JP2019089889A - 二液硬化型メタクリル系接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化物が柔軟性を示し、かつ低皮膚刺激性を満足する二液硬化型メタクリル系接着剤を提供することを目的とする。【解決手段】重合性メタクリル系モノマー、有機過酸化物、液状ゴムを必須成分とする主剤と、重合性メタクリル系モノマー、還元剤、液状ゴムを必須成分とする硬化剤とから構成される二液硬化型メタクリル系接着剤において、前記主剤の重合性メタクリル系モノマーおよび前記硬化剤の重合性メタクリル系モノマーの30重量%〜70重量%が、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートであることを特徴とする二液硬化型メタクリル系接着剤。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化物が柔軟性を有し、低皮膚刺激性を有する二液硬化型メタクリル系接着剤に関する。
室温下で容易に硬化して強靭な硬化物を与える反応型硬化性組成物の代表的なものとして、エポキシ系やアクリル系(メタクリル系も含む)の硬化性組成物がある。アクリル系は、エポキシ系に比べて室温下で短時間に硬化するが、硬化過程での収縮が大きいという問題がある。特に、被着体が薄い平板である用途、例えば薄い鋼板に剛性の高い補強材を接着するスチール製収納庫やスチール製物置の扉のような用途の場合、接着層の硬化収縮が大きく収縮応力が発生するため、平板面に反りや歪みを生じたり、硬化物にクラックが生じるという問題が発生した。
上記課題を解決するために、硬化物の柔軟性を付与する必要がある。特許文献1には、硬化物の柔軟性や耐熱性を付与するために、液状ゴムを配合したアクリル系接着剤が記載されている。この接着剤は、液状ゴムを多量に配合すると接着剤の粘度が高くなり、被着体に良好に塗布することを妨げる他、液状ゴムはアクリル系モノマーとの相溶性が悪いため、経時変化により組成物が分離し接着性能を著しく低下させ、また液状ゴムを多量に含有すると粘度が上昇するため接着剤としては使用できないという問題があった。
一方、アクリル系モノマーを選定して柔軟性を付与する技術もあり、例えばアクリル系モノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を使用したアクリル系接着剤は、柔軟性は良好だが、皮膚刺激性が高く(PII値=5.7)、組成物を調合する場合や被着体に組成物を塗布する場合の取り扱いが問題となり、人体にふれた場合にカブレの原因となる。
皮膚刺激性にはPII値(一次皮膚刺激率値)という指標があり、化学物質の皮膚障害の度合いを表し、薬品が皮膚に付着した場合に受ける皮膚障害の指標となる。PII値はドレーズ法により測定され、測定値は0〜8の範囲で表され、値が小さいほど刺激性は低い。一般的に低分子量で低粘度である化合物はPII値が高いため、皮膚刺激性が高く、カブレの原因となる。そこで、組成物の皮膚刺激性を小さくするため、(1)PII値の小さなモノマーを原料に選定する、(2)原料のモノマーをアクリレートからメタクリレートに置き換える、(3)エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して分子量を大きくしたモノマーを用いる等の方法がある。
しかしながら、アクリレートとメタクリレートとでは主骨格が同じであっても、その反応性や物性に大きな違いがあり、PII値を小さくするために単にアクリレートからメタクリレートに置き換えるだけでは最終的な性能が全く異なるものになってしまう。エチレンオキサイドなどを付加して分子量を大きくする場合も同様である。したがって、モノマーの種類を変更するということは、最終的な必要特性や品質規格に合わせて初めから配合検討をやり直すということを意味しており、容易なことではない。
特開平9−125011号公報
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、柔軟性を付与するためメタクリル系モノマーに液状ゴムを配合した主剤及び硬化剤において、さらに硬化物の柔軟性を付与し、かつ低皮膚刺激性を満足する二液硬化型メタクリル系接着剤を提供することを目的とする。
皮膚刺激性の観点からアクリレートよりもメタクリレートは極端に皮膚刺激性が小さく、分子量の大きいモノマーは分子量の小さいモノマーと比べて皮膚刺激性が小さい。すなわち、炭素数の値が大きいアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレート(例えば、ラウリルメタクリレート(炭素数が12))は、皮膚刺激性が高い物質ではない。しかしながら、例えばラウリルメタクリレートを多量に配合した二液硬化型メタクリル系接着剤は、高い皮膚刺激性を示した。
この理由として、一連の配合組成の試験結果からの推測ではあるが、炭素数の値が大きいアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレート(例えば、ラウリルメタクリレート(炭素数が12))は、皮膚との親和性が高く、多量に配合した場合には皮膚内に浸透する際に、高皮膚刺激性物質(例えば、主剤では有機過酸化物、硬化剤ではリン酸エステルが該当)を皮膚内へ多量に引きずり込むことが考えられる。
このような点に注目した結果、重合性メタクリル系モノマー、液状ゴム、有機過酸化物を必須成分とする主剤と、重合性メタクリル系モノマー、液状ゴム、還元剤を必須成分とする硬化剤を必須成分とし、主剤及び硬化剤に対して、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートを所望量配合することで上記課題を解決することを見出した。さらに、上記主剤及び硬化剤にパラフィンワックスを所望量配合することで、皮膚刺激性をより低くできることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)重合性メタクリル系モノマー、有機過酸化物、液状ゴムを必須成分とする主剤と、重合性メタクリル系モノマー、還元剤、液状ゴムを必須成分とする硬化剤とから構成される二液硬化型メタクリル系接着剤において、前記主剤の重合性メタクリル系モノマーおよび前記硬化剤の重合性メタクリル系モノマーの30重量%〜70重量%が、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートであることを特徴とする二液硬化型メタクリル系接着剤;
(2)前記炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートがラウリルメタクリレートであることを特徴とする(1)記載の二液硬化型メタクリル系接着剤;
(3)前記主剤にさらにパラフィンワックスを含有することを特徴とする(1)又は(2)記載の二液硬化型メタクリル系接着剤;
(4)前記有機過酸化物がハイドロパーオキサイド類であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤;
(5)前記還元剤がバナジウム化合物であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤;
(6)前記硬化剤にさらにリン酸エステルを含有することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤;
を要旨とするものである。
本発明における二液硬化型メタクリル系接着剤は、硬化物が柔軟性を示し、かつ低皮膚刺激性を満足するため、従来のメタクリル系接着剤の欠点を補い、被着体が薄い用途で使用する接着剤として利用可能である。また、低皮膚刺激性であるので、組成物を扱う際に、人体への影響が少なく、作業性としては良好である。
本発明は、主剤と硬化剤の二液に分けて主剤には重合開始剤である有機過酸化物を、硬化剤には有機過酸化物の分解を促進する還元剤を配合して、有機過酸化物と還元剤が同一容器内に共存しないように構成された二液型メタクリル系接着剤に関するものである。特に、主剤には、重合性メタクリル系モノマー、有機過酸化物、液状ゴムを必須成分とし、硬化剤には、重合性メタクリル系モノマー、還元剤、液状ゴムを必須成分として、必要に応じてその他各種成分を配合した二液型メタクリル系接着剤に関するものである。
本発明で使用する重合性メタクリル系モノマーは、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、フェノキシエチルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、多価アルコールのポリメタクリレート、エポキシ樹脂にメタクリル酸を付加反応させて得られるエポキシメタクリレート、ウレタンポリメタクリレート、ポリエステルポリメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジメタクリレート等が例示できる。これらのうち、メタクリル酸のようにカルボキシル基を有する重合性メタクリル系モノマーやメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の水酸基を有する重合性メタクリル系モノマーを適宜併用すると、硬化物に良好な機械的強度と接着性を付与でき、好ましい。なお、皮膚刺激性の観点から皮膚刺激性を悪化させない程度に、主剤及び硬化剤に対して重合性アクリル系モノマーを適宜配合してもよい。重合性アクリル系モノマーは、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、フェノキシエチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、多価アルコールのポリアクリレート、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加反応させて得られるエポキシアクリレート、ウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジアクリレート等が例示できる。
本発明では、重合性メタクリル系モノマーの中で、主剤の重合性メタクリル系モノマー及び硬化剤の重合性メタクリル系モノマーの30重量%〜70重量%が、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートである必要があり、特に40重量%〜60重量%が特に好ましい。
炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートは、単独では皮膚刺激性が小さい物質であるが、驚くべきことに、重合性メタクリル系モノマーの70重量%を超える量が、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートである場合、主剤及び硬化剤の皮膚刺激性は大きくなった。これは、皮膚との親和性の高い、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートが皮膚内に浸透する際に、主剤及び硬化剤の中に配合されている皮膚刺激性が高い物質(主剤であれば過酸化物、硬化剤であればリン酸エステルが該当)を皮膚内に引きずり込む量が多いために、このような結果になったと推測する。
重合性メタクリル系モノマーの30重量%未満が炭素数を8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートである場合、皮膚刺激性では問題ないが、柔軟性が良好ではない。
また、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートは、例えばオクチルメタクリレート(炭素数8)、ノニルメタクリレート(炭素数9)、イソデシルメタクリレート(炭素数10)、ウンデシルメタクリレート(炭素数11)、ラウリルメタクリレート(ドデシルメタクリレートともいう)(炭素数12)、トリデシルメタクリレート(炭素数13)、テトラデシルメタクリレート(炭素数14)、ペンタデシルメタクリレート(炭素数15)、ヘキサデシルメタクリレート(炭素数16)、ヘプタデシルメタクリレート(炭素数17)、ステアリルメタクリレート(炭素数18)が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
一般に、アルキル基の炭素数の値を増加させると、主鎖が接近しにくくなり、その結果主鎖が運動しやすくなり柔軟性を発現しやすくなる。つまり、アルキル基の炭素数の値が小さい炭素数が8未満のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートは、柔軟性が十分ではない。一方、さらにアルキル基の炭素数の値を増加させる(炭素数が18を超えるアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートの場合)と、側鎖の結晶化傾向が強くなり十分な柔軟性を発現しない。特に、柔軟性と炭素数の関係において炭素数が10以上13以下付近で極小値を示すため、炭素数が10以上13以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートが好ましく、さらに、炭素数が12のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレート(ラウリルメタクリレートのこと)がより好ましい。
本発明で使用する有機過酸化物は、重合開始剤として機能することを目的として主剤に配合する。有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシドデカノエート等のパーオキシエステル類等が単独、或いは、2種以上組み合わせて用いることができるが、ハイドロパーオキサイド類が特に好ましい。有機過酸化物の配合量は重合性メタクリル系モノマー100重量部に対して1〜10重量部が好ましく、更には、2〜5重量部がより好ましい。有機過酸化物の配合量が1重量部未満であると、硬化速度が低下し好ましくなく、逆に、10重量部を超えると組成物の保存安定性が悪化し好ましくない。
本発明で使用する液状ゴムは、主剤及び硬化剤の粘度調整や硬化物の柔軟性を向上させることを目的として主剤及び硬化剤に配合する。液状ゴムとしては、液状ポリブタジエン、末端アクリル変性液状ポリブタジエン、液状アクリロニトリルーブタジエン共重合体等が挙げられる。
液状ゴムの配合量は、適宜調整してよいが、重合性メタクリル系モノマー100重量部に対して5重量部〜40重量部が好ましい。硬化物の柔軟性を付与するために液状ゴム40重量部を超える量を配合すると、粘度が高くなり良好に塗布することを妨げ、液状ゴムと重合性メタクリル系モノマーとの相溶性が悪いため、経時変化により組成が分離して接着性能を著しく低下させるおそれがある。
本発明で使用する還元剤は、主剤に配合されている有機過酸化物の分解を促進するために硬化剤に配合する。還元剤としては、特に限定されるものではないが、特にバナジウム化合物が好ましい。
バナジウム化合物としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムベンゾイルアセトネート等が挙げられる。バナジウム化合物の配合量は重合性メタクリル系モノマー100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、更には、1〜5重量部がより好ましい。バナジウム化合物の配合量が0.1重量部未満であると硬化速度が遅いため好ましくなく、逆に10重量部を超えても配合量に比例した硬化速度の向上が見られなくなるだけでなく、重合性メタクリル系モノマーと共存させた場合に保存安定性が低下するので好ましくない。
さらに、以下の成分を必要に応じて主剤もしくは硬化剤に配合することができる。
皮膚刺激性をさらに低下させるために、主剤にパラフィンワックスを配合することが好ましい。パラフィンワックスを配合させることにより、主剤及び硬化剤の中に配合されている皮膚刺激性が高い物質をパラフィンワックスによりブロックさせるために皮膚刺激性が低下するものと推測している。
パラフィンワックスの配合量は、重合性メタクリル系モノマー100重量部に対してパラフィンワックスを0.1〜5.0重量部が好ましく、特に0.2〜2.0重量部が好ましい。
接着性を向上あるいは接着強度を安定化させるために、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)を主剤もしくは硬化剤に含有してもよい。
保存安定性を付与するためにα−ヒドロキシカルボニル化合物を含有してもよい。
α−ヒドロキシカルボニル化合物しては乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、クエン酸等のα−ヒドロキシカルボン酸、乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル等のα−ヒドロキシカルボン酸エステル、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、アセトイン、ベンゾイン等のα−ケトール等が挙げられるが、α−ケトールを使用した場合には保存中に容器に光が当たると変質しやすいためα−ヒドロキシカルボニル化合物としてα−ヒドロキシカルボン酸又はα−ヒドロキシカルボン酸エステルを使用するのが特に好ましい。また、α−ヒドロキシカルボニル化合物の配合量は重合性メタクリル系モノマー100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、更には、0.5〜3重量部がより好ましい。α−ヒドロキシカルボニル化合物の配合量が0.1重量部未満であると接着性の向上が顕著ではないため好ましくなく、逆に5重量部を超えても配合量に比例した接着性の向上が見られない。なお、重合性メタクリル系モノマーとα−ヒドロキシカルボニル化合物が存在する系にバナジウム化合物が存すると、保存安定性が低下する傾向があるので、有機過酸化物を配合している主剤に配合するのが好ましい。
また、組成物の保存安定性及び接着性を改良するために、酸性リン酸エステルを配合するのが好ましい。酸性リン酸エステルとしては、例えば、モノメチルフォスフェート、ジメチルフォスフェート、モノエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、モノ−β−クロロエチルフォスフェート、ジ−β−クロロエチルフォスフェート、モノエトキシエチルフォスフェート、ジエトキシエチルフォスフェート、フェニルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピルフォスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルフォスフェート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートフォスフェート等が挙げられる。
また、揺変性を付与することを目的として微粉末ポリエチレン、ジベンジリデン−D−ソルビトール、セルローストリアセテート、ステアリン酸アミド、ベントナイト、微粉末ケイ酸等の揺変性付与剤を配合してもよい。
また、室温での長期保存安定性の向上を目的として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ベンゾキノン、ハイドロキノン、キンヒドロン、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、シュウ酸、N−メチル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソジフェニルアミン等のラジカル重合禁止剤、及び着色のための染料や顔料を配合することももちろん可能である。
以下、本発明について、実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例、および比較例で作製した二液硬化型メタクリル系接着剤は、以下の項目について評価し、その結果を表4に示す。
(1)主剤及び硬化剤の皮膚刺激性及び腐食性
試験法は、OECD化学物質試験ガイドラインを参考にした。試験前日に、ウサギの背部皮膚の被毛をバリカンで刈毛した。試験当日、2.45×2.45cmのリント布の片面に、試験物質0.5mlを均一に塗布した後、紙絆創膏を用いてウサギの背部皮膚に貼付した。次に、これらのパッチを大型リント布で被覆した後、粘着性伸縮包帯で背部に固定した。暴露時間は4時間とし、暴露終了後にリント布製パッチを取り除き、試験物質を注射用水およびティッシュペーパーを用いて取り除いた。パッチ除去後、1、24、48及び78時間、加えて7及び14日に皮膚刺激性反応を観察し、判定基準に従い採点した。観察結果及び採点結果を基に、GHSおよびドレーズの基準に従って皮膚刺激性及び腐食性を評価した。
皮膚刺激性は、ドレーズの基準に従って0〜8の範囲内の数値で示す。
腐食性は、GHSの基準(GHS分類の腐食性区分)に従って示したものであり、GHS分類の区分2または3と判断したものについては腐食性なし、GHS分類の区分1と判断したものについては腐食性ありとした。
(2)主剤及び硬化剤の粘度
主剤及び硬化剤を容器に約500g採取して23℃に調整し、23℃、50%RHの雰囲気中にて24時間以上経過した後に、同雰囲気中にて、BH型粘度計(東京計器製)、ロータNo.5を用いて回転数20rpmで、回転を開始して1分後の粘度を測定した。
(3)硬化物の硬度
23℃、50%RHの雰囲気中にて、主剤及び硬化剤を等量混合した組成物を24時間以上養生し、直径30mm、厚さ6mmの円形平板となる接着剤組成物の硬化物を作製した。得られた硬化物についてタイプDデュロメータを用いて測定した。
(4)引張せん断接着強さ
23℃、50%RHの雰囲気中にて、幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mmの脱脂されたSPCC鋼鈑に主剤及び硬化剤を等量塗布し、10秒間混合後に直ちに同じ鋼鈑を12.5mmのラップで貼り合わせてクリップで固定し、24時間以上経過した後にJIS K 6850を参考にして引張り速度2.5mm/分にて測定した。
(5)T形剥離接着強さ
23℃、50%RHの雰囲気中にて、幅25mm×長さ200mm×厚み0.5mmの脱脂されたSPCC鋼鈑に主剤、硬化剤を等量塗布し、混合後に約150mmの範囲で薄く塗布して、直ちに同じ鋼鈑を貼り合わせてクリップで固定し、24時間以上経過した後にJIS K 6854−3を参考にして引張り速度50mm/分にて測定した。
(6)可使時間
23℃、50%RHの雰囲気中にて、主剤0.5g及び硬化剤0.5gを10秒間混合してから、急激に粘度上昇が始まるまでの時間を測定した。
(7)セットタイム
23℃、50%RHの雰囲気中にて、幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mmの脱脂されたSPCC鋼鈑に主剤及び硬化剤を等量塗布し、10秒間混合後に直ちに同じ鋼鈑を12mmのラップで貼り合わせて、クリップで固定してから、剪断方向に5kgの荷重を掛けて剥がれなくなるまでに要する時間を測定した。
表1に示す原料を用意し、表2及び表3に示す量を配合して二液硬化型メタクリル系接着剤の主剤及び硬化剤を調製した。
実施例及び比較例記載の二液硬化型メタクリル系接着剤は、以下項目について評価し、その結果を表4に示す。
表4より明らかなように、メタクリル系モノマーとして単独でPII値が高い値を示す4ヒドロキシブチルアクリレートを使用した(炭素数8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートを含有していない)比較例1は、ショアD硬度が20であるため柔軟性は良好であるが、主剤及び硬化剤はともにPII値は非常に高い値を示すため重度刺激物に該当する。よって、接着剤に使用する場合は取り扱いに非常に注意が必要であり良好ではなかった。
炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートの含有量を調整した実施例1、比較例2、比較例3を検討する。まず、重合性メタクリル系モノマーの内、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートの含有量が30重量%未満である比較例3は、PII値は小さい値を示したものの、ショアD硬度は68を示し硬度が高いため、柔軟性が良好でなかった。また、重合性メタクリル系モノマーの30重量%〜70重量%が炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートである実施例1及び比較例2は、接着剤自体の柔軟性に寄与することが分かった。
次に、主剤、硬化剤で個々にPII値を検討する。主剤のPII値を確認すると、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートの含有量が多い順に並べると、比較例2はPII値=5.7、実施例2はPII値=5.2、比較例3はPII値=4となり、比較例2と実施例2を比べると実施例2の方が0.5減少していた。また、硬化剤のPII値を確認すると、比較例2はPII値=4.7に対して、実施例2のPII値=4.3、比較例3はPII値=0を示し、比較例2と実施例2を比べると実施例2の方が0.4減少しており、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートを多量に配合した場合と比較してPII値が減少することが確認できた。さらに、比較例2は、腐食性有りであった。したがって、皮膚刺激性の観点から、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートを多量に配合した場合はPII値が非常に大きい値を示し、かつ腐食性有りであることが分かった。
さらに、実施例2記載の組成物にさらにパラフィンワックスを含有した実施例1は、実施例2と比較すると主剤のPII値は0.7減少、硬化剤のPII値は1.0減少しており、PII値が小さくなることが確認できた。したがって、さらにパラフィンワックスを含有することでさらに皮膚刺激性が軽減されることが分かった。
また、実施例1及び2、比較例1乃至3は、引張せん断接着強さやT形剥離接着強さが良好であり、可使時間やセットタイムも良好であり、例えば薄い鋼板に剛性の高い補強材を接着するスチール製収納庫やスチール製物置の扉のような被着体が薄い平板に使用する接着剤として好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 重合性メタクリル系モノマー、有機過酸化物、液状ゴムを必須成分とする主剤と、重合性メタクリル系モノマー、還元剤、液状ゴムを必須成分とする硬化剤とから構成される二液硬化型メタクリル系接着剤において、前記主剤の重合性メタクリル系モノマーおよび前記硬化剤の重合性メタクリル系モノマーの30重量%〜70重量%が、炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートであることを特徴とする二液硬化型メタクリル系接着剤。
  2. 前記炭素数が8以上18以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキルメタクリレートがラウリルメタクリレートであることを特徴とする請求項1記載の二液硬化型メタクリル系接着剤。
  3. 前記主剤にさらにパラフィンワックスを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の二液硬化型メタクリル系接着剤。
  4. 前記有機過酸化物がハイドロパーオキサイド類であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤。
  5. 前記還元剤がバナジウム化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤。
  6. 前記硬化剤にさらにリン酸エステルを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の二液硬化型メタクリル系接着剤。



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