JP2019104872A - ポリカーボネート系樹脂組成物およびそれから形成される光学フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
で表されるカーボネート単位(a−2)を含むポリカーボネート樹脂(A)およびアクリル系樹脂(B)を含有し、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との重量比が60:40〜99:1であって、前記ポリカーボネート樹脂(A)のカーボネート単位(a−1)とカーボネート単位(a−2)とのモル比(a−1)/(a−2)が20/80〜50/50であるポリカーボネート系樹脂組成物。
で表される単位である前記1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
4.アクリル系樹脂がメチルメタクリレート由来の繰返し単位およびスチレン由来の繰返し単位を含む前記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
5.アクリル系樹脂がメチルメタクリレート由来の繰返し単位、スチレン由来の繰返し単位及び無水マレイン酸由来の繰返し単位を含む前記4記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
6.ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が90℃〜150℃である前記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
7.ポリカーボネート系樹脂組成物の光弾性定数が25×10−12Pa−1以下である前記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
8.前記1〜7のいずれか記載のポリカーボネート系樹脂組成物から形成される光学フィルム。
9.光学フィルムのヘイズが5%以下である前記8記載の光学フィルム。
10.R(550)が120〜160nmであって、
波長450nm、550nm、および650nmにおけるフィルム面内の位相差R(450)、R(550)、およびR(650)が、下記式(1)および(2)を満たし,且つ
0.60<R(450)/R(550)<0.95 (1)
1.01<R(650)/R(550)<1.40 (2)
下記式(3)で表される複屈折率(Δn)が1.5×10−3以上であること
Δn=R(550)/(d×103) (3)
(但し、dはフィルムの厚み(μm)である。)
を満たす前記8記載の光学フィルム。
11.位相差フィルムとして用いられる前記10記載の光学フィルム。
12.光学フィルムの厚み(d)が20〜80μmである前記10に記載の光学フィルム。
13.前記11記載の光学フィルムを位相差フィルムとして用いた液晶表示装置または有機EL表示装置。
そのため、本発明のポリカーボネート系樹脂組成物を用いた光学フィルムは、例えば延伸フィルムとすることで、所望の波長分散性を有し、透明性に優れ、光弾性定数が低く、位相差発現性を有し、一枚で広帯域化可能であり、液晶表示装置用、有機ELディスプレイ用等の光学フィルムとして極めて有用であり、そのため、その奏する工業的効果は格別である。
〈ポリカーボネート樹脂(A)〉
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、主たる繰り返し単位が、フルオレン環を側鎖に有するカーボネート単位(a−1)と前記式(a−2)で表されるカーボネート単位(a−2)を含むポリカーボネート樹脂から形成される。ここで、「主たる」とは、全カーボネート単位を基準として、カーボネート単位(a−1)と(a−2)との合計が、好ましくは80モル%以上、より好ましくは、85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは、95モル%以上であることを示す。
カーボネート単位(a−1)は、フルオレン環を側鎖に有するカーボネート単位(a−1)である。
カーボネート単位(a−1)の好ましい構造として、加工性の観点から、下記の(a−1−1)または、(a−1−2)が挙げられる。そして、より好ましい構造として、下記(a−1−1)が挙げられ、さらに(a−1−1)の好ましい構造として、下記(a−1−1−a)または(a−1−1−b)が挙げられ、特に好ましい構造として、下記(a−1−1−a1)または(a−1−1−b1)が挙げられる。
mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して、0以上の整数であり、好ましくは0〜20の整数、より好ましくは0〜12の整数、さらに好ましくは0〜8の整数、特に好ましくは0〜4の整数、最も好ましくは0と1である。
pおよびqが0の場合、単位(a−1−1)は下記式で表される(以下、単位(a−1−1−a)と呼ぶことがある)。
単位(a−1−1−a)として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン等から誘導される単位が、好ましく挙げられる。これらの単位(a−1−1−a)を誘導する化合物は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることもできる。
pおよびqが1以上の整数の場合、単位(a−1)は下記式で表される(以下、単位(a−1−1−b)と呼ぶことがある)。
特に、下記式(a−1−1−b1)
されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、R8〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。rおよびsは夫々独立して0〜4の整数を示し、tは1〜5の整数値を示す。]
本発明におけるカーボネート単位(a−2)は前記式(a−2)に示したように、スピロ環構造を有するジオールから誘導されるものである。スピロ環構造を有するジオール化合物として、3,9−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジエチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジプロピルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの脂環式ジオール化合物があげられる。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、主たる繰り返し単位がカーボネート単位(a−1)と(a−2)とを含み、それらのモル比(a−1/a−2)は20/80〜50/50であり、モル比(a−1/a−2)が30/70〜40/60が好ましい。上記範囲であると、特にアクリル系樹脂との相溶性、耐熱性、位相差の発現性や波長分散性等のバランスに優れる。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
ポリカーボネート樹脂(A)の比粘度(ηSP)は、0.2〜1.5の範囲が好ましい。比粘度が0.2〜1.5の範囲ではフィルム等の成形品の強度及び成形加工性が良好となる。より好ましくは0.25〜1.2であり、さらに好ましくは0.3〜1.0であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、具体的な比粘度の測定としては、例えば次の要領で行うことができる。まず、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
本発明におけるアクリル系樹脂(B)としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂(B)が好ましく使用される。アクリル樹脂に使用される単量体として以下の化合物が、好ましく挙げられる。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート等が例示される。
上述のアクリル系共重合体(B2)は市販品を用いることも可能であり、例えばデンカ(株)製のSMM樹脂(商品名:レジスファイ)などが例示できる。
ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
本発明の樹脂組成物はポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂とを溶融状態でブレンドすることが好ましい。溶融状態でブレンドする方法として、押出機が一般的に用いられ、溶融樹脂温度200〜320℃、好ましくは220〜300℃、より好ましくは、230〜290℃で混練し、ペレタイズする。これにより、両樹脂が均一にブレンドされた樹脂組成物のペレットが得られる。押出機の構成、スクリューの構成等は特に限定されない。押出機中の溶融樹脂温度が320℃を超えると樹脂が着色したり、熱分解することがある。一方、樹脂温度が200℃を下回ると、樹脂粘度が高過ぎて押出機に過負荷がかかることがある。
上記ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との重量比は60:40〜99:1の範囲である。好ましくは70:30〜98:2(重量比)の範囲であり、より好ましくは80:20〜95:5(重量比)の範囲である。上記範囲とすることにより、所望の波長分散性を有し、透明性、低光弾性係数、位相差発現性に優れたポリカーボネート系樹脂組成物を得ることができる。アクリル系樹脂成分が下限より大きくなると透明性や耐熱性、位相差発現性が問題となる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は好ましくは単一であり、そのガラス転移温度(Tg)が好ましくは90〜150℃であり、より好ましくは100〜140℃であり、さらに好ましくは120〜140℃である。Tgが上記範囲内であると、耐熱性及び成形性が良好であり好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、衝撃改質剤等の添加剤を配合することができる。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、押出・成形時の分子量低下や色相の悪化を抑制するために、とくに熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤としてはリン系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、イオウ系熱安定剤が挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。特に、単位(a−1)のエーテルジオール残基が熱と酸素により劣化し、着色しやすいため、熱安定剤としてはリン系熱安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としてはホスファイト化合物を配合することが好ましい。ホスファイト化合物としては、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイト化合物、その他の構造を有するホスファイト化合物が挙げられる。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられ、なかでもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、光安定剤を含むことができる。光安定剤を含むと、耐候性の面で良好であり、成形品にクラックが入り難くなるという利点がある。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物には、加水分解性を改善するため、本願発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ化合物を配合することが出来る。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物は、重合体や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネートに使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物には、難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、および塩素化ポリエチレンなどのハロゲン系難燃剤、モノホスフェート化合物およびホスフェートオリゴマー化合物などのリン酸エステル系難燃剤、ホスフィネート化合物、ホスホネート化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物などのリン酸エステル系難燃剤以外の有機リン系難燃剤、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤などの有機金属塩系難燃剤、並びにシリコーン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、トリアジン系難燃剤等が挙げられる。また別途、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)や滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)等を配合し、難燃剤と併用してもよい。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、溶融製膜法、キャスティング法など任意の方法により成形、加工され、光学レンズ、光ディスク、光学フィルム、プラセル基板、光カード、液晶パネル、ヘッドランプレンズ、導光板、拡散板、保護フィルム、OPCバインダー、前面板、筐体、トレー、水槽、照明カバー、看板、樹脂窓等の成形品として使用することができる。特に本発明の樹脂組成物から形成されるフィルムは、液晶表示装置、有機ELディスプレイ等の位相差フィルムや保護フィルムとして使用することができる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物はフィルム用途として好適に使用される。かかるフィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押し出し法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。本発明のフィルムの製造方法としては、溶融押し出し法が生産性の点から好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂組成物を用いてなる未延伸フィルムを延伸することで、波長400〜800nmの可視光領域において、フィルム面内の位相差が短波長になるほど小さくなる逆波長分散性を示す光学フィルムを得ることができる。かかる延伸された位相差フィルムは、下記式(1)および(2)の条件を満たすことが好ましい。
1.01<R(650)/R(550)<1.40(2)
より好ましくは、下記式(1−1)および(2−1)の条件を満たす。
0.65<R(450)/R(550)<0.92 (1−1)
1.02<R(650)/R(550)<1.35 (2−1)
さらに好ましくは、下記式(1−2)および(2−2)の条件を満たす。
0.70<R(450)/R(550)<0.90 (1−2)
1.03<R(650)/R(550)<1.30 (2−2)
特に好ましくは、下記式(1−3)及び(2−3)の条件を満たす。
0.70<R(450)/R(550)<0.89 (1−3)
1.03<R(650)/R(550)<1.20 (2−3)
最も好ましくは、下記式(1−4)及び(2−4)の条件を満たす。
0.70<R(450)/R(550)<0.88 (1−4)
1.03<R(650)/R(550)<1.10 (2−4)
さらに最も好ましくは、下記式(1−5)及び(2−5)の条件を満たす。
0.70<R(450)/R(550)<0.87 (1−5)
1.03<R(650)/R(550)<1.10 (2−5)
ここで面内の位相差値Rとは下記式で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光のX方向とそれと垂直のY方向との位相の遅れを現す特性である。
R=(nx−ny)×d
また、光学フィルムの波長550nmにおけるフィルム面内の位相差値R(550)は、R(550)≧50nmであることが好ましい。光学フィルムは積層することなく1枚で広帯域のλ/4板またはλ/2板として使用できる。かかる用途ではさらに、λ/4板の場合は120nm≦R(550)≦160nmであることが好ましい。
光学フィルムの位相差と波長分散性は、王子計測機器(株)製 KOBRA―WFDを使用し測定される。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、光学フィルム用途として好適に使用され、厚みを薄くできる観点から、その複屈折△n=R(550)/(d×103)(dは、フィルムの厚み(μm)である)が1.5×10−3以上が好ましい。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、ディスプレイ用途や加飾用途のフィルムとして好適に使用され、その光弾性係数の絶対値が25×10−12Pa−1以下が好ましく、20×10−12Pa−1以下がより好ましく、15×10−12Pa−1以下がさらに好ましい。光弾性係数の絶対値が上限より大きいと、応力による複屈折が大きく、位相差フィルムとして使用する場合に光抜けが起こり易くなる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物から得られる位相差フィルムの厚みは20〜80μmが好ましく、30〜60μmがより好ましい。厚みが上限以上になると、ディスプレイ用途において薄膜化の要望が強い偏光板の厚みが分厚くなってしまう問題点や、熱を加えた時の歪みつまり位相差変化が起きることで、色ムラとして光抜けが起こり易くなる。また厚みが下限未満になると、必要な位相差を満たすことができない。
本発明における光学フィルムのヘイズ値は好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。ヘイズが上記範囲内であると、視認性が優れ好ましい。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物から形成されるフィルムには、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。ハードコートは特に好ましくかつ必要とされる表面処理である。
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
実施例で得られた延伸後のフィルムの中央部分の厚みを、アンリツ社製の電子マイクロ膜厚計で
測定した。
延伸後のフィルムから長さ50mm、幅40mmの試験片を切り出し、王子計測(株)製KOBRA−WFDを使用して測定した。同サンプルで3回測定したときの平均値を算出した。
延伸後のフィルムから長さ50mm、幅10mmの試験片を切り出し、日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し光弾性定数を測定した。同サンプルで3回測定したときの平均値を算出した。
日本電色工業(株)製分光ヘイズメータSH−7000を用いて、JIS K7136に準拠したヘイズを測定した。
延伸後のフィルムから長さ50mm、幅40mmの試験片を切り出し、王子計測(株)製KOBRA−WFDを使用して位相差R(550)を測定し、複屈折△n=R(550)/(d×103)を算出した。同サンプルで3回測定したときの平均値を算出した。
[ポリカーボネート樹脂]
PC1:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)に由来する構造単位/3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン(以下SPGと略す)に由来する構造単位=35/65(モル%)
PC2:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)に由来する構造単位/3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン(以下SPGと略す)に由来する構造単位=30/70(モル%)
PC3:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)に由来する構造単位/3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン(以下SPGと略す)に由来する構造単位=40/60(モル%)
PC4:イソソルビド(以下ISSと略す)に由来する構造単位/SPGに由来する構造単位/1,9−ノナンジオール(以下NDと略す)に由来する構造単位=75/20/5(モル%)
PMMA1;PMMA(三菱レイヨン(株)製Acrypet VH−001):230℃、3.8kg荷重で測定したMFR値は、2.0g/10minであった。
PMMA2;MS樹脂(デンカ(株)製TX POLYMER TX−800LF):230℃、3.8kg荷重で測定したMFR値は、8.0g/10minであった。
PMMA3;SMM樹脂(デンカ(株)製レジスファイR200):230℃、3.8kg荷重で測定したMFR値は、1.8g/10minであった。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)80.26部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)51.41部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)89.29部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.8×10−2部と水酸化ナトリウム1.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行った。
反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。NMRより組成比を測定した。(PC1)
ポリカーボネート樹脂PC1とアクリル系樹脂PMMA1:三菱レイヨン製AcrypetVH−001(メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合アクリル樹脂)を使用し、各々の樹脂を80℃で12時間以上乾燥した後、重量比が90:10となるように混合した後、ベント式二軸押出機[(株)テクノベル製KZW15−25MG]により、シリンダおよびダイス共に260℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂のブレンドペレットを得た。
次に、得られたペレットを90℃で12時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した。(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたペレットを260℃でフィルム成形することで厚さ90μmの透明な未延伸フィルムを得た。得られたフィルムの中央部分付近から50mm×10mmサイズのサンプルを切り出し、そのサンプルを用いて光弾性係数測定を行った。また、同様にして切り出した長さ140mm×幅60mmサイズのサンプルを139℃(Tg+10℃)にて長さ方向に2.0倍で一軸延伸し、厚み65μmの延伸フィルムを得た。この延伸フィルムの位相差、波長分散性、ヘイズを測定した。その結果を表1に記載した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA1=80/20として押出した。延伸温度を127℃(Tg+10℃)に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
実施例1のポリカーボネート樹脂の製造において、SPG 80.26部を85.12部に変更し、BCF 51.41部を45.36部に変更した以外は、実施例1と同様な方法でポリカーボネート共重合樹脂(PC2)を製造した。
実施例1のポリカーボネート樹脂の製造において、SPG 80.26部を72.97部に変更し、BCF 51.41部を60.49部に変更した以外は、実施例1と同様な方法でポリカーボネート共重合樹脂(PC3)を製造した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA2=90/10として押出した。未延伸フィルムの厚みを110μmに調整し、延伸温度を144℃(Tg+10℃)に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA2=85/15として押出した他は、実施例5と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA2=80/20として押出した。未延伸フィルムの厚みを120μmに調整し延伸倍率を2.5倍に変更した以外は、実施例5と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
アクリル系樹脂PMMA1からPMMA3に変更し、ブレンド重量比をPC1:PMMA3=95/5として押出した。未延伸フィルムの厚みを80μmに調整し、延伸温度を146℃(Tg+10℃)、延伸倍率を2.5倍に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA3=90/10として押出した。延伸温度を145℃(Tg+10℃)に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
PMMAをブレンドせず、未延伸フィルムの厚みを100μmに調整し、延伸温度を147℃(Tg+10℃)、延伸倍率を2.5倍に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
ブレンド重量比をPC1:PMMA1=50/50とし、未延伸フィルムの厚みを160μmに調整し、延伸温度を126℃(Tg+10℃)、延伸倍率を2.5倍に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。位相差発現性が悪く、位相差値が低く分厚いフィルムとなった。
ブレンド重量比をPC1:PMMA3=50/50とし、未延伸フィルムの厚みを110μmに調整し、延伸温度を140℃(Tg+10℃)、延伸倍率を2.5倍に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。押出し後は白化したペレットが得られた。フィルム押出し後も白化しており、透明性を維持できていなかった。
ISS376部、SPG209部、ND27部、DPC750部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10−2部とステアリン酸バリウム0.6×10−4部を窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて220℃へ昇温および減圧度を20.0kPaに調整した。その後、さらに30分かけて240℃へ昇温および減圧度を10kPaに調整した。10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。反応終了後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た(PC4)。
Claims (13)
- (A)主たる繰り返し単位がフルオレン環を側鎖に有するカーボネート単位(a−1)と下記式(a−2)
で表されるカーボネート単位(a−2)を含むポリカーボネート樹脂(A)およびアクリル系樹脂(B)を含有し、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との重量比が60:40〜99:1であって、前記ポリカーボネート樹脂(A)のカーボネート単位(a−1)とカーボネート単位(a−2)とのモル比(a−1)/(a−2)が20/80〜50/50であるポリカーボネート系樹脂組成物。 - ポリカーボネート樹脂(A)のカーボネート単位(a−2)が3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンから誘導される単位である請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- アクリル系樹脂がメチルメタクリレート由来の繰返し単位およびスチレン由来の繰返し単位を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- アクリル系樹脂がメチルメタクリレート由来の繰返し単位、スチレン由来の繰返し単位及び無水マレイン酸由来の繰返し単位を含む請求項4記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- ポリカーボネート系樹脂組成物のガラス転移温度が90℃〜150℃である請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- ポリカーボネート系樹脂組成物の光弾性定数が25×10−12Pa−1以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか記載のポリカーボネート系樹脂組成物から形成される光学フィルム。
- 光学フィルムのヘイズが5%以下である請求項8記載の光学フィルム。
- R(550)が120〜160nmであって、
波長450nm、550nm、および650nmにおけるフィルム面内の位相差R(450)、R(550)、およびR(650)が、下記式(1)および(2)を満たし、且つ
0.60<R(450)/R(550)<0.95 (1)
1.01<R(650)/R(550)<1.40 (2)
下記式(3)で表される複屈折率(Δn)が1.5×10−3以上である。
Δn=R(550)/(d×103) (3)
(但し、dはフィルムの厚み(μm)である。)
を満たす請求項8記載の光学フィルム。 - 位相差フィルムとして用いられる請求項10記載の光学フィルム。
- 光学フィルムの厚み(d)が20〜80μmである請求項10記載の光学フィルム。
- 請求項11記載の光学フィルムを位相差フィルムとして用いた液晶表示装置または有機EL表示装置。
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