以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明し、トンネルの掘削現場を例として説明する。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向はトンネルの堀削方向(水平方向)とは反対方向(所定方向)を向く装薬孔40の軸方向を示している。
●[無線非火薬破砕システム1の全体構成(図1)と、装薬孔40への非火薬ユニット20の装填状態(図2)]
図1に示すように、無線非火薬破砕システム1は、無線非火薬着火具10(図2参照)が取り付けられて切羽面41(被破砕個所であり、破砕対象物の一例である。)に穿孔された装薬孔40に装填される非火薬破砕剤201が収納された非火薬ユニット20(図2参照)と、着火操作機50と、中継装置51と、着火操作機側送信アンテナ60と、着火操作機側受信アンテナ65と、にて構成されている。
着火操作機50は、装薬孔40から離れた遠隔位置に配置されて、母線62と中継装置51と補助母線61を介して着火操作機側送信アンテナ60に電流を供給する。これにより、着火操作機側送信アンテナ60の周囲に磁界が発生し、制御信号(例えば、ID要求信号や電子回路準備開始信号等を含む)や着火信号が発信される。
従って、着火操作機50は、着火操作機側送信アンテナ60を介して無線方式で、着火側電子回路120(図27参照)の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号を、後述する着火側受信アンテナ11(図2参照)を介して、無線非火薬着火具10を構成している制御部12(図2参照)及び着火部14(図2参照)に受け渡す。磁界を発生させるために着火操作機側送信アンテナ60に流れる電流の周波数、および制御信号及び着火信号の周波数である操作周波数は、例えば、100[kHz]以上500[kHz]以下に設定されている。操作周波数を500[kHz]より高くすると、トンネル内で定在波が発生しやすいので、あまり好ましくない。
着火操作機50は、無線非火薬着火具10の着火側送信アンテナ18(図2参照)からの無線の応答信号を、着火操作機側受信アンテナ65と着火操作機側受信アンテナ用ケーブル66と中継装置51と母線62を介して受信する。無線非火薬着火具10からの応答信号(電子回路準備完了信号に相当)の周波数である応答周波数は、例えば、100[MHz]以上1[GHz]以下に設定されている。応答周波数を1[GHz]より高く設定すると、岩盤を透過しにくいので、あまり好ましくない。応答周波数は500[kHz]以上であり、定在波は発生するが、応答信号の出力は、着火側電子回路120(図27参照)の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号の出力と比較して非常に小さい。そのため、この定在波によってトンネルが崩れる可能性は小さい。また、応答信号の出力は小さいが、応答信号を受信し易い位置に着火操作機側受信アンテナ65を設置することもできる。
中継装置51は、同調回路を有している。中継装置51は、着火操作機50と着火操作機側送信アンテナ60との間、及び着火操作機50と着火操作機側受信アンテナ65との間、に設けられている。中継装置51は、母線62を介して着火操作機50に接続されている。中継装置51は、補助母線61を介して着火操作機側送信アンテナ60に接続されている。中継装置51は、着火操作機側受信アンテナ用ケーブル66を介して着火操作機側受信アンテナ65に接続されている。中継装置51は、着火操作機50から無線非火薬着火具10に向けて、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号を受け渡す。この場合、着火操作機50からの着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを含む制御信号及び着火信号が、補助母線61を介して着火操作機側送信アンテナ60に出力される。中継装置51は、無線非火薬着火具10から着火操作機50に向けて送信された応答信号を、着火操作機側受信アンテナ65と着火操作機側受信アンテナ用ケーブル66を介して受け取って、着火操作機50へと受け渡す。
着火操作機側送信アンテナ60は、切羽面41(装薬孔40)の近傍であって、切羽面41から、例えば、0〜1[m]程度の距離L1(第1所定距離に相当)だけ離れた位置に設置される。例えば、図1中の距離L1を0[m]にした場合の例を図34に示す。この場合、着火操作機側送信アンテナ60は、切羽あるいは切羽の外周に張り巡らされ、例えば、洞床42、洞側壁43、洞天井44に沿ってループ状に張られている。
着火操作機側送信アンテナ60は、図1に示すように、洞床42、洞側壁43、洞天井44に沿ってループ状に3周等の複数周巻きされても良いし、図34に示すように、1周だけ巻かれても良い。中継装置51から切羽面41までの距離L3は、例えば50[m]程度である。中継装置51から着火操作機50までの距離L4は、例えば、100[m]〜300[m]程度である。着火操作機側送信アンテナ60と補助母線61は、切羽面41を破砕する毎に新たに張られる。
着火操作機側受信アンテナ65は、例えば、ポール状のアンテナである。着火操作機側受信アンテナ65は、切羽面41(被破砕個所)から距離L2(第2所定距離に相当)、例えば、0〜100[m]離れた位置に配置されている。無線非火薬着火具10から受信する応答信号の応答周波数は100[MHz]以上1[GHz]以下である。そのため、着火操作機側受信アンテナ65は、着火操作機側送信アンテナ60とは大きく形状が異なり、ループ状に大きく巻回する必要は無い。着火操作機側受信アンテナ65と着火操作機側受信アンテナ用ケーブル66は、切羽面41(被破砕個所)からの距離L2が、ある程度離れていれば、切羽面41を破砕する毎に交換する必要はない。
図2に示すように、切羽面41(被破砕個所)をテルミット反応によって生じた高温・高圧の水蒸気膨張圧(ガス膨張圧)により破砕する非火薬ユニット20は、装薬孔40に装填されている。装薬孔40は、例えば径D1が5[cm]程度、深さD2が2[m]程度に穿孔された孔であるが、この数値に限定されるものではない。そして、図2に示すように、装薬孔40内には、1個の非火薬ユニット20が装填され、粘土等の込め物22にて蓋がされている。
図2に示すように、非火薬ユニット20は、一端側が閉塞された有底筒状に形成されるプラスチック製の薬筒202と、薬筒202内に収納された非火薬破砕剤201と、薬筒202の他端側に取り付けられて他端側を閉塞する無線非火薬着火具10と、から構成されている。非火薬破砕剤201は、テルミット反応によって高熱・高温(例えば、2000℃〜3000℃程度)の水蒸気膨張圧を発生するガス発生剤である。非火薬破砕剤201の組成物は、Al、CuO、MgSO4・7H2O等で構成され、例えば、特開平11−029389号公報に開示されている。
無線非火薬着火具10は、略筒状の着火側受信アンテナ11と、制御部12と、着火部14と、着火側送信アンテナ18と、にて構成され、例えば制御部12と着火部14は、着火側受信アンテナ11内に収容されている。また、略筒状の着火側受信アンテナ11の内径は、薬筒202の外径よりも大きく形成されている。そして、薬筒202の他端側は、着火側受信アンテナ11に挿通されて着火部14が非火薬破砕剤201内に差し込まれ、着火側受信アンテナ11と一体化されて非火薬ユニット20を形成し、装薬孔40に装填されている。また、着火側受信アンテナ11の外径は、装薬孔40の内径以下である。なお、図12の例に示すように、着火部14のみを着火側受信アンテナ11内に収容し、制御部12を着火側受信アンテナ11の外に配置してもよい。
図2に示す表示装置72は、作業者が無線非火薬着火具10を識別可能な個体情報が表示されたものであり、ケーブル71を介して無線非火薬着火具10に取り付けられている。この個体情報は、例えば、着火信号を受信してから非火薬破砕剤201が着火されるまでの延期秒時間(0msec、25msec、50msec等)や識別番号等である。ケーブル71の長さは、非火薬ユニット20が装薬孔40に装填された際に、表示装置72が装薬孔40の外に達することが可能な長さに設定されている。従って、図2に示すように、表示装置72は、各非火薬ユニット20が装薬孔40に装填された場合、装薬孔40の外に配置される。
図2に示すケーブル71と表示装置72は省略してもよい。また、本実施の形態の説明では、無線非火薬着火具10にケーブル71を介して表示装置72を取り付けた例を説明したが、表示装置72を無線非火薬着火具10に直接取り付けてもよい。表示装置72を無線非火薬着火具10に直接取り付けた場合、作業者は、装薬孔40に装填した後に表示装置72を確認することはできないが、装薬孔40に装填する際に表示装置72を確認しながら装填することができる。
●[無線非火薬破砕方法(図1、図2)]
無線非火薬着火具10(構造等の詳細は後述する)を用いた無線非火薬破砕方法の各ステップを、以下の(a)〜(h)の各ステップ、及び図1と図2を用いて説明する。
(a)装薬孔穿孔ステップ。
(b)装填ステップ。
(c)着火操作機側送信アンテナ設置ステップ。
(d)着火操作機側受信アンテナ設置ステップ。
(e)電子回路準備開始送信ステップ。
(f)電子回路準備完了応答ステップ。
(g)着火信号送信ステップ。
(h)破砕ステップ。
(a)装薬孔穿孔ステップでは、図1に示すように、切羽面41(被破砕個所)に装薬孔40を穿孔する。
(b)装填ステップでは、図2に示すように、非火薬破砕剤201を収納した状態で無線非火薬着火具10が取り付けられた薬筒202を(すなわち、非火薬ユニット20を)切羽面41側から装薬孔40に装填する。
(c)着火操作機側送信アンテナ設置ステップでは、図1に示すように、切羽面41(被破砕個所)から第1所定距離(距離L1)だけ離れた位置に、着火操作機側送信アンテナ60をループ状に張る。
(d)着火操作機側受信アンテナ設置ステップでは、図1に示すように、切羽面41(被破砕個所)から第2所定距離(距離L2)だけ離れた位置に、着火操作機側受信アンテナ65を設置する。
(e)電子回路準備開始送信ステップでは、着火操作機50が、電子回路準備開始信号を、着火操作機側送信アンテナ60を介して、着火操作機50から無線非火薬着火具10に送信する。電子回路準備開始信号は、100[kHz]以上500[kHz]以下の周波数(例えば、200[kHz])である操作周波数を有し、電子回路準備を開始させる制御信号と着火側電子回路120の駆動用のエネルギーとを含む。
(f)電子回路準備完了応答ステップでは、無線非火薬着火具10が、電子回路準備開始信号を、着火側受信アンテナ11を介して受信する。そして、無線非火薬着火具10は、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーの充電及び着火側電子回路120の駆動とを含む電子回路準備を開始する。上記の電子回路準備が完了した場合に、無線非火薬着火具10は、当該電子回路準備の完了を示す応答信号である電子回路準備完了信号を、応答周波数にて、着火側送信アンテナ18を介して、無線非火薬着火具10から着火操作機50に送信する。応答周波数は、100[MHz]以上1[GHz]以下の周波数であって、例えば、315[MHz]または429[MHz]である。
(g)着火信号送信ステップでは、着火操作機50が、電子回路準備完了信号を、着火操作機側受信アンテナ65を介して受信する。その後、着火操作機50が、上記の操作周波数にて、着火信号を、着火操作機側送信アンテナ60を介して、着火操作機50から無線非火薬着火具10に送信する。
(h)破砕ステップでは、無線非火薬着火具10が、着火信号を、着火側受信アンテナ11を介して受信する。そして、無線非火薬着火具10が、充電した着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを用いて、着火側電子回路120から着火部14に着火して、非火薬破砕剤201に着火させる。
以降の説明において、無線非火薬着火具10の各効果を説明する。効果の1つは、着火操作機50側のアンテナ(着火操作機側送信アンテナ60、着火操作機側受信アンテナ65)と無線非火薬着火具10側のアンテナ(着火側受信アンテナ11、着火側送信アンテナ18)の位置関係の影響によらず、より効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号を受け取ることができることである。他の効果の1つは、応答信号の応答周波数の選定の自由度が高く、応答信号を効率良く送信することができることである。他の効果の1つは、無線非火薬着火具10をより小型化できることである。
●[着火操作機側送信アンテナ60の周囲に発生する磁界の方向(図3〜図5)]
図3〜図5を参照して着火操作機側送信アンテナ60の周囲に発生する磁界の方向等について説明する。図3は、図1から着火操作機側送信アンテナ60のみを抽出した図である。図3において、着火操作機側送信アンテナ60に実線の矢印の方向に電流が流れると、一点鎖線に示すような磁界が発生する。無線非火薬着火具10の着火側受信アンテナ11は、この磁界の方向を軸とした場合、当該軸の回りに導電線が巻回されている場合に、最も効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができる。
図4は、図3をIV方向から見た図である。装薬位置P2bは、巻回された着火操作機側送信アンテナ60に対して、ほぼ中央に相当する切羽面41の装薬孔40の位置である。装薬位置P1aは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの左上方に位置する。装薬位置P1cは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの右上方に位置する。装薬位置P1bは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの上方に位置する。
装薬位置P2aは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの左方に位置する。装薬位置P2cは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの右方に位置する。装薬位置P3aは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの左下方に位置する。装薬位置P3cは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの右下方に位置する。装薬位置P3bは、着火操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって、装薬位置P2bの下方に位置する。
図5は、図4に示す切羽面41の装薬位置P1a〜P1c、装薬位置P2a〜P2c、装薬位置P3a〜P3cの各位置における、磁界(着火操作機側送信アンテナ60の周囲に発生する磁界)の方向と大きさの例を示す。着火操作機側送信アンテナ60のほぼ中央に相当する装薬位置P2bでは、磁界の成分はZ軸方向のみである。そのため、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナで効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができる。例えば、図8に示すZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体115によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)が該当する。
しかし、着火操作機側送信アンテナ60の縁部の近傍では、Z軸方向の磁界の大きさが減少し、X軸方向の磁界やY軸方向の磁界の大きさが増大する。例えば、装薬位置P3cでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、X軸方向の磁界とY軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。装薬位置P1bでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、Y軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。
従って、着火操作機側送信アンテナ60の縁部の位置となる、装薬位置P1a〜P1c、装薬位置P2a、装薬位置P2c、装薬位置P3a〜P3cでは、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナのみでは、効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取るとともに無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができるとは限らない。例えば、図8に示すZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体115によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)のみだけでは、信号を効率良く受信することができるとは限らない。
そこで、以下に着火側受信アンテナ11について説明する。着火側受信アンテナ11は、例えば、切羽面41におけるいずれの位置に穿孔された装薬孔40に配置(装填)されても、より効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができる。しかも、着火側受信アンテナ11は、無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができる。
着火側受信アンテナ11が、無線非火薬着火具10から着火操作機50に向けて送信する応答信号の送信用のアンテナを兼ねる場合がある。この場合、応答周波数が100[MHz]未満であると、応答信号の到達距離が短く(例えば数[m]程度)、あまり好ましくない。応答周波数が1[GHz]よりも高いと、岩盤に吸収されやすく、あまり好ましくない。応答周波数は、100[MHz]以上1[GHz]以下が好ましい。これにより、応答信号は、岩盤に吸収されにくく、適度な到達距離を得ることができる。
しかし、100[kHz]以上500[kHz]以下の操作周波数の制御信号(着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを含む)及び着火信号を効率良く受け取ることができる着火側受信アンテナ11を、100[MHz]以上1[GHz]以下の応答周波数の応答信号を効率良く送信できる着火側送信アンテナと兼用させようとした場合、アンテナのサイズが大型化して、図1及び図2に示す装薬孔40内に装填できない可能性がある。
本願の発明者は、以下の(1)〜(3)をすべて満足する無線非火薬着火具を実現するために、着火側受信アンテナ11と着火側送信アンテナ18を別々のアンテナとして有する無線非火薬着火具10(図6、図7)を発明した。
(1)着火操作機50から、100[kHz]以上500[kHz]以下の操作周波数の制御信号及び着火信号(着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを含む)を効率良く受け取ることができる。
(2)着火操作機50に、100[MHz]以上1[GHz]以下の応答周波数の応答信号を効率良く送信できる。
(3)径が5[cm]程度、深さ(奥行き)が2[m]程度の装薬孔40に装填することが可能なサイズである。
●[無線非火薬着火具10の構造(図6〜図12)]
図6〜図12を参照して無線非火薬着火具10の構造について説明する。図6に示す例では、制御部12が着火側受信アンテナ11の外部に突出している。着火側送信アンテナ18が、着火側受信アンテナ11の外部で、且つ着火側受信アンテナ11に接しない位置に設けられる。図7に示す例では、着火側送信アンテナ18が、着火側受信アンテナ11の外部に突出し、且つ着火側受信アンテナ11に接しないように位置する。図8は、図6に示す無線非火薬着火具10の分解斜視図を示している。
応答周波数を100[MHz]以上1[GHz]以下に設定した場合、着火側送信アンテナ18は、例えば、電子回路基板の平面上にプリントした数[cm]程度のアンテナにて実現することが可能である(図20参照)。従って、着火側送信アンテナ18を、図6に示す位置、又は、図7に示す位置に設けることが可能である。そのため、着火側送信アンテナ18を無線非火薬着火具10と一体化することが容易である。図6の例では、着火側送信アンテナ18は、制御部12と導電線にて接続、あるいは制御部12と一体化(図28参照)されている。図7の例では、着火側送信アンテナ18は、制御部12と導電線111にて接続されている。
無線非火薬着火具10は、着火側受信アンテナ11、着火側送信アンテナ18、制御部12、制御部12に接続された着火部14を有している。制御部12は、着火側受信アンテナ11及び着火側送信アンテナ18に接続され、着火部14を着火させる。制御部12には、着火側電子回路120が収容されている(図11、図12参照)。図9は、図8における着火側受信アンテナ11を図8中のIX方向から見た図である。着火側受信アンテナ11は、例えば、図13に示すように、筒状のベース筒体114(例えば筒状のアクリル材)、筒状磁性体115、筒状コイル(Z軸用筒状コイル119)及びシート状コイル117が同軸に配置されている。筒状磁性体115は、シート状の磁性体(例えばフェライト)から形成され、肉薄筒状である。筒状磁性体115は、ベース筒体114の外周に巻回される。
筒状コイル(Z軸用筒状コイル119)とシート状コイル117(X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Y)も筒状磁性体115の外周に設けられる。着火側受信アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの3つが、Z軸の方向に沿って並べられている。着火側受信アンテナ11の形状は、肉薄円筒状であることが好ましいが、肉薄の筒状であればよく、軸方向(Z軸方向)に直交する断面が、円、楕円、多角形等、どのような形状であってもよい。また、着火側受信アンテナ11と制御部12とは導電線111にて接続されている。
図10は、図6に示す無線非火薬着火具10の断面図を示している。制御部12には着火部14が固定され、制御部12は着火側受信アンテナ11の一方の開口部に固定されている。また制御部12の一部は、着火側受信アンテナ11から外部に突出している。着火側送信アンテナ18が、突出した制御部12の一部に設けられ、着火側受信アンテナ11に接しないように位置している。着火側受信アンテナ11と制御部12との空隙には、非火薬破砕剤201が収納された薬筒202の他端側が挿入されることが好ましい。これにより、装薬孔40の奥まで非火薬ユニット20を配置できるので、破砕効果の向上を図ることができる。
着火部14は、制御部12から着火側受信アンテナ11の他方の開口部の側に延びるように制御部12に固定される。着火側受信アンテナ11の他方の開口部から、非火薬破砕剤201が収納された薬筒202が着火側受信アンテナ11内に挿通されると、挿通された薬筒202に収納された非火薬破砕剤201の先端部分に着火部14が差し込まれ、非火薬ユニット20が形成される。また、ベース筒体114の内径が薬筒202の外形よりも僅かに大きい径に形成されている場合には、例えば、薬筒202が着火側受信アンテナ11内に挿通された状態で、着火側受信アンテナ11の他方の開口部の周縁部に粘着テープ等を巻回することによって、薬筒202と無線非火薬着火具10とを一体化することができる。
図11は、着火側受信アンテナ11内に、制御部12と着火部14とを収容させた、図10とは異なる構成の無線非火薬着火具10Aの断面図である。図11に示す例では、着火側受信アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置され、それぞれが筒状に形成されている。着火側受信アンテナ11の一方の開口部に、着火部14が固定された制御部12が、例えば、接着剤161にて固定されている。制御部12は、制御ケース162と着火側電子回路120(図27中に符号120で示す部分の電子回路)と緩衝材163等を有している。着火側送信アンテナ18は、着火側電子回路120と一体化されている(図28の制御ユニット139を参照)。
図11に示すように、制御部12の一部は、着火側受信アンテナ11から外部に突出している。着火側送信アンテナ18が外部に突出している制御部12の一部に設けられ、着火側受信アンテナ11に接しないように位置している。着火部14は制御部12から着火側受信アンテナ11の他方の開口部の側に延びるように固定される。非火薬破砕剤201を収納した薬筒202が、着火側受信アンテナ11の他方の開口部から挿通されると、挿通された薬筒202の先端部分の非火薬破砕剤201内に着火部14が差し込まれ、非火薬ユニット20が形成される。
制御ケース162は、比較的強度が高く電波を通し易い樹脂等の材質で形成することができる。更に、制御ケース162と着火側電子回路120の間に緩衝材163を設けることもできる。これにより、隣接する装薬孔40に配置された非火薬ユニット20が高温・高圧の水蒸気膨張圧により切羽面41を破砕する際に発生した衝撃波が、着火側電子回路120へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰される。かくして着火側電子回路120が損傷することが抑制される。
図12に示すように、無線非火薬着火具10Bは、図10及び図11の無線非火薬着火具10、10Aとは異なる構成を有している。無線非火薬着火具10Bは、着火側受信アンテナ11内に収容された着火部14と、着火側受信アンテナ11の外に配置した制御部12を有している。着火側受信アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置されている。これらを筒状の保護ケース165内に収容している。
保護ケース165は、着火部14及び薬筒202から制御部12を隔離する隔離壁166を有している。制御部12は、隔離壁166を挟んで着火部14と反対側に位置し、且つ着火側受信アンテナ11内ではなく着火側受信アンテナ11の外に配置されている。制御部12は、保護ケース165の一方の開口部に嵌め込まれて固定されていてもよいし、保護ケース165の一方の開口部に接着剤等にて固定されていてもよい。制御部12は、制御ケース162と着火側電子回路120と緩衝材163等を有している。
図12に示すように、着火側送信アンテナ18は着火側電子回路120と一体化されている(図28の制御ユニット139を参照)。制御部12は、着火側受信アンテナ11から外部に突出している突出部を有している。着火側送信アンテナ18は突出部に設けられ、且つ着火側受信アンテナ11に接しないように位置している。図11の例と同様に、着火部14は制御部12から着火側受信アンテナ11の他方の開口部の側に延びるように制御部12に固定される。非火薬破砕剤201を収納した薬筒202が、着火側受信アンテナ11の他方の開口部から挿通されると、挿通された薬筒202の先端部分の非火薬破砕剤201内に着火部14が差し込まれ、非火薬ユニット20が形成される。
制御ケース162を比較的強度が高く電波を通し易い樹脂等の材料で形成する。これにより、隣接する装薬孔40に配置された非火薬ユニット20が高温・高圧の水蒸気膨張圧により切羽面41を破砕する際に発生した衝撃波が、着火側電子回路120へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰される。その結果、着火側電子回路120が損傷しないようにすることもできる。制御ケース162の一部を着火側受信アンテナ11の外に配置する。これにより、着火側電子回路120のサイズをベース筒体114の内径以上のサイズとすることが可能となり、着火側電子回路120のサイズの自由度が向上する。非火薬破砕剤201を収納した薬筒202を挿通する領域が拡大し、破砕効果の向上を図ることができる。
●[着火側受信アンテナ11と着火側送信アンテナ18の構造(図13〜図20)]
図13〜図20を参照して着火側受信アンテナ11と着火側送信アンテナ18の構造について説明する。図13は、着火側受信アンテナ11の分解斜視図である。着火側受信アンテナ11は、無線方式で着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号を受け取るアンテナである。着火側受信アンテナ11は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、X軸用シート状コイル117Xと、Z軸用筒状コイル119と、Y軸用シート状コイル117Yとを含んでいる。ベース筒体114は省略することも可能である。
筒状磁性体115の材質は、磁性体の中でも比較的容易に磁極が消失したり反転したりする高透磁率の材料であって、例えば、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、フェライト、アモルファス磁性合金、ナノクリスタル磁性合金、等が好ましく、本実施の形態では、フェライトを使用している。筒状磁性体115は、図13に示すように、シート状に形成されており、ベース筒体114の外周面に巻回されて肉薄筒状である。
筒状磁性体115の巻回の端部は、図14に示すように、オーバーラップすることなく、隙間172がほぼゼロとなるように巻回されていることが、より好ましい。しかし、図13に示すように、筒状磁性体115の巻回の一方の端部が他方の端部と重なってオーバーラップ部171を有するように巻回されていても良い。あるいは、筒状磁性体115が二重、三重となるように巻回されていても良い。図14に示す隙間172は、例えば1[mm]程度の微小隙間であれば許容範囲内であるが、隙間172が微小隙間よりも大きい隙間である場合は好ましくない。筒状磁性体115の軸であるアンテナ軸J11は、図8及び図13に示すように、Z軸と平行、あるいはZ軸である。
図13に示すように、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yは、ベース筒体114と筒状磁性体115と同軸となるように取り付けられる。これにより、着火側受信アンテナ11が形成される。着火側受信アンテナ11は、着火側受信アンテナ11の軸であるアンテナ軸J11が、装薬孔40の軸方向(この場合、Z軸方向)と一致するように装薬孔40に装填される。図5におけるZ軸方向の成分の磁界に対しては、Z軸方向を導電線の巻回の軸とするZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体115とによって構成されるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z(図6、図7参照))にて効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができる。
図5におけるX軸方向の成分の磁界に対しては、X軸方向を導電線の巻回の軸とするX軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体115とによって構成されるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ11X(図6、図7参照))にて効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができる。図5におけるY軸方向の成分の磁界に対しては、Y軸方向を導電線の巻回の軸とするY軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体115とによって構成されるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Y(図6、図7参照))にて効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を効率良く受信することができる。
図13の着火側受信アンテナ11は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、Z軸用筒状コイル119と、X軸用シート状コイル117Xと、Y軸用シート状コイル117Yを有している。しかし、着火側受信アンテナ11は、ベース筒体114を有していなくてもよい。
図6及び図7に示すように、Z軸用受信アンテナ11Zと、X軸用受信アンテナ11Xと、Y軸用受信アンテナ11Yと、の3つのアンテナは、Z軸方向に沿って、重ならないようにいずれかの順序で並んでいる。Z軸用受信アンテナ11Zは、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体115(第1磁性体に相当)を有している。X軸用受信アンテナ11Xは、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体115(第2磁性体に相当)を有している。Y軸用受信アンテナ11Yは、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体115(第3磁性体に相当)を有している。第1磁性体、第2磁性体、第3磁性体は、別々に構成されていてもよいし、本実施の形態に示すように共通の磁性体として構成されていてもよい。
発明者による種々の実験の結果によれば、Z軸用筒状コイル119を中央に配置することがより好ましい。即ち、Z軸用筒状コイル119を、X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yに挟まれる位置に配置することがより好ましい。例えば、図15に示すように、左側にX軸用シート状コイル117X、中央にZ軸用筒状コイル119、右側にY軸用シート状コイル117Y、となる順序で並べる。この並び方を(117X、119、117Y)と記載する。
Z軸用筒状コイル119が中央に配置された並び方には、図15に示す(117X、119、117Y)の順序の並び方と、図15に示す状態からZ軸回りに90[°]回転させた(117Y、119、117X)の順序の並び方がある。図16に示すように、Z軸用筒状コイル119を左端部に配置した(119、117X、117Y)の順序の並び方や、図示省略するが、(119、117Y、117X)、及びZ軸用筒状コイル119を右端部に配置した(117X、117Y、119)、(117Y、117X、119)の順序の並び方としてもよい。
着火側受信アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119(筒状コイル)とX軸用シート状コイル117X(シート状コイル)とY軸用シート状コイル117Y(シート状コイル)の3つのコイルと筒状磁性体115で構成することができる。これに代えて、着火側受信アンテナ11は、筒状コイル、あるいはシート状コイル、の少なくとも1つのコイルと筒状磁性体で構成してもよい。その場合、図5に示す装薬位置P2cに対しては、図17に示すように、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで着火側受信アンテナ11Cを構成してもよい。ベース筒体114は省略してもよい。
図5に示す装薬位置P2bに対しては、図18の例に示すように、Z軸用筒状コイル119とベース筒体114と筒状磁性体115とで着火側受信アンテナ11Aを構成してもよい。ベース筒体114は省略してもよい。図5に示す装薬位置P1bに対しては、図19に示すように、Y軸用シート状コイル117Yとベース筒体114と筒状磁性体115とで着火側受信アンテナ11Bを構成してもよい。ベース筒体114は省略してもよい。つまり、装薬孔40の位置に応じて、その位置で(最も)磁界の成分が大きい方向を軸とするアンテナを設置することができる。この場合、X軸、Y軸、Z軸に限らず、その位置における磁界の方向にアンテナの導電線の巻回の軸を一致させると、より好ましい。
図18及び図19に示すように、X軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで着火側受信アンテナを構成してもよい。ベース筒体114は省略してもよい。図17に示すように、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xを、Z軸用筒状コイル119とY軸用シート状コイル117Yに変更してもよい。あるいは、X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yに変更してもよい。このように、切羽面41における装薬孔40の位置毎に異なる着火側受信アンテナを選定することができる。その結果、切羽面41に穿孔された各装薬孔40にて、より効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を受信することができる着火側受信アンテナを実現することができる。
次に図20を用いて、着火側送信アンテナ18の構造について説明する。着火側送信アンテナ18は、応答周波数が100[MHz]以上1[GHz]以下に設定され、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け渡す必要がない。着火側送信アンテナ18は、着火操作機50に応答信号を送信するだけでよい。従って、数[cm]程度のサイズでよく、磁性体も必要としない。
着火側送信アンテナ18は、絶縁体のシートまたは板状部材であるベース部181と、ベース部181の表面にプリント等された導電体のアンテナ部182と、アンテナ部182と制御部12とを接続する導電線111等を有している。図28に示すように、着火側電子回路120と着火側送信アンテナ18とを一体化する場合、電子回路基板129上にアンテナ部182をプリントし、アンテナ部182を電子回路基板129上の配線パターン153で着火側電子回路120と接続することができる。
アンテナ部182と着火側電子回路120とを接続する導電線111(図20参照)は、図28の例では配線パターン153に置き換えられている。図20に示すアンテナ部182は、開口部が対向する一対のU字型であるが、アンテナ部182の形状は特に限定しない。図20の例では、ベース部181の表側の面と裏側の面とにアンテナ部182が設けられている。しかし、ベース部181の表側または裏側の少なくとも一方にアンテナ部182を設けるようにしてもよい。
●[Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの構造(図21〜図26)]
図21〜図26には、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの構造が示されている。以下の各コイルの説明では、筒状磁性体115の軸をZ軸、Z軸に直交する軸をX軸、Z軸とX軸との双方に直交する軸をY軸、として説明する。図21にZ軸用筒状コイル119の外観の例を示す。Z軸用筒状コイル119は、Z軸の周囲に導電線111が巻回されて筒状に形成された筒状コイルである。
図21の筒状コイルは、筒体112上に導電線111を巻回して形成されている。これに代えて、筒体112を設けずに導電線111を巻回して筒状コイルを形成してもよい。図18の分解斜視図の状態から、Z軸用筒状コイル119(筒状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115と同軸(この場合、Z軸と同軸)となるように筒状磁性体115の外周面に設ける。これにより、図18の全体が筒状になった着火側受信アンテナ11A(Z軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z))を構成することができる。
図22は、X軸用シート状コイル117Xの外観の例を示す。X軸用シート状コイル117Xでは、図24に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成される。図22に示すように、仮想軸JNAとJNBが同軸となるようにシート113を筒状にすることでシート状コイル117(X軸用シート状コイル117X)が形成される。X軸用シート状コイル117Xは、図22に示すように、仮想軸JNAとJNB(図24参照)が、同軸となるように湾曲される。そして、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがX軸に平行となるように配置される。すなわち、X軸用シート状コイル117Xは、X軸の周囲に巻回された導電線111を有している。
図24に示すように、シート113上に導電線111を巻回してシート状としたコイルを形成してもよい。これに代えて、シート113を設けずに導電線111を巻回して、導電線111によってシート状としたコイルとしてもよい。X軸用シート状コイル117Xは、図19に示す筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させることで筒状にすることができる。そして、X軸用シート状コイル117Xを肉薄筒状とされた筒状磁性体115の外周面に設けることができる。
これにより、着火側受信アンテナ(X軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ))を構成することができる。このとき、X軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、X軸)の周囲に導電線が巻回されている。導電線111は、図24に示すように、シート113の上で仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に巻回されてもよい。これに代えて、導電線111は、図25、図26に示すように、シート113の上で仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に巻回されてもよい。
図23は、Y軸用シート状コイル117Yの外観の例を示す。Y軸用シート状コイル117Yでは、図24に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成される。図23に示すように、仮想軸JNAとJNBが同軸となるようにシート113を筒状にすることでシート状コイル117(Y軸用シート状コイル117Y)が形成される。Y軸用シート状コイル117Yは、図23に示すように、仮想軸JNAとJNB(図24参照)が、同軸となるように湾曲される。そして、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがY軸に平行となるように配置されている。すなわち、Y軸用シート状コイル117Yは、Y軸の周囲に導電線111が巻回されたシート状コイルである。
図24に示すようにシート113上に導電線111を巻回してシートとした状コイルを形成しても良い。あるいは、シート113を設けずに導電線111を巻回して、導電線111によってシート状としたコイルとしてもよい。Y軸用シート状コイル117(シート状コイル117に相当)を図19に示す筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させ、筒状磁性体115の外周面に設ける。これにより、図19の全体が筒状である着火側受信アンテナ11B(Y軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Y))を構成することができる。Y軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、Y軸)の周囲に巻回されている導電線111を有している。
導電線111は、図24に示すように、シート113の上で仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に巻回されてもよい。これに代えて、導電線111は、図25、図26に示すようにシート113の上で仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に巻回されてもよい。
X軸用シート状コイル117Xを、Z軸回りに90[°]旋回させたものがY軸用シート状コイル117Yである。Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yのそれぞれは、筒状磁性体115の外周面に設けられている場合のほうが、筒状磁性体115の内周面に設けられている場合よりも、より効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと制御信号及び着火信号を受け取ることができる。
図22、図23等に示すように本実施の形態の説明では、X軸用シート状コイル117X及びY軸用シート状コイル117Yにおける導電線111の巻回を、矩形状に巻回している。しかし、巻回の形状は矩形状に限定されるものではなく、渦巻き状(らせん状)や種々の多角形状に巻回してもよい。また、種々の形状が混在するように巻回してもよい。またZ軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yは、作業者が手作業で導電線111を所定回数巻回して作成するようにしてもよい。
●[無線非火薬着火具10の制御部12内及び着火部14内の回路(図27)]
図27に示す回路ブロック図を用いて、無線非火薬着火具10の制御部12内及び着火部14内の回路(着火側電子回路120及び着火部14の回路)について説明する。図27は、図8に示す着火側受信アンテナ11及び着火側送信アンテナ18を含めた、制御部12内に収容された着火側電子回路120、着火部14の、それぞれの回路(ブロック図)を示している。
着火側受信アンテナ11は、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体115によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ11X)と、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体115によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)と、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体115によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Y)と、にて構成されている。X軸用シート状コイル117Xは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路121を介して3軸合成回路124に接続されている。
同様に、Z軸用筒状コイル119は、可変コンデンサ等にて構成された同調回路122を介して3軸合成回路124に接続されている。同様に、Y軸用シート状コイル117Yは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路123を介して3軸合成回路124に接続されている。このように、X軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、のそれぞれは、導電線111が、同調回路121、122、123、のそれぞれに接続されている。そして、同調回路121、122、123、のそれぞれが、3軸合成回路124に接続されている。
着火側送信アンテナ18は、導電体がプリント等されたアンテナ部182にて構成されている。アンテナ部182は、配線パターン153(または、導電線111)にて送信回路134に接続されている。CPU131が応答信号を送信する場合、CPU131からの応答信号は、変調回路133及び送信回路134を経由して配線パターン153(または、導電線111)を介して着火側送信アンテナ18から送信される。
着火側電子回路120は、同調回路121、122、123、3軸合成回路124、CPU131、検波・復調回路125、レギュレータ128、変調回路133、送信回路134、ID記憶装置132、電子回路駆動用蓄電装置127、着火用スイッチ回路138、整流回路126等にて構成されている。同調回路121、122、123、のそれぞれは、対応するX軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、の共振周波数を調整するための可変コンデンサ等にて構成されている。
3軸合成回路124は、X軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ11Xを構成するX軸用シート状コイル117X)、Y軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Yを構成するY軸用シート状コイル117Y)及びZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Zを構成するZ軸用筒状コイル119)から同調回路121、122、123を介して入力される着火側電子回路120の駆動用エネルギーや制御信号及び着火信号を合成し、経路151及び経路152に出力する。
経路151は、受信した制御信号や着火信号を取り込むルートである。経路152は、受け取ったエネルギーを整流、蓄電、定電圧化するルートである。そして、経路151及び検波・復調回路125を介して受信された無線の制御信号(例えば、ID要求信号や電子回路準備開始信号等を含む)及び着火信号(着火実行信号)は、CPU131に取り込まれる。経路152及びレギュレータ128(定電圧回路)を経由した着火側電子回路120の駆動用のエネルギーは、CPU131等の電子回路の電源として使用されるとともに電子回路駆動用蓄電装置127に蓄電される。3軸合成回路124は、CPU131から制御信号154が入力される。
ID記憶装置132には、無線非火薬着火具10に固有の識別情報が記憶されている。CPU131は、ID要求信号(制御信号)を受信すると、ID記憶装置132から読み出した識別情報を含む応答信号を送信する。ここでは、ID記憶装置132がCPU131とは別に構成されている例を示した。しかし、これに限定されるものではなく、ID記憶装置132がCPU131に内蔵されていてもよい。
CPU131は、不図示のRAM、ROM、タイマー等を有している。ROMには、着火信号を受信した時点から、着火用スイッチ回路138を開状態から短絡状態へとするための制御信号156を出力するまでの延期秒時間(段発の1段目に設定されている場合は、0msec、段発の2段目以降に設定されている場合は、25msec、50msec、・・・等)が記憶されている。
従って、CPU131は、着火信号(着火実行信号)を受信すると、ROMから延期秒時間を読み出す。そして、CPU131は、延期秒時間の経過するのを待った後、制御信号156にて、着火用スイッチ回路138を開状態から短絡状態へと制御して、電子回路駆動用蓄電装置127に蓄えたエネルギー(着火側電子回路120の駆動用のエネルギー)を点火回路141に出力して非火薬破砕剤201に着火させる。これにより、着火操作機50から着火操作機側送信アンテナ60を介して着火信号を送信することによって、非火薬ユニット20による段発を効果的に行い、破砕効率を向上させることができる。
着火部14は、点火回路141、電橋線142、非火薬点火剤143、非火薬着火剤144等を有している。点火回路141は、着火用スイッチ回路138が短絡されると、電子回路駆動用蓄電装置127から電力(発火用のエネルギー)が供給されて、電橋線142に通電される。電橋線142は、例えば、白金−イリジュウム線等で形成されて、非火薬点火剤143内に配置されている。電橋線142は、通電された電気エネルギーを熱エネルギーに変え、電橋線142近傍の非火薬点火剤143に発火させる。
そして、発火した非火薬点火剤143から非火薬着火剤144へと伝火して、非火薬着火剤144が着火される。この結果、非火薬着火剤144が着火されると、図2に示す非火薬破砕剤201が着火され、テルミット反応によって高熱・高温(例えば、2000℃〜3000℃程度)の水蒸気膨張圧を発生する。ここで、非火薬点火剤143の組成物は、例えば、C6H3NO4Pb、KMnO4、B、BaCr04等で構成されている。非火薬着火剤144の組成物は、例えば、Al、CuO、S、B等で構成されている。
●[着火側電子回路120と着火側送信アンテナ18とを一体化した例(図28)]
図28には、着火側電子回路120と着火側送信アンテナ18とを一体化した例が示されている。着火側送信アンテナ18は、数[cm]程度の導電体のアンテナ部182を、絶縁体にプリント等すればよいので、着火側電子回路120を構成する電子回路基板129上に、着火側送信アンテナ18を形成することが可能である。従って、図28の例に示すように、絶縁体の板状(あるいはシート状)の電子回路基板129の一部に、アンテナ部182をプリント等することが可能である。このため、着火側電子回路120と着火側送信アンテナ18とを電子回路基板129上に一体化した制御ユニット139を構成することが可能であり、小型化、組み付け容易性、をより向上させることができる。
●[本発明の効果等]
本実施の形態にて説明した無線非火薬破砕システム1では、操作周波数を100[kHz]以上500[kHz]以下とする。無線非火薬着火具10の着火側受信アンテナ11(受信専用のアンテナ)は、効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに効率良く無線の制御信号及び着火信号を受信することができる。そのため、図1に示す着火操作機側送信アンテナ60(送信専用のアンテナ)の巻き回数を、1回あるいは数回程度とすることができる。
着火操作機50から操作周波数の電流を着火操作機側送信アンテナ60に供給することで無線非火薬着火具10の制御部12(着火側電子回路120)に給電するとともに、着火部14に着火させるために使用するエネルギーを蓄電させる。制御部12への給電及び蓄電のために着火操作機側送信アンテナ60に供給する電力は、数10[W]〜数100[W]程度の比較的小電力で行うことができる。さらに、操作周波数の電流に重畳された制御信号(例えば、ID要求信号や電子回路準備開始信号等を含む)及び着火信号にて、無線非火薬着火具10の制御を行う。
着火操作機側受信アンテナ65(受信専用のアンテナ)を設ける。また、無線非火薬着火具10から応答する応答信号の周波数を100[MHz]以上1[GHz]以下に設定している。これにより、無線非火薬着火具10の着火側送信アンテナ18(送信専用のアンテナ)を、より小型にすることが可能である。着火側送信アンテナ18は、より効率良く応答信号を送信可能である。応答信号の到達距離をより長く、例えば、50[m]程度にすることができる。
着火側受信アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体115によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)と、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体115によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ11X)と、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体115によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Y)と、を有している。Z軸用筒状コイル119は、Z軸方向の磁界から効率よく着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと無線の制御信号及び着火信号とを受け取ることができる。
X軸用シート状コイル117Xは、X軸方向の磁界から効率よく着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと無線の制御信号及び着火信号とを受け取ることができる。Y軸用シート状コイル117Yは、Y軸方向の磁界から効率よく着火側電子回路120の駆動用のエネルギーと無線の制御信号及び着火信号とを受け取ることができる。このため、図1に示す切羽面41におけるいずれの位置に穿孔された装薬孔40であっても、より効率良く着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号及び着火信号を受信することができる。
図2に示すように、筒状の着火側受信アンテナ11内に薬筒202を挿通して、薬筒202に収納された非火薬破砕剤201内に無線非火薬着火具10の着火部14が挿入され、非火薬ユニット20が構成される。これにより、複数の装薬孔40内のそれぞれに非火薬ユニット20を装填しても、各非火薬ユニット20に無線非火薬着火具10が装着されているため、着火操作機50から着火操作機側送信アンテナ60を介して着火信号を送信することによって、各非火薬ユニット20に確実に着火させて段発させることができ、破砕効率を向上させることができる。
着火側送信アンテナ18を、着火側受信アンテナ11の外部に突出した位置、且つ着火側受信アンテナ11に接しない位置に設けている。また、無線非火薬着火具10と着火側送信アンテナ18を一体化している。そのため、導電線111にて接続した別体の着火側送信アンテナ18を有する場合と比較して、装薬孔40への装填が容易であるとともに、着火側送信アンテナ18と無線非火薬着火具10とを接続する導電線111の断線を適切に回避することができる。
更に、着火操作機50は、着火操作機側受信アンテナ65を介して全ての非火薬ユニット20の着火側電子回路120のCPU131から電子回路準備完了信号を受信した場合は、各非火薬ユニット20の着火側電子回路120のCPU131に対して順番に、着火信号を受信してから着火用スイッチ回路138への制御信号156を出力するまでの延期秒時間を、各無線非火薬着火具10を識別する識別情報とともに送信するようにしてもよい。
一方、各非火薬ユニット20の着火側電子回路120のCPU131は、受信した識別情報が、ID記憶装置132から読み出した識別情報と一致する場合は、受信した延期秒時間をRAMに記憶するようにしてもよい。その後、着火操作機50は、着火信号を送信するようにしてもよい。一方、各非火薬ユニット20の着火側電子回路120のCPU131は、着火信号を受信した場合は、RAMから延期秒時間を読み出すようにしてもよい。
そして、各非火薬ユニット20の着火側電子回路120のCPU131は、延期秒時間の経過するのを待った後、制御信号156にて、着火用スイッチ回路138を開状態から短絡状態へと制御して、電子回路駆動用蓄電装置127に蓄えたエネルギー(着火側電子回路120の駆動用のエネルギー)を点火回路141に出力して非火薬破砕剤201に着火させるようにしてもよい。これにより、切羽面41(被破砕個所)の地質(岩質)の状態に合わせて、装薬孔40に装填された各無線非火薬着火具10のそれぞれの延期秒時間を個別に設定することができ、非火薬ユニット20による段発を更に効果的に行い、破砕効率を向上させることができる。
●[着火側送信アンテナ18からの送信を補う送信補助アンテナ19の追加(図29〜図33)]
図29〜図33を参照して着火側送信アンテナ18からの送信を補う送信補助アンテナ19について説明する。図2に示すように、無線非火薬着火具10は、装薬孔40の最も奥に装填される。従って、無線非火薬着火具10からの応答信号を送信する着火側送信アンテナ18も、装薬孔40の奥深い位置となる。このため、装薬孔40の周囲の岩盤の種類等によっては、着火側送信アンテナ18からの送信信号が遮断されてしまい、送信信号を着火操作機側受信アンテナ65に向けて効率良く送信できない可能性が考えられる。そこで、着火側送信アンテナ18からの送信を補う送信補助アンテナ19を無線非火薬着火具10に追加することで、送信信号を着火操作機側受信アンテナ65に効率良く送信できるようにする。
図29は、図12の断面図にて示す無線非火薬着火具10Bに、送信補助アンテナ19を追加した外観の例を示している。着火側電子回路120と、着火側受信アンテナ11と、着火側送信アンテナ18と、着火部14と、を有する無線非火薬着火具10Bは、筒状ケースである保護ケース165と制御ケース162に収容されている。保護ケース165と制御ケース162の形状は、円筒状に限定されず、筒状であればよい。制御ケース162のサイズは、着火側送信アンテナ18を有する着火側電子回路120を保護して収容できるサイズであり、アンテナ軸J11に直交する径は、図30に示すように装薬孔40内に装填可能な径に設定されている。
制御ケース162におけるアンテナ軸J11に沿う長さは、着火側電子回路120を無駄なく収容可能な長さに設定されている。保護ケース165のサイズは、着火側受信アンテナ11と着火部14を保護して収容できるサイズである。保護ケース165のアンテナ軸J11に直交する径は、着火側受信アンテナ11を収容可能な径、かつ、図30に示すように薬筒202の一部を収容可能な径、かつ、装薬孔40内に装填可能な径、に設定されている。
保護ケース165におけるアンテナ軸J11に沿う長さは、着火側受信アンテナ11と着火部14を無駄なく収容可能な長さ、かつ、図30に示すように薬筒202の少なくとも一部を収容可能な長さに設定されている。制御ケース162の径(アンテナ軸J11に直交する径)と、保護ケース165の径(アンテナ軸J11に直交する径)は、一方の径のほうが他方の径よりも大きく設定されていてもよいし、同じであってもよい。制御ケース162の長さ(アンテナ軸J11に沿う長さ)と、保護ケース165の長さ(アンテナ軸J11に沿う長さ)は、一方の長さのほうが他方の長さよりも長く設定されていてもよいし、同じであってもよい。
そして、所定長さ(図30に示す装薬孔40の長さに応じて設定された長さ)を有する送信補助アンテナ19が、着火側送信アンテナ18に接続されることなく(着火側送信アンテナ18と非接続とされて)無線非火薬着火具10Bに取り付けられている。送信補助アンテナ19は、金属やカーボン等の導電体で形成された誘導部191と、金属やカーボン等の導電体で形成されたリード部192と、にて所定長さとされ、接合部193にて誘導部191とリード部192とが接合されている。なお「所定長さ」は、図30に示すように非火薬ユニット20を装薬孔40に装填した際、送信補助アンテナ19の他方端の側(保護ケース165または制御ケース162に取り付けられる側とは反対の側)が、装薬孔40の開口部45に到達することが可能な長さ以上の長さに設定されている。
図29に示すように、誘導部191は、送信補助アンテナ19の一方端の側であって、着火側送信アンテナ18に非接続とされて、保護ケース165や制御ケース162の一部における外側または内側の少なくとも一方に取り付けられている。誘導部191(送信補助アンテナ19)と着火側送信アンテナ18とは非接続であるが、誘導部191から着火側送信アンテナ18までの最短部の距離は、できるだけ短いことが好ましい。
図29に示すように、誘導部191は、例えば、保護ケース165の外側に貼り付けられている。誘導部191は、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、保護ケース165の一端から他端まで延出している。この場合、誘導部191を、所定の厚さの銅箔やアルミニウム箔とすると、両面粘着テープ等にて容易に保護ケース165に貼り付けることができる。誘導部191は、着火側送信アンテナ18から無線で送信された送信信号を、着火側送信アンテナ18に対して非接触で受信し、受信した送信信号をリード部192に伝播する。
誘導部191は、保護ケース165の一端から他端までの長さを有している。しかし、誘導部191のアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。誘導部191のアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、着火側受信アンテナ11を覆わないように、約10[mm]程度以下に設定されている。
図29に示すように、リード部192は、着火側送信アンテナ18に非接続とされ、送信補助アンテナ19の他方端から、保護ケース165や制御ケース162から離れるように延ばされている。絶縁体で被覆された導電線を有するリード部192が、接合部193にてハンダ等にて誘導部191に接合されて、保護ケース165や制御ケース162から離れるように延ばされている。
リード部192は、誘導部191から伝播された送信信号を、図30における装薬孔40の開口部45からの垂れ下がり部194から、着火操作機側受信アンテナ65に向けて送信する。この場合、垂れ下がり部194が実質的な送信アンテナとなる。図30中の垂れ下がり部194の垂れ下がり長さL19は、送信信号の波長の1/4以上の長さであることが好ましい。例えば、応答周波数が315[MHz]の場合、波長λ=30万[km/s]/315[MHz]=約1[m]であるので、この場合、垂れ下がり長さL19を約25[cm]以上とすることが好ましい。
図30は、無線非火薬着火具10を用いた非火薬ユニット20を装薬孔40に装填した状態を示す図2に対して、非火薬ユニット20の無線非火薬着火具10を図29に示す無線非火薬着火具10Bとした場合の状態を示している。送信補助アンテナ19は、装薬孔40の開口部45から引き出され、垂れ下がり部194を有している。垂れ下がり長さL19は、送信信号の波長の1/4以上とされていることが好ましい。
図2中のケーブル71の代わりに送信補助アンテナ19を利用して表示装置72を取り付けることで、ケーブル71を省略することができる。上述した(b)装填ステップでは、図30に示すように、無線非火薬着火具10Bが取り付けられた薬筒202を(すなわち、非火薬ユニット20を)切羽面41側から装薬孔40に装填する。非火薬ユニット20は、送信補助アンテナ19の他方端の側(リード部192の側)が装薬孔40の開口部45から垂れ下がるように装薬孔40に装填される。なお、この場合の非火薬ユニット20は、図30に示すように、無線非火薬着火具10Bが一方端の側に収容された保護ケース165(筒状ケース)と、非火薬破砕剤201を収納した薬筒202と、を有している。そして薬筒202の先端部は保護ケース165の他方端の側に収容されている。
送信補助アンテナ19の誘導部191は、図29に示す位置に設けられてもよいし、図31〜図33に示す位置に設けられてもよい。図31に示す誘導部191は、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、保護ケース165の一端から他端まで、及び制御ケース162の一端から他端まで取り付け(貼り付け)られている。誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、着火側受信アンテナ11を覆わないように、約10[mm]程度以下に設定されている。
図32に示す誘導部191は、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、制御ケース162の一端から他端まで、誘導部191が取り付け(貼り付け)られている。尚、誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、特に限定しない。
図33に示す誘導部191は、アンテナ軸J11を周回するように、制御ケース162の周囲に巻回されて取り付けられている。尚、誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の長さは、特に限定しない。誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の幅は、特に限定しない。
誘導部191は、保護ケース165及び制御ケース162において、外側または内側の少なくとも一方に取り付けられていればよい。例えば、図29において、誘導部191は、保護ケース165の一部における外側に取り付けられている。これに代えて、誘導部191は、保護ケース165の内側に取り付けられていてもよいし、誘導部191の一部が保護ケース165の内側で、残りが保護ケース165の外側に取り付けられていてもよい。
誘導部191とリード部192とを1本の連続した導電線で形成してもよい。この場合は接合部193が省略される。送信補助アンテナ19は着火側送信アンテナ18に接続されていないので、装薬孔40に静電気や(周囲の高圧電線等からの)漏洩電流や(何らかの原因により地中を流れている)迷走電流があって、これらを送信補助アンテナ19が拾ってしまった場合であっても、着火側送信アンテナ18を介して着火側電子回路120に伝わることを防止できる。上記のように、誘導部191の例として種々の例が考えられるが、誘導部191の好ましい形態の例としては、図29の例に示す誘導部191において、径が0.4[mm]程度の導線(銅線)を、保護ケース165の表面に接着剤等で貼り付けて形成した誘導部191が考えられる。
また、図35に示すように、装薬孔40内に、複数個(図35に示す一例では、2個)の非火薬ユニット20を、それぞれの間に合成樹脂製のスペーサ25等を挟んで空隙を配して(またはスペーサ25を省略して所定の空隙を配して)直列に装填し、粘土等の込め物22にて蓋をするようにしてもよい。なお、各非火薬ユニット20は、非火薬破砕剤201を収納した1本の薬筒202と1個の無線非火薬着火具10とを有している。また、各非火薬ユニット20が装薬孔40に装填された場合、各非火薬ユニット20にケーブル71を介して取り付けられた表示装置72が、装薬孔40の外に配置されるようにしてもよい。これにより、作業者は、装薬孔40内に、各非火薬ユニット20を装填した後、それぞれの表示装置72の確認をすることができる。また、深い装薬孔40内に、複数の非火薬ユニット20を装填しても、同時に着火させて段発をさせることができ、破砕効率を向上させることができる。
また、図36に示すように、装薬孔40内に、無線非火薬着火具10Bに、着火側送信アンテナ18に接続されることなく送信補助アンテナ19が取り付けられた複数個(図36に示す一例では、2個)の非火薬ユニット20を、それぞれの間に合成樹脂製のスペーサ25等を挟んで空隙を配して(またはスペーサ25を省略して所定の空隙を配して)直列に装填し、粘土等の込め物22にて蓋をするようにしてもよい。なお、各非火薬ユニット20は、非火薬破砕剤201を収納した1本の薬筒202と1個の無線非火薬着火具10Bとを有している。また、各非火薬ユニット20が装薬孔40に装填された場合、各非火薬ユニット20の送信補助アンテナ19は、装薬孔40の開口部45から引き出され、垂れ下がり部194を有している。それぞれの垂れ下がり長さL19は、送信信号の波長の1/4以上とされていることが好ましい。
更に、装薬孔40の外側に垂れ下がった各送信補助アンテナ19を介して取り付けられた表示装置72が、装薬孔40の外に配置されるようにしてもよい。これにより、作業者は、装薬孔40内に、各非火薬ユニット20を装填した後、それぞれの表示装置72の確認をすることができる。また、深い装薬孔40内に、複数の非火薬ユニット20を装填しても、着火側送信アンテナ18からの送信を補うことができ、より確実に同時に着火させて段発をさせることができ、破砕効率を向上させることができる。
●[コンクリート構造物を破砕する場合の例(図37〜図40)]
非火薬ユニット20は、上述したトンネルの切羽面の破砕以外にも、巨石の破砕や、コンクリート柱の切断(ビルのフロアの部分解体や橋の解体等)や、水中の巨石またはコンクリート構造物の破砕など、種々の破砕に使用することができる。例えば図37〜図39は、ビル等の構造物の外壁に囲まれた空間内のコンクリート柱を破砕する例を示しており、図37は破砕前の状態の斜視図を示し、図38は図37においてXXXVIII方向から見た図を示し、図39は図37に対して破砕後の状態の斜視図を示している。
図37及び図38に示すように、構造物210は、床面242、側壁面243、天井面244を有し、2本のコンクリート柱220が床面242から天井面244まで立設されている例を示している。またコンクリート柱220内には、複数の鉄筋230が埋め込まれている。なお鉄筋230は縦横に複数埋め込まれているが、図37〜図39では、縦方向に埋め込まれている2本のみを例として記載している。
図37に示すように、無線非火薬破砕システム205は、図1に示した無線非火薬破砕システム1と同様に、着火操作機250、母線262、中継装置251、補助母線261、着火操作機側送信アンテナ260、着火操作機側受信アンテナ用ケーブル266、着火操作機側受信アンテナ265等を有している。例えば着火操作機側送信アンテナ260は、床面242、側壁面243、天井面244を利用して張られている。なお、無線非火薬破砕システム205の構成及び動作は、図1に示した無線非火薬破砕システム1と同様であるので説明を省略する。
またコンクリート柱220には、複数の装薬孔40が穿孔されている。図37の例では被破砕個所241における着火操作機側送信アンテナ260の側に24個、着火操作機側送信アンテナ260とは反対側に24個穿孔されている。そして各装薬孔40には、非火薬ユニット20が装填されている(図38参照)。尚、非火薬ユニット20の装填状態は、図2と同様である。また、各装薬孔40内の鉄筋230は、装薬孔40を穿孔する際に、切断される。また、鉄筋が非火薬ユニット20の近傍に存在しても、着火操作機側送信アンテナ260から非火薬ユニット20へ、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーや制御信号を、無線で適切に受け渡すことができる。
図39は、破砕直後の状態の例を示している。被破砕個所241のコンクリート部分は非火薬ユニット20によって破砕され、鉄筋230の一部は破砕されずに残る場合があるが、予め主となる鉄筋を装薬孔40の穿孔時に切断しておけば問題無い。
ここで、図40に示すように、着火操作機側送信アンテナ260は、全てのコンクリート柱220の天井面244側の端部を囲むように、天井面244にループ状に2周等の複数周張ってもよいし、1周だけ巻かれるように張ってもよい。そして、着火操作機側送信アンテナ260は、天井面244に沿って側壁面243よりも外側に引き出されて、補助母線261を介して中継装置251に接続されるようにしてもよい。
これにより、鉄筋が非火薬ユニット20の近傍に存在しても、着火操作機側送信アンテナ260から非火薬ユニット20へ、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーや制御信号を、無線で適切に受け渡すことができる。また、各コンクリート柱220が破砕されても、着火操作機側送信アンテナ260及び補助母線261がコンクリート破片で埋まることを防止でき、再使用が可能となる。
本発明の無線非火薬着火具10、10A、10B、無線非火薬破砕システム1、無線非火薬破砕方法は、本実施の形態にて説明した外観、構造、構成、形状、方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体115の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体115の軸)に直交している。また、Y軸用シート状コイル117Yにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体115の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体115の軸)に直交しており、X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸に直交している。
本実施の形態の説明では、着火側受信アンテナ11の磁性体として、シート状の筒状磁性体115を用い、着火側受信アンテナ11のコイルとして、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Y、を用いた例を説明した。しかし、着火側受信アンテナ11の磁性体の形状は、どのような形状であってもよいし、着火側受信アンテナ11の形状も、どのような形状であってもよい。
つまり、Z軸用受信アンテナ11Zとしては、Z軸回りかつ第1磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第1磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。同様に、X軸用受信アンテナ11Xとしては、X軸回りかつ第2磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第2磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。同様に、Y軸用受信アンテナ11Yとしては、Y軸回りかつ第3磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第3磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。
着火側送信アンテナ18の形状は、図20及び図28の例に示すアンテナ部182の形状に限定されるものではなく、種々の形状とすることができる。
また本実施の形態にて説明した無線非火薬着火具10、10A、10B、無線非火薬破砕システム1、無線非火薬破砕方法は、トンネルの掘削現場に限定されず、コンクリート建造物(破砕対象物の一例である。)の破砕現場等の種々の現場における非火薬破砕剤201を用いた破砕に適用することが可能である。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
本実施の形態にて説明した着火側受信アンテナ11は、Z軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)のみをZ軸方向に沿って装薬孔40に配置した従来のアンテナに対して、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを、より「効率良く」受け取ることができるとともに、無線の制御信号及び着火信号を、より「効率良く」受信することができる。なお「効率良く」とは、従来のアンテナでは、例えば、図4の例に示す装薬位置P1a、P1c、P3a、P3c等の着火操作機側送信アンテナ60の縁部では、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを充分に受け取れない場合や、無線の制御信号及び着火信号を受信できない場合が、稀に発生した。
しかしながら、本実施の形態の着火側受信アンテナ11では、発明者が何度も実験した結果、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを充分に受け取れない場合や、無線の制御信号及び着火信号を受信できない場合が、一度も発生しなかった、という意味を含んでいる。つまり、本実施の形態にて説明した着火側受信アンテナ11にて「効率良く受け取ることができる」「効率良く受信できる」とは、上記の従来のアンテナと比較して、着火側電子回路120の駆動用のエネルギーを「より確実に受け取ることが可能」であり、無線の制御信号及び着火信号を「より確実に受信することができる」、という意味を含んでいる。
添付の図面を参照して詳細に上述した種々の実施例は、本発明の代表例であって本発明を限定するものではない。詳細な説明は、本教示の様々な態様を作成、使用および/または実施するために、当業者に教示するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、上述した各付加的な特徴および教示は、改良された無線非火薬着火具、無線非火薬破砕システム、及び、無線非火薬破砕方法を提供するため、別々に又は他の特徴および教示と一緒に適用および/または使用され得るものである。