以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて詳細に説明する。
図1は車両に搭載されるワイパ装置を示す概要図を、図2は図1のワイパモータを示す平面図を、図3は図2のワイパモータのアーマチュアを示す斜視図を、図4はインシュレータが装着されたアーマチュアコア(コイル無)を軸方向から見た平面図を、図5は一対のインシュレータおよびアーマチュアコアを示す分解斜視図を、図6は図4のA−A線に沿う断面図(コイル有)を、図7(a),(b)はインシュレータの製造手順およびコイルの巻装具合を説明する図4のB−B線に沿う拡大断面図を、図8はコイルの巻装状態を示す展開図をそれぞれ示している。
図1に示されるように、車両10の前方側には、フロントガラス11が設けられている。フロントガラス11上には、当該フロントガラス11に付着した雨水等を払拭するDR側ワイパ部材12およびAS側ワイパ部材13が設けられている。ここで、DR側は運転席側を示し、AS側は助手席側を示している。
DR側ワイパ部材12は、DR側ワイパブレード12aとDR側ワイパアーム12bとを備えている。DR側ワイパブレード12aは、DR側ワイパアーム12bの先端側に回動自在に装着されている。また、AS側ワイパ部材13は、AS側ワイパブレード13aとAS側ワイパアーム13bとを備えている。AS側ワイパブレード13aは、AS側ワイパアーム13bの先端側に回動自在に装着されている。
そして、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aは、DR側,AS側ワイパアーム12b,13bの内側に設けられた引張ばね(図示せず)の付勢力により、フロントガラス11にそれぞれ弾性接触されている。
また、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aは、フロントガラス11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間に形成されたDR側,AS側払拭範囲11a,11bを、それぞれ同期して同一方向に往復するようになっている。すなわち、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aの払拭パターンは、タンデム型となっている。
車両10におけるフロントガラス11の前方側には、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aを揺動させるワイパ装置14が搭載されている。ワイパ装置14は、車室内等に設けられるワイパスイッチ(図示せず)の操作により駆動されるワイパモータ15と、ワイパモータ15の回転運動をDR側,AS側ワイパブレード12a,13aの揺動運動に変換するリンク機構16と、を備えている。
そして、操作者がワイパスイッチを操作することで、ワイパモータ15が回転駆動される。すると、リンク機構16が揺動駆動されて、車両10に設けられたDR側ピボット軸17aおよびAS側ピボット軸17bが揺動される。これにより、DR側,AS側ピボット軸17a,17bに固定されたDR側,AS側ワイパ部材12,13が、フロントガラス11上で揺動されて、フロントガラス11に付着した雨水等が綺麗に払拭される。
図2に示されるように、ワイパモータ(モータ装置)15は、モータ部20および減速機構部30を備えている。モータ部20は、鋼板等の導電材料をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。モータケース21の内壁には、4つの永久磁石22(図2では2つのみ示す)が固定されている。これらの永久磁石22の内側には、所定の隙間を介してアーマチュア40が回転自在に設けられ、アーマチュア40の回転中心にはアーマチュア軸(回転軸)23が固定されている。すなわち、モータケース21は、アーマチュア40およびアーマチュア軸23を回転自在に収容している。
アーマチュア軸23の基端側(図中右側)は、軸受部材(図示せず)を介してモータケース21の底部21aに支持されている。一方、アーマチュア軸23の先端側(図中左側)は、減速機構部30を形成するハウジング31の内部にまで延在されている。そして、アーマチュア軸23の先端側には、一対のウォーム24a,24bが一体に設けられている。つまり、一対のウォーム24a,24bは、アーマチュア軸23の回転により回転される。
アーマチュア軸23の長手方向に沿うウォーム24bとアーマチュア40との間には、略円筒形状に形成されたコンミテータ25が固定されている。コンミテータ25には、アーマチュア40に巻装されたコイル26の端部が電気的に接続されている。
また、コンミテータ25の外周部分には、3つのブラシ27(図2では2つのみ示す)が摺接される。これにより、3つのブラシ27を介してコンミテータ25およびコイル26に駆動電流を供給することで、アーマチュア40に電磁力が発生して、アーマチュア軸23が所定の回転数および回転方向で回転される。
なお、3つのブラシ27のうちの1つは共通(Common)ブラシであり、その他の2つはハイ(High)ブラシおよびロー(Low)ブラシである。これにより、ワイパスイッチの操作に応じて、ワイパモータ15の作動速度が高速および低速に切り替えられる。
減速機構部30は、ハウジング31およびハウジングカバー32を備えている。ハウジング31は、アルミ等の導電材料を鋳造成形することで略バスタブ形状に形成されている。そして、ハウジング31は、複数の締結ねじ18(図2では2つのみ示す)により、モータケース21の開口側(図中左側)に連結されている。
ハウジング31の内部には、ウォームホイール33が回転自在に収容されている。ウォームホイール33は、ポリアセタール(POM)等のプラスチック材料を射出成形することで、略円盤状に形成されている。そして、ウォームホイール33の回転中心には、鋼棒よりなる出力軸34の基端側が固定されている。
また、ウォームホイール33と一対のウォーム24a,24bとの間には、一対のカウンタギヤ35a,35bが設けられている。すなわち、一対のカウンタギヤ35a,35bは、一対のウォーム24a,24bおよびウォームホイール33に噛み合わされている。これにより、ウォームホイール33は、一対のカウンタギヤ35a,35bを介してアーマチュア軸23の回転により回転される。
一対のウォーム24a,24b,一対のカウンタギヤ35a,35bおよびウォームホイール33は、アーマチュア軸23の回転を減速して高トルク化された回転力を出力軸34から出力させるものであって、減速機構SDを構成している。なお、出力軸34の先端側は、ハウジング31の外部に配置され、出力軸34の先端側には、リンク機構16(図1参照)が連結されている。
また、ハウジングカバー32には、コネクタ接続部32aが一体に設けられている。コネクタ接続部32aには、車両側の外部コネクタ(図示せず)が接続され、これにより3つのブラシ27のそれぞれに駆動電流が供給される。ここで、コネクタ接続部32aと3つのブラシ27との間には、黄銅等よりなる複数の導電部材や、チョークコイルおよびキャパシター等の電子部品(いずれも図示せず)が設けられている。そして、これらの導電部材や電子部品は、いずれもハウジングカバー32の内側に固定されている。
図3に示されるように、モータ部20を形成するアーマチュア40は、薄肉の電磁鋼板(図示せず)を複数枚積層して形成されたアーマチュアコア41と、アーマチュアコア41に集中巻で所定の巻数で巻装されたコイル26と、アーマチュアコア41とコイル26との間に設けられ、両者の間を絶縁する一対のインシュレータ42と、を備えている。つまり、コイル26は、インシュレータ42を介してアーマチュアコア41のティース41b(図5参照)に巻装されている。
ここで、図3ないし図5では、アーマチュアコア41とコイル26との配置関係を判り易くするために、アーマチュアコア41には薄色の網掛けを施し、コイル26(コイルの塊)には濃色の網掛けを施している。なお、図3では、集中巻で巻装されたコイル26の塊を、判り易くするために角形で表現している。
図5に示されるように、アーマチュアコア41は、その径方向内側に環状のコア本体41aを備えている。そして、コア本体41aの径方向内側に、アーマチュア軸23(図3参照)の外周部分が圧入等により強固に固定される。これにより、アーマチュア軸23は、アーマチュアコア41の回転に伴って回転される。
コア本体41aの径方向外側には、合計6つのティース41bが一体に設けられている。より具体的には、それぞれのティース41bは、コア本体41aから径方向外側に放射状に突出されており、コア本体41aの周方向に等間隔(60度間隔)で配置されている。なお、コア本体41aおよび6つのティース41bは、薄肉の電磁鋼板をプレス加工等することで形成され、互いに分離不能に一体化されている。
ティース41bの基端側はコア本体41aに連結され、ティース41bの先端側にはアーマチュアコア41の周方向両側に突出された幅広部41cが一体に設けられている。そして、隣り合うティース41bの間には、スロット(溝)41dが設けられており、このスロット41dには、隣り合う幅広部41cの間の隙間SLからコイル26(図3参照)が入り込むようになっている。具体的には、コイル26は、自動巻線機等(図示せず)により、隙間SLからスロット41dに導入され、ティース41bに対してその基端側(コア本体41a側)から巻装される。
ここで、スロット41dおよび隙間SLは、コア本体41a(アーマチュアコア41)の軸方向に沿って傾斜された斜溝(スキュー)となっている。これにより、アーマチュアコア41の回転ムラが効果的に抑えられている。ただし、ワイパモータ15に必要とされる仕様によっては、スロット41dおよび隙間SLを斜溝とせずに、コア本体41aの軸方向に沿って真っ直ぐな直溝にしても良い。
なお、これらの斜溝および直溝の選択は、電磁鋼板を積層してアーマチュアコア41を形成する際に容易に選択することができる。すなわち、電磁鋼板を一枚一枚重ねる際に、それぞれを周方向に所定角度ずつずらしていくことで、スロット41dを斜溝にすることができる。これに対し、積層する電磁鋼板の全てを周方向にずらさずに重ねることで、スロット41dを直溝にすることができる。
図3に示されるように、コイル26は、ティース41b(図5参照)に巻装された状態で、スロット41dの内部に配置される一対のコイル辺26aと、スロット41dの外部でかつアーマチュアコア41の軸方向端部に配置される一対のコイル端26bとを備えている。そして、一対のコイル端26bのうちのコンミテータ25側のコイル端26bの一部(コイル26)が、コンミテータ25に電気的に接続されている。
コンミテータ25は、その外周部分に合計18個のセグメント(整流子片)25aが設けられている。そして、これらのセグメント25aは、筒状に形成されたモールド樹脂部25bの径方向外側に固定(一体化)されている。つまり、各セグメント25aには、各ブラシ27が摺接されるようになっている。また、モールド樹脂部25bの径方向内側には、アーマチュア軸23が圧入により固定されている。
コンミテータ25の軸方向に沿うアーマチュアコア41側(図中右側)には、それぞれのセグメント25aの端部を折り返して形成されたライザー25cが設けられている。そして、これらのライザー25cには、コンミテータ25側のコイル端26bから引き出されたコイル端26bの一部(コイル26)が、導通可能に引っ掛けられて、電気的に接続されている。
図5に示されるように、アーマチュアコア41の軸方向両側には、一対のインシュレータ42が装着されている。これらのインシュレータ42は、アーマチュアコア41(ティース41b)と、コイル26(図3参照)との間を絶縁するものであって、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されている。つまり、一対のインシュレータ42は、アーマチュアコア41とコイル26との間に設けられ、ティース41bに装着されている。
一対のインシュレータ42は、アーマチュアコア41をその軸方向から挟んで鏡像対称となるように、それぞれ略同じ形状に形成されている。具体的には、アーマチュア軸23が挿通される挿通筒42bの軸方向寸法のみが異なっており、アーマチュアコア41の軸方向に沿うコンミテータ25側のインシュレータ42の挿通筒42bの方が、他方のインシュレータ42の挿通筒42bよりも長くなっている。よって、以下、コンミテータ25側のインシュレータ42を代表して、その詳細構造について説明する。
インシュレータ42は、略円板状に形成された本体部42aを備えている。本体部42aの厚み方向一側でかつ本体部42aの中心部分には、アーマチュア軸23(図3参照)が挿通される挿通筒42bが一体に設けられている。この挿通筒42bは、本体部42aからコンミテータ25側に向けて突出されている。
一方、本体部42aの厚み方向他側でかつ本体部42aの外周寄りの部分には、アーマチュアコア41の軸方向からスロット41dに挿入されるスロット挿入部42cが一体に設けられている。スロット挿入部42cは、本体部42aからアーマチュアコア41側に向けて突出され、6つのスロット41dに対応して合計6つ設けられている。
また、スロット挿入部42cの本体部42aからの突出高さは、アーマチュアコア41の軸方向両側にそれぞれインシュレータ42を装着した状態で、両方のインシュレータ42のスロット挿入部42cの先端部分が、スロット41d内で互いにぶつからない高さ寸法となっている。
さらに、それぞれのスロット挿入部42cにおけるアーマチュアコア41の隙間SLに対応する部分には、切欠部42dが設けられている。これにより、コイル26のスロット挿入部42cの内部への導入が許容される。なお、スロット挿入部42cおよび切欠部42dは、スロット41dの傾斜(スキュー)に合わせてそれぞれ傾斜されている。
本体部42aの厚み方向一側、つまり本体部42aの挿通筒42b側には、段差部42eが設けられている。この段差部42eは、図4に示されるように、本体部42aの径方向に対して、本体部42aの挿通筒42bと外周部42fとの間に配置されている。
そして、段差部42eは、本体部42aの径方向内側に第1領域AR1を形成し、本体部42aの径方向外側に第2領域AR2を形成している。つまり、第1領域AR1はティース41bの基端側に対応して設けられ、第2領域AR2はティース41bの先端側に対応して設けられている。より具体的には、段差部42eは、第1領域AR1と第2領域AR2との間に設けられ、第1領域AR1を第2領域AR2に対して窪ませている。すなわち、図6に示されるように、第1領域AR1の方が第2領域AR2よりもティース41b(アーマチュアコア41)側に凹んでいる。
また、図6に示されるように、第1領域AR1および第2領域AR2は、それぞれティース41bの突出方向(図中左右方向)と平行な平坦面とされ、段差部42eは、第1領域AR1と第2領域AR2とを滑らかな曲線で繋いでいる。これにより、第1,第2領域AR1,AR2に巻装されるコイル26の表面に塗布されたエナメル等の絶縁膜(図示せず)を傷付けることが無い。
そして、第1領域AR1と第2領域AR2との高低差Gは、コイル26の線径(直径)Dよりも若干大きい寸法に設定されている(G>D)。これにより、一点鎖線で囲った部分Bに示されるように、段差部42eに対するコイル26の引っ掛かりを良好にして、1層目のコイル層CL1がティース41bの突出方向(ティース41bの先端側)にずれることが、効果的に抑えられる。
ここで、ティース41bの突出方向に沿う段差部42eの位置は、ティース41bの基端側からティース41bの突出高さの1/3よりもティース41bの先端側に配置されている。具体的には、ティース41bの突出方向に沿う長さ寸法をLとしたときに、段差部42eは、ティース41bの基端側から距離S(L/3<S<2×L/3)の位置に配置されている。
また、段差部42eは、コア本体41aの軸方向端部で、かつティース41bに対応する部分に設けられている。これにより、コイル26のコイル端26bの一部が、段差部42eによりずれないように支持される。したがって、図6に示されるように、2層目のコイル層CL2および3層目のコイル層CL3を巻装する迄の間に、1層目のコイル層CL1がティース41bの突出方向にずれることが効果的に抑えられる。
ここで、インシュレータ42は、図7(a)に示されるように射出成形される。具体的には、インシュレータ42は、本体部42a,挿通筒42b,段差部42eおよび外周部42fを成形する上金型UMと、スロット挿入部42cおよび切欠部42dを成形する下金型LMとを突き合わせて、これらの内部(キャビティ)に溶融樹脂(図示せず)を充填することで形成される。よって、図7(b)に示されるように、完成したインシュレータ42の本体部42aとスロット挿入部42cとの境界部分に、パーティングラインPLが形成される。
なお、本体部42aとスロット挿入部42cとの境界部分に、パーティングラインPLが形成されるようにすることで、上金型UMを固定金型として、下金型LMを上金型UMに対して捩るように下降駆動される可動金型とすることができる。ちなみに、スロット挿入部42cの長手方向(図中上下方向)に沿う途中にパーティングラインPLが形成されるようにすると、上下金型UM,LMの双方を互いに捩るように離間駆動させる必要があり、上下金型UM,LMを個別に駆動させる必要が生じて作業性の大幅な低下を招くことになる。
そして、インシュレータ42に巻装されるコイル26に対する負荷(攻撃性)を軽減するために、本実施の形態では、以下に示されるように工夫を施している。
第1に、本体部42aの第1,第2領域AR1,AR2側の一対の角部CVを円弧形状にし、これにより、コイル26が鋭角に屈曲されて負荷が掛かり過ぎるのを防止している。
第2に、本体部42aにおける一対の角部CVのスロット挿入部42c側に、直線部STをそれぞれ設けている。これにより、インシュレータ42の軸方向に対して傾斜されたスロット挿入部42cと、本体部42aとの間において、コイル26を大きく屈曲させずに済み、コイル26に対する負荷を軽減するようにしている。
第3に、パーティングラインPLが形成される部分、すなわち本体部42aとスロット挿入部42cとの間に、微小な段差d(図7(a)参照)が形成されるように、上金型UMと下金型LMとを、インシュレータ42の軸方向と交差する方向(図中左右方向)に所定量にずらしている。ただし、図7(b)に示されるように、コイル26の巻き方向が時計回り方向(太破線矢印方向)の場合に、本体部42aに対する傾斜角度がα°のスロット挿入部42c側にスロット挿入部側エッジ42c1が形成されるようにし、かつ本体部42aに対する傾斜角度がβ°(β°<α°)のスロット挿入部42c側に本体部側エッジ42a1が形成されるようにする。これにより、コイル26が比較的鋭利なパーティングラインPLに押し付けられることが防止され、これによってもコイル26に対する負荷を軽減するようにしている。
このように、インシュレータ42の形状を工夫することで、コイル26に対する負荷(攻撃性)が軽減される。したがって、インシュレータ42に対してコイル26をより強く巻装することが可能となり、1層目のコイル層CL1から3層目のコイル層CL3(図6参照)が所定の位置からずれることがより効果的に抑えられる。
本実施の形態では、アーマチュアコア41に設けられるコイル26は、図8の展開図に示されるような手順で巻装される。ワイパモータ15を形成するモータ部20(図1参照)は、図8に示されるように、U相,V相,W相(3相)を有し、スロット41d(ティース41b)の数が6つで、その3倍の数の18個のセグメント25aを備え、さらには合計4つの永久磁石22を有している。つまり、本実施の形態では、ティース41bの数とセグメント25aの数との比が、1:3となっている。
言い換えれば、モータ部20は、4P6S18Seg型(4極6スロット18セグメント型)の電動モータであり、小型軽量化かつ高効率化が図られた車載用に適した電動モータとなっている。このように、モータ部20を「4P6S18Seg型」の電動モータとすることで、図6に示されるように、ティース41bの突出方向(図中左右方向)に、コイル26を複数回巻いて形成されたコイル層(CL1,CL2,CL3)が3層並んで設けられる。
そして、図6および図8に示されるように、ティース41bおよびコア本体41aが互いに分離不能に一体化されたアーマチュアコア41に対しては、ティース41bの基端側(アーマチュアコア41の径方向内側)から、コイル26が順番に巻装される。すなわち、ティース41bの基端側から、1層目のコイル層CL1,2層目のコイル層CL2,3層目のコイル層CL3が、その順番で巻装される。
より具体的にコイル26の巻装手順について述べると、例えば、図8の太い実線矢印に示されるように、まず、10番セグメント25aと11番セグメント25aとを跨ぐようにして、U相の4番ティース41bにコイル26を順方向(時計回り方向)で複数回巻いて1層目のコイル層CL1(U相のコイル層)を巻装する。
次いで、図8の太い破線矢印に示されるように、11番セグメント25aと12番セグメント25aとを跨ぐようにして、W相の3番ティース41bにコイル26を逆方向(反時計回り方向)で複数回巻いて2層目のコイル層CL2(−W相のコイル層)を巻装する。
これに引き続き、図8の太い一点鎖線矢印に示されるように、12番セグメント25aと13番セグメント25aとを跨ぐようにして、W相の3番ティース41bにコイル26を逆方向(反時計回り方向)で複数回巻いて3層目のコイル層CL3(−W相のコイル層)を巻装する。その後、これらの一連の動作をティース41b毎に繰り返す。
なお、太い破線矢印で示した2層目のコイル層CL2および太い一点鎖線矢印で示した3層目のコイル層CL3に対応して付した四角形の中の「−」の符号は、これらのコイル層CL2,CL3に流れる駆動電流の向きが、コイル26の巻回方向と同じ逆向き(反時計回り方向)であることを示している。また、図中左側に記載されたアルファベットa,b,c,d,eは、図中右側に記載されたアルファベットa,b,c,d,eに続くことを示している。
このように、図8の展開図に示されたコイル26の巻装手順では、1層目のコイル層CL1と、2層目のコイル層CL2および3層目のコイル層CL3と、を互いに連続して巻装することができない。つまり、1つのティース41bに着目すると、1層目のコイル層CL1を巻装した後から、2層目のコイル層CL2を巻装する迄の間に、所定のインターバル(間隔)が生じることになる。このインターバルの発生は、せっかく所定の力で巻装した1層目のコイル層CL1に、緩みを発生させる原因となる。
そこで、本実施の形態では、1層目のコイル層CL1の緩みに起因したティース41bの突出方向に対するコイル26のずれ(移動)を、段差部42eに引っ掛けることで効果的に抑えている。したがって、コイル26の巻き乱れの発生が効果的に抑えられる。
このとき、1層目のコイル層CL1の緩みが発生したとしても、所定のインターバルをあけた後の2層目のコイル層CL2の巻装タイミングで、2層目のコイル層CL2の一部が1層目のコイル層CL1の上に配置される(図6参照)。そのため、緩んでしまった1層目のコイル層CL1が巻き締めされて、1層目のコイル層CL1の緩みが除去される。このように、本実施の形態では、コイル26を巻くタイミングにインターバルがあるにも関わらす、緩んでしまった1層目のコイル層CL1を巻き締めすることができ、ひいてはコイル26の占積率を容易に向上可能となっている。
また、ティース41bに対するそれぞれのコイル層CL1,CL2,CL3(3層)の巻き乱れの発生が抑えられて、これらのコイル層CL1,CL2,CL3は、図6に示されるように、ティース41bの突出方向に整然と並べられる。したがって、それぞれのコイル層CL1,CL2,CL3を同じ巻数同じ長さのコイル26の塊で形成でき、言い換えれば図6に示されるようにコイル26の体積をそれぞれのコイル層CL1,CL2,CL3で略同一にすることができ、電気的にバランスの良いアーマチュア40となる。
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、インシュレータ42に、ティース41bの基端側に対応した第1領域AR1と、ティース41bの先端側に対応した第2領域AR2と、が設けられ、また、第1領域AR1と第2領域AR2との間に、第1領域AR1を第2領域AR2に対して窪ませる段差部42eが設けられている。
これにより、段差部42eに1層目のコイル層CL1を形成するコイル26が引っ掛けられて、ティース41bの突出方向に沿うコイル26のずれが抑えられる。よって、3つのコイル層CL1,CL2,CL3のコイル26の巻数および長さのばらつきを抑えつつ、ティース41bの突出方向に3つのコイル層CL1,CL2,CL3を整然と並べてコイル26の占積率を向上させることができる。
また、段差部42eが、ティース41bの基端側からティース41bの突出高さの1/3よりもティース41bの先端側に配置されているため、車載用に適した3層のコイル層を有する3相3倍セグメント構造のワイパモータ15(モータ部20)に対して、効果的に占積率を向上させることができる。よって、車載用のモータ装置として使用されるワイパモータ15のさらなる小型軽量化を実現できる。
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、第1領域AR1および第2領域AR2が、ティース41bの突出方向と平行な平坦面となっているので、インシュレータ42の形状を複雑化させずに済み、インシュレータ42の製造工程を簡素化することができる。
また、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、段差部42eは、コア本体41aの軸方向端部に対応する部分に設けられ、コイル26のコイル端26bを支持しているので、コイル26の巻装状態を外部から容易に目視することができる。よって、コイル26の巻装作業をより精度良く行うことが可能となる。
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、隣り合うティース41bの間のスロット41dが、コア本体41aの軸方向に沿って傾斜された斜溝となっているので、アーマチュア軸23の回転ムラを効果的に抑えることができる。よって、より静粛性に優れたワイパモータ15を実現でき、例えば、騒音の少ない電気自動車等に用いて好適となる。
次に、本発明の実施の形態2について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は実施の形態2を示す図4に対応した図を、図10は実施の形態2を示す図5に対応した図を、図11は実施の形態2のコイル層を示す部分拡大断面図をそれぞれ示している。
図9ないし図11に示されるように、実施の形態2においては、実施の形態1に比して、アーマチュアコア41の軸方向両側に装着される一対のインシュレータ50の形状のみが異なっている。そして、実施の形態1では段差部42eにコイル端26bを支持させていたが(図6参照)、実施の形態2では段差部55にコイル辺26aを支持させている。
なお、一対のインシュレータ50は、実施の形態1のインシュレータ42(図5参照)と同様に、アーマチュアコア41をその軸方向から挟んで鏡像対称となるように、それぞれ略同じ形状に形成されている。そして、アーマチュアコア41の軸方向に沿うコンミテータ25側のインシュレータ50(図10中右側)の挿通筒52の方が、他方のインシュレータ50の挿通筒52よりも長くなっている。
インシュレータ50は、略正六角形形状に形成された本体部51を備えている。このように、実施の形態2では本体部51を略正六角形形状しており、図9に示されるようにアーマチュアコア41を軸方向から見たときに、ティース41bの先端側の幅広部41cの一部が露出される。これにより、インシュレータ50の不要な部分を削ぎ落として小型軽量化を図りつつ、樹脂の硬化時におけるインシュレータ50の歪みの発生を最小限に抑えている。
また、本体部51の厚み方向一側でかつ本体部51の中心部分には、アーマチュア軸23(図3参照)が挿通される挿通筒52が一体に設けられている。この挿通筒52は、本体部51からコンミテータ25側に向けて突出されている。
一方、本体部51の厚み方向他側でかつ本体部51の外周寄りの部分には、アーマチュアコア41の軸方向からスロット41dに挿入されるスロット挿入部53が一体に設けられている。スロット挿入部53は、本体部51からアーマチュアコア41側に向けて突出され、6つのスロット41dに対応して合計6つ設けられている。
また、スロット挿入部53の本体部51からの突出高さは、アーマチュアコア41の軸方向両側にそれぞれインシュレータ50を装着した状態で、両方のインシュレータ50のスロット挿入部53の先端部分が、スロット41d内で互いにぶつからない高さ寸法となっている。
さらに、それぞれのスロット挿入部53におけるアーマチュアコア41の隙間SLに対応する部分には、切欠部54が設けられている。これにより、コイル26のスロット挿入部53の内部への導入が許容される。なお、スロット挿入部53および切欠部54は、スロット41dの傾斜(スキュー)に合わせてそれぞれ傾斜されている。
スロット挿入部53の内側には、当該スロット挿入部53の長手方向に沿うようにして一対の段差部55が設けられている。これらの段差部55は、スロット挿入部53の内側で互いに対向され、かつティース41bの突出方向に沿う略中間部分に対応した位置に配置されている。すなわち、段差部55は、図11に示されるように、隣り合うティース41bの間のスロット41dに対応する部分に設けられている。
そして、段差部55は、アーマチュアコア41の径方向内側に対応する部分に第1領域AR1を形成し、アーマチュアコア41の径方向外側に対応する部分に第2領域AR2を形成している。つまり、第1領域AR1はティース41bの基端側に対応して設けられ、第2領域AR2はティース41bの先端側に対応して設けられている。より具体的には、段差部55は、第1領域AR1と第2領域AR2との間に設けられ、第1領域AR1を第2領域AR2に対して窪ませている。すなわち、図11に示されるように、第1領域AR1の方が第2領域AR2よりもティース41b(アーマチュアコア41)側に凹んでいる。
また、図11に示されるように、第1領域AR1は、ティース41bの突出方向と平行な平坦面とされ、第2領域AR2は、ティース41bの先端側に行くに連れて、ティース41bに近付くように傾斜された傾斜面となっている。そして、段差部55は、第1領域AR1と第2領域AR2とを滑らかな曲線で繋いでいる。これにより、第1,第2領域AR1,AR2に巻装されるコイル26の表面に塗布されたエナメル等の絶縁膜(図示せず)を傷付けることが無い。
そして、第1領域AR1と第2領域AR2との高低差Gは、コイル26の線径(直径)Dよりも若干大きい寸法に設定されている(G>D)。これにより、一点鎖線で囲った部分Cに示されるように、段差部55に対するコイル26の引っ掛かりを良好にして、1層目のコイル層CL1がティース41bの突出方向(ティース41bの先端側)にずれることが、効果的に抑えられる。
ここで、ティース41bの突出方向に沿う段差部55の位置は、ティース41bの基端側からティース41bの突出高さの1/3よりもティース41bの先端側に配置されている。具体的には、ティース41bの突出方向に沿う長さ寸法をLとしたときに、段差部55は、ティース41bの基端側から距離S(L/3<S<2×L/3)の位置に配置されている。
これにより、コイル26のコイル辺26aの一部が、段差部55によりずれないように支持される。したがって、図11に示されるように、2層目のコイル層CL2および3層目のコイル層CL3を巻装する迄の間に、1層目のコイル層CL1がティース41bの突出方向にずれることが効果的に抑えられる。
ここで、実施の形態2のインシュレータ50においても、実施の形態1のインシュレータ42と同様に、図7に示されるような上下金型(図示せず)によって射出成形される。したがって、本体部51とスロット挿入部53との間に、パーティングライン(図示せず)が形成され、実施の形態1のインシュレータ42と同様の理屈でコイル26に対する負荷(攻撃性)が軽減される。
また、実施の形態2におけるコイル26の巻装構造は、実施の形態1におけるコイル26の巻装構造と全く同じである。すなわち、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に「4P6S18Seg型」の電動モータとなっている。したがって、コイル26の展開図は、図8に示されるものと全く同じである。
以上のように形成された実施の形態2においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、段差部55はコイル辺26aを支持するので、コイル端26bを支持する実施の形態1に比して、コイル26の引っ掛かり部分を増加させることができる。したがって、3つのコイル層CL1,CL2,CL3を、より高精度でティース41bの突出方向に沿うよう整然と並べることが可能となり、さらにバランスの良いアーマチュア40を実現できる。
また、第2領域AR2を、ティース41bの先端側に行くに連れて、ティース41bに近付くように傾斜された傾斜面としたので、実施の形態1に比して、コイル26の占積率をより向上させることができる。
次に、本発明の実施の形態3について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図12は実施の形態3のコイルの巻装状態を示す展開図を示している。
図12に示されるように、実施の形態3においては、実施の形態1に比して、コイル26の巻装構造のみが異なっている。具体的には、図12の展開図に示されるような手順で巻装される。
図12に示されるように、実施の形態3の電動モータでは、U相,V相,W相(3相)を有し、スロット41d(ティース41b)の数が6つで、その2倍の数の12個のセグメント60を備え、さらには合計4つの永久磁石22を有している。つまり、実施の形態3では、ティース41bの数とセグメント60の数との比が、1:2となっている。
言い換えれば、実施の形態3の電動モータは、4P6S12Seg型(4極6スロット12セグメント型)の電動モータであって、実施の形態1と同様に小型軽量化かつ高効率化が図られた車載用に適した電動モータとなっている。このように、「4P6S12Seg型」の電動モータとすることで、図12に示されるように、ティース41bに、コイル26を複数回巻いて形成されたコイル層(CL1,CL2)が2層並んで設けられる。
より具体的にコイル26の巻装手順について述べると、例えば、図12の太い実線矢印に示されるように、まず、7番セグメント60と8番セグメント60とを跨ぐようにして、U相の4番ティース41bにコイル26を順方向(時計回り方向)で複数回巻いて1層目のコイル層CL1(U相のコイル層)を巻装する。
次いで、図12の太い一点鎖線矢印に示されるように、8番セグメント60と9番セグメント60とを跨ぐようにして、W相の3番ティース41bにコイル26を逆方向(反時計回り方向)で複数回巻いて2層目のコイル層CL2(−W相のコイル層)を巻装する。その後、これらの一連の動作をティース41b毎に繰り返す。
このように、図12の展開図に示されたコイル26の巻装手順においても、1層目のコイル層CL1と、2層目のコイル層CL2とを互いに連続して巻装することができない。つまり、1つのティース41bに着目すると、1層目のコイル層CL1を巻装した後から、2層目のコイル層CL2を巻装する迄の間に、所定のインターバル(間隔)が生じることになる。このインターバルの発生は、せっかく所定の力で巻装した1層目のコイル層CL1に、緩みを発生させる原因となる。
そこで、本実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、1層目のコイル層CL1の緩みに起因したティース41bの突出方向に対するコイル26のずれ(移動)を、段差部42e(図6参照)に引っ掛けることで効果的に抑えている。したがって、コイル26の巻き乱れの発生が効果的に抑えられる。
ここで、実施の形態3では、ティース41bの突出方向に並べられるコイル層の数が2層(CL1,CL2)となっている。したがって、ティース41bの突出方向に沿う段差部42eの位置を、実施の形態1に比して、ティース41bのより先端側に配置するようにする。ただし、段差部42eの位置関係は、図6を参照しつつ、「L/3<S<2×L/3」の位置関係となるようにする。
以上のように形成された実施の形態3においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。なお、実施の形態3において、実施の形態2のようなコイル辺26aを支持する段差部55を採用することもできる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、アーマチュアコア41の軸方向両側に装着される双方のインシュレータ42(50)に、段差部42e(55)を設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、段差部42e(55)は、少なくともいずれか一方のインシュレータ42(50)に設けることもできる。また、1つのインシュレータに対して、コイル端26bを支持する段差部42eおよびコイル辺26aを支持する段差部55の双方を設けることもできる。
さらに、上記各実施の形態では、ワイパモータ15を、払拭パターンがタンデム型のワイパ装置14の駆動源に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、対向払拭型等、他の払拭パターンのワイパ装置の駆動源や、鉄道車両や航空機等のワイパ装置の駆動源にも用いることができる。
また、上記各実施の形態では、モータ装置として、ワイパモータ15であるものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、車両に搭載されるパワーウィンドウ装置やスライドドア開閉装置等の駆動源に用いられるモータ装置にも適用することができる。
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。