JP2019079798A - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法並びにセパレータ前駆体 - Google Patents

燃料電池用セパレータ及びその製造方法並びにセパレータ前駆体 Download PDF

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信吉 村上
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Jun Nakatsuka
淳 中塚
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Mamoru Ishii
守 石井
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Toru Inaguma
徹 稲熊
孝 飯島
Takashi Iijima
孝 飯島
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Abstract

【課題】ガス不透過性及び導電性において優れ、耐食性、表面平坦性、及び可撓性においても優れた性能を有する燃料電池用セパレータ及びその製造方法並びにセパレータ前駆体の提供。【解決手段】金属薄板からなる金属基材1の少なくとも片面に、炭素樹脂複合層2と、この炭素樹脂複合層の外周側面に周辺補強層7とを備え、前記炭素樹脂複合層は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含み、該炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%であり、また、該測定範囲よりも内側に、MEAに相対面して接触する発電部を備え、発電部の樹脂含有率が5〜50質量%及び空隙率が3〜30体積%であり、前記周辺補強層は、不織布8及び補強用樹脂5を含み、該不織布の含有率は20〜80体積%であり、該不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータX。【選択図】図1

Description

この発明は、燃料電池用セパレータ、及びその製造方法、並びにセパレータ前駆体に係り、特に金属基材とこの金属基材の少なくとも片面に積層された炭素樹脂複合層とを備えると共に、この炭素樹脂複合層の外周側面には、不織布及び補強用樹脂を含む周辺補強層を備え、優れたガス不透過性、導電性、耐食性、表面平坦性、及び可撓性を有するものであり、特に限定するものではないが、固体高分子形燃料電池用セパレータとして好適な燃料電池用セパレータ、及びその製造方法、並びにセパレータ前駆体に関する。
近年、100℃以下の低温で作動可能な固体高分子形燃料電池が注目され、車両用駆動電源や定置型発電装置として開発や実用化が進められている。そして、一般的な固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性の電解質膜を挟んでその両外側にそれぞれアノード及びカソードとなる触媒層が配置された膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)と、この膜電極接合体を挟んでそれぞれ触媒層の外側に配置されたガス拡散層と、更にこれらガス拡散層の外側に配置されたセパレータとからなる構造を基本構造(単位セル)とし、通常は、必要な出力を達成するために必要な数の単位セルをスタックすることにより構成されている。なお、本明細書においては、前記膜電極接合体にさらにガス拡散層を積層した5層の接合体(5層MEA)を、以下、単に「MEA」と呼ぶことにする。
そして、このような固体高分子形燃料電池の単位セルにおいては、アノード側とカソード側にそれぞれ配されたセパレータのガス流路から、カソード側には酸素や空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の燃料ガスをそれぞれ供給し、これら供給された酸化性ガス及び燃料ガス(以下、これらを「反応ガス」ということがある。)を、それぞれガス拡散層を介して触媒層まで供給し、アノードの触媒層で起こる化学反応とカソードの触媒層で起こる化学反応との間のエネルギー差(電位差)を利用して仕事を電力の形で取り出している。例えば、燃料ガスとして水素ガスが、また、酸化性ガスとして酸素ガスが使用される場合には、アノードの触媒層で起こる化学反応〔酸化反応:H2→2H++2e-(E0=0V)〕と、カソードの触媒層で起こる化学反応〔還元反応:O2+4H++4e-→2H2O(E0=1.23V)〕とのエネルギー差(電位差)を仕事として取り出している。
そして、固体高分子形燃料電池の単位セルを構成するセパレータは、各単位セル間を仕切るという機能だけでなく、酸化性ガスをMEAの触媒層に供給する流路及び燃料ガスを触媒層に供給する流路を形成してこれら反応ガスを触媒層まで完全に分離した状態で一様に供給する機能、各単位セルの触媒層で発生した電子(電流)を集める集電の機能、MEAで発生した熱を外部に放出する放熱の機能等をも果たしており、従って、このセパレータには、反応ガスを透過させないガス不透過性、及び集電のための優れた導電性が求められるほか、使用環境が強酸雰囲気になるために高い耐食性が求められている。更に、セパレータには、所望の実用的な出力を得るために、多数の単位セルをスタックする必要があるが、その際の各単位セル間(即ち、各単位セルのセパレータ間)の密着性やシール性を担保するための表面平坦性が求められており、また、より高出力を得るためには限られたスペースにより多数の単位セルをスタックする必要があることから薄肉化の要望があり、この薄肉化に際しては、燃料電池の製造過程での取扱い性や例えば自動車搭載後の使用時の耐振動性等を確保する必要が生じ、所定の可撓性を有することも求められている。
そこで、従来においても、固体高分子形燃料電池用のセパレータについて、そのセパレータ性能の改善を目的に、様々な観点で数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、黒鉛粉末と2種類のフェノール樹脂を所定の割合で混合して得られた混合樹脂との混練物を粉砕し、得られた成形粉を予備成形してプリフォームを作製し、次いでプリフォームを熱圧成形して得られ、吸水伸び率、アンモニウムイオン溶出量、及び全有機炭素溶出量がいずれも低い黒鉛/樹脂硬化成形体からなり、ガス不透過性、低電気抵抗、及び機械的強度(曲げ強度)に優れているだけでなく、吸水時の伸び率が低く、電池性能に優れた固体高分子形燃料電池用セパレータが提案されている。
また、特許文献2には、黒鉛粉末と所定のエポキシ樹脂、所定のフェノール樹脂、及び所定の硬化剤を所定の割合で混合して得られた混合樹脂との混練物を粉砕し、得られた成形粉を予備成形してプリフォームを作製し、次いでプリフォームを熱圧成形して得られ、吸水伸び率、アンモニウムイオン溶出量、及び全有機炭素溶出量がいずれも低い黒鉛/樹脂硬化成形体からなり、ガス不透過性、電気伝導性、及び強度特性(伸び率及び曲げ強度)に優れているだけでなく、長期使用時の寸法安定性に優れており、長期間安定した発電が可能な固体高分子形燃料電池用セパレータが提案されている。
更に、特許文献3においては、黒鉛等の導電性材料と樹脂(フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂)とを含む粉末状原料を充填容器内に上面が平らになるように充填し、次いでこの粉末状原料を加熱して仮成形し、得られた仮成形品を所定のパターンを有する金型に入れて加熱・加圧下に成形し、ガス不透過性及び導電性に優れているだけでなく、面精度(厚み精度)にも優れた燃料電池セパレータの製造方法が提案されている。
更にまた、特許文献4においては、体積抵抗率の低い第1の成形材料からなるセパレータ本体と、このセパレータ本体の周縁部に設けられた曲げ強度に優れた第2の成形材料からなる補強体部とを有し、セパレータ本体と補強体部との界面が凹凸面又は傾斜面を含み、優れた導電性及び機械的特性を有する燃料電池用セパレータ及びその製造方法が提案されている。
また、特許文献5においては、炭素質材料と熱可塑性樹脂との導電性樹脂組成物からなり、表裏に各々所定の流路が形成された導電性流路部と、この導電性流路部の周りを取り囲む所定の絶縁性熱可塑性樹脂からなる絶縁性外周部とを有し、これら導電性流路部と絶縁性外周部とが一体化されており、導電性、機械的特性に優れ、軽量かつコンパクトであって、ガスケットやパッキンを使用せずに燃料電池スタックを構成することができる燃料電池用セパレータ及びその製造方法が提案されている。
そして、特許文献6においては、膨張黒鉛粉末及び黒鉛粉末からなる炭素粉末と所定のフェノール樹脂とを所定の割合で混合し、得られた混合物を圧縮成型し、得られたカーボン板を金属板の少なくとも片面に接合して得られた複合カーボン板からなり、ガス不透過性及び導電性に優れているだけでなく、柔軟性や圧縮強度にも優れており、固体高分子形燃料電池用セパレータとして好適であることが開示されている。
また、特許文献7においては、ステンレススチール、チタン、チタン合金、又は、アルミニウム合金等の金属箔と、この金属箔の少なくとも片面に形成され、炭素粉末(天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、又は膨張黒鉛粉末等)及び熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂)からなるカーボン層と、所定の接着剤からなり、前記金属箔とカーボン層の間を接合する接着剤層とを有するカーボン複合材であり、ガス不透過性(気密性)及び導電性に優れているだけでなく、柔軟性、圧縮強度、成形性、及び耐食性にも優れており、固体高分子形燃料電池用セパレータとして好適であることが開示されている。
特開2005−251501号公報 WO2006/049319号 特開2006−244937号公報 特開2008−311108号公報 特開2008−91110号公報 WO2014/148649号 特開2016−110724号公報
しかしながら、これら特許文献1〜7においては、燃料電池用セパレータに要求されるガス不透過性、導電性、耐食性、スタック時における各単位セル間(セパレータ間)の密着性を確実にするための表面平坦性、及び可撓性という性能(セパレータ性能)の全てを同時にかつ十分に満たすことは難しく、また、固体高分子形燃料電池の分野においては、特に自動車用燃料電池の分野において、セパレータの更なる薄肉化や高性能化が求められており、各セパレータ性能についても更なる改善が求められている。
すなわち、特許文献1〜5においては、セパレータが黒鉛粉末等の炭素材とこの炭素材のバインダーとなる樹脂(バインダー樹脂:熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂)との混合材料を成形して形成されていることから、セパレータ性能のうちのガス不透過性及び導電性という基本的な性能が互いにトレードオフの関係にあり、これらガス不透過性及び導電性の改善には限界があるほか、耐食性、表面平坦性、及び可撓性についても、混合材料として使用する炭素材及び/又はバインダー樹脂の種類や配合割合等に大きく影響され、これらセパレータ性能の全てを同時にかつ十分に満たすことは困難である。
また、特許文献6及び7においては、セパレータが金属基材(特許文献6の金属板、及び特許文献7の金属箔)とこの金属基材の少なくとも片面に積層された炭素樹脂複合層(特許文献6のカーボン板、及び特許文献7のカーボン層)からなり、前記炭素樹脂複合層が黒鉛粉末等の炭素材とこの炭素材のバインダーとなる樹脂(バインダー樹脂:熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂)との混合材料を成形して形成されていることから、導電性とトレードオフの関係にあるガス不透過性については金属基材により確実に達成されるという利点がある。
しかしながら、金属基材の表面に積層される炭素樹脂複合層については、その導電性を向上させるために炭素材の配合割合を高くすると、この炭素樹脂複合層の表面平坦性が低下し、これに伴ってたとえばシールに用いるパッキンとセパレータ表面の間に隙間ができやすく、ガスリークの頻度が高まるという問題が発生することが判明した。また、この問題を解決するために、単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部(以下、単に「発電部」と呼ぶ場合がある。)以外の周辺の部分(以下、これを「周辺部」と呼ぶことがある。)には、絶縁性の樹脂からなる周辺補強層を設けてこの周辺部の表面平坦性を確保することにより上記の表面平坦性の問題を解消したところ、意外なことには、MEAの製造工程で生じるセパレータの撓みにより耐食性が低下するという別の問題が発生することが判明した。そこで、発電部の周辺に周辺補強層を設けて表面平坦性の問題を解消した際に、この耐食性低下の問題が発生する原因について更に検討した結果、セパレータに対して、製造過程での取扱い時等における撓みや自動車に搭載した後の使用時における振動等(以下、単に「撓みや振動等」ということがある。)が作用すると、炭素樹脂複合層とこの炭素樹脂複合層に設けられた周辺補強層との界面付近から極微細な亀裂等の極微細欠陥が発生し、この極微細欠陥が起点となって金属基材に腐食が始まり、また、進行することを突き止めた。
本発明者らは、セパレータに上記の耐食性を低下させる極微細欠陥が発生する原因について検討し、炭素樹脂複合層とその周辺部に設けられた周辺補強層との界面付近で樹脂含有率が急激に変化し、セパレータに撓みや振動等が作用した際に、炭素樹脂複合層と周辺補強層との界面付近に応力が集中し、この応力集中に起因してセパレータに極微細欠陥が発生すると考えた。
そして、本発明者らは、この考えの下に、撓みや振動等が作用しても極微細欠陥の発生を可及的に抑制して耐食性を確保することができ、これによって優れたガス不透過性、導電性、耐食性、表面平坦性、及び可撓性を有するセパレータの開発を進めた結果、この周辺部に設けられる周辺補強層を形成するに際して、その樹脂の一部が、炭素樹脂複合層側に含浸されるように工夫することにより、炭素樹脂複合層と周辺補強層とが両者の界面付近で一体となりながらも、両者の樹脂含有率の急激な変化が生じないような構造となることを知見した。さらに、本発明者らがこのような構造の適正化について検討を進めたところ、周辺補強層には、当該樹脂の加熱時の流動が抑制されるような繊維からなる不織布を介在させることにより、周辺補強層を構成する樹脂を抱え込んで、それにより炭素樹脂複合層側等に必要以上に流出することを抑え、また、それと共に、周辺補強層としての賦形性が確保されることも知見した。そして、これらの構造を有するセパレータを実際に成り立たせるためには、周辺補強層を形成する際にその樹脂の一部が含浸しやすいような空隙を持った炭素樹脂複合層〔樹脂が予備硬化の状態である予備成形体(前駆体)〕が必要であり、このような空隙を有した炭素樹脂複合層の予備成形体(前駆体)を、前記周辺補強層の予備成形体(前駆体)と共に熱間圧縮処理することにより、前述のように、炭素樹脂複合層側に、周辺補強層側よりの樹脂の一部が含浸されてなる部分を持つセパレータが得られることを見出した。そして、これらの知見を併せて、炭素樹脂複合層の外周側面に樹脂を含む周辺補強層が設けられたセパレータとすることにより、セパレータの周辺部の表面平坦性が確保させるだけでなく、撓みや振動等が作用した際に、炭素樹脂複合層とその周辺部(周辺補強層)との間に応力が集中するのを可及的に防止することができ、これによってセパレータ全体に所望の可撓性が付与されて極微細欠陥の発生が抑制され、耐食性を顕著に改善できることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、単にガス不透過性及び導電性において優れているだけでなく、耐食性、表面平坦性、及び可撓性においても優れた性能を有する燃料電池用セパレータを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このようなガス不透過性、導電性、耐食性、表面平坦性、及び可撓性において優れた性能を有する燃料電池用セパレータの製造方法を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、ガス不透過性、導電性、耐食性、表面平坦性、及び可撓性において優れた性能を有する燃料電池用セパレータを製造する上で有用なセパレータ前駆体を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、炭素樹脂複合層と、この炭素樹脂複合層の外周側面に周辺補強層とを備えた燃料電池用セパレータであり、
前記炭素樹脂複合層は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含むと共に、該炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%であり、また、少なくとも該測定範囲よりも内側に、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部を備えて、この発電部は樹脂含有率が5〜50質量%及び空隙率が3〜30体積%であり、
前記周辺補強層は、不織布及び補強用樹脂を含み、該不織布の含有率は20〜80体積%であり、また、該不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
(2)前記周辺補強層を構成する補強用樹脂が熱硬化性樹脂である(1)に記載の燃料電池用セパレータ。
(3)前記炭素樹脂複合層の金属基材側から厚さ12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率が30〜80体積%である(1)又は(2)に記載の燃料電池用セパレータ。
(4)前記金属基材の厚みが10〜200μmであり、前記炭素樹脂複合層及び周辺補強層の厚みがそれぞれ20〜500μmである(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
(5)前記炭素材が平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末からなる(1)〜(4)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
(6)金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、炭素樹脂複合層と、この炭素樹脂複合層の外周側面に周辺補強層とを備えた燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
前記金属基材の表面に、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含む混合材料を配して、この混合材料を固定化処理して金属基材の表面上に混合材料層を形成する工程(工程a)と、
不織布に補強用樹脂を配し、これらを熱間圧縮処理して補強用樹脂の一部又は全部が不織布に含浸された不織布−樹脂複合層を形成する工程(工程b)と、
前記金属基材の表面に形成された混合材料層の外周側面に前記不織布−樹脂複合層を配置し、これらを固定化処理して、前記混合材料層と不織布−樹脂複合層とが金属基材の表面上に固定化されてなるセパレータ前駆体を形成する工程(工程c)とを備えており、また、
これら工程a及び工程cにおけるいずれかの固定化処理が熱間圧縮処理であって、これらいずれかの熱間圧縮処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させ、前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成し、また、工程cにおける固定化処理が熱間圧縮処理であって、工程b及び工程cのいずれかの熱間圧縮処理により、前記不織布−樹脂複合層中の補強用樹脂を予備硬化させ、前駆体状態の補強用樹脂と不織布とを含むプリプレグ層を形成する予備硬化処理であり、更に
前記セパレータ前駆体を熱間圧縮処理して、前記プリフォーム層及びプリプレグ層を本硬化させて、金属基材の表面に炭素樹脂複合層と周辺補強層とをそれぞれ形成すると共に、前記プリプレグ層における前駆体状態の補強用樹脂を溶融させて、一部の溶融補強用樹脂を炭素樹脂複合層側に含浸させて、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部を形成する工程(工程d)とを備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
(7)前記工程aで用いる混合材料が溶媒を含んだスラリーであって、この工程aでの固定化処理がスラリー中の溶媒を除去する溶媒乾燥処理であり、また、工程cでの固定化処理が熱間圧縮処理であって、この工程aでの固定化処理と工程cでの固定化処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成すると共に、当該プリフォーム層と前記プリプレグ層とを、金属基材の表面上に固定する(6)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(8)前記工程aで用いる混合材料が粉体であって、この工程aでの固定化処理が熱間圧縮処理であって、工程a及び工程cのいずれかの熱間圧縮処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成すると共に、この工程cでの熱間圧縮処理により、当該プリフォーム層と前記プリプレグ層とを金属基材の表面に固定する(6)に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(9)前記工程cで得られるセパレータ前駆体のプリフォーム層が50〜80体積%の空隙率を有し、前記工程dで得られる炭素樹脂複合層の発電部が3〜30体積%の空隙率を有する(6)〜(8)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(10)前記混合材料に含まれるバインダー樹脂と炭素材との質量比が5:95〜50:50である(6)〜(9)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(11)前記炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm幅の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%である(6)〜(10)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(12)前記不織布−樹脂複合層を形成するに際し、平均繊維径が1〜20μmである繊維から構成される不織布を用いると共に、当該不織布の含有率を10〜80質量%とする(6)〜(11)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(13)前記炭素材として、平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末を用いる(6)〜(12)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(14)前記工程aにおいて混合材料層が形成される金属基材の表面には、接着剤が塗布されている(6)〜(13)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
(15)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを調製するためのセパレータ前駆体であって、
金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、前駆体状態の熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂及び炭素材を含むプリフォーム層と、このプリフォーム層の外周側面に配される、前駆体状態の補強用樹脂と不織布とを含むプリプレグ層とを備えており、
前記プリフォーム層は、樹脂含有率が5〜50質量%であると共に、空隙率が50〜80体積%であり、また、
前記プリプレグ層は、不織布の含有率が20〜80体積%であり、当該不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであり、
使用時には、熱間圧縮により、前記プリフォーム層中及び前記プリプレグ層中の前駆体状態の樹脂を本硬化させて、プリフォーム層を炭素樹脂複合層に変換させ、また、プリプレグ層を周辺補強層に変換させると同時に、前記プリプレグ層における補強用樹脂の一部を溶融させてプリフォーム層側に含浸させて、セパレータを形成することができることを特徴とするセパレータ前駆体。
(16)前記プリフォーム層は。示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜50%であり、また、前記プリプレグ層は、示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜70%である(15)に記載のセパレータ前駆体。
(17)前記プリフォーム層は、鉛筆硬度測定において6Bで傷がつく荷重が20〜100gであることを特徴とする(15)又は(16)に記載のセパレータ前駆体。
(18)前記金属基材の厚みが10〜200μmであり、前記プリフォーム層及び前記プリプレグ層の厚みが、それぞれ30〜1500μmである(15)〜(17)のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
(19)前記炭素材が平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末からなる(15)〜(18)のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
(20)前記プリフォーム層における金属基材側から厚さ12.5μmの界面層での樹脂の平均体積分率が30〜80体積%である(15)〜(19)のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
なお、樹脂含有率や樹脂の平均体積分率、空隙率等の値は、実施例に記載の方法により求めることができる。
本発明の燃料電池用セパレータは、導電性に優れながらも単位セルをスタックした際の密着性を確実にできる表面平坦性を有し、しかも、優れたガス不透過性や可撓性を備えると共に、撓みや振動等が作用しても極微細欠陥の発生を可及的に抑制して耐食性を確保することができる。
また、本発明によれば、ガス不透過性、導電性、耐食性、スタック時における各単位セル間の密着性を確実にするための表面平坦性、及び可撓性というセパレータ性能の全てを同時にかつ十分に満たす燃料電池用セパレータを製造することができる。
図1は、本発明における燃料電池用セパレータ(X)を説明するための模式図であり、(A)は断面図を示し、(B)は平面図を示し、また、(C)は例えば、炭素樹脂複合層へのガス導入のための溝や、気密や接着用のパッキンのための溝など、必要により周辺補強層に形成される溝の例を示す。 図2は、図1に示した燃料電池用セパレータの一部を拡大して〔図1(A)の破線囲み部分〕、炭素樹脂複合層と周辺補強層との界面構造を模式的に示した断面模式図である。 図3は、混合材料が溶媒を含むスラリーである場合における燃料電池用セパレータの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。 図4は、混合材料が粉体からなる場合における燃料電池用セパレータの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。 図5は、本発明におけるセパレータ前駆体(Y)を説明するための断面模式図である。 図6は、本発明におけるセパレータ前駆体のプリフォーム層について測定したDSCデータの一例である。 図7は、樹脂の平均体積分率を求めるにあたって利用したIRスペクトルの一例(フェノール樹脂の場合)を示す。 図8は、樹脂の平均体積分率を求めるにあたって利用したIRスペクトルの一例(包埋に用いたポリエステル樹脂の場合)を示す。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、本発明における燃料電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ということがある)は、図1(A)、(B)及び(C)並びに図2に示したように、金属薄板からなる金属基材1と、この金属基材1の少なくとも片面に積層され、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂及び炭素材を含む炭素樹脂複合層2とを備えたものであり(図1の例では金属基材の両面に炭素樹脂複合層を備える)、当該炭素樹脂複合層2の外周側面には、補強用樹脂5と不織布8とから構成される周辺補強層7を備えており、また、これらの炭素樹脂複合層2や周辺補強層7には、燃料電池用セパレータとしての所望の機能を発現するために、後述するセパレータ前駆体を本硬化させる工程(工程d)で所望の位置に所望のパターン及び深さで形成された溝6又は6’が設けられている。そして、図2から把握されるように、この炭素樹脂複合層2には、セパレータ製造時において、周辺補強層7を構成する補強用樹脂5が、炭素樹脂複合層側に一部含浸されることにより形成されて〔この含浸されている領域を、本明細書では、「樹脂含浸領域」(図中の符号:2b)と呼ぶこととする。〕、後述のように当該炭素樹脂複合層2と周辺補強層7との界面において樹脂の濃度勾配が形成されつつ、一体的に成形されている。ここで、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部2aについては、特に限定されるものではないが、通常は、樹脂の含有率が高くなる前記樹脂含浸領域2bを除いて、少なくともそれよりも内側に形成される部分が使用され、本発明においては、この炭素樹脂複合層2の発電部2aは、樹脂含有率が5〜50質量%であると共に、空隙率が3〜30体積%である。
先ず、本発明の燃料電池用セパレータにおける炭素樹脂複合層2については、前記の通り、周辺補強層7からの補強用樹脂5が一部含浸されており、少なくともその含浸された領域よりも内側に形成される発電部2aと備えるが、セパレータとしての使用を可能とする目的のために、特に制限されるものではないものの、その大部分を発電部2aとして形成させることが求められる。そのため、この発電部2aとなる領域については、少なくとも十分な導電性が求められることから、樹脂含有率が5質量%以上50質量%以下となるようにバインダー樹脂と炭素材との配合量を調整する必要がある。すなわち、炭素樹脂複合層2を形成するための、バインダー樹脂と炭素材との配合量を調整する必要がある。ここで、炭素樹脂複合層(発電部2a)の樹脂含有率が50質量%を超えると、炭素材の割合が少なくなって導電性が低下してしまうおそれがあり、反対に樹脂含有率が5質量%未満であると、炭素樹脂複合層の機械的強度が不足したり、反応ガスを供給するためのガス流路や冷却水を流すための冷却水路等の溝6を加工し、成型するための加工性や形状保持性が低下したりするおそれがある。これらの兼ね合いを考慮すると、好ましくは、該発電部2aの樹脂含有率は10〜45質量%であるのがよく、より好ましくは樹脂含有率は10〜30質量%であるのがよい。
また、この炭素樹脂複合層2(発電部2a)については、例えば、セパレータとして燃料電池を構成して自動車等に搭載した使用時における耐振動性等を確保するために十分な可撓性を備えることがよく、そのような目的から、その空隙率が3〜30体積%、好ましくは5〜30体積%、より好ましくは10〜30体積%となるようにすることがよい。
そして、本発明においては、この炭素樹脂複合層2に形成される前記樹脂含浸領域2bに関して、その樹脂濃度が炭素樹脂複合層の外周側面から内側に向けて徐々に低下する傾向にあり、また、その大きさや形状、更には樹脂濃度の分布等を正確に把握することは困難ではあるが、IRイメージング測定により、この樹脂含浸領域2bの存在を確認することができること、また、IRイメージング測定で求められた炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲、すなわち、炭素樹脂複合層と周辺補強層との界面から炭素樹脂複合層側に12.5μm迄の測定範囲に存在する樹脂の平均体積分率がセパレータの耐食性能を良く反映し、この樹脂の平均体積分率を30〜90体積%とすることにより、耐食性能に優れたセパレータが得られる。これにより、炭素樹脂複合層の外周側面の内側に前記樹脂含浸領域が存在することを確認でき、また、炭素樹脂複合層と周辺補強層との界面付近では急激な樹脂濃度変化が抑えられることから、例えば、セパレータ製造過程での取扱い時等における撓みや自動車に搭載した後の使用時における振動等によっても極微細欠陥の発生を抑制することができ、セパレータの耐食性低下の問題を防ぐことができる。この測定範囲の樹脂の平均体積分率が30体積%未満であると、補強用樹脂の炭素樹脂複合層側への含浸が不十分であるために界面付近の樹脂濃度勾配が大きくなって撓みに対する耐性が低くなる虞があり、反対に90体積%を超える場合、必要以上に炭素樹脂複合層2側に補強用樹脂5が含浸されていることになり、炭素樹脂複合層の樹脂の含有率が高くなって、たわみに対する耐性が低下しその結果、界面に応力集中を生じて耐食性に問題を生じる虞があることや、発電部2aとなる領域が狭くなってセパレータとして所望の導電性を確保できなくなる虞がある。当該測定範囲の平均体積分率については、上記の理由から、好ましくは、40〜80体積%、より好ましくは、40〜60体積%であることがよい。なお、炭素樹脂複合層において、補強用樹脂が含浸されていない部分(発電部2aを含む)の樹脂の平均体積分率については、バインダー樹脂のみが対象であることから、10〜50体積%であることが好ましく、より好ましくは、20〜40体積%であることがよい。この場合、樹脂の平均体積分率は、いずれも、後述する実施例でも示したようにIRイメージング測定により求めることができる。
このような炭素樹脂複合層の前記測定範囲における樹脂の平均体積分率が30〜90体積%となることに関しては、前述の通り、周辺補強層7を形成する際にその補強用樹脂5の一部が含浸されている樹脂含浸領域2bが形成されることに起因すると本発明者らは考えている。すなわち、このような補強用樹脂が炭素樹脂複合層側に含浸されている領域(樹脂含浸領域2b)が形成される機序については、例えば周辺補強層7を形成する不織布−樹脂複合層の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合についてみると、図2及び図5や、後述する製造方法でも示した通り、先ず、炭素樹脂複合層2の前駆体である後述のプリフォーム層10では、バインダー樹脂4と炭素材3とを含んで構成されており、このバインダー樹脂4を介して炭素材3が接着されるため、プリフォーム層10にはこれらバインダー樹脂4と炭素材3とが存在しない隙間(空隙)が形成される。そして、炭素樹脂複合層2の前駆体であるプリフォーム層10と周辺補強層7の前駆体であるプリプレグ層11とを備えるセパレータ前駆体が熱間圧縮されて、それらにおける前駆体状態の樹脂の硬化が進む過程において、補強用樹脂5が一旦熱により溶融して粘度が低下し、粘度が低下した補強用樹脂5がプリフォーム層に形成されている所定の空隙に流れ込んでそのまま加熱硬化が進むことにより形成されるものと考えられている。樹脂含浸領域2bはこのような手順を経て形成されるものであると考えられることから、使用する補強用樹脂5の種類や熱間圧縮の条件や、或いは、炭素樹脂複合層2側の空隙の状態等にも影響を受けるものであると考えられ、構造が一様に定まるものではないと考えられるが、本発明者らが検討するに、前述のような樹脂の平均体積分率を有するようにすることで、炭素樹脂複合層2と周辺補強層7との間に一律の界面を生じなくなり、それにより当該界面付近に樹脂の濃度勾配が形成されて急激な樹脂濃度の変化が抑えられることから、撓みや振動等が作用した際でも両者の界面における応力集中を回避できるような可撓性・耐食性を確保できることを、後述の実施例において確認している。
なお、ここでは周辺補強層を形成する不織布−樹脂複合層の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合を例にして説明したが、補強用樹脂が熱可塑性樹脂である場合においても全く同様であり、この場合には、セパレータ前駆体において、不織布と熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂とで形成された不織布−樹脂複合層がプリフォーム層の外周側面にそのまま不織布−樹脂複合層(これは、補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合のプリプレグ層に相当し、最終的にはセパレータの周辺補強層となる。)として積層されており、このセパレータ前駆体のプリフォーム層(炭素樹脂複合層)を本硬化させる際の熱間圧縮処理により、不織布−樹脂複合層を形成する補強用樹脂(熱可塑性樹脂)が溶融して粘度が低下し、上記の場合と同様に炭素樹脂複合層に熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂が含浸した樹脂含浸領域を形成する。
ここで、この炭素樹脂複合層2を形成するバインダー樹脂4については、燃料電池として自動車等に搭載した際の動作環境下での耐久性等を考慮して熱硬化性樹脂を用いる。この熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも好ましくは、耐久性に優れるレゾール型フェノール樹脂、又はエポキシ樹脂を用いるのがよい。このバインダー樹脂4としては、セパレータを得るにあたり、常温で粉末状態であるものを用いてもよく、液状のものを用いるようにしてもよい。粉末状態のものを用いる場合には、樹脂粒子の凝集を抑えたり、炭素樹脂複合層2を得る際の樹脂流れを悪化させたりしないためなどから、後述する炭素材と同程度の大きさのものを用いるのがよく、好ましくは、平均粒子径が1〜50μm程度のものを用いるのがよい。
また、炭素樹脂複合層2を形成する炭素材3としては、例えば、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、膨張化黒鉛粉末、鱗片状黒鉛粉末、球状黒鉛粉末等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、空隙率の調整や発電部での電気特性等を考慮すれば、好ましくは、表面積の大きい膨張化黒鉛粉末と球状黒鉛粉末とが混合したものであるのがよい。また、これらの黒鉛粉末は、より平滑な炭素樹脂複合層を得るためや、バインダー樹脂との接着を良好にするなどの観点から、好ましくは、平均粒子径が1〜50μmのものを用いるのがよい。
ここで、炭素樹脂複合層2を形成するバインダー樹脂と炭素材との配合割合については、最終的に得られる炭素樹脂複合層の導電性と強度との兼ね合い等を考慮すると、好ましくは、バインダー樹脂と炭素材との質量比が5:95〜50:50であるのがよく、より好ましくは10:90〜30:70であるのがよく、更に好ましくは15:85〜20:80であるのがよい。
また、炭素樹脂複合層2の厚みについては特に制限はなく、燃料電池の種類や用途等によっても変化するが、例えば家庭等で使用される静置型の用途の場合、好ましくは、片面あたりの厚みが10〜2000μmであるのがよく、より好ましくは15〜1000μmであるのがよい。一方で、自動車用燃料電池のような薄肉化が求められる用途では、好ましくは、片面あたりの厚みが20〜500μmであるのがよく、より好ましくは25〜250μmであるのがよい。
一方で、本発明の燃料電池用セパレータにおいては、前述の通り、周辺部の表面平滑性を確保して〔好適には、表面粗さRa(JIS B0601-2001に基づく算術平均粗さ)を1〜10μmの範囲にすることがよい。〕、燃料電池として使用においてスタックする場合に使用されるパッキン等とのシール性を確保する等の目的から、炭素樹脂複合層2の外周側面には、樹脂製の周辺補強層7を設ける。ここで、この樹脂製の周辺補強層7については、それを構成する補強用樹脂5を含有するものであるが、前述の通り、熱間圧縮による成形の過程においてこの補強用樹脂5が必要以上に炭素樹脂複合層2(その前駆体であるプリフォーム層10)側や、或いは成形金型の外などに流れ出る・BR>アとを抑制する必要があり、前記したような炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲における樹脂の平均体積分率を有するようにすると共に、そのような補強用樹脂5をできるだけ抱え込んで出来上がる周辺補強層7の賦形性を確保することが重要であり、そのために、本発明の周辺補強層7の形成に際しては不織布8を用い、図2に例示したようにこの不織布8を周辺補強層7に内在させた構成とすることが必要とされる。
具体的には、周辺補強層の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、例えば後述の製造方法に示されるように、熱間圧縮により補強用樹脂5の一部又は全部を不織布8に含浸させた不織布−樹脂複合層を形成し(工程b)、この工程bか、或いは、この不織布−樹脂複合層を更に熱間圧縮する工程(工程c)により、補強用樹脂5が予備硬化されて前駆体状態となったプリプレグ層11を備えるセパレータ前駆体を製造し、このセパレータ前駆体を熱間圧縮(本硬化)させることにより周辺補強層7として形成させる。 また、補強用樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、不織布−樹脂複合層の調製時には、その際の熱間圧縮処理により、補強用樹脂を溶融させ、予備硬化させて不織布と補強用樹脂とが複合化した不織布−樹脂複合層を形成し、また、セパレータ前駆体の製造時には、その際の熱間圧縮処理により、不織布−樹脂複合層中の予備硬化した補強用樹脂を溶融させて金属基材の表面に固定化した不織布−樹脂複合層(周辺補強層)を形成し、更に、セパレータの調製時には、その際の熱間圧縮処理により、不織布−樹脂複合層(周辺補強層)中の予備硬化した補強用樹脂を溶融させてこの溶融した補強用樹脂の一部を炭素樹脂複合層の前駆体であるプリフォーム層の空隙内に移動させて含浸させ、また、プリフォーム層を本硬化させて炭素樹脂複合層を形成させると共に補強用樹脂を本硬化させて周辺補強層を形成させ、更に、炭素樹脂複合層の外周側面の内側に補強用樹脂が含浸して本硬化した樹脂含浸領域を形成させる。
金属基材1の表面において炭素樹脂複合層の外周側面の外側に形成される周辺補強層については、このような不織布8を用いて形成することにより、前記した補強用樹脂5の必要以上の流出を抑制することができて、前記のような所望の樹脂の平均体積分率を有する炭素樹脂複合層2を形成できると共に、周辺補強層7としての賦形性を確保でき、特に、セパレータの厚みの制御をしながらも賦形性を確保できるため好ましい。
ここで、このような目的で使用される不織布8については、補強用樹脂5の過剰な流出を抑制できる等、本発明の目的の範囲のものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは、後述する本成形(本硬化)の際の温度(通常、180〜220℃程度)に対する耐熱性を有する繊維から構成されることがよく、そのような本成形温度以上の融点を有する樹脂繊維または無機繊維等を用いることが好ましい。具体的には、アラミド樹脂、ポリアリデート樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂(熱可塑性エポキシ樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリメチルペンテン(PMP)及び炭素繊維、ガラス繊維等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上であってもよく、その中でも、耐食性、耐熱性及び成型後の平滑性の理由から、ポリメチルペンテン(PMP)を用いることがより好ましい。また、同じように、本発明の目的の範囲内であれば特に制限されるものではないが、このような繊維として、好ましくはその平均繊維径が1〜20μm、より好ましくは1〜10μmであるものを用いることが補強用樹脂5の保持性および成型後の平滑性の理由からよく、また、そのような繊維を用いて、得られる周辺補強層7における不織布の含有率が好ましくは20〜80体積%、より好ましくは、40〜60体積%となるようにすることがよい。そのような不織布含有率とするために、好ましくは、目付量が6〜100g/mである不織布を使用することができる。なお、通常仕上がりの厚みよりも厚いものを用いて、予備硬化、あるいは、本硬化後に、不織布が周辺補強層7に全体的に分布し、その結果、周辺補強層7の機械的強度、特に変形に対して割れなどを発生させないことが重要である。
また、前記の補強用樹脂5としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、前記炭素樹脂複合層2の場合と同様に、燃料電池として自動車等に搭載した際の動作環境下での耐久性等を考慮して熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂として、好ましくは、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂(熱可塑性エポキシ樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリメチルペンテン(PMP)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上であってもよい。また、例えば、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上であってもよい。なかでも好ましくは、耐久性に優れるレゾール型フェノール樹脂、又はエポキシ樹脂を用いるのがよい。また、この補強用樹脂5については、本発明の目的の範囲内において、常温で液状若しくは粉末状、又は、予めシートやフィルム状などに加工されたもの等、いずれも用いることができる。
また、周辺補強層7の厚みについては特に制限はなく、燃料電池の種類や用途等によっても変化するが、前記の炭素樹脂複合層2と同じでもよく、例えば家庭等で使用される静置型の用途の場合、好ましくは、片面あたりの厚みが10〜2000μmであるのがよく、より好ましくは15〜1000μmであるのがよい。一方で、自動車用燃料電池のような薄肉化が求められる用途では、好ましくは、片面あたりの厚みが20〜500μmであるのがよく、より好ましくは25〜250μmであるのがよい。
また、本発明においては、このように形成される周辺補強層7の表面にガスケットやパッキン等の役割を担う樹脂製のシーリング層を予め設けておくようにしてもよい。このシーリング層については、前記補強用樹脂5とは別の樹脂を用いて形成してもよく、或いは、補強用樹脂5を多めに使用して、周辺補強層7表面が膨れ上がるように形成してもよい。
他方、本発明の燃料電池用セパレータにおける金属基材1については、金属薄板からなるものを用いることができ、例えば、ステンレススチール、チタン、チタン合金、アルミニウム合金等の金属箔を挙げることができる。また、この金属基材の厚みについては特に制限はなく、炭素樹脂複合層の場合と同様に燃料電池の種類や用途等によっても異なるが、自動車用燃料電池のような場合には、好ましくは10〜200μmであるのがよい。なお、本発明の金属基材1においては、炭素樹脂複合層2や周辺補強層7との接着性のために、基材表面に接着剤が予め塗布されたものを用いてもよい。このような接着剤については、特に制限はないが、好ましくは、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体の一部又は全部がポリオレフィン樹脂にグラフトした酸変性ポリオレフィンを含む接着剤のような酸変性した熱可塑性樹脂を含んだ接着剤や、フェノール樹脂系の接着剤であるのがよい。このような接着剤を用いる場合については、得られたセパレータにおける金属基材1と、炭素樹脂複合層2との界面において、金属基材側から12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率が30〜80体積%となるようにすることがよい。なお、この樹脂の平均体積分率は、同様に、IRイメージング測定により求めることができる。
次に、上記のようなセパレータを製造する方法について、周辺補強層の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合を例にして説明する。本発明における燃料電池用セパレータの製造方法は、少なくとも、以下の工程a〜工程dを備えるものである。すなわち、
工程a:熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含む混合材料を用いて、この混合材料を金属基材の表面に固定化処理して混合材料層を形成する工程と、
工程b:工程aとは別に、不織布に補強用樹脂を配し、これらを熱間圧縮処理して、補強用樹脂の一部又は全部が不織布に含浸された不織布−樹脂複合層を形成する工程と
工程c:工程aで形成された混合材料層の外周側面に、工程bで作製した不織布−樹脂複合層を配置し、これらを共に固定化処理して、前記混合材料層と不織布−樹脂複合層とが金属基材の表面に固定されてなるセパレータ前駆体を形成する工程とを備える。
ここで、これら工程a及び工程cにおけるいずれかの固定化処理は熱間圧縮処理であって、これらいずれかの熱間圧縮処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成し、また、工程cにおける固定化処理が熱間圧縮処理であって、工程b及び工程cのいずれかの熱間圧縮処理により、前記不織布−樹脂複合層中の補強用樹脂を予備硬化させ、前駆体状態の補強用樹脂と不織布とを含むプリプレグ層を形成する。なお、金属基材表面に当該プリフォーム層とプリプレグ層とが固定されてなるものを、本発明では、「セパレータ前駆体」と呼ぶ。
続いて、
工程d:工程a〜cにより形成されたセパレータ前駆体を熱間圧縮して、プリフォーム層における前駆体状態のバインダー樹脂と、プリプレグ層中の前駆体状態の補強用樹脂とを本硬化(本成形)させて、金属基材の表面に炭素樹脂複合層と周辺補強層とをそれぞれ形成する。その際、前記プリプレグ層における前駆体状態の補強用樹脂を溶融させて、一部の溶融補強用樹脂をプリフォーム層(炭素樹脂複合層)側に含浸させ(樹脂含浸領域を形成)、少なくとも、この補強用樹脂が含浸した領域よりも内側には、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触されることになる発電部を形成する。この工程により、本発明に係る燃料電池用セパレータを製造することができる。
ここで、工程a又は工程cのいずれかの固定化処理が熱間圧縮処理であって、バインダー樹脂が予備硬化されて前駆体状態のバインダー樹脂(プリフォーム層)になる手順については、工程aで用いる混合材料の種類によって、適宜決めることができる。
先ず、工程aで用いる混合材料が溶媒を含むスラリーである場合には、図3に例示したように、例えば印刷や塗布、塗工等により金属基材の片面又は両面にスラリーからなる混合材料を積層させた上で、工程aでの固定化処理をスラリー中の溶媒を除去する溶媒乾燥処理として、金属基材上に混合材料層を形成する。混合材料として使用されるバインダー樹脂及び炭素材の種類等については前記の通りであり、好ましくは、これらをバインダー樹脂:炭素材(質量比)で、好ましくは5:95〜50:50、より好ましくは10:90〜30:70、更に好ましくは15:85〜20:80で混合することがよい。混合材料層を形成する位置については、特に制限されるものではないが、セパレータとして形成した際に発電部2aとして使用したい部分を見越して、好ましくは金属基材表面のうちの中央近傍等に積層されることがよい。なお、金属基材において混合材料を積層しない部分については、この後の工程cにおいて、工程bで形成された不織布−樹脂複合層が配置されるが、予め、この積層しない部分に樹脂フィルム等のマスク材を貼付けして保護しておくことができる。
そして、工程aが溶媒乾燥処理である場合、工程cでの固定化処理は、熱間圧縮処理であって、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成するようにすればよい。これによりプリフォーム層が形成されると共に、金属基材上にプリフォーム層が固定される。また、後述するように、工程bで形成される不織布−樹脂複合層についても、この工程cでの熱間圧縮処理を経て金属基材上に固定されてプリプレグ層として形成されることになり、金属基材上にプリフォーム層とプリプレグ層とが共に固定されてなるセパレータ前駆体を得ることができる。
ここで、混合材料が溶媒を含むスラリーである場合について、用いられる溶媒としては特に制限はなく、アルコール類やエーテル類等を挙げることができるが、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂や炭素材が均一に分散できる観点等から、好ましくは、1−ブチルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等を用いるのがよい。また、工程aでの溶媒乾燥処理については、80〜90℃の温度で10〜20分間加熱してスラリー中の溶媒を乾燥させるのがよい。その際、金属基材の片面に混合材料を積層させて溶媒乾燥処理を行い、これを繰り返して片面ずつ混合材料層を形成するようにしてもよく、或いは、金属基材の両面に混合材料を積層させて、一度の溶媒乾燥処理で両面まとめて混合材料層を形成するようにしてもよい。この際、この溶媒乾燥処理においても、前記の加熱条件により混合材料中のバインダー樹脂の一部又は全部が予備硬化される場合もある。なお、常温で液状のバインダー樹脂を用いる場合にも、溶媒と共にスラリーにして混合材料を金属基材に積層させるようにするのがよい。
ここで、本発明において、工程aにおける混合材料層から工程cにおけるプリフォーム層の形成の過程における予備硬化及び前駆体状態については、JIS K 6800「接着剤・接着用語」で定義されるB−ステージ(熱硬化性樹脂の硬化中間体)の状態を目標にすることができる。具体的には、後述する実施例で示すように、示差走査熱量計(DSC)を用いて算出される硬化度が10〜50%となるようにするのが好ましく、少なくとも、工程cまでの処理によって形成されるセパレータ前駆体のプリフォーム層が、当該硬化度を有するようにすることが好ましい。また、この工程aにおける混合材料層から工程cにおけるプリフォーム層の予備硬化及び前駆体状態については、鉛筆硬度測定において6Bで傷が付く荷重が20〜100gであるのがよい。
また、混合材料がスラリーである場合における工程cでの固定化処理(熱間圧縮処理)については、少なくとも、この工程cにおいて混合材料層中のバインダー樹脂を前駆体状態に予備硬化させてプリフォーム層を形成する必要があることから、好ましくは、80〜120℃、0.3〜1.5MPaの圧力での条件下で、20秒〜10分間の処理を行うのがよい。また、この工程cの熱処理により、好ましくは50〜80体積%の空隙率を有するプリフォーム層を形成するようにするのがよい。ここで、予備硬化及び前駆体状態については、前記と同様である。
一方で、工程aで用いる混合材料が粉体からなる場合には、図4に例示したように、例えば金型等を用いながら金属基材の片面又は両面の所定の位置に混合材料を配して積層させた上で、工程aでの固定化処理を熱間圧縮処理として、混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させる予備硬化処理とする。これにより、金属基材上に混合材料層を形成することができる。この場合、工程cでの固定化処理についても熱間圧縮処理とするが、少なくとも、この工程cにおける熱間圧縮処理により、工程aで形成された混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂を含むプリフォーム層に変換することが必要であるが、熱間圧縮処理を調整することで、工程aの段階でプリフォーム層を形成することももちろん可能である。この工程aでの熱間圧縮処理については、好ましくは、0.3〜2MPaの圧力での条件下で、80〜120℃の温度で1〜30分間の処理を行うようにするのがよい。ここで、予備硬化及び前駆体状態については、前記と同様である。
また、本発明では、工程aで金属基材の表面にバインダー樹脂及び炭素材を含む混合材料を積層するにあたり、予め金属基材の表面に接着剤を塗布しておくようにしてもよい。このような接着剤については、特に制限はないが、好ましくは、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体の一部又は全部がポリオレフィン樹脂にグラフトした酸変性ポリオレフィンを含む接着剤のような酸変性した熱可塑性樹脂を含んだ接着剤や、フェノール樹脂系の接着剤であるのがよい。このような接着剤を用いる場合については、好ましくは、工程dを経て得られたセパレータにおける金属基材1と、炭素樹脂複合層2との界面において、金属基材側から厚さ12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率が30〜80体積%となるようにすることがよい。
本発明では、前記の通り、工程aとは別に工程bにおいて不織布と補強用樹脂とを熱間圧縮させて、不織布−樹脂複合層を得る。使用される不織布及び補強用樹脂の種類等については前記の通りであるが、好ましくは、使用する不織布の含有率が10〜80質量%、より好ましくは、15〜75質量%となるようにすることがよい。そして、好ましくは、これらを80〜140℃、0.2〜3MPaの圧力での条件下で、1〜15分間の処理を行って、補強用樹脂の一部又は全部をこの工程bの段階で不織布に含浸させると共に、当該補強用樹脂を予備硬化させて、予備硬化された補強用樹脂が不織布に含浸されてなる不織布−樹脂複合層を形成させる。形成された不織布−樹脂複合層は、この後の工程cにおいて、前記工程aにおいて混合材料層(又はプリフォーム層)が形成されていない金属基材表面に配されるが、このようにするために、この工程bにおいて、不織布―樹脂複合層から、予め混合材料層(又はプリフォーム層)に該当する部分をトリミングして枠状等の所望の形状に加工しておくことが好ましい。或いは、予め枠状等の所望の形状に加工された不織布や樹脂フィルムなどを用いて不織布−樹脂複合層を形成してもよい。なお、予備硬化及び前駆体状態については、前記と同様にJIS K 6800「接着剤・接着用語」で定義されるB−ステージ(熱硬化性樹脂の硬化中間体)の状態を目標にすることができる。具体的には、後述する実施例で示すように、示差走査熱量計(DSC)を用いて算出される硬化度が10〜70%となるようにするのが好ましく、少なくとも、工程cまでの処理によって形成されるセパレータ前駆体のプリプレグ層が、当該硬化度を有するようにすることが好ましい。
そして、これら工程a及び工程bの後に行われる工程cでは、工程aで得られた混合材料層(金属基材上に形成)と、工程bで得られた不織布−樹脂複合層とを、共に熱間圧縮処理して、少なくとも、この工程cにおいて混合材料層の場合は前記の通りプリフォーム層とすると共に、不織布−樹脂複合層については、補強用樹脂を予備硬化させて前駆体状態の補強用樹脂を含むプリプレグ層として形成させ、これらプリフォーム層とプリプレグ層とを金属基材上に固定してセパレータ前駆体として形成する。そのため、このような工程cにおける熱間圧縮処理は、好ましくは、80〜120℃、0.3〜1.5MPaの圧力での条件下で、20秒〜10分間の処理であることがよい。
このような工程a〜cを経て得られるセパレータ前駆体は、図5に例示したように、金属薄板からなる金属基材1と、この金属基材1の少なくとも片面に積層され、前駆体状態の熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂及び炭素材を含むプリフォーム層10と、当該プリフォーム層の外周側面側には前駆体状態の補強用樹脂5が不織布8に含浸されてなるプリプレグ層11を備えており、このプリフォーム層10は、樹脂含有率が5〜50質量%であると共に、空隙率が50〜80体積%となることがよく、また、プリプレグ層においては、不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであり、当該不織布の含有率が20〜80体積%であることがよい。
このセパレータ前駆体は、本発明に係るセパレータを製造するために使用されるものであって、予備成形体に相当する。プリフォーム層及びプリプレグ層は、それぞれ、上述したようにバインダー樹脂又は補強用樹脂を予備硬化させて前駆体状態としたものであり、好ましくは、プリフォーム層の示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜50%であると共に、プリプレグ層の示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜70%であるのがよい。また、プリフォーム層については、鉛筆硬度測定において6Bで傷がつく荷重が20〜100gであるのがよい。また、プリフォーム層及びプリプレグ層の厚みについては、いずれも、例えば家庭等で使用される静置型用途のセパレータを得る場合には、好ましくは、片面あたりの厚みが30〜6000μmであるのがよく、自動車用燃料電池のような薄肉化が求められる用途では、好ましくは、片面あたりの厚みが30〜1500μmであるのがよい。
そして、本発明においては、前記工程cを経て得られたセパレータ前駆体を用いて、これを、更に熱間圧縮処理することで、プリフォーム層10中の前駆体状態バインダー樹脂を本硬化させてプリフォーム層10を炭素樹脂複合層2に変換させると共に、プリプレグ層11中の前駆体状態の補強用樹脂を本硬化させて、プリプレグ層11を周辺補強層7に変換させる。そして、この本硬化の過程においては、プリプレグ層11中の補強用樹脂の一部が一旦熱により溶融されて、その溶融された補強用樹脂が本硬化の最中のプリフォーム層の空隙に含浸されながら硬化されることにより、先の図2に示したように、補強用樹脂5が炭素樹脂複合層2含浸され、それにより、炭素樹脂複合層2側においては、当該炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%となる。
この工程dの熱間圧縮処理は、プリフォーム層及びプリプレグ層における前駆体状態の樹脂を本硬化させる本硬化処理であることから、好ましくは、180〜220℃、10〜60MPaの圧力での条件下で、3秒〜30分間の処理を行うのがよい。そして、この工程dの処理により、前記の通り、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%となり、少なくとも、この12.5μmの測定範囲よりも内側に、3〜30体積%の空隙率を有する発電部2aが形成される。ここで、本硬化とは、JIS K 6800「接着剤・接着用語」で定義されるC−ステージ(熱硬化性樹脂の硬化反応の最終状態)の状態を目安にすることができる。本発明では具体的には、示差走査熱量計(DSC)を用いて算出される硬化度が60〜100%となるようにするのが好ましい。また、この熱処理において、所定の金型を用いるなどしてセパレータのガス流路(溝)等を同時に形成するようにしてもよい。
本発明においては、これらの工程a〜工程dを備えることで、上述したように、金属基材の表面に、炭素樹脂複合層と周辺補強層とを備え、尚且つ炭素樹脂複合層においては、補強用樹脂の含浸に起因して当該炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%となり、さらには、少なくともこの12.5μmの測定範囲よりも内側には、樹脂含有率が5〜50質量%であると共に空隙率が3〜30体積%である発電部が形成される。この周辺補強層の表面粗さRaは1〜10μmであることが好ましく、このような炭素樹脂複合層及び周辺補強層を備えた燃料電池用セパレータを得ることができる。
また、本発明においては、セパレータ前駆体としての状態を省略して、セパレータを製造するようにしてもよい。例えば、工程cにおいて、混合材料層と不織布−樹脂複合層とを金属基材上に固定するが、この際の固定化処理を前記の本硬化の際の温度、圧力及び時間の条件で熱間圧縮処理することにより、セパレータ前駆体へ経ずに本発明の燃料電池用セパレータを得ることもできる。
以上は、周辺補強層の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合を例にして、セパレータの製造方法及びセパレータ前駆体を説明したが、周辺補強層の補強用樹脂が熱可塑性樹脂である場合においても、上記のセパレータの製造方法における工程a〜工程dの操作は実質的に同じであり、また、セパレータ前駆体の構成についても実質的に同じである。すなわち、周辺補強層の補強用樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、不織布−樹脂複合層を形成する工程b及びこの不織布−樹脂複合層を金属基材上に固定する工程cでの熱間圧縮処理の際に、熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂が溶融と固化とを繰り返し、この補強用樹脂の溶融・固化が上記の補強用樹脂が熱硬化性樹脂である場合と同様の作用効果を発現する。
以下、試験用セパレータの製造に係る実験例(実施例、比較例)に基づいて、本発明の燃料電池用セパレータ及びその製造方法並びにセパレータ前駆体について、より具体的に説明する。但し、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。また、この実験例で使用した各種材料とその略称、及び、諸物性値の測定(評価)方法は下記のとおりである。
〔炭素樹脂複合層〕
<炭素材>
G1:QINGDAO GR-TAIDA CARBON Co.,Ltd社製 球状黒鉛SG6(平均粒子径6μmの球状粒子)
G2:伊藤黒鉛工業社製 膨張化黒鉛粉末EC300(平均粒子径50μm)
G3:伊藤黒鉛工業社製 球状黒鉛粉末SG−BH(平均粒子径20μm)
<バインダー樹脂>
R1:リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1148(粉末タイプ)
R2:リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1305(液状タイプ、固形分60%)
R3:三菱ケミカル社製 液状エポキシ樹脂jER828US(液状タイプ、硬化剤としてジシアンジアミド2質量%を含む)
〔周辺補強層〕
<補強用樹脂>
R2:リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1305(液状タイプ、固形分60%)
R3:三菱ケミカル社製 液状エポキシ樹脂jER828US(液状タイプ、硬化剤としてジシアンジアミド2質量%を含む)
R4:サンユレック社製 エポキシ樹脂シート(厚み25μmのフィルム、DRS)
R5:サンユレック社製 エポキシ樹脂シート(厚み35μmのフィルム、DRS)
<不織布>(いずれも、タピルス社製)
・PMP/230:ポリメチルペンテン、融点〜230℃、平均繊維径7、10μm、目付12、18、24、40g/m2
・PET/260:ポリエチレンテレフタレート、融点〜260℃、平均繊維径10μm、目付24g/m2
・PA6/225:ポリアミド6(ナイロン6)、融点〜225℃、平均繊維径10μm、目付24g/m2
・PA66/265:ポリアミド66(ナイロン66)、融点〜265℃、平均繊維径10μm、目付24g/m2
・PPS/285:ポリフェニレンスルフィド、融点〜285℃、平均繊維径10μm、目付24g/m2
<金属基材>
M1:純チタン1種(厚み50μm)
M2:ステンレス鋼SUS316L(厚み50μm)
このうち、M1の純チタン1種、及びM2のステンレス鋼SUS316Lの化学組成は下記表1、表2に示した通りである。また、これらはいずれも、使用前に、フッ化水素酸5g/Lと硝酸15g/Lの混合酸溶液を35℃に保温した中に60秒間浸漬したのち、蒸留水で十分に洗浄し、更に60℃温風乾燥機で1時間乾燥したものを用いた。
Figure 2019079798
Figure 2019079798
<接着剤(プライマー)>
リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1306(液状タイプ、固形分60%)をメチルアルコールで希釈(2質量%)させた接着剤
〔空隙率の測定〕
島津製作所社製自動水銀ポロシメータ(オートポアIV 9520)を用いて、水銀圧入データを測定した。測定に際しては、得られたセパレータにおける炭素樹脂複合層の中央付近の一辺10mmの正方形(発電部2aに相当。セパレータ前駆体の場合にはプリフォーム層においてこの発電部に相当する箇所)に切り出したシート状サンプルを5枚用意し、専用のサンプル容器に入れて測定した。測定データの全細孔容積を、サンプル形状と厚みから算出した炭素樹脂複合層の容積(又はプリフォーム層の容積)で除して空隙率を算出し
た。
〔硬化度の測定1〕
示差走査熱量計(DSCと略記)(NETZSCH社 DSC 214 Polyma)を用いて、測定対象サンプル(セパレータ前駆体のプリフォーム層、プリプレグ層)のDSCデータを測定した。測定条件は昇温速度10℃/分として、装置に付属のソフトにより、150℃以上に現れる発熱ピークから総発熱量を算出し、プリフォーム層の場合には、使用した混合材料の総発熱量を同様にして算出して、下記式から硬化度(DSC:%)を算出した。また、プリプレグ層の場合には、使用した補強用樹脂と不織布との混合材の総発熱量を同様にして算出して、下記式から硬化度(DSC:%)を算出した。
プリフォーム層の硬化度(%)=100−〔(プリフォーム層の総発熱量/混合材料の総発熱量)×100〕
プリプレグ層の硬化度(%)=100−〔(プリプレグ層の総発熱量/補強用樹脂と不織布との混合材の総発熱量)×100〕
なお、図6には、セパレータ前駆体のプリフォーム層について測定したDSCデータの一例を示す。
〔硬化度の測定2〕
JIS−K5600−5−4:1999に規定の引っかき硬度(鉛筆法)を評価する際の試験機器において、6Bの鉛筆を用いて荷重を変化させて、測定対象であるサンプル(セパレータ前駆体のプリフォーム層)の表面に目視で傷が入るのが確認されたときの荷重値(鉛筆荷重:g)を求めた。
〔樹脂の平均体積分率の測定〕
測定対象であるサンプルの断面を切り出し、所定の包埋樹脂を用いて作製した試験片についてイメージングIRを測定した。その際、サンプルに含まれる樹脂に特有のIRピークから、特定の樹脂の面内分布をマッピングし、マッピングを行った面積(炭素材や空隙を含めた観察面の面積)に対する特定の樹脂の面積率を算出した。次いで、材料の等方性を仮定し、算出した樹脂の面積率をそのまま体積分率とした。このようにして、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率と、接着剤を使用した場合には炭素樹脂複合層の金属基材側から厚さ12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率とを求めた。
樹脂の平均体積分率の測定に際して、具体的には、フェノール樹脂の場合には、1180cm-1の吸収強度、エポキシ樹脂の場合には、916cm-1の吸収強度を用い、IRマッピングした。ここで、図7には、フェノール樹脂のIR吸収スペクトルの例を示し、図8には、包埋に用いたポリエステル樹脂のIR吸収スペクトルの例を示す。これらから分かるように、包埋樹脂は、フェノール樹脂の1180cm-1にも、エポキシ樹脂の916cm-1にも吸収を持たず、また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂は、相互に吸収線が重ならないことが確認できる。したがって、フェノール樹脂とエポキシ樹脂は、本方法により独立に各々の存在量(体積分率)を算出可能である。また、本実施例において、バインダー樹脂がフェノール樹脂であり、補強用樹脂がエポキシ樹脂の場合、又は、バインダー樹脂がエポキシ樹脂であり、補強用樹脂がフェノール樹脂の場合において、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μmの測定範囲の樹脂の平均体積分率を算出する際には、上記の波数の吸収強度から各々の樹脂の体積分率を算出し、その和を樹脂の平均体積分率とした。同じようにバインダー樹脂がエポキシ樹脂であり、接着剤としてフェノール樹脂を用いた場合における炭素樹脂複合層の金属基材側から厚さ12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率の算出についても同様とした。また、試験片を準備するにあたっては、上記ポリエステル樹脂を用いて試験片を埋包し、鏡面研磨して試験片の断面が露出したサンプルを準備した。IR測定は反射光により行った。マッピング等の測定条件の詳細は下記の通りである。これにより、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲と、金属基材側から厚さ12.5μmの界面層との樹脂の平均体積分率を求めた。その際、炭素樹脂複合層の発電部に相当する部分(補強用樹脂が含浸していない部分)の樹脂の平均体積分率についても求めた。
使用機器:
(本体)FT/IR−6100型 日本分光株式会社製
(顕微ユニット)IRT−7000型 日本分光株式会社製
測定方法:正反射法(鏡面法)
検出器:下記2検出器の切換
(i)リニアアレイナローバンドMCT検出器(4000〜750cm-1)
(ii)ミッドバンドMCT検出器(4000〜650cm-1)
観察領域:
ピクセルサイズ:12.5μm×12.5μm
3ピクセル×48ピクセル
解析方法:クラマースクローニッヒ変換
〔炭素樹脂複合層中の樹脂含有率(質量%)の測定〕
炭素樹脂複合層を約0.1g計量し、空気流通の電気炉中で500℃5時間処理することにより樹脂を酸化消耗除去し、残材の質量を計量することにより、炭素の質量割合(質量%)を算出した。それにより、樹脂の含有率(質量%)を算出した。
〔不織布の含有率(体積%)の測定〕
周辺補強層から10mm角の大きさの試験片を切りだし、ポリエステル樹脂に包埋し、いわゆるサンドペーパーを貼付した回転台を用いて鏡面研磨し、周辺補強層の断面を切り出した。この断面を光学顕微鏡で観察し、不織布を構成する繊維部分の面積比率を画像処理により算出した。この二次元の面積比率を材料の等方性を仮定し、三次元の体積分率に等しいとした。
〔耐食性の評価1〕
長手方向の中央に炭素樹脂複合層と周辺補強層との境界が位置するようにして、セパレータを10mm×50mmの形状に切り出し、炭素樹脂複合層が形成されていない面である金属基材の裏面と、切り出した4辺の端部とが評価液に触れないように、テフロン(登録商標)接着テープで被覆して耐食性評価用の試験片を用意した。
評価液としては、硫酸水溶液でpH=1.0に調整後、NaFをフッ素イオン濃度が20ppmになるように溶解させたものを用い、上記試験片を90℃で3日間浸漬させた後、評価液中の金属イオンの濃度を調べた。金属イオン濃度が500ppmを超えるものを不合格Cとし、500ppm以下のものを合格B、300ppm以下のものを合格Aとして、耐食性(曲げ加工前の耐食性)を評価した。
〔耐食性の評価2〕
耐食性の評価1と同様にしてセパレータを10mm×50mmの形状の切出し片に切り出した後、長手方向の両端幅5mmを支持材に載せて、この切出し片の中央部を断面5mm直径の半円の押し具で10mm下方に押し付け(3点曲げの要領で押し付け)、再び無負荷とする操作を10回繰り返した。次いで、その切出し片を耐食性の評価1と同様に接着テープで被覆して試験片を用意し、評価液に浸漬させて、曲げ加工後の耐食性を評価した。評価の基準は、前述評価1と同じとした。
〔導電性(貫通抵抗)の評価〕
金(Au)からなる一辺1cmの正方形の板を電極として上下に配置し、これらの間に測定対象のサンプル(セパレータ)を挟んで5MPaの圧力を加えた状態で、10mAの直流電流を流して、そのときの上下の電極間の電圧を測定して、抵抗値を算出した。この抵抗値が3mΩcmを超えるものを不合格Cとし、3mΩcm以下のものを合格Bとし、2.5mΩcm以下のものを合格Aとして評価した。
〔表面平坦性(表面粗さRa)の評価〕
ミツトヨ社製小型表面粗さ測定器SJ−310を用いて、測定対象のサンプル表面(セパレータの周辺補強層の表面)における長さ2mmの粗度Ra値(JIS B0601-2001に基づく算術平均粗さ:μm)を測定した。その際の測定力は0.75mNとし、先端部の端子の形状は2μm半径とした。
(実験例1:実験No.1-1〜1-9)
炭素材としてG1の球状黒鉛粉末を8.2質量部、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR2のレゾール型フェノール樹脂(液状タイプ、固形分60%)を3.0質量部、及び、溶媒として1−ブチルアルコールを6.0質量部用意し、これらを容器に入れて、シンキー社製自転・公転ミキサーARV310を用いて1000回転で2分間混ぜて完全に混合させ、スラリーからなる混合材料を調製した。
次いで、金属基材としてM1の純チタン1種(150mm×150mm×厚さ50μm)に対して、先ず、リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1306(液状タイプ、固形分60%)をメチルアルコールで希釈(2質量%)して得た接着剤を乾燥後の固形分が1g/mになるように塗布し、乾燥させて、予め厚み1μmの接着層を設けた上で、その接着層が形成された金属基材M1の片面に上記で得られたスラリー状の混合材料を塗装した。塗装の際には、ドクターブレードで乾燥時に所定の厚みになるようにギャップを調整しながら、自動塗工機(BEVS社製 Adjustable Applicator)を用いて塗工し、塗工面積は12cm×12cmとし、乾燥後の混合材料層の厚みが80μmになるようにした。塗工しない周辺部分(後述の不織布―樹脂複合層を載せる部分)には、予めポリイミドフィルム〔東レデュポン社製カプトン(登録商標)〕でマスクした。次いで、90℃の温風乾燥器に金属基材ごと入れて5分間乾燥させて、金属基材表面の上記面積部分に混合材料層を形成した(以上、工程a)。
次に、前記周辺部分に相当する枠形状の金型を準備し、この金型に前記PMP/230の不織布(目付:12g/m、平均繊維径:10μm)を配置し、そこへ、不織布の含有率が50質量%となるように同じ形状のエポキシ樹脂フィルムR4を重ねて、90℃に保持したプレス機にセットして、0.3MPaで3分間の熱間圧縮を行い、エポキシ樹脂が不織布に含浸されてなる不織布−樹脂複合層とした(以上、工程b)。
次いで、工程aで得られた混合材料層付きの金属基材をプレス機に配置し、周辺部分のマスク材は剥がし、その後、混合材料層の外周側面(すなわち、金属基材表面のうち、混合材料層が形成されていない周辺部分)に、工程bで得られた枠形状の不織布‐樹脂複合層を配置し、これらを共に熱間圧縮処理した。この工程cの熱間圧縮処理の条件は表4に示した通りである。これにより、混合材料層中のレゾール型フェノール樹脂を予備硬化させてプリフォーム層に変換すると共に、不織布−樹脂複合層中のエポキシ樹脂を予備硬化させてプリプレグ層に変換し、これにより、金属表面にプリフォーム層とプリプレグ層とを備えたセパレータ前駆体として得た(以上、工程c)。なお、この実験例1(実験No.1-1〜1-9)において、セパレータ前駆体(プリフォーム層、プリプレグ層)の厚みは80〜130μm程度であった。
次いで、工程cで得られたセパレータ前駆体を金型にセットし、180℃、20MPaにて10分間の金型プレスによる熱間圧縮処理を行った。これにより、セパレータ前駆体におけるプリフォーム層及びプリプレグ層中の樹脂をそれぞれ本硬化させて、プリフォーム層を炭素樹脂複合体に変換すると共に、プリプレグ層を周辺補強層に変換し、その過程でプリプレグ層中の補強用樹脂をプリフォーム層側に含浸させて、この実験例1に係るセパレータとして得た(以上、工程d)。
上記で製造された各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層については、およそ35μmの厚みを有していた。そして、各セパレータについて、曲げ加工前及び後の耐食性と導電性(貫通抵抗)を測定し、表5に示した。また、各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層について、炭素樹脂複合層の樹脂含有率(質量%)、炭素樹脂複合層(発電部)の空隙率(体積%)、炭素樹脂複合層(発電部)の樹脂の平均体積分率〔体積%、「発電部」と略記〕、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率〔体積%、「外周側面」と略記〕、金属基材側から12.5μmの厚さの界面層の樹脂の平均体積分率〔体積%、「基材界面」と略記〕を測定し、また、周辺補強層については不織布の含有率(体積%)、表面平坦性(Ra)(μm)を測定し、それぞれ表3、表5にそれぞれ示した。さらに、これらの中間体にあたる各セパレータ前駆体について、プリフォーム層の空隙率(体積%)、硬化度1〔DSC(%)〕、及び硬化度2〔鉛筆荷重(g):表中では「鉛筆(g)」として略記〕を測定し、また、プリプレグ層については硬化度1〔DSC(%)〕を測定し、それぞれ表5に示した。なお、各セパレータにおける炭素樹脂複合層の硬化度の測定1については、残存発熱量を求めるためのピークが検出限界で検出できなかったため、この実験例1での硬化度1の値(DSC)は100%とした。
(実験例2:実験No.2-1〜2-7)
炭素材であるG1を9.6〜4.5質量部、バインダー樹脂であるR2を0.67〜9.17質量部、及び、溶媒である1−ブチルアルコールを6.93〜3.53質量部用意して、これらの範囲で炭素材とバインダー樹脂との配合割合を変えてスラリーからなる混合材料を調製し、また、工程cでの熱処理を表4に示した条件で行った以外は実験例1と同様にして、実験例2に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、およそ30μmの厚みを有しており、実験例1と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表3、表5に示したとおりであった。
(実験例3:実験No.3-1〜3-10)
炭素材であるG1を8質量部、バインダー樹脂であるR2を3.33質量部、及び、溶媒である1−ブチルアルコールを5.87質量部用意してスラリーからなる混合材料を調製し、樹脂含有率が20質量%となるようにし、また、工程cと工程dとの熱間圧縮処理をそれぞれ表4に示した条件で行った以外は実験例1と同様にして、実験例3に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、厚みにはばらつきがあり、最も厚いもので33μmであり(実験No.3-5)、最も薄いもので27μmであった(実験No.3-8)。これは、工程dでの処理条件が各セパレータで異なるためと考えられる。また、各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表3、表5に示したとおりであった。
(実験例4:実験No.4-1〜4-3)
炭素材としてG1の球状黒鉛粉末を80質量部、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂を変更してR3の液状エポキシ樹脂jER828US(液状タイプ、硬化剤としてジシアンジアミド0.4質量部含む)を20質量部、及び、溶媒として1−ブチルアルコールを60質量部用意し、これらを実験例1と同様にしてスラリーからなる混合材料を調製して樹脂含有率が20質量%となるようにし、また、工程cと工程dとの熱間圧縮処理をそれぞれ表7に示した条件で行った以外は実験例1と同様にして、実験例4に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例1と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例5:実験No.5-1〜5-6)
この実験例5では、工程bで使用する不織布の含有率、目付及び平均繊維径を表6のように変更し、また、工程dの熱間圧縮処理を表7に示した条件(180℃、25MPa、10分)で行った以外は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR3を使用した実験例4と同様にして、実験例5に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例4と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例6:実験No.6-1〜6-3)
この実験例6では、金属基材M1に塗布する接着剤の量(g/m)に変更し、また、工程bで使用する不織布の含有量(質量%)及び目付を表6のように変更し、また、工程dの熱間圧縮処理を表7に示した条件(180℃、25MPa、10分)で行った以外は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR3を使用した実験例4と同様にして、実験例6に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例4と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例7:実験No.7-1〜7-4)
この実験例7では、工程bで使用する不織布の種類を表6の通りに変更すると共に、不織布の含有量(質量%)及び目付も変更し、また、工程dの熱間圧縮処理を表7に示した条件で行った以外は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR3を使用した実験例4と同様にして、実験例7に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例4と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例8:実験No.8-1〜8-6)
この実験例8では、工程bで使用する不織布の種類及び補強用樹脂を表6の通りに変更すると共に、目付も変更した。ここで、補強用樹脂として使用したR2は液状タイプのフェノール樹脂であり、R3は液状タイプのエポキシ樹脂であることから、以下のように工程bを行った。なお、補強用樹脂としてR2を使用した場合には溶媒除去のため、90℃、5分間大気中で乾燥処理を行ってから工程bを行った。すなわち、この実験例8の工程bは、表6の通りに変更した不織布を金型に配置し、そこへ、所定の厚みになるようにR2又はR3の樹脂を流し込み、130℃、2MPaにて10分間熱間圧縮処理して、R2のフェノール樹脂又はR3のエポキシ樹脂が不織布に含浸されてなる不織布−樹脂複合層とした。また、工程dの熱間圧縮処理を表7に示した条件で行った以外は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR3を使用した実験例4と同様にして、実験例8に係るセパレータを製造した。
得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例4と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例9:実験No.9-1〜9-2)
この実験例9では、金属基材としてM2のステンレス鋼SUS316L(150mm×150mm×厚さ50μm)を使用し、バインダー樹脂としてR2又はR3を使用したが、R2の場合の混合材料の製造の手順は実験例3と同様に行い、また、R3の場合の混合材料の製造の手順は実験例4と同様に行って、同じように金属基材表面に混合材料層を形成する工程aを行った。次いで、この実験例9では、実験例1〜8のような不織布を用いる工程bは行わず、補強用樹脂として表6に示すR2又はR5を使用してこれを予め前記同様の枠形状の金型に配置し、表7に示す工程dと同じ条件で本硬化させて周辺補強層とした。そして、この予め本硬化させた周辺補強層を、工程aで得られた混合材料層の外周側面(すなわち、金属基材表面のうち、混合材料層が形成されていない周辺部分)に配置し、これらを共に熱間圧縮処理した(工程c)。この工程cの熱間圧縮処理の条件は表7に示した通りであり、この工程cの熱間圧縮処理により、混合材料層をプリフォーム層に変換すると共に、予め本硬化されている周辺補強層と接着し、それと共に、これらを金属基材上に固定した。最後に、これを金型にセットし、表7に示す通り180℃、20MPaにて10分間の金型プレスによる熱間圧縮処理を行って、プリフォーム層についても本硬化させて炭素樹脂複合層とした。これにより、実験例9に係るセパレータとして得た(以上、工程d)。
得られた各セパレータは、実験例1〜8のような不織布を用いる工程bは行わなかったため、実験例1〜8のような周辺補強層側から炭素樹脂複合層側への補強用樹脂の含浸は確認されなかった。これら得られた各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、30〜35μmの厚みを有しており、実験例1と同じ各評価をそれぞれ行った。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等は、それぞれ表6、表8に示したとおりであった。
(実験例10:実験No.10-1〜10-7)
炭素材としてG3の球状黒鉛粉末を5.88質量部、同じく炭素材としてG2の膨張化黒鉛粉末を2.77質量部用い、及び、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂としてR1のレゾール型フェノール樹脂(粉末タイプ)を1.6質量部用意して、これらを愛知電機社製ロッキングミキサーRM−10により30回転/分で10分間混合して、粉体からなる混合材料を調製した。
次いで、金属基材としてM1の純チタン1種(200mm×200mm×厚さ50μm)を用意し、これに対して、先ず、リグナイト社製 レゾール型フェノール樹脂AH1306(液状タイプ、固形分60%)をメチルアルコールで希釈(2質量%)して得た接着剤を乾燥後の固形分が1g/mになるように塗布し、乾燥させて、予め厚み1μmの接着層を設けた上で、その接着層が形成された金属基材M1を予め金型内に固定して、その上から上記で得られた混合材料を積層させた。その際、スクリーン印刷の方法を模擬して、金属基材M1に配される混合材料が約1000μmの厚みになるように、厚みと目粗さを調整した金網を金属基材M1の上に配置した上で、上記で得られた混合材料を均等に撒いた後、へらで余分な粉末を除去し、金網を取り除くことで、金属基材M1上に1000μmの厚さ及び100mm×100mmの面積で混合材料を均一に敷き詰めた。なお、粉末を撒かない周辺部分(後述の不織布―樹脂複合層を載せる部分)には、予めポリイミドフィルム〔東レデュポン社製カプトン(登録商標)〕でマスクした。
次いで、上記のようにして金型内で金属基材M1上に均一に敷き詰められた混合材料に対して、プレス機を用いて熱間圧縮処理を行った(工程a)。この処理条件は表10に示したとおりであり、予め熱処理条件温度で保持したプレス機に上記で準備した金型をセットし、金属基材M1上に混合材料層を形成すると同時にバインダー樹脂であるR1のフェノール樹脂を予備硬化させてプリフォーム層として形成した。
次に、工程bについては、実験例1〜3と同様にして、不織布−樹脂複合層を形成した(以上、工程b)。
次いで、工程aで得られたプリフォーム層付きの金属基材をプレス機に配置し、周辺部分のマスク材を剥がし、その後、プリフォーム層の外周側面(すなわち、金属基材表面のうち、プリフォーム層が形成されていない周辺部分)に、工程bで得られた枠形状の不織布‐樹脂複合層を配置し、これらを共に熱間圧縮処理した。この工程cの熱間圧縮処理の条件は表10に示した通りである。これにより、不織布−樹脂複合層中のエポキシ樹脂を予備硬化させてプリプレグ層に変換し、これにより、金属表面にプリフォーム層とプリプレグ層とを備えたセパレータ前駆体として得た(以上、工程c)。
次いで、工程cで得られたセパレータ前駆体を金型にセットし、180℃、20MPaにて10分間の金型プレスによる上下からの熱間圧縮処理を行った。これにより、セパレータ前駆体におけるプリフォーム層及びプリプレグ層中の樹脂をそれぞれ本硬化させて、プリフォーム層を炭素樹脂複合体に変換すると共に、プリプレグ層を周辺補強層に変換し、その過程でプリプレグ層中の補強用樹脂をプリフォーム層側に含浸させて、この実験例10に係るセパレータとして得た(以上、工程d)。
上記で製造された各セパレータにおける炭素樹脂複合層及び周辺補強層は、およそ100μmの厚みを有していた。各セパレータと、これらの中間体にあたるセパレータ前駆体に関する物性値等はそれぞれ表9、表11に示したとおりである。
(実験例11:実験No.11-1〜11-2)
この実験例11においては、混合材料層を形成する際に、混合材料を金属基材上に約1000μmの厚みで配し、引き続いて金属基材上に厚さ1000μm及び100mm×100mmの面積で混合材料を均一に敷き詰め、また、工程bで使用する不織布の種類及び補強用樹脂を表9の記載の通りとすると共に、目付を表9の通りに変更したこと以外は、上記実験例10と同様にして、金属表面にプリフォーム層とプリプレグ層とを備えたセパレータ前駆体を調製した。
そして、実験No.11-1においては、上記実験例10の工程dで使用した金型と同様の金型を使用し、実験例10と同様の処理条件で熱間圧縮処理を行って周辺補強層に溝の無いセパレータを調製した。また、実験No.11-2においては、周辺部に幅1000μm及び高さ200μmの凸部を有すること以外は上記金型と同様の金型を用い、実験例10と同様の処理条件で熱間圧縮処理を行って周辺補強層に溝を有するセパレータを調製した。
このようにして調製された実験例11のセパレータは、実験No.11-1及び実験No.11-2のセパレータ共に、金属基材の厚さが50μmであり、炭素樹脂複合層及び周辺補強層の厚さが240μmであり、及び、セパレータ全体の厚さが530μmであった。また、実験No.11-2のセパレータにおいて、周辺補強層に形成された溝は図1(C)に示すような形状を有し、その大きさは溝幅が約1000μmであって溝深さが約200μmであり、溝底部の厚さが約40μmであった。
実験例11の各セパレータ及びそのセパレータ前駆体についての物性値等は、実験例10の結果と共に、それぞれ表9、表11に示したとおりである。

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上記実験例1〜11で得られた各セパレータについて、周辺補強層の表面平坦性(表面粗さRa)、曲げ加工前と曲げ加工後のそれぞれの耐食性、及び貫通抵抗(導電性)を評価した結果が表5、表8及び表11に示されている。
これらに関して、先ず、実験例9(実験No.9-1、9-2)の各セパレータでは、いずれも、周辺補強層を形成するに際し、不織布は使用せず、その前駆体であるプリプレグ層を形成せずに予め本硬化させていることから、周辺補強層側から炭素樹脂複合層側への補強用樹脂の含浸は起こらなかった。そのため、炭素樹脂複合層と周辺補強層との界面における樹脂の濃度勾配が大きくなり、それにより曲げ加工時に界面に応力が集中した結果、破損が生じて結果的に耐食性に劣る結果となった。
また、実験例2における実験No.2-1〜2-7では、工程aで用いる混合材料の炭素材とバインダー樹脂との配合割合の違いにより、セパレータの炭素樹脂複合層における発電部の樹脂含有率が異なると共に、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が異なる。このうち、発電部の樹脂含有率が最も少ない実験No.2-1のセパレータは導電性が良好であるものの、曲げ加工前であっても耐食性が十分でなかった。一方で、混合材料におけるバインダー樹脂の割合がそもそも高くなり過ぎると、実験No.2-6やNo.2-7のセパレータのように、炭素樹脂複合層(発電部)での樹脂含有率が多くなってしまい、かえって導電性が低下してしまった。
また、実験例1における実験No.1-1〜1-9のセパレータは、工程cでの処理条件の違いにより、中間体であるセパレータ前駆体のプリフォーム層とそれにより形成される炭素樹脂複合層(発電部)が異なる空隙率を有しており、空隙率が37体積%と高い実験No.1-1のセパレータは、曲げ加工前及び後の耐食性が十分でなく、導電性にも劣る結果であった。一方で、実験No.1-5のセパレータのように、前記空隙率が比較的小さいセパレータについては、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が比較的高くなって、曲げ加工前及び後の耐食性が劣る結果を示した。
また、実験例3では、工程dでの処理条件を変えて比較検討したものであり、最も温度が低い実験No.3-4のセパレータでは、周辺補強層側からの補強用樹脂の含浸が少なくなり、それにより、炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が比較的小さくなって、曲げ加工後の耐食性が劣る結果を示した。
一方で、実験例4は工程dの処理条件は変えたものの十分な本硬化を行ったものであり、実験例5は周辺補強層における不織布の含有量(質量%)等を変えたもの、実験例6は金属基材の接着剤の量を変えたもの、実験例7は不織布の種類を変えたもの、実験例8は不織布の種類に加えて補強用樹脂の種類を変えたもの、実験例10は炭素材とバインダー樹脂とを粉末状のものを使用した粉末法で行ったものであり、工程aの圧力が高い実験No.10-3を除けば、本発明に係るセパレータであれば優れたガス不透過性や可撓性を備えると共に、導電性、表面平坦性、耐食性に優れ、特に、撓みや振動等が作用しても極微細欠陥等の発生を可及的に抑制して耐食性を確保できることが分かる。
更に、実験例11から理解できるように、本発明の燃料電池用セパレータにおいては、所望により炭素樹脂複合層及び周辺補強層の厚さを容易に大きくすることができるほか、工程dにおいてセパレータ前駆体を熱間圧縮処理してセパレータを製造する際の金型を適宜選択することにより、炭素樹脂複合層の発電部及び樹脂含浸領域から周辺補強層に連通するガス供給孔等の溝を所望のパターンで容易に形成することができる。
1:金属基材、2:炭素樹脂複合層、2a:発電部、2b:樹脂含浸領域、3:炭素材、4:バインダー樹脂、5:補強用樹脂、6,6’:溝、7:周辺補強層、8:不織布、10:プリフォーム層、11:プリプレグ層、X:セパレータ、Y:セパレータ前駆体。

Claims (20)

  1. 金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、炭素樹脂複合層と、この炭素樹脂複合層の外周側面に周辺補強層とを備えた燃料電池用セパレータであり、
    前記炭素樹脂複合層は、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含むと共に、該炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm迄の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%であり、また、少なくとも該測定範囲よりも内側に、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部を備えて、この発電部は樹脂含有率が5〜50質量%及び空隙率が3〜30体積%であり、
    前記周辺補強層は、不織布及び補強用樹脂を含み、該不織布の含有率は20〜80体積%であり、また、該不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 前記周辺補強層を構成する補強用樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 前記炭素樹脂複合層の金属基材側から厚さ12.5μmの界面層における樹脂の平均体積分率が30〜80体積%である請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 前記金属基材の厚みが10〜200μmであり、前記炭素樹脂複合層及び周辺補強層の厚みがそれぞれ20〜500μmである請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  5. 前記炭素材が平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末からなる請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  6. 金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、炭素樹脂複合層と、この炭素樹脂複合層の外周側面に周辺補強層とを備えた燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
    前記金属基材の表面に、熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と炭素材とを含む混合材料を配して、この混合材料を固定化処理して金属基材の表面上に混合材料層を形成する工程(工程a)と、
    不織布に補強用樹脂を配し、これらを熱間圧縮処理して補強用樹脂の一部又は全部が不織布に含浸された不織布−樹脂複合層を形成する工程(工程b)と、
    前記金属基材の表面に形成された混合材料層の外周側面に前記不織布−樹脂複合層を配置し、これらを固定化処理して、前記混合材料層と不織布−樹脂複合層とが金属基材の表面上に固定化されてなるセパレータ前駆体を形成する工程(工程c)とを備えており、また、
    これら工程a及び工程cにおけるいずれかの固定化処理が熱間圧縮処理であって、これらいずれかの熱間圧縮処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させ、前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成し、また、工程cにおける固定化処理が熱間圧縮処理であって、工程b及び工程cのいずれかの熱間圧縮処理により、前記不織布−樹脂複合層中の補強用樹脂を予備硬化させ、前駆体状態の補強用樹脂と不織布とを含むプリプレグ層を形成し、更に
    前記セパレータ前駆体を熱間圧縮処理して、前記プリフォーム層及びプリプレグ層を本硬化させて、金属基材の表面に炭素樹脂複合層と周辺補強層とをそれぞれ形成すると共に、前記プリプレグ層における前駆体状態の補強用樹脂を溶融させて、一部の溶融補強用樹脂を炭素樹脂複合層側に含浸させて、燃料電池の単位セルを構成した際にMEAに相対面して接触する発電部を形成する工程(工程d)とを備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  7. 前記工程aで用いる混合材料が溶媒を含んだスラリーであって、この工程aでの固定化処理がスラリー中の溶媒を除去する溶媒乾燥処理であり、また、工程cでの固定化処理が熱間圧縮処理であって、この工程aでの固定化処理と工程cでの固定化処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成すると共に、当該プリフォーム層と前記プリプレグ層とを、金属基材の表面上に固定する請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 前記工程aで用いる混合材料が粉体であって、この工程aでの固定化処理が熱間圧縮処理であって、工程a及び工程cのいずれかの熱間圧縮処理により、前記混合材料層中のバインダー樹脂を予備硬化させて前駆体状態のバインダー樹脂と炭素材とを含むプリフォーム層を形成すると共に、この工程cでの熱間圧縮処理により、当該プリフォーム層と前記プリプレグ層とを金属基材の表面に固定する請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  9. 前記工程cで得られるセパレータ前駆体のプリフォーム層が50〜80体積%の空隙率を有し、前記工程dで得られる炭素樹脂複合層の発電部が3〜30体積%の空隙率を有する請求項6〜8のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  10. 前記混合材料に含まれるバインダー樹脂と炭素材との質量比が5:95〜50:50である請求項6〜9のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  11. 前記炭素樹脂複合層の外周側面から内側12.5μm幅の測定範囲の樹脂の平均体積分率が30〜90体積%である請求項6〜10のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  12. 前記不織布−樹脂複合層を形成するに際し、平均繊維径が1〜20μmである繊維から構成される不織布を用いると共に、当該不織布の含有率を10〜80質量%とする請求項6〜11のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  13. 前記炭素材として、平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末を用いる請求項6〜12のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  14. 前記工程aにおいて混合材料層が形成される金属基材の表面には、接着剤が塗布されている請求項6〜13のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  15. 前記請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを調製するためのセパレータ前駆体であって、
    金属薄板からなる金属基材の少なくとも片面に、前駆体状態の熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂及び炭素材を含むプリフォーム層と、このプリフォーム層の外周側面に配される、前駆体状態の補強用樹脂と不織布とを含むプリプレグ層とを備えており、
    前記プリフォーム層は、樹脂含有率が5〜50質量%であると共に、空隙率が50〜80体積%であり、また、
    前記プリプレグ層は、不織布の含有率が20〜80体積%であり、当該不織布を構成する繊維の平均繊維径が1〜20μmであり、
    使用時には、熱間圧縮により、前記プリフォーム層中及び前記プリプレグ層中の前駆体状態の樹脂を本硬化させて、プリフォーム層を炭素樹脂複合層に変換させ、また、プリプレグ層を周辺補強層に変換させると同時に、前記プリプレグ層における補強用樹脂の一部を溶融させてプリフォーム層側に含浸させて、セパレータを形成することができることを特徴とするセパレータ前駆体。
  16. 前記プリフォーム層は。示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜50%であり、また、前記プリプレグ層は、示差走査熱量計により測定される硬化度が10〜70%である請求項15に記載のセパレータ前駆体。
  17. 前記プリフォーム層は、鉛筆硬度測定において6Bで傷がつく荷重が20〜100gであることを特徴とする請求項15又は16に記載のセパレータ前駆体。
  18. 前記金属基材の厚みが10〜200μmであり、前記プリフォーム層及び前記プリプレグ層の厚みが、それぞれ30〜1500μmである請求項15〜17のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
  19. 前記炭素材が平均粒子径1〜50μmの黒鉛粉末からなる請求項15〜18のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
  20. 前記プリフォーム層における金属基材側から厚さ12.5μmの界面層での樹脂の平均体積分率が30〜80体積%である請求項15〜19のいずれかに記載のセパレータ前駆体。
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