以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
本発明においてバスケットカテーテルは、遠位側と近位側を有するものであり、結石等の体内の異物を捕捉する籠状のバスケット部を有する医療用の処置具である。バスケットカテーテルを、以下、単に「カテーテル」と称することがある。本発明のカテーテル1は、外筒部材2と、内挿部材3と、バスケット部10と、位置調節部材30と、を有している。図1、図3は、本発明の実施の形態に係るカテーテル1の遠位側の平面図(一部断面図)を表し、図2、図4はそれぞれ図1、図3に示すカテーテル1を遠位端から見たときの正面図を表す。図1は位置調節部材30の回転前の状態を示し、図3は位置調節部材30の回転後の状態を示している。なお、図2および図4では、位置調節部材30、内挿部材2および接続具20を省略して記載している。
本発明において、カテーテル1の近位側とは、カテーテル1の延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、カテーテル1の近位側から遠位側への方向を軸方向と称する。
本発明のバスケットカテーテル1は内視鏡を用いた治療に用いられ、内視鏡の鉗子口を通じて、内視鏡の鉗子口の遠位側から体内に配置され、処置部まで到達する。カテーテル1のすべての材料は生体適合性を有することが望ましい。外筒部材2は、遠位側と近位側を有しており、内腔にバスケット部10(バスケット鉗子)を収容することができる。外筒部材2は、内部にバスケット部10を収容することによって、カテーテル1が内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って異物の近くに搬送されるまでの間にバスケット部10の弾性ワイヤ15が内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、異物以外の体内組織等を傷付けることを防止する。
外筒部材2としては、樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が特定のパターンで配置された筒状体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは軸方向の全体にわたって一定の密度で形成されていてもよく、軸方向の位置によって異なる密度で形成されていてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には複数の環状の溝やらせん状の溝が形成されていてもよい。中でも、溝32が金属管の軸方向の中央よりも遠位側の外表面(特に外周面)に形成されていることが好ましい。
外筒部材2は樹脂または金属から構成されることが好ましい。外筒部材2を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。また、外筒部材2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni−Ti合金、Co−Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特に、Ni−Ti合金から構成されている線材は、形状記憶性および高弾性に優れている。また、線材は、上述の金属、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維材料であってもよい。繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。また、樹脂から構成されている筒状体に金属線材等の補強材が配設されているものを外筒部材2として用いてもよい。
内挿部材3は外筒部材2の内腔に配置されている。内挿部材3は近位側に設けられるハンドル50と遠位側のバスケット部10に接続されており、手元側の操作を遠位側に伝達する。
内挿部材3は外筒部材2と同様の樹脂または金属から構成されることが好ましい。内挿部材3の材料は、外筒部材2の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。内挿部材3は外筒部材2と同様に樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
内挿部材3が中実状に形成されているか、あるいは複数の線材が結束または撚られて形成されていることが好ましい。これにより内挿部材3の外径を小さくすることができるため、外筒部材2内に後述する位置調節部材30や連結部材40を収容しやすくなる。バスケット部10を形成する弾性ワイヤ15を長尺で準備し、弾性ワイヤ15の遠位部分にバスケット部10を形成し、バスケット部10の第2結束部(後述する)よりも近位部分を内挿部材3とすることができる。当該ワイヤの近位部分を結束したり、撚り合わせて内挿部材3を形成することができる。
内挿部材3が中空状に形成されていることが好ましい。これにより、バスケット部10で捕捉された異物を除去等するための補助処置具を内挿部材3内に配置することができる。別の補助処置具によって、管腔内または異物の観察や捕捉した異物の除去等の処置を行うことができ、嵌頓の防止、症例に応じた手技の選択肢の増加、低侵襲治療の促進といった効果が得られる。例えば、内視鏡を併用して、胆管内の結石を除去する場合、内視鏡を胆管内に挿入することができないため、十二指腸に配置された内視鏡から胆管内に挿入されたカテーテル1から、追加の処置具である補助処置具を挿入することによって、処置の効率を高め、治療の低侵襲性を促進することができる。補助処置具としては、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、鉗子、レーザープローブ、ファイバースコープ、電気水圧衝撃破砕プローブまたはガイドワイヤが挙げられる。
中空状の内挿部材3として、一または複数の線材がらせん状に巻回されて形成されている中空体を用いてもよい。内挿部材3は遠近方向の一部が中空体であることが好ましく、軸方向全体が中空体であってもよい。複数の線材がらせん状に巻回されて形成される中空体は、複数の線材を撚り合わせて芯のない中空体として形成することもできる。中空体は、中空体が複数重なった複層中空体であることが好ましい。複層中空体は、例えば、芯材に線材を巻きつけてコイルを形成し、そのコイルの上にさらに線材を巻きつけてコイルを形成することにより形成することができる。このような中空体は、手元側のトルクをバスケット部10に伝達しやすくなり、異物の捕捉操作を容易に行うことができる。
図示していないが、内挿部材3は中空コイル体の近位端部に接続されている金属管をさらに有していてもよい。金属管が設けられることによって内挿部材3の軸方向への伸び率を抑えることができる。中空体をコイル状に形成する場合は、中空コイル体の内側または外側に、遠近方向に沿って延在している伸長抵抗部材を配置し、伸長抵抗部材の一方端部と他方端部を中空コイル体に固定することができる。これにより中空コイル体が軸方向に伸びることを抑制できる。
外筒部材2や内挿部材3は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。また、軸方向において外筒部材2の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよく、内挿部材3についても同様である。
造影剤や薬液等の流体から外筒部材2や内挿部材3を保護するために、外筒部材2や内挿部材3の外側表面、内側表面にはコーティング剤が塗布されていてもよい。また、内挿部材3に対するガイドワイヤの摺動性を高めるために、内挿部材3の内側表面には潤滑剤が塗布されていてもよい。さらに、外筒部材2に対する内挿部材3の摺動性を高めるために、外筒部材2の内側表面や内挿部材3の外側表面には潤滑剤が塗布されていてもよい。
バスケット部10は体内で異物を捕捉するために設けられる。図1、図3に示すようにバスケット部10は内挿部材3の遠位側に配置され、内挿部材3の周方向に並んで配置されている3本以上の弾性ワイヤ15によって形成されている拡張可能なものである。3本以上の弾性ワイヤ15は第1結束部と、第1結束部よりも近位側の第2結束部でそれぞれ結束されている。弾性ワイヤ15には湾曲形状や屈曲形状が付与され、籠状に形成される。これにより2箇所の結束部の間に異物を捕捉する捕捉部16が形成される。バスケット部10の第2結束部よりも遠位側を外筒部材2から露出させることによって、弾性ワイヤ15が径方向の外方に拡張し、捕捉部16に異物を捕捉することができる。弾性ワイヤ15の形状は、同一平面上を通る形状であってもよく、らせん状など、ワイヤ全体が同一平面にない形状であってもよい。
弾性ワイヤ15は、弾性を有する線状部材であり、形状記憶合金または形状記憶樹脂から構成されることが好ましい。弾性ワイヤ15は例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、Ni−Ti合金、Co−Cr合金等から構成されている単線または撚線の金属線材であってもよい。中でもNi−Ti合金から構成されている金属線材であることが好ましい。弾性ワイヤ15の個数は特に制限されないが、例えば、3本以上、4本以上、5本以上、6本以上、8本以上、10本以上、または、20本以下、15本以下であっても許容される。
捕捉部16において、弾性ワイヤ15は直線状に形成されていてもよく、曲線状に形成されていてもよい。また、捕捉部16において弾性ワイヤ15は屈曲している部分(屈曲部)を有していることが好ましい。屈曲部において、弾性ワイヤ15は湾曲していてもよく、折り曲げられていてもよい。このように捕捉部16を形成することによって異物を捕捉しやすくなる。
捕捉部16において、バスケット部10の最大径部13よりも遠位側と近位側において、弾性ワイヤ15が異なる材料から構成されていてもよい。例えば、最大径部13よりも近位側に配置されている弾性ワイヤ15が、最大径部13よりも遠位側に配置されている弾性ワイヤ15よりも硬度が低いことが好ましい。これにより、最大径部13よりも近位側に配置されている弾性ワイヤ15は変形しやすいため、位置調節部材30により移動する一部の弾性ワイヤ15とこれと隣り合う他の弾性ワイヤ15の距離を好適に離すことができる。
バスケット部10は最大径部13を挟んで近位側と遠位側で弾性ワイヤ15の個数が異なっていてもよく、例えば、最大径部13よりも遠位側の個数を近位側よりも多くすることができる。このようにバスケット部10を形成することにより、異物の捕捉操作と除去操作の両方を容易にかつ効率よく行うことができる。
バスケット部10では3本以上の弾性ワイヤ15が第1結束部において結束されている。第1結束部において、弾性ワイヤ15はそれぞれが接していてもよいし、接していなくてもよい。例えば、先端チップ11によって弾性ワイヤ15が第1結束部で結束されていてもよい。熱溶着または銀ロウ付け、接着、かしめ加工などの方法により、複数の弾性ワイヤ15が結束されていてもよい。また、複数の弾性ワイヤ15を用いて結び目を形成することにより、これら弾性ワイヤ15が結束されていてもよい。
図示していないが、先端チップ11は複数の弾性ワイヤ15の遠位端部が挿入されるワイヤ挿入孔を有していることが好ましい。先端チップ11は、このようなワイヤ挿入孔を複数有していてもよい。
先端チップ11を構成する材料としては、外筒部材2を構成する樹脂、金属、またはこれらの組み合わせが挙げられる。先端チップ11を構成する金属は、ステンレス鋼、Ni−Ti合金であることが好ましい。
図示していないが、先端チップ11にはバスケットカテーテル1とは別の処置具である補助処置具を挿通させる処置具挿通路が設けられていてもよい。処置具挿通路は、内挿部材3の長軸方向に沿って延在していることが好ましい。先端チップ11に処置具挿通路を設けることによって、補助処置具の遠位端をカテーテル1の遠位端よりも遠位側に配置しやすくなる。
内挿部材3の径方向において、先端チップ11の外径は、外筒部材2の内径よりも大きいことが好ましい。外筒部材2内に弾性ワイヤ15を収容しても、先端チップ11が外筒部材2の遠位端に引っ掛かり、バスケット部10が外筒部材2の近位側に過度に移動することを防ぐ。また、収容後に手技を行う際にも弾性ワイヤ15を外筒部材2から直ぐに露出することができるので、手技を効率よく行うことができる。
図1〜図4に示すように、バスケット部10では、3つ以上の弾性ワイヤ15が第2結束部において結束されている。第2結束部において、弾性ワイヤ15はそれぞれが接していてもよいし、接していなくてもよい。例えば、接続具20によって、弾性ワイヤ15が第2結束部で結束されていてもよい。第2結束部において、3つ以上の弾性ワイヤ15と内挿部材3が接続具20によって接続されていることが好ましい。接続具20は、円筒状や多角筒状等の筒状に形成することができる。接続具20は例えば、先端チップ11や外筒部材2と同様の材料から構成することができる。接続具20は、弾性ワイヤ15とともに外筒部材2内に収容されるため、接続具20の外径は、外筒部材2の内径よりも小さいことが必要である。また、熱溶着または銀ロウ付け、接着、かしめ加工などの方法により、複数の弾性ワイヤ15や接続具20が互いに第2結束部で結束されていてもよい。
内挿部材3が中空状に形成されている場合、接続具20も、例えばリング状、筒状の中空状に形成されており、接続具20の周壁に弾性ワイヤ15が固定されていることが好ましい。接続具20は、遠位側から弾性ワイヤ15の近位端部が挿入されているワイヤ挿通路を複数有していてもよい。その場合、複数のワイヤ挿通路が周方向に並んで配置されることが好ましい。ワイヤ挿通路は、等間隔に並んで配置されることが好ましいが、不均等に並んでいてもよい。内挿部材3と3つ以上の弾性ワイヤ15を筒状の接続具20を介して接続することによって、内挿部材3の内腔に挿通される補助処置具を併用することができる。
位置調節部材30は、外筒部材2の遠位側に配置されているものであり、外筒部材2の周方向に回転可能であり、一部の弾性ワイヤ15のみが位置調節部材30の回転とともに移動する。図1〜図4では、6本の弾性ワイヤ15(15a〜15f)を有するバスケットカテーテル1を示している。図1〜図2に示す位置調節部材30を回転させると、図3〜図4に示すようにこの回転に伴い一部の弾性ワイヤ15(弾性ワイヤ15d)が移動するため、一部の弾性ワイヤ15(15d)とこれと隣り合う他の弾性ワイヤ15(15e)の距離を離すことができる。このような状態を開口状態という。位置調節部材30の回転は、位置調節部材30の長軸方向を軸とする回転を意味する。
位置調節部材30を反対向きに回転させることによって、バスケット部10の形状を開口状態(図3〜図4)から元の状態(図1〜図2)に戻すことができる。このような操作が可能であるため、捕捉した異物をバスケット部10から除去する必要が生じたときに、位置調節部材30を回転操作してバスケット部10の形状を開口状態にすることができ、バスケット部10の内部の結石が開放されやすくなり、嵌頓の発生を防ぐことができる。また、位置調節部材30によって一部の弾性ワイヤ15のみを移動させ、他の弾性ワイヤ15を移動させないため、位置調節部材30によって設けられた隙間から捕捉した異物を脱落させることができる。さらに、より小さい力で一部の弾性ワイヤ15を移動させることができる。したがって、本発明のバスケットカテーテル1によれば、異物の捕捉操作と除去操作の両方を容易にかつ効率よく行うことができる。
位置調節部材30の回転に伴い移動する一部の弾性ワイヤ15は、カテーテル1の弾性ワイヤ15の全部でなければよい。図3〜図4では1本の弾性ワイヤ15dが移動する例を示したが、複数の弾性ワイヤ15が移動してもよい。また、位置調節部材30が回転しても移動しない残りの弾性ワイヤ15も単数でも複数でもよい。
位置調節部材30の回転とともに一部の弾性ワイヤ15が外筒部材2の周方向に移動することが好ましく、一部の弾性ワイヤ15のみが外筒部材2の周方向に移動し、残りの弾性ワイヤ15が外筒部材2の軸方向にも周方向にも移動しないことがより好ましい。これによりバスケット部10の開口状態を形成しやすくなる。
位置調節部材30は、棒状または筒状に形成されていることが好ましい。その場合、位置調節部材30は遠近方向に沿って延在している。このように位置調節部材30を略回転対称形に構成することにより、形状がよりコンパクトになるため、カテーテル1の送達やバスケット部10の拡張および収縮を阻害することを防ぐことができる。中でも、筒状の位置調節部材30はその内腔に内挿部材3や他の処置具を挿通することができるため、より好ましい。
位置調節部材30の遠近方向と垂直な方向における断面形状は、円形状、楕円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせにすることができるが、外筒部材2または内挿部材3との摺動性を良好にするためには円形状であることが好ましい。
弾性ワイヤ15の周方向の変位に関わらず、外筒部材2の遠位端よりも近位側に配置されているバスケット部10の長軸方向の長さが変わらず一定であることが好ましい。このようにバスケット部10の長さを設定することにより、異物の捕捉と除去のいずれの操作も行いやすくなる。
外筒部材2の半径方向において、位置調節部材30の最大外径が、外筒部材2の最大内径よりも小さいことが好ましい。その場合、位置調節部材30は遠近方向に沿って移動可能であることが好ましい。このように位置調節部材30の半径方向の長さを設定することにより、位置調節部材30を外筒部材2内に収容することができるため、バスケット部10を患部まで送達する際に位置調節部材30が生体内壁に接触することを防げる。
カテーテル1の遠近方向における位置調節部材30の位置は特に限定されないが、位置調節部材30の遠位端がバスケット部10の最大径部13よりも近位側に配置されることが好ましい。これにより、位置調節部材30が弾性ワイヤ15と接触して異物の除去操作を阻害することを抑制できる。
カテーテル1には、位置調節部材30の遠位端がバスケット部10の最大径部13を超えて遠位側に移動することを防ぐための機構が設けられていてもよい。位置調節部材30が最大径部13を超えて遠位側に移動すると開口状態が維持されず位置調節部材30の回転に伴い移動する一部の弾性ワイヤ15とその他の弾性ワイヤ15との距離は小さくなるためである。このため、位置調節部材30に接続されている連結部材(後述する)の軸方向における移動幅が制御されていることが好ましい。例えば、ハンドルに位置調節部材の遠近方向への移動を制限するラッチが設けられていることが好ましい。位置調節部材30は、ハンドル50の内部、外筒部材2の内部など任意の箇所で連結部材に接続することができるが、位置調節部材30と連結部材とが一体であってもよい。その場合、位置調節部材30の近位側を連結部材と称することができる。
カテーテル1の搬送時には、内視鏡の鉗子チャンネルの内壁や生体内壁に接触しないようにするために、位置調節部材30の遠位端は、内挿部材3の遠位端よりも近位側に配置されていることが好ましい。これにより、内挿部材3の遠位側に設けられた弾性ワイヤ15と位置調節部材30が干渉することを防止できる。また、弾性ワイヤ15との係合や位置調節部材30の回転を円滑に行うために、位置調節部材30の回転時には、位置調節部材30の遠位端は、バスケット部10の最大径部13よりも近位側かつバスケット部10の近位端よりも遠位側に配置されていることが好ましい。
位置調節部材30は樹脂または金属から構成されていることが好ましく、例えば、外筒部材2と同様の材料から構成することができる。すなわち、位置調節部材30は好ましくは金属管または樹脂チューブである。
位置調節部材30は、弾性ワイヤ15よりも高い曲げ剛性を有していることが好ましく、より好ましくは位置調節部材30の遠位端部が弾性ワイヤ15よりも高い曲げ剛性を有する。このように弾性を設定することにより、位置調節部材30と弾性ワイヤ15の接触時に弾性ワイヤ15がより変形しやすくなるため、位置調節部材30を軽く回転させるだけで一部の弾性ワイヤ15を移動させることができる。
図5は、図1に示すバスケットカテーテル1のX−X線に沿った断面図である。図5に示すように、位置調節部材30は筒状に形成されており、内挿部材3が位置調節部材30の内腔に配置されていることが好ましい。その場合、内挿部材3が中空状に形成されていることが好ましい。このように位置調節部材30を配置することにより、内挿部材3と外筒部材2間のクリアランスを有効活用することができる。また内挿部材3が中空状に形成されていれば、カテーテル1に位置調節部材30を設けても内挿部材3の内腔に別の処置具を挿通させることができる。ここで内挿部材3が位置調節部材30の内腔に配置されているとは、内挿部材3の少なくとも一部が配置されている態様も全部が配置されている態様も含んでいる。
図6〜図7は、図5に示すカテーテル1の変形例を示す断面図である。内挿部材3が筒状に形成されており、内挿部材3の内腔に位置調節部材30が配置されていることが好ましい。その場合、位置調節部材30は図6に示すように棒状に形成されていてもよく、図7に示すように筒状に形成されていてもよい。このように筒状の内挿部材3の内腔に位置調節部材30を配置することで、内挿部材3の内腔を有効活用することができる。ここで内挿部材3の内腔に位置調節部材30が配置されているとは、位置調節部材30の一部が配置されている態様も全部が配置されている態様も含んでいる。
図8〜図15に示すように、位置調節部材30は遠位端から近位側に向かって延在している溝32またはスリット33を有しており、溝32またはスリット33に一部の弾性ワイヤ15が配置されていることが好ましい。周方向への移動対象である弾性ワイヤ15が溝32またはスリット33に引っ掛かることにより、位置調節部材30の回転に伴い一部の弾性ワイヤ15が移動しやすくなる。ここでスリット33は径方向に沿って位置調節部材30を貫通しているものであり、溝32は径方向に沿って位置調節部材30を貫通していないものである。
溝32またはスリット33は、弾性ワイヤ15の延在方向に沿って形成されていることが好ましく、位置調節部材30の遠位端から近位側に向かって延在していることがより好ましい。これにより、位置調節部材30の回転前の状態で、弾性ワイヤ15が溝32またはスリット33に引っ掛かるため、弾性ワイヤ15が自由に位置することを抑制できる。
溝32またはスリット33は、遠近方向に沿って直線状に延在していてもよく、遠位端から近位側に向かって曲線状、または直線と曲線を組み合わせた形状に延在していてもよい。また、溝32またはスリット33は蛇行した形状であってもよく、鋸歯形状であってもよい。弾性ワイヤ15がらせん状に形成されている場合、位置調節部材30のスリット33は遠近方向に沿って直線状に延在していることが好ましい。弾性ワイヤ15がスリット33に引っ掛かりやすくなるため、弾性ワイヤ15の周方向への移動を行いやすくなる。
溝32またはスリット33は、一または複数設けられていてもよい。バスケット部10の開口状態を形成しやすくするためには、位置調節部材30においてスリット33または溝32が複数設けられていることが好ましい。その場合、複数のスリット33または複数の溝32は、周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。すなわち、複数のスリット33または複数の溝32が、位置調節部材30の長軸方向を中心として回転対称に配置されていることが好ましい。回転対称に配置される弾性ワイヤ15を、溝32またはスリット33に配置しやすくなる。ここで、溝32またはスリット33の数は、位置調節部材30の外周面(遠位端面と近位端面を除く面)に現われている溝32またはスリット33の数をカウントしている。
溝32またはスリット33の数は、弾性ワイヤ15の総本数よりも少ない。これにより、位置調節部材30の回転に伴い、一部の弾性ワイヤ15を移動させることができるとともに、残りの弾性ワイヤ15が移動しにくくなる。
上述した位置調節部材30の具体的な構成例について、図8〜図15を参照しながら説明する。図8〜図13は、位置調節部材30の長軸方向と垂直な方向の断面図を示しており、図14は、位置調節部材30のスリット33の形状を示す側面図を示しており、図15は拡径部34を有する位置調節部材30を含むバスケットカテーテル1の側面図を表す。
図8では位置調節部材30が筒状に形成されており、溝32が位置調節部材30の外側(外周面)に配置されており、図9では位置調節部材30が棒状に形成されており、溝32が位置調節部材30の外側(外周面)に配置されている例を示している。このように外周面に溝32が設けられている位置調節部材30はレーザー加工等によって容易に製造することができる。
別の実施態様として、図10に示すように位置調節部材30が筒状に形成されており、溝32が位置調節部材30の内側(内周面)に配置されていることが好ましい。弾性ワイヤ15は自然に拡径するように弾性が付与されているため、位置調節部材30の内側に配置されている溝32内に弾性ワイヤ15が収まりやすくなり、弾性ワイヤ15が位置調節部材30に強固に固定される。
各溝32には1本または複数本の弾性ワイヤ15が配置されることが好ましいが、弾性ワイヤ15が過度に変形することを防ぐため、1本の弾性ワイヤ15が配置されることが好ましい。したがって、溝32の幅は弾性ワイヤ15の外径以上の大きさを有していることが好ましく、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上である。溝32から弾性ワイヤ15が脱落することを防止するために、溝32の幅は弾性ワイヤ15の外径の3倍以下であることが好ましい。
溝32の幅は遠近方向において一定であってもよく異なっていてもよいが、弾性ワイヤ15を溝32に配置しやすくするためには、溝32の幅は遠近方向において一定であることが好ましい。
位置調節部材30を回転させたときに弾性ワイヤ15が溝32から脱落することを防止する観点では、位置調節部材30の半径方向における溝32の深さは弾性ワイヤ15の外径の0.8倍以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは外径以上の大きさであり、さらに好ましくは外径の1.25倍以上の大きさであり、また、4倍以下や3倍以下の大きさに設定することも許容される。
さらに別の実施態様として、図11に示すように位置調節部材30が筒状に形成されており、遠位端部にスリット33が配置されていてもよい。また、図12に示すように位置調節部材30が棒状に形成されており、スリット33が配置されていてもよい。
位置調節部材30にスリット33が複数設けられる場合、図13に示すように位置調節部材30の外周面を周方向に二等分割したときに一方の領域(第1領域)にスリット33が設けられており、他方の領域(第2領域)にはスリット33が設けられていない態様とすることもできる。これにより、第1領域の付近に配される弾性ワイヤ15を移動させつつ、第2領域の付近に配される弾性ワイヤ15の移動を抑制できる。ここではスリット33の例で説明したが、溝32の場合も同様に第1領域にスリット33を設け、第2領域には設けない態様とすることができる。
スリット33の幅は溝32の幅と同様に設定することができるが、スリット33内に弾性ワイヤ15を引っ掛けた後に弾性ワイヤ15を抜けにくくするためには、図14に示すようにスリット33の幅が遠位端よりも近位端で大きいことが好ましい。弾性ワイヤ15の抜け防止効果を発揮しやすくするためには、遠位端でのスリット33の幅が近位端のスリット33の幅の1.2倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上である。なお、図14ではスリット33の幅が遠近方向の途中で階段状に変化しているが、スリット33の幅は徐々に変化してもよい。
図15に示すように、位置調節部材30は、遠位端に向かって外径が大きくなっている拡径部34を有していることが好ましい。その場合、拡径部34に溝32またはスリット33が設けられていることが好ましい。拡径部34を設けることにより、溝32またはスリット33の幅が遠位側に向かって広がるため、弾性ワイヤ15を配置しやすくなる。
拡径部34の外径は、位置調節部材30の近位端の外径よりも大きく形成されていればよいが、溝32またはスリット33に弾性ワイヤ15を配置しやすくするためには、位置調節部材30の近位端の外径の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。図15に示される実施形態においては、位置調節部材30は、バネ弾性を有する材料で構成され、位置調節部材30は、内挿部材3に収納された状態では内挿部材3の内径よりも小さく、内挿部材3または外筒部材2の外側に放出された状態では内挿部材3または外筒部材2の外径よりも最大径が大きくなることが好ましい。これにより、収納状態では位置調節部材30が弾性ワイヤ15に干渉せず、放出状態では溝32またはスリット33に弾性ワイヤ15が掛かりやすくなる。
拡径部34の形状は特に限定されないが、位置調節部材30を側面から見たときに、遠位端が周方向全体で近位端よりも径方向の外方に位置していてもよく、遠位端が周方向の一部で近位端よりも径方向の外方に位置していてもよい。より具体的には、拡径部34は遠位端に向かって内径が大きくなる錐形状としてもよい。
弾性ワイヤ15の拡径部34への引っ掛かりを良好にするためには、遠近方向において、拡径部34はバスケット部10の全長の5%以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。他方、拡径部34が過度に長いとバスケット部10での異物の捕捉操作および除去操作を阻害する可能性があることから、遠近方向において、拡径部34はバスケット部10の全長の50%以下の大きさであることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。
以下では位置調節部材30のさらに他の実施態様について、図16〜図19を参照して説明する。なお、位置調節部材30の形状の理解を容易にするため、図17〜図19では先端チップ11と弾性ワイヤ15と接続具20の図示を省略している。図16〜図17はそれぞれ棒状の位置調節部材30を含むカテーテル1の側面図および遠位側から見た正面図(一部断面図)である。図16〜図17に示すように、位置調節部材30が、外筒部材2の長軸方向に沿って延在している軸方向延在部35と、外筒部材2の長軸中心から離れる方向に延在している放射方向延在部36と、を有していることが好ましい。このように位置調節部材30が軸方向延在部35を有していることにより、位置調節部材30を外筒部材2の内腔に配置しやすくなる。また、位置調節部材30の放射方向延在部36に弾性ワイヤ15を接触させた後、位置調節部材30を回転させることによっても、一部の弾性ワイヤ15を移動させることができる。
放射方向延在部36は、外筒部材2の長軸中心から離れる方向に延在していれば、半径方向に沿って直線状に延在していてもよく、曲線状または直線と曲線を組み合わせた形状に延在していてもよい。
図16に示すように、位置調節部材30は放射方向延在部36が内挿部材3の遠位端面と対向していることが好ましい。このように位置調節部材30が形成されていれば、放射方向延在部36と弾性ワイヤ15が略垂直となり、放射方向延在部36によって弾性ワイヤ15を引っ掛けやすくなるため、バスケット部10を開口状態に形成しやすくなる。
図18は、図17に示す位置調節部材30の変形例を示す正面図(一部断面図)である。図18に示すように、位置調節部材30は、外筒部材2の長軸方向と垂直な断面において放射方向延在部36よりも先端側に、内挿部材3の外周方向に沿って延在している周方向延在部37を有していることが好ましい。周方向延在部37によって、弾性ワイヤ15の第2結束部付近を引っ掛けやすくなるため、バスケット部10を開口状態に形成しやすくなる。なお、位置調節部材30は、近位側から順に軸方向延在部35、放射方向延在部36、周方向延在部37が配置されていることが好ましい。
図19は、図18に示す位置調節部材30の変形例を示す正面図(一部断面図)である。図19に示すように筒状に形成されている位置調節部材30が、軸方向延在部35と放射方向延在部36と周方向延在部37を有していてもよい。例えば、軸方向延在部35が筒状体であり、該筒状体の外周面から放射方向に延びている放射方向延在部36が設けられており、放射方向延在部36の径方向外方端から周方向に沿って延びている周方向延在部37が形成されていることが好ましい。
図19に示すように、位置調節部材30の遠位側に一部の弾性ワイヤ15を挟む挟持部38が設けられていることが好ましい。挟持部38で一部の弾性ワイヤ15を挟むことにより、位置調節部材30を回転させたときに弾性ワイヤ15が位置調節部材30から外れて、弾性ワイヤ15同士の距離が元に戻ることを抑制できる。図19では、挟持部38が位置調節部材30の外周面と放射方向延在部36によって形成されているが、本態様に限られない。
次に図20〜図21を参照して、カテーテル1の近位側の構成例について説明する。位置調節部材30の回転または軸方向(長軸方向)への移動操作を行うために、位置調節部材30の近位側には操作部材54が接続されていることが好ましい。操作部材54は連結部材40を遠近方向に軸移動するための機構であれば特に限定されず、スライドレバーのほか、ボタン、回転ハンドル、回転つまみ等であってもよい。
操作部材54の材料としては、例えば、ABSやポリカーボネート等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
位置調節部材30と操作部材54は、連結部材40を介して接続されていることが好ましい。連結部材40は遠近方向に延在している線状体、筒状体、または棒状体とすることができる。図20〜図21では、連結部材40として遠近方向に延在している筒状体を用いた例を示している。
外筒部材2と内挿部材3の操作性を向上させるため、外筒部材2または内挿部材3の近位側には中空部55を有しているハンドル50が設けられることが好ましい。図20〜図21では、ハンドル50が第1ハンドル51と第2ハンドル52を備えており、第1ハンドル51が内挿部材3の近位端側に接続されており、第2ハンドル52が外筒部材2の近位端側に接続されている。第1ハンドル51や第2ハンドル52は、内挿部材3や外筒部材2の近位端側を挿入可能とするために筒状に形成されていることが好ましい。
ハンドル50の材料としては、操作部材54と同様の材料を使用することができる。
第1ハンドル51の内腔は、内挿部材3の内腔と連通していてもよい。第1ハンドル51の内腔は、ガイドワイヤの挿通路以外に薬剤や生体体腔内の流体等の通路として機能させてもよい。また、外筒部材2の内腔であって内挿部材3の外側と連通している第2ハンドル52の内腔を、薬剤や生体体腔内の流体等の通路として機能させてもよい。
内挿部材3と第1ハンドル51、外筒部材2と第2ハンドル52の接合は、接着剤や熱溶着など従来公知の接合手段を用いて行うことができる。第1ハンドル51は、第2ハンドル52よりも近位側に配置されている。第2ハンドル52の近位端には、例えば環状の抵抗部材53が設けられていてもよい。これにより、第1ハンドル51に対する第2ハンドル52の位置が意図せずにずれることを防止できるため、外筒部材2と内挿部材3の相対位置を固定することができる。
操作部材54は、ハンドル50の中空部55内に配置されている弾性部材56と接触していることが好ましい。これにより、操作部材54を操作することで、容易に位置調節部材30をスライドさせることができる。図20では第2ハンドル52に中空部55が設けられており、図21では第1ハンドル51に中空部55が設けられている。
図20では、操作部材54としてのスライドレバーが外筒部材2に接続されている第2ハンドル52に設けられている中空部55内に配置されている弾性部材56としてのばね部材と接触している。図21では、操作部材54としてのスライドレバーが、内挿部材3に接続されている第1ハンドル51に設けられている中空部55内に配置されている弾性部材56としてのばね部材と接触している。
ばね部材の近位端部に操作部材54が接触していることが好ましい。これにより、スライドレバーを遠位側に押し込んだ状態、すなわち、ばね部材を付勢した状態では、連結部材40は遠位側に移動するため、連結部材40に接続されている位置調節部材30をバスケット部10の遠位端に向かってスライドさせることができる。他方、スライドレバーから手を離すとばね部材への付勢が解除され、連結部材40は最近位に配置される結果、連結部材40に接続されている位置調節部材30もバスケット部10の近位側に配置される。このようにハンドル50に操作部材54と弾性部材56を設けることにより、一方向にのみ操作を行うことで容易に位置調節部材30をスライドさせることができる。
弾性部材56としては、コイルばね、板ばね、ぜんまいばね等のばね部材や、ゴム部材を用いることができる。