JP2019081822A - 虫忌避塗料組成物 - Google Patents
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白蟻防除用コーティング材として、水性樹脂エマルション、シラン系撥水剤、コロイダルシリカ及び防蟻剤を含む組成物が開示されている(特許文献1)。
また、樹脂エマルション、ピレスロイド系化合物、特定の無機粉末、有機溶剤を含み、pHを特定の範囲に調整した害虫忌避塗料組成物が開示されている(特許文献2)。
また、特許文献2では、その効果の持続性が高いものではあるが、塗料組成物中に無機粉末を添加するものであるため、その形成された塗膜が下地の色などを隠してしまい、害虫忌避性の必要な部分のみ塗装することができない場合がある。
更に、有機溶剤も添加するため、その有機溶剤の種類によっては、虫が好み集まる場合もある。又、この有機溶剤は、揮発性有機化合物を含むものが多いため好ましいものではない。
まず、合成樹脂エマルションは、虫忌避塗料組成物が塗膜になった場合に被塗布物へ密着させるものであり、虫忌避塗料組成物中のピレスロイド系化合物などの添加成分を塗膜中に留めておくためのものであり重要な要素である。
これらには、アクリル系,ウレタン系,アクリル・ウレタン系,アクリルシリコン系,シリコーン系,フッ素系,エポキシ系,エステル系,ビニル系,アルキド系,メラミン系,の合成樹脂エマルションなどが挙げられ、天然ゴムや合成ゴムやそれらの共重合体のエマルジョンなど一般に市販されている合成樹脂エマルジョンであっても良い。
この合成樹脂エマルションのTgが5℃以下である必要がある。
0℃より低い温度の場合には、合成樹脂エマルションの分散媒である水の蒸発量が少なくなり、乾燥に時間がかかることになる。又、虫忌避塗料組成物の凍結の恐れもあるため、加温しながらの塗装が好ましい条件となる。
この場合では、その有機溶剤の種類により特定の虫などが集まりやすくなることもある。又、塗料により形成された塗膜から有機化学物質が揮発することもあるため好ましいものではない。
このピレスロイド系化合物は、天然ピレスロイド系化合物であっても、合成ピレスロイド系化合物であってもよい。この天然ピレスロイド系化合物としては、ピレトリン、シネリン、ジャスモリンが挙げられる。
また、無機酸,有機酸などの各種酸や水酸化ナトリウム等の無機アルカリや各種アミン系化合物などのpH調整剤を添加し、虫忌避塗料組成物のpHを7.5〜9.0の範囲に調整することで、安定性の良いものとなる。
この虫忌避塗料組成物は、上記記載の成分により構成され、酸化チタンなどの白色顔料や炭酸カルシウムなどの体質顔料を加え、被塗装物の色を変えることができるエナメル塗料やマット塗料のような形態にすることも可能である。
このように艶消しクリヤー型の虫忌避塗料組成物とすることで、経年経過し、劣化した被塗装物であっても、その被塗装物の艶の程度が近くなり、艶消しクリヤー型虫忌避塗料組成物と塗布しても違和感のない状態にすることができる。
そのため、虫忌避塗料組成物の樹脂固形分が5.0〜30.0重量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、虫忌避性の成分を保持し、その効果の持続性を持たすことができ、その組成物により形成された塗膜の艶を容易に調整することができる。つまり、この範囲内の樹脂固形分であれば、十分な艶のある塗膜を得ることのできる塗料であり、後述する艶消し剤の添加し、その添加量も少なくて済み、それにより艶の消えた塗膜を容易に得ることができるものである。
これら艶消し剤の添加量は、虫忌避塗料組成物の樹脂成分に対して、1.0〜20.0重量%の範囲が好ましいものであり、1.0重量%より少ない場合は、塗膜の艶が十分に消えていない状態であり、20.0重量%より多い場合では、被塗装物の色が薄くなり有効に使うことができないこともある。
さらに、この虫忌避塗料組成物にコロイダルシリカを含有させることが好ましく、これにより、塗膜の乾燥性が優れ、艶を消すための調整を行い易いものである。
そのため、被塗装物がスレート板などの無機系のものの場合にその付着力がより向上することもあり、又、塗膜の乾燥性が良くなることもある。塗膜中にコロイダルシリカの細かい粒子が点在することで、塗膜の艶を落とすことができ調整することができる。
一般的な虫忌避効果の評価方法には、下記のような方法が行われる。
金網製の2個のケージを用意し、1つのケージには、吸血意欲の旺盛な供試虫の成虫一群と脱脂綿に浸した砂糖水を配置し、一晩以上静置する。
その両ケージを筒状のサラン網で連結し、処理区とする。その処理区と同様の試験装置を用い、液状の虫忌避物を塗布したろ紙やベニヤ板を設置しない試験区を設け対照区とする。
吸血率および滞留率を算出し、平均吸血率および平均滞留率から、下記の式によりそれぞれの阻止指数を算出する。これらの指数が90以上のとき、侵入阻止効果または吸血阻止効果があると判定する連結ケージ法がり、侵入阻止効果の評価などの方法がある。
反復は3回行い、試験時間中の処理板、対照板の脱落がないこと、供試虫のケージからの逃亡がないことで試験成立とする。
しかしながら、これらの方法では、その試験が特定の虫類に対しての効果を判断するものであり、虫忌避性が必要な場所での測定には適さないものである。又、その方法も専門的なものであるため、容易に行うことができないものであり、改善の余地があるものである。そのため、対象となる場所に適した虫忌避性の効果の評価の方法を挙げる。
この網に虫忌避塗料組成物を塗布し、乾燥させ虫忌避性の試験体を作製する。この試験体を誘引物に被せ、虫類が誘引物に寄り付くかにより虫忌避塗料組成物の効果を評価し判断することができる。
メッシュなどの目開きが比較的広い網は、虫忌避塗料組成物などを塗布するため、虫忌避塗料組成物の付着性の良好なものがよく、その素材は、天然繊維,化学繊維及びガラス繊維のような繊維状のものである。
これら網,誘引物を用い虫忌避塗料組成物の効果を評価することができ、その効果をより判断し易くするために、虫忌避塗料組成物を塗布していない網を誘引物に覆ったものや誘引物のみのものを同じ場所に置き比較し、評価することが好ましい。
この網に虫忌避物を塗布し、乾燥させたものを試験体とし、虫忌避効果を判断するものとして作成する。この試験体の大きさは、誘引物の全体を覆う大きさであればよい。
この場合、誘引物と試験体との間に空間が有り、その空間に入った虫類の数によりその効果を評価することができる。又、その空間内や誘引物に残った虫類の死骸など捕獲数により、その効果を評価することができる。その虫類の捕獲数やその数が多い場合は、捕獲した虫類の全数の重量などにより、比較することができる。
虫忌避塗料組成物として、アクリル系の合成樹脂エマルションを用いた。アクリル系合成樹脂エマルションのTgは、5℃であり、最低造膜温度も5℃であった。その固形分は、47.0重量%のものであった。
虫忌避成分であるピレスロイド系化合物は、エトフェンプロックスであり、その有効成分が50.0重量%の水分散体のものを用いた。
このバインダー成分にエトフェンプロックスの有効成分の添加量が5.0重量%,15.0重量%,20.0重量%となるように添加したものを用意した。
虫忌避塗料組成物2として、樹脂固形分が10.0重量%で、エトフェンプロックスの有効成分が15.0重量%に調整したものとした。
虫忌避塗料組成物3として、樹脂固形分が30.0重量%で、エトフェンプロックスの有効成分が5.0重量%に調整したものとした。
虫忌避塗料組成物Bとして、樹脂固形分が30.0重量%で、エトフェンプロックスの有効成分が20.0重量%に調整したものとした。
虫忌避塗料組成物6として、樹脂固形分が47.0重量%で、エトフェンプロックスの有効成分が15.0重量%に調整したものとした。
比較用虫忌避塗料組成物1として、樹脂固形分が10.0重量%で、エトフェンプロックスを添加していないものとした。この場合の樹脂は、Tgが5℃のものだった。
また、比較用虫忌避塗料組成物2として、虫忌避塗料組成物1と同じ配合とし、合成樹脂エマルションのみTgが20℃のものに置き換え作製した。
さらに、これらの虫忌避塗料組成物を目開きが5mmのポリエステル繊維からなるメッシュに塗布した。この塗布方法は、離型紙の上にメッシュを置き、片面ずつ、刷毛により塗付を行った。これらを乾燥させ試験体とした。このメッシュの大きさは、誘引物を覆うことができる大きさであり、縦25cm,横60cm程度であった。
誘引物には、一般的に販売されている殺虫灯を用意した。この殺虫灯の大きさは、縦が10cm,横が15cm,高さが25cm程度の小型のものであり、殺虫灯には、LEDの青色の光を放ち虫類を誘引するものを用いた。
この誘引物である殺虫灯を11個用意し、それぞれに前記試験体1〜6、試験体A〜C、比較用試験体1を覆うことで試験機器とし、この試験機器に虫類が寄り付くかの測定評価を行った。その測定評価の時には、試験体を掛けないものも同じ場所に設置した。
各試験機器で捕獲された虫類の目視観測や重量を測定し、虫類の少ない試験体に虫除け効果があるものと判断した。
虫忌避塗料組成物Cを塗布した試験体Cの試験機器や虫忌避塗料組成物6,虫忌避塗料組成物B,虫忌避塗料組成物4の試験体でのものは、その得られた虫類の重量を測定することができない程度の少量の虫類であった。目視で確認したところ、ほぼ変わらない個数のようであるが、記載の順で少ない感じがあった。
虫忌避成分のエトフェンプロックスを入れたものについては、それを添加していないものと比較して虫忌避効果があった。又、比較的多くのエトフェンプロックスを添加した虫忌避塗料組成物B,Cについては、その効果はあるもののその添加量に見合うものではなかった。
さらに、これら虫忌避塗料組成物を構造物の壁面に塗布し、その仕上がり具合を確認した。その確認には、グレー色で塗装され、その塗装後3年程度経過し、若干劣化をした建築物の壁面を利用した。又、その塗装は、塗装用ローラーにより行った。
以上、説明した本実施形態による虫忌避塗料組成物によれば、以下に示す作用効果が得られる。
また、この範囲の添加量であることから十分な虫忌避性能を得ることができ、虫忌避塗料組成物に均一に分散させることができるものである。
・合成樹脂エマルションのTgが−10℃以上のものであることにより、形成された塗膜に汚れなどが付き難いものである。
・コロイダルシリカを含有させることにより、無機系の下地との密着性が向上し、塗膜の乾燥性が優れたものである。又、艶を消すための調整を行い易いものである。
・コロイダルシリカの含有量がその固形分で、塗料固形分中に3.0〜20.0重量%の範囲であることにより、艶の調整に影響を与えないことがなく、無機系下地に対しての付着が向上し、虫忌避塗料組成物の安定性に影響しないものである。
・虫忌避塗料組成物が艶消しのクリヤー塗料であることにより、経年経過し、劣化した被塗装物であっても、その被塗装物の艶の程度が近くなり、艶消しクリヤー型害虫忌避塗料組成物と塗布しても違和感のない状態にすることができる。
・艶消し剤の添加量が虫忌避塗料組成物の樹脂成分に対して、1.0〜20.0重量%の範囲であることにより、塗膜の艶が十分に消え、被塗装物の色が薄くなることなく、有効に使うことができるものである。
また、本実施形態による虫忌避効果の評価方法によれば、以下に示す作用効果が得られる。
・網の目開きが2〜10mmの範囲であることにより、害虫など虫類の通りが容易に可能で、ある程度の塗布面積を確保することができるものである。
・誘引物と試験体との空間や誘引物に残った虫類の死骸など捕獲数で、その効果を評価することにより、より容易に効果を評価することができる。
Claims (3)
- ガラス転移温度が5℃以下の合成樹脂エマルションとピレスロイド系化合物とからなる塗料組成物であって、
ピレスロイド系化合物の添加量が合成樹脂エマルションの固形分に対して、3.0〜15.0重量%の範囲である虫忌避塗料組成物。 - 請求項1に記載の虫忌避塗料組成物であって、
その塗料組成物の樹脂固形分が5.0〜30.0重量%の範囲である虫忌避塗料組成物。 - 請求項1又は請求項2に記載の虫忌避塗料組成物であって、
前記さらにコロイダルシリカを含有させる虫忌避塗料組成物。
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