JP2019095059A - 伝動用vベルト - Google Patents

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【課題】屈曲性及び耐側圧性を向上できる伝動用Vベルトを提供する。【解決手段】伝動用Vベルト1の圧縮ゴム層5に第1のゴム成分及び第1の液晶ポリエステル短繊維を含有させる。前記伝動用Vベルトは、第2のゴム成分及び第2の液晶ポリエステル短繊維を含む伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。前記第1のゴム成分に対する前記第1の液晶ポリエステル短繊維の質量割合は、前記第2のゴム成分に対する前記第2の液晶ポリエステル短繊維の質量割合よりも大きくてもよい。前記第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の単糸繊度は、それぞれ1〜12dtex程度であってもよい。前記第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の平均繊維長は、それぞれ1〜6mm程度であってもよい。【選択図】図2

Description

本発明は、ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトなどの伝動用Vベルトに関し、詳しくは、耐摩耗性に優れた伝動用Vベルトに関する。
摩擦伝動により動力を伝達するVベルト(伝動用Vベルト)には、摩擦伝動面(V字状側面)が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数など)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、ベルトの下面(内周面)のみ、又はベルトの下面(内周面)及び上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトがある。
ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトは、主として、一般産業機械、農業機械の駆動、自動車エンジンでの補機駆動などに用いられる。また、ローエッジコグドVベルトの一部は変速ベルトと呼ばれ、自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる。
ベルト式無段変速装置30は、図1に示すように、駆動プーリ31と従動プーリ32に伝動用Vベルト10を巻き掛けて、変速比を無段階で変化させる装置である。各プーリ31,32は、軸方向への移動が規制又は固定された固定プーリ片31a,32aと、軸方向に移動可能な可動プーリ片31b,32bとを備えており、固定プーリ片31a,32aの内周壁と可動プーリ片31b,32bの内周壁とでV溝状の傾斜対向面を形成している。各プーリ31,32は、これらの固定プーリ片31a,32aと可動プーリ片31b,32bとで形成されるプーリ31,32のV溝の幅を連続的に変更できる構造を有している。前記伝動用Vベルト10の幅方向の両端面は、各プーリ31,32のV溝状の傾斜対向面に対応して傾斜が合致するテーパ面で形成され、変更されたV溝の幅に応じて、V溝の対向面における任意の上下方向の位置に嵌まり込む。例えば、駆動プーリ31のV溝の幅を狭く、従動プーリ32のV溝の幅を広くすることにより、図1の(a)に示す状態から図1の(b)に示す状態に変更すると、伝動用Vベルト10は、駆動プーリ31側ではV溝の上方へ、従動プーリ32側ではV溝の下方へ移動し、各プーリ31,32への巻き掛け半径が連続的に変化して、変速比を無段階で変化できる。
このように、変速ベルトはプーリから高い側圧を受けつつ、屈曲やプーリ半径方向への移動を繰り返し受ける過酷な環境下で使用される。そして、ベルト式無段変速装置における省燃費性及び耐久性の向上といった要求を満足するために、変速ベルトには屈曲性(曲げ易さ)、耐側圧性(側圧に対する変形のしにくさ)、耐摩耗性といった特性の向上が求められている。このような要求に対して、伝動用Vベルトを構成するゴム組成物に短繊維を配合することが汎用されている。
例えば、特開2003−314619号公報(特許文献1)には、ゴム成分100重量部に対して、短繊維が5〜35重量部を含み、前記短繊維が、引張弾性率15〜300GPaである有機繊維を含むゴム組成物によって形成されている高負荷伝動コグドVベルトが開示され、前記有機繊維として全芳香族ポリエステルが例示されている。そして、短繊維を配合することでベルト屈曲時の発熱を抑えながらゴム硬度を高めてベルト伝動能力を高めることができると記載されている。実施例では、伸張ゴム層及び圧縮ゴム層がナイロン短繊維及びテクノーラ短繊維を含むゴム組成物で形成されたコグドVベルトについて、コグドVベルトの諸特性が評価され、ナイロン短繊維、アラミド短繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール短繊維、ポリビニルアルコール短繊維、全芳香族ポリエステル短繊維の違いによるベルト発熱温度が評価されている。
しかし、このベルトでも、近年の省燃費性及び耐久性に関する厳しい要求に対しては十分ではなく、屈曲性、耐側圧性、耐摩耗性のさらなる向上が求められていた。
特開2003−314619号公報(請求項1及び3〜4、段落[0022]、実施例)
本発明の目的は、屈曲性及び耐側圧性を向上できる伝動用Vベルトを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐摩耗性及び耐久性を向上できる伝動用Vベルトを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、圧縮ゴム層に液晶ポリエステル短繊維を含有させることにより、伝動用Vベルトの屈曲性及び耐側圧性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の伝動用Vベルトは、第1のゴム成分及び第1の液晶ポリエステル短繊維を含む圧縮ゴム層を含む。前記伝動用Vベルトは、第2のゴム成分及び第2の液晶ポリエステル短繊維を含む伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。前記第1のゴム成分に対する前記第1の液晶ポリエステル短繊維の質量割合は、前記第2のゴム成分に対する前記第2の液晶ポリエステル短繊維の質量割合よりも大きくてもよい。前記第1の液晶ポリエステル短繊維の割合は、第1のゴム成分100質量部に対して5〜50質量部程度であってもよい。前記第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の単糸繊度は、それぞれ1〜12dtex程度であってもよい。前記第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の平均繊維長は、それぞれ1〜6mm程度であってもよい。前記第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維は、それぞれ全芳香族液晶ポリエステル短繊維であってもよい。前記圧縮ゴム層及び前記伸張ゴム層に含まれる短繊維は、それぞれ第1及び第2の液晶ポリエステル繊維からなる短繊維であってもよい。前記第1及び第2のゴム成分は、それぞれエチレン−α−オレフィンエラストマーからなるゴム成分であってもよい。前記伝動用Vベルトは、第3のゴム成分を含む接着ゴム層をさらに含み、前記接着ゴム層における短繊維の割合は、前記第3のゴム成分100質量部に対して5質量部未満であってもよい。前記伝動用Vベルトは、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジタイプのVベルト(特に、少なくとも内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルト)であってもよい。
本発明では、圧縮ゴム層が液晶ポリエステル短繊維を含むため、伝動用Vベルトの屈曲性及び耐側圧性を向上できる。特に、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジタイプのVベルトに利用すると、ベルトの耐摩耗性及び耐久性も向上できる。
図1は、ベルト式無段変速装置の変速機構を説明するための概略図である。 図2は、本発明の伝動用Vベルトの一例を示す概略斜視図である。 図3は、図2の伝動用Vベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。 図4は、実施例で得られたベルトの摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。 図5は、実施例で得られたベルトの耐久走行試験を説明するための概略図である。
[伝動用Vベルト]
本発明の伝動用Vベルトは、液晶ポリエステル短繊維を含む圧縮ゴム層を含む伝動用Vベルトであれば、特に限定されず、適用できるベルトの種類として、液晶ポリエステル短繊維による耐摩耗性の向上効果が大きい点から、摩擦伝動面が、露出したゴム層であり、かつV字状に傾斜して(V角度で)形成されているVベルト(ローエッジタイプVベルト、Vリブドベルト等)が好ましく、過酷な環境で使用され、屈曲性、耐側圧性、耐摩耗性を向上させる要求が大きい点から、ローエッジタイプVベルトが特に好ましい。すなわち、ローエッジタイプVベルトは、V字状のプーリの間隙で摩擦伝動を行うため、プーリからの高い側圧を受ける。そのため、ベルトの耐側圧性が低いと、ベルトが皿のような形に座屈変形(ディッシング)し、心線やゴムなどの各構成材料の界面に応力が集中することで層間剥離が起こり、ベルト寿命が低下する虞がある。このように、ラップドVベルトでは摩擦伝動面がカバー布で覆われているので圧縮ゴム層に短繊維を配合しなくても耐摩耗性が比較的高いのに対して、ローエッジタイプVベルトでは短繊維を配合することにより露出したゴム層の耐摩耗性を高める必要性が高く、本発明の効果が効果的に発揮される。
ローエッジタイプVベルトには、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルトが含まれる。さらに、ローエッジコグドVベルトは、ローエッジVベルトの内周側のみにコグが形成されたローエッジコグドVベルトと、ローエッジベルトの内周側及び外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルトとに大別できる。これらのうち、変速ベルトに利用され、本発明の効果が特に効果的に発揮される点から、ローエッジVベルトの少なくとも内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルトが好ましい。
図2は、本発明の伝動用Vベルト(ローエッジコグドVベルト)の一例を示す概略斜視図であり、図3は、図2の伝動用Vベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。
この例では、ローエッジコグドVベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向(図中のA方向)に沿って所定の間隔をおいて形成された複数のコグ部1aを有しており、このコグ部1aの長手方向における断面形状は略半円状(湾曲状又は波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向又は図中のB方向)における断面形状は台形状である。すなわち、各コグ部1aは、ベルト厚み方向において、コグ底部1bからA方向の断面において略半円状に突出している。ローエッジコグドVベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部1aが形成された側)に向かって、補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5、補強布6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部1aは、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。
[圧縮ゴム層]
本発明の伝動用Vベルトにおいて、圧縮ゴム層は、第1のゴム成分及び第1の液晶ポリエステル短繊維を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成されている。
(第1のゴム成分)
第1のゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴムを用いてもよく、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム等]、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴムが好ましく、ベルト重量の低減などにより、省燃費性を向上でき、かつ耐オゾン性、耐熱性、耐寒性、耐候性等の耐久性を向上できる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー[エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等]が特に好ましい。
第1のゴム成分中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は、省燃費性及び耐久性を向上できる点から、50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上(特に90〜100質量%)であり、100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)が最も好ましい。
(第1の液晶ポリエステル短繊維)
本発明では、圧縮ゴム層が短繊維として第1の液晶ポリエステル短繊維を含むことにより、屈曲性、耐側圧性、及び耐摩耗性を同時に向上することができる。詳しくは、従来から、圧縮ゴム層に配合される短繊維として汎用されている綿やナイロン短繊維を配合した場合、弾性率や耐摩耗性が低いため、耐側圧性及び耐摩耗性の向上が十分ではない。また、アラミド短繊維を配合すると、耐側圧性及び耐摩耗性はかなり向上するが、それでもなお十分ではなく、さらなる向上のために多量に配合すると加工性や屈曲性の低下といった問題が発生する。これに対して、液晶ポリエステル短繊維を配合すると、屈曲性、耐側圧性及び耐摩耗性を同時に向上することができる。液晶ポリエステル短繊維は、アラミド短繊維よりも耐摩耗性に優れているため、多量に配合する必要がなく、加工性や屈曲性の低下を抑制できる。
第1の液晶ポリエステル短繊維は、メソーゲン基を有し、溶融状態で液晶様性質を示すポリエステルで形成された短繊維であり、エンジニアリングプラスチックと称される剛直な芳香族ポリエステルで形成された液晶ポリエステル短繊維が好ましい。
液晶ポリエステル短繊維を構成する液晶ポリエステルは、p−置換芳香族環、直鎖状ビフェニル基、置換ナフチル基等のメソーゲン基(液晶形成能を有する基)を基本的な構造単位として有し、必要により各種の単位と直鎖状にエステル結合された芳香族ポリエステルであればよい。具体的には、少なくともp−ヒドロキシ安息香酸を重合成分とするポリエステル、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸と、ジオール(ヒドロキノン、ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、エチレングリコールなどのC2−6アルカンジオール等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸などのアレーンジカルボン酸など)及び他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのアレーンヒドロキシカルボン酸など)から選択された少なくとも一種の単量体との共重合体などが例示できる。より具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸単位と4,4′−ジヒドロキシビフェニル単位との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸単位と4,4′−ジヒドロキシビフェニル単位とテレフタル酸単位との共重合体、パラヒドロキシ安息香酸単位とエチレンテレフタレート単位との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸単位と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位との共重合体等が挙げられる。液晶ポリエステルの市販品としては、KBセーレン(株)製「ゼクシオン(登録商標)」、(株)クラレ製「ベクトラン(登録商標)」、住友化学(株)製「スミカスーパー(登録商標)LCP」等が例示できる。これらの液晶ポリエステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
液晶ポリエステルは、屈曲性、耐側圧性及び耐摩耗性に優れる点から、パラヒドロキシ安息香酸単位などの芳香族単位の割合が多い方が好ましく、芳香族単位の割合は、全構成単位中50モル%以上であってもよく、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、100モル%(全芳香族液晶ポリエステル)であってもよい。さらに、液晶ポリエステルは、パラヒドロキシ安息香酸単位を含む全芳香族液晶ポリエステルが好ましい。
第1の液晶ポリエステル短繊維は、繊維状に延伸した第1の液晶ポリエステル繊維を所定の長さにカットした短繊維であってもよい。第1の液晶ポリエステル短繊維は、プーリからの側圧に対するベルトの圧縮変形を抑制するため(耐側圧性を高めるため)、ベルト幅方向に配向して圧縮ゴム層中に埋設されることが好ましい。また、表面の摩擦係数を低下させてノイズ(発音)を抑制したり、プーリとの擦れによる摩耗を低減できるため、圧縮ゴム層の表面より短繊維を突出させるのが好ましい。
第1の液晶ポリエステル短繊維の平均繊維長は、屈曲性を低下させることなく耐側圧性及び耐摩耗性を向上できる点から、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.5〜15mm(例えば0.5〜10mm)、さらに好ましくは1〜6mm(特に2〜4mm)程度であってもよい。第1の液晶ポリエステル短繊維の平均長さが短すぎると、列理方向の力学特性を十分に高めることができずに耐側圧性及び耐摩耗性が低下する虞があり、逆に長すぎると、ゴム組成物中の短繊維の配向性が低下することにより屈曲性が低下する虞がある。特に、前記平均繊維長を8mm以下、例えば0.5〜8mm、好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1.5〜4mm程度に調整すると、短繊維の分散性や配向性を向上できるためか、耐側圧性及び耐摩耗性(特に耐摩耗性)を高度に向上できる。
第1の液晶ポリエステル短繊維の単糸繊度は、屈曲性を低下させることなく高い補強効果を付与できる点から、例えば1〜12dtex、好ましくは1.2〜10dtex(例えば1.5〜8dtex)、さらに好ましくは2〜5dtex(特に2〜3dtex)程度である。単糸繊度が大きすぎると配合量当たりの耐側圧性や耐摩耗性が低下する虞があり、単糸繊度が小さすぎるとゴムへの分散性が低下することにより屈曲性が低下する虞がある。
第1の液晶ポリエステル短繊維は、第1のゴム成分との接着力を高めるために、汎用の接着処理を行ってもよい。このような接着処理としては、エポキシ化合物又はポリイソシアネート化合物を含む処理液に浸漬する方法、レゾルシンとホルムアルデヒドとラテックスとを含むRFL処理液に浸漬する方法、ゴム糊に浸漬する方法などが挙げられる。これらの処理は単独で適用してもよく、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
第1の液晶ポリエステル短繊維の割合は、第1のゴム成分100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは5〜40質量部(例えば8〜35質量部)、さらに好ましくは10〜30質量部(特に20〜30質量部)程度である。第1の液晶ポリエステル短繊維が少なすぎると耐側圧性及び耐摩耗性が低下し、多すぎると加工性が低下したり、ベルトの屈曲性が低下することで耐久性が低下する虞がある。
(他の短繊維)
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、他の短繊維をさらに含んでいてもよい。他の短繊維としては、ポリアミド短繊維(ポリアミド6短繊維、ポリアミド66短繊維、ポリアミド46短繊維、アラミド短繊維等)、ポリアルキレンアリレート短繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維等)、ポリアリレート短繊維(非晶質全芳香族ポリエステル短繊維等)、ビニロン短繊維、ポリビニルアルコール系短繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)短繊維等の合成短繊維;綿、麻、羊毛等の天然短繊維;カーボン短繊維等の無機短繊維等が挙げられる。これら他の短繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アラミド短繊維、PBO短繊維が好ましい。
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、これら他の短繊維を含んでいてもよいが、第1の液晶ポリエステル短繊維の割合が多い方が好ましく、実質的に他の短繊維を含まないのが好ましい。具体的には、圧縮ゴム層の短繊維中の第1の液晶ポリエステル短繊維の割合は、短繊維中30質量%以上(例えば30〜100質量%)であってもよく、例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上(例えば80質量%以上)、さらに好ましくは90質量%以上(特に100質量%)である。従来汎用されてきた短繊維よりも耐側圧性及び耐摩耗性を向上する効果の大きい第1の液晶ポリエステル短繊維を単独で用いると、短繊維を多量に配合する必要がないため、屈曲性の低下を抑えながら耐側圧性及び耐摩耗性を向上できる。
(他の成分)
圧縮ゴム層を形成するゴム組成物は、加硫剤又は架橋剤(又は架橋剤系)(硫黄系加硫剤等)、共架橋剤(ビスマレイミド類等)、加硫助剤又は加硫促進剤(チウラム系促進剤等)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、増強剤(例えば、カーボンブラックや、含水シリカ等の酸化ケイ素)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等)、軟化剤(例えば、パラフィンオイルやナフテン系オイル等のオイル類等)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイド等)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤等)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
[伸張ゴム層]
本発明の伝動用Vベルトは、第2のゴム成分及び第2の液晶ポリエステル短繊維を含むゴム組成物(加硫合組成物)で形成された伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。
(第2のゴム成分)
第2のゴム成分としては、第1のゴム成分で例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も第1のゴム成分と同一である。第2のゴム成分は、第1のゴム成分と異なるゴム成分であってもよいが、通常、第1のゴム成分と同一である。
(第2の液晶ポリエステル短繊維)
本発明では、液晶ポリエステル短繊維は少なくとも圧縮ゴム層に含まれていればよいが、耐側圧性及び耐摩耗性(特に、耐摩耗性)をより向上できる点から、圧縮ゴム層に加えて伸張ゴム層にも、液晶ポリエステル短繊維が含まれているのが好ましい。圧縮ゴム層だけでなく、伸張ゴム層も短繊維として第2の液晶ポリエステル短繊維を含むと、耐側圧性及び耐摩耗性(特に、耐摩耗性)がさらに向上する。第2の液晶ポリエステル短繊維としては、第1の液晶ポリエステル短繊維で例示された液晶ポリエステル短繊維を利用でき、種類、平均繊維長、単糸繊度などの好ましい態様も第1の液晶ポリエステル短繊維と同一である。第2の液晶ポリエステル短繊維は、第1の液晶ポリエステル短繊維と異なる短繊維であってもよいが、通常、第1の液晶ポリエステル短繊維と同一である。
第2の液晶ポリエステル短繊維の割合は、第2のゴム成分100質量部に対して、50質量部以下であってもよく、例えば1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部(特に15〜25質量部)程度である。第2の液晶ポリエステル短繊維が少なすぎると耐側圧性及び耐摩耗性(特に、耐摩耗性)が低下し、多すぎると加工性が低下したり、ベルトの屈曲性が低下することで耐久性が低下する虞がある。
本発明では、第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維が圧縮ゴム層及び伸張ゴム層の両層に含まれる場合、第1のゴム成分に対する第1の液晶ポリエステル短繊維の質量割合(第1の液晶ポリエステル短繊維含量)は、第2のゴム成分に対する第2の液晶ポリエステル短繊維の質量割合(第2の液晶ポリエステル短繊維含量)よりも大きい方が好ましい。第1の液晶ポリエステル短繊維含量を第2の液晶ポリエステル短繊維含量よりも多くすることで、屈曲性の低下を抑えながら、ベルトの耐側圧性及び耐摩耗性を向上できる。一方、第2の液晶ポリエステル短繊維含量が第1の液晶ポリエステル短繊維含量よりも多いと、ベルト全体の剛直性が大きくなりすぎて、屈曲性が低下し易く、プーリとの接触が不均一となるためか、耐摩耗性も低下し易い。
具体的な両層の短繊維量比として、第2の液晶ポリエステル短繊維含量は、第1の液晶ポリエステル短繊維含量に対して1倍未満(0.95倍以下)が好ましく、例えば0.9倍以下(例えば0.1〜0.9倍)、好ましくは0.8倍以下(例えば0.3〜0.8倍)、さらに好ましくは0.7倍以下(例えば0.5〜0.7倍)程度である。
(他の短繊維及び他の成分)
伸張ゴム層を形成するゴム組成物も、圧縮ゴムを形成するゴム組成物で例示された他の短繊維及び他の成分をさらに含んでいてもよい。
伸張ゴム層を形成するゴム組成物も、圧縮ゴム層と同様の理由で、他の短繊維を含んでいてもよいが、第2の液晶ポリエステル短繊維の割合が多い方が好ましく、実質的に他の短繊維を含まないのが好ましい。第2の液晶ポリエステル短繊維の割合も圧縮ゴムを形成するゴム組成物と同様である。
[接着ゴム層]
本発明の伝動用Vベルトは、第3のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成された接着ゴム層をさらに含んでいてもよい。
第3のゴム成分としては、第1のゴム成分で例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も第1のゴム成分と同一である。第3のゴム成分は、第1のゴム成分と異なるゴム成分であってもよいが、通常、第1のゴム成分と同一である。
接着ゴム層を形成するゴム組成物は、短繊維を含んでいてもよい。短繊維としては、第1の液晶ポリエステル短繊維として例示された液晶ポリエステル短繊維、圧縮ゴム層を形成する組成物に含まれていてもよい他の短繊維として例示された短繊維などが挙げられる。これらの短繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの短繊維のうち、液晶ポリエステル短繊維が好ましい。
接着ゴム層を形成するゴム組成物において、芯体と第3のゴム成分との接着力を向上し、ベルトの耐久性を向上できる点から、短繊維の割合は、第3のゴム成分100質量部に対して5質量部未満であってもよく、例えば3質量部以下(例えば0.01〜3質量部)、好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であってもよい。特に、接着ゴム層を形成するゴム組成物は、短繊維を実質的に含まないのが好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、短繊維が不可避的に混入する場合を許容する意味であり、その量は第3のゴム成分100質量部に対して1質量部未満である。
接着ゴム層を形成するゴム組成物も、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物で例示された他の成分をさらに含んでいてもよい。
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。
心線を構成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維が例示できる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート等のC2−4アルキレン−アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維等が汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維が好ましい。繊維はマルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば100〜5,000本であってもよく、好ましくは500〜4,000本、さらに好ましくは1,000〜3,000本程度のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚り等)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mmであってもよく、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。
心線は、ゴム成分との接着性を改善するため、短繊維と同様の方法で接着処理(又は表面処理)されていてもよい。心線も、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。
[補強布]
本発明の伝動用Vベルトにおいて、補強布を使用する場合、圧縮ゴム層の表面に補強布を積層する形態に限定されず、例えば、伸張ゴム層の表面(接着ゴム層と反対側の面)に補強布を積層してもよく、圧縮ゴム層及び/又は伸張ゴム層に補強層を埋設する形態(例えば、特開2010−230146号公報に記載の形態など)であってもよい。補強布は、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材(好ましくは織布)などで形成でき、必要であれば、前記接着処理、例えば、RFL液で処理(浸漬処理など)したり、接着ゴムを前記布材にすり込むフリクションや、前記接着ゴムと前記布材とを積層(コーティング)した後、圧縮ゴム層及び/又は伸張ゴム層の表面に積層してもよい。
[伝動用Vベルトの製造方法]
本発明の伝動用Vベルトの製造方法は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、慣用の方法を利用できる。
例えば、コグドVべルトの場合、補強布(下布)と圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴム)からなる積層体を、前記補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、温度60〜100℃(特に70〜80℃)程度でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にあるパッド)を作製した後、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断してもよい。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に第1の接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未加硫ゴム)を積層した後、芯体となる心線を螺旋状にスピニングし、この上に第2の接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記第1の接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未加硫ゴム)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製してもよい。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120〜200℃(特に150〜180℃)程度で加硫してベルトスリーブを調製した後、カッターなどを用いて、V状に切断加工してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した使用材料の詳細と、測定した評価項目の評価方法を以下に示す。
[使用材料]
EPDM:ダウ・デュポン社製「NORDEL(登録商標)IP4640」、エチレン含有量55%、エチリデンノルボルネン含有量4.9%
液晶ポリエステル短繊維1:KBセーレン(株)製「ゼクシオン(登録商標)」、繊度2.3dtex、繊維長3mm
液晶ポリエステル短繊維2:KBセーレン(株)製「ゼクシオン(登録商標)」、繊度2.3dtex、繊維長10mm
アラミド短繊維:帝人(株)製「トワロン(登録商標)」、モジュラス88cN、繊度2.2dtex、繊維長3mm
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルNS−90S」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト(登録商標)3」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック(登録商標)AD−F」
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤TT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)TT」
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)CZ」
シリカ:エボニックジャパン(株)製、「ULTRASIL(登録商標)VN3」、BET比表面積175m/g
心線:1,000デニールのPET繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りしたトータルデニール6,000のコードを接着処理した繊維。
[加硫ゴム物性の測定]
(1)硬度
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ100mm×幅100mm×厚み2mm)を作製した。短繊維の配向方向は加硫ゴムシートの幅方向と平行とした。硬度はJIS K6253(2012)に準じ、加硫ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、デュロメータA形硬さ試験機を用いて硬度を測定した。
(2)摩耗量
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ50mm×幅50mm×厚み8mm)を作製した。短繊維の配向方向は加硫ゴムシートの厚み方向と平行(研磨面に対して垂直方向)とした。加硫ゴムシートを内径16.2mmの中空ドリルで加硫ゴムシートの厚み方向から切り抜き、直径16.2±0.2mm、厚み8mmの円柱状の試験片を作製した。摩耗量はJIS K6264(2005)に準じ、DIN摩耗試験機(回転円筒型摩耗試験機)を用いて測定した。研磨布は研磨布押えによって回転ドラムに取り付け、試験方法は試験片を回転させないで測定するA法とし、試験片の付加力は10Nとした。試験前後における試験片の重量変化を測定し、あらかじめ測定しておいた試験片の比重から摩耗量(摩耗体積)を計算した。
(3)圧縮応力
圧縮ゴム層用シートを温度170℃、時間20分でプレス加硫し、加硫ゴム成形体(長さ25mm、幅25mm、厚み12.5mm)を作製した。短繊維の配向方向は加硫ゴム成形体の厚み方向と平行(圧縮面に対して垂直方向)とした。この加硫ゴム成形体を一対の金属製の圧縮板で上下(加硫ゴム成形体の厚み方向)から挟み込み、加硫ゴム成形体と圧縮板が接触しながらも押圧はされていない状態で、上側の圧縮板の位置を初期位置とした。上側の圧縮板を10mm/分の速度で下降させることで加硫ゴム成形体を押圧(押圧面25mm×25mm)して加硫ゴム成形体を厚み方向に20%歪ませ、この状態で1秒間保持した後、上側の圧縮板を上昇させ初期位置まで戻した(予備圧縮)。この予備圧縮を3回繰り返した後、予備圧縮と同様に10mm/分の速度で押圧しながら応力−歪み曲線を測定し、加硫ゴム成形体の厚み方向の歪みが2%となったときの応力を、圧縮応力とした。測定された圧縮応力が高い程、ベルトとしては耐側圧性が高まると判断できる。なお、3回の予備圧縮は、測定データのバラツキを抑えるために行った。
[ベルトの評価]
(1)摩擦係数
図4に示すように、切断したベルト11の一方の端部をロードセル12に固定し、他方の端部に3kgfの荷重13を取り付け、巻き付け角度が45°となるようにベルト11をプーリ14に巻き付けた。プーリ14は固定されており、回転しない。そして、ロードセル12側からベルト11を30mm/秒の速度で15秒程度引張り、ロードセル12に作用する荷重T1を測定した。摩擦係数μは以下の式により求めた。
μ=ln(T1/T2)/(π/4)
(式中、μ:摩擦係数、T1:ロードセル12に作用する荷重(N)、T2:荷重13による荷重(N)である)。
(2)耐久走行試験
耐久走行試験は、図5に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリ22と、直径125mmの従動(Dn.)プーリ23とを備える2軸走行試験機を用いて行った。各プーリ22,23にローエッジコグドVベルト21を掛架し、駆動プーリ22の回転数5000rpm、従動プーリ23に10N・mの負荷を付与し、雰囲気温度80℃にてベルト21を24時間走行させた。走行後のベルト側面を目視及びマイクロスコープで観察して心線の剥離及びゴム層の亀裂の有無を調べ、剥離及びゴム層の亀裂がなければ異常なしとした。また、走行前後のベルトの上幅変化量から摩耗量を評価し、比較例1の摩耗量を100とした相対値を表に記載した。
実施例1〜7及び比較例1〜2
(ゴム層の形成)
表1(圧縮ゴム層、伸張ゴム層)及び表2(接着ゴム層)のゴム組成物は、それぞれ、バンバリーミキサーなどの公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して圧延ゴムシート(圧縮ゴム層用シート、伸張ゴム層用シート、接着ゴム層用シート)を作製した。なお、短繊維は、RFL液(レゾルシン及びホルムアルデヒドと、ラテックスとしてのビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスとを含有)で接着処理し、固形分の付着率6質量%の短繊維を用いた。RFL液として、レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部、水78.8質量部を用いた。
Figure 2019095059
Figure 2019095059
得られた圧縮ゴム層用シートの加硫ゴム物性を評価した結果を表3に示す。
Figure 2019095059
表3から明らかなように、加硫ゴム物性について比較すると、アラミド短繊維を配合したゴム組成物Fと比較して、液晶ポリエステル短繊維を含むゴム組成物A〜Eは耐摩耗性が高かった。特に、液晶ポリエステル短繊維を単独でポリマー成分100質量部に対して30質量部配合したゴム組成物Bは、硬度、耐摩耗性に加えて、圧縮応力も最も高く、伝動用Vベルトのゴム層に適した特性を有していた。また、液晶ポリエステル短繊維の繊維長10mmのゴム組成物Eは、繊維長3mmのゴム組成物Aよりも耐摩耗性、圧縮応力が若干低下した。
[ベルトの製造]
補強布と圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴム)との積層体を、補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75℃でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にある)を作製した。次に、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断した。
円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層用シート(未加硫ゴム)を積層した後、心線を螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層用シート(上記接着ゴム層用シートと同じ)と伸張ゴム層用シート(未加硫ゴム)を順次巻き付けて成形体を作製した。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度160℃、時間20分で加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターでV字状に切断して、ベルト内周側にコグを有する変速ベルトであるローエッジコグドVベルト(サイズ:上幅22.0mm、厚み11.0mm、外周800mm)を作製した。
得られたベルトの評価結果を表4に示す。
Figure 2019095059
表4から明らかなように、ベルトの評価結果について比較すると、圧縮ゴム層が液晶ポリエステル短繊維を含む実施例1〜7は、良好な屈曲性を保ったまま、耐側圧性及び耐摩耗性が高かった。なかでも、実施例1〜4は圧縮ゴム層と伸張ゴム層の両方が繊維長3mmの液晶ポリエステル短繊維を含み、圧縮ゴム層中の短繊維の配合量が伸張ゴム層中の短繊維の配合量よりも多くなっているので、良好な屈曲性を保ったまま、耐側圧性及び耐摩耗性が高かったと考えられる。特に、実施例3は短繊維が液晶ポリエステル単独で構成されており、液晶ポリエステル以外の短繊維を含まないことから耐側圧性及び耐摩耗性が特に高かった。
なお、実施例5では、伸張ゴム層が液晶ポリエステル短繊維を含まないため、摩耗量は増大するが、耐屈曲疲労性は良好であり、耐久性に問題はなかった。また、実施例6では、圧縮ゴム層と伸張ゴム層の短繊維量が同一であるため、実施例3の伸張ゴム層に含まれる短繊維量を増やすことで耐摩耗性をさらに向上できると考えたが、実際はベルト全体が剛直となってプーリとの接触が不均一となってしまうためか、摩耗量が若干増大した。さらに、実施例7では、伸張ゴム層における液晶ポリエステル短繊維の繊維長が10mmであるため、短繊維の分散性や配向性が低下するためか、摩擦係数、摩耗量とも若干増大する結果であった。
一方、圧縮ゴム層及び伸張ゴム層に液晶ポリエステル短繊維を含まず、従来慣用されてきたアラミド短繊維を含む構成の比較例1は、耐摩耗性が低かった。また、伸張ゴム層の短繊維配合量が圧縮ゴム層の短繊維配合量よりも多い構成の比較例2は、耐摩耗性が低い上に、屈曲性にも劣り、耐久走行試験においてゴム層に亀裂が発生した。
本発明の伝動用Vベルトは、例えば、ローエッジタイプVベルト(ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト)、Vリブドベルトなどに適用できる。特に、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機(無段変速装置)に使用されるVベルト(変速ベルト)、例えば、自動二輪車やATV(四輪バギー)、スノーモービルなどの無段変速装置に使用されるローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトに適用するのが好ましい。
1…伝動用Vベルト
2,6…補強布
3…伸張ゴム層
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層

Claims (12)

  1. 第1のゴム成分及び第1の液晶ポリエステル短繊維を含む圧縮ゴム層を含む伝動用Vベルト。
  2. 第2のゴム成分及び第2の液晶ポリエステル短繊維を含む伸張ゴム層をさらに含む請求項1記載の伝動用Vベルト。
  3. 第1のゴム成分に対する第1の液晶ポリエステル短繊維の質量割合が、第2のゴム成分に対する第2の液晶ポリエステル短繊維の質量割合よりも大きい請求項2記載の伝動用Vベルト。
  4. 第1の液晶ポリエステル短繊維の割合が、第1のゴム成分100質量部に対して5〜50質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  5. 第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の単糸繊度が、それぞれ1〜12dtexである請求項2〜4のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  6. 第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維の平均繊維長が、それぞれ1〜6mmである請求項2〜5のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  7. 第1及び第2の液晶ポリエステル短繊維が、それぞれ全芳香族液晶ポリエステル短繊維である請求項2〜6のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  8. 圧縮ゴム層及び伸張ゴム層に含まれる短繊維が、それぞれ第1及び第2の液晶ポリエステル繊維からなる請求項2〜7のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  9. 第1及び第2のゴム成分が、それぞれエチレン−α−オレフィンエラストマーからなる請求項2〜8のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  10. 第3のゴム成分を含む接着ゴム層をさらに含み、前記接着ゴム層における短繊維の割合が、第3のゴム成分100質量部に対して5質量部未満である請求項1〜9のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  11. 摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジタイプのVベルトである請求項1〜10のいずれかに記載の伝動用Vベルト。
  12. 少なくとも内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルトである請求項11記載の伝動用Vベルト。
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