(1)積層体
本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に帯電防止層を有する積層体であって、帯電防止層は、有機系導電材料(a)と、平均粒径が10〜500nmである微粒子(b)とを含むコーティング組成物からなり、コーティング組成物は、微粒子(b)を10〜50重量%含み、帯電防止層の、印加電圧が10Vのときの表面抵抗値SR1と、印加電圧が1000Vのときの表面抵抗値SR2がSR2/SR1≦1000の関係を満たす。
本発明の積層体は、基材フィルムの少なくとも一方の面に帯電防止層を有する。
基材フィルムの材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの材質は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
基材フィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜10000μmであることが好ましく、25〜5000μmであることがより好ましい。また、基材フィルムの全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
帯電防止層は、有機系導電材料と、平均粒径が10〜500nmである微粒子とを含むコーティング組成物からなる。
コーティング組成物に含まれる有機系導電材料としては、特に限定されないが、導電性に優れ、湿度依存性が小さいことから、例えば、導電性高分子、炭素材料等が挙げられる。これらの有機系導電材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子としては特に限定されず、従来公知の導電性高分子を用いることができ、具体例としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、及び、これらとドーパントとの複合体等が挙げられる。これらの導電性高分子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子としては、分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子が好ましい。その理由は、チオフェン環を分子内に含むことで導電性が高い分子ができやすいからである。
導電性高分子としては、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体がより好ましい。導電性や化学的安定性に極めて優れているからである。また、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含有する場合、低温短時間で帯電防止層を形成することができ、生産性にも優れることとなる。
ポリ(3,4−二置換チオフェン)としては、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、R1及びR2は相互に独立して水素原子又はC1−4のアルキル基を表すか、又は、R1及びR2が結合している場合にはC1−4のアルキレン基を表す。C1−4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2が結合している場合、C1−4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,2−エチレン基、1−エチル−1,2−エチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が好ましく、1,2−エチレン基がより好ましい。C1−4のアルキル基、及び、C1−4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていてもよい。C1−4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
ポリ陰イオンは、ポリチオフェン(誘導体)とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン(誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類及びスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000より大きく、500000以下であることが好ましく、40000〜200000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用した。
導電性高分子は、透明性及び導電性に特に優れることから、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体であることが好ましい。
導電性高分子は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体であり、0.01S/cm以上の導電率を有することがより好ましい。その理由は、このような導電性高分子を含有するコーティング組成物は、透明導電膜とした際の透明性及び導電性に特に優れるためである。
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、カーボンナノ材料、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。これらの炭素材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
コーティング組成物における有機系導電材料の含有量は特に限定されないが、例えば、有機系導電材料として導電性高分子を用いた場合は、帯電防止層とした際に0.01〜50.0mg/m2となる量が好ましく、0.1〜10.0mg/m2となる量がより好ましい。0.01mg/m2未満では、帯電防止層中の導電性高分子の存在割合が少なくなり、帯電防止層の導電性を十分に確保することができない場合があり、一方、50.0mg/m2を超えると、帯電防止層中の導電性高分子の存在割合が多くなり、塗布膜の強度、成膜性に悪影響を与える原因となる場合があるからである。有機系導電材料として炭素材料を用いた場合は、帯電防止層とした際に0.01〜50.0mg/m2となる量が好ましく、0.1〜10.0mg/m2となる量がより好ましい。
コーティング組成物は、有機系導電材料に加えて、バインダー、導電性向上剤、溶媒、架橋剤、触媒、界面活性剤及び/又はレベリング剤、水溶性酸化防止剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、中和剤、増粘剤等を含有していてもよい。
バインダーは、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルコキシシランオリゴマー、ポリオレフィン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。その理由は、有機系導電材料等の成分との相溶性が高く、これらのバインダーを含有するコーティング組成物を用いて形成した帯電防止層は、基材に対する親和性が良好であり、膜不良部を効率的に不可視化できるためである。また、これらのバインダーを含有するコーティング組成物を用いて形成した帯電防止層は、良好な硬度及び耐薬品性を有する。これらのバインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂としては、2つ以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であればよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等)等が好ましい。
ポリウレタンとしては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコキシシランオリゴマーとしては、例えば、下記式(II)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される高分子量化されたアルコキシシランであり、シロキサン結合(Si−O−Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマー等が挙げられる。
SiR4(II)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基である)
アルコキシシランオリゴマーの構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐状でもよい。また、アルコキシシランオリゴマーは、式(II)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。アルコキシシランオリゴマーの重量平均分子量は特に限定されないが、152より大きく4000以下であることが好ましく、500〜2500であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
コーティング組成物がバインダーを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、導電材料の含有量100重量部に対して0.1〜1000重量部であることが好ましく、5〜500重量部であることがより好ましい。バインダーの含有量が0.1重量部未満であると、帯電防止層の強度が弱くなることがあり、一方、1000重量部を超えると、帯電防止層中の導電材料の割合が相対的に少なくなり、帯電防止層の導電性を十分に確保することができないことがある。
コーティング組成物が導電性向上剤を含有する場合、導電性向上剤としては、特に限定されないが、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシル基含有化合物;イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のカルボニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
溶媒としては、特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:ハロゲン類、アセトニトリル、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、2種以上の有機溶媒の混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
溶媒は、コーティング組成物を用いて形成する帯電防止層中には残留しないことが好ましい。なお、本明細書においては、コーティング組成物の全ての成分を完全に溶解させるもの(即ち、「溶媒」)と、不溶成分を分散させるもの(即ち、「分散媒」)とを特に区別せずに、いずれも「溶媒」と記載する。
架橋剤を配合することにより熱硬化性バインダー樹脂を架橋させることができ、帯電防止性能を向上できる。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系、ポリイソシアネート系、ポリアクリレート系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
コーティング組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、コーティング組成物中30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
コーティング組成物が熱硬化性バインダー樹脂及び架橋剤を含有する場合、熱硬化性バインダー樹脂を架橋させるための触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。
コーティング組成物に界面活性剤及び/又はレベリング剤を配合することにより、コーティング組成物のレベリング性を向上させることができ、このようなコーティング組成物を用いることで均一な帯電防止層を形成することができる。
界面活性剤としては、レベリング性向上効果を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩等のカルボン酸;リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レベリング性向上効果が顕著に得られることからはシロキサン系化合物及びフッ素系化合物が好ましい。
レベリング剤としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのレベリング剤の中では、導電性コーティング組成物に配合した際に分散安定性に優れることから、シロキサン系化合物、フッ素系化合物が好ましい。
コーティング組成物が界面活性剤及び/又はレベリング剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、コーティング組成物中、1〜20重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
コーティング組成物に水溶性酸化防止剤を配合することにより、帯電防止層の耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。水溶性酸化防止剤としては、特に限定されず、還元性の水溶性酸化防止剤、非還元性の水溶性酸化防止剤等が挙げられる。
コーティング組成物が水溶性酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、コーティング組成物中、1〜20重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
コーティング組成物に含まれる微粒子は、特に限定されないが、無機微粒子、架橋構造を有する有機微粒子、などが挙げられる。無機微粒子の具体例として、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、中空シリカ、フュームドシリカ等のシリカ微粒子及びチタニア、ジルコニア等の金属酸化物微粒子等の他、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のアクリル−シリカ複合粒子、メラミン樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のメラミン−シリカ複合粒子、シリカ粒子を熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂で被覆したコアシェル型のアクリル−シリカ複合粒子、シリカ粒子をメラミン樹脂で被覆したコアシェル型のメラミン−シリカ複合粒子、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル微粒子により小さなシリカ微粒子を担持させたアクリル−シリカ複合粒子のような有機無機複合粒子等が挙げられる。有機微粒子は、特に限定されるものではないが、例えばフッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、ウレタンゴム微粒子等が挙げられる。これらの微粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの微粒子を含有させることにより、帯電防止層中での有機系導電材料の濃度が局所的に高まる結果、耐電圧性を向上させられると考えられる。
微粒子の平均粒径は、10〜500nmであれば特に限定されないが、20〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。500nmを超えると微粒子の大部分が帯電防止層の表面に露出することから、粒子が脱落し、或いは帯電防止層のヘイズが高くなる傾向がある。
微粒子の体積抵抗率は特に限定されないが、102Ω・cm以上が好ましく、104Ω・cm以上がより好ましく、106Ω・cm以上がさらに好ましい。
帯電防止層は、印加電圧が10Vのときの表面抵抗値をSR1とし、印加電圧1000Vのときの表面抵抗値をSR2とした場合にSR2/SR1≦1000の関係を満たす。SR2/SR1は1000以下であれば特に限定されないが、500以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、150以下であることがさらに好ましい。SR2/SR1は低ければ低いほど、電撃を受けた後の表面抵抗値の変化が小さいことを示し、好ましいが、通常は1以上である。
帯電防止層の厚みA(nm)と微粒子(b)の平均粒径B(nm)とが、0.2≦B/A≦7.0の関係を満たし、かつ、5≦A≦200であることが好ましい。この関係を満たすことにより、静電気による電撃を受けても有機系導電材料が劣化しにくく、かつ、帯電防止層が粒子が脱落しにくく、さらには、帯電防止層のヘイズを低く抑えることができる。B/Aは0.5〜3.3であることがより好ましく、0.5〜3.0であることがさらに好ましい。通常、粒子配合膜では、膜から粒子が脱落してしまうことにより、膜の耐擦傷性が低下する傾向がある。しかし、帯電防止層の厚みと微粒子の平均粒径とが前述の関係を満たすと、微粒子は帯電防止層中に埋没し、膜が摩擦を受けても粒子が脱落しにくく、耐擦傷性に優れる。
帯電防止層の厚みA(nm)は、5〜200nmであることがより好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、30〜50nmであることがさらにより好ましい。
コーティング組成物中の微粒子の含有量は、10〜50重量%であれば特に限定されないが、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。含有量が10重量%未満では 有機系導電材料が静電気による電撃の影響を受けやすくなり、帯電防止性能が劣化しやすい傾向がある。含有量が50重量%を超えると帯電防止層中の微粒子の成分が過剰となり、表面に露出する粒子成分が増える影響で、粒子が脱落したり、帯電防止層のヘイズが上昇したりする傾向がある。
基材フィルムは、帯電防止層に加えて、粘着層を有していてもよい。粘着層は、基材フィルムの、帯電防止層と接しない面に配置されることが好ましい。粘着層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成される。粘着剤としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することでき、具体的には、例えば、各種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合又は共重合させて得られた(メタ)アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合系樹脂、ジメチルシロキサン骨格を有するシリコーンゴムなどのシリコーン系樹脂、ポリオールとポリイソシアネートを重付加して得られるポリウレタン系樹脂、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム系樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に化学的安定性に優れ、化学構造設計の自由度が高く、粘着力の調整が容易な(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましい。さらに、(メタ)アクリル系樹脂、及び、ポリウレタン系樹脂は、特に透明性に優れる点でも好ましい。
粘着層の形成方法としては、従来公知の方法を使用することができ、例えば、粘着剤を含有する粘着剤組成物をガラス基材に塗布し、架橋又は加熱乾燥する方法、架橋又は加熱乾燥させた粘着層をガラス基材に転写する方法等が挙げられる。なお、粘着剤組成物は、粘着剤の他に架橋剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法を使用することができ、具体的には、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等を用いることができる。
(2)帯電防止層の形成方法
帯電防止層は、有機系導電材料を含有するコーティング組成物を、基材フィルムの少なくとも一つの面上に塗布して形成される。帯電防止層は、コーティング組成物を基材フィルムに直接塗布して形成してもよいし、プライマー層等の別の層を予め基材上に設けた後で、当該層の上に塗布して形成してもよい。
帯電防止層は、コーティング組成物を基材フィルムの少なくとも一つの面上に塗布した後、加熱処理することにより得ることができる。コーティング組成物を基材フィルムの少なくとも1面に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等を用いることができる。
コーティング組成物を基材フィルムの少なくとも一つの面上に塗布する前に、必要に応じて、あらかじめ基材フィルムの表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。
帯電防止層を形成する際の加熱処理は、特に限定されず公知の方法により行えばよく、例えば、送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いて行えばよい。コーティング組成物が溶媒を含有する場合、溶媒は、加熱処理により除去される。
帯電防止層を形成する際の加熱処理の温度条件は、特に限定されないが、150℃以下であることが好ましく、50〜140℃であることがより好ましく、60〜130℃であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が150℃を超えると、用いる基材の材質が限定され、例えば、PETフィルムポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等の一般に透明電極フィルムに用いられる基材を用いることが出来なくなる。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1〜60分間であることが好ましく、0.5〜30分間であることがより好ましい。
帯電防止層の表面抵抗率は、特に限定されないが、106〜1010Ω/□であることが好ましく、107〜109Ω/□であることがより好ましい。
帯電防止層の屈折率は、特に限定されないが、1.4〜1.7であることが好ましく、1.5〜1.6であることがより好ましい。
本発明の積層体のヘイズ(Haze)値は、特に限定されないが、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。ヘイズ値が3%を超えると、積層体の透明性が悪化することがある。なお、ヘイズ値は小さければ小さいほど好ましいため、その下限は特に限定されないが、例えば0.01%である。本発明におけるヘイズ値はJIS K 7150に準拠して測定されるものをいう。
本発明の積層体における帯電防止層は、耐擦傷性に優れる。本発明の積層体上で、500gの荷重下でセルロース製不織布を10往復摺動した場合における帯電防止層の表面に生じる目視可能な傷が、10cm2あたり5本以内であることが好ましい。目視可能な傷は10cm2あたり5本以内であれば特に限定されないが、3本以内であることがより好ましく、1本以内であることがさらに好ましい。目視可能な傷としては、長さ1cm以上、幅1mm以上の傷が挙げられる。
(3)表面保護フィルム
本発明の積層体は、表面保護フィルムに好適に使用することができる。表面保護フィルムは、偏光板、導光板などの光学フィルムを傷や汚れから保護するためのフィルムである。例えば、液晶パネルの製造においては、偏光板、導光板などの光学部品(フィルム)は保護フィルムをつけたままの状態で、積層、組み立てられ、また、検査の工程においても、保護フィルムがついたままの状態で行われ、その後、最終的には剥がされて、破棄されるものである。表面保護フィルムに使用する場合には、積層体は粘着層を有することが好ましい。
表面保護フィルムの粘着力は、被着体により好適な範囲は異なるが、例えば、被着体が無アルカリガラスのようなガラス基板である場合には、その粘着力は、0.05〜10N/25mmであることが好ましい。
表面保護フィルムには、必要に応じて、粘着層表面に剥離紙(セパレーター)を貼り合わせてもよい。剥離紙の材質は、例えば、紙やプラスチックフィルムが挙げられるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
剥離紙において、その粘着剤層と接する面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等の離型剤、シリカ粉等による離型剤処理が施されていてもよい。
表面保護フィルムは、例えば、液晶パネル、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、偏光板、光拡散シート、レンズフィルム等の表面保護フィルムとして好適に使用することができ、これらの被着体を機械的及び電気的に保護することができる。
本発明の積層体は、表面保護フィルム以外に、偏光板をはじめ、マスキングテープ、再剥離型ラベル等にも好適に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
1.使用材料
1−1.基材フィルム
・PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)
1−2.有機系導電材料
・導電性高分子PEDOT/PSS(製造例1にて作製、固形分1.3%)
・カーボンナノチューブ(製造例2にて作製、固形分率1.1重量%)
1−3.微粒子
・シリカ微粒子(株式会社日本触媒製、シーホスターKE−W10、平均粒径100nm)
・シリカ微粒子−アクリル樹脂エマルション(DIC株式会社製、DV−961、平均粒径150nm)
・シリカ微粒子(日産化学工業株式会社製、ST−XL、平均粒径50nm)
・シリカ微粒子(株式会社日本触媒製、シーホスターKE−W30、平均粒径300nm)
・アクリル樹脂微粒子(株式会社日本触媒製、エポスターMX050W、平均粒径70nm)
1−4.バインダー樹脂
・アクリル樹脂(東亞合成株式会社製、ジュリマーFC−80、固形分率30%、ガラス転移温度50℃)
・ポリウレタン(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス830HS、固形分率35%、ガラス転移温度68℃)
・ポリエステル(東亞合成株式会社製、アロンメルトPES−2405A30、固形分率30%、ガラス転移温度40℃)
・メラミン(DIC株式会社製、ベッカミンM−3、固形分率77%)
・ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製、UCECOAT7655、固形分率35%)
1−5.界面活性剤
・シリコーン系界面活性剤(信越化学工業株式会社製、X−22−4952)
・フッ素系界面活性剤(デュポン株式会社製、CAPSTONE FS−3100)
・エーテル系界面活性剤(クラリアント社製、Emulsogen LCN 070)
1−6.酸化防止剤
・L(+)−アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)
・没食子酸(和光純薬株式会社製)
2.評価方法
2−1.表面抵抗率
積層体の表面抵抗率は、抵抗率計(三菱化学株式会社製、ハイレスターUP(MCP−HT450型))とURSプローブとを用いて測定した。帯電防止層にプローブを押し当て、印加電圧10Vにて10秒間保った際の表面抵抗率を求めた(SR1)。次に、帯電防止層にプローブを押し当て、印加電圧1000Vにて60秒間保った際の表面抵抗率を求めた(SR2)。そして、表面抵抗変化率としてSR2をSR1にて割った値(SR2/SR1)を求めた。表面抵抗変化率は、電撃により帯電防止性能がどの程度変化するかを示す。
2−2.ヘイズ
積層体の製造直後のヘイズを、JIS K7150に従い、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HGM−2B)を用いて測定した。
2−3.耐擦傷性
積層体の帯電防止層の表面上を、学振形染色摩擦堅ろう度試験機(株式会社安田精機製作所製)にて、500gの荷重下でセルロース製不織布(旭化成株式会社製、品番:ベンコット)を10往復摺動させた。その後、帯電防止層の表面を目視により観察し、10cm2あたりの傷の本数を数えた。3回の試行を行い、平均値を算出した。
(製造例1)PEDOT:PSS水分散体の作製
冷却管を備えた2000ml三口ガラスフラスコを用いて、ポリスチレンスルホン酸水溶液(アクゾノーベル社製、VERSA−TL72)92.3部と3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.1部を1000部のイオン交換水に加え、混合液を得た。この混合液を撹拌しながら、100部のイオン交換水に硫酸第二鉄4.0部とペルオキソ二硫酸アンモニウム14.8部を溶解させた液を加え、20℃にて24時間撹拌して酸化重合を行った。次いで、陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーライトIR120B)と陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーライトIRA67)とをそれぞれ15重量%加えた後、さらに18時間撹拌した。得られた反応混合液をガラスろ過器でろ過し、次いで高圧ホモジナイザーで100MPaにて10回均質化処理を行うことによりPEDOT:PSS水分散体を得た。
(製造例2)カーボンナノチューブ水分散体の作製
平均長さ300μm、直径約4nmのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社、ZEONANO SG101)1重量部、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を10重量部、純水989重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザーにて40Wで30分間分散処理を行った後、遠心分離機3500rpmにて未分散のカーボンナノチューブを取り除くことで、固形分率1.1%のカーボンナノチューブ水分散体を得た。
(実施例1〜11、比較例1)
表1に記載した重量比で各成分を混合し、コーティング組成物を作製した。基材フィルムの片面にバーコート法にてコーティング組成物を塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で2分乾燥させることにより、帯電防止層を形成し、積層体を得た。帯電防止層の膜厚は、コーティング組成物の固形分と、バーコータの番手を適宜選択することにより、表1に記載の膜厚に調整した。光硬化性バインダー(ウレタンアクリレート)を含むものは、120℃で2分間の乾燥後に、メタルハライドランプを用いて500mJ/cm2の紫外線照射を行い、硬化させた。
実施例1〜11、比較例1で得られた積層体について、上述した方法により表面抵抗率、ヘイズ、膜厚、および耐擦傷性を評価した。結果を表1に示す。微粒子を含まない比較例1の積層体は、電撃により表面抵抗変化率が約2800倍にまで増大し、電撃により有機系導電材料が劣化し、帯電防止性能が維持できなくなることを示した。実施例1〜11の積層体は電撃後にも比較例1のような表面抵抗率の上昇はみられず、導電性が維持されていた。実施例1〜3、6〜11の積層体は平均粒径/帯電防止層の厚みの比が0.5〜3.3であったため、耐擦傷性にも優れており、擦傷後の目視可能な傷は0〜3本と耐擦傷性に優れており、かつ、SR2/SR1≦500の関係を満たし、電撃による有機導電材料の劣化が抑えられていた。