JP2019083782A - コーヒー飲料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱殺菌されたコーヒー飲料を、pH調整剤の使用量を低減した場合又はpH調整剤を使用しない場合でも、また製造工程を複雑化させることなく製造できる方法を提供する。【解決手段】脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを混合して、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%である原料組成物を調製し、前記原料組成物を加熱殺菌する、コーヒー飲料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明はコーヒー飲料の製造方法に関する。
生乳は乳脂肪と脱脂乳に分けられ、乳脂肪はクリームやバターの製造に用いられる。
脱脂乳を膜分離プロセスで濃縮した乳タンパク質濃縮物(MPC)は、タンパク質の摂取量を高めることを目的とした食品や飲料の原料として、需要が高まりつつある。乳タンパク質濃縮物の生産量が増えると、副産物である、ろ過膜の透過液(パーミエイト)の量も必然的に増えるが、透過液の有効な利用方法が少ないのが現状である。
特許文献1には、チーズ製造等の副産物である乳清を限外ろ過膜処理した際の透過液から得られる乳清ミネラルを、風味向上を目的としてミルク入りコーヒー飲料に添加する方法が記載されている。
ところで、ミルク入りコーヒー飲料等の乳成分を含有する飲料の製造において、乳成分を含む原料とコーヒーのような酸性成分を混合してから加熱殺菌すると乳タンパク質等が凝集して沈殿してしまうため、飲料の風味や外観が悪くなってしまう。
このため、特許文献1、2の実施例では、炭酸水素ナトリウム(重曹)を添加して、ミルク入りコーヒー飲料のpHを調整している(特許文献1、2)。
特開2011−177110号公報 特開平06−245703号公報 特開2000−175624号公報
しかしながら、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加すると、コーヒー原料の本来の風味や香味等が損なわれる場合がある。
なお、本発明者によれば、乳清ミネラルは、高カルシウムかつpHが低いため、乳清ミネラルの添加では、乳成分とコーヒー原料とを混合して加熱殺菌した場合の、タンパク質の凝集及び沈殿を抑制することはできない。
特許文献3には、乳成分とコーヒー原料とを別々に加熱殺菌した後に混合して容器に充填するコーヒー飲料の製造方法が開示されている。この方法によれば、pH調整剤を添加しなくても乳タンパク質の凝集や沈殿を防止することが可能であるが、乳成分とコーヒー原料とを別々に殺菌する必要があるため製造設備や工程が複雑になってしまう。
そのため、簡素な製造設備及び製造工程で、pH調整剤の使用量を低減した場合又はpH調整剤を添加しない場合でも、加熱殺菌によりタンパク質の凝集及び沈殿が発生せず、コーヒー原料の本来の風味を活かした飲料を製造する方法が望まれている。
本発明は、加熱殺菌されたコーヒー飲料を、pH調整剤の使用量を低減した場合又はpH調整剤を使用しない場合でも、また製造工程を複雑化させることなく製造できる方法を目的とする。
本発明者が鋭意検討をした結果、意外にも、脱脂乳の限外ろ過膜透過物を添加することにより、pH調整剤の使用量を低減し又はpH調整剤を使用せずに、全原料を混合してから加熱殺菌した場合でも、製造後のコーヒー飲料には、タンパク質の凝集及び沈殿が発生しないことを見出して本発明に至った。
本発明は以下の態様を有する。
[1]脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを混合して、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%である原料組成物を調製し、前記原料組成物を加熱殺菌する、コーヒー飲料の製造方法。
[2]脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを含有し、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%、である、コーヒー飲料。
本発明によれば、乳由来の成分である、脱脂乳の限外ろ過膜透過物またはその脱乳糖処理物を添加することで、加熱殺菌による乳成分の凝集及び沈殿が防止された、コーヒー飲料を製造できる。
本発明によれば、pH調整剤の使用量を低減した場合又はpH調整剤を使用しない場合でも、乳成分の凝集及び沈殿を防止できるため、乳成分及びコーヒー原料の本来の風味を活かしたコーヒー飲料を製造することが可能である。
本発明によれば、乳成分とコーヒー原料とを別々に加熱殺菌しなくても、乳成分の凝集及び沈殿を防止できるため、簡素な製造設備で、乳成分及びコーヒー原料の本来の風味を活かしたコーヒー飲料を製造することが可能である。
本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で変更できるものである。尚、本明細書において百分率(%)は特に断りのない限り質量による表示である。
本明細書において、「コーヒー飲料」とは、コーヒー原料を使用して加熱殺菌工程を経て製造される飲料のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約(1977年)」において定義される「コーヒー」、「コーヒー飲料」及び「コーヒー入り清涼飲料」を例示できる。
なお、コーヒー飲料であっても、乳固形分が3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受けて「乳飲料」とされるが、本発明におけるコーヒー飲料には、当該乳飲料も含むものとする。
本発明において、以下の測定方法を用いる。
脂肪含量は、レーゼ・ゴットリーブ法により測定する。
タンパク質含量は、ケルダール法により測定する。
灰分含量は、直接灰化法により測定する。
水分含量は、直接加熱乾燥法により測定する。
炭水化物含量は、全ての成分の合計から前記4成分(脂肪、タンパク質、灰分及び水分)の合計を減じて決定する(算出式:100%−(脂肪・タンパク質・灰分・水分の4成分の合計値))。
固形分含量は、水分含量以外の含量として、直接加熱乾燥法により測定された水分含量から算出する(算出式;100%−水分含量=固形分含量)。
コーヒー抽出物の固形分含量は、直接加熱乾燥法により測定する(算出式;100%−水分含量=固形分含量)。
灰分を構成する各ミネラルの含量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定する。
<組成物(A)>
組成物(A)として、脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品を用いる。両者を併用してもよい。
脱脂乳は、生乳、牛乳、生やぎ乳、生めん羊乳等の動物乳を、遠心分離等により脂肪画分(クリーム)と脱脂画分(脱脂乳)とに分離して得られるものである。脱脂画分を水で希釈した液、濃縮した液、粉末化したものを水に溶解した還元液等も膜分離処理に用いることができる。
「脱脂乳の限外ろ過膜透過物」とは、限外ろ過膜を使用して脱脂乳を膜分離処理して得られる透過液である。限外ろ過膜を用いた膜分離処理において、脱脂乳に含まれる水分や低分子量の成分(乳糖、灰分など)は限外ろ過膜を透過する。
脱脂乳の限外ろ過膜透過物は、膜分離処理により流出してくる透過液そのものでもよく、透過液から水分を減じる処理をした濃縮液でもよく、前記透過液または濃縮液を噴霧乾燥して得られる粉末でもよい。
また、脱脂乳の限外ろ過膜透過物に、結晶化等の処理を施して乳糖を部分的に除去した調整品も組成物(A)として使用できる。該調整品は限外ろ過膜透過物よりも灰分含量が高められている。乳糖の結晶化は、チーズホエイ等から乳糖を製造する場合と同様の手順で行うことができる(参考文献:山内邦男、横山健吉ら編、「ミルク総合事典」、朝倉書店、1992年、p.363)。すなわち、脱脂乳の限外ろ過膜透過物を減圧濃縮した後に冷却して乳糖を析出させ、析出した乳糖を分離することで、乳糖が部分的に除去された前記調整品を得ることができる。
脱脂乳の代表的なpHは、固形分換算で10質量%の水溶液の状態で、25℃において、6.0〜7.2である。
組成物(A)のpHは、固形分換算で10質量%の水溶液の状態で、25℃において、6.0〜7.2が好ましく、6.2〜7.0がより好ましい。
脱脂乳の限外ろ過膜透過物として、脱脂乳を限外ろ過膜で膜分離処理して乳タンパク質濃縮物(MPC)を製造する際の、副産物である透過液を用いることができる。
脱脂乳から乳タンパク質濃縮物(MPC)を製造する際の限外ろ過膜としては、中空糸膜、スパイラル膜又は平膜等の脱脂乳の膜濃縮に通常用いられるものを使用することができる。膜の分画分子量が1,000〜100,000Daのもの、又は膜の孔径が1〜100nmのものが用いることができる。
以下に、MPCを製造する際に得られる限外ろ過膜透過物の代表的な組成を、乾燥物(固形分)における含有量で示す。
脂肪含量:0〜0.3質量%。
タンパク質含量:2.8〜4.0質量%。
炭水化物含量:75.0〜90.0質量%。
灰分含量:5.5〜10.0質量%。
ナトリウム含量:450〜800mg/100g。
カリウム含量:2000〜3000mg/100g。
カルシウム含量:450〜650mg/100g。
マグネシウム含量:80〜120mg/100g。
リン含量:560〜840mg/100g。
塩素含量:1400〜2200mg/100g。
以下に、MPCを製造する際に得られる限外ろ過膜透過物から、乳糖を部分的に除去した調整品の代表的な組成を、乾燥物(固形分)における含有量で示す。
脂肪含量:0〜0.3質量%。
タンパク質含量:2.8〜16質量%。
炭水化物含量:40〜88質量%。
灰分含量:5.5〜40質量%。
ナトリウム含量:450〜3200mg/100g。
カリウム含量:2000〜13000mg/100g。
カルシウム含量:450〜2500mg/100g。
マグネシウム含量:80〜500mg/100g。
リン含量:560〜3500mg/100g。
塩素含量:1400〜9000mg/100g。
<コーヒー抽出物(B)>
「コーヒー抽出物」とは、焙煎したコーヒー豆、若しくはその破砕物から水や温水にて抽出されたコーヒー抽出液、又は、該コーヒー抽出液を原料として得られるコーヒーエキス(濃縮液)やインスタントコーヒー等の原料をいう。また、「コーヒー抽出物の固形分」とは、コーヒー抽出物に含まれる水分以外の成分を示す。
<タンパク質含有原料(C)>
タンパク質含有原料(C)は、コーヒー飲料の風味向上に寄与する。乳由来のタンパク質(乳タンパク質)を含む原料(ただし組成物(A)は除く。)を用いることが好ましい。
乳タンパク質を含む原料としては、主として哺乳動物から搾乳して得られた乳、乳を原料として得られるバター、クリーム、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク濃縮物、ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物等の乳製品、乳または乳製品を含む原料が例示できる。
<その他の原料>
前記組成物(A)、コーヒー抽出物(B)、またはタンパク質含有原料(C)のいずれにも該当しないその他の原料を、コーヒー飲料に配合してもよい。
その他の原料として、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、マルトース、パラチノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラフィノース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチュロース等の糖アルコール、グリチルリチン、ステビオサイド、レバウディオサイド、甜茶抽出物、甘茶抽出物等の天然甘味料、サッカリン、アスパルテーム等の人工甘味料、乳化剤、香料を例示できる。
本発明は、pH調整剤の使用量を低減した場合又はpH調整剤を添加しない場合でも、加熱殺菌による凝集及び沈殿の発生を防止できる。風味の点でpH調整剤を用いないか、または用いる場合は少量であることが好ましい。例えば、原料組成物に対して、pH調整剤の含有量が0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましく、ゼロが最も好ましい。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、L−アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸のナトリウム又はカリウム塩、および、その他食品衛生法上使用可能なpH調整剤が例示できる。pH調整剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明は、増粘多糖類の使用量を低減した場合又は増粘多糖類を添加しない場合でも、加熱殺菌による凝集及び沈殿の発生を防止できる。風味の点で増粘多糖類を用いないか、または用いる場合は少量であることが好ましい。例えば、原料組成物に対して、増粘多糖類の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましく、ゼロが最も好ましい。
増粘多糖類としては、結晶セルロース、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム等が例示できる。増粘多糖類は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<コーヒー飲料の製造方法>
本発明のコーヒー飲料の製造方法は、以下の(1)及び(2)の工程を含む。
(1)組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを混合して原料組成物を調製する原料組成物調製工程。
(2)前記原料組成物を加熱殺菌する加熱殺菌工程。
<原料組成物調製工程>
原料組成物は、組成物(A)、コーヒー抽出物(B)およびタンパク質含有原料(C)以外に、必要に応じて添加される、水、その他の原料を含む。
原料組成物に対して、組成物(A)由来の灰分の含有量は0.1質量%以上であり、0.12質量%以上が好ましい。前記下限値以上であると、加熱殺菌によるタンパク質の凝集及び沈殿を防止できる。前記組成物(A)由来の灰分の含有量の上限は、特に限定されないが、風味の点から3.0質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がより好ましい。
原料組成物に対して、コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量は0.1〜5質量%であり、0.2〜3.5質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%がより好ましい。前記範囲の下限値以上であると、加熱殺菌によるタンパク質の凝集や沈殿の問題が生じ易く、本発明を適用することによる効果が大きい。前記範囲の上限値以下であるとコーヒー風味が強くなりすぎることがなく、コーヒー飲料としての風味バランスが良い。
原料組成物に対して、タンパク質の含有量は0.1〜5質量%であり、0.4〜4.5質量%が好ましく、0.8〜4.0質量%がより好ましい。前記範囲の下限値以上であると、加熱殺菌によるタンパク質の凝集や沈殿の問題が生じ易く、本発明を適用することによる効果が大きい。前記範囲の上限値以下であるとコーヒー飲料としての風味バランスが良い。
原料組成物の総固形分は、0.5〜20.0質量%が好ましく、1.2〜16.0質量%がより好ましい。
原料組成物の脂肪含量は、0〜4.0質量%が好ましく、0.1〜4.0質量%がより好ましく、0.3〜3.0質量%がさらに好ましい。
原料組成物の炭水化物含量は、0.2〜10.0質量%が好ましく、0.5〜9.5質量%がより好ましい。
原料組成物の灰分含量は、0.1〜1.0質量%が好ましく、0.2〜0.75質量%がより好ましい。
原料組成物の25℃におけるpHは5.4〜7.4が好ましく、5.8〜7.2がより好ましく、6.0〜7.0がさらに好ましい。
原料組成物の灰分を構成する各ミネラルの含量は、原料組成物100g当りの含量(mg/100g)として、以下の範囲が好ましい。
原料組成物のナトリウム含量は、1〜43mg/100gが好ましく、3〜34mg/100gがより好ましい。
カリウム含量は、6〜189mg/100gが好ましく、14〜152mg/100gがより好ましい。
カルシウム含量は、4〜134mg/100gが好ましく、10〜107mg/100gがより好ましい。
マグネシウム含量は、0.1〜13mg/100gが好ましく、1〜10mg/100gがより好ましい。
リン含量は、3〜104mg/100gが好ましく、8〜84mg/100gがより好ましい。
塩素含量は、4〜140mg/100gが好ましく、10〜120mg/100gがより好ましい。
<加熱殺菌工程>
本工程では、原料組成物調製工程にて得られた原料組成物を加熱して殺菌することにより、コーヒー飲料を得る。加熱殺菌前または加熱殺菌後にコーヒー飲料を保存容器に充填する。
本発明における加熱殺菌とは、乳等省令で規定される牛乳の殺菌方法に準じて、「62〜65℃の間の温度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法」で加熱することを意味する。殺菌条件は、原料組成物の特性、使用する殺菌機(殺菌方式)及び容器等に応じて適宜設定することができる。
例えばUHT殺菌の場合、120〜150℃で1〜120秒間程度、好ましくは130〜145℃で2〜30秒間程度の条件である。
レトルト殺菌法の場合には、110〜130℃で10〜30分程度、好ましくは120〜125℃で10〜20分間程度の条件である。
殺菌方法は、加熱殺菌した原料組成物を殺菌処理された保存容器に充填する方法、または、原料組成物を加熱殺菌せずに缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法のいずれの方法でもよい。また、バッチ式殺菌、プレート式殺菌等の間接加熱法でもよく、インジェクション式殺菌、インフュージョン式殺菌等の直接加熱法でもよい。
保存容器としては、缶、PETボトル、ガラス瓶又は紙パック等が例示できる。
原料組成物を加熱殺菌した後、容器に充填するまでに、冷却、希釈、濃縮などの追加工程を設けてもよい。
殺菌方法として、レトルト殺菌を採用する場合等には、容器に充填したまま加熱殺菌及び冷却することができる。
<コーヒー飲料>
本発明のコーヒー飲料は、脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを含有し、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%である。
本発明によれば、加熱殺菌されたコーヒー飲料は、加熱殺菌によるタンパク質の凝集または沈殿が防止されたコーヒー飲料である。
本発明のコーヒー飲料の固形分の組成と、原料組成物の固形分の組成とは、加熱による変性を除いて同じである。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
以下の手順により、脱脂乳からMPCを製造する際の透過液を用いて、限外ろ過膜透過物、およびその調整品を調製した。
乳牛から搾乳した生乳(乳脂肪分3.8%、乳タンパク質3.3%、乳糖4.8%)を遠心分離して得た脱脂乳(乳脂肪0.1%、乳タンパク質3.4%、乳糖4.7%、灰分0.7%、水分91.1%)を用いた。
脱脂乳80kgを、限外ろ過膜(分画分子量10,000Da)に通液して、濃縮液12kgと、透過液68kgを得た。
該透過液を減圧濃縮法により濃縮した。得られた濃縮物を2つに分け、一方は乳糖を結晶化して除去した後に噴霧乾燥して、脱脂乳の限外ろ過膜透過物の調整品(1)を得た。
前記濃縮物の他方は、そのまま噴霧乾燥して、脱脂乳の限外ろ過膜透過物(2)を得た。
限外ろ過膜透過物の調整品(1)、限外ろ過膜透過物(2)の組成を表1に示す。固形分10%水溶液(25℃)のpHは、いずれも6.7であった。
[実験例1]
製造例1で得た限外ろ過膜透過物の調整品(1)を用い、表2に示す配合で原料組成物を調製し、加熱殺菌してコーヒー飲料を製造し、熱安定性を評価した。結果を表に示す。サンプルNo.1、2は比較例、サンプルNo.3〜6は実施例である。
具体的には、インスタントコーヒー(コーヒー抽出物粉末、ネスレジャパン株式会社製)、MPC(商品名「Promilk85」、Ingredia社製、乳タンパク質含量85%)、及び限外ろ過膜透過物の調整品(1)を水に溶解して原料組成物を調製した。原料組成物の25℃におけるpHは6.4であった。
得られた原料組成物200mLを容器に充填した後、120℃にて10分間加熱殺菌(レトルト殺菌)して、容器入りコーヒー飲料を得た。
本例では、原料組成物の加熱殺菌後に希釈または濃縮をしていないため、原料組成物の組成とコーヒー飲料の組成は同じである(以下の例でも同じ)。
(熱安定性の評価)
得られた容器入りコーヒー飲料から、容器内のコーヒー飲料20mLを取り出し、3000rpmにて10分間遠心分離した後に目視により沈殿量を確認した。沈殿量が0.25mlを超えた場合に沈殿有りと判定し、0.25ml以下の場合には沈殿無しと判定した。
[実験例2]
製造例1で得た限外ろ過膜透過物(2)を用い、表3に示す配合で、実験例1と同様にしてコーヒー飲料を製造し熱安定性を評価した。結果を表に示す。サンプルNo.11、12は比較例、サンプルNo.13〜16は実施例である。
インスタントコーヒーおよびMPCは実験例1と同じものを用いた。原料組成物の25℃におけるpHは6.5であった。
[比較実験例3]
限外ろ過膜透過物の調整品(1)の代わりに、乳清の限外ろ過膜透過物(以下、乳清ミネラルという。)を用いた。本例で用いた乳清ミネラル(商品名「みるくのミネラル」、株式会社ADEKA社製)の組成およびpHを表1に示す。
表4に示す配合で、実験例1と同様にして、コーヒー飲料を製造し熱安定性を評価した。結果を表に示す。サンプルNo.21〜25は比較例である。
原料組成物の25℃におけるpHは6.4であった。
Figure 2019083782
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表2の結果に示されるように、コーヒー飲料に対して、組成物(A)由来の灰分含量が0.1%以上になるように、限外ろ過膜透過物の調整品(1)を配合したサンプルNo.3〜6では、加熱殺菌処理してもコーヒー飲料中に沈殿が発生しないことが確認された。
表3の結果に示されるように、コーヒー飲料に対して、組成物(A)由来の灰分含量が0.1%以上になるように、限外ろ過膜透過物(2)を配合したサンプルNo.13〜16では、加熱殺菌処理してもコーヒー飲料中に沈殿が発生しないことが確認された。
これに対して、表4の結果に示されるように、組成物(A)に代えて乳清ミネラルを含有させたサンプルNo.21〜25では、コーヒー飲料に対して、乳清ミネラル由来の灰分含量が0.1%以上であっても、加熱殺菌処理したコーヒー飲料中の沈殿を抑制できないことが確認された。
[実施例1]
焙煎後のコーヒー豆(東京アライドコーヒーロースターズ株式会社製)を、電動コーヒーミル(商品名「TYPE−R440」、Fuji Royal社製、目盛り4.5)で粉砕した。得られた粉砕豆48gをイオン交換水840gにてドリップし、コーヒー固形分2.5%のコーヒー抽出液を得た。
表5に示す配合で、前記コーヒー抽出液、前記製造例1で得た限外ろ過膜透過物の調整品(1)、MPC(商品名「Promilk85」)、無塩バター(森永乳業社製)、ホエイパウダー(森永乳業社製)、乳糖(Milei社製)、ブドウ糖加糖液糖(昭和産業社製)、乳化剤(三栄源エフエフアイ社製)、香料(三栄源エフエフアイ株式会社製)、及びイオン交換水を混合して原料組成物を調製した。原料組成物の25℃におけるpHは6.4であった。
得られた原料組成物を容器に充填した後、120℃にて10分間加熱殺菌(レトルト殺菌)処理を行い、コーヒー飲料を得た。加熱殺菌処理してもコーヒー飲料中に沈殿は発生しなかった。
[比較例1]
表5に示す配合に変更したほかは、実施例1と同様にしてコーヒー飲料を製造した。本例では、限外ろ過膜透過物の調整品(1)、MPCおよび乳糖を用いず、脱脂粉乳(森永乳業社製)およびpH調整剤(炭酸ナトリウム、高杉製薬社製)を用いた。本例ではpH調整剤を用いて中和したため、原料組成物の25℃におけるpHは7.0であった。加熱殺菌処理してもコーヒー飲料中に沈殿は発生しなかった。
[官能評価]
実施例1、比較例1でそれぞれ得られたコーヒー飲料について、甘味、苦味、酸味、まろやかさ、後味、コク味及びコーヒー感という評価項目にて、選抜された8名の評価者によって官能評価を行った。具体的には、評価者がサンプルを試飲して、各評価項目について1点(弱い)〜7点(強い)の7段階で評価し、8名の平均値を算出した。結果を表6に示す。
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表6の結果に示されるように、まろやかさ及び後味については、実施例1と比較例1とではほとんど差が見られなかった。そのほかの評価項目については、甘味以外(苦味、酸味、コク味及びコーヒー感)の評価において、実施例1が比較例1よりも風味が強くなる傾向が確認された。とりわけ、酸味については、比較例1よりも実施例1の方が1.2ポイントも高くなり、大きな差があることが確認された。これは、実施例1ではpH調整剤を使用しなかったため、コーヒー飲料の酸味を緩和せずに、コーヒー本来の酸味を残しているためと考えられた。
以上のとおり、本発明によれば、組成物(A)を特定量添加することにより、pH調整剤を使用しなくても、また製造工程を複雑化させることなく、加熱殺菌時に生じるタンパク質由来の凝集物や沈殿物を抑制できる。その結果、コーヒー本来の酸味等を残した風味の良好なコーヒー飲料を製造できる。

Claims (2)

  1. 脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを混合して、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%である原料組成物を調製し、前記原料組成物を加熱殺菌する、コーヒー飲料の製造方法。
  2. 脱脂乳の限外ろ過膜透過物または前記限外ろ過膜透過物中の乳糖を低減した調整品の少なくとも一方である組成物(A)と、コーヒー抽出物(B)と、タンパク質含有原料(C)とを含有し、前記組成物(A)由来の灰分の含有量が0.1質量%以上、前記コーヒー抽出物(B)の固形分の含有量が0.1〜5質量%、かつタンパク質の含有量が0.1〜5質量%、である、コーヒー飲料。
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