥がれを抑制することができる。
上記発明(発明1)においては、25℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.01MPa以上、0.25MPa以下であることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)においては、25℃における損失弾性率(G”)が、0.005MPa以上、0.1MPa以下であることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)においては、前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることが好ましい(発明4)。
第2に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(発明1〜4)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明5)。
上記発明(発明5)においては、前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明6)。
第3に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲積層部材であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明5,6)の粘着剤層であることを特徴とする繰り返し屈曲積層部材を提供する(発明7)。
上記発明(発明7)においては、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることが好ましい(発明8)。
第4に本発明は、前記繰り返し屈曲積層部材(発明7,8)を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイスを提供する(発明9)。
本発明に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後、粘着剤層の変形が生じ難く、繰り返し屈曲デバイスの繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができるとともに、屈曲部位にて発生する粘着剤層と被着体との界面の剥がれを抑制することができる。また、本発明に係る繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲させた場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後、繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができるとともに、屈曲部位にて発生する粘着剤層と被着体との界面の剥がれを抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。 本発明の一実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材の断面図である。 静的屈曲試験を説明する説明図(側面図)である。 屈曲試験の試験結果としての試験片の変形量を説明する説明図(側面図)である。 動的屈曲試験を説明する説明図(側面図)である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔繰り返し屈曲デバイス用粘着剤〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(以下、単に「粘着剤」という場合がある。)は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤である。繰り返し屈曲デバイスおよび屈曲性部材については、後述する。
本実施形態に係る粘着剤は、当該粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)とし、以下の式(I)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.79以下であり、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定から得られる25℃における損失正接(tanδ)が、0.328以上、0.85以下であるものである。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max−logJ(t)min …(I)
なお、「粘着剤に3000Paの応力を印加した時」とは、粘着剤に応力を印加し、その応力が3000Paに達した時点のことをいう。クリープコンプライアンスJ(t)および損失正接(tanδ)の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る粘着剤は、特にクリープコンプライアンス変動値が上記のように小さいことにより、所定の応力を与えた際のひずみ変動が小さく、すなわち、変形を生じにくい。したがって、当該粘着剤からなる粘着剤層は、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが繰り返し屈曲された場合および長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後でも、粘着剤層の変形が生じ難く、繰り返し屈曲デバイスが大きく屈曲した状態で固まることが抑制され、もって繰り返し屈曲デバイスの繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響を緩和することができる。この効果を、以下、「繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果」という場合がある。なお、上記繰り返し屈曲の回数の指標としては、一例として3万回が例示される。
また、本実施形態に係る粘着剤は、特に損失正接(tanδ)が上記のように大きいことにより、粘性が強くなり、高い粘着力が発揮され易くなる。そのため、当該粘着剤からなる粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが繰り返し屈曲されたときや、長期間屈曲状態に置かれたときにも、クリープコンプライアンス変動値が上記のように小さく、粘着剤層の変形が生じ難いこととの相互作用により、屈曲部位における粘着剤層と被着体との界面に剥がれが発生することが抑制される。この効果を、以下、「界面剥離抑制効果」という場合がある。
繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果および界面剥離抑制効果の観点から、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)は、2.79以下であることを要し、2.30以下であることが好ましく、特に2.00以下であることが好ましく、さらには1.95以下であることが好ましい。なお、クリープコンプライアンス変動値の下限値は特に限定されないが、通常は1.00以上であることが好ましく、特に1.20以上であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤の最小クリープコンプライアンスJ(t)minは、下限値として、0.5MPa−1以上であることが好ましく、特に0.8MPa−1以上であることが好ましく、さらには1.0MPa−1以上であることが好ましい。最小クリープコンプライアンスJ(t)minの下限値が上記であることで、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最小クリープコンプライアンスJ(t)minの上限値は特に限定されないが、通常は5.0MPa−1以下であることが好ましく、特に4.5MPa−1以下であることが好ましく、さらには4.0MPa−1以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る粘着剤の最大クリープコンプライアンスJ(t)maxは、上限値として、1000MPa−1以下であることが好ましく、特に800MPa−1以下であることが好ましく、さらには500MPa−1以下であることが好ましく、120MPa−1以下であることが最も好ましい。最大クリープコンプライアンスJ(t)maxの上限値が上記であることで、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最大クリープコンプライアンスJ(t)maxの下限値は特に限定されないが、通常は10MPa−1以上であることが好ましく、特に15MPa−1以上であることが好ましく、さらには20MPa−1以上であることが好ましい。
一方、本実施形態に係る粘着剤の25℃における損失正接(tanδ)は、特に界面剥離抑制効果の観点から、下限値として、0.328以上であることが好ましく、特に0.45以上であることが好ましく、さらには0.55であることが好ましい。また、粘着剤層の形状維持の観点から、上記損失正接(tanδ)の上限値は、0.85以下であることが好ましく、特に0.75以下であることが好ましく、さらには0.65であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤の種類は、上記の物性が満たされれば特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいし、熱架橋性のものであってもよいし、非架橋性のものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよいが、良好な柔軟性を得るために、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
(1)粘着性組成物Pの成分
(1−1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が−40℃以下であるモノマー(以下「低Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)と、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超えるモノマー(以下「高Tgアルキルアクリレート」と称する場合がある。)とを組み合わせて使用することが好ましい。これにより、得られる粘着剤のクリープコンプライアンス変動値および損失正接が前述した値を満たし易くなる。
低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル(Tg−55℃)、アクリル酸n−オクチル(Tg−65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg−58℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(Tg−70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg−58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg−60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg−41℃)、メタクリル酸n−ラウリル(Tg−65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg−55℃)、メタクリル酸トリデシル(−40℃)等が好ましく挙げられる。中でも、より効果的に柔軟性を向上させる観点から、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、−45℃以下であるものであることがより好ましく、−50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記高Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg10℃)、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、メタクリル酸エチル(Tg65℃)、メタクリル酸n−ブチル(Tg20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg48℃)、メタクリル酸t−ブチル(Tg107℃)、アクリル酸n−ステアリル(Tg30℃)、メタクリル酸n−ステアリル(Tg38℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg66℃)、メタクリル酸ベンジル(Tg54℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、アクリル酸モルホリン(Tg145℃)等が挙げられる。上記の中でも、凝集力の観点から、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、下限値として50質量%以上含有することが好ましく、特に55質量%以上含有することが好ましく、さらには60質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記低Tgアルキルアクリレートを、上限値として85質量%以下含有することが好ましく、特に75質量%以下含有することが好ましく、さらには65質量%以下含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、高Tgアルキルアクリレートを、下限値として5質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記高Tgアルキルアクリレートを、上限値として30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記の含有量で低Tgアルキルアクリレートおよび高Tgアルキルアクリレートをそれぞれ含有することで、得られる粘着剤のクリープコンプライアンス変動値および損失正接が、前述した値をより満たし易くなる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤(B)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーが好ましく、特に、水酸基含有モノマーが好ましい。水酸基含有モノマーは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が比較的低いため、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性を高く維持し易い。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性の観点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含有する場合、水酸基含有モノマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが最も好ましい。また、当該水酸基含有モノマーの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。水酸基含有モノマーの含有量が上記範囲にあることにより、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性および粘着性がより良好なものとなり、得られる粘着剤層の繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより高いレベルで達成される。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有してもよい。窒素原子含有モノマーとしては、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピラジン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN−(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN−アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有する場合、窒素原子含有モノマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましい。また、当該窒素原子含有モノマーの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値は、10万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには50万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、粘着剤の耐久性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、150万以下であることが好ましく、特に120万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性および粘着力がより優れたものとなる。
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1−2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、粘着剤層が耐久性に優れたものとなる。
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の構成モノマー単位である反応性官能基含有モノマー、特に水酸基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.4質量部以上であることが好ましく、さらには1.0質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、得られる粘着剤層の繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果が高いレベルで達成される。
(1−3)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
(3)粘着剤の製造
本実施形態に係る粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着剤が得られる。かかる粘着剤は、所定の凝集力を有するものとなる。
(4)粘着剤の物性
本実施形態に係る粘着剤の25℃における貯蔵弾性率(G’)は、下限値として、0.01MPa以上であることが好ましい。また、上記貯蔵弾性率(G’)の上限値は、0.25MPa以下であることが好ましく、特に0.20MPa以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る粘着剤の25℃における損失弾性率(G”)は、下限値として、0.005MPa以上であることが好ましく、特に0.01MPa以上であることが好ましい。また、上記損失弾性率(G”)の上限値は、0.1MPa以下であることが好ましく、特に0.08MPa以下であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤の貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)がそれぞれ上記の範囲にあると、屈曲性部材に対する粘着力がより優れたものとなり、繰り返し屈曲デバイスの耐久性が向上する。なお、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有し、当該粘着剤層が、前述した粘着剤からなるものである。
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
(1)構成要素
(1−1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した実施形態に係る粘着剤から構成され、好ましくは、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易く、繰り返し屈曲に起因する浮きや剥がれの発生を効果的に抑制することができる。また、粘着剤層11の厚さは、上限値として150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、繰り返し屈曲による、粘着剤または粘着剤を構成する成分の粘着剤層からの染み出しを抑制することができる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
(1−2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
(2)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が比較的厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
(3)粘着力
本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として5.1N/25mm以上であることが好ましく、特に5.5N/25mm以上であることが好ましく、さらには6.0N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が5.1N/25mm以上であると、界面剥離抑制効果がより優れたものとなる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、通常は、25N/25mm以下であることが好ましく、20N/25mm以下であることがより好ましく、15N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、上記粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
〔繰り返し屈曲積層部材〕
図2に示すように、本実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材2は、第1の屈曲性部材21(一の屈曲性部材)と、第2の屈曲性部材22(他の屈曲性部材)と、それらの間に位置し、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。
上記繰り返し屈曲積層部材2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。
繰り返し屈曲積層部材2は、繰り返し屈曲デバイス自体であるか、または繰り返し屈曲デバイスの一部を構成する部材である。繰り返し屈曲デバイスは、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能なディスプレイであることが好ましいが、これに限定されるものではない。かかる繰り返し屈曲デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、フレキシブルプリント基板、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイ等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22は、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材であり、例えば、カバーフィルム、バリアフィルム、偏光フィルム、偏光子、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、フィルムセンサー、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)等が挙げられる。
上記の中でも、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の少なくとも一方が、繰り返し屈曲可能な表示素子、具体的には、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、または電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)であることが好ましい。
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率は、それぞれ0.1〜10GPaであることが好ましく、特に0.5〜7GPaであることが好ましく、さらには1.0〜5GPaであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率がかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さは、それぞれ5〜3000μmであることが好ましく、特に10〜1000μmであることが好ましく、さらには10〜500μmであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さがかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
上記繰り返し屈曲積層部材2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の屈曲性部材21の一方の面に貼合する。
その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の屈曲性部材22とを貼合し、繰り返し屈曲積層部材2を得る。また、他の例として、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
〔繰り返し屈曲デバイス〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、上記の繰り返し屈曲積層部材2を備えたものであり、繰り返し屈曲積層部材2のみからなってもよいし、一または複数の繰り返し屈曲積層部材2と、他の屈曲性部材とを備えて構成されてもよい。一の繰り返し屈曲積層部材2と他の繰り返し屈曲積層部材2とを積層するとき、または繰り返し屈曲積層部材2と他の屈曲性部材とを積層するときには、前述した粘着シート1の粘着剤層11を介して積層することが好ましい。
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、粘着剤層が前述した粘着剤からなるため、繰り返し屈曲させた場合(例えば3万回)および長期間屈曲状態に置かれた場合(例えば少なくとも24時間以上)において、屈曲状態から解放した後、繰り返し屈曲デバイスが大きく屈曲した状態で固まることが抑制され、繰り返し屈曲による影響および屈曲状態に置かれたことによる影響が緩和される。かかる繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果は、例えば、静的屈曲試験による静的屈曲変形量および動的屈曲試験による動的屈曲変形量により評価することができる。
静的屈曲試験においては、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)で粘着剤層(厚さ:12μm)を挟持してなる積層体であって、200mm×50mmの大きさのものを試験片とする。図3に示すように、この試験片Sを、23℃、50%RHの環境下、立設した2枚のガラス板からなる保持プレートPの間に、屈曲させた状態で、24時間保持する。このとき、2枚の保持プレートPの相互間の距離は6mmに設定し(試験片Sの屈曲径:6mmφ)、試験片Sの長辺(200mm)の略中央部が屈曲部となり、試験片Sの両方の短辺(50mm)が上側に位置するように試験片Sを保持する。この静的屈曲試験を行った後、2枚の保持プレートPの間から試験片Sを取り出し、図4に示すように、屈曲部の凸方向が上側になるように、試験片Sを平板上に載置する。そして、試験直後、試験30分後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点までの高さhを静的屈曲変形量として測定する。この静的屈曲変形量を静的屈曲試験の試験結果とし、当該静的屈曲変形量を基準に屈曲状態緩和効果を評価することができる。
静的屈曲試験による静的屈曲変形量は、試験直後において、3mm以下であることが好ましく、特に1mm以下であることが好ましく、さらには0.5mm以下であることが好ましい。また、試験30分後において、1mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以下であることが好ましい。また、試験24時間後において、0.5mm以下であることが好ましく、特に0.3mm以下であることが好ましい。なお、いずれの静的屈曲変形量も、下限値は0mmであることが好ましい。
一方、動的屈曲試験においては、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)で粘着剤層(厚さ:12μm)を挟持してなる積層体であって、150mm×50mmの大きさのものを試験片とする。図5に示すように、この試験片Sを、23℃、50%RHの環境下、面状態無負荷U字伸縮試験機の2枚の保持プレートPの間で保持する。2つの保持プレートPの一方は、他方の保持プレートPと並行関係を保って、他方の保持プレートPに対して接近・離隔の往復移動が可能となっている。2つの保持プレートPの相互間の距離は、86mmから6mmまで変化させるものとする(試験片Sの屈曲径:6mmφ,ストローク:80mm)。試験片Sは、その長辺(150mm)の略中央部が屈曲部となり、試験片Sの両方の短辺(50mm)が上側に位置するように保持プレートPに固定する。その状態で、屈曲速度(保持プレートPの往復移動速度)30rpmにて、試験片Sを3万回屈曲させる。この動的屈曲試験を行った後、2つの保持プレートPの間から試験片Sを取り出し、図4に示すように、屈曲部の凸方向が上側になるように、試験片Sを平板上に載置する。そして、試験直後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点までの高さhを動的屈曲変形量として測定する。この動的屈曲変形量を動的屈曲試験の試験結果とし、当該動的屈曲変形量を基準に屈曲状態緩和効果を評価することができる。
動的屈曲試験による動的屈曲変形量は、試験直後において、3mm以下であることが好ましく、特に1mm以下であることが好ましく、さらには0.5mm以下であることが好ましい。また、試験24時間後において、1mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以下であることが好ましい。なお、いずれの動的屈曲変形量も、下限値は0mmであることが好ましい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の屈曲性部材が積層されてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル65質量部、N−アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸イソボニル15質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1.20質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382150」)の剥離処理面に、コンマコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ12μmの粘着剤層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:12μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
〔実施例2〕
アクリル酸2−エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.47質量部とを混合し、十分に撹拌して、MEKで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用して、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔実施例3〕
アクリル酸ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.47質量部とを混合し、十分に撹拌して、MEKで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用して、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔実施例4〕
実施例3で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を0.94質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔実施例5〕
実施例2で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を0.94質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔実施例6〕
実施例2で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を1.88質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔実施例7〕
実施例1で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を0.60質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔比較例1〕
アクリル酸2−エチルヘキシル47.8質量部、アクリル酸n−ブチル47.8質量部、アクリル酸4質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシプロピル0.4質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)3.75質量部とを混合し、十分に撹拌して、MEKで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用して、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔比較例2〕
実施例3で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を1.88質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
〔比較例3〕
比較例1で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を6.56質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
なお、表1中に、各実施例・比較例における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の組成および架橋剤(B)の配合量((メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する質量部)を記載する。表1中の略号は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
ACMO:N−アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n−ブチル
MA:アクリル酸メチル
AA:アクリル酸
2HPA:アクリル酸2−ヒドロキシプロピル
〔試験例1〕(クリープコンプライアンスの測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ0.5mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
上記サンプルについて、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いて、以下の条件で3000Paの応力を印加し続け、クリープコンプライアンスJ(t)(MPa−1)を測定した。その測定結果から、3000Paの応力が印加された時の値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後までに測定された最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)を導出した。
測定温度:25℃
測定点:1000点(対数プロット)
得られた最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)および最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)から、以下の式(I)に基づいて、クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)を算出した。結果を表1に示す。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max−logJ(t)min …(I)
〔試験例2〕(動的弾性率の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ0.5mm程度の積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
上記サンプルについて、JIS K7244−1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いて、以下の条件で動的粘弾性を測定し、25℃における損失正接(tanδ)、貯蔵弾性率(G’)(MPa)および損失弾性率(G”)(MPa)を観測した。結果を表1に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度範囲:-20〜150℃
〔試験例3〕(静的屈曲試験)
23℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「S10ルミラー」,厚さ:12μm)の一方の面に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、別のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「S10ルミラー」,厚さ:12μm)の一方の面に貼合した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たPETフィルム/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を、200mm×50mmに裁断し、これを試験片とした。
得られた試験片を、23℃、50%RHの環境下、図3に示すように、立設した2枚のガラス板からなる保持プレート(相互間距離:6mm)の間に、屈曲させた状態で24時間保持した。この静的屈曲試験を行った後、図4に示すように、試験片を平板上に載置し、試験直後、試験30分後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点部分までの高さhを静的屈曲変形量として測定した。測定した静的屈曲変形量に基づいて、以下の基準により静的屈曲性を評価した。また、試験後の試験片において、屈曲部における粘着剤層と被着体との界面に剥がれがないか否か、目視により確認した。結果を表1に示す。
◎:屈曲試験直後の変形量が1mm以下
〇:屈曲試験直後の変形量が1mm超、3mm以下、試験30分後の変形量が1mm以下
△:屈曲試験直後の変形量が3mm超、6mm以下、試験30分後の変形量が5mm以下、試験24時間後の変形量が1mm以下
×:上記以外
〔試験例4〕(動的屈曲試験)
試験例3と同様にして得たPETフィルム/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を、150mm×50mmに裁断し、これを試験片とした。得られた試験片の両端部を、図5に示すように、面状態無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「DLDMLH−FS」)の2つの保持プレートに固定した。そして、23℃、50%RHの環境下、屈曲径6mmφ、ストローク80mm、屈曲速度30rpmにて、試験片を3万回屈曲させた。
上記の動的屈曲試験を行った後、図4に示すように、試験片を平板上に載置し、試験直後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点部分までの高さhを動的屈曲変形量として測定した。測定した動的屈曲変形量に基づいて、以下の基準により動的屈曲性を評価した。また、試験後の試験片において、屈曲部における粘着剤層と被着体との界面に剥がれがないか否か、目視により確認した。結果を表1に示す。
◎:屈曲試験直後の変形量が0mm
〇:屈曲試験直後の変形量が1mm以下、試験24時間後の変形量が0mm
△:屈曲試験直後の変形量が1mm超、3mm以下、試験24時間後の変形量が1mm以下
×:上記以外
〔試験例5〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付し、23℃、50%RHの環境下で30分間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、PETフィルムと粘着剤層との積層体をソーダライムガラスから剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2019108502
表1から分かるように、実施例の粘着シートの粘着剤層は、2つの屈曲性部材を貼合して繰り返し屈曲させたときおよび長時間屈曲状態に置いたときに、屈曲状態緩和効果に優れるとともに、界面剥離抑制効果にも優れていた。
本発明は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材(例えば各種フィルム)と他の屈曲性部材(例えば表示素子)とを貼合するのに好適である。
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…繰り返し屈曲積層部材
21…第1の屈曲性部材
22…第2の屈曲性部材
S…試験片
P…保持プレート

Claims (9)

  1. 繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、
    前記粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa−1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa−1)とし、以下の式(I)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.79以下であり、
    JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定から得られる25℃における損失正接(tanδ)が、0.328以上、0.85以下である
    ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
    ΔlogJ(t)=logJ(t)max−logJ(t)min …(I)
  2. 25℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.01MPa以上、0.25MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
  3. 25℃における損失弾性率(G”)が、0.005MPa以上、0.1MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
  4. 前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
  5. 繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
    前記粘着剤層が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤からなる
    ことを特徴とする粘着シート。
  6. 前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
    前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
    ことを特徴とする請求項5に記載の粘着シート。
  7. 繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、
    前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層と
    を備えた繰り返し屈曲積層部材であって、
    前記粘着剤層が、請求項5または6に記載の粘着シートの粘着剤層である
    ことを特徴とする繰り返し屈曲積層部材。
  8. 前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることを特徴とする請求項7に記載の繰り返し屈曲積層部材。
  9. 請求項7または8に記載の繰り返し屈曲積層部材を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス。
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