JP2019099945A - 防蚊用布帛および繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛および繊維製品を提供する。【解決手段】防蚊用布帛であって、難燃性繊維を含み、布帛の厚さが1.0mm以上であり、目付けが300g/m2以下であり、かつISO15020 A法に規定される燃焼性測定において残炎時間が2.0秒以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛および繊維製品に関する。
屋外環境で過ごすことが求められる多くの職業では、蚊に刺されるリスクがある。蚊は西ナイルウイルス、マラリア、黄熱病、デング熱、脳炎、および他の疾患を媒介することが知られており、それを回避することが重要である。蚊を殺したり禁忌させたりする手段として、殺虫剤や虫除けスプレーがあるが、これらの効果には持続性が低いという問題があった。また、昆虫忌避分子を繊維に固着させる方法も提案(例えば、特許文献1)されているが、洗濯耐久性が低いという問題があった。
また、生地を多層にして虫の針が皮膚に届かない構造にする防虫服も提案(例えば、特許文献2〜5)されているが、生地の重量が重く生地がかさばるため、動作が身軽にできなくなり、動きに支障が生じる問題があった。
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛および繊維製品を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、難燃性繊維を用いて布帛構造を巧みに工夫することにより、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「防蚊用布帛であって、難燃性繊維を含み、布帛の厚さが1.0mm以上であり、目付けが300g/m2以下であり、かつISO15020 A法に規定される燃焼性測定において残炎時間が2.0秒以下であることを特徴とする防蚊用布帛。」が提供される。
その際、前記難燃性繊維が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ビニロン繊維、ポリベンゾキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、およびポリイミドアミド繊維からなる群のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。また、前記難燃性繊維が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維を含むことが好ましい。また、前記、メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維が着色していることが好ましい。また、防蚊用布帛が、さらに導電性繊維および/またはポリエステル繊維を含むことが好ましい。また、防蚊用布帛が、防虫剤を含有する繊維を含むことが好ましい。また、防蚊用布帛が、二重織組織を有する織物であることが好ましい。また、経糸および/または緯糸に、総繊度280dtex以上の太繊度糸が間欠的に配されており、かつ互いに隣り合う太繊度糸同士の間隔が3〜20mmの範囲内であることが好ましい。また、布帛に防虫剤が付与されていることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の防蚊用布帛を含む、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛および繊維製品が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の防蚊用布帛は、1.0mm以上(好ましくは1.5〜4.0mm)の厚さを有する。かかる厚さが1.0mm未満の場合、蚊の針が皮膚に届きやすくなり、防蚊性が低下し好ましくない。なお、厚さは、図1に示すように表面の最外端から裏面の最外端までの距離である。
また、布帛の目付けとしては300g/m2以下(好ましくは100〜300/m2)であることが肝要である。該目付けが300g/m2より大きいと軽量性が損なわれるおそれがあり好ましくない。また、通気性も低下するおそれがある。
また、本発明の防蚊用布帛において、かつISO15020 A法に規定される燃焼性測定において残炎時間が2.0秒以下(好ましくは0.001〜1.0秒)であることが肝要である。残炎時間が2.0秒を越えると、十分な難燃性が保たれず、火炎等を受けた際に着火するおそれがある。また、ISO15020 A法に規定される燃焼性測定において、残じん時間が2.0秒以下(より好ましくは0.001〜1.0秒)であると、さらに好ましい。
かかる難燃性を得る上で、難燃性繊維が布帛に含まれることが肝要である。難燃加工を施すことにより布帛に含まれる繊維に難燃性を付加してもよい。
ここで、難燃性素材としては、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ビニロン繊維、ポリベンゾキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、およびポリイミドアミド繊維などが例示され、特に限定されるものではない。また、難燃加工を施す場合は、素材は特に限定されない。
特に、布帛がメタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維を少なくとも含むことがより好ましい。また、優れた難燃性を得る上で、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛に、布帛重量対比30重量%以上(より好ましくは50〜99重量%)含まれることが好ましい。
さらには、布帛がメタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維のみで構成されることが好ましい。特に、布帛がメタ型全芳香族ポリアミド繊維とパラ型全芳香族ポリアミド繊維とを混紡させた紡績糸のみからなることが好ましい。
ここで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その繰返し単位の85モル%以上がm−フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であってもさしつかえない。
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN−メチル−2−ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3〜1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上(より好ましくは3.0〜7.0モル%)であることが好ましい。
また、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ−m−フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられ、そのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等の目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させることも可能である。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
また、第3成分として共重合させることも可能である。式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
H2N−Ar2−NH2 ・・・式(2)
H2N−Ar2−Y−Ar2−NH2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子または官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
H2N−Ar2−Y−Ar2−NH2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子または官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても目的とする色に調整し易いという点で、5〜35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で、15〜25%であることがより好ましい。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点および染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点で、0.1重量%以下であることが好ましい。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができる。以下の方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定する必要はなく、例えば特公昭35−14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47−10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
紡糸溶液としては、とくに限定されないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いてもよいし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が、ポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下(より好ましくは0.1重量%以下)であることが好ましい。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が好ましい。
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まないアミド系溶媒(好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液)を、浴液の温度10〜50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満では、スキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60質量%を越える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が好ましい。
引続き、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45〜60質量%の水溶液であり、浴液の温度を10〜50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3〜4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10〜30℃のNMPの濃度が20〜40質量%の水溶液、続いて50〜70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
洗浄後の繊維は、温度270〜290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、繊維は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25〜200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1〜5dtexの範囲が好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の市販品としては、コーネックス(商品名)、コーネックスネオ(商品名)、ノーメックス(商品名)などが例示される。
また、パラ型全芳香族ポリアミド繊維としては、テクノーラ(商品名)、ケブラー(商品名)およびトワロン(商品名)に代表されるものであり、主鎖中に芳香族環を有するポリアミドからなる繊維であり、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)でもよいし共重合タイプのコポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレンテレフタルアミド(PPODPA)であってもよい。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維が着色していることが好ましい。また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維が染色可能であることが好ましい。染色可能とすることにより無色の生地を用意しておき、用途や要望により染色して出荷することが可能となる。また、染色することにより、繊維製品としたときに他の部分の布帛と色を合わせることが可能となる。
本発明の防蚊性布帛において、ポリエステル繊維を布帛重量に対して30重量%以下含んでいてもよい。ポリエステル繊維を30重量%より多く含むと十分な難燃性が保たれないおそれがある。
さらには、本発明の防蚊性布帛において、導電性繊維が含まれていてもよい。かかる導電性繊維としては、導電体として、カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性ウィスカー、およびカーボンナノチューブの少なくとも一つを含む繊維が好ましい。
導電性繊維の形態は、繊維全体が導電部からなる構造でもよいし、非導電部と導電部が芯鞘、サンドイッチ、偏芯などの断面形状を有していてもよい。導電部、非導電部を形成する樹脂は、繊維形成性を有していれば、特段限定されるものではない。具体的には、ナイロン樹脂では、6 ナイロン、1 1 ナイロン、1 2 ナイロン、6 6 ナイロンなどが挙げられる。また、ポリエステル樹脂では、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートおよびこれらの共重合体や酸成分(テレフタル酸)の一部をイソフタル酸で置き換えたもの、アクリル樹脂などが挙げられる。
例えば、ポリエステル系制電性繊維(導電糸)としてはKBセーレン社製Beltron 33T/6−BR1(商品名)、ナイロン系制電性繊維(導電糸)としてはKBセーレン社製Beltron 22T/3−9R1(商品名)、金属導電糸としてはステンレス繊維(例えば株式会社ケンエー製)、制電性アクリル繊維(アクリル系導電糸)としては、三菱レイヨン社製コアブリッドB(商品名)など例示される。なかでも、メタ型全芳香族ポリアミド繊維と混紡する場合、ポリエステル系、ナイロン系、金属系の制電性繊維(導電糸)では、色斑が発生し、外観品位が低下するおそれがあるので、制電性アクリル繊維(アクリル系導電糸)が好ましい。特に、芯鞘型複合繊維であり、芯部に黒色発熱粒子が含まれる制電性アクリル繊維(市販品では、三菱レイヨン社製コアブリッドB(商品名))が特に好ましい。
本発明の防蚊性布帛において、布帛構造としては、厚さと軽量性とを両立させる上で、二重織組織を有する織物が好ましい。
その際、経糸および/または緯糸に、総繊度280dtex以上(より好ましくは280〜20000dtex)の太繊度糸が間欠的に配されており、かつ互いに隣り合う太繊度糸同士の間隔(D)が3〜20mmの範囲内であることが好ましい。該間隔(D)が3mm未満であると、軽量性や通気性が低下し、快適性が劣るおそれがある。逆に該間隔(D)が20mmより大きいと、表面がたわむため布帛と肌との空間が小さくなり十分な防虫性が得られないおそれがある。
なお、前記太繊度糸は経糸と緯糸の両方に配されていてもよいが、製織性の点で、経糸と緯糸のうちどちらか一方(好ましくは緯糸)に配されていることが好ましい。また、前記太繊度糸が裏面(肌側面)に配されていることが好ましい。
本発明の防蚊性布帛は、前記のような難燃性繊維を用いて、公知の製編織機を使用して製編織することができる。
また、布帛に染色加工を施すことは好ましいことである。さらには、難燃剤、吸水剤、撥水剤、蓄熱剤、紫外線遮蔽剤、制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、防蚊剤、蓄光剤、再帰反射剤等を付与する他の各種加工を付加適用してもよい。
本発明の防蚊性布帛は前記の構成を有するので、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する。さらには通気性をも有する。
本発明の繊維製品は、前記の防蚊性布帛を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、難燃ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。
かかる繊維製品は、前記の布帛を用いているので、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する。さらには通気性をも有する。
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)厚さ
JIS L 1096に規定される方法で測定した。
(2)防蚊性
二重組織織物を用いて腕カバーを作製した。そして、この腕カバーを装着した腕をヒトスジシマカ25匹を放ったケージ内に挿入し、10分経過後、刺咬したヒトスジシマカの数を計数した。
(3)燃焼性
ISO 15020 A法に規定される燃焼性測定を行った。
(4)目付け
JIS L 1096に規定される方法で測定した。
(1)厚さ
JIS L 1096に規定される方法で測定した。
(2)防蚊性
二重組織織物を用いて腕カバーを作製した。そして、この腕カバーを装着した腕をヒトスジシマカ25匹を放ったケージ内に挿入し、10分経過後、刺咬したヒトスジシマカの数を計数した。
(3)燃焼性
ISO 15020 A法に規定される燃焼性測定を行った。
(4)目付け
JIS L 1096に規定される方法で測定した。
[実施例1]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸40番手/双糸を表面の経糸、緯糸とし、メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸8000dtexを裏面の緯糸とし、表面は織密度 経90本/25.4mm、緯71本/25.4mm、裏面は緯糸を10mm間隔で図3に示す織物組織により製織した。常法の加工条件で毛焼、精錬を実施した後、熱セットを実施し、目付け200g/m2(密度 経88本/25.4mm、緯69本/25.4mm)の二重組織織物を得た。得られた二重組織織物において、厚さが2.1mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は残炎時間が0.1秒、残じん時間が0.3秒であり、難燃性を有するものであった。10分後に蚊に刺された数は1匹であり、防蚊性に大変優れるものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸40番手/双糸を表面の経糸、緯糸とし、メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸8000dtexを裏面の緯糸とし、表面は織密度 経90本/25.4mm、緯71本/25.4mm、裏面は緯糸を10mm間隔で図3に示す織物組織により製織した。常法の加工条件で毛焼、精錬を実施した後、熱セットを実施し、目付け200g/m2(密度 経88本/25.4mm、緯69本/25.4mm)の二重組織織物を得た。得られた二重組織織物において、厚さが2.1mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は残炎時間が0.1秒、残じん時間が0.3秒であり、難燃性を有するものであった。10分後に蚊に刺された数は1匹であり、防蚊性に大変優れるものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
[比較例1]
実施例1において、表面の紡績糸をポリエステル繊維のみからなる紡績糸40番手/双糸に替えること以外は実施例1と同様に行った。得られた二重組織織物は、厚さが2.1mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は全焼であり、難燃性がないものであった。10分後に蚊に刺された数は2匹であり、防蚊性に優れるものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
実施例1において、表面の紡績糸をポリエステル繊維のみからなる紡績糸40番手/双糸に替えること以外は実施例1と同様に行った。得られた二重組織織物は、厚さが2.1mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は全焼であり、難燃性がないものであった。10分後に蚊に刺された数は2匹であり、防蚊性に優れるものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
[比較例2]
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸40番手/双糸を表面の経糸、緯糸とし、メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸250dtexを裏面の緯糸とし、表面は織密度 経90本/25.4mm、緯71本/25.4mmで平織物を製織、裏面は緯糸を10mm間隔で製織した。常法の加工条件で毛焼、精錬を実施した後、熱セットを実施し、目付け190g/m2(密度 経88本/25.4mm、緯緯69本/25.4mm)の二重組織織物を得た。得られた二重織物は、厚さが0.9mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は残炎時間が0.2秒、残じん時間が0.3秒であり、難燃性を有するものであった。10分後に蚊に刺された数は12匹であり、防蚊に劣るものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸40番手/双糸を表面の経糸、緯糸とし、メタ型全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(商品名)MA)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(トワロン(商品名)PA)、導電性ナイロン繊維(NY)の各ステープルファイバー(いずれも繊維長は51mm)からなるMA/PA/NY=93/5/2の質量比率で混紡した紡績糸250dtexを裏面の緯糸とし、表面は織密度 経90本/25.4mm、緯71本/25.4mmで平織物を製織、裏面は緯糸を10mm間隔で製織した。常法の加工条件で毛焼、精錬を実施した後、熱セットを実施し、目付け190g/m2(密度 経88本/25.4mm、緯緯69本/25.4mm)の二重組織織物を得た。得られた二重織物は、厚さが0.9mmであった。ISO 15020 A法に規定される燃焼性は残炎時間が0.2秒、残じん時間が0.3秒であり、難燃性を有するものであった。10分後に蚊に刺された数は12匹であり、防蚊に劣るものであった。また、軽量性と通気性に優れ、試験者が該繊維製品を着用したところ快適に過ごすことができた。
本発明によれば、防蚊性だけでなく難燃性および軽量性をも有する防蚊用布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
Claims (10)
- 防蚊用布帛であって、難燃性繊維を含み、布帛の厚さが1.0mm以上であり、目付けが300g/m2以下であり、かつISO15020 A法に規定される燃焼性測定において残炎時間が2.0秒以下であることを特徴とする防蚊用布帛。
- 前記難燃性繊維が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ビニロン繊維、ポリベンゾキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、およびポリイミドアミド繊維からなる群のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の防蚊用布帛。
- 前記難燃性繊維が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維を含む、請求項1または請求項2に記載の防蚊用布帛。
- 前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維および/またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維が着色している、請求項1〜3のいずれかに記載の防蚊用布帛。
- 防蚊用布帛が、さらに導電性繊維および/またはポリエステル繊維を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の防蚊用布帛。
- 防蚊用布帛が、防虫剤を含有する繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の防蚊用布帛。
- 防蚊用布帛が、二重織組織を有する織物である、請求項1〜6のいずれかに記載の防蚊用布帛。
- 経糸および/または緯糸に、総繊度280dtex以上の太繊度糸が間欠的に配されており、かつ互いに隣り合う太繊度糸同士の間隔が3〜20mmの範囲内である、請求項7に記載の防蚊用布帛。
- 布帛に防虫剤が付与されている、請求項1〜8のいずれかに記載の防蚊用布帛。
- 請求項1〜9のいずれかに記載された防蚊用布帛を含む、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
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JP2017232497A JP2019099945A (ja) | 2017-12-04 | 2017-12-04 | 防蚊用布帛および繊維製品 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114921965A (zh) * | 2022-06-13 | 2022-08-19 | 温多利遮阳材料(德州)股份有限公司 | 一种防蚊涂料,含其防蚊遮阳面料及其制备方法和应用 |
-
2017
- 2017-12-04 JP JP2017232497A patent/JP2019099945A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114921965A (zh) * | 2022-06-13 | 2022-08-19 | 温多利遮阳材料(德州)股份有限公司 | 一种防蚊涂料,含其防蚊遮阳面料及其制备方法和应用 |
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