JP3569990B2 - 遠隔無線発破装置及びそれに用いる受信起爆装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、トンネルなどの掘削工事における遠隔無線発破装置及びそれに用いる受信起爆装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル等の発破工法による掘削工事においては、切羽に削孔した発破孔に爆薬と電気雷管や非電気式起爆システム等の起爆用雷管が作業者によって装填、結線される。その後、起爆用雷管が起爆されて発破が行われる。
【0003】
また、特公昭51−12922号公報には、遠隔起爆装置として、水底岩盤遠隔起爆装置が開示されている。すなわち、受信起爆装置内部に点火用電源を備え、外部からの超音波によって点火信号を発信し、受信起爆装置がその信号を受信して起爆する。
【0004】
さらに、特公昭50−28621号公報には、別の遠隔発破装置が開示されている。すなわち、海底の岩盤を掘削するため、海面に径の大きいループアンテナが配置され、そのアンテナ面の下方に位置する海底の岩盤に受信起爆装置が埋設される。そして、ループアンテナより発生される磁界により受信起爆装置が作動して岩盤の爆破が行われる。この公報には、受信起爆装置として、受信コイル長以下の長さのコアを有するものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、トンネルの発破孔内への装薬作業や起爆装置との結線作業は、作業者が落石や崩落の可能性の大きい切羽で作業するため、作業に注意を要する。電気雷管や非電気式起爆システム等を用いた従来の有線式の起爆法では、発破孔への装薬作業の際、脚線やプラスチックチューブを断線させないように丁寧に取り扱う必要があった。このため、この作業を自動化することが非常に困難で、作業を人手に頼ることから、時間と手間がかかるという問題もあった。
【0006】
また、特公昭51−12922号公報に開示された遠隔起爆装置は、受信起爆装置内に電源を有しているため、誤爆防止用の複雑な回路を必要とし、装置が複雑で、大型化するという問題があった。しかも、超音波を使用するため、受信素子を発破孔の外部に設置する必要があり、かつ陸上では距離減衰が大きくなるという問題があった。
【0007】
さらに、特公昭50−28621号公報に記載の遠隔発破装置を、トンネルや地下空間等の発破工法による掘削工事に利用しようとすると、ループアンテナの磁界が弱いことから、距離減衰を減らすため切羽に貼り付けることになる。この場合、ループアンテナのケーブル付近の磁界はケーブルの軸方向に対してほぼ同心円状に分布しているので、磁界の向きの変化が大きく、一方向の磁界にしか同調しない受信起爆装置を起爆できない場所がある。さらに、発破を行うごとに切羽に貼り付ける必要があり、ループアンテナは使い捨てになるという問題があった。
【0008】
加えて、この遠隔発破装置に用いられる受信起爆装置においては、コアの長さは受信コイル長以下である。このため、ループアンテナを切羽から十分離れた距離に設置して、トンネルや地下空間等の発破工法による掘削工事に利用しようとすると、受信能力が弱く、受信起爆装置を大型化する必要があった。一般に、発破を行う場合、発破孔内に配置した爆薬から起爆するので、受信起爆装置は発破孔の最奥部に配置する。従って、受信能力を向上させるために受信起爆装置を大型化すると、受信起爆装置のために、発破孔の直径を大きくしたり、余分に穿孔する必要があり、作業性が悪くなるという問題があった。
【0009】
この発明はこのような従来技術の問題に着目してなされたものである。その目的とするところは、受信起爆装置の受信能力を向上させ、切羽から十分離れたところに設置した磁界発生装置から、発破孔内に配置した受信起爆装置を確実に起爆できる遠隔無線発破装置及び受信起爆装置を提供することにある。
【0010】
他の目的とするところは、受信起爆装置内に電源をなくして構成を簡単にできるとともに、小型、軽量化を図ることができる遠隔無線発破装置及び受信起爆装置を提供することにある。
【0011】
その他の目的とするところは、受信起爆部に電池等の電源を不要とし、発破する直前に爆薬に起爆エネルギーを伝達し、誤爆のおそれをなくすことができるとともに、作業者が切羽で行う作業を減少させて作業性を向上させることができる遠隔無線発破装置及び受信起爆装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の遠隔無線発破装置の発明では、磁界発生装置と受信起爆装置とよりなり、トンネルの掘削に用いる遠隔無線発破装置であって、前記磁界発生装置は、特定周波数の交流電流を発生する交流発振器と、前記交流電流により同交流電流と同一の周波数の100〜1000Hzに設定されている磁界を発生するアンテナとを備え、前記受信起爆装置は、トンネル内の切羽に穿孔した発破孔に装填され、中空部を有する受信コイルと、クランク形状をなすと共に一端が前記中空部に配置されるコアと、受信コイルに接続される受信回路と、受信回路からのエネルギーにより起爆する爆薬とを備え、その爆薬を受信コイルの軸線方向における延長線上に配置し、コアの他端を受信コイルの端部より軸線方向に延長するとともに、延長されたコアと爆薬とが軸線方向において重複した部分を有するものである。
【0013】
また、請求項2に記載の遠隔無線発破装置用の受信起爆装置の発明では、トンネル内の切羽に穿孔した発破孔に装填される受信起爆装置であって、中空部を有する受信コイルと、クランク形状をなすと共に一端が前記中空部に配置されるコアと、受信コイルに接続される受信回路と、受信回路からのエネルギーにより起爆する爆薬とを備え、前記爆薬を受信コイルの軸線方向における延長線上に配置し、コアの他端を受信コイルの端部より軸線方向に延長するとともに、延長されたコアと爆薬とが軸線方向において重複した部分を有するものである。
【0014】
加えて、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、コアを、中間部において折曲形成し、受信コイルの中空部の延長線上に爆薬を配置可能にしたものである。
【0015】
【作用】
請求項1に記載の発明においては、受信コイルの端部から軸線方向に延長されたコアによって、磁界発生装置が発振する磁界をより多く集めることが可能となり、爆薬に対する起爆能力が高められる。
【0016】
また、請求項1,2に記載の発明では、延長部分のコアと爆薬とが軸線方向において重複した部分を有することから、その分だけ受信起爆装置の長さを短くすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、コアが中間部において折曲形成され、受信コイルの中空部の延長線上に爆薬が配置可能になっている。このため、受信コイルの反対側の効果的な位置に所要の大きさの爆薬を配置でき、受信起爆装置を有効に機能させることができる。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
以下に、この発明を具体化した実施例につき図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、遠隔無線発破装置における磁界発信装置について説明する。図5に示すように、磁界発生装置11はループアンテナ12と交流発振器13とよりなり、トンネル14内に移動可能に配置されている。ループアンテナ12は、台車15上に載置固定され、所定太さの導線16により、側面形状が円形、矩形、楕円形等の形状になるように巻回されて構成される。このループアンテナ12は、直径または一辺の長さが爆破対象の大きさに応じて1〜10m 、好ましくは2 〜7mである。また、その巻数は所望とする強度の交流磁界を得るために 5〜500 回である。
【0020】
さらに、ループアンテナ12は、発破による飛石の影響を極力減らすために、トンネル14内最先端部の切羽17から離れた位置に配置する方がよい。必要により、金属や木材等の図示しない防護板やケブラー、炭素繊維やグラスファイバー等を使用した防護シートがループアンテナ12の前面に備えられ、発破時における飛石に対してループアンテナ12を保護する。
【0021】
しかも、ループアンテナ12は、切羽17に穿設された発破孔18に装填される複数の受信起爆装置19を起爆するのに必要な磁界を均一に切羽17に放射する必要があり、かつ移動が容易なサイズに設定される。このループアンテナ12の長さは、その直径より大きくても切羽17の前面に磁界が供給される。
【0022】
交流発振器13はループアンテナ12から所定距離をおいた位置に載置され、接続線20にてループアンテナ12の導線16に接続される。この交流発振器13は、自動車用バッテリーまたは坑内電源により機能し、その電圧は24〜400Vである。交流発振器13から供給された交流電流により、ループアンテナ12は交流磁界を発生する。この交流磁界の周波数は、交流発振器13の発振する交流電流と同一の周波数である。また、この交流磁界の周波数は、岩盤を透過しなければならないため、数kHz 以下で、好ましくは 100〜1000Hzの周波数である。この実施例では、周波数550Hz の交流電流がループアンテナ12に供給される。
【0023】
この実施例で使用される交流磁界の周波数は、通信や一般電源では使用されない周波数であるため、それらの機器に影響を及ぼすおそれはない。また、受信起爆装置19は、磁界発生装置11の発生する交流磁界の周波数にのみ同調するため、他の異なる周波数の電波等によって誤作動することはない。
【0024】
そして、交流発振器13が発振する交流電流により、ループアンテナ12は交流電流と同一周波数の交流磁界を発振する。この交流磁界に同調して発破孔18内にある受信起爆装置19内の受信コイル21が、起電力を発生し、そのエネルギーが受信回路部22内に蓄えられる。そして、点火信号によって受信回路部22から点火エネルギーが放出される。この点火エネルギーにより、受信起爆装置19の電気雷管23が点火して爆薬24が爆発する。
【0025】
次に、この実施例の遠隔無線発破装置に用いられる受信起爆装置19について説明する。図1に示すように、受信コイル21は収納ケース25内の一端側に収容され、導電線26が一端側から他端側まで多数回巻回されて所定の長さと直径を有するとともに、その中心に軸線方向に貫通する中空部27を有している。この受信コイル21は、交流磁界に同調し起電力を発生する。図7に示すようなコア28は、中間部で折れ曲がった折曲部29を有するいわゆるクランク形状をなす。例えば、図8に示すように、このコア28は板厚 0.1〜2 mm程度の薄板素材30より連続的な打ち抜きにより形成されたクランク形状の薄板31を複数枚積層して構成されている。薄板素材30としては、ケイ素鋼板等が使用される。
【0026】
コア28の形状としては、受信コイル21の中空部27に配置されるコア28の部分の断面が円形、楕円、矩形又は多角形等の中空部27に配置可能な形状を有し、発破孔18に挿入できる形状であれば、どのような形状でもよい。
【0027】
コア28の長さLは、通常10〜1000mm、好ましくは30〜500mm である。コア28の直径、一辺または幅は、通常発破孔18の穿孔径の5 〜90% 、または5 〜45mmである。
【0028】
コア28の好ましい形状は図1に示すクランク形状であり、クランク形状にすることで受信コイル21中心の中空部27にコア28を配置でき、かつ受信コイル21と同一の径でコア28と、爆轟を維持できる爆薬24とを配置できる。
【0029】
コア28の材質は、鉄系金属磁性材料、軟質磁性合金や酸化物軟質磁性材料(ソフトフェライト)等の軟質磁性材料から選ばれる。
図1に示すように、コア28の一端が受信コイル21の中空部27に挿入配置され、コア28は交流磁界を集束し、磁界密度を高める。しかも、コア28を受信コイル21の長さより延長することにより、さらに受信能力を高めることができる。この場合、延長方向は、磁界発生装置11側であることが望ましい。
【0030】
受信回路部22は受信コイル21に接続され、起電力を爆薬24の点火に必要なエネルギーに変換して蓄え、その点火エネルギーを放出する。爆薬24は収納ケース25内の他端側において受信コイル21の中心軸線方向の延長線上にコア28の他端と軸線方向において重複した位置にあるように収容されている。電気雷管23は、爆薬24の一端ほぼ中心位置に装填され、爆薬24の一端面に挿入されている。この電気雷管23は、受信回路部22の点火エネルギーにより爆薬24を爆発させる。
【0031】
図2及び図5に示すように、複数の発破孔18は、トンネル14内の最奥部の切羽17に所定の深さで穿孔されている。各発破孔18内の最奥部には図1に示すような受信起爆装置19が配置され、その前面には膠質ダイナマイト、含水爆薬、プラスチック爆薬(PBX)または硝安油剤爆薬等の爆薬24が配置されている。砂、粘土または合成樹脂等の充填物32は、発破孔18の開口端側に充填され、発破孔18を密閉している。なお、ANFO爆薬は、受信起爆装置19外に装填される。一般に、爆薬24は、薬径が大きいほど爆轟伝搬性が良くなり、破壊力が増加するため、受信起爆装置19や発破孔18に装薬する爆薬24の薬径は大きい方が好ましい。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、前記収納ケース25は弾力性のある素材により円筒の一部が長さ方向全体にわたって切り欠かれた切欠き部33を有し、内部に受信起爆装置19が装填される。この収納ケース25内に受信起爆装置19を装填する場合には、図4(a),(b)に示すように、受信起爆装置19を収納ケース25の切欠き部33から、収納ケース25を押し広げるようにして挿入する。
【0033】
次に、図6に基づいて受信回路部22を説明する。受信コイル21には同調用コンデンサ34が並列接続され、磁界発生装置11から発生される交流磁界に同調して起電力を発生する。ダイオード35、ダイオード36は受信コイル21に直列接続され、さらに点火用コンデンサ37に接続される。コンデンサ38と抵抗39からなる時定数回路が受信コイル21と並列に設けられ、交流磁界が消滅したという点火信号が入力したとき、この時定数回路によりダイオード36の入力側電極電圧が予め設定された時間内に降下される。時定数回路とダイオード36との間にはPNP型トランジスタ40が接続され、この時定数回路による電圧降下によってPNP型トランジスタ40が導通を開始する。
【0034】
このPNP型トランジスタ40には正帰還回路を構成するNPN型トランジスタ41が接続される。すなわち、PNP型トランジスタ40のベースがNPN型トランジスタ41のコレクタに接続される。電気雷管23はNPN型トランジスタ41のエミッタと点火用コンデンサ37との間に接続され、通電によって起爆する。なお、コンデンサ38と抵抗39からなる時定数回路のコンデンサ容量と抵抗値を調整することにより、電気雷管23への通電時間を任意に精度よく設定できるため、所定の順序に従って発破する段発発破が可能である。
【0035】
点火信号は、図6に示した回路の場合、交流磁界が消滅したときに発生する。なお、点火信号として、異なる周波数の交流磁界に対して作動するよう変更した回路によりエネルギーを放出させることなどが可能である。
【0036】
交流磁界によって受信コイル21の両端に発生する誘導起電力は、下記(1)式に示すように受信コイル21の巻数と、鎖交磁束の角速度と、受信コイル21内を鎖交する磁束の量との積で算出される。
【0037】
e=n・ω・Φ (V) ・・・(1)
n:受信コイルの巻数(T) 、ω:鎖交磁束の角速度(rad/sec) 、Φ:受信コイル3内を鎖交する磁束(Wb)
この(1)式をさらに説明すると、下記のように誘導される(2)式に示すように、誘導起電力は発振周波数と、受信コイル21内のコア28の比透磁率と、受信コイル21の巻数と、受信コイル21の断面積と、受信コイル21に直交する磁界成分との積で表される。
【0038】
ω=2πf
f:発信周波数 (Hz)
Φ=B・S=μ・H・S=μ0 ・μr ・Hz・S
B:鎖交磁束密度(Wb/m2) 、S:受信コイルの断面積(m2)、μ:受信コイルの透磁率(H/m) 、Hz:コイルに直行する磁界(AT/m)、μ0 : 真空中の透磁率=4π×10ー7 (H/m)、μr : コアの比透磁率、n:受信コイルの巻数(T)
従って、
e=8π2 ・ 10−7・ n ・f ・μr ・ S ・Hz (V) ・・・(2)
発破孔18内に挿入するため、受信コイル21の直径D (断面積S=πD2/4)は、穿孔径以下にする必要がある。トンネル掘削において発破孔18の穿孔径は、通常φ38mm〜φ50mmでφ42mm程度が一般に多く使用されている。さらに、トンネル掘削では受信起爆装置19を発破孔18内の最奥部に配置し発破を行うため、発破後に孔尻、すなわち受信起爆装置19内の爆薬のない部分があるため発破孔18の先端部が一部残る可能性がある。これを防止するためには、受信コイル21の長さをできるだけ短くする必要がある。
【0039】
受信コイル21に直交する磁界Hzは、磁界発生装置の発振能力とループアンテナ12の位置によって決定され、受信コイル21の中心に配置されるコア28の比透磁率μr は、コア28に使用される材質によって決定される。
【0040】
以上のように、(2)式の各変数には制約条件があり、さらに、(2)式には示されないが、コア28の体積、すなわち長さ、直径又は重量によっても、受信能力が変化する。例えば、受信コイル21と同一長のフェライトコアを用いた受信起爆装置19の起爆可能距離を15mとしたとき、同条件で材質をケイ素鋼板に変えると、起爆可能距離は約19mとなる。また、断面積は同一でコア28の長さを受信コイル21の長さの4倍にし、コア材質をフェライトにすると、起爆可能距離は約21mとなる。さらに、断面積は同一でコア28の長さを受信コイル21の長さの4倍にし、材質をケイ素鋼板にすると、起爆可能距離は約26mとなる。このように、コア28の体積と材質によって起爆可能距離が大きく変化する。
【0041】
これらの条件を検討した結果、受信コイル21の巻数nは、通常 100〜100000(T) 、好ましくは2000〜50000(T)であり、受信コイル21の直径はφ35mm〜φ47mmである。この直径は、基本的には発破孔18の穿孔径−数mmとするのが好ましい。また、受信コイル21の長さは、通常 5〜300mm で、好ましくは20〜200mm である。受信コイル21の線材は、銅線、アルミニウム線、鉄線等の導線から選択される。必要に応じて、受信コイル21の断面形状を矩形型にしても良い。
【0042】
図9に示すように、第1群の発破孔18(図9中では(1) )は切羽17の中心位置及びその左右位置に穿設されている。第2群の発破孔18(図9中では(2) )は第1群の発破孔18の周囲に円環状に設けられている。第3群の発破孔18(図9中(3) )は第2群の発破孔18の上方位置に円弧状に形成され、第4群の発破孔18(図9中(4) )は切羽17の上部周縁に形成されている。第5群の発破孔18(図9中(5) )は切羽17の下部周縁に形成され、第6群の発破孔18(図9中(6) )は切羽17の下端両側に設けられている。なお、図9中の中心付近における矢印は発破孔18の延びる方向を示すものである。
【0043】
図10に示すように、第1群の発破孔18は奥部ほど互いの間隔が狭まるV字状に形成され、心抜き発破によりこの部分を爆破し、自由面を多くする。第2群の発破孔18も奥部ほど互いの間隔がわずかに狭まるように形成され、第4、第5群などの発破孔18は奥部ほどわずかに拡がるように形成されている。
【0044】
ループアンテナ12と受信起爆装置19の距離は、切羽17に近い場合は交流磁界のベクトル成分の大きさによって大きく変化する。このため、ループアンテナ12は一方向の交流磁界を必要とする受信起爆装置19には適さない。また、切羽17に近いと発破による飛石でループアンテナ12が破損する恐れがある。しかし、交流磁界の強度は距離の3乗に比例して減衰するため、切羽17から離れすぎると大型の発信装置が必要となる。
【0045】
以上の理由から、ループアンテナ12と受信起爆装置19の距離は、5 〜200mであることが望ましい。また、受信起爆装置19に対して交流磁界を所定本数交差させるために、ループアンテナ12はその中心軸線が切羽17に直角に配置される。
【0046】
この実施例1では、受信起爆装置19の受信コイル21の巻数は30000(T)、直径は40mm、コイル長50mmである。コア2は、断面が直径10mmの円形、長さLが200mm で、フェライトをクランク形状に成型したものである。
【0047】
図9,10に示すように、導水路トンネル内の切羽17を、幅2m、高さ2.5mで、進行長D、すなわち1回の発破で掘削できる奥行きを1.0m、削孔数51個とした。また、ループアンテナ12は、直径1.8mで60回巻いたものを用い、受信起爆装置19から15m 離れたところに設置した。交流発振器13により550Hz の交流電流をループアンテナ12に供給し、受信起爆装置19を図9に示す番号順に起爆させて、発破の対象物であるトンネル内の岩盤を爆破した。その結果、全ての発破孔18内の受信起爆装置19を確実に起爆することができた。
【0048】
以上のように、実施例1の遠隔無線発破装置は、切羽17から十分離れたところに設置した磁界発生用のループアンテナ12から、発破孔18内に配置した受信起爆装置19に均一かつ、安定した磁界を供給することができると同時に、受信起爆装置19の受信能力を高めることができ、爆薬24を確実に起爆することができる。
【0049】
このため、受信起爆装置19内に電源をなくすことができることから、受信起爆装置19の構成を簡単にすることができるとともに、小型、軽量化を図ることができる。従って、受信起爆装置19の製造を容易にすることができ、かつ受信起爆装置19を設置する作業性を向上することができる。さらに、発破孔18の径を大きくしたり、孔の長さを長くしたりする必要がなく、その意味でも作業性を改善することができる。
【0050】
加えて、受信起爆装置19に電池等の内部電源を不要とし、発破する直前に受信回路部22から爆薬24に起爆エネルギーを伝達するため、爆薬24が誤爆するおそれを回避すことができる。しかも、発破孔18内への受信起爆装置19と爆薬24の装填の機械化が可能となり、装填作業の効率化を図ることができ、作業者が切羽17で行う作業を減少させることができ、作業性を向上させることができ、発破工法による掘削工事の省人化、省力化等の効率化を図ることができる。
【0051】
加えて、必要によりループアンテナ12の前に防護シートを備えることによって、不慮の飛石に対してループアンテナ12を確実に保護することができる。ループアンテナ12は車輪やキャタピラ等の移動手段を備えた台車13により移動が可能であるため、ループアンテナ12を前進させたり、後退させたりでき、他のトンネル14への移動が容易で、繰り返して使用可能なため、作業性が向上する。
【0052】
従って、この実施例の遠隔無線発破装置は、従来では使用不可能であったトンネル工事や地下空間等の掘削工事に有効に使用することができる。
(実施例2)
次に、この発明を具体化した実施例2について説明する。なお、この実施例では、実施例1と異なる点についてのみ説明する。
【0053】
この実施例2では、受信起爆装置19の受信コイル21の巻数は20000(T)で、コア28は、断面が一辺15mmの正方形、長さLが150mm の、ケイ素鋼板を50枚積層したものを使用した。
【0054】
図11に示すように、切羽17は半径6mのほぼ半円状をなし、進行長D4.5m 、削孔数100 個、芯抜きはバーンカットの道路用トンネルの全断面掘削とした。図12に示すように、2つの平行に延びる空孔42は切羽17のほぼ中心位置に設けられ、自由面を多くするためのものである。なお、受信起爆装置19が装填される全ての発破孔18は互いに平行に延びている。
【0055】
また、ループアンテナ12は、横4m×縦2m×奥行き1m、巻数が80回のものを用い、受信起爆装置19から30m 離れたところに設置した。そして、交流発振器13により550Hz の交流電流をループアンテナ12に供給し、受信起爆装置19を図9に示す番号順に起爆させて、発破の対象物であるトンネル14内の岩盤を爆破した。
【0056】
その結果、道路用トンネルの切羽17が大断面であるにもかかわらず、全ての発破孔18内の受信起爆装置19を確実に起爆することができた。
なお、この発明は、例えば以下のように構成を変更して具体化してもよい。
(イ)図13(a)又は(b)に示すように、コア28を円柱状に形成し、中間で折曲げてクランク状に形成すること。図13(c)〜(f)に示すように、コア28を円柱状に形成し、受信コイル21の長さより、磁界発生装置11側又は逆側に延長配置すること。これらの場合、爆薬24はコア28の延長部分の外周に配置される。
(ロ)図14(a)又は(b)に示すように、コア28を受信コイル21の中空部27内では円柱状、受信コイル21の延長部分では円筒状又は六角筒状に形成すること。図14(c)に示すように、コア28の延長部分を4枚の板状体で四角筒状に形成すること。図14(d)に示すように、コア28の延長部分をコイル状に形成すること。図14(e)に示すように、コア28の延長部分を2本の細い円柱で上下に対向配置すること。
(ハ)この発明の遠隔無線発破用起爆装置を、地下や地上での鉱山や採石場や整地、造成等の採掘に用いること。
(ニ)段発発破の手段を受信起爆装置内の時定数回路によるものではなく、段発雷管を用いること。また、時定数回路と段発雷管を組み合わせてより多くの遅延時間を作ること。
(ホ)発破孔18への受信起爆装置19の装填性を向上させるため、受信起爆装置19の孔尻側を縮径するようなテーパ状にしたり、円錐状のカップを取り付けたりすること。
(ヘ)爆薬24を発破孔18の最奥部から配置し、受信起爆装置19から延長された電気雷管23を発破孔18の最奥部の爆薬24中に装填し、受信起爆装置本体を、切羽17側の爆薬24に配置し、その間を脚線等で結合すること。
(ト)コア28の受信コイル21より延長した部分の長さを、爆薬24の長さより短くしたり、長くしたりすること。
【0057】
また、前記実施例より把握される技術的思想について、以下に記載する。
(1)コアは、ケイ素鉄合金により形成されたものである請求項1に記載の遠隔無線発破装置。このように構成すれば、透磁率、鉄損、加工性、強度などの性質を良好に発揮することができるとともに、入手も容易である。
(2)コアは、薄板素材が複数枚積層されて構成されている請求項1に記載の遠隔無線発破装置。この構成によれば、コアの製作をプレス成形により容易に行うことができる。
(3)受信起爆装置は、収納ケース内に収容されている請求項1に記載の遠隔無線発破装置。この構成により、受信起爆装置を発破穴内に容易に挿入配置することができる。
(4)収納ケースは弾力性のある素材により筒状に形成されるとともに、その長さ方向に沿って少なくとも一部が切欠かれている上記(3)に記載の遠隔無線発破装置。この構成によって、受信起爆装置を収納ケース内に簡単に収容することができる。
(5)アンテナは、導線がコイル状に巻回されたループアンテナであり、その中心軸線がトンネル内の切羽に対してほぼ直交するように配置される請求項1に記載の遠隔無線発破装置。このように構成すれば、受信起爆装置に対して磁界を必要とされる程度に確実に交差させることができる。
(6)コアを受信コイルの端部より軸線方向の発振装置側に延長した請求項1に記載の遠隔無線発破装置。この構成により、受信起爆装置の受信能力を高めることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の遠隔無線発破装置によれば、受信起爆装置の受信能力を向上させることができ、切羽から十分離れたところに設置した磁界発生用のアンテナから、発破孔内に配置した受信起爆装置を確実に起爆することができる。
【0059】
また、受信起爆装置内に電源をなくして構成を簡単にできるとともに、小型、軽量化を図ることができる。
加えて、受信起爆部に電池等の電源を不要とし、発破する直前に爆薬に起爆エネルギーを伝達し、誤爆のおそれをなくすことができるとともに、作業者が切羽で行う作業を減少させて作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を具体化した受信起爆装置の斜視図。
【図2】受信起爆装置をトンネル内に配置した状態の斜視図。
【図3】(a)は収納ケース内に受信起爆装置を収容した状態の側面図、(b)は同じく正面図。
【図4】(a)は収納ケース内に受信起爆装置を収容する状態の側面図、(b)は同じく正面図。
【図5】トンネル内に遠隔無線発破装置を配置した状態の斜視図。
【図6】受信回路部を示す回路図。
【図7】積層形成されたコアを示す斜視図。
【図8】鋼板からクランク状の素材を切り出す状態を示す平面図。
【図9】実施例1の切羽に穿設された発破孔の配列を示す正面図。
【図10】同じく発破孔を示す断面図。
【図11】実施例2の切羽に穿設された発破孔の配列を示す正面図。
【図12】発破孔および空孔の配列を拡大して示す正面図。
【図13】(a)〜(f)は、別例としてのコアの形状及び受信コイルを示す斜視図。
【図14】(a)〜(d)は、別例としてのコアの形状及び受信コイルを示す斜視図。
【符号の説明】
11…磁界発生装置、12…ループアンテナ、13…交流発振器、19…受信起爆装置、21…受信コイル、22…受信回路部、5…雷管、24…エネルギー発生部としての爆薬、27…中空部、28…コア。
Claims (3)
- 磁界発生装置と受信起爆装置とよりなり、トンネルの掘削に用いる遠隔無線発破装置であって、
前記磁界発生装置は、特定周波数の交流電流を発生する交流発振器と、前記交流電流により同交流電流と同一の周波数の100〜1000Hzに設定されている磁界を発生するアンテナとを備え、
前記受信起爆装置は、トンネル内の切羽に穿孔した発破孔に装填され、中空部を有する受信コイルと、クランク形状をなすと共に一端が前記中空部に配置されるコアと、受信コイルに接続される受信回路と、受信回路からのエネルギーにより起爆する爆薬とを備え、その爆薬を受信コイルの軸線方向における延長線上に配置し、コアの他端を受信コイルの端部より軸線方向に延長するとともに、延長されたコアと爆薬とが軸線方向において重複した部分を有する遠隔無線発破装置。 - トンネル内の切羽に穿孔した発破孔に装填される受信起爆装置であって、
中空部を有する受信コイルと、クランク形状をなすと共に一端が前記中空部に配置されるコアと、受信コイルに接続される受信回路と、受信回路からのエネルギーにより起爆する爆薬とを備え、
前記爆薬を受信コイルの軸線方向における延長線上に配置し、コアの他端を受信コイルの端部より軸線方向に延長するとともに、延長されたコアと爆薬とが軸線方向において重複した部分を有する遠隔無線発破装置用の受信起爆装置。 - コアを、中間部において折曲形成し、受信コイルの中空部の延長線上に爆薬を配置可能にした請求項2に記載の遠隔無線発破用の受信起爆装置。
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