JP2019079661A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池容量を大きく低下させることなく、釘などの鋭利な異物が刺さった際の急激な発熱を好適に防止する。【解決手段】ここで開示される非水電解液二次電池では、正極10が正極集電体12と一対の保護層17a、17bと正極合材層14とを備えており、電極体80がセパレータ40を介して正極10と負極20とを複数枚積層させた積層電極体80である。そして、かかる非水電解液二次電池では、複数の正極10の各々に形成された一対の保護層17a、17bのうち、積層電極体80の積層方向Yの中心側に配置される保護層17bが、積層方向Yの外側に配置される保護層17aよりも厚くなるように形成されており、中心側に配置される保護層17bの厚みt2が1μm〜4μmであり、外側に配置される保護層17aの厚みt1が0.5μm〜2μmである。【選択図】図5

Description

本発明は、非水電解液二次電池に関する。詳しくは、シート状の正極と負極を備えた電極体を有する非水電解液二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用電源等に好ましく用いられている。
上述した非水電解液二次電池(以下、単に「電池」ともいう)は、一般に、非水電解液と電極体とをケース内に収容することによって構成される。かかる非水電解液二次電池の電極体の一例として、セパレータを介してシート状の正極と負極とを複数枚積層させた積層電極体が挙げられる。そして、かかるシート状の正極は、アルミニウム箔などの正極集電体の表面(両面)に、正極活物質を含む正極合材層を付与することによって形成され、負極は、銅箔などの負極集電体の表面(両面)に、負極活物質を含む負極合材層を付与することによって形成される。
上記した非水電解液二次電池では、内部短絡が発生した場合などに発熱することがある。特許文献1には、かかる発熱を抑制するための技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、正極集電体と正極合材層との間に保護層が形成された正極が開示されている。かかる保護層は、厚みが1μm〜5μmであり、リチウム含有遷移金属酸化物(正極活物質)よりも酸化力が低い無機化合物、及び導電材を含んでいる。このような保護層で集電体と正極合材層とを隔離すれば、アルミニウム製の集電体が関与する酸化還元反応を抑制することができるため、内部短絡などによる発熱量を低減させることができる。
また、非水電解液二次電池を車両などの移動体に搭載し、当該移動体を走行させると、釘のような鋭利な異物が飛来して電池に刺さる可能性がある。このとき、図6に示すように、電池内部の電極体180に鋭利な異物Eが刺さると、当該鋭利な異物Eの進行方向に沿って正極110の構成材料(正極集電体112、正極合材層114)が変形する。このときに、変形した正極集電体112が負極120まで到達すると、抵抗が極めて低い内部短絡が生じて非常に大きなジュール熱が発生する恐れがある。
これに対して、図7に示すように、正極集電体112と正極合材層114との間に保護層117を形成すると、鋭利な異物Eの進行によって正極集電体112が変形した際に、当該正極集電体112が負極120まで到達することを防止できるため、正極集電体112と負極120との接触による急激な発熱を防止することができる。
特開2016−127000号公報
しかしながら、上述したような保護層を形成すると電池容量が低下するため、高性能の非水電解液二次電池を構築することが難しくなるという問題が生じる。これは、充放電反応に寄与しない材料で構成されている保護層を設けることによって、正極合材層の体積が少なくなるためである。
かかる保護層の形成による電池容量の低下を軽減するためには、図8に示すように、保護層117の厚みを薄くする必要がある。しかし、この場合には、鋭利な異物Eが刺さった際の正極集電体112と負極120との接触を好適に防止することが難しくなり、内部短絡による急激な発熱が生じる可能性が高くなる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電池容量を大きく低下させることなく、釘などの鋭利な異物が刺さった際の急激な発熱を好適に防止することができる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明の一態様として、以下の構成の非水電解液二次電池が提供される。
ここで開示される非水電解液二次電池は、シート状の正極と負極とを備えた電極体が非水電解液と共にケース内に収容されることによって構成されている。
かかる電池の正極は、導電性金属からなる箔状の正極集電体と、当該正極集電体の両面に形成される一対の保護層と、一対の保護層の各々の表面に形成される正極合材層とを備えている。また、負極は、導電性金属からなる箔状の負極集電体と、当該負極集電体の両面に形成される負極合材層とを備えている。そして、かかる電池の電極体は、セパレータを介して正極合材層と負極合材層とが対向するように、正極と負極とを複数枚積層させた積層電極体である。
そして、ここで開示される非水電解液二次電池では、複数の正極の各々に形成された一対の保護層のうち、積層電極体の積層方向の中心側に配置される保護層が、積層方向の外側に配置される保護層よりも厚くなるように形成されており、中心側に配置される保護層の厚みが1μm〜4μmであり、外側に配置される保護層の厚みが0.5μm〜2μmである。
釘などの鋭利な異物が非水電解液二次電池に刺さる際、当該鋭利な異物は積層電極体の積層方向の外側から中心側に向かって進行する。ここで開示される非水電解液二次電池は、かかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、ここで開示される非水電解液二次電池では、鋭利な異物が刺さった際に正極集電体が変形する方向である積層方向の中心側に形成された保護層が1μm〜4μmという十分な厚みを有している。このため、変形した正極集電体が負極まで到達することを好適に防止することができる。
また、一対の保護層のうち積層方向の外側に形成される保護層は、鋭利な異物が刺さった際に正極集電体を押圧するように変形する。このため、当該外側の保護層を厚く形成し過ぎると、正極集電体の変形量が大きくなって負極まで到達する可能性が高くなる。
ここで開示される非水電解液二次電池は、かかる点も考慮しており、外側の保護層を中心側の保護層よりも薄くしている。これによって、変形した外側の保護層によって正極集電体が押圧されて大きく変形することを抑制できる。
そして、ここで開示される非水電解液二次電池では、正極集電体の変形の抑制に貢献しない外側の保護層が0.5μm〜2μmという非常に薄い厚みで形成されている。このため、一対の保護層の合計厚みを従来よりも大幅に薄くすることができ、保護層を設けることによる電池容量の低下を軽減することができる。
以上のように、ここで開示される非水電解液二次電池によれば、電池容量を大きく低下させることなく、鋭利な異物が刺さった際に正極集電体が変形して負極まで到達することを好適に防止できるため、正極集電体と負極との接触による急激な発熱を好適に抑制することができる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体を構成する各部材を模式的に示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体の構成を模式的に示す斜視図である。 図3に示す電極体の発電領域を積層方向に沿って切断した際の断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体に鋭利な異物が刺さった状態を模式的に示す断面図である。 従来のリチウムイオン二次電池に鋭利な異物が刺さった状態の一例を模式的に示す断面図である。 従来のリチウムイオン二次電池に鋭利な異物が刺さった状態の他の例を模式的に示す断面図である。 従来のリチウムイオン二次電池に鋭利な異物が刺さった状態の他の例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池を説明する。なお、ここで開示される非水電解液二次電池は、リチウムイオン二次電池に限定されず、他の二次電池(例えば、ニッケル水素電池)であってもよい。
また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、非水電解液の材料および製法など)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
1.リチウムイオン二次電池の構造
以下、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
図1は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。また、図2は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体を構成する各部材を模式的に示す説明図であり、図3は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体の構成を模式的に示す斜視図である。また、図4は図3に示す電極体の発電領域を積層方向に沿って切断した際の断面図である。
なお、本明細書の各図における符号Xは電池の「幅方向」を示し、符号Yは「厚み方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示している。
(1)ケース
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、扁平な角型のケース50を備えている。かかるケース50は、上面が開口した扁平な角型のケース本体52と、当該ケース本体52上面の開口部を塞ぐ板状の蓋体54とから構成されている。ケース本体52および蓋体54は、軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成されていることが好ましく、かかる金属材料としてはアルミニウムなどが挙げられる。
また、このリチウムイオン二次電池100では、ケース50上面の蓋体54に、電極端子60、62が設けられている。かかる電極端子60、62は、ケース50の外部で突出するように形成されており、他の電池や車両のモーターなどの外部機器と接続される。
なお、ケースの形状や材料は、本発明を限定するものではない。例えば、樹脂製のラミネートフィルムをケースとして使用し、後述の電極体と非水電解液をラミネートフィルム内に封入した場合でもリチウムイオン二次電池を構築することができる。
(2)電極体
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、図1に示すケース50の内部に電極体が収容されている。図2および図3に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の電極体80は、セパレータ40を介して、シート状の正極10と負極20とを複数枚させた積層電極体である。なお、図3および図4に示すように、この積層電極体80は、電池の厚み方向Yに沿って、正極10とセパレータ40と負極20とを積層させることによって形成されている。従って、本実施形態における「積層電極体の積層方向」は、電池の厚み方向Yと同じ方向である。また、図4中の符号CLは、積層方向Yにおける積層電極体80の中心線を示している。
(a)正極
図2に示すように、正極10は、正極集電体12の表面(両面)に正極合材層14を付与することによって形成される。そして、正極10の幅方向Xの一方の端部には、正極合材層14が付与されずに正極集電体12が露出した正極露出部16が形成されている。
また、図4に示すように、本実施形態における正極10では、正極集電体12と正極合材層14との間に保護層17a、17bが形成されている。換言すると、本実施形態では、正極集電体12の各々の面に保護層17a、17bが形成されており、当該一対の保護層17a、17bの各々の表面に正極合材層14が形成されている。
次に、正極10を構成する各材料について説明する。
正極集電体12は、導電性金属からなる箔状の部材である。かかる正極集電体12を構成する導電性金属としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などが挙げられる。また、正極集電体12の厚みは、5μm〜20μm程度であると好ましい。
正極合材層14は、正極活物質を含む正極ペーストを乾燥させることによって形成される。正極活物質には、リチウムイオンを吸蔵・放出し得るリチウム複合酸化物が用いられる。かかるリチウム複合酸化物としては、リチウムと遷移金属元素とを含むリチウム遷移金属複合酸化物を好ましく用いることができ、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などを用いることができる。
また、正極合材層14には、導電剤や結着剤などの添加物が含まれていてもよい。かかる導電剤としてはアセチレンブラックなどを用いることができ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
なお、正極合材層14の材料は、一般的なリチウムイオン二次電池で用いられるものと同様のものを特に制限なく使用することができ、上述した材料に限定されない。
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100においては、正極合材層14の密度が3.5g/cm以上であると高容量化の観点から好ましい。
また、保護層17a、17bには、フィラーと導電剤が含まれている。かかるフィラーには、化学的に安定した金属酸化物を好ましく用いることができる。また、フィラーの具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、ベーマイト、酸化チタン(チタニア)などが挙げられる。また、正極集電体12と正極合材層14とを導通させるために、保護層17a、17bには導電剤が含まれている必要がある。かかる保護層17a、17bの導電剤には、正極合材層14の導電剤と同種の材料(例えば、アセチレンブラックなど)を使用できる。
また、保護層17a、17bには結着剤などが含まれていてもよい。かかる結着剤には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
そして、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、正極集電体12の両面に形成された一対の保護層17a、17bのうち、積層方向Yの中心側(中心線CL側)に配置される保護層17b(以下、「中心側の保護層17b」ともいう)が、積層方向Yの外側に配置される保護層17a(以下、「外側の保護層17a」ともいう)よりも厚くなるように形成されている。
また、本実施形態では、上述した中心側の保護層17bが外側の保護層17aよりも厚いという条件を満たした上で、中心側の保護層17bの厚みt2(図5参照)が1μm〜4μmとなり、外側の保護層17aの厚みt1が0.5μm〜2μmとなるように、各々の保護層17a、17bが形成されている。さらに、外側の保護層17aの厚みt1と、中心側の保護層17bの厚みt2との合計が1.5μm〜5μmに設定されている。
詳しくは後述するが、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、このような一対の保護層17a、17bが形成されているため、電池容量を大きく低下させることなく、釘などの鋭利な異物が刺さった際の急激な発熱を好適に防止することができる。
(b)負極
図2に示すように、負極20は、負極集電体22の表面(両面)に負極合材層24を付与することによって形成される。そして、負極20の幅方向Xの一方の端部には、負極合材層24が付与されずに負極集電体22が露出した負極露出部26が形成されている。
次に、負極20を構成する各材料について説明する。
負極集電体22は、導電性金属からなる箔状の部材である。かかる負極集電体22を構成する導電性金属としては、例えば、銅などを用いることができる。また、負極集電体22の厚みは、5μm〜20μm程度であると好ましい。
また、負極合材層24は、負極活物質を含む負極ペーストを乾燥させることによって形成される。かかる負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵・放出し得る炭素材料が用いられる。かかる炭素材料としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ等を用いることができる。
また、負極合材層24には、上述の負極活物質以外に、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤や、スチレンブタジエンゴムなどの結着剤などが含まれていてもよい。
なお、上述した正極合材層14と同様に、負極合材層24についても、一般的なリチウムイオン二次電池で用いられる材料を特に制限なく使用することができ、上述した材料に限定されない。
(c)セパレータ
セパレータ40は、正極10と負極20との間に介在するように配置される。かかるセパレータ40の具体例としては、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のシート材や、複数種類の樹脂シートを積層させた積層構造のシート材などが挙げられる。
(d)電極体の積層構造
上記したように、本実施形態における積層電極体80は、セパレータ40を介して、正極10と負極20とを複数積み重ねることによって形成される。このとき、図3に示すように、積層電極体80の幅方向Xの中央部には、正極合材層14と負極合材層24とが対向するように積層された発電領域80aが形成される。また、電極体80の幅方向Xの一方の端部には、正極露出部16が積層した正極接続領域80bが形成され、端部には、負極露出部26が積層した負極接続領域80cが形成される。そして、正極接続領域80bと負極接続領域80cの各々は、図1に示す電極端子60、62と電気的に接続される。
また、図4に示すように、本実施形態における積層電極体80は、積層方向Yにおける中心線CLを挟んで線対称になるように形成される。具体的には、図4中の積層電極体80の上半分(中心線CLよりも上方)では、相対的に厚い保護層17bが正極集電体12の下面側に形成されて「中心側の保護層17b」となり、薄い保護層17aが正極集電体12の上面側に形成されて「外側の保護層17b」となる。一方、下半分(中心線CLよりも下方)では、相対的に厚い保護層17bが正極集電体12の上面側に形成されて「中心側の保護層17b」となり、薄い保護層17aが正極集電体12の下面側に形成されて「外側の保護層17b」となる。
(3)非水電解液
また、本実施形態では、上記した積層電極体80と共に、非水電解液がケース50内に収納されている。かかる非水電解液としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。
典型的には、非水電解液は非水溶媒に支持塩を含有させることによって調製される。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上の溶媒を用いることができる。また、支持塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。
かかる非水電解液の具体例として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)にLiPFを約1mol/Lの濃度で含有させた電解液が挙げられる。
3.鋭利な異物が刺さった場合
上記の構造を有する本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、電池容量を大きく低下させることなく、釘などの鋭利な異物が刺さった際の急激な発熱を好適に防止することができる。以下、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100に、釘のような鋭利な異物が刺さった場合について説明する。
図5は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体に鋭利な異物が刺さった状態を模式的に示す断面図である。図5に示すように、リチウムイオン二次電池の積層電極体80に鋭利な異物Eが刺さると、当該異物Eは、積層電極体80を構成する正極10、セパレータ40、負極20の各々を貫通しながら積層方向Yの外側から中心側(図5の下方)に向かって進行する。
このとき、本実施形態では、1μm〜4μmという十分な厚みを有する保護層17bが積層方向Yの中心側に形成されているため、異物Eの進行に伴って正極集電体12が変形した場合に、当該正極集電体12が負極20に到達することを好適に防止できる。
さらに、本実施形態では、外側の保護層17aが相対的に薄くなるように形成されている。これによって、異物Eの進行によって外側の保護層17aが変形した際に、当該外側の保護層17aが正極集電体12を押圧して変形させることを好適に抑制できる。
このため、本実施形態によれば、正極集電体12が変形して負極20まで到達することを好適に防止できるため、正極集電体12と負極20との接触による急激な発熱を好適に防止することができる。そして、異物Eが積層電極体80の中心線CLを超えるまで正極集電体12と負極20との接触を好適に防止して安全性を確保し、その間に電池のエネルギーを十分に減らすことができるため、異物Eが電池を貫通したとしても急激な発熱を好適に防止することができる。
さらに、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、外側の保護層17aが0.5μm〜2μmという従来よりも薄い厚みで形成されている。上記したように、外側の保護層17aは、正極集電体12の変形の抑制に貢献しないため、このように薄く形成したとしても、正極集電体12と負極20との接触による急激な発熱を好適に防止することができる。そして、保護層17a、17bの合計厚みが従来よりも薄くなるため、正極合材層14の体積を十分に確保して好適な電池容量を得ることができる。
以上のように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100によれば、電池容量を大きく低下させることなく、正極集電体10と負極20との接触による急激な発熱を好適に抑制することができる。
また、本実施形態では、正極集電体12の両面に保護層17a、17bが形成されているため、積層電極体80に鋭利な異物Eが刺さった際にアルミニウム性の正極集電体12が露出して負極合材層24と接触することを抑制できる。このため、正極集電体12と負極合材層24との低抵抗短絡が生じる前に、正極集電体12を溶融させて短絡の発生を防止することができる。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、以下の試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
1.サンプル1〜12
本試験例では、正極の保護層に関する構造が異なる12種類のリチウムイオン二次電池(サンプル1〜12)を作製した。
具体的には、先ず、金属酸化物製のフィラーと、導電材(アセチレンブラック:AB)と、バインダ(ポリフッ化ビニリデン:PVdF)とを93.5:5:1.5の割合で混合し、分散媒(N−メチルピロリドン:NMP)に分散させて保護層用ペーストを調製した。そして、当該保護層用ペーストを正極集電体(アルミニウム箔)の両面に塗布した後に乾燥させることによって一対の保護層を形成した。
ここで、本試験例では、フィラーを構成する金属酸化物の種類と、一対の保護層の各々の厚みと目付け量を各サンプルでそれぞれ異ならせた。具体的な内容を下記の表1に示す。なお、サンプル7では保護層を形成しなかった。
次に、正極活物質(リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物(NCA))と、導電材(アセチレンブラック:AB)と、バインダ(ポリフッ化ビニリデン:PVdF)とを98:1:1の割合で混合し、分散媒(NMP)に分散させて正極ペーストを調製した。
そして、保護層が形成された正極集電体の両面に正極ペーストを塗布し、当該正極ペーストを乾燥させることによってシート状の正極を作製した。なお、本試験例では、作製した正極に圧延処理を行って正極合材層の密度を3.5g/cmに調整した。
次に、本試験例では、負極活物質(黒鉛)と、バインダ(スチレンブタジエンゴム:SBR)と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース:CMC)とを98:1:1の割合で混合し、分散媒(水)に分散させて負極用ペーストを調製した。
そして、負極用ペーストを負極集電体(銅箔)の両面に塗布した後に、乾燥、圧延することによってシート状の負極を作製した。
次に、セパレータを介して8枚の正極と9枚の負極とを交互に積層させることによって厚み3mmの積層電極体を作製した。そして、作製した積層電極体を電極端子に接続した後にケース内部に収容した。なお、本試験例で使用したセパレータは、2層のポリプロピレン(PP)層の間に、ポリエチレン(PE)層が挟み込まれた3層構造(PP/PE/PP)のセパレータ(厚み16μm)である。
次に、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に支持塩(LiPF)を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液をケース内に充填し、積層電極体を非水電解液に含浸させることによって、サンプル1〜12のリチウムイオン二次電池(定格容量750mAh)を作製した。
2.評価試験
(1)電池容量の測定
本試験例では、上述したサンプル1〜12の電池の容量を測定した。具体的には、各サンプルの電池を室温(25℃)の温度条件下に保持し、定電流−定電圧(CCCV)方式により1C相当の電流密度で4.1Vまで充電を行った後に5分休止した。そして、同じ電流密度で3.0Vまで定電流放電し5分休止した。その後、CCCV充電(4.1Vまで、レートは1C、0.1Cカット)とCCCV放電(3.0Vまで、レートは1C、0.1Cカット)とを行うことで初期容量(電池容量)を測定した。測定結果を表1に示す。
(2)釘刺し試験
次に、各サンプルの電池に釘刺し試験を行った。具体的には、各サンプルの電池を、25℃の室温環境下においてSOC100%の充電状態に調整した。そして、各々の電池のケースの外面に2枚の熱電対を貼り付け、電池の厚み方向(電極体の積層方向)Yに沿ってタングステン製の釘を突き刺した。なお、かかる釘の直径は1mm、長さは20mm、先端の角度は20°であり、積層電極体の発電領域に突き刺さるように0.1mm/secの速度で直角に突き刺した。
そして、釘を突き刺した後5秒間の電池温度の変化を、熱電対によって検出し続けて最高到達温度を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2019079661
サンプル1〜4とサンプル10、11を比較した結果、中心側の保護層の厚みを増加させると、釘刺し試験における最高到達温度が低下するという傾向が確認された。このことから、積層方向の中心側に配置された保護層に十分な厚みを持たせることによって、釘などの鋭利な異物が刺さった際に変形した正極集電体が負極まで到達することを抑制し、正極集電体と負極との接触による急激な発熱を防止できることが分かった。
一方で、中心側の保護層の厚みが同じであるサンプル1とサンプル8とサンプル9を比較すると、外側の保護層の厚みが薄いサンプル1の最高到達温度がサンプル8、9よりも低くなって発熱が抑制されていた。このことから、外側の保護層を薄くした方が、鋭利な異物が刺さった際の発熱を抑制できることが分かった。これは、鋭利な異物が刺さった際に外側の保護層が変形して正極集電体を押圧することがあるが、外側の保護層を薄くすれば、変形した外側の保護層によって正極集電体が変形することを抑制できるためと解される。
そして、サンプル1〜12の全てを比較した結果、中心側の保護層と外側の保護層の合計厚みを薄くした方が電池容量が向上することが確認された。特に、サンプル10のように、両面厚みが6μm以上になると電池容量が700mAh/gを下回るため、好適な容量の電池を構築するためには、両面厚みを6μm未満にする必要があることが分かった。
以上の結果から、釘などの鋭利な異物が刺さった際の発熱を好適に抑制するためには、中心側の保護層を厚くすると共に、外側の保護層を薄くするとよいことが分かった。そして、外側の保護層を薄くすると、保護層の合計厚みが薄くなって十分な厚みの正極合材層を形成することができるようになるため、電池容量を大きく低下させることなく、釘などの鋭利な異物が刺さった際の急激な発熱を好適に防止することができることが分かった。
なお、サンプル2、5、6を比較した結果、保護層に含まれるフィラーを構成する金属酸化物は、アルミナ、ベーマイト、酸化チタンの何れでもよいことが確認できた。
10、110 正極
12、112 正極集電体
14、114 正極合材層
16 正極露出部
17a (外側の)保護層
17b (中心側の)保護層
20、120 負極
22 負極集電体
24 負極合材層
26 負極露出部
40 セパレータ
50 ケース
52 ケース本体
54 蓋体
60、62 電極端子
80、180 電極体(積層電極体)
80a 発電領域
80b 正極接続領域
80c 負極接続領域
100 リチウムイオン二次電池
117 保護層
CL 中心線
E 鋭利な異物
t1 外側の保護層の厚み
t2 中心側の保護層の厚み
X 幅方向
Y 厚み方向(積層電極体の積層方向)
Z 高さ方向

Claims (1)

  1. シート状の正極と負極とを備えた電極体が非水電解液と共にケース内に収容されてなる非水電解液二次電池であって、
    前記正極が、導電性金属からなる箔状の正極集電体と、当該正極集電体の両面に形成される一対の保護層と、前記一対の保護層の各々の表面に形成される正極合材層とを備え、
    前記負極が、導電性金属からなる箔状の負極集電体と、当該負極集電体の両面に形成される負極合材層とを備え、
    前記電極体が、セパレータを介して前記正極合材層と前記負極合材層とが対向するように、前記正極と前記負極とを複数枚積層させた積層電極体であり、
    複数の前記正極の各々に形成された前記一対の保護層のうち、前記積層電極体の積層方向の中心側に配置される保護層が、前記積層方向の外側に配置される保護層よりも厚くなるように形成されており、
    前記中心側に配置される保護層の厚みが1μm〜4μmであり、前記外側に配置される保護層の厚みが0.5μm〜2μmである、非水電解液二次電池。
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