JP2019108487A - 組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、透明性が高く、着色が抑制されたシートを提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、酸成分と、を含む組成物であって、酸成分は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種であり、組成物の固形分含有量が85質量%以上である組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、組成物に関する。具体的には、本発明は、繊維状セルロースを含有する組成物に関し、好ましくは繊維状セルロースを含有するシートに関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロースと樹脂を含む複合体が開発されている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合体においては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。
例えば、特許文献1〜3には、微細繊維状セルロースと樹脂を含むシートが開示されている。特許文献1には、微細繊維状セルロースとマトリックスを含むセルロース繊維複合体が開示されており、特許文献2には、微細繊維状セルロースとポリビニルアルコール系樹脂を含むポリビニルアルコールフィルムが開示されている。また、特許文献3には、熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、改質セルロース繊維を含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4〜6では、所定の製造方法で得られた微細繊維状セルロースをシート状にすることが検討されている。例えば、特許文献4には、セルロース繊維原料を解繊して解繊セルロース繊維を得る解繊工程と、解繊セルロース繊維を用いてセルロース繊維重合体を得るセルロース繊維重合体の製造方法が開示されている。特許文献5には、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナノファイバーを添加したセルロースナノファイバーに、油性成分を添加し、ミキサーおよび/または撹拌脱泡装置で撹拌した後、乾燥させることでセルロースナノファイバーフィルムを形成する方法が開示されている。特許文献6には、原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程と、セルロースを解繊する工程を有することを特徴とするセルロースの製造方法が開示されている。なお、特許文献6では、セルロースを解繊する前に原料セルロースと有機酸を接触させており、有機酸との接触後には洗浄工程が設けられている。
特開2011−144363号公報 特開2017−052840号公報 特開2017−052940号公報 国際公開WO2012/067113号公報 特開2017−048293号公報 特開2010−222536号公報
本発明者らは、微細繊維状セルロースを含むシートについて研究を進める中で、微細繊維状セルロース含有シートの透明性が低下したり、着色が生じたりする場合があることを突き止めた。
そこで本発明は、微細繊維状セルロースを含むシートにおいて透明性を高め、かつ着色を抑制することを目的とする。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、微細繊維状セルロースを含有する組成物に、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種の酸成分を含有させることにより、透明性が高く、かつ着色が抑制されたシートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、酸成分と、を含む組成物であって、
酸成分は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種であり、
組成物の固形分含有量が85質量%以上である組成物。
[2] シートである[1]に記載の組成物。
[3] 酸成分は、有機酸及び有機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 酸成分は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 酸成分は、無機酸及び無機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 酸成分は、リン酸、塩酸、硫酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 繊維状セルロースはアニオン性官能基を有する[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] 樹脂をさらに含む[1]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9] 酸成分の含有量が0.3質量%以上8.0質量%以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の組成物。
[10] 組成物はシートであり、シートの表面のpHが6.00以上8.00以下である[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11] 組成物はシートであり、ヘーズが4.0%以下である[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
[12] 組成物はシートであり、下記式により算出されるYI増加率が1500%以下である[1]〜[11]のいずれかに記載の組成物;
YI増加率(%)=(加熱後のシートの黄色度−加熱前のシートの黄色度)/加熱前のシートの黄色度×100
上記式において、加熱後のシートの黄色度は、シートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度であり、加熱前のシートの黄色度は熱プレス前にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度である。
本発明によれば、透明性が高く、かつ着色が抑制された微細繊維状セルロース含有シートが得られる。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(微細繊維状セルロース含有組成物)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、酸成分と、を含む組成物に関する。ここで、酸成分は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種である。また、組成物の固形分含有量は85質量%以上である。なお、本明細書において、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを微細繊維状セルロースと呼ぶこともある。
本発明の組成物は、上記構成を有するものであるため、透明性に優れたシートを形成することができる。さらに、本発明の組成物から形成されるシートは、着色が抑制されており、特に黄着色が抑制されている。なお、本発明の組成物はシート状であることが好ましく、本発明は微細繊維状セルロース含有シートに関するものでもある。以下では、本発明の好ましい実施形態であるシートについて説明する。
(微細繊維状セルロース含有シート)
シートのヘーズは、4.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。なお、シートのヘーズの下限値は特に限定されるものではなく、0.0%であってもよい。シートのヘーズを上記範囲内とすることにより、より透明性に優れたシートが得られる。なお、シートのヘーズは、JIS K 7136に準拠し、例えば、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
シートの下記式により算出されるYI増加率は1500%以下であることが好ましく、1300%以下であることより好ましく、1200%以下であることがさらに好ましく、1000%以下であることが一層好ましく、900%以下であることが特に好ましい。なお、YI増加率は0%であってもよい。
YI増加率(%)=(加熱後のシートの黄色度−加熱前のシートの黄色度)/加熱前のシートの黄色度×100
上記式において、加熱後のシートの黄色度は、シートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度であり、加熱前のシートの黄色度は熱プレス前にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度である。黄色度の測定には、例えば、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いることができる。
YI増加率を上記範囲内とすることにより、より黄着色が抑制されたシートが得られる。
シート(加熱前のシート)のJIS K 7373に準拠して測定した黄色度(YI)は、1.0以下であることが好ましく、0.7未満であることがより好ましい。また、シートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度(YI)は、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、7.5以下であることがさらに好ましく、7.0以下であることが一層好ましく、6.0以下であることが特に好ましい。なお、黄色度(YI)の下限値に特に制限はなく、0.0であってもよい。
本発明の下記式で算出されるΔYIは、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることがさらに好ましく、6.0以下であることが特に好ましい。
ΔYI=(加熱後のシートの黄色度)−(加熱前のシートの黄色度)
上記式において、加熱後のシートの黄色度は、シートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度であり、加熱前のシートの黄色度は熱プレス前にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度である。
本発明の組成物から形成されるシートにおいては、180℃といった高温での加熱後においてもシートの黄色度の上昇が抑制されている。
シートの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。なお、シートの全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、たとえばヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
シートの固形分含有量は85質量%以上であればよく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。なお、シートの固形分含有量は100質量%であってもよい。すなわち、シートはその大部分が固形分であり、溶媒の含有量が少ない。
シート中における微細繊維状セルロースの含有量は、シート中の全固形分質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。一方で、シート中における微細繊維状セルロースの含有量は、シート中の全固形分質量に対して99質量%以下であることが好ましい。
なお、シートは、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水や有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、m−クレゾール、グリセリン、酢酸、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、アニリン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、ジエチルエーテルクロロホルム等を挙げることができる。シート中における溶媒の含有量は、シートの全質量に対して、10質量%以下であればよく、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
シートの表面のpHは、6.00以上であることが好ましく、6.20以上であることがより好ましく、6.30以上であることがさらに好ましい。また、シートの表面のpHは、8.00以下であることが好ましい。なお、シートの表面pHは、例えば、校正済みのpHメータ(堀場製作所製、F−53)にて測定される値である。
シートの表面のpHは上記範囲内であることが好ましく、このことは、シートが酸成分を含有していることを表している。ここで、シートに含有される酸成分は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種である。このような酸成分は、シートの表面のpHが上記範囲内となるように添加されることが好ましい。例えば、シート中における酸成分の含有量は、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、シート中における酸成分の含有量は、8.0質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましい。また、シートの表面のpHは、製造条件を適切に選択することによっても調整される。たとえばシート化前のスラリーに酸成分を添加した後に、この酸性分をシート中に残存させるようにシート化する条件を採用することが好ましい。なお、上記酸成分の含有量はシート形成工程を経て得られたシート中に残存した酸成分の含有量である。酸性分の含有量は、例えばイオンクロマトグラフ法で定量することができる。
シートの厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、シートの厚みの上限値は、特に限定されないが、1000μm以下であることが好ましい。シートの厚みは、例えば、触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定することができる。
シートの坪量は、特に限定されないが、10g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、シートの坪量は、特に限定されないが、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。ここで、シートの坪量は、たとえばJIS P 8124に準拠し、算出することができる。
シートの密度は、特に限定されないが、たとえば0.1g/cm3以上であることが好ましく、0.5g/cm3以上であることがより好ましく、1.0g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、シートの密度は、特に限定されないが、たとえば5.0g/cm3以下であることが好ましく、3.0g/cm3以下であることがより好ましい。ここで、シートの密度は、50mm角のシートを23℃、相対湿度50%条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量を測定することにより算出することができる。
(微細繊維状セルロース)
本発明の組成物(シート)は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロース)を含む。繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすい。また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。とくに、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
繊維状セルロースは、たとえばイオン性置換基および非イオン性置換基のうちの少なくとも一種を有する。分散媒中における繊維の分散性を向上させ、解繊処理における解繊効率を高める観点からは、繊維状セルロースがイオン性置換基を有することがより好ましい。イオン性置換基としては、たとえばアニオン性官能基およびカチオン性官能基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性置換基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、繊維状セルロースは、イオン性置換基としてアニオン性官能基を有することがとくに好ましい。
アニオン性官能基としては、たとえばリン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及びスルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。繊維状セルロースがリン酸基を有することにより、透明性が高く、かつ着色が抑制されたシートが得られるやすくなる。
リン酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基には、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として繊維状セルロースに含まれていてもよい。
リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。
Figure 2019108487
式(1)中、a、b及びnは自然数である(ただし、a=b×mである)。α1,α2,・・・,αn及びα’のうちa個がO-であり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αn及びα’の全てがO-であっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、又はt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、又はアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、又は3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、又はナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖又は側鎖に対し、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加又は置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維の収率を高めることもできる。
βb+は有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、又は芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、又は水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種又は2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、又はカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
繊維状セルロースに対するアニオン性官能基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、繊維状セルロースに対するアニオン性官能基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。アニオン性官能基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、アニオン性官能基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロースを含むシートなどにおいて良好な特性を発揮することができる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、アニオン性官能基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの繊維状セルロースの質量を示す。
繊維状セルロースに対するアニオン性官能基の導入量は、たとえば伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定法による測定では、得られた繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リン酸基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を観察し、図1に示すような滴定曲線を得る。図1に示すように、最初は急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このように、滴定曲線には、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。このため、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。したがって、上記で得られた滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リン酸基導入量(mmol/g)となる。
図2は、カルボキシル基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するカルボキシル基の導入量は、たとえば次のように測定される。まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。滴定曲線は、図2に示すように、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでの第1領域と、その後に伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1領域、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、カルボキシル基の導入量(mmol/g)となる。
なお、上述のカルボキシル基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量であることから、酸型の繊維状セルロースが有するカルボキシル基量(以降、カルボキシル基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシル基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するカルボキシル基量(以降、カルボキシル基量(C型))を求めることが出来る。
すなわち、下記計算式によってカルボキシル基導入量を算出する。
カルボキシル基導入量(C型)=カルボキシル基量(酸型)/[1+(W−1)×(カルボキシル基量(酸型))/1000]
W:陽イオンCの1価あたりの式量(例えば、Naは23、Alは9)
<微細繊維状セルロースの製造工程>
<繊維原料>
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することも出来る。また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることも出来る。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リン酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リン酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態、湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、特に乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、特に水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、例えばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、特に限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加又は混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば攪拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いることができる。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分、及び化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分、を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、例えば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリン酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリン酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リン酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。
繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
<カルボキシル基導入工程>
カルボキシル基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化やフェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては、特に限定されないが、たとえばマレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、特に限定されないが、たとえばカルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、特に限定されないが、たとえばマレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては、特に限定されないが、たとえば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、特に限定されないが、たとえばジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が、アルキル基、フェニル基等の置換基により置換されたものが挙げられる。
カルボキシル基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合には、たとえばその処理をpHが6以上8以下の条件で行うことが好ましい。このような処理は、中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、例えばリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、繊維原料としてパルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシル基まで酸化することが出来る。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。
繊維原料に対するカルボキシル基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシル基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることが特に好ましい。また、2.50mmol/g以下であることが好ましく、2.20mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。
<洗浄工程>
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてリン酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶剤によりリン酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
<アルカリ処理工程>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶剤のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶剤などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるリン酸基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえばリン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、リン酸基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったリン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄することが好ましい。
<酸処理工程>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。例えば、リン酸基導入工程、酸処理、アルカリ処理及び解繊処理をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、特に限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、特に限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、特に限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえば繊維原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
<解繊処理>
リン酸基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばリン酸基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶剤などの有機溶剤から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶剤としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。また、リン酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、例えば水素結合性のある尿素などのリン酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
以上のようにして、微細繊維状セルロースを含有するスラリーが得られる。スラリー中の固形分濃度は適宜調節することができ、例えば、固形分濃度は0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、固形分濃度は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
(酸成分)
本発明の組成物(シート)は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種の酸成分を含む。酸成分は、1種であってもよく、2種以上を併用したものであってもよい。酸成分として、上記酸を含有することにより、シートのヘーズを低く抑えることができ、かつ黄着色を抑制することができる。
酸成分は、有機酸及び有機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ナフテン酸、オクチル酸、オクタン酸、安息香酸、デカン酸、トルイル酸、酪酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リノール酸塩、リノレン酸、リシノレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸等を挙げることができる。なお、有機酸塩としては、上記有機酸の塩(但し、多価金属塩を除く)を挙げることができる。有機酸塩は1価の金属塩であることが好ましく、1価の金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等を挙げることができる。中でも、酸成分は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
酸成分は、無機酸及び無機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含むことも好ましい。無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、炭酸、ケイ酸、ホウ酸等を挙げることができる。無機酸塩としては、上記無機酸の塩(但し、多価金属塩を除く)を挙げることができる。無機酸塩は1価の金属塩であることが好ましく、1価の金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等を挙げることができる。中でも、酸成分は、リン酸、塩酸、硫酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
酸成分は強酸であることが好ましく、水への溶解度が高いものが好ましい。なお、酸成分の添加量は酸成分のpHや溶解度により適宜調整することが好ましい。
(任意成分)
本発明の組成物(シート)は上述した微細繊維状セルロース及び酸成分の他に、樹脂をさらに含むことが好ましい。樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、塩素系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース誘導体、ポリエチレン系樹脂等を挙げることができる。中でも、本発明の組成物(シート)は、ポリオール系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びセルロース誘導体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の組成物(シート)は、樹脂として、上述した樹脂種とは別にさらに水溶性高分子を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、プルラン、カラギーナン、ペクチンなどに例示される増粘多糖類、カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、アミロース等のデンプン類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類等、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩等を挙げることができる。
シートに含まれる樹脂の含有量は、シート中の全固形分質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、シートに含まれる樹脂の含有量は、シート中の全固形分質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤、有機イオン、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、分散剤、架橋剤等を挙げることができ、本発明の組成物(シート)は上記成分の一種または二種以上を含んでいてもよい。
シート中に含まれる上記成分の含有量は、シート中の全固形分質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
(シートの製造工程)
シートの製造工程は、微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを得る工程と、該スラリーを基材上に塗工する塗工工程、又は該スラリーを抄紙する抄紙工程を含む。これにより、微細繊維状セルロースを含むシートが得られることとなる。中でも、シートの製造工程は、微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを得る工程と、該スラリーを基材上に塗工する塗工工程を含むことが好ましい。
微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを得る工程では、スラリーのpHを6.00以上8.50以下に調整することが好ましい。すなわち、微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを得る工程は、微細繊維状セルロース含有スラリーに酸成分を添加してpHを6.00以上8.50以下に調整する工程を含むことが好ましい。酸成分の添加量は微細繊維状セルロース含有スラリーのpHや添加する酸成分の種類により適宜変更することができ、酸成分を含むスラリーのpHが6.00以上8.50以下となるように添加されることが好ましい。このように、シートの製造工程では、シート形成に供されるスラリーに酸成分が添加され、シート形成に供されるスラリーのpHが上記範囲内に調整される。また、シート形成に供されるスラリーに酸成分が添加されることにより、シートにも酸成分が含まれることになる。なお、シート化工程においては、スラリー中に添加された酸成分がシート中に残存する条件を採用することが好ましい。
なお、シートに樹脂が含まれる場合は、微細繊維状セルロースを含むスラリーを得る工程において、樹脂溶液が添加されることが好ましい。樹脂溶液は、樹脂と水を混合した水溶液であってもよく、樹脂と有機溶剤を混合した溶液であってもよい。また、樹脂溶液を添加した後は、スラリーを加熱して樹脂成分の分散性を高めてもよい。
<塗工工程>
塗工工程では、たとえば微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得ることができる。また、塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
塗工工程で用いる基材の材質は、特に限定されないが、スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
塗工工程において、スラリーの粘度が低く、基材上で展開してしまう場合には、所定の厚み及び坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠としては、特に限定されないが、たとえば乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。このような観点から、樹脂板または金属板を成形したものがより好ましい。本実施形態においては、例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板、及びこれらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したものを用いることができる。
スラリーを基材に塗工する塗工機としては、とくに限定されないが、たとえばロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。シートの厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターがとくに好ましい。
スラリーを基材へ塗工する際のスラリー温度および雰囲気温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましく、15℃以上50℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上40℃以下であることが特に好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、スラリーをより容易に塗工できる。塗工温度が上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が好ましくは10g/m2以上200g/m2以下となるように、より好ましくは20g/m2以上150g/m2以下となるように、スラリーを基材に塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れたシートが得られる。
塗工工程は、上述のとおり、基材上に塗工したスラリーを乾燥させる工程を含む。スラリーを乾燥させる工程は、特に限定されないが、たとえば非接触の乾燥方法、もしくはシートを拘束しながら乾燥する方法、またはこれらの組み合わせにより行われる。非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば熱風、赤外線、遠赤外線もしくは近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、または真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、とくに限定されないが、たとえば赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができる。加熱乾燥法における加熱温度は、特に限定されないが、たとえば20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができる。また、加熱温度を上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び繊維状セルロースの熱による変色の抑制を実現できる。
<抄紙工程>
抄紙工程は、抄紙機によりスラリーを抄紙することにより行われる。抄紙工程で用いられる抄紙機としては、とくに限定されないが、たとえば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等の公知の抄紙方法を採用してもよい。
抄紙工程は、スラリーをワイヤーにより濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、このシートをプレス、乾燥することにより行われる。スラリーを濾過、脱水する際に用いられる濾布としては、特に限定されないが、たとえば繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないものであることがより好ましい。このような濾布としては、特に限定されないが、たとえば有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。本実施形態においては、たとえば孔径0.1μm以上20μm以下であるポリテトラフルオロエチレンの多孔膜や、孔径0.1μm以上20μm以下であるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
シート化工程において、スラリーからシートを製造する方法は、たとえば微細繊維状セルロースと酸成分を含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させてシートを生成する乾燥セクションとを備える製造装置を用いて行うことができる。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
抄紙工程において用いられる脱水方法としては、特に限定されないが、たとえば紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられる。これらの中でも、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、さらにロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、抄紙工程において用いられる乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば紙の製造で用いられている方法が挙げられる。これらの中でも、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどを用いた乾燥方法がより好ましい。
(積層体)
本発明は、上述したシートにさらに他の層を積層した構造を有する積層体に関するものであってもよい。このような他の層は、シートの両表面上に設けられていてもよいが、シートの一方の面上にのみ設けられていてもよい。シートの少なくとも一方の面上に積層される他の層としては、例えば、樹脂層や無機層を挙げることができる。
<樹脂層>
樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリル及びポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、例えば特開2010−023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
樹脂層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合または、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
シートと樹脂層の間には、接着層が設けられていてもよく、また接着層が設けられておらず、シートと樹脂層が直接密着をしていてもよい。シートと樹脂層の間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤として、例えば、アクリル系樹脂を挙げることができる。また、アクリル系樹脂以外の接着剤としては、例えば、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
シートと樹脂層の間に接着層が設けられていない場合は、樹脂層が密着助剤を有してもよく、また、樹脂層の表面に親水化処理等の表面処理を行ってもよい。
密着助剤としては、例えば、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基及びシラノール基から選択される少なくとも1種を含む化合物や、有機ケイ素化合物が挙げられる。中でも、密着助剤はイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)及び有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、シランカップリング剤縮合物や、シランカップリング剤を挙げることができる。
表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を挙げることができる。
<無機層>
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
無機層の形成方法は、特に限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。成膜速度が遅いという欠点はあるが、プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
(成形体)
本発明は、上述した組成物やシートから形成される成形体に関するものであってもよい。本発明の組成物やシートから形成される成形体は、優れた曲げ弾性率を有し、さらに強度と寸法安定性にも優れている。加えて、本発明の組成物やシートから形成される成形体は透明性にも優れている。
(用途)
本発明の組成物やシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、電気化学素子用セパレータ、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材などの他、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
[リン酸化パルプの作製]
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対してリン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。
次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。これにより得られたリン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm-1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
[解繊処理]
得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液Aを得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。なお、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(強酸性基量)は、1.45mmol/gだった。
[ポリエチレンオキサイドの溶解]
イオン交換水に、ポリエチレンオキサイド(住友精化社製、PEO−18)を1質量%になるように加え、1時間撹拌して溶解した。このようにしてポリエチレンオキサイド水溶液を得た。
[クエン酸の溶解]
イオン交換水に、クエン酸(和光純薬工業株式会社製)を0.5質量%になるように加え、15分撹拌して溶解した。このようにしてクエン酸水溶液を得た。
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]
微細繊維状セルロース分散液A及び上記ポリエチレンオキサイド水溶液をそれぞれ固形分濃度が0.5質量%となるようにイオン交換水で希釈した。次いで、希釈後の微細繊維状セルロース分散液100質量部に対して、希釈後のポリエチレンオキサイド水溶液を20質量部添加し、混合液Aを得た。このときの混合液AのpHは8.74であった。上記手順で得た混合液Aを400g分取し、上記クエン酸水溶液を2.9g添加し、pHを調整した塗工液を得た。このときの塗工液のpHは7.02であった。次いで、シートの仕上がり坪量が50g/m2になるように塗工液を計量して、市販の透明アクリル板上に展開し、50℃の恒温乾燥機にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の枠(内寸180mm×180mm、高さ50mm)を配置した。上記アクリル板から乾燥後のシートを剥離し、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
[実施例2]
[L−酒石酸の溶解]
イオン交換水に、L−酒石酸(和光純薬工業株式会社製)を0.5質量%になるように加え、15分撹拌して溶解した。このようにしてL−酒石酸水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに2.7gのL−酒石酸水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.00であった。
[実施例3]
[DL−リンゴ酸の溶解]
イオン交換水に、DL−リンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)を0.5質量%になるように加え、15分撹拌して溶解した。このようにしてDL−リンゴ酸水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに3.0gのDL−リンゴ酸水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.02であった。
[実施例4]
[リン酸の希釈]
イオン交換水に、リン酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)をリン酸濃度が0.5質量%になるように加え、15分撹拌して希釈した。このようにして0.5質量%リン酸水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに5.3gのリン酸水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.02であった。
[実施例5]
[塩酸の希釈]
イオン交換水に、塩酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)を塩酸濃度が0.5質量%になるように加え、15分撹拌して希釈した。このようにして0.5質量%塩酸水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに3.0gの塩酸水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.00であった。
[比較例1]
混合液AのpHを調整せずシート化した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。
[比較例2]
[硫酸マグネシウムの溶解]
イオン交換水に、硫酸マグネシウム七水和物(関東化学株式会社製)を0.5質量%になるように加え、15分撹拌して溶解した。このようにして硫酸マグネシウム水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに45.3gの硫酸マグネシウム水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.00であった。
[比較例3]
[硫酸アルミニウムの溶解]
イオン交換水に、硫酸アルミニウム14〜18水和物(関東化学株式会社製)を硫酸アルミニウム純分が0.5質量%となるように加え、15分撹拌して溶解した。このようにして硫酸アルミニウム水溶液を得た。
実施例1の[微細繊維状セルロース含有シートの作製]で用いた混合液Aに39.8gの硫酸マグネシウム水溶液を添加し、pHを調整した塗工液を得た以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。なお、このときの塗工液のpHは7.01であった。
[測定]
[シート塗工液のpH測定]
シート塗工液のpHは、校正済みのハンディpHメータ(堀場製作所製、D−51S)にて測定した。
[シートの表面pH]
シートの表面pHは、校正済みのpHメータ(堀場製作所製、F−53)にて測定した。
[シートのヘーズ]
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。
[シートの加熱前後の黄色度]
JIS K 7373に準拠し、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いてシートの加熱前後の黄色度(YI)を測定した。なお、加熱後の黄色度は、ミニテストプレス機(アイダエンジニアリング製)にてシートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後に測定した。また、黄色度の変化量としてΔYIを下記の式より算出した。
ΔYI=(加熱後のシートの黄色度)−(加熱前のシートの黄色度)
さらに、YI増加率を下記の式より算出した。
YI増加率(%)=ΔYI/(加熱前のシートの黄色度)×100
Figure 2019108487
実施例で得られたシートは、ヘーズとYI増加率が低く抑えられており、透明性が高く、黄着色が抑制されたシートであった。
一方、比較例1で得られたシートは酸成分を含有していないため、YI増加率が大きく、比較例2及び3で得られたシートは多価金属塩を含むため、ヘーズが高くなっていた。

Claims (12)

  1. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、酸成分と、を含む組成物であって、
    前記酸成分は、有機酸、無機酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種であり、
    前記組成物の固形分含有量が85質量%以上である組成物。
  2. シートである請求項1に記載の組成物。
  3. 前記酸成分は、有機酸及び有機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記酸成分は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記酸成分は、無機酸及び無機酸塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記酸成分は、リン酸、塩酸、硫酸及びこれらの塩(但し、多価金属塩を除く)から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 前記繊維状セルロースはアニオン性官能基を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 樹脂をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 前記酸成分の含有量が0.3質量%以上8.0質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記組成物はシートであり、前記シートの表面のpHが6.00以上8.00以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記組成物はシートであり、前記シートのヘーズが4.0%以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 前記組成物はシートであり、
    下記式により算出されるYI増加率が1500%以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物;
    YI増加率(%)=(加熱後のシートの黄色度−加熱前のシートの黄色度)/加熱前のシートの黄色度×100
    上記式において、加熱後のシートの黄色度は、シートを180℃、0.5MPaで1分間熱プレスした後にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度であり、加熱前のシートの黄色度は熱プレス前にJIS K 7373に準拠して測定した黄色度である。
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