JP2019102177A - カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019102177A
JP2019102177A JP2017229379A JP2017229379A JP2019102177A JP 2019102177 A JP2019102177 A JP 2019102177A JP 2017229379 A JP2017229379 A JP 2017229379A JP 2017229379 A JP2017229379 A JP 2017229379A JP 2019102177 A JP2019102177 A JP 2019102177A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
cnt
carbon nanotube
conductive film
anisotropic conductive
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017229379A
Other languages
English (en)
Inventor
勉 長宗
Tsutomu Nagamune
勉 長宗
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Zeon Co Ltd filed Critical Nippon Zeon Co Ltd
Priority to JP2017229379A priority Critical patent/JP2019102177A/ja
Publication of JP2019102177A publication Critical patent/JP2019102177A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Electric Cables (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Manufacturing Of Electrical Connectors (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)

Abstract

【課題】カーボンナノチューブを含み、膜厚方向の電気抵抗が小さなカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムは、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子を含み、前記カーボンナノチューブおよび前記熱可塑性高分子の合計質量に対する前記カーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNTが0.1wt%以上1.0wt%以下であり、前記カーボンナノチューブからなる集合体の体積基準平均粒子径をd50(μm)、前記カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの膜厚をt(μm)として、式[1]:A=CCNT×d50/t・・・[1]により定義されるパラメータAが0.010以上30.000の範囲内であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm2)の値が、シート抵抗(Ω/□)の値よりも小さい。【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法に関する。
近年、電子デバイスの小型化および薄型化に伴い、異方性導電フィルムが利用されるようになってきた。異方性導電フィルムは、液晶ディスプレイ用ガラスへのフレキシブル基板の接続および、プリント基板への半導体デバイスの実装時に使用されている。
例えば、特許文献1により、こうした異方性導電フィルムとして、エラストマーよりなるシート基体と、このフィルム基体中にその膜厚方向に伸びるよう配列された導電性繊維と、当該フィルム基体中にその膜厚方向に並ぶよう配向した状態で含有された磁性を示す導電性粒子とを有する異方性導電性フィルムが開示されている。
特許文献1に開示される異方性導電性フィルムは、膜厚方向の加圧状態が高まるにつれて、高い導電性を示す、というものである。
特開2002−056719号公報
ところで、近年、繊維状炭素ナノ構造体であるカーボンナノチューブ(以下「CNT」と省略表記することがある。)が注目されている。CNTは、導電性、熱伝導性、摺動特性、機械特性等に優れるため、幅広い用途への応用が検討されている。
カーボンナノチューブと熱可塑性高分子とを混合して得られるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体(以下、「CNT含有熱可塑性高分子複合体」、あるいは単に「CNT含有複合体」と省略表記することがある。)からなるCNT含有フィルムが知られている。CNT含有フィルムは、CNT含有複合体を塗工または押し出し成型などにより成膜することにより得られる。CNT含有フィルムはCNTを用いるため、従来の導電カーボン粒子、金属粒子およびカーボンファイバーと比較し、CNTの少量添加で導電発現効果がある。そのため、CNT含有フィルムは、高分子フィルムの機械特性を損なうことがない点で有利である。
しかしながら、従来のCNT含有フィルムでは、その製造法に起因して、フィルムの塗工方向または押出し方向に一定のせん断力がかかることとなる。そのため、CNT含有フィルムは、含有するCNTがそれらの方向に配向する特性を示す。したがって、従来のCNT含有フィルムの導電率および熱伝導率は、フィルムの面内方向におけるCNT配向方向の性能向上に寄与する一方、フィルムの膜厚方向には寄与しないこととなる。そのため、膜厚方向に導電性および熱伝導性が求められる異方性導電フィルムとしては使用はできない状況であった。
そこで本発明は、膜厚方向に導電性を示し得る、膜厚方向の電気抵抗が小さなカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成すべく本発明者が鋭意検討したところ結果、適正濃度範囲のCNTを含有した熱可塑性高分子複合体を用い、さらに、フィルム成形体の厚みに対して使用するCNTを適切に選択することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムは、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子を含み、前記カーボンナノチューブおよび前記熱可塑性高分子の合計質量に対する前記カーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNTが0.1wt%以上1.0wt%以下であり、前記カーボンナノチューブからなる集合体の平均粒子径をd50(μm)、前記カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの膜厚をt(μm)として、式[1]:A=CCNT×d50/t・・・[1]により定義されるパラメータAが0.010以上30.0以下の範囲内であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm)の値が、シート抵抗(Ω/□)の値よりも小さいことを特徴とする。このカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムは、膜厚方向の電気抵抗が小さいため、異方性導電フィルムとして使用することができる。
なお、本発明において、カーボンナノチューブからなる集合体の平均粒子径は、以下のとおりにして測定される。まず、蒸留水に、0.1wt%のCNTと、分散剤としての0.1wt%のポリビニルピロリドンとを添加し、常温で1時間以上、混合撹拌して測定用CNT一次分散液を得る。この測定用CNT一次分散液に対し、さらに、卓上型超音波洗浄機を用いて、10分間超音波処理し、測定用CNT集合体分散液を得る。この測定用CNT集合体分散液に対して、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置などの粒度分布計を用いて、体積基準の平均粒子径d50(いわゆるメジアン径)が測定され、これを本発明における平均粒子径とする。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、前記単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗に対する前記シート抵抗の比が10以上であることが好ましい。こうすることで、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムが膜厚方向の導電性をより確実に示すことができる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、前記単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が、100Ω/cm以下であることが好ましい。こうすることで、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムが膜厚方向の導電性をより確実に示すことができる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、前記カーボンナノチューブよりなる集合体の前記平均粒子径d50が1μm以上400μm以下の範囲内であることが好ましい。こうすることで、膜厚方向の導電性を示し得るカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムを、より確実に得ることができる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、前記膜厚tが10μm以上1mm以下の範囲内であることが好ましい。こうすることで、膜厚方向の導電性を示し得るカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムを、より確実に得ることができる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、前記パラメータAが0.010以上0.500以下の範囲内であり、前記シート抵抗が10Ω/□以上であることが好ましい。こうすることで、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムが面内方向での電気的絶縁性をより確実に示すことができる。
また、本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムを製造するための製造方法は、(i)前記カーボンナノチューブおよび前記熱可塑性高分子の複合体であるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体を成形してフィルム成形体を得る成形体形成工程と、(ii)前記フィルム成形体の前記カーボンナノチューブを電気的に配向させる配向処理工程と、を含み、(ii)前記配向処理工程は、前記フィルム成形体が膜厚方向に電圧印加可能な成形型内に設置された状態で、前記複合体のガラス転移点Tまたは融点T以上の温度に加温して、前記フィルム成形体を溶融状態にする加温工程と;前記フィルム成形体の熱溶融状態を保持したまま、前記フィルム成形体の前記膜厚方向に電圧印加する電圧印加工程と;前記電圧印加を継続しつつ、前記成形型を冷却し、前記フィルム成形体を固体化させる冷却工程と;前記電圧印加を停止する停止工程と;を含むことを特徴とする。この製造方法により、本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムを確実に製造することができる。
本発明によれば、膜厚方向の電気抵抗が小さなカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法を提供することができる。
本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの製造方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。 本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの製造方法に用いて好適な成型板を説明するための模式断面図である。 上記成形板にスペーサを設置した際の平面図である。 本発明によるカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの製造方法の配向処理工程に用いて好適な成形機を説明するための模式断面図である。 カーボンナノチューブ集合体の長径の一例を示すSEM像(倍率:50倍)である。 カーボンナノチューブ集合体の長径の、別の一例を示すSEM像(倍率:1000倍)である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム)
本発明の一実施形態に従うカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム(CNT含有異方性導電フィルム)は、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子を含む。そして、このカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムにおいて、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子の合計質量に対するカーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNTが0.1wt%以上1.0wt%以下である。また、カーボンナノチューブからなる集合体の平均粒子径をd50(μm)、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの膜厚をt(μm)として、下記式[1]:
A=CCNT×d50/t ・・・[1]
により定義されるパラメータAが0.010以上30.0以下の範囲内である。さらに、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm)の値が、シート抵抗(Ω/□)の値よりも小さい。このCNT含有異方性導電フィルムは、フィルム面内方向で電気的絶縁性を示しつつ、フィルム膜厚方向で導電性を示し得る。以下、各構成及び各特性の詳細について、順次説明する。
<カーボンナノチューブ(CNT)>
CNT含有異方性導電フィルムが含むCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブ(単層CNT;SWCNT)及び/又は多層カーボンナノチューブ(多層CNT;MWCNT)を用いることができ、いずれを用いてもよい。単層CNTを使用すれば、多層CNTを使用した場合と比較し、CNT含有異方性導電フィルムの作製に用いて好適なCNT分散液の分散性を高めやすい。
また、CNTとしては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のCNTを用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超のCNTを用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超のCNTを用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを使用すれば、CNTの分散性に一層優れるCNT分散液を得やすい。
なお、「CNTの平均直径(Av)」及び「CNT直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、CNTとしては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなるCNTのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、CNTの分散性に一層優れるCNT分散液が得ることができる。
更に、CNTの平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径(Av)が0.5nm以上15nm以下であれば、CNTの分散性に一層優れるCNT分散液を得やすい。
また、CNTは、合成時における構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時にCNTに破断や切断等の損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
そして、CNTのアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。なお、CNTのアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の直径及び長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
更に、CNTのBET比表面積は、400m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることがより好ましい。CNTのBET比表面積が400m/g以上であれば、得られるCNT分散液を用いて形成した炭素膜の強度及び自立性を更に高めることができる。また、CNTのBET比表面積が2500m/g以下であれば、得られるCNT分散液中のCNTの分散性を一層高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
ここで、上述したCNTは、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、CNTの質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm以下であれば、液中でのCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT分散液中でCNTを均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm以上であれば、CNTの一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
更に、CNTは、複数の微小孔を有することが好ましい。CNTは、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。CNTが上記のようなマイクロ孔を有することで、CNTが更に凝集しにくくなる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、CNTの調製方法及び調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、CNTの液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cmである。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
上記CNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるCNTを「SGCNT」と称することがある。CNTは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
また、CNTとして、SWCNTを短尺化して得られる短尺化単層カーボンナノチューブ(以下、「S−SWCNT」と省略表記することがある。)を用いることも好ましい。S−SWCNTは、例えば以下のとおりにして得ることができる。まず、SWCNTを分散剤等を用いて分散させたSWCNT分散原料液を用意する。SWCNT分散原料液を撹拌混合し、ビーズミル等により粉砕処理を行い、これを繰り返す。粉砕処理したSWCNT分散水原料液を、遠心分離機等により固液分離し、蒸留水で洗浄する。SWCNT分散原料液に含まれる分散剤が除去されるまで線上を繰り返す。最後に真空乾燥機内等で蒸留水を乾燥させれば、S−SWCNTを得ることができる。
<<CNT集合体>>
本発明に用いるCNT含有異方性導電フィルムが含むCNTのサイズ指標として、CNTよりなる集合体(以下、「CNT集合体」と省略表記することがある。)の体積基準平均粒子径d50(μm)を用い、さらに、必要に応じてCNT集合体の長径平均(μm)を用いる。CNT集合体の平均粒子径d50(μm)は、前述のとおり、以下のとおりにして測定される。まず、蒸留水に、0.1wt%のCNTと、分散剤としての0.1wt%のポリビニルピロリドンとを添加し、常温で1時間以上、混合撹拌して測定用CNT一次分散液を得る。この測定用CNT一次分散液に対し、さらに、卓上型超音波洗浄機を用いて、10分間超音波処理し、測定用CNT集合体分散液を得る。この測定用CNT集合体分散液に対して、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置などの粒度分布計を用いれば、体積基準の平均粒子径d50が測定される。
CNT集合体の平均粒子径d50は、後述のパラメータAが本発明条件を満たす限りは特に制限されないが、1μm以上400μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上10μm以下、または100μm以上400μm以下であることも好ましい。CNT集合体の体積基準平均粒子径d50がこれらの範囲内であれば、本発明によりCNT含有異方性導電フィルムをより確実に得ることができる。
また、CNT集合体の長径平均(μm)については特に制限されず、5μm以上500μm以下とすることができる。また、300μm以上500μm以下とすることができ、また、5μm以上25μm以下とすることができる。
<熱可塑性高分子>
CNT含有異方性導電フィルムが含む熱可塑性樹脂としては、特に制限されることなく、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
−常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリシクロオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系フッ素樹脂等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物等が挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体が好ましい。
また、市販されている、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−300シリーズ/G−700シリーズ/G−7000シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体)、ダイエルG−800シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−900シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ(フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ(ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ケマーズ社製のA−100(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体);などが挙げられる。
−常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂−
また、本発明の効果を著しく損なわない限り、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂に、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を組み合わせて用いることもできる。常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れるという点からは、105℃における粘度が、500mPa・s〜30,000mPa・sであることが好ましく、550mPa・s〜25,000mPa・sであることがより好ましい。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
<カーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNT
カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子の合計質量に対するカーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNT(以下、「CNT濃度」と略記することがある。)について説明する。本発明によるCNT含有異方性導電フィルムが含むCNTのCNT濃度CCNTを、0.1wt%以上1.0wt%以下とする。膜厚方向の導電性を発現させるためには、CNT濃度CCNTが0.1wt%以上とする。しかしながら、CNT濃度CCNTが過大となると、フィルム成形が困難となるおそれがあるため、CNT濃度CCNTは1.0wt%以下とする。また、CNT濃度CCNTが1.0wt%以下であれば、CNT含有異方性導電フィルムの面内方向の絶縁性を確保しやすい。なお、CNT含有異方性導電フィルムが他の成分を含み得る場合にも、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子の両者によりCNT濃度CCNTを規定する。
<膜厚>
CNT含有異方性導電フィルムの膜厚tについては、フィルム成形でき、かつ、異方導電性を示す限りは特に制限されないが、膜厚tが10μm以上1mm以下の範囲内であることが好ましい。
<パラメータA>
前述のCNTの質量パーセント濃度CCNT、CNT集合体の平均粒子径d50(μm)およびCNT含有異方性導電フィルムの膜厚をt(μm)を用いて、下記式[1]に従うパラメータAを定義する。
A=CCNT×d50/t ・・・[1]
本発明においては、パラメータAが0.010以上30.0以下の範囲内となるようにすることで、異方導電性が得られることが実験的に確認された。この理由を、本発明者は以下のように考察している。
まず、CNT含有異方性導電フィルムにおいてもCNT集合体が同等のサイズでCNT集合体として存在し得ると仮定し、CNT集合体の平均粒子径d50を、CNT含有異方性導電フィルムにおけるCNT集合体1個の長さと仮定する。そうすると、CNT濃度CCNTは、CNT集合体が厚さ方向に連結可能な数と比例関係にある。よって、[CNT濃度CCNT(wt%)]×[CNT集合体の平均粒子径d50(μm)]は、CNTを電気的に配向させたときに、導電性が発現可能な膜厚(すなわち、CNT集合体が連結している厚さ)に比例すると考えられる。
ここで、パラメータAにおいて、上記の積{[CNT濃度CCNT(wt%)]×[CNT集合体の平均粒子径d50(μm)]}を[CNT含有異方性導電フィルムの膜厚t(μm)]により除算するのは、以下の理由による。すなわち、上述の導電性を発現できる厚さよりも、フィルム成形体の膜厚が過大であると、CNT集合体の配向効果が不十分となって、膜厚方向の導電性が乏しくなると考えられる。
よって、パラメータAは、[配向処理で導電性が発現できる厚さの限界]/[フィルム成形体自体の厚さ]を表すこととなる。したがって、パラメータAが下限値未満(すなわち0.010未満)の場合、フィルムは膜厚方向の導電性に乏しくなる。また、パラメータAが上限値超(すなわち30.000超)の場合、CNT集合体が膜厚方向に電気的に配向せず、膜厚方向に斜め配向する傾向が高まり、面内方向(横方向)の導電性が発現し得ることとなる。
また、上記観点から、パラメータAが0.010以上0.500以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.020以上0.400以下である。この場合、CNT含有異方性導電フィルムのシート抵抗が10Ω/□以上であることが好ましく、10Ω/□以上であることがより好ましい。
<膜厚方向の電気抵抗>
本発明により得られるCNT含有異方性導電フィルムの単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm)の値は、シート抵抗(Ω/□)の値よりも小さい。そして、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗に対するシート抵抗の比を10以上とすることができ、10以上とすることが好ましく、10以上とすることも好ましい。上限は限定されないものの、シート抵抗の測定限界を考慮すると、上記比の上限を1011とすることができる。
また、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗の絶対値として、100Ω/cm以下とすることができ、10Ω/cm以下とすることもでき、1Ω/cm以下とすることも可能である。下限は限定されないものの、CNT含有異方性導電フィルムの生産性を考慮すると、下限を0.01Ω/cmとすることができる。
なお、本発明の一実施形態によるCNT含有異方性導電フィルムにおいて、異方導電性に影響しない限りにおいて、CNTおよび熱可塑性高分子以外の成分を含み得る。ただし、CNTの膜厚方向への配向影響を考慮すれば、他の成分および不純物は極力含まれないことが好ましいと考えられる。CNT含有異方性導電フィルムは、カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子からなるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体(CNT含有熱可塑性高分子複合体)を成形して得ることができ、CNT含有異方性導電フィルムがCNT含有熱可塑性高分子複合体のみから構成されることが好ましい。ただし、この場合も、CNT含有異方性導電フィルムの製造工程上、不可避の不純物を含み得ることは当然に理解される。また、CNT含有異方性導電フィルムの両面には、他の構成として接着剤および保護膜等が設けられ得る。
以下、上述したCNT含有異方性導電フィルムを製造するための、好適な製造方法を、図1のフローチャートおよび図2〜図4の模式図を参照しつつ、以下で説明する。ただし、前述の構成および特性が満足される限りは、本発明によるCNT含有異方性導電フィルムは、他の製造方法により得られてもよいことは勿論である。
(CNT含有異方性導電フィルムの製造方法)
図1のフローチャートを参照する。本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体の製造方法は、カーボンナノチューブ(CNT)および熱可塑性高分子の複合体であるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体(CNT含有複合体)を成形してフィルム成形体を得る成形体形成工程S20と、このフィルム成形体のカーボンナノチューブを電気的に配向させる配向処理工程S30と、を少なくとも含む。また、成形体形成工程S20に先立ち、CNT含有複合体を形成する複合体形成工程S10を本実施形態による製造方法が含むことも好ましい。
そして、配向処理工程S30は、フィルム成形体が膜厚方向に電圧印加可能な成形型内に設置された状態で、前記複合体のガラス転移点Tまたは融点T以上の温度に加温して、前記フィルム成形体を溶融状態にする加温工程S31と、フィルム成形体の熱溶融状態を保持したまま、フィルム成形体の膜厚方向に電圧印加する電圧印加工程S32と、電圧印加を継続しつつ、前記成形型を冷却し、前記フィルム成形体を固体化させる冷却工程S33と、電圧印加を停止する停止工程S34と、を含む。以下、各工程の詳細、および本実施形態による製造方法が含んで好ましい工程を順次説明する。
<複合体形成工程>
複合体形成工程S10では、CNTおよび熱可塑性高分子の複合体であるCNT含有複合体を形成する。この複合体形成工程S10は、例えば以下に詳述するのCNT分散液形成工程、混合工程および乾燥工程を含むことが好ましい。
<<CNT分散液形成工程>>
CNT分散液形成工程では、まずCNTを溶媒に分散させ、予備分散液を得る。次いで、得られた予備分散液を分散処理し、CNT分散液を得ることができる。
−溶媒−
上記溶媒としては、例えば、水または揮発性の非水溶媒等が挙げられる。具体的には、上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコール、メトキシプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、α−ヒドロキシカルボン酸のエステル、ベンジルベンゾエート(安息香酸ベンジル)等のエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、等の芳香族炭化水素類;サリチルアルデヒド、ジメチルスルホキシド、4−メチル−2−ペンタノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。他にも、シクロヘキサン、シクロペンタン等のシクロアルカン;クロロホルム等のハロゲン化アルキルを用いることもできる。中でも、後に行われる乾燥処理を考慮して、揮発除去させやすいクロロホルム、シクロヘキサン、メチルエチルケトンが好ましい。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
上記溶媒に対して、CNTの質量%濃度が0.01wt%以上0.50wt%以下、より好ましくは0.10wt%以上0.30wt%以下となるようにすることが好ましい。
この実施形態におけるCNT予備分散液中のCNTの濃度は、CNTが分散できる限りは特に制限されず、予備分散液中のCNT濃度は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。この範囲内であれば、CNTの分散性に優れる分散液を得ることができる。
本実施形態によるCNT予備分散液は、得られるCNT含有異方性導電フィルムの導電性および異方性を考慮して分散剤または界面活性剤などの他の構成を実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合を除いて能動的に配合はしないことをいい、具体的には、CNT予備分散液中の含有量が、0.05質量%未満であることが好ましく、0.01質量%未満であることがより好ましく、0.001質量%未満であることが更に好ましい。
なお、上記分散剤としては、界面活性剤、合成高分子、天然高分子等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
また、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩又は誘導体等が挙げられる。
[予備分散液]
上記予備分散液は、特に限定されることなく、前述のCNTと、上述した溶媒とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、CNTと、溶媒とは任意の順序で混合することができる。また、予備分散液には、上述した成分以外に、繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造に一般に用いられる添加剤を更に添加し得る。
[分散処理]
上記予備分散液を分散処理に供してCNT分散液を調製する際の分散処理方法としては、特に限定されることなく、CNTを含む液の分散に使用されている既知の分散処理方法を用いることができる。中でも、予備分散液に施す分散処理としては、キャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理が好ましい。キャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理を使用すれば、CNTを良好に分散させることができるので、得られるCNT分散液の分散性を更に高めることができる。
[[キャビテーション効果が得られる分散処理]]
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、CNTを良好に分散させることができる。
そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理及び高剪断撹拌による分散処理等が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、例えば、超音波ホモジナイザー、ジェットミル及び高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
[[解砕効果が得られる分散処理]]
また、解砕効果が得られる分散処理は、CNTを溶媒中に均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波によるCNTの損傷を抑制することができる点で有利である。
この解砕効果が得られる分散処理では、予備分散液にせん断力を与えてCNTの凝集体を解砕・分散させ、さらに予備分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、予備分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、CNTを溶媒中に均一に分散させることができる。
なお、予備分散液に背圧を負荷する場合、予備分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
ここに、予備分散液にせん断力を与えてCNTをさらに分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、予備分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10〜400MPa、好ましくは50〜250MPa)の予備分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の予備分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、予備分散液の流速が低下すると共に、CNTが良好に分散する。そして、終端部から、流入した予備分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、CNTが分散した液として流出することになる。
なお、予備分散液の背圧は、予備分散液の流れに負荷をかけることで予備分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、予備分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、予備分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に分散混合液を大気圧に開放した際に、分散混合液中に気泡が発生するのを抑制できる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)等がある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
<<混合工程>>
混合工程では、CNT分散液を、熱可塑性高分子と混合する。混合方法は特に限定されることなく、前述のCNT分散液と、熱可塑性高分子とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、CNT分散液と、熱可塑性高分子とは任意の順序で混合することができる。また、熱可塑性高分子が常温常圧で固体の場合は、CNT分散液の溶媒と同じ溶媒または異なる溶媒に添加して熱可塑性高分子含有溶液としてもよいし、CNT分散液に直接熱可塑性高分子を添加しても構わない。
<<乾燥工程>>
そして、CNT分散液と、熱可塑性高分子との混合溶液を乾燥させてることで、混合溶液の溶媒除去後の残留物として、CNT含有複合体を得ることができる。乾燥方法は特に限定されることなく、ロータリーエバポレータなどの蒸留器および真空乾燥機を単独又は併用するなどの、既知の方法で乾燥することが可能である。
<成形体形成工程>
複合体形成工程S10に続く成形体形成工程S20では、上述のようにして得たれたCNT含有複合体をフィルム成形して、(配向処理前の)フィルム成形体を得る。フィルム成形体の形成方法は特に限定されることなく、熱溶融押出しフィルム成形機または圧縮成形機を用いるなどの、既知の方法で成形することが可能である。なお、成形体形成工程で用いる圧縮成形機を、後続工程である配向処理工程S30において引き続き用いることも可能である。熱溶融押出しフィルム成形機などのフィルム成形機を用いる場合は、配向処理工程S30において用いる圧縮成形機を別途用意する必要がある。また、フィルム成形体の厚さを200μm以下とする場合には、フィルム成形機を用いることが好ましい。なお、フィルム成形体の状態では、膜厚方向にCNTが電気的に配向していないため、膜厚方向に電気絶縁性である。
<配向処理工程>
配向処理工程S30では、成形体形成工程S20により得られたフィルム成形体を熱溶融状態とし、この状態のまま電圧印加を行って、フィルム成形体におけるCNTを電気的に配向させる。
この配向処理工程に用いて好適な電圧印加型成形圧縮機500の好適態様を、図2〜図4を参照しつつ説明する。
まず、図2を参照して、電圧印加型圧縮成形機500に供して好適な成形板200を説明する。まず、基材210を用意する(図2ステップA)。次いで、基材210の表面に金属メッキ処理を施し、金属メッキ膜220を形成する(図2ステップB)。金属メッキ膜220は基材210の表面を被覆することとなる。なお、図2では金属メッキ膜220が基材210の表面全面を被覆しているが、金属メッキ膜220は基材210の主表面と、当該主表面に導通可能なように側面の少なくとも一部を被覆すればよい。そして、基材210の片面に絶縁支持基材240を設ける。金属メッキ膜220を基材210の主表面に設け、かつ、反対側の裏面に設けない場合には、基材210の裏面側に絶縁支持基材240を設けることとなる。また、図2のように基材210の表面全面にメッキ処理を施している場合には、任意の片方の主面に絶縁支持基材240を設ける。
基材210の材料は、その表面に金属メッキ膜220を形成できる限りは特に制限されず、例えばステンレス鋼を用いることができる。そして、このステンレス鋼の表面に例えば金メッキをすれば、金(Au)からなる金属メッキ膜220を得ることができる。金属メッキ膜の金属材料は導電性が確保できれば、金に限らず銅(Cu)などでもよく、何ら制限されない。
また、絶縁支持基材240も、絶縁体であれば特に制限されず、例えばジルコニア(ZrO)などを用いることができる。ジルコニアは熱伝導性も高く、後続の加温および電圧印加時に形状維持でき、加熱冷却時間を短縮できる点でも好ましい。こうした絶縁性、耐熱性、および熱伝導性を兼ね備える絶縁支持基材240の材料として、他に、窒化ケイ素などを用いてもよい。
配向処理を行う際には、こうして得られる成形板200を2枚用意し(200A,200B)、金属メッキ膜を介して、フィルム成形体を挟持することとなる。図3に、成形板200Aの金属メッキ膜220B上の中央部に配向処理前のフィルム成形体100を載置し、該フィルム成形体100を取囲み、かつ、空隙G(後述する)を設けるための電極間スペーサ300を設置する場合の模式平面図を図3に示す。
図4は、上述した成形板200A,200Bおよび電極間スペーサ300を備える電圧印加型成形圧縮機500を示す模式図である。成形板200A,200Bの金属メッキ膜220A,220Bの側面部には、導線ケーブル520A,520Bがそれぞれ接合され、成形板200A,200B間で通電するための電極230A,230Bが形成されている。
電圧印加型圧縮成形機500は、真空圧縮成形機を基本構造とすることができ、成形室内に上記成形板2枚(200A,200B)を用いて、それら主表面における金メッキ膜220A、220B間で成形フィルム100を挟持する。また、電圧印加型成形圧縮機500の空孔部(通常の真空圧縮成形機の場合、真空ポンプと連結するためのフランジ等を利用可能)から導線ケーブル520A,520Bを成形室外部に取り出し、直流電源510に接続することができる。さらに、電圧印加型圧縮成形機500は、窒素ガス等の不活性ガスを用いて、ガス導入部550から成形室内を不活性ガスでパージし続け、不活性ガス雰囲気下を維持することが可能である。不活性ガスとして、アルゴンなども使用し得る。
電圧印加型圧縮成形機500は、絶縁支持基材240A,240Bを介して、成形フィルム10は電圧印加型圧縮成形機500からの加熱および加圧F,Fを受けることが可能である。また、この加圧により、金属メッキ膜220A、フィルム成形体100および金属メッキ膜220B間での電気的接触を確保する。なお、加圧F,Fによる加圧力は、フィルム成形体の両面が金属メッキ膜220A,金属メッキ膜220Bと接触できる程度の微加圧でよい。
成形板200A,200Bの間には、その中心部に成形体フィルム100を、空隙Gを介して収容可能な空孔部を備える絶縁性の電極間スペーサ300を配置する。金属メッキ膜220A,金属メッキ膜220B間に空隙Gが設けられることにより、成形板200A,200B同士の絶縁を確保できる。なお、金属メッキ膜間での空隙Gによる絶縁確保のため、電極間スペーサ300の厚さは、成形体フィルム100の膜厚と同じか、同程度(±10%以内)とする。また、電極間スペーサ300の材料としては、絶縁性の材料であれば何ら制限されない。例えば樹脂材料を使用できる。成形板200A,200Bの間に電極間スペーサ300を配置した構成を以下では成形型と称することがある。
上述した成形型を備える電圧印加型圧縮成形機500などを用いて、以下の工程S31乃至S34を含む配向処理工程S30を行うことにより、フィルム成形体100におけるCNTを配向させて、本発明による異方性導電性フィルムを作製することが確実に可能となる。
<<加温工程>>
まず、電圧印加型圧縮成形機500内の膜厚方向に電圧印加可能な成形型内で、フィルム成形体100に対して加温工程S31を行い、当該フィルム成形体100が成形型内に設置された状態で、CNT含有複合体のガラス転移点Tまたは融点T以上の温度に加温して、フィルム成形体100を溶融状態にする。
<<電圧印加工程>>
次いで、フィルム成形体100の熱溶融状態を保持したまま、フィルム成形体100の膜厚方向に電圧印加を行う。こうして、フィルム成形体100におけるCNTが電気的に膜厚方向に配向することとなる。
<<冷却工程>>
そして、電圧印加工程S32に引き続き電圧印加を継続しつつ、成形型を冷却し、フィルム成形体100を固体化させる冷却工程S33を行う。電圧印加を継続しながらフィルム成形体100を冷却して固体化させるため、CNTの配向が維持される。こうして、フィルム成形体100は本発明に従う異方性導電性フィルムとなる。冷却にあたっては、得られたフィルムを空冷してもよいし、水冷しても構わない。
<<停止工程>>
最後に、電圧印加を停止する停止工程S34を行う。その後、異方性導電性フィルムを成形型内から取り出せばよい。取り出された異方性導電性フィルムの膜厚は、フィルム成形体の膜厚と同じか、配向処理前の2%以下程度で膜厚が減少し得る。
なお、前述したとおり、電圧印加型圧縮成形機500は、フィルム成形体100の膜厚によっては、成形体形成工程S20に適用してもよい。この場合、成形体形成工程S20に続けて直ちに配向処理工程S30を行うことが可能である。
また、成形体フィルム100を成形型内に設置するため、配向処理工程S30に先立ち、成形体形成工程S20により得られた成形型フィルムを切り出してもよい。もちろん、成形型の大きさが成形体フィルム100に比べて十分に大きければ、成形型フィルムの切り出しは不要である。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
<カーボンナノチューブ集合体、および、導電フィルムの評価法>
実施例及び比較例において、(1)カーボンナノチューブ集合体(CNT集合体)の平均粒子径、(2)CNT集合体の長径平均、(3)フィルム膜厚、(4)フィルムの単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗、(5)フィルムの面内方向の電気抵抗(シート抵抗)は、それぞれ以下の方法を使用して測定又は評価し、結果を表1に示した。
[(1)カーボンナノチューブ集合体の平均粒子径]
カーボンナノチューブ集合体(CNT集合体)の平均粒子径は、以下のように測定した。
蒸留水に、0.1%のCNTと、分散剤として0.1%のポリビニルピロリドン(PVP K−30:和光純薬製)とを添加し、常温で1時間以上、混合撹拌を実施した後、卓上型超音波洗浄機(ブランソニック Model 1800:ブランソン社製)で、10分間超音波処理し、測定用CNT集合体分散液を作製した。この測定用CNT集合体分散液を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックシリーズ MT3300:日機装社製)にて体積基準の平均粒子径:d50を求め、CNT集合体の平均粒子径とした。
[(2)カーボンナノチューブ集合体の長径平均]
使用するCNTを用いて、平均粒子径を求めるためと同様の測定用CNT集合体分散液を作製し、FE−SEM(JSM−6700F:日本電子株式会社製)を使用し、図5(倍率50倍),図6(倍率1000倍)に例示するように、50倍〜1000倍率でCNT集合体を観察する。1回あたり3箇所以上をサンプリングして、CNT集合体の長径を算出し、それを繰り返し、合計50か所のサンプルにて、CNT集合体の長径平均とした。
[(3)フィルム膜厚]
20mm×20mmの面積の導電フィルムの、中心1点と、4隅の4点を、マイクロメータ(293シリーズ、「MDH−25」:株式会社ミツトヨ製)を用いて測定し、その平均値をフィルム膜厚とした。フィルム膜厚は、配向処理前のフィルム成形体および配向処理後のフィルム成形体のそれぞれに対して行う。
[(4)フィルムの単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗]
10mm×10mm×1mmの金メッキを施した、銅製の平面電極を備えた導線ケーブルを作成し、その導線ケーブルを接続した電気抵抗計(RM3544−01:HIOKI製)を使用する。フィルム成形体を10mm×10mmの面積に成形したのち、平面電極間にフィルム成形体を挟み、電気抵抗を測定し、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm)とした。なお、電極同士の接触抵抗値は15mΩであった。また、RM3544−01による電気抵抗値の測定上限は3.5×10Ωである(したがって、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗の測定上限も3.5×10Ω/cmとなる)。
[(5)フィルム成形体の面内方向の電気抵抗(シート抵抗)]
20mm×20mmの面積のフィルム成形体を用意し、2.5mm間の360°高電気抵抗評価が可能な、UR−SSプローブを備えた、ハイレスターUX(三菱化学アナリテック製)にて10V印加で測定した表面抵抗を、フィルム成形体の両面にて測定し、その平均値を導電フィルムの面内方向のシート抵抗とした。なお、ハイレスターUXの10Vでの測定上限は1.0×1010Ω/□である。
(実施例1)
<カーボンナノチューブ>
SWCNTであるCNT(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONNANO(登録商標)SG101」、窒素吸着比表面積:1,000m/g以上)を用意した。このCNTを使用するに際し、CNT集合体としての平均粒径を測定した所、平均粒子径d50が320μmであった。また、CNT集合体の長径平均を、FE−SEMにて50倍率での観察にて測定したところ、長径平均は412μmであった。
<カーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体の作成>
このCNTを使用し、クロロホルム溶媒中に濃度が0.2%になるようにCNTを添加し、マグネチックスターラーで24時間撹拌し、予備分散を実施しし、CNT予備分散液を得た。
次いで、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部(ジェットミル)に連結して多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、断続的かつ瞬間的に60MPaの圧力をCNT予備分散液に負荷し、細管流路に送り込み分散処理を行い、CNT分散液を得た。
別途、クロロホルム溶媒中に、熱可塑性高分子としてのポリカーボネート(出光興産株式会社製、「タフロンA1900」:ガラス転移点T:149℃)の濃度が2%になるように添加し、ポリカーカーボネート溶液を作製した。
次に、固形分比率として、ポリカーボネート:99.9質量部に対しCNT:0.1質量部になるように、CNT分散液とポリカーボネート溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してクロロホルム溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、CNT濃度CCNTが0.1%であるCNT含有ポリカーボネート複合体(以下では「0.1%CNT含有ポリカーボネート複合体」と、濃度を用いて略記し、同様の意味でCNT濃度を省略表記する)を作製した。
<フィルム成形体の作製>
0.1%CNT含有ポリカーボネート複合体を、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名「Measuring Extruder Type Me−20/2800 V3」、Optical Control Systems社製)にて、厚み20μm、幅100mmのフィルムを1m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、押出しフィルム成形体を得た。フィルム成形機の運転条件を、以下に列挙する。
・バレル温度設定:260℃〜290℃
・ダイ温度:260℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られた押出しフィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が5.0×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
<フィルム成形体への電気配向処理>
押出しフィルム成形体の電気配向を、前述の図2〜4を用いて参照する電圧印加型成形圧縮機500を用いて、以下の方法で実施した。説明の便宜のため、図2〜図4の参照符号を援用する。まず、100mm×100mm×5mmの鏡面仕上げしたステンレス板(SUS316製)210の表面に金メッキを施し、金メッキ膜220を形成した。この金メッキステンレス板(210,220)の片面に、100mm×100mm×2mmのジルコニア板240を接着させ、当該片面を電気絶縁性にした構成の、成形用平面電極板200を2枚(200A,200B)準備した。そして、これら成形用平面板200A,200Bの金メッキ膜220A,220Bの側面部分に、導線ケーブル520A,520Bをハンダでそれぞれ接合し、電極230A,230Bを形成した。
次に、真空圧縮成形機(IMC−11FD型:井本製作所製)の成形室に、上記成形用平面板2枚(200A,200B)を、成形用平面板の金メッキステンレス部220A,220Bでフィルム成形体100を挟持し、ジルコニア板部240A,240Bにより、成形機からの加熱を受けるよう設置した。その際、真空圧縮成形機(IMC−11FD型:井本製作所製)において、通常は真空ポンプと連結するための空孔部から導線ケーブル520A,520Bを成形室外部に取り出し、窒素ガス導入部550から窒素を200ml/分の流量で1時間以上導入し続け、常温常圧下で成形室内を充分に窒素雰囲気にした。
電圧印加型圧縮成形機500内の成形板200A,200Bの間に、電極間スペーサ300として、中心部に40mm×40mm×20μmの空孔部を形成した、100mm×100mm×20μmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)(NITOFLON(登録商標)No.920UL,膜厚20μm:日東電工株式会社製)を設置し、成形用平面板200A,200B同士の絶縁を確保した(図3,4参照)。
得られた成形体フィルムを、30mm×30mm×20μmの大きさに形成し、PTFEフィルム中心部の空孔中心部に配置したあと、電圧印加型圧縮成形機500を使用し、成形体フィルム100の表面と、成形用平面板200A,200Bの金メッキステンレス部220A,220Bの表面が密着する程度に微加圧した状態を保持したまま、成形室内の温度を260℃まで昇温して、フィルム成形体を熱溶融状態にした。
次に、成形室外に取り出された導線ケーブルを、直流電源装置(タイプPK30−40:松定プレシジョン株式会社製)につなげ、30Vの電圧を成形用平面板200A,200Bに30分印加した。30分後、電圧を印加したまま、電圧印加型圧縮成形機500の加温を停止し、水冷して、成形室内の温度が40℃を下回るのを確認した後、電圧印加を停止し、電圧印加型圧縮成形機500の内部から、配向処理後のフィルムを取り出した。
配向処理後のフィルムの膜厚は19μmであり、かつ、配向処理前のフィルムの形状を保持していた。得られたフィルムの電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が7.2×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が1.2Ω/cmであり、異方導電性を示すことが確認できた。
(実施例2)
実施例1と同じCNTを使用し、固形分比率として、ポリカーボネート:99.0質量部に対しCNT:1.0質量部になるように、CNT分散液とポリカーボネート溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してクロロホルム溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、1.0%CNT含有ポリカーボネート複合体を作成した事以外は、実施例1と同様に実施して、配向処理した異方性導電フィルムを作製した。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が2.3×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が1.2×10Ω/cmであった。
配向処理した後の異方性導電フィルムの厚みは18μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。異方性導電フィルムの電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が3.3×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗の抵抗が0.8Ω/cmであった。
(実施例3)
実施例1と同じCNTを使用し、固形分比率として、ポリカーボネート:99.0質量部に対しCNT:1.0質量部になるように、CNT分散液とポリカーボネート溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してクロロホルム溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、1.0%CNT含有ポリカーボネート複合体を作成した。
30mm×30mm×1mmの空隙を備えた、外径100mm×100mm×1mmの圧縮成型用金型内に、作製した1.0%CNT含有ポリカーボネート複合体を充填し、電圧印加型圧縮成形機500にて、30mm×30mm×1mmの1.0%CNT含有ポリカーボネートフィルム成形体を得た。なお、圧縮成形条件は以下の通りである
・成形温度:280℃
・圧縮圧力:20MPa
・圧縮時間:10分
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が2.8×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
次に、導電フィルムの電気配向処理のため、電極間スペーサ300として、中心部に40mm×40mm×1.0mmの空孔部を形成した、100mm×100mm×1.0mmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)(NITOFLON(登録商標)No.900UL、膜厚1.0mm:日東電工株式会社製)を設置した事以外は、実施例1と同様に配向処理を実施し、配向処理を行って異方性導電フィルムを作製した。
配向処理した異方性導電フィルムの厚みは989μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。異方性導電フィルムの電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が10.3Ω/cmであった。
(実施例4)
実施例1と同じCNTを使用し、固形分比率として、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)(住友化学株式会社製「スミペックスLG(ガラス転移点Tg:100℃)」):99.9質量部に対し、CNT:0.1質量部になるように、CNT分散液とポリメタクリル酸メチル溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してクロロホルム溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、0.1%CNT含有ポリメタクリル酸メチル複合体を作製した。
30mm×30mm×1mmの空隙を備えた、外径100mm×100mm×1mmの圧縮成型用金型内に、作成した0.1%CNT含有ポリメタクリル酸メチル複合体を充填し、電圧印加型圧縮成形機500にて、30mm×30mm×1mmの0.1%CNT含有ポリメタクリル酸メチルフィルム成形体を得た。なお、圧縮成形条件は以下の通りである
・成形温度:260℃
・圧縮圧力:20MPa
・圧縮時間:10分
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が、7.7×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
次に、フィルム成形体を配向処理するため、実施例3と同様の方法で配向処理を実施し、配向処理した異方性導電フィルムを作製した。
配向処理した異方性導電フィルムの厚みは980μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗値が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗の抵抗が88.3Ω/cmであった。
(実施例5)
実施例1で用いたSWCNTを使用する代わりに、多層カーボンナノチューブ(以下、「MWCNT−1」)(JEIO.CO.,LTD製「JC142」)を使用した。CNT集合体としての平均粒径を測定した所、平均粒子径d50が280μmであった。また、CNT集合体の長径平均を、FE−SEMにて50倍率で観察し、長径平均を求めたたところ、長径平均は352μmであった。
<カーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体の作成>
MWCNT−1を使用し、シクロヘキサン溶媒中に濃度が0.2%になるようにCNTを添加し、マグネチックスターラーで24時間撹拌し、予備分散を実施した。
次いで、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部(ジェットミル)に連結して多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、断続的かつ瞬間的に60MPaの圧力を粗分散液に負荷し、細管流路に送り込み分散処理を行い、CNT分散液を得た。
別途、シクロヘキサン溶媒中に、ポリシクロオレフィン(PCO)(日本ゼオン株式会社製、「ゼオノア1420R」:ガラス転移点T:140℃)の濃度が2%になるように添加し、PCO溶液を作製した。
次に、固形分比率として、PCO:99.5質量部に対しCNT:0.5質量部になるように、CNT分散液とPCO溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してシクロヘキサン溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、0.5%CNT含有PCO複合体を作成した。
<フィルム成形体の作成>
0.5%CNT含有PCO複合体を、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名「Measuring Extruder Type Me−20/2800 V3」、Optical Control Systems社製)にて、厚み100μm、幅100mmのフィルムを1m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、押出しフィルム成形体を得た。フィルム成形機の運転条件を、以下に記す。
・バレル温度設定:260℃〜290℃
・ダイ温度:280℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られた押出しフィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が3.6×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が2.2×10Ω/cmであった。
<フィルム成形体の電気配向処理>
得られたフィルム成形体を、30mm×30mm×100μmの大きさに成形し、フィルム成形体の電気配向処理を行うため、成形板の中心部に、電極間スペーサ300として、中心部に40mm×40mm×100μmの空孔部を形成した、100mm×100mm×100μmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)(NITOFLON(登録商標)No.900UL膜厚膜厚100μm:日東電工株式会社製)を設置した。その他の条件は、実施例1と同様に配向処理を行い、配向処理した異方性導電フィルムを作製した。
配向処理した異方性導電フィルムの膜厚は98μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が1.1×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が1.5Ω/cmであった。
(実施例6)
MWCNT−1を使用し、メチルエチルケトン溶媒中に濃度が0.2%になるようにCNTを添加し、マグネチックスターラーで24時間撹拌し、予備分散を実施した。
次いで、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部(ジェットミル)に連結して多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、断続的かつ瞬間的に60MPaの圧力を粗分散液に負荷し、細管流路に送り込み分散処理を行い、CNT分散液を得た。
別途、メチルエチルケトン溶媒中に、フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、「G912」:ガラス転移点Tg:−15℃)の濃度が2%になるように添加し、PCO溶液を作製した。
固形分比率として、フッ素樹脂:99.5質量部に対しCNT:0.5質量部になるように、CNT分散液とフッ素樹脂溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してメチルエチルケトン溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、0.5%CNT含有フッ素樹脂複合体を作成した。
30mm×30mm×0.5mmの空隙を備えた、外径100mm×100mm×0.5mmの圧縮成型用金型内に、作製した0.5%CNT含有フッ素樹脂複合体を充填し、圧縮成形機にて、30mm×30mm×0.5mmの0.5%CNT含有フッ素樹脂導電フィルム成形体を得た。なお、圧縮成形条件は以下の通りである
・成形温度:150℃
・圧縮圧力:20MPa
・圧縮時間:10分
圧縮成形フィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が8.8×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が2.3×10Ω/cmであった。
次に、フィルム成形体を電気配向処理するため、電極間スペーサーとして、中心部に40mm×40mm×0.5mmの空孔部を形成した、100mm×100mm×0.5mmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)(NITOFLON(登録商標)No.900UL膜厚0.5mm:日東電工株式会社製)を設置し、真空圧縮成形機内の温度を150℃まで昇温して、フィルム成形体を熱溶融状態にした事以外は、実施例1と同様に配向処理を実施し、配向処理した異方性導電フィルムを作成した。
配向処理した異方性導電フィルムの膜厚は493μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が9.8×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.6Ω/cmであった。
(実施例7)
MWCNT−1を使用し、実施例5と同様の方法で0.2%CNT分散液を得た。CNT分散液中に、粉体状の低密度ポリエチレン(LDPE)(東京インキ株式会社製「パウダーレジンLDPE系1050」、融点Tm:105℃)を、LDPE:99.5質量部に対しCNT:0.5質量部になるように懸濁混合させ、CNT−LDPE混合懸濁液を作成した。懸濁混合液を、ロータリーエバポレータを使用してシクロヘキサン溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で90℃、24時間以上乾燥させ、0.5%CNT含有LDPE複合粉体を作成した。
LDPE複合粉体を、30mm×30mm×0.5mmの空隙を備えた、外径100mm×100mm×0.5mmの圧縮成型用金型内に充填し、圧縮成形機にて、30mm×30mm×0.5mmの0.5%CNT含有LDPEフィルム成形体を得た。なお、圧縮成形条件は以下の通りである
・成形温度:150℃
・圧縮圧力:20MPa
・圧縮時間:10分
圧縮成形フィルム成形体の電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が8.9×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が9.2×10Ω/cmであった。
フィルム成形体の電気配向処理は、実施例6と同様のに配向処理を実施し、配向処理した異方性導電フィルムを作製した。
配向処理した異方性導電フィルムの膜厚は499μmであり、配向処理前のフィルム成形体の形状を保持していた。電気抵抗値を測定したところ、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.6Ω/cmであった。
(実施例8)
<短尺化カーボンナノチューブの作成>
実施例1で使用したCNT(SWCNT)を短尺化して得られる短尺化単層カーボンナノチューブ(S−SWCNT)を、以下のとおりにして作製した。
蒸留水に、0.2%分量のSWCNTおよび、分散剤として0.02%分量のポリビニルピロリドン(PVP K−30:和光純薬製)を添加し、常温で1時間以上、混合撹拌しSWCNT分散水原料液を調整した後、撹拌混合機付原料タンクと循環輸送用ポンプとが連結された循環運転型ビーズミル(スターミルLMZ2:アシザワファインテック社製)を用い、SWCNTを短尺化した。
具体的には、まず、SWCNT分散水原料液を原料タンクに投入した後、撹拌混合機を作動させた。
最初に、ビーズミルの処理室内部に、目開き0.1mmの分級スクリーンを設置し、0.3mmΦのジルコニア製ビーズを充填率80体積%になるように導入した後、ポンプを使用し処理室にSWCNT分散水原料液を満たした。
その後、周速10m/sになるようにビーズ撹拌機を作動させ、ポンプを運転して循環式のビーズミルによる粉砕処理を実施した。
SWCNT分散水原料液の平均粉砕処理回数が5回になるまで粉砕処理運転を実施し、粉砕処理したSWCNT分散水原料液を採取した。
粉砕処理したSWCNT分散水原料液を、遠心分離機での固液分離と蒸留水での洗浄を10回繰り返し、分散剤としてのPVPを除去したSWCNTを、200℃真空乾燥機で24時間乾燥し、S−SWCNTを得た。
得られたS−SWCNTを使用するに際し、CNT集合体としての平均粒径を測定した所、d50は9μmであった。また、CNT集合体の長径平均を、FE−SEMにて1000倍率での観察にて測定したところ、長径平均は19μmであった。
S−SWCNTを使用した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルムを得た。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が9.8×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
また、配向処理後の異方性導電フィルムは、膜厚が20μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.2Ω/cmであった。
(実施例9)
実施例8で作成したS−SWCNTを使用する以外は、実施例2と同様にして、異方性導電フィルムを作製した。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.2×10Ω/cmであった。
また、配向処理後の異方性導電フィルムは、膜厚が20μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が0.9Ω/cmであった。
(実施例10)
実施例8で作製したS−SWCNTを使用する以外は、実施例5と同様にして、異方性導電フィルムを作製した。
配向処理前の導電フィルムの電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が4.9×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
また、配向処理後の異方性導電フィルムは、膜厚が100μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が5.6Ω/cmであった。
(実施例11)
実施例1で合成したSWCNTを使用する代わりに、多層カーボンナノチューブ(以下、「MWCNT−2」)(JEIO.CO.,LTD製「JC400」)を使用した以外は、実施例5と同様にして、異方性導電フィルムを作製した。
MWCNT−2において、CNT集合体としての平均粒径を測定した所、d50は4μmであった。また、CNT集合体の長径平均を、FE−SEMにて1000倍率での観察にて測定したところ、長径平均は10μmであった。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が4.7×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
また、配向処理後の異方性導電フィルムは、膜厚が99μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が8.8Ω/cmであった。
(比較例1)
実施例8で作成したS−SWCNTを使用する以外は、実施例3と同様にして、異方性導電性フィルムの作製を試みた。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が9.4×10Ω/□であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
また、配向処理後のフィルム成形体は、膜厚が980μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
(比較例2)
実施例8で作成したS−SWCNTを使用する以外は、実施例5と同様にして、異方性導電性フィルムの作製を試みた。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
配向処理後のフィルム成形体は、膜厚が99μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
(比較例3)
MWCNT−2を使用する以外は、実施例5と同様にして、異方性導電性フィルムの作製を試みた。
配向処理前のフィルム成形体の電気抵抗は、面内方向のシート抵抗が1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
配向処理後のフィルム成形体は、膜厚が99μmであり、電気抵抗は、面内方向のシート抵抗1.0×1010Ω/□以上(測定上限以上)であり、単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が3.5×10Ω/cm以上(測定上限以上)であった。
(比較例4)
実施例1と同じCNT(SWCNT)を用い、固形分比率として、ポリカーボネート:95.0質量部に対しCNT:5.0質量部になるように、CNT分散液とポリカーボネート溶液を混合したのち、混合液を、ロータリーエバポレータを使用してクロロホルム溶媒を除去・濃縮した後、真空乾燥機内で120℃、24時間以上乾燥させ、5.0%CNT含有ポリカーボネート複合体を作成し、導電フィルム材料に使用した以外は、実施例1と同様にして異方性導電性フィルムの作製を試みた。
フィルム成形体の作製に際し、熱溶融押し出し成形機のTダイにCNT詰まりが頻発し、円滑なフィルム成形体の作成が困難であった。また、採取したフィルムは脆く、成形体の機械物性が不十分であり、フィルム形状を維持するのも困難な状況であった。
以上の結果を、下記の表1,2に示す。
種々のCNT種および熱可塑性高分子種を用いた表1,2の結果から、異方性導電性フィルムが配向処理後に膜厚方向の導電性を示すためには、パラメータAの値が支配的であり、パラメータAが0.010以上30.0以下の範囲内を満たす必要があることが確認された。また、パラメータAが0.010以上0.500以下の範囲内であると、面内方向のシート抵抗が高いため、面内方向での絶縁性を確保しやすいことも確認できた。なお、比較例4の結果から、膜厚が大きすぎると、フィルム成形体の成形すら困難であることが確認された。
本発明によれば、カーボンナノチューブを含み、膜厚方向の電気抵抗が小さなカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法を提供することができる。
100 フィルム成形体
200 成形板
210 基材
220 金属メッキ膜
230 電極
240 絶縁支持基材
300 スペーサ
500 電圧印加型圧縮成形機
510 直流電源
550 ガス導入部

Claims (7)

  1. カーボンナノチューブおよび熱可塑性高分子を含むカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムであって、
    前記カーボンナノチューブおよび前記熱可塑性高分子の合計質量に対する前記カーボンナノチューブの質量パーセント濃度CCNTが0.1wt%以上1.0wt%以下であり、
    前記カーボンナノチューブからなる集合体の平均粒子径をd50(μm)、前記カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの膜厚をt(μm)として、下記式[1]:
    A=CCNT×d50/t ・・・[1]
    により定義されるパラメータAが0.010以上30.0以下の範囲内であり、
    単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗(Ω/cm)の値が、シート抵抗(Ω/□)の値よりも小さいことを特徴とする、カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  2. 前記単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗に対する前記シート抵抗の比が10以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  3. 前記単位面積当たりの膜厚方向の電気抵抗が、100Ω/cm以下である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  4. 前記カーボンナノチューブよりなる集合体の前記平均粒子径d50が1μm以上400μm以下の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  5. 前記膜厚tが10μm以上1mm以下の範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  6. 前記パラメータAが0.010以上0.500以下の範囲内であり、前記シート抵抗が10Ω/□以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの製造方法であって、
    前記カーボンナノチューブおよび前記熱可塑性高分子の複合体であるカーボンナノチューブ含有熱可塑性高分子複合体を成形してフィルム成形体を得る成形体形成工程と、
    前記フィルム成形体の前記カーボンナノチューブを電気的に配向させる配向処理工程と、を含み、
    前記配向処理工程は、
    前記フィルム成形体が膜厚方向に電圧印加可能な成形型内に設置された状態で、前記複合体のガラス転移点Tまたは融点T以上の温度に加温して、前記フィルム成形体を溶融状態にする加温工程と、
    前記フィルム成形体の熱溶融状態を保持したまま、前記フィルム成形体の前記膜厚方向に電圧印加する電圧印加工程と、
    前記電圧印加を継続しつつ、前記成形型を冷却し、前記フィルム成形体を固体化させる冷却工程と、
    前記電圧印加を停止する停止工程と、を含む、
    カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムの製造方法。
JP2017229379A 2017-11-29 2017-11-29 カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法 Pending JP2019102177A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017229379A JP2019102177A (ja) 2017-11-29 2017-11-29 カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017229379A JP2019102177A (ja) 2017-11-29 2017-11-29 カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019102177A true JP2019102177A (ja) 2019-06-24

Family

ID=66973911

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017229379A Pending JP2019102177A (ja) 2017-11-29 2017-11-29 カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019102177A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021031514A (ja) * 2019-08-16 2021-03-01 三菱商事株式会社 カーボンナノチューブ配合凝集物の製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021031514A (ja) * 2019-08-16 2021-03-01 三菱商事株式会社 カーボンナノチューブ配合凝集物の製造方法
CN114651033A (zh) * 2019-08-16 2022-06-21 三菱商事株式会社 碳纳米管配合凝集物的制造方法
TWI820344B (zh) * 2019-08-16 2023-11-01 日商日本瑞翁股份有限公司 摻合碳奈米管之凝集物之製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhang et al. Highly thermally conductive and electrically insulating polydimethylsiloxane composites prepared by ultrasonic-assisted forced infiltration for thermal management applications
JP4168341B2 (ja) グラファイトフレークとフルオロポリマーとをベースにしたミクロ複合粉末と、この粉末を用いて製造される物品
US10207929B2 (en) Carbon nanotube film and method for producing same
JP2014529352A (ja) ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維ポリマー複合組成物ならびに作製方法
Shi et al. 3D printed polylactic acid/graphene nanocomposites with tailored multifunctionality towards superior thermal management and high-efficient electromagnetic interference shielding
Wang et al. Functional inks for printable energy storage applications based on 2 D materials
CN113213458A (zh) 一种高性能低缺陷石墨烯散热膜的制备方法
He et al. A graphene oxide–polyvinylidene fluoride mixture as a precursor for fabricating thermally reduced graphene oxide–polyvinylidene fluoride composites
Zhao et al. Highly thermally conductive fluorinated graphene/aramid nanofiber films with superior mechanical properties and thermostability
Liu et al. Modified carbon nanotubes/polyvinyl alcohol composite electrothermal films
Almazrouei et al. Robust surface-engineered tape-cast and extrusion methods to fabricate electrically-conductive poly (vinylidene fluoride)/carbon nanotube filaments for corrosion-resistant 3D printing applications
Zha et al. Improved mechanical and electrical properties in electrospun polyimide/multiwalled carbon nanotubes nanofibrous composites
JP2019102177A (ja) カーボンナノチューブ含有異方性導電フィルムおよびその製造方法
KR101761752B1 (ko) 구리-카본계 복합물질 및 그 제조방법
WO2021070805A1 (ja) 板状の複合材料
KR101534298B1 (ko) 전자파 차폐필름용 조성물, 이를 이용한 전자파 차폐필름의 제조방법 및 이에 의하여 제조된 전자파 차폐필름
CN112938944A (zh) 石墨烯膜的制备方法
Yang et al. Two-step approach based on fused filament fabrication for high performance graphene/thermoplastic polyurethane composite with segregated structure
JP6775594B2 (ja) 放熱シート
CN112533867A (zh) 使用高表面积纳米管的改进型锂离子电池
JP6648423B2 (ja) 不織布およびその製造方法
JP7211414B2 (ja) 自立膜の製造方法
JP6455336B2 (ja) 熱伝導シートおよびその製造方法
KR101738505B1 (ko) 은-카본계 복합물질 및 그 제조방법
Luo et al. Manufacturing a soft actuator/sensor integrated structure via multi-material direct writing processes technology