JP2019078332A - 渦電流式ダンパ - Google Patents

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Abstract

【課題】振動減衰性能の低下を防止できる渦電流式ダンパを提供する。【解決手段】渦電流式ダンパ1は、ねじ軸7と、複数の第1永久磁石3と、複数の第2永久磁石4と、円筒形状の磁石保持部材2と、導電性を有する円筒形状の導電部材5と、ねじ軸7と噛み合うボールナット6と、強磁性リング部12と、を備える。第1永久磁石3は、ねじ軸7の周りに円周方向に沿って配列される。第2永久磁石4は、第1永久磁石3同士の間に配置され、第1永久磁石3と磁極の配置が反転する。磁石保持部材2は、第1永久磁石3及び第2永久磁石4を保持する。導電部材5は、第1永久磁石3及び第2永久磁石4と隙間を空けて対向する。ボールナット6は、磁石保持部材2及び導電部材5の内部に配置されて磁石保持部材2に固定される。強磁性リング部12は、磁石保持部材2の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられる。【選択図】図2

Description

本発明は、渦電流式ダンパに関する。
地震等による振動から建築物を保護するために、建築物に制震装置が取り付けられる。制震装置は建築物に与えられた運動エネルギを他のエネルギ(例:熱エネルギ)に変換する。これにより、建築物の大きな揺れが抑制される。制震装置はたとえば、ダンパである。ダンパの種類はたとえば、オイル式、せん断抵抗式がある。一般に、建築物にはオイル式やせん断抵抗式ダンパが使用されることが多い。オイル式ダンパは、シリンダ内の非圧縮性流体を利用して振動を減衰させる。せん断抵抗式ダンパは、粘性流体のせん断抵抗を利用して振動を減衰させる。
しかしながら、特にせん断抵抗式ダンパで用いられる粘性流体の粘度は、粘性流体の温度に依存する。すなわち、せん断抵抗式ダンパの減衰力は、温度に依存する。したがって、せん断抵抗式ダンパを建築物に使用する際には、使用環境を考慮して適切な粘性流体を選択する必要がある。また、オイル式やせん断抵抗式などの流体を用いているダンパは、温度上昇等によって流体の圧力が上昇し、シリンダのシール材などの機械的な要素が破損する恐れがある。減衰力が温度に依存しないダンパとして、渦電流式ダンパがある。
従来の渦電流式ダンパはたとえば、特公平5−86496号公報(特許文献1)に開示される。
特許文献1の渦電流式ダンパは、主筒に取り付けられた複数の永久磁石と、ねじ軸に接続されたヒステリシス材と、ねじ軸と噛み合うボールナットと、ボールナットに接続された副筒と、を備える。複数の永久磁石は、磁極の配置が交互に異なる。ヒステリシス材は導電性を有する。以下では、ヒステリシス材を導電部材ともいう。主筒を磁石保持部材ともいう。ヒステリシス材は、複数の永久磁石と対向し、相対回転可能である。この渦電流式ダンパに運動エネルギが与えられると、副筒及びボールナットが主筒の案内によって軸方向に移動し、ボールねじの作用によってヒステリシス材が回転する。これにより、ヒステリシス損により運動エネルギが消費される。また、ヒステリシス材に渦電流が発生するため、渦電流損により運動エネルギが消費される、と特許文献1には記載されている。
特公平5−86496号公報
特許文献1の渦電流式ダンパでは、複数の永久磁石が円周方向に沿って配列される。このダンパに運動エネルギが与えられると、永久磁石のそれぞれによって生じる磁界の中で導電部材(ヒステリシス材)が回転する。その際、導電部材の表面のうち、永久磁石のそれぞれと対向する領域にそれぞれ渦電流が発生する。これにより、回転する導電部材に制動力が与えられ、減衰力が発生する。
ここで、ボールナットは複数の鋼球を介してねじ軸と噛み合う。制震装置として用いられる渦電流式ダンパでは、振動を減衰するために、ねじ軸又はボールナットが軸方向に往復運動する。その際、ボールねじによる直線運動と回転運動との相互変換を円滑に行えることが重要である。とりわけ、往復運動の切り替わり時に、バックラッシが発生したり、偏荷重が作用したりしないようにすることが重要である。そのため、ボールナットとねじ軸との噛み合い部には、極めて高い寸法精度が要求される。
しかしながら、渦電流式ダンパにおいて、永久磁石によって形成される磁気回路の磁界が漏れてボールナットに到達した場合、下記の問題が発生する。ボールねじを構成する鋼球の材質はたとえば、高炭素クロム鋼等のように磁性及び導電性を有する材料である。そのため、磁気回路の磁界が漏れてボールナットに到達すると、運動する鋼球が磁界から静磁力を受ける。また、運動する鋼球に渦電流が発生するため、運動する鋼球にローレンツ力が作用する。これにより、鋼球の円滑な運動が阻害される。その結果、ボールねじによる運動変換効率が低下し、振動に対する減衰性能が低下するおそれがある。
要するに、従来の渦電流式ダンパでは、磁気回路の磁界の漏れに起因して、振動に対する減衰性能が低下するおそれがある。
本発明の目的は、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる渦電流式ダンパを提供することである。
本実施形態の渦電流式ダンパは、ねじ軸と、ねじ軸の周りに円周方向に沿って配列された複数の第1永久磁石と、第1永久磁石同士の間に配置され、第1永久磁石と磁極の配置が反転した複数の第2永久磁石と、第1永久磁石及び第2永久磁石を保持する円筒形状の磁石保持部材と、導電性を有し、第1永久磁石及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する円筒形状の導電部材と、磁石保持部材及び導電部材の内部に配置されて磁石保持部材又は導電部材に固定され、ねじ軸と噛み合うボールナットと、第1永久磁石、第2永久磁石、導電部材及び磁石保持部材の中で形成される磁気回路の磁界を第1永久磁石、第2永久磁石、導電部材及び磁石保持部材の中に閉じ込める磁界閉込め機構と、を備える。
本実施形態の渦電流式ダンパによれば、磁界閉込め機構によって磁気回路の磁界の漏れが防止され、ボールナットへの磁界の到達が防止される。そのため、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
図1は、渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図2は、図1の一部拡大図である。 図3は、渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。 図4は、図3の一部拡大図である。 図5は、第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。 図6は、渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。 図7は、磁極の配置が円周方向である第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。 図8は、図7の渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。 図9は、軸方向に複数個配置された第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。 図10は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図11は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。 図12は、第3実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図13は、図12の一部拡大図である。 図14は、第4実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図15は、第5実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図16は、第5実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。 図17は、第6実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図18は、第6実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。 図19は、第7実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。 図20は、第8実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。
本実施形態の渦電流式ダンパは、ねじ軸と、複数の第1永久磁石と、複数の第2永久磁石と、円筒形状の磁石保持部材と、導電性を有する円筒形状の導電部材と、ねじ軸と噛み合うボールナットと、磁界閉込め機構と、を備える。第1永久磁石は、ねじ軸の周りに円周方向に沿って配列される。第2永久磁石は、第1永久磁石同士の間に配置され、第1永久磁石と磁極の配置が反転する。磁石保持部材は、第1永久磁石及び第2永久磁石を保持する。導電部材は、第1永久磁石及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する。ボールナットは、磁石保持部材及び導電部材の内部に配置されて磁石保持部材又は導電部材に固定される。磁界閉込め機構は、第1永久磁石、第2永久磁石、導電部材及び磁石保持部材の中で形成される磁気回路の磁界を第1永久磁石、第2永久磁石、導電部材及び磁石保持部材の中に閉じ込める。
本実施形態の渦電流式ダンパによれば、ダンパに運動エネルギが与えられると、ねじ軸が軸方向に移動する。ねじ軸の軸方向の移動により、ボールナットが回転する。これにより、第1及び第2永久磁石のそれぞれによって生じる磁界の中で、導電部材が第1及び第2の永久磁石に対して相対回転する。その際、導電部材の表面のうち、第1及び第2永久磁石のそれぞれと対向する領域にそれぞれ渦電流が発生する。これにより、回転する導電部材に制動力が与えられ、減衰力が発生する。
ここで、第1及び第2永久磁石によって形成される磁気回路の磁界の漏れは、磁界閉込め機構によって防止される。これにより、ボールナットへの磁界の到達が防止される。その場合、運動する鋼球が静磁力を受けない。また、運動する鋼球にローレンツ力が作用しない。そのため、鋼球が円滑に運動できる。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
上記した本実施形態の渦電流式ダンパは、下記の(1)〜(4)のいずれかの構成を採用することができる。
(1)磁石保持部材が導電部材の内側に配置される。第1永久磁石及び第2永久磁石が磁石保持部材の外周面に取り付けられる。ボールナットが磁石保持部材に固定される。
この場合、導電部材の内周面が、第1及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する。ねじ軸の軸方向の移動により、ボールナット及び磁石保持部材が回転する。一方、導電部材は回転しない。これにより、第1及び第2永久磁石から導電部材を通過する磁束が変化し、導電部材の内周面に渦電流が発生する。この渦電流によって反磁界が発生し、回転する磁石保持部材に反力(制動力)が与えられる。その結果、ねじ軸が減衰力を受ける。
また、この場合、導電部材が磁石保持部材の外側に配置されて外気と接する。これにより、導電部材は外気によって冷却される。その結果、導電部材の温度上昇を抑制できる。
(2)導電部材が磁石保持部材の内側に配置される。第1永久磁石及び第2永久磁石が磁石保持部材の内周面に取り付けられる。ボールナットが導電部材に固定される。
この場合、導電部材の外周面が、第1及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する。ねじ軸の軸方向の移動により、ボールナット及び導電部材が回転する。一方、磁石保持部材は回転しない。これにより、第1及び第2永久磁石から導電部材を通過する磁束が変化し、導電部材の外周面に渦電流が発生する。この渦電流によって反磁界が発生し、回転する導電部材に反力が与えられる。その結果、ねじ軸が減衰力を受ける。
また、この場合、磁石保持部材が導電部材の外側に配置されて外気と接する。これにより、磁石保持部材は外気によって冷却される。その結果、第1及び第2永久磁石の温度上昇を抑制できる。
(3)磁石保持部材が導電部材の内側に配置される。第1永久磁石及び第2永久磁石が磁石保持部材の外周面に取り付けられる。ボールナットが導電部材に固定される。
この場合、導電部材の内周面が、第1及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する。ねじ軸の軸方向の移動により、ボールナット及び導電部材が回転する。一方、磁石保持部材は回転しない。これにより、第1及び第2永久磁石から導電部材を通過する磁束が変化し、導電部材の内周面に渦電流が発生する。この渦電流によって反磁界が発生し、回転する導電部材に反力が与えられる。その結果、ねじ軸が減衰力を受ける。
また、この場合、導電部材が磁石保持部材の外側に配置されて外気と接する。これにより、回転する導電部材は外気によって効率良く冷却される。その結果、導電部材の温度上昇を抑制できる。
(4)導電部材が磁石保持部材の内側に配置される。第1永久磁石及び第2永久磁石が磁石保持部材の内周面に取り付けられる。ボールナットが磁石保持部材に固定される。
この場合、導電部材の外周面が、第1及び第2永久磁石と隙間を空けて対向する。ねじ軸の軸方向の移動により、ボールナット及び磁石保持部材が回転する。一方、導電部材は回転しない。これにより、第1及び第2永久磁石から導電部材を通過する磁束が変化し、導電部材の外周面に渦電流が発生する。この渦電流によって反磁界が発生し、回転する磁石保持部材に反力が与えられる。その結果、ねじ軸が減衰力を受ける。
また、この場合、磁石保持部材が導電部材の外側に配置されて外気と接する。これにより、回転する磁石保持部材は外気によって効率良く冷却される。その結果、第1及び第2永久磁石の温度上昇を抑制できる。
構成(1)及び(3)の渦電流式ダンパ、すなわち磁石保持部材が導電部材の内側に配置される渦電流式ダンパでは、磁界閉込め機構は、磁石保持部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、ことが好ましい。この場合、第1永久磁石からの磁界の一部は、強磁性リング部から導電部材に導かれて第1永久磁石に戻るか、又は導電部材から強磁性リング部に導かれて第1永久磁石に戻る。同様に、第2永久磁石からの磁界の一部は、強磁性リング部から導電部材に導かれて第2永久磁石に戻るか、又は導電部材から強磁性リング部に導かれて第2永久磁石に戻る。要するに、ボールナットから離れた第1及び第2永久磁石の近傍で強磁性リング部による磁気回路が形成される。この磁気回路の磁界はボールナットに向かわない。そのため、第1及び第2永久磁石によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止される。その結果、ボールナットへの磁界の到達を有効に防止できる。
構成(1)及び(3)の渦電流式ダンパ、すなわち磁石保持部材が導電部材の内側に配置される渦電流式ダンパでは、磁界閉込め機構は、磁石保持部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含んでもよい。この場合、第1永久磁石からの磁界の一部がボールナットに向かったとしても、その一部の磁界は強磁性層の内部に広がる。同様に、第2永久磁石からの磁界の一部がボールナットに向かったとしても、その一部の磁界は強磁性層の内部に広がる。要するに、第1及び第2永久磁石からの磁界の一部は強磁性層で遮断される。そのため、第1及び第2永久磁石によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止される。その結果、ボールナットへの磁界の到達を有効に防止できる。
構成(2)及び(4)の渦電流式ダンパ、すなわち導電部材が磁石保持部材の内側に配置される渦電流式ダンパでは、磁界閉込め機構は、導電部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、ことが好ましい。この場合、第1永久磁石からの磁界の一部は、強磁性リング部から導電部材に導かれて第1永久磁石に戻るか、又は導電部材から強磁性リング部に導かれて第1永久磁石に戻る。同様に、第2永久磁石からの磁界の一部は、強磁性リング部から導電部材に導かれて第2永久磁石に戻るか、又は導電部材から強磁性リング部に導かれて第2永久磁石に戻る。要するに、ボールナットから離れた第1及び第2永久磁石の近傍で強磁性リング部による磁気回路が形成される。この磁気回路の磁界はボールナットに向かわない。そのため、ボールナットへの磁界の到達を有効に防止できる。
構成(2)及び(4)の渦電流式ダンパ、すなわち導電部材が磁石保持部材の内側に配置される渦電流式ダンパでは、磁界閉込め機構は、導電部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含んでもよい。この場合、第1永久磁石からの磁界の一部がボールナットに向かったとしても、その一部の磁界は強磁性層の内部に広がる。同様に、第2永久磁石からの磁界の一部がボールナットに向かったとしても、その一部の磁界は強磁性層の内部に広がる。要するに、第1及び第2永久磁石からの磁界の一部は強磁性層で遮断される。そのため、ボールナットへの磁界の到達を有効に防止できる。
なお、第1及び第2永久磁石からボールナットに向かう磁界を遮断するのみの観点では、ボールナットの外周を強磁性層で覆ってもよいかもしれない。ただしこの場合、強磁性層に渦電流が生じるため、強磁性層が発熱する。これにより、ボールナットの温度が上昇するおそれがある。
ここで、強磁性リング部が磁石保持部材の外周面に設けられる場合、強磁性リング部の外周面と導電部材の内周面との間の隙間は小さいのが好ましい。同様に、強磁性リング部が導電部材の外周面に設けられる場合、強磁性リング部の外周面と磁石保持部材の内周面との間の隙間は小さいのが好ましい。それらの隙間が小さければ、強磁性リング部による磁気回路が十分に形成される。
強磁性リング部と第1及び第2永久磁石との間の軸方向での隙間は大きいのが好ましい。その隙間が大きければ、強磁性リング部による磁気回路が十分に形成される。
強磁性リング部が磁石保持部材に設けられる場合、強磁性リング部は磁石保持部材と別個に製作されてもよいし、磁石保持部材と一体で製作されてもよい。同様に、強磁性リング部が導電部材に設けられる場合、強磁性リング部は導電部材と別個に製作されてもよいし、導電部材と一体で製作されてもよい。
強磁性リング部の材質は、強磁性材である限り、特に限定されない。ただし、強磁性リング部の材質は、透磁率の高い鋼等が好ましい。強磁性リング部の材質はたとえば、炭素鋼、鋳鉄等である。
強磁性層の材質は、強磁性材である限り、特に限定されない。ただし、強磁性層の材質は、透磁率の高い鋼等が好ましい。強磁性層の材質はたとえば、炭素鋼、鋳鉄等である。
本実施形態の渦電流式ダンパでは、第1永久磁石は磁石保持部材の軸方向に沿って複数個配置されるとともに、第2永久磁石は磁石保持部材の軸方向に沿って複数個配置されてもよい。
この場合、1つの第1永久磁石及び1つの第2永久磁石それぞれのサイズが小さくても、複数の第1及び第2永久磁石の総サイズは大きい。したがって、渦電流式ダンパの減衰力を高くしつつ、第1及び第2永久磁石のコストは安価で済む。また、第1及び第2永久磁石の磁石保持部材への取り付けも容易である。
以下、図面を参照して、本実施形態の渦電流式ダンパについて説明する。
[第1実施形態]
図1は、渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図2は、図1の一部拡大図である。図1及び図2を参照して、渦電流式ダンパ1は、磁石保持部材2と、複数の第1永久磁石3と、複数の第2永久磁石4と、導電部材5と、ボールナット6と、ねじ軸7と、2つの強磁性リング部12(図2参照)とを備える。
[磁石保持部材]
磁石保持部材2は、ねじ軸7を中心軸とする円筒形状である。磁石保持部材2は、ボールナット6及びねじ軸7を収容可能である。磁石保持部材2の材質は、特に限定されない。しかしながら、磁石保持部材2の材質は、透磁率の高い鋼等が好ましい。磁石保持部材2の材質はたとえば、炭素鋼、鋳鉄等の強磁性材である。この場合、磁石保持部材2は、ヨークとしての役割を果たす。すなわち、第1永久磁石3及び第2永久磁石4からの磁束が外部に漏れにくくなり、渦電流式ダンパ1の減衰力が高まる。後述するように、磁石保持部材2は導電部材5に対して回転可能である。
[第1永久磁石及び第2永久磁石]
図3は、渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。図4は、図3の一部拡大図である。図5は、第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。図3〜図5を参照して、複数の第1永久磁石3及び第2永久磁石4は、磁石保持部材2の外周面に取り付けられる。第1永久磁石3は、ねじ軸の周りに磁石保持部材2の円周方向に沿って配列される。同様に、第2永久磁石4は、ねじ軸の周りに磁石保持部材2の円周方向に沿って配列される。第2永久磁石4は、第1永久磁石3同士の間に配置される。つまり、磁石保持部材2の円周方向に沿って第1永久磁石3と第2永久磁石4は、交互に配置される。
第1永久磁石3及び第2永久磁石4の磁極は、磁石保持部材2の径方向に配置される。第2永久磁石4の磁極の配置は第1永久磁石3の磁極の配置と反転している。たとえば図4及び図5を参照して、磁石保持部材2の径方向において、第1永久磁石3のN極は外側に配置され、そのS極は内側に配置される。そのため、第1永久磁石3のS極が磁石保持部材2と接する。一方、磁石保持部材2の径方向において、第2永久磁石4のN極は内側に配置され、そのS極は外側に配置される。そのため、第2永久磁石4のN極が磁石保持部材2と接する。
第2永久磁石4のサイズ及び特質は第1永久磁石3のサイズ及び特質と同じである。第1永久磁石3及び第2永久磁石4はたとえば、接着剤により磁石保持部材2に固定される。なお、接着剤に限らず、第1永久磁石3及び第2永久磁石4はネジ等で固定されてもよいことはもちろんである。
図2及び図4を参照し、磁石保持部材2の外周面に2つの強磁性リング部12が設けられる。強磁性リング部12は、磁石保持部材2の軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられる。強磁性リング部12は、磁石保持部材2の外周面から突出し、導電部材5の内周面と近接する。また、軸方向において、強磁性リング部12と第1及び第2永久磁石3、4との間に所定の隙間が設けられる。
[導電部材]
図1及び図2を参照して、導電部材5は、ねじ軸7を中心軸とする円筒形状である。導電部材5は、磁石保持部材2、第1永久磁石3、第2永久磁石4、ボールナット6及びねじ軸7を収容可能である。つまり、磁石保持部材2が導電部材5の内側に同心状に配置される。導電部材5の内周面が、第1永久磁石3及び第2永久磁石4と隙間を空けて対向する。後述するように、導電部材5の表面(内周面)に渦電流を発生させるため、導電部材5は磁石保持部材2と相対的に回転する。そのため、導電部材5と第1永久磁石3及び第2永久磁石4との間には、隙間が設けられる。導電部材5に取付具8aが接続される。導電部材5と一体の取付具8aは、建物支持面又は建物内に固定される。そのため、導電部材5はねじ軸7周りに回転しない。
導電部材5は、導電性を有する。導電部材5の材質はたとえば、炭素鋼、鋳鉄等の強磁性材である。その他に、導電部材5の材質は、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材であってもよいし、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、銅合金等の非磁性材であってもよい。
導電部材5は磁石保持部材2を回転可能に支持する。たとえば図1を参照して、磁石保持部材2の径方向において、磁石保持部材2と導電部材5との間には、ラジアル軸受9が設けられる。また、磁石保持部材2の軸方向において、磁石保持部材2と導電部材5との間には、スラスト軸受10が設けられる。なお、ラジアル軸受9やスラスト軸受10の種類は、特に限定されることなく、ボール式、ローラー式、滑り式などでもよいことはもちろんである。
[ボールナット]
ボールナット6は、磁石保持部材2及び導電部材5の内部に配置される。ボールナット6は、磁石保持部材2に固定される。したがって、ボールナット6が回転すれば、磁石保持部材2も回転する。ボールナット6の種類は、特に限定されない。ボールナット6は、周知のボールナットを用いてよい。ボールナット6の内周面には、ねじ部が形成されている。
[ねじ軸]
ねじ軸7は、ボールナット6を貫通し、ボールを介してボールナット6と噛み合う。ねじ軸7の外周面には、ボールナット6のねじ部に対応するねじ部が形成されている。ねじ軸7及びボールナット6は、ボールねじを構成する。ボールねじは、ねじ軸7の軸方向の移動をボールナット6の回転運動に変換する。ねじ軸7に取付具8bが接続される。ねじ軸7と一体の取付具8bは、建物支持面又は建物内に固定される。渦電流式ダンパ1が、たとえば建物内と建物支持面との間の免震層に設置される事例の場合、ねじ軸7と一体の取付具8bが建物内に固定され、導電部材5と一体の取付具8aは建物支持面に固定される。渦電流式ダンパ1が、たとえば建物内の任意の層間に設置される事例の場合は、ねじ軸7と一体の取付具8bが任意の層間の上部梁側に固定され、導電部材5と一体の取付具8aは任意の層間の下部梁側に固定される。そのため、ねじ軸7は軸周りに回転しない。
ねじ軸7と一体の取付具8b及び導電部材5と一体の取付具8aの固定は、上述の説明の逆であってもよい。すなわち、ねじ軸7と一体の取付具8bが建物支持面に固定され、導電部材5と一体の取付具8aが建物内に固定されてもよい。
ねじ軸7は、磁石保持部材2及び導電部材5の内部に軸方向に沿って進退移動可能である。したがって、振動等により、渦電流式ダンパ1に運動エネルギが与えられると、ねじ軸7が軸方向に移動する。ねじ軸7が軸方向に移動すれば、ボールねじの作用によってボールナット6がねじ軸7周りに回転する。ボールナット6の回転に伴い、磁石保持部材2が回転する。これにより、磁石保持部材2と一体の第1永久磁石3及び第2永久磁石4が導電部材5に対して相対回転するため、導電部材5には渦電流が発生する。その結果、渦電流式ダンパ1に減衰力が生じ、振動を減衰させる。
本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、ボールナット6から離れた第1及び第2永久磁石3、4の近傍で強磁性リング部12による磁気回路が形成される。この磁気回路の磁界はボールナット6に向かわない。つまり、強磁性リング部12が磁界閉込め機構として機能する。これにより、第1及び第2永久磁石3、4によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止され、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
続いて、渦電流の発生原理及び渦電流による減衰力の発生原理について説明する。
[渦電流による減衰力]
図6は、渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。図6を参照して、第1永久磁石3の磁極の配置は、隣接する第2永久磁石4の磁極の配置と反転している。したがって、第1永久磁石3のN極から出た磁束は、隣接する第2永久磁石4のS極に到達する。第2永久磁石のN極から出た磁束は、隣接する第1永久磁石3のS極に到達する。これにより、第1永久磁石3、第2永久磁石4、導電部材5及び磁石保持部材2の中で、磁気回路が形成される。第1永久磁石3及び第2永久磁石4と、導電部材5との間の隙間は十分に小さいため、導電部材5は磁界の中にある。
磁石保持部材2が回転すると(図6中の矢印参照)、第1永久磁石3及び第2永久磁石4は導電部材5に対して移動する。そのため、導電部材5の表面(図6では第1永久磁石3及び第2永久磁石4が対向する導電部材5の内周面)を通過する磁束が変化する。これにより導電部材5の表面(図6では導電部材5の内周面)に渦電流が発生する。渦電流が発生すると、新たな磁束(反磁界)が発生する。この新たな磁束は、磁石保持部材2(第1永久磁石3及び第2永久磁石4)と導電部材5との相対回転を妨げる。本実施形態の場合、磁石保持部材2の回転が妨げられる。磁石保持部材2の回転が妨げられれば、磁石保持部材2と一体のボールナット6の回転も妨げられる。ボールナット6の回転が妨げられれば、ねじ軸7の軸方向の移動も妨げられる。これが渦電流式ダンパ1の減衰力である。振動等による運動エネルギにより発生する渦電流は、導電部材の温度を上昇させる。すなわち、渦電流式ダンパに与えられた運動エネルギが熱エネルギに変換され、減衰力が得られる。
本実施形態の渦電流式ダンパによれば、第1永久磁石の磁極の配置が、磁石保持部材の円周方向において第1永久磁石と隣接する第2永久磁石の磁極の配置と反転している。そのため、第1永久磁石及び第2永久磁石による磁界が磁石保持部材の円周方向に発生する。また、磁石保持部材の円周方向に第1永久磁石及び第2永久磁石を複数配列することにより、導電部材に到達する磁束の量が増える。これにより、導電部材に発生する渦電流が大きくなり、渦電流式ダンパの減衰力が高まる。
[磁極の配置]
上述の説明では、第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極の配置は、磁石保持部材の径方向である場合について説明した。しかしながら、第1永久磁石及び第2永久磁石の磁極の配置は、これに限定されない。
図7は、磁極の配置が円周方向である第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。図7を参照して、第1永久磁石3及び第2永久磁石4の磁極の配置は、磁石保持部材2の円周方向に沿う。この場合であっても、第1永久磁石3の磁極の配置は、第2永久磁石4の磁極の配置と反転している。第1永久磁石3と第2永久磁石4との間には、強磁性体のポールピース11が設けられる。
図8は、図7の渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。図8を参照して、第1永久磁石3のN極から出た磁束は、ポールピース11を通って、第1永久磁石3のS極に到達する。第2永久磁石4についても同様である。これにより、第1永久磁石3、第2永久磁石4、ポールピース11及び導電部材5の中で、磁気回路が形成される。これにより、上述と同様に、渦電流式ダンパ1に減衰力が得られる。
[永久磁石の軸方向への配置]
渦電流式ダンパの減衰力をより大きくするには、導電部材に発生する渦電流を大きくすればよい。大きい渦電流を発生させる1つの方法は、第1永久磁石及び第2永久磁石から出る磁束の量を増やせばよい。すなわち、第1永久磁石及び第2永久磁石のサイズを大きくすればよい。しかしながら、サイズの大きい第1永久磁石及び第2永久磁石はコストが高く、磁石保持部材への取り付けも容易ではない。
図9は、軸方向に複数個配置された第1永久磁石及び第2永久磁石を示す斜視図である。図9を参照して、第1永久磁石3及び第2永久磁石4は、1つの磁石保持部材2の軸方向に複数個配置されてもよい。これにより、1つの第1永久磁石3及び1つの第2永久磁石4それぞれのサイズは小さくて済む。一方で、磁石保持部材2に取り付けられた複数の第1永久磁石3及び第2永久磁石4の総サイズは大きい。したがって、第1永久磁石3及び第2永久磁石4のコストは安価で済む。また、第1永久磁石3及び第2永久磁石4の磁石保持部材2への取り付けも容易である。
軸方向に配置された第1永久磁石3及び第2永久磁石4の、磁石保持部材2の円周方向の配置は、上述と同様である。すなわち、磁石保持部材2の円周方向に沿って第1永久磁石3と第2永久磁石4は交互に配置される。
渦電流式ダンパ1の減衰力を高める観点から、磁石保持部材2の軸方向において、第1永久磁石3は第2永久磁石4と隣接するのが好ましい。この場合、磁気回路が磁石保持部材2の円周方向だけでなく、軸方向においても生じる。したがって、導電部材5に発生する渦電流が大きくなる。その結果、渦電流式ダンパ1の減衰力が大きくなる。
しかしながら、磁石保持部材2の軸方向において、第1永久磁石3及び第2永久磁石4の配置は特に限定されない。すなわち、磁石保持部材2の軸方向において、第1永久磁石3は第1永久磁石3の隣に配置されていてもよいし、第2永久磁石4の隣に配置されていてもよい。
上述した第1実施形態では、磁石保持部材が導電部材の内側に配置されて第1永久磁石及び第2永久磁石が磁石保持部材の外周面に取り付けられ、さらに磁石保持部材が回転する場合について説明した。しかしながら、本実施形態の渦電流式ダンパは、これに限定されない。
[第2実施形態]
第2実施形態の渦電流式ダンパは、磁石保持部材が導電部材の外側に配置され、回転しない。渦電流は、内側の導電部材が回転することで発生する。
図10は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図11は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。図10及び図11を参照して、磁石保持部材2は、導電部材5、ボールナット6及びねじ軸7を収容可能である。第1永久磁石3及び第2永久磁石4は、磁石保持部材2の内周面に取り付けられる。したがって、導電部材5の外周面が、第1永久磁石3及び第2永久磁石4と隙間を空けて対向する。
図1に示す取付具8aは磁石保持部材2に接続される。そのため、磁石保持部材2はねじ軸7周りに回転しない。一方で、ボールナット6は、導電部材5に接続される。したがって、ボールナット6が回転すれば、導電部材5は回転する。このような構成の場合でも、上述したように、磁石保持部材2と一体の第1永久磁石3及び第2永久磁石4が導電部材5に対して相対回転するため、導電部材5には渦電流が発生する。その結果、渦電流式ダンパ1に減衰力が生じ、振動を減衰させることができる。
図10及び図11を参照して、本実施形態では、導電部材5の外周面に2つの強磁性リング部12が設けられる。強磁性リング部12は、導電部材5の軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられる。強磁性リング部12は、導電部材5の外周面から突出し、磁石保持部材2の内周面と近接する。また、軸方向において、強磁性リング部12と第1及び第2永久磁石3、4との間に所定の隙間が設けられる。
本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、ボールナット6から離れた第1及び第2永久磁石3、4の近傍で強磁性リング部12による磁気回路が形成される。つまり、上記の第1実施形態と同様に、強磁性リング部12が磁界閉込め機構として機能する。これにより、第1及び第2永久磁石3、4によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止され、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
[第3実施形態]
第3実施形態の渦電流式ダンパは、磁石保持部材が導電部材の内側に配置され、回転しない。渦電流は、外側の導電部材が回転することで発生する。
図12は、第3実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図13は、図12の一部拡大図である。図12及び図13を参照して、導電部材5は、磁石保持部材2、ボールナット6及びねじ軸7を収容可能である。第1永久磁石3及び第2永久磁石4は、磁石保持部材2の外周面に取り付けられる。したがって、導電部材5の内周面が、第1永久磁石3及び第2永久磁石4と隙間を空けて対向する。
取付具8aは磁石保持部材2に接続される。そのため、磁石保持部材2はねじ軸7周りに回転しない。一方で、ボールナット6は、導電部材5に接続される。したがって、ボールナット6が回転すれば、導電部材5は回転する。このような構成の場合でも、上述したように、磁石保持部材2と一体の第1永久磁石3及び第2永久磁石4が導電部材5に対して相対回転するため、導電部材5には渦電流が発生する。その結果、渦電流式ダンパ1に減衰力が生じ、振動を減衰させることができる。
図13を参照して、本実施形態では、上記の第1実施形態と同様に、磁石保持部材2の外周面に2つの強磁性リング部12が設けられる。そのため、本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、上記の第1実施形態と同様に、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
[第4実施形態]
第4実施形態の渦電流式ダンパは、導電部材が磁石保持部材の内側に配置され、回転しない。渦電流は、外側の磁石保持部材が回転することで発生する。
図14は、第4実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図14を参照して、磁石保持部材2は、導電部材5、ボールナット6及びねじ軸7を収容可能である。第1永久磁石3及び第2永久磁石4は、磁石保持部材2の内周面に取り付けられる。したがって、導電部材5の外周面が、第1永久磁石3及び第2永久磁石4と隙間を空けて対向する。
図1に示す取付具8aは導電部材5に接続される。そのため、導電部材5はねじ軸7周りに回転しない。一方で、ボールナット6は、磁石保持部材2に固定される。したがって、ボールナット6が回転すれば、磁石保持部材2は回転する。このような構成の場合でも、上述したように、磁石保持部材2と一体の第1永久磁石3及び第2永久磁石4が導電部材5に対して相対回転するため、導電部材5には渦電流が発生する。その結果、渦電流式ダンパ1に減衰力が生じ、振動を減衰させることができる。
図14を参照して、本実施形態では、上記の第2実施形態と同様に、導電部材5の外周面に2つの強磁性リング部12が設けられる。そのため、本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、上記の第2実施形態と同様に、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
上述したように、渦電流式ダンパが減衰力を発生すると、導電部材の温度は上昇する。第1永久磁石及び第2永久磁石は、導電部材と対向する。したがって、第1永久磁石及び第2永久磁石は、導電部材からの輻射熱によって温度が上昇するかもしれない。永久磁石の温度が上昇すれば、磁力が低下するおそれがある。
第1実施形態の渦電流式ダンパでは、導電部材5が磁石保持部材2の外側に配置される。つまり、導電部材5が最も外側に配置されて外気と接する。これにより、導電部材5は外気によって冷却される。そのため、導電部材5の温度上昇を抑制できる。その結果、第1永久磁石及び第2永久磁石の温度上昇を抑制できる。
第2実施形態の渦電流式ダンパでは、磁石保持部材2が導電部材5の外側に配置される。つまり、磁石保持部材2が最も外側に配置されて外気と接する。これにより、磁石保持部材2は外気によって冷却される。そのため、磁石保持部材2を通じて第1永久磁石及び第2永久磁石を冷却できる。その結果、第1永久磁石及び第2永久磁石の温度上昇を抑制できる。
第3実施形態の渦電流式ダンパでは、導電部材5が磁石保持部材2の外側に配置される。つまり、導電部材5が最も外側に配置されて外気と接する。また、導電部材5は、ねじ軸7周りに回転する。これにより、回転する導電部材5は外気によって効率良く冷却される。そのため、導電部材5の温度上昇を抑制できる。その結果、第1永久磁石及び第2永久磁石の温度上昇を抑制できる。
第4実施形態の渦電流式ダンパでは、磁石保持部材2が導電部材5の外側に配置される。つまり、磁石保持部材2が最も外側に配置されて外気と接する。また、磁石保持部材2は、ねじ軸7周りに回転する。これにより、回転する磁石保持部材2は外気によって効率良く冷却される。そのため、磁石保持部材2を通じて第1永久磁石及び第2永久磁石を冷却できる。その結果、第1永久磁石3及び第2永久磁石4の温度上昇を抑制できる。
[第5実施形態]
第5実施形態の渦電流式ダンパは、上記した第1実施形態の渦電流式ダンパを変形したものである。
図15は、第5実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図16は、第5実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。図15及び図16を参照して、本実施形態では、磁石保持部材2の内周面に強磁性層13が設けられる。強磁性層13は、磁石保持部材2の内周面に加えて、磁石保持部材2の内周面に連なる面に設けられてもよい。
本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、第1及び第2永久磁石3、4からボールナット6に向かう磁界は強磁性層13で遮断される。つまり、強磁性層13が磁界閉込め機構として機能する。これにより、第1及び第2永久磁石3、4によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止され、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
[第6実施形態]
第6実施形態の渦電流式ダンパは、上記した第2実施形態の渦電流式ダンパを変形したものである。
図17は、第6実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図18は、第6実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に垂直な面での断面図である。図17及び図18を参照して、本実施形態では、導電部材5の内周面に強磁性層13が設けられる。強磁性層13は、導電部材5の内周面に加えて、導電部材5の内周面に連なる面に設けられてもよい。
本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、第1及び第2永久磁石3、4からボールナット6に向かう磁界は強磁性層13で遮断される。つまり、上記の第5実施形態と同様に、強磁性層13が磁界閉込め機構として機能する。これにより、第1及び第2永久磁石3、4によって形成される磁気回路の磁界の漏れが防止され、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
[第7実施形態]
第7実施形態の渦電流式ダンパは、上記した第3実施形態の渦電流式ダンパを変形したものである。
図19は、第7実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図19を参照して、本実施形態では、上記の第5実施形態と同様に、磁石保持部材2の内周面に強磁性層13が設けられる。そのため、本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、上記の第5実施形態と同様に、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
[第8実施形態]
第8実施形態の渦電流式ダンパは、上記した第4実施形態の渦電流式ダンパを変形したものである。
図20は、第8実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。図20を参照して、本実施形態では、上記の第6実施形態と同様に、導電部材5の内周面に強磁性層13が設けられる。そのため、本実施形態の渦電流式ダンパ1によれば、上記の第6実施形態と同様に、ボールナット6への磁界の到達が防止される。したがって、磁気回路の磁界の漏れに起因する振動減衰性能の低下を防止できる。
強磁性層13を含む第5〜第8実施形態の渦電流式ダンパに、第1〜第4実施形態の強磁性リング部12を適用することもできる。
以上、本実施形態の渦電流式ダンパについて説明した。渦電流は導電部材5を通過する磁束の変化により発生するため、第1永久磁石3及び第2永久磁石4が導電部材5に対して相対回転すればよい。また、導電部材5が第1永久磁石3及び第2永久磁石4による磁界の中に存在する限り、導電部材と磁石保持部材との位置関係は特に限定されない。
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
本発明の渦電流式ダンパは、建造物の制震装置および免震装置に有用である。
1:渦電流式ダンパ
2:磁石保持部材
3:第1永久磁石
4:第2永久磁石
5:導電部材
6:ボールナット
7:ねじ軸
8a、8b:取付具
9:ラジアル軸受
10:スラスト軸受
11:ポールピース
12:強磁性リング部
13:強磁性層

Claims (13)

  1. ねじ軸と、
    前記ねじ軸の周りに円周方向に沿って配列された複数の第1永久磁石と、
    前記第1永久磁石同士の間に配置され、前記第1永久磁石と磁極の配置が反転した複数の第2永久磁石と、
    前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石を保持する円筒形状の磁石保持部材と、
    導電性を有し、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石と隙間を空けて対向する円筒形状の導電部材と、
    前記磁石保持部材及び前記導電部材の内部に配置されて前記磁石保持部材又は前記導電部材に固定され、前記ねじ軸と噛み合うボールナットと、
    前記第1永久磁石、前記第2永久磁石、前記導電部材及び前記磁石保持部材の中で形成される磁気回路の磁界を前記第1永久磁石、前記第2永久磁石、前記導電部材及び前記磁石保持部材の中に閉じ込める磁界閉込め機構と、を備える、渦電流式ダンパ。
  2. 請求項1に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁石保持部材が前記導電部材の内側に配置され、
    前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石が前記磁石保持部材の外周面に取り付けられ、
    前記ボールナットが前記磁石保持部材に固定された、渦電流式ダンパ。
  3. 請求項2に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記磁石保持部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、渦電流式ダンパ。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記磁石保持部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含む、渦電流式ダンパ。
  5. 請求項1に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記導電部材が前記磁石保持部材の内側に配置され、
    前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石が前記磁石保持部材の内周面に取り付けられ、
    前記ボールナットが前記導電部材に固定された、渦電流式ダンパ。
  6. 請求項5に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記導電部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、渦電流式ダンパ。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記導電部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含む、渦電流式ダンパ。
  8. 請求項1に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁石保持部材が前記導電部材の内側に配置され、
    前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石が前記磁石保持部材の外周面に取り付けられ、
    前記ボールナットが前記導電部材に固定された、渦電流式ダンパ。
  9. 請求項8に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記磁石保持部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、渦電流式ダンパ。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記磁石保持部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含む、渦電流式ダンパ。
  11. 請求項1に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記導電部材が前記磁石保持部材の内側に配置され、
    前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石が前記磁石保持部材の内周面に取り付けられ、
    前記ボールナットが前記磁石保持部材に固定された、渦電流式ダンパ。
  12. 請求項11に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記導電部材の外周面における軸方向の2つの端部にそれぞれ設けられた強磁性リング部を含む、渦電流式ダンパ。
  13. 請求項11又は請求項12に記載の渦電流式ダンパであって、
    前記磁界閉込め機構は、前記導電部材の少なくとも内周面を覆う強磁性層を含む、渦電流式ダンパ。
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