JP2019070580A - 異常診断装置、異常診断方法、及び異常診断プログラム - Google Patents

異常診断装置、異常診断方法、及び異常診断プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高める。【解決手段】本発明の一側面に係る異常診断装置は、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データと検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データとの差分をそれぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、検査時及び正常時の周期的な動作の相違を示す第3データを算出し、算出した第3データに基づいて、検査対象物に異常が発生しているか否かを診断する。【選択図】図6

Description

本発明は、異常診断装置、異常診断方法、及び異常診断プログラムに関する。
特許文献1では、歯付きベルトの寿命を理論式に従って予測する方法が提案されている。具体的には、特許文献1で提案されている方法では、まず、曲げストレス、圧縮ストレス、及びせん断ストレスに関連したパラメータをそれぞれ算出する。次に、算出した各パラメータを用いて等価寿命サイクル数を算出する。そして、算出した各等価寿命サイクル数をマイナー則に従って結合することで、歯付きベルトの走行可能サイクル数を算出する。この方法によれば、複数種類のストレスが複合的に作用して歯付きベルトが寿命に至る場合であっても、当該歯付きベルトの寿命を予測することができる。
一般的に、何らかの作業を行う作業装置の構成要素(例えば、歯付きベルト)を、特許文献1のような方法で故障の発生が予測される時期に交換するメンテナンス方式は、TBM(Time Based Maintenance)方式と呼ばれている。このTBM方式で定期的にメンテナンスを行う場合には、次のような問題が生じ得る。
すなわち、メンテナンスの対象物を利用する現場では、環境の変化、予測不能な事態の発生等に起因して、理論通りに対象物の摩耗が生じるとは限らない。そのため、理論式で算出した寿命直前で対象物を交換するのではなく、このような予測不能な現象の発生を考慮して、ある程度の余地を確保して、理論式で算出した寿命よりも早めに対象物を交換することが行われる。したがって、余地を確保する分だけ対象物を過剰に交換することになり、メンテナンスのコストが増大してしまうという問題点がある。
また、確保した余地を超えて寿命が低減してしまい、メンテナンスよりも前に対象物が故障してしまった場合には、故障してから交換を行うまでの間、対象物を含む作業装置は、動作不良の状態で稼働することになる。これにより、作業装置が、製品の生産に関する装置であるケースでは、大量の不良品が発生してしまう可能性があり、不経済であるという問題点がある。
このようなTBM方式のメンテナンスの欠点を解消する方法として、作業装置の状態を検査し、所定の基準に達した構成要素を交換するCBM(Condition Based Maintenance)方式のメンテナンス方法がある。例えば、特許文献2では、第1の時系列データと第2の時系列データとを取得し、取得した第2の時系列データに基づいて第1の時系列データから第1のデータを抽出し、抽出した第1のデータに基づいてロボットの異常診断を行う方法が提案されている。
特開2002−071521号公報 特開2016−179527号公報
CBM方式のメンテナンス方法によれば、その時点で対象物に異常(故障)が発生しているか否かを診断することができるため、対象物の過剰な交換を抑制することができ、メンテナンスのコストを低減することができる。また、対象物の状態に基づいて異常の発生を検知することができるようになるため、動作不良の状態で作業装置が稼動する時間を低減することができる。しかしながら、本件発明者らは、従来の異常診断に利用されている周波数解析では次のような問題が生じ得ることを見出した。
すなわち、従来の周波数解析では、検査対象物の検査時のトルク等の動作を計測することにより、トルクデータ等の計測データを取得する。例えば、検査対象物が、歯付きベルト等の周期的に駆動されるものである場合、検査対象物に異常が生じると、得られた計測データには、その異常に関連する挙動が周期的に表れる。そこで、従来の周波数解析では、離散フーリエ変換により計測データを周波数成分に変換した後にノルム演算を行うことで、発生する異常に関連する周波数成分の強度(ゲイン)を算出する。そして、従来の周波数解析では、対象周波数成分の正常時の強度を予め保持しており、当該対象周波数成分の検査時の強度と正常時の強度との差分を算出して、算出される差分が閾値よりも大きいか否かによって、検査対象物に異常が生じているか否かを判定する。
上記のような従来の周波数解析では、対象周波数成分の正常時の強度が0に近い場合、当該対象周波数成分の異常発生時の強度と正常時の強度との差分が閾値よりも大きくなり、検査対象物に異常が発生していることを検知することができる。しかしながら、例えば、対象周波数成分に固有の特性を有し得る、歯付きベルト等の検査対象物を検査する場合、対象周波数成分の正常時の強度が0以外の値になるケースが存在する。このようなケースでは、対象周波数成分の正常時の強度が同じであるにも関わらず、各検査対象物の固有の特性によって、当該対象周波数成分の検査時の強度と正常時の強度との差分が相違する可能性がある。
例えば、対象周波数成分が(5−i)である特性を有する第1の歯付きベルトと、対象周波数成分が(−5−i)である特性を有する第2の歯付きベルトとが存在するとする。第1の歯付きベルト及び第2の歯付きベルトの正常時の強度は、共に凡そ5.1(=(52+12)の平方根)で同じである。この場合に、対象周波数成分において(3+2i)で表される共通の異常が各歯付きベルトに生じたとする。そうすると、第1の歯付きベルトの検査時の対象周波数成分は(8+1i)となり、その強度は凡そ8.1(=(82+12)の平方根)となる。そのため、第1の歯付きベルトに生じる対象周波数成分の強度の変化は、凡そ3.0となる。これに対して、第2の歯付きベルトの検査時の対象周波数成分は(−2+1i)となり、その強度は凡そ2.2(=(22+12)の平方根)となる。そのため、第2の歯付きベルトに生じる対象周波数成分の強度の変化は、凡そ−2.9となる。このように、各歯付きベルトに生じた異常は同じであるのに、各歯付きベルトの固有の特性によって、対象周波数成分の強度の変化が異なる可能性がある。
発生した異常が同じであるにもかかわらず、各検査対象物の固有の特性によって、各検査対象物に生じる対象周波数成分の強度の変化が相違すると、単純な閾値との比較ではその変化を正確に評価することができなくなってしまう。従来の周波数解析では、これに起因して、各検査対象物に異常が発生しているか否かの判定精度が低下してしまうという問題が生じ得ることを本件発明者らは見出した。
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高める技術を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
すなわち、本発明の一側面に係る異常診断装置は、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得する取得部と、前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出する演算部と、前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断する診断部と、を備える。
本件発明者らは、上記の問題が生じるのは、差分計算を行う前に、ノルム演算による強度の算出を行っていることが原因であると見出した。つまり、ノルム演算を行うと、各データにおける周波数成分の位相特性の情報がなくなってしまう。そのため、異なる位相特性を有する検査対象物の間で、対象周波数成分の強度の変化、すなわち、対象周波数成分の検査時の強度と正常時の強度との差分が異なる可能性が生じてしまう。
そこで、当該構成では、検査時の第1データと正常時の第2データとの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のままで行う。つまり、当該構成では、従来の周波数解析で行っていたノルム演算による強度の算出を行う前に、又は当該ノルム演算による強度の算出を行わず、検査時の第1データと正常時の第2データとの差分を算出する。これにより、対象周波数成分に生じる変化を適切に評価することができる。
例えば、上記の例の場合、位相特性が保持された状態のままで差分計算を行うことで、第1の歯付きベルトの対象周波数成分に生じた変化は、「(8+1i)−(5−i)=(3+2i)」となり、第2の歯付きベルトの対象周波数成分に生じた変化は、「(−2+1i)−(−5−i)=(3+2i)」となる。よって、各歯付きベルトの対象周波数成分に生じる変化は同じ値になる。
したがって、位相特性が保持された状態のままで差分計算を行うことで、各検査対象物に発生した異常が同じであれば、各検査対象物が固有の特性を有していたとしても、各検査対象物の対象周波数成分に生じる変化を同じ値で示すことができる。これによって、各検査対象物の有する固有の特性に依存せずに、対象周波数成分の生じる変化を適切に評価することができるようになるため、当該構成によれば、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
なお、検査対象物の種類は、周波数解析の結果に基づいて異常の発生の有無を診断可能であれば、特に限定されなくてもよい。検査対象物は、例えば、歯付きベルトを備える装置、ギアを備える装置等であってよい。また、差分処理を行うタイミングは、各データに位相特性が残っている段階であれば、特に限定されなくてもよい。例えば、差分処理は、周波数成分への変換を行う離散フーリエ変換よりも前に行われてもよいし、当該離散フーリエ変換の後に行われてもよい。また、第1データの種類は、周波数解析の対象となり得るデータであれば、特に限定されなくてもよい。第1データは、例えば、モータのトルク、速度、振動等を計測することで得られる計測データであってよい。第2データの構成は、第1データの種類及び差分処理を行うタイミングに基づいて、適宜決定される。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記第2データは、前記検査対象物の正常時における周期的な動作の計測データに対して離散フーリエ変換を適用することにより得られる複数の周波数成分の値であって、前記位相特性を保持した複数の周波数成分の値のうち、少なくとも前記1又は複数の対象周波数成分の値を含むように構成されてよい。また、前記周波数解析は、前記第1データに対して離散フーリエ変換を適用することで、前記1又は複数の対象周波数成分を含む複数の周波数成分の各値であって、前記位相特性を保持した各値を算出する変換処理と、前記第1データから算出された前記1又は複数の対象周波数成分の値、及び前記第2データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値の差分を計算する前記差分処理と、を含んでもよい。当該構成によれば、検査対象物に異常が発生しているか否かを適切に診断することができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記演算部は、前記周波数解析を実施する前に、前記第1データに対してエンベロープ処理を適用してもよい。当該構成によれば、検査対象物に異常が発生しているか否かを適切に診断することができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記診断部は、前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値から前記1又は複数の対象周波数成分の強度を算出し、算出した前記1又は複数の対象周波数成分の強度が閾値以上であるか否かに基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断してもよい。当該構成によれば、検査対象物に異常が発生しているか否かを適切に診断することができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記演算部は、前記1又は複数の対象周波数成分の周波数に基づいて、前記周波数解析の分解能を決定し、決定した前記分解能に応じた時間幅の区間部分を前記第1データから抽出し、前記第1データの抽出した区間部分に対して前記周波数解析を適用してもよい。当該構成によれば、抽出時間の最適化を図ることで、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記検査対象物は、プーリの回転により駆動するように構成された歯付きベルトであって、当該プーリの複数の歯に噛み合う複数の歯と、前記プーリ側の面に前記複数の歯を結合したベルト本体とを備える歯付きベルトであってよく、前記1又は複数の対象周波数成分は、前記歯付きベルトの回転周波数成分であってよい。当該構成によれば、歯付きベルトに異常が発生しているか否かを診断することができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記演算部は、前記第1データに基づいて、前記歯付きベルトの各歯と前記プーリの各歯との噛み合い周波数成分の強度を算出し、算出した噛み合い周波数成分の強度で前記回転周波数成分の値を正規化してもよい。当該構成によれば、各検査対象物の特性に生じる経時的変化の影響を正規化により打ち消すことができるため、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
上記一側面に係る異常診断装置において、前記演算部は、前記1又は複数の対象周波数成分を抽出して、前記周波数解析を実施することで、前記1又は複数の対象周波数成分の値で構成された前記第3データを算出してもよい。当該構成によれば、第2データのデータ量を低減することができるため、消費メモリの量を抑えることができる。
なお、上記各形態に係る異常診断装置の別の態様として、以上の各構成を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積する媒体である。
例えば、本発明の一側面に係る異常診断方法は、コンピュータが、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得するステップと、前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出するステップと、前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断するステップと、を実行する、情報処理方法である。
また、例えば、本発明の一側面に係る異常診断プログラムは、コンピュータに、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得するステップと、前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出するステップと、前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断するステップと、を実行させるための、プログラムである。
本発明によれば、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高める技術を提供することができる。
図1は、本発明が適用される場面の一例を模式的に例示する。 図2Aは、歯付きベルトとプーリとの噛み合いの一例を例示する。 図2Bは、歯付きベルトに生じる異常の一例を例示する。 図3Aは、正常時に得られる計測データの一例を模式的に例示する。 図3Bは、異常時に得られる計測データの一例を模式的に例示する。 図4は、実施の形態に係る異常診断装置のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。 図5は、実施の形態に係る異常診断装置のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。 図6は、実施の形態に係る異常診断装置の処理手順の一例を例示する。 図7Aは、離散フーリエ変換後の第1データの一例を例示する。 図7Bは、第2データの一例を例示する。 図7Cは、第1データと第2データとの差分の一例を例示する。 図8は、変形例に係る異常診断装置の処理手順の一例を例示する。 図9は、変形例に係る異常診断装置の処理手順の一例を例示する。
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
§1 適用例
まず、図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る異常診断装置1の適用場面の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る異常診断装置1は、検査対象物に異常が発生したか否かを診断する情報処理装置である。
具体的には、本実施形態に係る異常診断装置1は、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得する。次に、異常診断装置1は、第1データと検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データとの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析を行う。これにより、異常診断装置1は、検査時及び正常時の周期的な動作の相違を示す第3データであって、検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出する。そして、異常診断装置1は、第3データに含まれる1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、検査対象物に異常が発生したか否かを診断する。
検査対象物の種類は、周波数解析の結果に基づいて異常の発生の有無を診断可能であれば、特に限定されなくてもよい。検査対象物は、例えば、歯付きベルトを備える装置、ギアを備える装置等であってよい。また、第1データの種類は、周波数解析の対象となり得るデータであれば、特に限定されなくてもよい。第1データは、例えば、モータのトルク、速度、振動等を計測することで得られる計測データであってよい。
本実施形態では、歯付きベルト25を備えるロボット装置2を検査対象物の一例として採用した例を説明する。図1に示されるとおり、本実施形態に係るロボット装置2は、回転軸22を有するモータ21、回転軸22に連結される第1プーリ23、第1プーリ23と水平方向に並列に配置される第2プーリ24、及び第1プーリ23と第2プーリ24とに架け渡される歯付きベルト25を備えている。
第1プーリ23は、モータ21の回転により駆動されるように構成されており、歯付きベルト25は、第1プーリ23の回転により駆動されるように構成されている。この第1プーリ23は、本発明の「プーリ」の一例である。第2プーリ24は、歯付きベルト25の回転により駆動される。この第2プーリ24には、例えば、シャフト(不図示)が、第2プーリ24の回転に応じて上下方向に移動するように取り付けられる。これにより、ロボット装置2は、マウンタとして動作可能に構成される。
モータ21に作用するトルクの大きさは、当該モータ21に供給される指令電流値の大きさによって定まる。すなわち、モータ21に供給される指令電流値を監視することで、モータ21に作用するトルクを計測することができる。本実施形態に係る異常診断装置1は、これにより得られる計測データ122であって、モータ21のトルクを示す計測データ122を第1データとして取得する。そして、異常診断装置1は、この計測データ122を利用して、ロボット装置2の歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。
ここで、図2A、図2B、図3A、及び図3Bを用いて、歯付きベルト25の異常(故障)について説明する。図2Aは、歯付きベルト25と第1プーリ23との正常時における噛み合いの一例を模式的に例示する。図2Bは、歯付きベルト25に生じる異常の一例を模式的に例示する。図3Aは、正常時に得られる計測データ122の一例を模式的に例示する。図3Bは、異常時に得られる計測データ122の一例を模式的に例示する。
図2Aに示されるとおり、第1プーリ23の外周面には、複数の歯231が一定のピッチで設けられている。これに対応して、歯付きベルト25は、第1プーリ23の複数の歯231に噛み合う複数の歯251と、第1プーリ23側の面(内周面)に複数の歯251を結合したベルト本体250と、を備えている。
第1プーリ23の歯231と歯付きベルト25の歯251とが噛み合っていることで、第1プーリ23の回転が歯付きベルト25に伝達される。歯付きベルト25の歯251の欠けが存在しない場合には、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合いの関係が固定されるため、モータ21の一定の回転量に基づいて、歯付きベルト25の回転量を正確に制御することができる。このような正常な状態では、第1プーリ23から歯付きベルト25にスムーズに回転力を伝達することができる。そのため、モータ21のトルクを計測することで得られた計測データ122は、図3Aに示されるように、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合いの周期に比較的に小さな振動が表れるものとなる。
これに対して、このような歯付きベルト25に、図2Bに例示される歯251の欠けが発生したとする。図2Bは、歯付きベルト25に生じる異常の一例として、歯付きベルト25が第1プーリ23と噛み合う範囲内の領域252において歯251が欠けた場面を例示している。このような歯251の欠けが発生した場合、歯251の欠けが生じた領域252において、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合いがない状態となる。
この状態では、モータ21の一定の回転量に基づいて、歯付きベルト25の回転量を正確に制御することができなくなってしまう。したがって、この歯付きベルト25の歯251の欠けは、ロボット装置2の検知すべき異常(故障)の一つである。
この歯付きベルト25の歯251の欠けが生じると、欠けの生じた領域252が第1プーリ23と噛み合う範囲に存在する間、歯251が欠けている分だけ、第1プーリ23から歯付きベルト25に回転力を伝達するための摩擦力が小さくなる。これにより、第1プーリ23が振動しやすくなり、計測されるモータ21のトルクに大きな変動が生じやすくなる。すなわち、歯付きベルト25が1回転する度に、計測されるトルクに比較的に大きな振動が生じることになる。
そのため、歯251の欠けのような異常が発生した際に得られる計測データ122は、図3Bに示されるように、噛み合い周期に比較的に小さな振動(図3A)が表れるのに加えて、歯付きベルト25の回転周期に比較的に大きな振動が表れるものとなる。そこで、本実施形態に係る異常診断装置1は、モータ21のトルクを計測することで得られる計測データ122の周波数解析を行い、計測データ122にこのような挙動が表れているか否かを判定する。
詳細には、異常診断装置1は、比較対象となる正常時の動作を示す第2データ(後述する正常データ123)を保持しており、計測データ122と第2データとから、歯付きベルト25の回転周波数成分の検査時の値と正常時の値との差分を含む第3データ(後述する演算結果データ124)を算出する。この回転周波数成分は、本発明の「検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分」の一例である。
そして、異常診断装置1は、算出される第3データに含まれる回転周波数成分の検査時と正常時との差分値に基づいて、上記の歯251の欠け等の異常に起因する比較的に大きな振動が歯付きベルト25の回転周期に表れているか否かを判定する。これにより、異常診断装置1は、ロボット装置2の歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。
ただし、上記のとおり、周波数解析において、ノルム演算を行って、位相特性の情報をなくした後に、回転周波数成分の検査時の値と正常時の値との差分を算出すると、算出される差分値が、歯付きベルト25の固有の特性に応じて相違してしまう可能性がある。そのため、差分処理の前にノルム演算を行う従来の周波数解析を実施すると、歯付きベルト25の異常診断の精度が低下してしまう恐れがある。
そこで、本実施形態に係る異常診断装置1は、第1データ(計測データ122)と第2データとの差分をそれぞれに位相特性が保持された状態のままで計算する。これによって、上記のとおり、歯付きベルト25が固有の特性を有していたとしても、歯付きベルト25に発生した異常が同じであれば、回転周波数成分に生じる変化を同じ値で示すことができる。したがって、本実施形態によれば、歯付きベルト25の有する固有の特性に依存せずに、回転周波数成分に生じる変化を適切に評価することができるようになるため、歯付きベルト25に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
なお、第1データと第2データとの差分を計算する差分処理には、第1データと第2データとをそのまま差分する処理の他、第1データ及び第2データの少なくとも一方に離散フーリエ変換等の演算処理を適用した後に差分を計算する処理が含まれてもよい。そのため、第1データ及び第2データは、対象周波数成分の値の差分計算が最終的に行うことができるのであれば、必ずしも同じ形式のデータではなくてもよい。
§2 構成例
[ハードウェア構成]
次に、図4を用いて、本実施形態に係る異常診断装置1のハードウェア構成の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る異常診断装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。
図4に示されるとおり、本実施形態に係る異常診断装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図4では、通信インタフェースを「通信I/F」と記載している。
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部12は、メモリの一例であり、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの少なくともいずれか一方で構成されてよい。記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、異常診断プログラム121、正常データ123等の各種データを記憶する。
正常データ123は、本発明の「第2データ」の一例であり、検査対象物であるロボット装置2の正常時における周期的な動作から得られたものである。また、異常診断プログラム121は、ロボット装置2から得られる計測データ122と正常データ123とに基づいて、ロボット装置2の歯付きベルト25に異常が発生しているか否かを診断する後述の処理(図6)を異常診断装置1に実行させるためのプログラムである。詳細は後述する。
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。異常診断装置1は、この通信インタフェース13を介して、ロボット装置2との間でネットワークを介したデータ通信を行ってもよい。なお、ネットワークの種類は、例えば、インターネット、無線通信網、移動通信網、電話網、専用網等から適宜選択されてよい。
入力装置14は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。また、出力装置15は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。オペレータは、入力装置14及び出力装置15を介して、異常診断装置1を操作することができる。
ドライブ16は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラムを読み込むためのドライブ装置である。ドライブ16の種類は、記憶媒体91の種類に応じて適宜選択されてよい。上記異常診断プログラム121及び正常データ123は、この記憶媒体91に記憶されていてもよい。
記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。異常診断装置1は、この記憶媒体91から、上記異常診断プログラム121及び正常データ123を取得してもよい。
ここで、図4では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
なお、異常診断装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)等で構成されてよい。異常診断装置1は、複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また、異常診断装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、PC(Personal Computer)、PLC(programmable logic controller)等であってもよい。
[ソフトウェア構成]
次に、図5を用いて、本実施形態に係る異常診断装置1のソフトウェア構成の一例を説明する。図5は、本実施形態に係る異常診断装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。
異常診断装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された異常診断プログラム121をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された異常診断プログラム121をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これによって、図5に示されるとおり、本実施形態に係る異常診断装置1は、ソフトウェアモジュールとして、取得部111、演算部112、及び診断部113を備えるように構成される。
取得部111は、検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得する。演算部112は、第1データ、及び検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、検査時及び正常時の周期的な動作の相違を示す第3データであって、検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出する。そして、診断部113は、第3データに含まれる1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、検査対象物に異常が発生したか否かを診断(判定)する。
本実施形態では、検査対象物は、ロボット装置2の歯付きベルト25である。この歯付きベルト25に歯251の欠け等の異常が発生した場合には、上記のとおり、モータ21に作用するトルクを計測することで得られる計測データに、発生した異常に起因する比較的に大きな振動が歯付きベルト25の回転周期毎に表れる。そこで、取得部111は、検査対象物である歯付きベルト25を駆動するモータ21に作用するトルクを計測した結果を時系列に並べた計測データ122を取得する。演算部112は、この計測データ122と正常データ123との差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析を行うことで、歯付きベルト25の回転周波数成分の検査時と正常時との相違を示す値を含む演算結果データ124を算出する。この演算結果データ124は、第3データの一例である。そして、診断部113は、演算結果データ124に含まれる回転周波数成分の値に基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。
異常診断装置1の各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、本実施形態では、異常診断装置1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUによって実現される例について説明している。しかしながら、以上のソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、異常診断装置1のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換、及び追加が行われてよい。
§3 動作例
次に、図6を用いて、異常診断装置1の動作例を説明する。図6は、異常診断装置1の処理手順の一例を例示するフローチャートである。以下で説明する異常診断装置1の処理手順は、本発明の「異常診断方法」の一例である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
(ステップS101)
ステップS101では、制御部11は、取得部111として動作し、歯付きベルト25を駆動するモータ21に作用するトルクを計測した結果を時系列に並べた計測データ122を取得する。そして、制御部11は、取得した計測データ122をRAM又は記憶部12に保存する。
上記のとおり、モータ21に供給される指令電流値に基づいて、当該モータ21に作用するトルクを計測することができる。この計測データ122を取得するため、ロボット装置2は、モータ21が一定時間定速で動作するように、適宜制御される。ロボット装置2の制御及びモータ21に作用するトルクの計測はそれぞれ、異常診断装置1により行われてもよいし、異常診断装置1以外の他のコンピュータにより行われてもよい。
異常診断装置1が、ロボット装置2の制御及びトルクの計測を行う場合、本ステップS101では、制御部11は、ロボット装置2のモータ21を駆動すると共に、モータ21に供給される指令電流値を監視する。これにより、制御部11は、モータ21に作用するトルクを計測し、計測した結果を時系列に並べた計測データ122を取得する。一方、少なくともトルクの計測が異常診断装置1以外の他のコンピュータにより行われる場合、本ステップ101では、制御部11は、ネットワーク、記憶媒体91等を介して、他のコンピュータから直接的に又は間接的に計測データ122を取得する。
(ステップS102)
次のステップS102では、制御部11は、演算部112として動作し、取得した計測データ122から、次のステップS103以降の処理に利用する部分を抽出する。
発生した異常に起因する比較的に大きな振動(図3B)は、基本的には、歯付きベルト25が1回転する度に生じる。そのため、この比較的に大きな振動は、モータ21が定速で動作している間に一定の周期で表れ得る。そこで、本ステップS102では、制御部11は、取得した計測データ122から、モータ21が定速で動作している間のトルクを計測した部分を抽出する。
モータ21が定速で動作している時間幅を特定する方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、モータ21は、エンコーダ(不図示)を備えることで、回転速度を計測可能に構成されてよい。この場合、制御部11は、エンコーダからモータ21の速度データを取得し、取得した速度データを参照して、モータ21が定速で動作していた時間幅を特定する。次に、制御部11は、計測データ122を読み出し、特定した時間幅に対応する部分を計測データ122から抽出する。
これにより、制御部11は、ステップS101で取得した計測データ122から、モータ21が定速で動作している間のトルクを計測した部分を抽出することができる。次のステップS103以降の処理では、本ステップS102で抽出した部分が利用される。なお、ステップS101で取得された計測データ122において、モータ21が定速で動作している間のトルクが既に抽出されている場合、本ステップS102は、省略されてもよい。
(ステップS103)
次のステップS103では、制御部11は、演算部112として動作し、ステップS104以下の周波数解析を実施する前に、ステップS102の抽出処理を適用後の計測データ122に対してエンベロープ処理を適用する。
エンベロープ処理は、包絡線処理とも呼ばれ、波形の輪郭を明確にするための処理である。エンベロープ処理の具体的な計算手法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、エンベロープ処理の具体的な計算処理として、ヒルベルト変換処理、二乗処理、絶対値処理等を挙げることができる。ヒルベルト変換処理では、計測データ122の各値に対してヒルベルト変換を適用する。二乗処理では、計測データ122の各値を、当該各値の二乗の値に変換する。絶対値処理では、計測データ122の各値を絶対値に変換する。本ステップS103では、制御部11は、これらの計算手法のうちの少なくともいずれかを採用して、エンベロープ処理を実施する。
(ステップS104及びS105)
次のステップS104及びS105では、制御部11は、演算部112として動作し、計測データ122と正常データ123との差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析を行うことで、歯付きベルト25の回転周波数成分の検査時と正常時との相違を示す値を含む演算結果データ124を算出する。
本実施形態に係る周波数解析は、計測データ122に対する離散フーリエ変換による変換処理(ステップS104)と、計測データ122と正常データ123との差分を算出する差分処理(ステップS105)と、を含む。更に、本実施形態では、ステップS104で計測データ122に離散フーリエ変換を適用した後に、ステップS105により計測データ122と正常データ123との差分を算出する。
そのため、本実施形態に係る正常データ123は、歯付きベルト25の正常時における周期的な動作の計測データに対して離散フーリエ変換を適用することにより得られる複数の周波数成分の値であって、位相特性を保持した複数の周波数成分の値のうち、少なくとも回転周波数成分の値を含むように構成される。この正常データ123は、正常時の歯付きベルト25の動作について、ステップS101〜S104の処理を実施することにより得ることができる。
具体的に、ステップS104では、制御部11は、ステップS102及びS103の各処理を適用した計測データ122に対して離散フーリエ変換を適用する。これにより、制御部11は、歯付きベルト25の回転周波数成分を含む複数の周波数成分の各値であって、位相特性を保持した各値を算出する。そして、次のステップS105では、制御部11は、ステップS104により計測データ122から算出された回転周波数成分の値と正常データ123に含まれる回転周波数成分の値との差分を計算することで、演算結果データ124を算出する。
ここで、図7A〜図7Cを用いて、ステップS104及びステップS105の各処理の一例を詳細に説明する。図7Aは、ステップS104を適用後の計測データ122の一例を例示する。図7Bは、正常データ123の一例を例示する。図7Cは、演算結果データ124の一例を例示する。なお、図7A〜図7Cは、各データの一例を示しているに過ぎず、各データが、図7A〜図7Cそれぞれに示されるデータに限定される訳ではない。
制御部11は、上記ステップS101では、図3A及び図3Bに例示されるような、モータ21のトルクを計測した結果を時系列に示す時系列データを計測データ122として取得する。続いて、制御部11は、ステップS101で取得した時系列データにステップS102及びS103の各処理を適用する。そして、ステップS104では、制御部11は、ステップS102及びS103の各処理を適用した時系列データに対して離散フーリエ変換を行う。これにより、制御部11は、図7Aで例示されるように、回転周波数(wHz)成分を含む複数の周波数成分の各値を、位相特性を保持した状態で算出することができる。
このような離散フーリエ変換後の計測データ122との差分を計算するため、正常データ123は、図7Bで例示されるように、正常時の計測データに対して離散フーリエ変換を適用することで得られる複数の周波数成分の各値のうち、少なくとも回転周波数成分の値を、位相特性を保持した状態で含むように構成される。このような正常データ123は、歯付きベルト25が正常な時に上記ステップS101〜S104の処理を行うことで得ることができる。
ステップS105では、制御部11は、図7Aで示される離散フーリエ変換後の計測データ122と図7Bで示される正常データ123との差分計算を行うことで、図7Cに例示される演算結果データ124を算出する。これにより、制御部11は、図7Cの演算結果データ124に示されるとおり、それぞれ位相特性を保持した状態のままで各周波数成分の差分値を算出することができる。
なお、回転周波数wは、適宜算出可能である。例えば、モータ21の回転数が100rpsであり、第1プーリ23の歯231の数が64個であり、歯付きベルト25の歯251の数が320個であるとする。この場合、回転周波数wは、64×100÷320=20(Hz)となる。
(ステップS106及びS107)
次のステップS106及びS107では、制御部11は、診断部113として動作し、演算結果データ124に含まれる回転周波数成の値に基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。本実施形態では、制御部11は、ステップS106において、回転周波数成分の強度を算出する。そして、制御部11は、ステップS107において、算出した回転周波数成分の強度に基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを判定する。
具体的に、ステップS106では、制御部11は、演算結果データ124から回転周波数成分の値を抽出し、抽出した回転周波数成分の値に対してノルム演算を行う。これにより、制御部11は、回転周波数成分のノルムを当該回転周波数成分の強度として算出する。この「強度」は、「ゲイン」と称してもよい。
算出するノルムの種類は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、ノルムの種類として、ユークリッドノルムを挙げることができる。演算結果データ124として上記図7Cに示す各値が与えられており、ユークリッドノルムを強度として採用する場合、制御部11は、回転周波数(wHz)成分の強度は凡そ11(=(112+12)の平方根)であると算出することができる。
次のステップS107では、制御部11は、算出した回転周波数成分の強度が閾値以上であるか否かに基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。歯付きベルト25に歯251の欠け等の異常が発生した場合には、歯付きベルト25の回転周期に応じて比較的に大きな振動が生じるため、ステップS101〜S106までの処理により算出される回転周波数成分の強度が大きくなる。そのため、制御部11は、算出した回転周波数成分の強度が閾値以上である場合に、歯付きベルト25に異常が発生したと診断し、そうでない場合に、歯付きベルト25に異常は発生していないと診断する。なお、閾値は、システムに固定で与えられてもよいし、ユーザにより変更可能であってもよい。
これにより、制御部11は、本動作例に係るロボット装置2の歯付きベルト25の診断処理を終了する。なお、制御部11は、上記ステップS107の診断処理の結果を所定の方法で通知してもよい。例えば、上記ステップS107において歯付きベルト25に異常が発生していると診断した場合、制御部11は、ディスプレイによる画面出力、スピーカによる音声出力、電子メールの送信等の通知方法で当該診断結果を通知してもよい。
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係る異常診断装置1は、ノルム演算(ステップS106)を行う前に、検査時の計測データ122と正常時の正常データ123との差分計算(ステップS105)を行う。これによって、本実施形態に係る異常診断装置1は、図7A及び図7Bに示されるとおり、検査時の計測データ122と正常時の正常データ123との差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のままで行う。
その結果、図7Cに示されるとおり、歯付きベルト25の有する固有の特性に依存せずに、回転周波数成分に生じる変化(検査時と正常時との差分値)を算出することができるようになる。例えば、図7Bで示される正常データ123に含まれる回転周波数成分の値(−1+4i)が歯付きベルト25の固有の特性を示していると捉えることができ、図7Aで示される計測データ122から得られた回転周波数成分の値(10+5i)が、この固有の特性(−1+4i)に(11+i)という変化が加えられたものと捉えることができる。本実施形態によれば、上記ステップS105による差分計算の結果、図7Cに示されるとおり、(10+5i)−(−1+4i)=(11+i)となり、歯付きベルト25の有する固有の特性に依存せずに、回転周波数成分に生じる変化を算出することができる。したがって、本実施形態によれば、歯付きベルト25の有する固有の特性に依存せずに、回転周波数成分に生じる変化を適切に評価することができるようになるため、歯付きベルト25に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
また、本実施形態に係る異常診断装置1は、離散フーリエ変換(ステップS104)を行う前に、ステップS103により、計測データ122に対してエンベロープ処理を適用している。このエンベロープ処理によれば、計測データ122の波形の輪郭を明確にすることができる。そのため、エンベロープ処理を適用した計測データ122に対して離散フーリエ変換を適用することで、回転周波数成分を含む各周波数成分の値を適切に算出することができるようになる。したがって、本実施形態によれば、歯付きベルト25に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良及び変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
<4.1>
上記実施形態では、検査対象物の一例として、ロボット装置2の歯付きベルト25を例示している。しかしながら、検査対象物は、このようなロボット装置2及び歯付きベルト25に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。なお、検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分は、当該検査対象物の種類に応じて適宜決定される。また、第1データの種類は、検査対象物の異常を検知可能であれば、トルクデータに限られず、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
<4.2>
上記実施形態に係る異常診断装置1は、ステップS103において、エンベロープ処理を行っている。しかしながら、このエンベロープ処理は、省略されてもよい。上記実施形態において、エンベロープ処理を省略した場合には、歯付きベルト25に生じた異常に起因する挙動は、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合い周波数Wと歯付きベルト25の回転周波数wとのうなりの周波数(W−w、W+w)の成分に表れる。そのため、エンベロープ処理を省略する場合には、うなりの周波数(W−w、W+w)の成分が本発明の「対象周波数成分」として取り扱われる。すなわち、上記ステップS106及びS107では、制御部11は、うなりの周波数(W−w、W+w)成分の各値に基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。
また、異常診断装置1は、エンベロープ処理を行う前に、計測データ122に対して特定の周波数を取り出すためのフィルタを適用してもよい。フィルタは、例えば、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合い周波数W及び回転周波数wそれぞれの成分を通過させるように適宜構成される。これにより、計測データ122のノイズを除去することができるため、検査対象物に異常が発生しているか否かの診断精度を高めることができる。
なお、噛み合い周波数Wは、歯付きベルト25の歯251と第1プーリ23の歯231とが単位時間あたりに噛み合う回数を示す。例えば、モータ21の回転数が100rpsであり、第1プーリ23の歯231の数が64個である場合、噛み合い周波数Wは、64×100=6400(Hz)となる。
<4.3>
上記実施形態では、異常診断装置1は、ステップS104により計測データ122に対して離散フーリエ変換を適用した後に、ステップS105により計測データ122と正常データ123との差分を計算している。しかしながら、差分処理を実施するタイミングは、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、離散フーリエ変換を行う前に、差分処理を実施してもよい。
図8は、本変形例に係る異常診断装置1の処理手順の一例を例示するフローチャートである。本変形例に係る処理手順は、差分処理を行った後に離散フーリエ変換を行う点を除き、上記実施形態の処理手順と同様である。すなわち、ステップS201〜S203、S206及びS207は、上記ステップS101〜S103、S106及びS107と同様に処理される。
本変形例では、制御部11は、ステップS203によりエンベロープ処理を行った後に、ステップS204により、計測データ122と正常データとの差分処理を行う。そのため、本変形例に係る正常データは、離散フーリエ変換を適用する前の計測データ122と同様に、時系列データにより構成される。
具体的には、本変形例に係る正常データは、歯付きベルト25の正常時における周期的な動作の計測データに対してデータ抽出処理(ステップS202)及びエンベロープ処理(S203)を適用することで得られた時系列データである。このような正常データは、正常時の歯付きベルト25の動作について、ステップS201〜S203の処理を実施することにより得ることができる。
ステップS204の差分処理により、検査時と正常時との動作の差分を示す時系列データを得ることができる。次のステップS205では、制御部11は、このようにして得られた時系列データに対して離散フーリエ変換を適用することで、上記実施形態と同様の演算結果データ124を算出する。そして、制御部11は、上記ステップS106及びS107と同様に、ステップS206及びS207の処理を実行することで、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断することができる。
以上のとおり、第1データと第2データとの差分処理を実施するタイミングは、第1データに離散フーリエ変換を適用した後に限られなくてもよい。第2データの構成は、差分処理を実施するタイミングに応じて適宜決定される。具体的には、第2データは、差分処理を適用する前の第1データと同様の形式になるように構成される。この第2データは、初期に与えられたもので固定されてもよいし、正常と診断された検査時に得られた第1データによって更新されてもよい。
なお、上記実施形態のように、差分処理を実施する前に第1データに対して離散フーリエ変換を適用する場合、上記正常データ123と同様に、第2データは、検査対象物の正常時における周期的な動作の計測データに対して離散フーリエ変換を適用することにより得られる複数の周波数成分の値であって、位相特性を保持した複数の周波数成分の値のうち、少なくとも1又は複数の対象周波数成分の値を含むように構成される。
この場合、周波数解析は、上記実施形態と同様に、第1データに対して離散フーリエ変換を適用することで、1又は複数の対象周波数成分を含む複数の周波数成分の各値であって、位相特性を保持した各値を算出する変換処理と、第1データから算出された1又は複数の対象周波数成分の値、及び第2データに含まれる1又は複数の対象周波数成分の値の差分を計算する差分処理と、を含むように構成される。
<4.4>
上記実施形態では、ステップS106により、ノルム演算が行われている。このノルム演算は、省略されてもよい。演算結果データ124に含まれる回転周波数成の値、すなわち、ステップS105で算出される回転周波数成分の検査時と正常時との差分値に基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する方法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
例えば、回転周波数成分の検査時と正常時との差分値を入力すると、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを示す出力値を出力するように機械学習を行った学習済みの学習器が、歯付きベルト25の異常診断に用いられてもよい。このような学習器は、例えば、ニューラルネットワークにより構成される。
この場合、上記ステップS107では、制御部11は、ステップS105で算出した回転周波数成分の検査時と正常時との差分値を学習済みの学習器に入力することで、歯付きベルト25に異常が発生しているか否を示す出力値を当該学習済みの学習器から得る。これにより、制御部11は、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。
<4.5>
上記実施形態に係る異常診断装置1の処理手順について、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。例えば、図9に例示されるように、データ抽出の時間幅を決定する処理等が追加されてもよい。
図9は、本変形例に係る異常診断装置1の処理手順の一例を例示するフローチャートである。本変形例に係る処理手順は、データ抽出の時間幅を決定する処理(ステップS302〜303)、対象周波数成分の値を抽出する処理(ステップS307)、及び対象周波数成分の値を正規化する処理(ステップS308)が追加されている点を除き、上記実施形態と同様である。
(ステップS301)
ステップS301は、上記ステップS101と同様に処理される。すなわち、ステップS301では、制御部11は、取得部111として動作し、計測データ122を取得する。
(ステップS302及びS303)
次のステップS302では、制御部11は、演算部112として動作し、1又は複数の対象周波数成分の周波数に基づいて、周波数解析の分解能を決定する。本変形例では、制御部11は、回転周波数wに基づいて、周波数解析の分解能を決定する。
具体的には、制御部11は、離散フーリエ変換により回転周波数成分の値を直接的に算出可能なように周波数解析の分解能を決定する。周波数解析の分解能を決定する方法の一例として、回転周波数wの約数から選択する方法が挙げられる。例えば、回転周波数wが20Hzである場合、制御部11は、1Hz、2Hz、4Hz、5Hz等の約数から周波数解析の分解能を決定する。
次のステップS303では、制御部11は、ステップS302で決定した分解能に応じて、計測データ122から抽出する区間部分の時間幅を決定する。例えば、周波数解析の分解能を4Hzとした場合、制御部11は、抽出する区間部分の時間幅を0.25秒と決定する。
(ステップS304)
次のステップS304では、制御部11は、ステップS303で決定した時間幅の区間部分を計測データ122から抽出する。ステップS302及びS303の処理により抽出する時間幅を決定している点を除き、本ステップS304は、上記ステップS102と同様に処理される。そして、制御部11は、ステップS305以下の処理により、計測データ122から抽出した区間部分に対して周波数解析を適用する。
(ステップS305及びS306)
次のステップS305及びS306は、上記ステップS103及びS104と同様に処理される。すなわち、制御部11は、演算部112として動作し、計測データ122の抽出部分に対してエンベロープ処理を適用する。そして、制御部11は、エンベロープ処理を適用した計測データ122の抽出部分に対して離散フーリエ変換を行う。これにより、図7Aに例示されるような、計測データ122の複数の周波数成分それぞれの値を算出することができる。
(ステップS307)
次のステップS307では、制御部11は、演算部112として動作し、ステップS306で算出した複数の周波数成分のうちから1又は複数の対象周波数成分を抽出する。例えば、制御部11は、図7Aで例示される複数の周波数成分のうちから回転周波数(wHz)成分を抽出する。
(ステップS308)
次のステップS308では、制御部11は、演算部112として動作し、計測データ122に基づいて、歯付きベルト25の各歯251と第1プーリ23の各歯231との噛み合い周波数(W[Hz])成分の強度を算出する。
例えば、制御部11は、ステップS306で離散フーリエ変換を行った結果から、噛み合い周波数成分の値を取得してもよい。また、制御部11は、ステップS304で抽出した部分に離散フーリエ変換を適用し、得られた複数の周波数成分の各値から噛み合い周波数成分の値を抽出することで、噛み合い周波数成分の値を取得してもよい。そして、制御部11は、取得した噛み合い周波数成分の値に対してノルム演算を行うことで、噛み合い周波数成分の強度を算出することができる。
次に、制御部11は、算出した噛み合い周波数成分の強度で、ステップS307で抽出した回転周波数成分の値を正規化する。例えば、制御部11は、ステップS307で抽出した回転周波数成分の値を噛み合い周波数成分の強度で割ることで、回転周波数成分の値の正規化を行う。
(ステップS309)
次のステップS309では、制御部11は、上記ステップS105と同様に、計測データ122から得られた正規化後の回転周波数成分の値と正常データに含まれる回転周波数成分の値との差分を計算することで、演算結果データを算出する。
ただし、本変形例では、ステップS307により、離散フーリエ変換により計測データ122から得られた複数の周波数成分の値のうち、回転周波数成分の値が抽出されている。そのため、本変形例に係る正常データは、図7Bで例示される複数の周波数成分のうちの回転周波数成分の値のみで構成されてよい。これにより、本ステップS309では、制御部11は、上記の差分計算により、回転周波数成分の値で構成された演算結果データを算出する。
(ステップS310及びS311)
次のステップS310及びS311は、上記ステップS106及びS107と同様に処理される。すなわち、ステップS310では、制御部11は、診断部113として動作し、ステップS309で算出した回転周波数成分の差分値に対してノルム演算を行うことで、回転周波数成分の強度を算出する。ステップS311では、制御部11は、算出した回転周波数成分の強度が閾値以上であるか否かに基づいて、歯付きベルト25に異常が発生したか否かを診断する。これにより、制御部11は、本変形例に係る診断処理を終了する。
(特徴)
本変形例では、ステップS302の処理により、離散フーリエ変換により回転周波数成分の値を直接的に算出可能なように周波数解析の分解能を決定している。これにより、ステップS303では、ステップS306で行う離散フーリエ変換に適した時間幅の区間部分を計測データ122から抽出することができる。
例えば、歯付きベルト25の回転周波数wが20Hzであるとし、モータ21が定速で動作している時間幅が0.4秒であるとする。この場合、計測データ122から抽出する区間部分の時間幅を0.33秒とし、周波数解析の分解能を3Hzとすることができる。しかしながら、周波数解析の分解能を3Hzとした場合、ステップS306で行う離散フーリエ変換により、回転周波数(20Hz)成分の値を直接的に取得することができない。この場合、回転周波数成分の値は、近傍の周波数(18Hz、21Hz等)の成分の値から間接的に算出されることになる。そのため、算出される回転周波数成分の値が正確ではなく、これによって、歯付きベルト25の診断精度が低下してしまう可能性がある。
これに対して、本変形例では、制御部11は、ステップS302の処理により、離散フーリエ変換により回転周波数成分の値を直接的に算出可能なように周波数解析の分解能を決定する。例えば、制御部11は、回転周波数20Hzの約数の中から4Hzを分解能に選択したとする。このケースでは、分解能を3Hzとしたケースに比べて、周波数解析の分解能は悪化している。しかしながら、ステップS306で行う離散フーリエ変換により、回転周波数成分の値を直接的に算出することができる。したがって、本変形例によれば、回転周波数成分の値を正確に算出することができるため、歯付きベルト25の診断精度を高めることができる。
また、本変形例では、回転周波数成分を抽出して、周波数解析を実施している。具体的には、ステップS309の差分処理を行う前に、ステップS307により、回転周波数成分を抽出している。そのため、本変形例に係る正常データは、図7Bで例示される複数の周波数成分の各値のうち回転周波数成分の値のみで構成されてよい。したがって、本変形例によれば、正常データのデータ量を低減することができるため、記憶部12及びRAMの消費メモリの量を抑えることができる。
また、本変形例では、ステップS308により、噛み合い周波数成分の強度を利用して、ステップS307で抽出された回転周波数成分の値の正規化を行っている。これによって、次のような効果を得ることができる。
例えば、歯付きベルト25と第1プーリ23との噛み合い周波数をW(Hz)とし、噛み合い周波数成分の強度をAとし、歯付きベルト25の回転周波数をw(Hz)とし、回転周波数成分の強度をBとする。この場合、離散フーリエ変換により得られる回転周波数成分の値は、4ABej(wt+α)と表すことができる。なお、係数「4」は、余弦定理等から算出される。また、「α」は、位相を示す。
ここで、歯251が摩耗したり等すると、噛み合い周波数成分の強度Aは変化し得る。噛み合い周波数成分の強度Aが変化すると、上記のとおり、回転周波数成分の値は変化する。これによって、歯付きベルト25に異常が発生しているか否かを診断する精度が低下してしまう可能性がある。
これに対して、本変形例では、ステップS308により、回転周波数成分の値を噛み合い周波数成分の強度Aで割ることで、当該回転周波数成分の値の正規化を行う。これによって、噛み合い周波数成分の強度Aに生じた変化の影響を回転周波数成分の値から取り除くことができる。そのため、本変形例によれば、歯付きベルト25に異常が発生しているか否かを診断する精度を高めることができる。
なお、上記変形例に係る処理手順において、データ抽出の時間幅を決定する処理(ステップS302〜303)、対象周波数成分の値を抽出する処理(ステップS307)、及び対象周波数成分の値を正規化する処理(ステップS308)の少なくともいずれかは省略されてもよい。
1…異常診断装置、
11…制御部、12…記憶部、13…通信インタフェース、
14…入力装置、15…出力装置、16…ドライブ、
91…記憶媒体、
111…取得部、112…演算部、113…診断部、
121…異常診断プログラム、
122…計測データ、123…正常データ、124…演算結果データ、
2…ロボット装置、
21…モータ、22…回転軸、
23…第1プーリ、231…歯、232…窪み、
24…第2プーリ、
25…歯付きベルト、
250…ベルト本体、251…歯

Claims (10)

  1. 検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得する取得部と、
    前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出する演算部と、
    前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断する診断部と、
    を備える、
    異常診断装置。
  2. 前記第2データは、前記検査対象物の正常時における周期的な動作の計測データに対して離散フーリエ変換を適用することにより得られる複数の周波数成分の値であって、前記位相特性を保持した複数の周波数成分の値のうち、少なくとも前記1又は複数の対象周波数成分の値を含むように構成され、
    前記周波数解析は、
    前記第1データに対して離散フーリエ変換を適用することで、前記1又は複数の対象周波数成分を含む複数の周波数成分の各値であって、前記位相特性を保持した各値を算出する変換処理と、
    前記第1データから算出された前記1又は複数の対象周波数成分の値、及び前記第2データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値の差分を計算する前記差分処理と、
    を含む、
    請求項1に記載の異常診断装置。
  3. 前記演算部は、前記周波数解析を実施する前に、前記第1データに対してエンベロープ処理を適用する、
    請求項1又は2に記載の異常診断装置。
  4. 前記診断部は、
    前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値から前記1又は複数の対象周波数成分の強度を算出し、
    算出した前記1又は複数の対象周波数成分の強度が閾値以上であるか否かに基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断する、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  5. 前記演算部は、前記1又は複数の対象周波数成分の周波数に基づいて、前記周波数解析の分解能を決定し、決定した前記分解能に応じた時間幅の区間部分を前記第1データから抽出し、前記第1データの抽出した区間部分に対して前記周波数解析を適用する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  6. 前記検査対象物は、プーリの回転により駆動するように構成された歯付きベルトであって、当該プーリの複数の歯に噛み合う複数の歯と、前記プーリ側の面に前記複数の歯を結合したベルト本体とを備える歯付きベルトであり、
    前記1又は複数の対象周波数成分は、前記歯付きベルトの回転周波数成分である、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  7. 前記演算部は、前記第1データに基づいて、前記歯付きベルトの各歯と前記プーリの各歯との噛み合い周波数成分の強度を算出し、算出した噛み合い周波数成分の強度で前記回転周波数成分の値を正規化する、
    請求項6に記載の異常診断装置。
  8. 前記演算部は、前記1又は複数の対象周波数成分を抽出して、前記周波数解析を実施することで、前記1又は複数の対象周波数成分の値で構成された前記第3データを算出する、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  9. コンピュータが、
    検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得するステップと、
    前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出するステップと、
    前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断するステップと、
    を実行する、
    異常診断方法。
  10. コンピュータに、
    検査対象物の検査時における周期的な動作を計測した結果を時系列に並べた第1データを取得するステップと、
    前記第1データ、及び前記検査対象物の正常時における周期的な動作から得られた第2データの差分を、それぞれに位相特性が保持された状態のまま計算する差分処理を含む周波数解析により、前記検査時及び正常時の前記周期的な動作の相違を示す第3データであって、前記検査対象物の異常に対応する1又は複数の対象周波数成分の値を少なくとも含む第3データを算出するステップと、
    前記第3データに含まれる前記1又は複数の対象周波数成分の値に基づいて、前記検査対象物に異常が発生したか否かを診断するステップと、
    を実行させるための、
    異常診断プログラム。
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