JP2019098314A - 揮発性有機化合物の処理方法及び処理装置 - Google Patents

揮発性有機化合物の処理方法及び処理装置 Download PDF

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一弘 永井
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Abstract

【課題】低ランニングコストであると共に、安全性が高く処理効率の高い揮発性有機化合物処理装置を提供する。【解決手段】アンモニア分解触媒発熱体2と揮発性有機化合物の酸化分解温度を低下させる触媒体3を備え、難燃性ガスであるアンモニアガスもしくはアンモニアと空気の混合ガスを燃料とし、当該燃料を発熱体2により分解し、分解時に発生する高温水素ガス及び高温窒素ガスを熱源として揮発性有機化合物を加熱し、加熱した揮発性有機化合物を触媒体3に導入して触媒3を触媒分解作用温度領域に加温すると共に当該揮発性有機化合物の分解処理を行う。【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
本発明は、揮発性有機化合物処理装置に関するものであり、特に、工場や事業所から排出されるガス中の揮発性有機化合物(以下、単に「VOC」と称する)を分解し、処理済みのガスを大気中に放出するために使用される揮発性有機化合物処理装置に関するものである。
VOCは、浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの原因物質の一つであり、一定規模以上の工場や事業所はVOCの排出規制の対象となると共に、規制対象外の中小規模事業所に対しても自主的にVOCの排出を抑制することが求められている。そこで、中小規模の事業所のVOC排出の抑制に対する自主的な取り組みを進めるために、中小規模の事業所でも導入し易い、低ランニングコストの揮発性有機化合物処理装置(以下、単に「VOC処理装置」と称する)が望まれている。
従来のVOC処理装置は、吸着法、薬液吸収法、生物分解法、プラズマ分解法、燃焼酸化法(直接燃焼式、蓄熱燃焼式、触媒燃焼式)を用いた装置に大別される。そのうち、燃焼酸化法では、加熱の手段としてバーナーを使用した装置(例えば、特許文献1参照)や、電気ヒーターを使用した装置(例えば、特許文献2参照)が一般的である。
特開平11−221430号公報 特開2005−279570号公報
しかしながら、吸着材や薬液の交換が必要でランニングコストがかかる吸着法や薬液吸収法、生物の維持管理に手間や経費がかかる生物分解法、装置が大型でコスト高のプラズマ分解法を用いた装置は、中小規模の事業所には不向きであった。また、加熱する手段として従来の化石燃料式バーナーを用いる装置では、可燃性のVOCに引火するおそれと化石燃料の使用に起因するCO2排出量の増加という問題があった。さらに、電気ヒーターを用いる装置では、熱効率が悪く加熱に時間がかかるという問題があった。加えて、セラミックスヒーターを用いる装置では、一定以上の広い空間を加熱するには大型装置が必要であるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、低ランニングコストであると共に、安全性が高く処理効率の高いVOC処理装置の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかるVOC処理装置は、「VOC含有ガスを導入する空間において、当該空間内にアンモニアを触媒分解することにより生じる分解熱によりVOC含有ガスを加熱するアンモニア分解装置を配置してなる加熱部と、
アンモニア分解装置の下流側で前記加熱部により加熱されたVOC含有ガスを導入する空間において、VOCの酸化分解温度を低下させる触媒体(以下、「VOC分解触媒体」と称する)を備え、前記VOC含有ガスに含まれるVOCを酸化分解させる揮発性有機化合物分解部(以下、単に「VOC分解部」と称する)と、
VOC分解部にて分解処理された高温排ガスを利用してVOC含有ガスを加温するための熱交換器を具備する」ものである。
「アンモニア分解装置」は、アンモニアガス導入管と、水素透過金属で形成された触媒管にアンモニア分解触媒を担持したセラミックスの多孔質体と構造材を充填した水素分離管と、水素分離管の周りに水素分離管から透過した水素ガスを排出するための水素ガス排出管と、発生した水素ガスを当VOC処理装置外へ排出するための水素ガス排出管連結部を備え、水素ガス排出管の隣に隔壁で隔ててアンモニア分解後水素分離管内に残留している窒素ガスを「VOC分解部」へ送るための窒素ガス排出管を備え、及び窒素ガス排出管の外壁に於いて未処理VOC含有ガス流路側に熱伝導性の高い材質からなる放熱板を具備する。
「アンモニア分解触媒」としては、Fe、Co、Ni、Mo、Ru等の遷移金属系、La、Ce、Ndの希土類系を用いることができる。遷移金属系は金属単体、合金、窒化物、炭化物、酸化物、複合酸化物として用いることができ、希土類系は酸化物として用いることができ、遷移金属系および希土類系とも、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の高比表面積の担体に担持して用いることができる。
前記の「水素透過金属管」は、Pd及びその合金、V、Zr−Ni合金等の水素透過金属・合金のいずれかからなる。
前記の「放熱板」は、銅や金属板にダイヤモンドコーティングした材料など熱伝導性の高い材料からなる。
前記「VOC分解触媒体」の構成としては、ガスが流通可能な多孔質体にVOCの酸化分解温度を低下させる触媒を担持させた構成、触媒自体に設けた連続気孔や貫通孔にガスを流通させる構成、ガスを流通させる管状や筒状のガス流通路の内部にガスが流通可能な空隙を残しつつ触媒が充填された構成を例示することができる。
前記「VOCの酸化分解温度を低下させる触媒」としては、白金、パラジウム、ロジウム、金、イリジウム、ルテニウム等の貴金属触媒や、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化タンタル等の金属酸化物触媒を使用することができる。或いは、複数の金属触媒、複数の金属酸化物触媒、または金属触媒と金属酸化物触媒を組み合わせた複合触媒を使用することもできる。なお、VOCの酸化分解温度は650〜800℃であるが、上記の触媒の作用により200〜400℃で酸化分解させることができる。
「揮発性有機化合物(VOC)」は、大気中に排出され又は飛散した時に気体である有機化合物であって、浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除いたものであり、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、エチルベンゼン、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。特に、トルエンやキシレンは、印刷や塗装関係の工場や事業所で溶剤として多用されており、排出量が多い。
以上、上記構成により、本発明に係る揮発性有機化合物分解装置は、アンモニアを触媒分解するアンモニア分解装置を配置した加熱部と、VOC分解触媒体を配置したVOC分解部とを備え、アンモニア分解装置にて触媒分解時に発生する分解熱を用いて未処理VOC含有ガスを加熱し、当該加熱された未処理VOC含有ガスによりVOC分解触媒を加熱し、当該加熱されたVOC分解触媒に未処理VOC含有ガスを接触させることで分解処理を行うこと、及びアンモニア分解により水素ガスの製造を行うことを特徴とするものである。
本発明に係るVOC処理装置において、「アンモニア分解装置」を備える加熱部は、例えばアンモニア分解触媒としてRuO/γ−Al触媒(酸化アルミニウム担持酸化ルテニウム触媒)を用いた場合、アンモニアの吸着熱を利用して触媒層を内部から急速に加熱し、温度が300〜500℃となる。この反応は発熱反応であるため、一旦反応が始まると触媒層の温度は高温に保たれ、室温でアンモニアを供給し続ける限り当該高温状態が維持される。そのため、アンモニアの分解により生じた窒素ガスは約300〜500℃の温度範囲にあり、未処理VOC含有ガスを当該高温窒素ガスが流れる窒素ガス排出管に接触させて間接的に、またはアンモニアの分解により生じた高温窒素ガスと混合することにより直接的に、当該未処理VOC含有ガスを加熱することができる。
前記アンモニア分解により生じた水素ガスも約300〜500℃の温度範囲にあり、未処理VOC含有ガスを当該高温水素ガスが流れる水素ガス排出管に接触させて間接的に加熱することができる。なお、当該水素ガスは水素ガス燃料や化成品製造原料として利用することができる。
前記加熱部で加熱された当該未処理VOC含有ガスは、その下流側に設けられたVOC分解部に流入し、VOC分解触媒を酸化分解温度範囲(200〜400℃)内に昇温させることができる。当該加熱されたVOC分解触媒に未処理VOC含有ガスを接触させ当該触媒表面上で分解反応を生じさせることにより、当該VOC含有ガスを分解させることができる。
本発明にかかるVOC処理装置は、前記アンモニア分解装置は加熱部のサイズに合わせて決められた個数が設けられ、加熱部のガス流通下流側(出口側)において未処理VOC含有ガスの温度が場所に依存せずほぼ300〜500℃の間で均一温度となるように任意に配置するものとする。
また、本発明では、バーナーを使用する従来装置のようにVOCに引火するおそれがないため、安全性の高い装置となっている。更に、吸着法や、薬液吸収法を用いた従来装置のように定期的に交換すべき部材がなく、生物分解法を用いた従来装置のように生物の維持管理の必要もないため、ランニングコストが低廉で、取り扱いの容易な装置となる。加えて、アンモニア分解装置とVOC分解触媒体とを主な構成とする極めて簡易な構成であるため、未処理VOC含有ガスの流量に応じたVOC処理装置の設計を容易に行うことが可能となる。
以上のように、本発明の効果として、低ランニングコストであると共に、安全性と処理効率が高く、VOC分解処理と同時に水素ガスの製造も行うことができるVOC処理装置を提供することができる。
本実施形態のVOC処理装置の概略構成を示す構成図である。 図1のVOC処理装置の主要部におけるX−X線断面図である アンモニア分解装置の構成図である。 図1のVOC処理装置の主要部の未処理VOC含有ガス導入口側から見た断面図である。 アンモニア分解装置の別形態の図である。 図1のVOC処理装置の主要部の処理済みVOCガス排気口側から見た断面図である。 図4におけるS−S線断面図である。 混合空間を設けた場合のVOC処理装置の概略図である。 混合空間に生成水素ガスの導管を延長配置した場合のVOC処理装置の概略図である。 混合空間にガス流路分散部材を設けた場合のVOC処理装置の概略図である。
以下、本発明の最良の一実施形態であるVOC処理装置について、図1乃至図10に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のVOC処理装置の概略構成を示す構成図であり、図2は図1のVOC処理装置の主要部におけるX−X線断面図であり、図3はアンモニア分解装置の構成図であり、図4は図1のVOC処理装置の主要部の未処理VOC含有ガス導入口側から見た断面図であり、図5はアンモニア分解装置の別形態の図であり、図6は図1のVOC処理装置の主要部の処理済みVOCガス排気口側から見た断面図であり、図7は図4におけるS−S線断面図であり、図8は混合空間を設けた場合の装置構成図であり、図9は混合空間に生成水素ガスの導管を延長配置した場合のVOC処理装置の概略図であり、図10は混合空間にガス流路分散部材を設けた場合のVOC処理装置の概略図である。
本実施形態のVOC処理装置1は、図1に示す通り、断熱筐体100内に加熱部2及びVOC分解部3を配し、未処理VOC含有ガスを加熱部2に導くための吸引ファン18及び未処理VOC含有ガス導入路8を備え、未処理VOC含有ガス中に存在する微粒子等を除去するために加熱部2の前段に除塵装置10を備え、加熱部2内へアンモニアガスを供給するためのアンモニアガス導入管92及び加熱部2にてアンモニア分解で生じた水素ガスを排出するための水素ガス排出路93を備え、VOC分解部3にて分解処理された高温VOC排ガスを用いて加熱部2導入前の未処理VOC含有ガスを加熱するための熱交換器4を具備している。なお、詳細な図示は省略しているが、熱交換器4は未処理VOC含有ガス導入路8に処理済みガス排出路9を巻回させた構成となっている。
ここで、図2に示すように、加熱部2おいてはアンモニア分解装置20が配置され、VOC分解部3においてはVOC分解触媒体30及び断熱材38が配置される。
本実施形態のアンモニア分解装置20は、図3(a)に示すように,外部からアンモニアガスをアンモニア分解装置20に導入する導入管92から分岐されたアンモニアガス導入管921と、水素透過金属で形成された触媒管にアンモニア分解触媒であるRuO/γ−Al触媒(酸化アルミニウム担持酸化ルテニウム触媒)21と構造材(図省略)を充填した水素分離管22と、水素分離管22から透過した水素ガスを排出するための水素ガス排出管23と、アンモニア分解装置20から発生した水素ガスを集め外部へ排出するための水素ガス排出路93に連結する水素ガス排出路連結部24を備え、アンモニア分解後水素分離管22内に残留している窒素ガスを集め下流側VOC分解部3へ送るために水素ガス排出管23の隣に隔壁で隔てた窒素ガス排出管25を具備する。また、当該アンモニア分解装置20は、図3(b)、(c)に示すように、水素ガス排出管23と窒素ガス排出管25の外側に放熱板26、27を設けることもできる。
アンモニア分解装置20に導入されたアンモニアガスは、図3(d)、(e)に示すようにアンモニアガス導入管92から分岐したアンモニア分解装置内アンモニアガス導入管921を通じて水素分離管22内に導入され、水素分離管22内に充填されている前記RuO/γ−Al触媒にて300〜500℃に加熱され、さらに触媒作用により水素ガスと窒素ガスに分解された後、分解生成された高温水素ガスは水素分離管22から水素透過金属を透過して水素ガス排出管23に移動し、その後水素ガスは集められ水素ガス排出管連結部24へ排出され、さらにVOC処理装置1外へ排出される。
前記アンモニア分解装置20において触媒分解により生じた高温窒素ガスは、図3(d)、(e)に示すように水素分離管22内を通過し、図2及び図3(a)に示すように窒素ガス排出管25を経由してVOC分解部3に向けて放出される。
前記のRuO/γ−Al触媒はアンモニア分解触媒の一例であり、この他に前記Fe、Co、Ni、Mo、Ru等の遷移金属系の金属単体、合金、窒化物、炭化物、酸化物、複合酸化物及びLa、Ce、Nd等の希土類系の金属単体、酸化物を用いることができる。また、前記の水素透過金属は、Pd及びその合金、V、Zr−Ni合金等の水素透過金属のいずれかを用いることができる。
アンモニア分解装置20は、装置構成として、図3(a)〜(e)に示す装置を複数連結させて一つの装置とすることができる。例えば、当該装置を3個縦連結した装置の構成例を図3(f)、(g)に示す。また、加熱部2に当該装置を3個縦連結した装置を配置した場合において、VOC処理装置1に係る図1の未処理VOC含有ガス導入口側から見た加熱部2の断面図を図4に示す。図3(f)のアンモニア分解装置20の図は窒素ガス排出側から見た図であり、図4のアンモニア分解装置20の図は窒素ガス排出側とは反対の未処理VOC含有ガス導入口側から見た図である。なお、アンモニア分解装置20は、図4に示すように平らな耐熱性架台の上配置される。
図3(a)に示す装置を3個縦連結したアンモニア分解装置20においても、前記の通り、分解生成された水素ガスは水素分離管22から水素透過金属を透過して水素ガス排出管23に移動し、その後水素ガスは集められ水素ガス排出管連結部24へ排出され、さらに水素ガス排出管連結部24と接続している水素ガス排出路93を経由してVOC処理装置1外へ排出される(図3(g))。
未処理VOC含有ガス導入路8から加熱部2に導入された未処理VOC含有ガスは、アンモニア分解装置20の水素ガス排出管23及び窒素ガス排出管25と接触することでこれらガス排出管内を流通する高温水素ガス及び高温窒素ガスと隔壁を通じて間接的に熱移動が生じ、加熱される。
なお、図3(b)、(c)に示すように、前記図3(a)における水素ガス排出管23と窒素ガス排出管25の外側に熱伝導性の高い材料で形成された放熱板26、27により放熱面積を増加させることで、熱交換効率を改善することができる。ここで、放熱板に使用される熱伝導性の高い材料としては、銅や金属板にダイヤモンドコーティングした材料などが好ましい。また、放熱板の形状は、図3(b)に示した形状とは異なる形状でもよい。
さらに、アンモニア分解装置20は、図5(a)のように窒素ガス排出管25を図3(a)に示す左右の水素ガス排出管23のそれぞれの隣に隔壁で隔てて設けても良く、また、図3(f)に倣い図5(a)に示すアンモニア分解装置を複数連結した装置構成であっても良い。例えば、3個縦連結した装置の図を図5(b)に示す。
なお、アンモニア分解装置20における水素ガス排出路及び窒素ガス排出管の形状や構成は、未処理VOC含有ガスを適切に加熱する上で、未処理VOC含有ガスの種類やVOC分解触媒の最適活性温度などを考慮して図3及び図4以外の形状や構成であっても良い。
加熱部2におけるアンモニア分解装置20の配置の仕方は任意であるが、図2に示すように、アンモニア分解装置20内アンモニアガス導入管921のアンモニアガス流通方向とVOC含有ガスの流通方向(加熱部2からVOC分解部3へ向かう方向)とが平行になるように配置することが好ましい。
なお、加熱部2におけるアンモニア分解装置20の配置の仕方が、前記の通りアンモニア分解装置20内アンモニアガス導入管921のアンモニアガス流通方向とVOC含有ガスの流通方向(加熱部2からVOC分解部3へ向かう方向)とが平行になるように配置する場合は、図示しないが、未処理VOC含有ガス導入路を設け、当該導入路をアンモニア分解装置20の窒素ガス排出管25に直結して、高温窒素ガスに未処理VOC含有ガスを混入し、高温窒素ガスから未処理VOC含有ガスに直接熱移動させることで未処理VOC含有ガスを加熱しても良い。
以上より、未処理VOC含有ガスは、加熱部2にて加熱され、アンモニア分解装置20で生じた窒素ガスとともにVOC分解部3へと移動する。
VOC分解部3では、主に図6に示すように、VOC分解触媒体30がケーシング39の内部に収納されており、ガスを流通させる空間(図省略)を除きVOC分解触媒体30の外表面が断熱材38で全体的に被覆されている。本実施形態のVOC分解触媒体30は、多孔質のコージェライトセラミックスのハニカム構造体に白金触媒が担持され形成されている。なお、前記の触媒は一例であり、触媒担体は耐熱温度500℃の多孔質セラミックスであればコージェライト以外のセラミックスでもよく、またVOC分解触媒も前記白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等の貴金属触媒や酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化タンタル等の金属酸化物触媒でもよい。
VOC分解部3におけるVOC分解触媒体30の配置の仕方も任意であるが、VOC分解触媒体30における多孔質体の貫通孔の方向が未処理VOC含有ガスの流れ方向と平行になるように配置されることが好ましい。
次に、本実施形態のVOC処理装置1におけるガスの処理について説明する。
加熱部2において、アンモニア分解触媒21を高温不活性ガス雰囲気下で加熱処理することで触媒表面に酸点を発現させる。その後、アンモニアガス導入管92よりアンモニアガスと酸素の混合ガスをアンモニア分解装置20に導入し、室温にてアンモニアが触媒上の酸点に吸着することで吸着熱が発生してアンモニア分解触媒21が自己発熱し、アンモニアの酸化分解に必要な300〜500℃の温度範囲内に加熱される。
未処理VOC含有ガスと酸素(もしくは空気)の混合ガスをファン18によって吸引口6から吸引し、ガス導入路8を流通し加熱部2に導入し、前記発熱状態にあるアンモニア分解装置20の水素ガス排出管23、水素ガス排出管連結部24、窒素ガス排出管25及び水素ガス排出管23と窒素ガス排出管25の表面に配置した放熱板26、27により未処理VOC含有ガスに熱を与える。また、放熱板26、27は、その形状と配置の仕方により未処理VOC含有ガスの流れ方向を制御する。これにより、加熱部2に導入された未処理VOC含有ガスは、アンモニア分解装置20で生じる高温水素ガス及び高温窒素ガスと熱交換することにより満遍なく加熱される。なお、本実施形態では未処理VOC含有ガス温度が300〜500℃に維持されるべくアンモニア分解装置20へのアンモニア供給量を調整する。
また、ガス中に微小な塵や粒子状物質が存在した場合は、除塵フィルター10にて捕集し、加熱部2での未処理VOC含有ガスへの熱交換に係る効率の低下を防止するとともにVOC分解部3での分解処理能力の維持を図る。
次に、アンモニア分解装置20を通過することによって加熱された未処理VOC含有ガスはVOC分解部3に流入し、触媒が担持されたハニカム構造体であるVOC分解触媒体30を通過する。この際、未処理VOC含有ガスは既に加熱部2において300〜500℃に加熱されているため、VOC分解触媒体30に接触することにより当該VOC分解触媒体30を酸化分解可能な約200〜400℃まで加熱され、したがって、未処理VOC含有ガスはVOC分解触媒の分解作用により酸化分解される。
VOCが酸化分解された後の処理済みガスは、前記図1に示すように、ガス流通路9を流通して熱交換器4に入り、ガス導入路8を経由して当該熱交換器4に流通する未処理VOC含有ガスと熱交換して冷却され、排出口7から外気中に排出される。
上記のように、本実施形態のVOC処理装置1によれば、未処理VOC含有ガスを分解処理するにあたり、アンモニアの触媒分解により発生する分解熱を利用することにより、ヒーターやバーナー等の外部熱源によって外部から加熱する必要なく分解処理することが可能となることから、低ランニングコストで安全性と処理効率が高いVOC分解処理装置となる。また、アンモニア分解装置20とVOC分解触媒体30とを主な構成とする簡易な構成であるため、装置全体を小型化することが可能となる。
また、本実施形態では、加熱部2とVOC分解部3とそれぞれ別個の構成としており、VOC分解部3が加熱部2より下流側に設けられているため、未処理VOC含有ガスを予め加熱部2にて加熱してVOC分解部3に導入することにより、VOC分解触媒を酸化分解に充分な200〜400℃まで加熱することができる。これにより、触媒の作用を充分に発揮させて、VOCを低温で確実に酸化分解することが可能となる。
なお、本実施形態のVOC処理装置1は、図8に示すように高温窒素ガスから未処理VOC含有ガスへの熱交換を促進するため加熱部2とVOC分解部3との間に混合空間11を設けて直接熱交換を行うことでも良い。また、混合空間11を設けても未処理VOC含有ガスへの熱供給が不十分な場合、当空間の側壁に生成水素ガス又は生成窒素ガスまたは両方の導管を配置し、導管表面から放出される熱エネルギーを利用して加熱することができる。例として、図9に、混合空間に水素ガス排出路93を延長配置した場合のVOC処理装置1を示す。
さらに、本実施形態のVOC処理装置1は、図10に示すように、本実施形態のVOC処理装置1において混合空間11にガスの流路を分散させるガス流路分散部材を備えた構成とすることができる。例えば、加熱部末端近傍でかつ未処理VOC含有ガス導入口近傍に多数の小さな貫通孔が穿設された分散プレート41を設けることができる。そして、更に下流側のVOC分解触媒体30の前面近傍に、断面円錐形の基体の外表面に複数枚の羽根が設けられた分散羽根42を設けることができる。ここで、分散プレート41及び分散羽根42は、共に「ガス流路分散部材」に相当する。
上記のような構成にすることにより、混合空間11に導入された未処理VOC含有ガスは、アンモニア分解装置20から放出された窒素ガスにより加熱された分散プレート41で加温されるとともに分散プレート41の多数の貫通孔を窒素ガスとともに通過することによって、混合され種々の方向に分散する。そして、分散羽根42の出口形状をVOC分解触媒体30の入口形状に合わせることで、分散した未処理VOC含有ガスは分散羽根42に沿ってVOC分解触媒体30に流入し、VOC分解触媒体30全体に満遍なく拡散され、触媒作用を受けて分解される。
本発明に於いては、VOC分解部3へ導入する未処理VOC含有ガスの温度管理が重要であり、当然熱交換器4、アンモニア分解装置20及びVOC分解触媒体30においてその入口、出口の温度を測定し、アンモニア供給量及び未処理VOC含有ガス流量を制御して当VOCガスの温度管理を行う。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
また、VOC分解部にVOC分解触媒体を一段又は三段設けた場合を例示したが、これに限定されず、複数のVOC分解触媒体が列設した構成とすることができる。その場合、触媒の種類は同一であっても異なっていても良い。
加えて、VOC分解触媒体として多孔質体に触媒を担持させたものを例示したが、これに限定されず、例えば、発泡金属など触媒自体を多孔質構造として用いることもできる。
1 VOC処理装置(VOC処理装置)
2 加熱部
3 VOC分解部
4 熱交換器
6 未処理VOC含有ガス吸引口
7 処理済ガス排出口
8 未処理VOC含有ガス導入路
9 処理済ガスガス排出路
10 除塵フィルター
11 混合空間
18 未処理VOC含有ガス吸引ファン
20 アンモニア分解装置(発熱体)
21 アンモニア分解触媒
22 水素分離管
23 水素ガス排出管
24 水素ガス排出管連結部
25 窒素ガス排出管
26、27 放熱板
28 架台
29 加熱部側ケーシング
30 VOC分解触媒体
38 断熱材
39 VOC分解部側ケーシング
41 分散プレート(ガス流路分散部材)
42 分散羽根(ガス流路分散部材)
92 アンモニアガス導入管
93 水素ガス排出路
100 断熱筐体

Claims (5)

  1. 揮発性有機化合物含有ガスを加熱するための触媒式アンモニア分解装置を備え、アンモニアの触媒分解により発生した高温窒素ガス及び高温水素ガスと隔壁を介して間接的に熱交換し、または高温窒素ガスと混合して直接熱交換することにより、揮発性有機化合物を加熱する加熱部と、
    揮発性有機化合物の酸化分解温度を低下させるVOC分解触媒体を備え、前記加熱部よりガス流通の下流側に設けられ前記加熱部で加熱された揮発性有機化合物含有ガスに含まれる揮発性有機化合物を酸化分解させる揮発性有機化合物(VOC)分解部を具備すること を特徴とする揮発性有機化合物処理装置。
  2. 前記加熱部は、水素ガス排出管及び窒素ガス排出管を備え、当該排出管の外表面に放熱板を備えること を特徴とする請求項1の揮発性有機化合物処理装置。
  3. 前記加熱部と揮発性有機化合物(VOC)分解部との間において、アンモニアの触媒分解で生じた高温窒素ガスと揮発性有機化合物含有ガスを混合して直接熱交換するための混合空間を備えること を特徴とする請求項1の揮発性有機化合物処理装置。
  4. 前期混合空間内において、揮発性有機化合物含有ガスまたは揮発性有機化合物含有ガスと窒素ガスとの混合ガスを加熱するために、アンモニアの触媒分解で生じた高温水素ガスもしくは高温窒素ガスまたはその両方を流通させる導管を設置すること を特徴とする請求項3に記載の揮発性有機化合物処理装置。
  5. 前記混合空間において、ガスの流路を分散させるガス流路分散部材を備えること を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の揮発性有機化合物処理装置。
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