JP2019070528A - 多孔質担体、アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体、標的物の精製方法、及び抗体 - Google Patents

多孔質担体、アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体、標的物の精製方法、及び抗体 Download PDF

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Tomoya Norinobu
智哉 則信
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Abstract

【課題】硬さと靱性とのバランスに優れた多孔質担体を提供すること。【解決手段】(成分A)ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位と、(成分B)炭素数1〜8のアルキル基を側鎖に有するモノマー単位と、を有するポリマーを含み、前記ポリマー中における成分Aと成分Bとの含有割合〔(A):(B)〕が、質量比で95:5〜50:50であり、成分Aの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、0.5〜40質量%であることを特徴とする、多孔質担体。【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質担体、アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体、標的物の精製方法、及び抗体に関する。
アフィニティクロマトグラフィーは、モノクローナル抗体を含めたタンパク質の研究、開発および製造において重要な役割を担っている。アフィニティクロマトグラフィーは、固相担体上のリガンドが標的物に対して高い選択性を有するため、イオンクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィーなどの他のクロマトグラフィーに比べて、優れた収率で且つ高速で経済的な精製が可能となる。また、抗体医薬品の主成分であるモノクローナル抗体は、主に哺乳類培養細胞等を用いて組換え蛋白質として培養液中に発現し、数段のクロマトグラフィーや膜工程により高純度に精製された後に製剤化される。近年の抗体医薬の生産量の増大とともに、高流速での処理に耐えうる多孔質担体が求められている。
また、この培養、精製、製剤化の工程で形成又は残留する凝集体(2量体以上の多量体)が副作用の主要原因となるため、その低減が抗体医薬品生産の重要課題となっている。凝集体の生成抑制やその除去は、培養、精製、製剤化の工程で、複雑な管理手法や添加剤の使用により制御する試みがなされてきた。特に精製工程では、凝集体の生成を抑制する他にその除去が重要である。よって、精製工程では、簡便で効率的な凝集体除去技術の開発が求められてきている(特許文献1〜5)。
国際公開第2008/085988号公報 特表2010−507583号公報 国際公開第2010/019493号公報 国際公開第2010/141039号公報 国際公開第2014/034457号公報
抗体の精製においては高流速での処理が必要となり、高流速下で潰れない耐圧性に優れた多孔質粒子が必要となる。単に硬質な多孔質担体を使用した場合、一定の流速までは圧潰しないが、一定の流速を超えると急に圧潰してしまうか塑性変形してしまいクロマトグラフィー担体として再利用ができないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、硬さと靱性とのバランスに優れた多孔質担体を提供することにある。
また、上述の通り、抗体医薬の製造にあたっては凝集体を除去したいという要望がある。
本発明が解決しようとするもう1つの課題は、硬さと靱性とのバランスに優れ、さらに優れた凝集体の除去効率が得られる多孔質担体やクロマトグラフィー用多孔質担体、精製方法を提供することにある。
本発明が解決しようとする課題は、下記の手段により解決された。
〔1〕 (成分A)ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位と、(成分B)炭素数1〜8のアルキル基を側鎖に有するモノマー単位と、を有するポリマーを含み、前記ポリマー中における成分Aと成分Bとの含有割合〔(A):(B)〕が、質量比で95:5〜50:50であり、成分Aの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、0.5〜40質量%であることを特徴とする、多孔質担体。
〔2〕 成分Aが、芳香族系多官能モノマーに由来するモノマー単位及び多官能(メタ)アクリレート類に由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、上記〔1〕に記載の多孔質担体。
〔3〕 成分Aが、ジビニルベンゼンに由来するモノマー単位、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の多孔質担体。
〔4〕 成分Bが、モノビニルモノマーに由来するモノマー単位である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔5〕 成分Bが、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族系モノマーに由来するモノマー単位及び炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔6〕 前記アルキル基が2価の連結基を介して前記ポリマーの主鎖に結合している、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔7〕 前記アルキル基の炭素数が2〜8である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔8〕 成分Bが、アルキルビニルベンゼンに由来するモノマー単位である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔9〕 前記ポリマーが、さらに(成分C)成分A及び成分Bを除く単官能モノマーに由来するモノマー単位を含む、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔10〕 成分Cの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、20〜99.5質量%である、上記〔9〕に記載の多孔質担体。
〔11〕 成分Cが、グリシジル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、グリセロールモノ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルに由来するモノマー単位、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、ビニルベンジルグリシジルエーテルに由来するモノマー単位、及びスチレンに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、上記〔9〕又は〔10〕に記載の多孔質担体。
〔12〕 粒子状、モノリス状、板状、繊維状又は膜状である、上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の多孔質担体。
〔13〕 上記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の多孔質担体にアフィニティリガンドを結合させたことを特徴とする、アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体。
〔14〕 上記〔13〕に記載のクロマトグラフィー用多孔質担体を用いる、標的物の精製方法。
〔15〕 上記〔13〕に記載のクロマトグラフィー用多孔質担体と、アフィニティリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、前記リガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉した担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含む、標的物の精製方法。
〔16〕 前記工程Bが、アフィニティリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式により解離する工程である、上記〔15〕に記載の精製方法。
〔17〕 上記〔14〕〜〔16〕のいずれかに記載の精製方法により精製された、抗体。
本発明により、硬さと靱性とのバランスに優れた多孔質担体を提供することができた。また、本発明により、硬さと靱性とのバランスに優れ、さらに優れた凝集体の除去効率が得られる多孔質担体やクロマトグラフィー用多孔質担体、精製方法を提供することができた。
<多孔質担体>
本発明の多孔質担体は、(成分A)ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位と、(成分B)炭素数1〜8のアルキル基を側鎖に有するモノマー単位と、を有するポリマーを含み、前記ポリマー中における成分Aと成分Bとの含有割合〔(A):(B)〕が、質量比で95:5〜50:50であり、成分Aの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、0.5〜40質量%であることを特徴とする。以下、まずは本発明の多孔質担体について説明し、その後に本発明の標的物の精製方法(以下、本発明の精製方法ともいう。)について説明する。なお、本明細書において、数値範囲を表すa〜b等の記載は、a以上、b以下と同義であり、a及びbを数値範囲内に含む。
本発明の多孔質担体を構成するポリマーは、水に不溶性のものが好ましい。また、合成高分子が好ましい。
また、上記ポリマーを誘導する各モノマーとしては、スチレン類等の芳香族系モノマー;ビニルアルコール類;(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド類;エチレン類;無水マレイン酸等が挙げられる(以下、これらをモノマー群αと総称する)。また、ポリマーは、これらモノマーに由来するモノマー単位のうち1種を含んでいても2種以上を含んでいてもよく、また、本発明の多孔質担体は、このようなポリマーを1種含んでいても2種以上含んでいてもよい。
これらモノマーの中でも、耐圧性の観点から、芳香族系モノマー、ビニルアルコール類、(メタ)アクリレート類及び(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上のモノマーが好ましく、芳香族系モノマー及び(メタ)アクリレート類から選ばれる1種以上のモノマーがより好ましい。
また、多孔質担体は上記ポリマーを主成分とするものが好ましく、ポリマーの含有量は、多孔質担体全量に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。
(成分A)ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位
ポリビニルモノマーは、1分子中に、2個以上の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)を有するビニルモノマーである。ポリビニルモノマーは、上記モノマー群αに該当するモノマーのうち2個以上の重合性ビニル基を1分子中に有するものであればよいが、芳香族系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレート類及び多官能(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上のモノマーが好ましく、芳香族系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレート類から選ばれる1種以上のモノマーがより好ましい。
以下、当該ポリビニルモノマーを、ヒドロキシ基非含有ポリビニルモノマーと、ヒドロキシ基含有ポリビニルモノマーとに分けて説明する。なお、ポリビニルモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ヒドロキシ基非含有ポリビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族系多官能モノマー;ブタジエン、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリル化合物などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でも、ヒドロキシ基非含有ポリビニルモノマーとしては、多官能(メタ)アクリレート類、芳香族系多官能モノマーが好ましい。また、多官能(メタ)アクリレート類としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。
また、上記ヒドロキシ基非含有ポリビニルモノマーに含まれる重合性ビニル基の個数としては、1分子中に、2〜5個が好ましく、2又は3個がより好ましい。
ヒドロキシ基含有ポリビニルモノマーとしては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、各種糖類の2置換以上の(メタ)アクリル酸エステル類、多価アルコールの(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類としては、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ブタントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イノシトールジ(メタ)アクリレート、イノシトールトリ(メタ)アクリレート、イノシトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
各種糖類の2置換以上の(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールトリ(メタ)アクリレート、マンニトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらに、ヒドロキシ基含有ポリビニルモノマーとしては、上記例示したものの他に、ジアミノプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グルコサミンなどのアミノアルコールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応物なども挙げることができる。
また、上記ヒドロキシ基含有ポリビニルモノマーに含まれる重合性ビニル基の個数としては、1分子中に、2〜5個が好ましく、2又は3個がより好ましく、2個が特に好ましい。
これらの中でも、ポリビニルモノマーとしては、比較的少量の使用で良好な多孔性と機械的強度が得られ、エポキシ基含有モノビニルモノマーの使用量を制限することが少ないなどの観点から、ヒドロキシ基非含有ポリビニルモノマーが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが特に好ましい。
成分Aの含有量は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、0.5〜40質量%である。ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位の含有量が0.5質量%未満であると、固相担体の機械的強度が低くなるか、多孔質粒子の形成が困難になる。また、40質量%を超えると、親水性が低下して、HCPの低減効果が得られず、また、アフィニティリガンドの活性が低下することがある。
成分Aの含有量は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、また、ポリマー中の全モノマー単位に対して、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
ポリマー中の各モノマー単位の含有量は、NMR等により測定すればよい。
(成分B)炭素数1〜8のアルキル基を側鎖に有するモノマー単位
成分Bは、重合させたときに側鎖となる部分に炭素数1〜8のアルキル基を有するモノマーに由来する。当該モノマーのアルキル基の炭素数が8を超えると、非特異吸着が増加する。
上記モノマーとしては、精製時の不純物の非特異吸着を防ぐ点から、非イオン性モノマーが好ましい。また、モノビニルモノマーが好ましい。
成分Bを誘導するモノマーとしては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート類、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド類、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族系モノマーが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でも、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート類、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族系モノマーが好ましい。
炭素数1〜8のアルキル基としては、炭素数2〜8のアルキル基が好ましい。また、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基は、親水性基などの置換基を有していないものが好ましい。
また、上記アルキル基は、2価の連結基を介してポリマーの主鎖に結合しているのが好ましい。2価の連結基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基(フェニレン基等)、エステル結合、アミド結合などが挙げられる。
炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート類としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族系モノマーとしては、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族ビニル化合物類が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基を有するスチレン系モノマーがより好ましい。
また、上記芳香族系モノマーに由来するモノマー単位としては、下記式(5)で表されるモノマー単位が好ましい。
Figure 2019070528
〔式(5)中、
8は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、
9は、炭素数1〜8のアルキル基を示し、
tは、1〜5の整数を示す。〕
式(5)中、R8で示されるアルキル基の炭素数としては、1または2が好ましい。また、当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でも環状でもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
また、R8としては、水素原子が好ましい。
9で示されるアルキル基の炭素数は、固相担体の疎水性を抑える観点および適度な疎水性相互作用を発現させる観点から、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1または2である。
また、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基は、親水性基などの置換基を有していないものが好ましい。
また、tは、1〜5の整数を示すが、固相担体の疎水性を抑える観点および適度な疎水性相互作用を発現させる観点から、1〜3が好ましく、1がより好ましい。なお、tが2〜5の整数の場合、t個のR9は同一であっても異なっていてもよい。
芳香族ビニル化合物類を誘導するモノマーとしては、アルキルビニルベンゼンが特に好ましく、例えば、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、エチルビニルベンゼン(4−エチルスチレン)、4−n−ブチルスチレン、4−イソブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−イソプロピルスチレンが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
成分Bの含有量としては、ポリマー中の全モノマー単位に対して、40質量%以下が好ましい。成分Bの含有量を40質量%以下とすることにより、不純物の非特異吸着が改善される。
また、成分Bの含有量は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、ポリマー中の全モノマー単位に対して、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。このような成分Bの含有量が20質量%程度の場合でも本発明の所望の効果が得られる。
また、上記ポリマー中における成分Aと成分Bとの含有割合〔(A):(B)〕は、質量比で95:5〜50:50である。成分Aの含有割合が95質量部を超えると粒子の脆性が高くなり、割れが生じやすくなる。一方で、成分Aの含有割合が50質量部未満であると、粒子表面に成分Bに由来するアルキル基が多数存在し、夾雑物が多孔質担体表面に吸着しやすくなる。
すなわち、含有割合〔(A):(B)〕が95:5〜50:50の範囲内であると、粒子の割れが抑制されるだけでなく、抗体結合性のリガンドを使用した際には、成分Bが有するアルキル基と抗体との相互作用により、担体の抗体がより強く保持され、凝集体の方が先に溶出される。
本発明においては、含有割合〔(A):(B)〕は、質量比で、90:10〜55:45が好ましく、85:15〜55:45がより好ましく、80:20〜60:40が特に好ましい。
(成分C)
また、上記ポリマーは、さらに(成分C)成分A及び成分Bを除く単官能モノマーに由来するモノマー単位を含むことが好ましい。
成分Cの含有量としては、ポリマー中の全モノマー単位に対して、20〜99.5質量%が好ましい。上記の範囲内であれば、親水性、機械的強度に優れた多孔質担体が得られる。
また、成分Cの含有量は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、ポリマー中の全モノマー単位に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
また、成分Cとしては、(成分C−1)エポキシ基含有モノビニルモノマーに由来するモノマー単位、(成分C−2)エポキシ基を含有しないモノビニルモノマーに由来するモノマー単位が挙げられる。上記ポリマーは、これらモノマー単位のうち1種を含んでいても2種以上を含んでいてもよい。
(成分C−1)エポキシ基含有モノビニルモノマーに由来するモノマー単位
エポキシ基含有モノビニルモノマーは、1分子中に、1個の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)と、1個以上のエポキシ基とを有するモノマーである。エポキシ基含有モノビニルモノマーは、固相担体に適切な量のエポキシ基を導入し、適切なリガンド結合量を得るための成分である。
エポキシ基含有モノビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリル−ω−グリシジルポリエチレングリコール等のヒドロキシ基非含有(メタ)アクリル酸エステル類;グリセリンモノ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルベンジルグリシジルエーテル、イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル、ビニルフェニルブチルグリシジルエーテル、ビニルベンジルオキシエチルグリシジルエーテル等の芳香族モノビニル化合物の他、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、エポキシ基含有モノビニルモノマーとしては、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシ基含有芳香族モノビニル化合物が好ましく、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルがさらに好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、エポキシ基含有芳香族モノビニル化合物の中では、ビニルベンジルグリシジルエーテルが好ましく、(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテルが特に好ましい。
また、エポキシ基含有芳香族モノビニル化合物としては、エポキシ基含有スチレン系モノビニル化合物が好ましく、具体的には、式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2019070528
〔式(4)中、
4は、置換または非置換の炭素数1または2のアルカンジイル基を示し、
5は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、
6は、炭素数2または3のアルカンジイル基を示し、
7は、炭素数1〜10のアルキル基を示し、
mおよびnは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示し、
qは、0〜4の整数を示す。〕
式(4)中、R4で示されるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が挙げられる。これらの中でも、アフィニティリガンドを結合させる際の反応性を向上させる観点から、メタン−1,1−ジイル基が好ましい。なお、アルカンジイル基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
式(4)中、R5は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R5で示されるアルキル基の炭素数としては、1または2が好ましい。また、当該アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5としては、重合反応の反応性の観点から、水素原子が好ましい。
また、R6で示されるアルカンジイル基としては、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基が挙げられるが、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
また、R7で示されるアルキル基の炭素数は、固相担体の疎水性を抑える観点から、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1または2である。
また、上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基としては、例えば、上記R5で示されるアルキル基と同様のものが挙げられる。
mおよびnは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示すが、mとしては、0〜3の整数が好ましい。また、nとしては、0〜3の整数が好ましく、0または1がより好ましい。なお、nが2〜6の整数の場合、n個のR6は同一であっても異なっていてもよい。
また、qは、0〜4の整数を示すが、固相担体の疎水性を抑える観点から、0または1が好ましい。なお、qが2〜4の整数の場合、q個のR7は同一であっても異なっていてもよい。
なお、担体を順相懸濁重合により粒子状にする場合には、エポキシ基含有モノビニルモノマーとしては、開環エポキシ基量のコントロールが容易となることから、水不溶性のものが好ましい。ここで水不溶性とは水100mLに対して室温(25℃)で10g以上は溶解しないことをいう。なお、エポキシ基含有モノビニルモノマーは市販品を用いてもよく、公知の方法に従い合成して使用してもよい。
成分C−1の含有量としては、ポリマー中の全モノマー単位に対して、20〜99.5質量%が好ましい。上記の範囲内であれば、親水性、機械的強度に優れた多孔質担体が得られる。
また、成分C−1の含有量は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、ポリマー中の全モノマー単位に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
(成分C−2)エポキシ基を含有しないモノビニルモノマーに由来するモノマー単位
エポキシ基を含有しないモノビニルモノマーは、1分子中に、1個の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)を有し、エポキシ基を含有しないビニルモノマーである。以下、エポキシ基を含有しないモノビニルモノマーを、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基非含有モノビニルモノマーと、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニルモノマーとに分けて説明する。
エポキシ基を含有しないヒドロキシ基非含有モノビニルモノマーとしては、精製時の不純物の非特異吸着を防ぐ点から、非イオン性モノマーが好ましい。このような非イオン性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンのような芳香族ビニル化合物が挙げられる。
また、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニルモノマーとしては、例えば、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、イノシトールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニルモノマーに含まれるヒドロキシ基の個数としては、1分子中に、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましい。
これらの中でも、エポキシ基を含有しないモノビニルモノマーとしては、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニルモノマーが好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
成分C−2の含有量としては、ポリマー中の全モノマー単位に対して、40質量%以下が好ましい。成分C−2の含有量を40質量%以下とすることにより、ヒドロキシ基含有モノビニルモノマーの場合には多孔質粒子の親水性が向上し、凝集が抑制され、アフィニティリガンドの活性が高くなり標的物の動的結合量が改善される。また、機械的強度も改善される。
成分C−2の含有量としては、ポリマー中の全モノマー単位に対して、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。また、成分C−2の含有量は0質量%でもよいが、成分C−2を含有する場合は、ポリマー中の全モノマー単位に対して、5質量%以上が好ましい。
(担体の形状)
本発明の多孔質担体は、単位時間当たりの処理容量の観点から、表面積が大きいことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。
担体の形態としては、粒子状、モノリス状、板状、繊維状、膜状(中空糸を含む)などいずれでもよく、任意の形態を選ぶことができる。水不溶性担体としては、多孔性ビーズ、モノリス又は膜が好ましく、特に水不溶性の担体上に配置された抗体アフィニティリガンドと成分Bにおけるアルキル基とが協奏的に機能するために、一定の滞留時間が得られる多孔性ビーズ(多孔質ビーズ)が好ましい。
本発明の多孔質担体の円形度0.95以上の粒子分布としては、60〜100%が好ましく、70〜100%がより好ましく、80〜100%が特に好ましい。
なお、円形度、その分布は、実施例に記載の方法で測定された値を意味する。
また、本発明の多孔質担体の体積平均粒径としては、標的物の動的結合量と圧力特性の観点から、35〜100μmが好ましく、40〜90μmがより好ましく、40〜80μmが特に好ましい。
上記体積平均粒径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定した値をいい、具体的には実施例に記載の方法で測定された値を意味する。
また、体積平均粒径の変動係数は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。
また、本発明の多孔質担体の比表面積としては、70m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上がさらに好ましい。本発明の多孔質担体は、固相担体の比表面積が上記のような範囲であると、標的物の動的結合量が高く、しかも凝集体の除去に優れた担体が得られる。
また、本発明の多孔質担体の体積平均細孔径としては、標的物の動的結合量と凝集体除去能の観点から、10〜300nmが好ましく、20〜200nmがより好ましく、30〜100nmが特に好ましい。
上記変動係数、比表面積、体積平均細孔径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定した値をいう。
<アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体>
本発明のアフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体は、本発明の多孔質担体にアフィニティリガンドを結合させたことを特徴とする。なお、本明細書においては、このアフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体を、本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体とも称する。
本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体としては、円形度0.95以上の粒子分布、体積平均粒径、変動係数、比表面積、体積平均細孔径が上記多孔質担体と同様の範囲であるものが好ましい。
(アフィニティリガンド)
本発明におけるアフィニティリガンドとは、抗原と抗体の結合に代表される、特異的な分子間の親和力に基づいて、ある分子の集合から標的(目的)の分子を選択的に捕集(結合)する物質を示す。本発明において、アフィニティリガンドは、標的物と特異的に結合するものであればよいが、例えば、タンパク質、核酸、ペプチド、酵素、キレート化合物、レセプター、アプタマー、抗体、抗原、ビタミン、金属イオン等が挙げられる。斯様なアフィニティリガンドの中でも、タンパク質、核酸、ペプチド、酵素、キレート化合物が好ましく、タンパク質、ペプチドがより好ましい。また、精製の標的物を抗体とする抗体アフィニティリガンドの中では、イムノグロブリン結合タンパク質がより好ましい。
本発明に用いることができる抗体アフィニティリガンドは、抗体又は抗体の定常領域であるFc含有分子に特異的に結合しうる特徴を有していれば特に限定されないが、ペプチド性リガンド、蛋白質性リガンド、化学合成性リガンド(合成化合物)が好ましい。標的分子に対する特異性の視点からペプチド性又は蛋白質性リガンドが更に好ましい。中でも、抗体アフィニティリガンドとしては、プロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、抗体結合性合成ペプチドリガンド及びそれら類縁物質であることが好ましい。抗体アフィニティリガンドとしては、プロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれら類縁物質がより好ましく、プロテインA及びその類縁物質が最も好ましい。抗体アフィニティリガンドは、標的分子結合ドメイン(ペプチドモノマー又は蛋白質、単ドメイン)を有していれば特に制限されないが、2個以上のドメインが連結された多量体ペプチド又は蛋白質(複ドメイン)が好ましく、2〜10個がより好ましく、2〜8個、更に2〜6個が好ましく、特に3〜6個のドメインが連結された多量体蛋白質であることが好ましい。これらの多量体蛋白質は、単一の標的分子結合ドメインの連結体であるホモダイマー、ホモトリマー等のホモポリマーであってもよいし、標的分子が同一であれば、複数種類の標的分子結合ドメインの連結体であるヘテロダイマー、ヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。
抗体アフィニティリガンドの標的分子結合ドメインを連結する方法としては、多量体蛋白質の3次元立体構造を不安定化しない方法が好ましく、たとえば、ドメイン配列の末端アミノ酸を介する連結方法、ドメイン配列のアミノ酸残基を介さず連結する方法、1又は複数のドメイン配列以外のアミノ酸残基で連結する方法が挙げられ、これらの方法に限定されるものではない。
抗体アフィニティリガンドとしては、多量体蛋白質を1つの構成成分として、機能の異なる他の蛋白質と融合させた融合蛋白質を好ましく用いることができる。融合蛋白質としては、アルブミンやGST(グルタチオンS一トランスフェラーゼ)が融合した蛋白質やDNAアプタマー等の核酸、抗生物質などの薬物、PEG(ポリエチレングリコール)などの高分子が融合されている蛋白質等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アフィニティリガンド結合量は、動的結合容量の観点から、担体の乾燥重量1gあたり、好ましくは10〜200mg、より好ましくは25〜160mg、更に好ましくは30〜140mg、特に好ましくは40〜100mgである。アフィニティリガンド結合量は、後述する実施例と同様の方法で測定すればよい。
アフィニティリガンドを多孔質担体に結合させる方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、アフィニティリガンドのアミノ基が担体上に導入されたホルミル基を介して合成高分子支持体に結合してもよく、アフィニティリガンドのアミノ基が合成高分子支持体上の活性化されたカルボキシ基を介して担体に結合してもよく、アフィニティリガンドのアミノ基が合成高分子支持体上のエポキシ基を介して担体に結合してもよい。
合成高分子支持体に導入される官能基としては、アフィニティリガンドと共有結合を形成することができる官能基であれば特に限定されないが、例えばエポキシ基(エピクロルヒドリン)、臭化シアン、N,N−ジスクシンイミジル炭酸塩(DSC)などで活性化されるヒドロキシ基、アルデヒド基又は活性化力ルボン酸基(例えば、N一ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、カルボニルジイミダゾール(CDI)活性化エステル)などの反応性官能基(r活性化基)等を挙げることができる(HermansonG.T.他著、rImmobiIizedAffinityLigandTechniques,AcademicPress」、1992年、米国特許第5,874,165号、米国特許第3,932,557号、米国特許第4,772,653号、米国特許第4,210,723号、米国特許第5,250,6123号、欧州特許公開第1352957号、WO2004/074471)。これらの中には、アフィニティリガンドが合成高分子支持体に直接共有結合するものと、直鎖、分岐鎖、又は環状のリンカー又はスペーサーが用いられるものが含まれる。なお、アフィニティリガンドが導入された合成高分子支持体を活性化する場合はアフィニティリガンドと直接反応しない活性化手法が好ましい。
アフィニティリガンドのうち、蛋白質性リガンドを担体に固定化する方法は、蛋白質の官能基の一部と担体の官能基の一部を反応させる方法を用いることができるが、その反応に利用できる蛋白質側の主な官能基(活性基)は、N末端アミノ酸およびリジン(Lys)側鎖のアミノ基;システイン(Cys)側鎖のチオール基;C末端アミノ酸やグルタミン酸(GIu)側鎖、アスパラギン酸(Asp)側鎖のカルボキシ基等があげられるがこれらに限定されるものではない。
また、リガンドの配向性を制御して蛋白質性抗体アフィニティリガンドを合成高分子支持体に固定化する方法として、C末端にシステインを有するプロテインAを利用する方法が提案されており(米国特許第6,399,750号、LjungquistC.他著,rEur.J.Biochem.」,1989年,186巻,557−561頁)、これを採用してもよい。
リンカーを利用する固定化技術としては、合成高分子支持体とアフィニティリガンドとの距離を確保し、立体障害を排除して高性能化を図る方法の他、リンカー又はスペーサーの中に官能基(例えば、帯電アミン)を付与、形成させる方法等が挙げられる。
また、抗体アフィニティリガンドの固定化時にリンカー又はスペーサー部分に抗体アフィニティリガンドを効果的に集積し、固定化収率の向上による分離性能の向上が検討されてきている。たとえば、リンカーアームの一部としてNHS活性化されたカルボン酸で誘導体化されたアガロース担体への蛋白質性リガンドの固定化技術が挙げられ(米国特許第5,260,373号、特開2010−133733号公報、特開2010−133734号公報)、これを採用してもよい。
また、リンカーやスペーサーとは別に担体に会合性基を利用し、アフィニティリガンドを支持体上に集積した後に、会合性基とアフィニティリガンドの間に共有結合を形成させずに支持体上に抗体アフィニティリガンドを個別に固定化する方法も提案されており(特開2011−256176号公報)、これを採用してもよい。
<標的物の精製方法>
本発明の精製方法は、本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体を用いることを特徴とするものである。本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体を用いる以外は常法と同様にして行えばよい。
具体的には、本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体と、アフィニティリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、前記リガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉した担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含む方法が挙げられる。
また、例えば標的物が凝集しやすい抗体のようなものである場合、標的物の単量体と標的物の凝集体との混合物から単量体を選択的に分離する必要があることがある。その場合、本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体の表面と、標的物の単量体又は凝集体との物理的相互作用の差異を利用して、標的物の単量体を選択的に分離することができる。いわば、アフィニティリガンドとアルキル基とを利用したミックスモード用担体として本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体を使用することができる。
その一実施態様としては、前記工程Bが、アフィニティリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式(又はその両方の組合せ)により解離する工程である、ことが好ましく例示できる。これにより、イオン強度を変化させずに一定に保ったままでも分離能はやや低下するものの単量体と凝集体とを分離、溶出させることができる。
本発明の精製方法は、単量体と凝集体との分離特性を示すほか、アフィニティ精製工程とイオン交換基による精製工程との2工程のクロマトグラフィー操作を1工程に短縮可能で、使用する緩衝液の種類および使用量、更に、作業時間の短縮が期待できる。
また、本発明の精製方法は、抗体アフィニティリガンドからの標的分子が解離される狭いpH域(好ましくはpH3〜4、より好ましくはpH3.1〜3.9、さらに好ましくはpH3.2〜3.8)で、イオン強度(好ましくは10〜500mM、より好ましくは15〜400mM、さらに好ましくは20〜350mM、前記範囲で段階的に高くなる塩濃度を2種以上使用する「ステップワイズ方式」又は前記範囲で勾配的に高くなる塩濃度を使用する「グラジェント様式」)の設定により単量体含量の高い溶出画分を得ることが可能である。
特にモノクローナル抗体の精製においては、当該解離pHは標的分子の等電点から大きく離れているため、抗体毎に解離イオン強度の幅に大きな差異がなく、狭い範囲で各種標的分子の使用条件の設定が可能であることが期待できる。更に、抗体アフィニティリガンドとしては、解離pH域を更に狭く設定可能であるほか、アルカリCIP洗浄の使用により、効果的な洗浄も可能であるため、安定的なプロセス構築の観点からは改変プロテインAの利用が好ましい。
本発明において精製される標的分子としては、例えば免疫グロブリンGおよびその類縁体(誘導体を含む)であり、一般的に抗体と称される分子の他、免疫グロブリン分子の定常領域であるFc領域と他の機能性蛋白質又はペプチドを融合してなるFc融合蛋白質(Fc含有分子)が含まれる。これらは、抗体医薬品の原料として利用される。
以下に、本発明の精製方法の詳細な説明を、標的分子が免疫グロブリンGの場合について例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の標的物の精製方法は、クロマトグラフィー用多孔質担体と、アフィニティリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aを含む。免疫グロブリンGを含む蛋白質溶液のpHが中性付近となるように調整した後、該溶液を本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体を充填したカラムに通過させ、アフィニティリガンドを介して免疫グロブリンGを特異的に担体に吸着させる。
たとえば、プロテインAをアフィニティリガンドとする場合、その負荷pHは6以上が好ましく、6.3以上9以下がより好ましく、6.5以上8.5以下がさらに好ましい。哺乳類培養細胞により生産される免疫グロブリンGの精製において、特にイオン強度の調製を必要としないほか、あらかじめイオン強度を上げて更に非特異吸着を抑制することもできる。
本発明においては、さらに洗浄工程を有することが好ましい。洗浄工程では、アフィニティリガンドが機能する条件範囲の緩衝液を適量通過させ、カラム内部を洗浄する。すなわち、pHの好ましい範囲は前記負荷時と同じ範囲(中性付近のpH)であってもよく、例えば、6以上が好ましい。この時点では標的分子である免疫グロブリンGは本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体に吸着されている。この時、中性付近のpHでイオン強度や組成物の最適化により、不純物を効果的に除去できる場合がある。負荷、洗浄時において、中性付近のpHにすると共に一定以上のイオン強度の洗浄液の利用が好ましく、この過程で該分離マトリックスおよび/又は、免疫グロブリンGを介して非特異的にカラムに残留する不純物を洗浄することができる。イオン強度は、例えば、0.2M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましい。
また、この精製方法が上記工程Bを含む場合、上記と同様に、工程Bは、ステップワイズ方式、グラジェント方式、これらの組み合わせのいずれでもよい。
工程Bでは、中性付近でイオン強度が低い緩衝液にカラムを置換し、解離時の陽イオン交換基によるイオン強度依存的解離機能の発現に備える。
解離液のpHは抗体アフィニティリガンドからの免疫グロブリンGの解離pHが適用できる。当該pHは、アフィニティリガンドと免疫グロブリンGの種類により決定される分離条件を中心に決定される。
抗体アフィニティリガンドにプロテインAを用いた場合は、pHは2〜6の間に設定されることが好ましい。ただし、標的分子の酸変性を避ける目的から、pH3.0以上がより好ましく、pH3.3以上がより好ましく、pH3.5以上が特に好ましい。pHは、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。アルカリ耐性型のプロテインAリガンドを使用する場合は、一般的にその解離pHは3.5〜4.0の間を中心に設定されるが、これに限定されるものではない。
また、解離イオン強度は、抗体アフィニティリガンドと成分Bに由来するアルキル基の導入比率に依存するほか、単位体積当たりの免疫グロブリンGの負荷量にも依存するが、グラジエント実験やステップワイズ解離実験により最適化ポイントを容易に設定しうる。
本発明により調製されるクロマトグラフィー用多孔質担体からの抗体解離は、塩濃度グラジエント方式でもステップワイズ方式でも適用可能であるが、溶出液量の低減を目的にした場合はイオン強度によるステップワイズ方式が好ましい。更に、操作の単純化のためには、ワンステップで抗体の回収と高単量体含量化を達成できる条件設定が好ましい。
本発明により調製されたクロマトグラフィー用多孔質担体を用いて精製された免疫グロブリンGは、高いモノマー選択性を示し、その溶出液中のモノマー含量が高い。
本発明のクロマトグラフィー用多孔質担体を用いることにより、特異性の高いアフィニティ精製と、主に陽イオン交換クロマトグラフィーにより達成しうるモノマー含量の向上を、高回収率を維持したまま単一のクロマト操作で効率的に達成可能であることから、後段プロセスヘの負荷の低減が可能となり、プロセス全体の収率向上と単量体含量の向上に貢献できる。すなわち、本発明により、抗体医薬品の製造プロセスの生産性向上と高純度化に寄与できる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)448gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA−217)2.69gを添加し、加熱撹拌してポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.045gを添加し、撹拌して水溶液Sを調製した。
一方、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36g及びスチレン(和光純薬工業製)14.15gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)29.38gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
次いで、前記水溶液Sを、500mLセパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2’−アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.34gを添加し、内温を86℃にした。
(2)その後、86℃に温度を維持したまま、3時間撹拌を行った。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子分散液を得た。
(3)その後、多孔質粒子分散液200mLに酢酸ナトリウム28.0gを加え、その5分後に、Br2/H2O(飽和濃度)を85mL加え、15分間反応させ、蟻酸ナトリウム0.5gを加えた。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水で洗浄し、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、活性化多孔質粒子分散液を得た。
次いで、得られた活性化多孔質粒子5mL(沈降体積)をサクションドライし、水を加えて計7mLの懸濁液とした。この懸濁液に5N水酸化ナトリウム水溶液0.8mL、NaBH4 24mg、及びエピクロロヒドリン4mLを加え、25℃で8時間振とうした。上記の反応液を純水、エタノール、純水の順で濾過洗浄を行い、エポキシ化多孔質粒子を得た。次に、粒子の濃度が10質量%となるようにエポキシ化多孔質粒子を純水に分散させ、エポキシ化多孔質粒子分散液を得た。
(4)次いで、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)0.15gを、1.2M 硫酸ナトリウム/0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)40mLに分散させプロテインA分散液を得て、このプロテインA分散液にエポキシ化多孔質粒子分散液(粒子乾燥質量換算で1g相当)を添加した。この分散液を25℃で5時間振とう撹拌し、プロテインAを粒子に固定した。
次いで、生成したプロテインA固定粒子を、1.0M 2−メルカプトエタノール(和光純薬工業社製)/0.1M 硫酸ナトリウム(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を開環させた。さらに、得られた未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を、0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤1を得た。
(実施例2)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)14.15gからなる単量体組成物を、2−オクタノン(東洋合成社製)29.38gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)0.15gを、1.2M 硫酸ナトリウム/0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)40mLに分散させプロテインA分散液を得て、このプロテインA分散液に上記多孔質粒子分散液(粒子乾燥質量換算で1g相当)を添加した。この分散液を25℃で5時間振とう撹拌し、プロテインAを粒子に固定した。
次いで、生成したプロテインA固定粒子を、1.0M 2−メルカプトエタノール(和光純薬工業社製)/0.1M 硫酸ナトリウム(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を開環させた。さらに、得られた未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を、0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤2を得た。
(実施例3)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.59g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)3.41g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)10.94gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)29.39gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤3を得た。
(実施例4)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)6.29g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)5.39g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)6.29gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)29.39gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤4を得た。
(実施例5)
実施例1の工程(1)において、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)0.90g、n−オクチルアクリレート(共栄社化学社製)0.72g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)16.33gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)29.39gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤5を得た。
(実施例6)
実施例1の工程(1)において、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)6.41g、シクロヘキシルメタクリレート(共栄社化学社製)0.37g及び4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)11.54gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)29.37gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤6を得た。
(実施例7)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.62g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.91g及びグリセロールモノメタクリレート(三菱ガス化学社製)13.58gからなる単量体組成物を、ジイソブチルケトン(三井化学社製)29.38gに溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、得られた多孔質粒子5mL(沈降体積)をサクションドライし、水を加えて計7mLの懸濁液とした。この懸濁液に5N水酸化ナトリウム水溶液0.8mL、NaBH4 24mg、及びエピクロロヒドリン4mLを加え、25℃で8時間振とうした。上記の反応液を純水、エタノール、純水の順で濾過洗浄を行い、エポキシ化多孔質粒子を得た。次に、粒子の濃度が10質量%となるようにエポキシ化多孔質粒子を純水に分散させ、エポキシ化多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を得た。
次いで、未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を、1.0M 2−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)/0.1M 硫酸ナトリウム(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を開環させた。さらに、得られた未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を、0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤7を得た。
(実施例8)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)2.70g、1−エチル−4−ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)1.80g及び(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル(東レ・ファインケミカル社製)13.49gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)21.52g及び2−オクタノン(東洋合成社製)7.35gの混液に溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤8を得た。
(比較例1)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)5.49g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)12.80gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)21.52g及び2−オクタノン(東洋合成社製)7.35gの混液に溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤9を得た。
(比較例2)
実施例1の工程(1)において、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)5.34g、イソブチルメタクリレート(共栄社化学社製)7.11g及び4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)5.34gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)21.50g及び2−オクタノン(東洋合成社製)7.34gの混液に溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤10を得た。
(比較例3)
実施例1の工程(1)において、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)6.29g、ラウリルメタクリレート(共栄社化学社製)5.39g及び(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル(東レ・ファインケミカル社製)6.29gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)21.50g及び2−オクタノン(東洋合成社製)7.34gの混液に溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤11を得た。
(比較例4)
実施例1の工程(1)において、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)6.41g、イソブチルメタクリレート(共栄社化学社製)0.18g及び(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル(東レ・ファインケミカル社製)11.73gからなる単量体組成物を、アセトフェノン(井上香料製造所社製)21.50g及び2−オクタノン(東洋合成社製)7.34gの混液に溶解させ、単量体溶液を調製した以外は、実施例1の工程(1)及び(2)と同様の操作を行い、多孔質粒子分散液を得た。
その後、実施例2と同様の操作でプロテインAの固定、未反応のエポキシ基の開環、及び洗浄を実施し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤12を得た。
試験例1(粒径の測定)
各実施例および比較例で得られたアフィニティクロマトグラフィー用充填剤の平均粒子径を、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製 LS13320)により測定した。結果を表1、2に示す。
試験例2 (円形度分布の評価)
各実施例および比較例で得られたアフィニティクロマトグラフィー用充填剤を純水で固形分濃度10質量%に調整し、定量制御ダイヤフラムポンプ(タクミナ社製)を用いて6L/minの吐出速度で60回の循環処理を行った。
その後、循環処理後のアフィニティクロマトグラフィー用充填剤を、固形分濃度が2.5質量%程度となるように水で希釈し、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置(型番 FPIA−3000)を用いてトータルカウント500個にセットして各粒子の円形度(=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)×100)を測定した。
次いで、全測定対象粒子のうち円形度0.95以上の粒子の個数を全測定粒子数で除することにより円形度0.95以上の粒子分布(=円形度0.95以上の粒子数/測定粒子数×100)を算出し、以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
(円形度分布の評価基準)
80%以上:良
80%未満:不良
試験例3 (プロテインA結合量の定量)
各実施例および比較例で得られたアフィニティクロマトグラフィー用充填剤に結合したリガンドであるプロテインAの結合量を、ビシンコニン酸(BCA)試薬を用いて定量した。具体的には、固形分換算で1mgの充填剤をテストチューブに採取し、これについてThermoFisher Scientific社のBCA Protein Assay KitでプロテインAの結合量を定量した。反応は、37℃で30分間、転倒混和することによって行った。検量線は、担体に結合させたプロテインAと同一のものを用いて作成した。結果を表1、2に示す。
試験例4 (DBCの測定)
GEヘルスケア社製AKTAprime plusを用いて、線流速300cm/hrにおけるタンパク質(ヒトIgG抗体、Equitech Bio社製 HGG−1000)に対する実施例および比較例の各充填剤のDBCを測定した。カラム容器は容量4mL(5mmφ×200mm長)のものを、タンパク質は20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液(pH7.5)にタンパク質を5mg/mL溶解したものをそれぞれ使用し、溶出先端10%ブレークスルーのときのタンパク質捕捉量とカラム充填体積からDBCを求め、以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
(DBCの評価基準)
35mg/mL以上:良
35mg/mL未満:不良
試験例5 (HCPと凝集体の定量)
カラム容器(GEヘルスケア社製Tricorn10/50 column)に、実施例及び比較例の各充填剤を、充填高さ約5cmで充填してカラムを作製した。得られたカラムをGEヘルスケア社製AKTA Prime Plusにそれぞれ接続し、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を5カラム容量(カラム容積の5倍)、流速1mL/分にて通液し、平衡化させた。
次いで、モノクローナル抗体Trastuzumabを含有するCHO細胞培養上清を、約23mg抗体/mL担体の負荷量で、流速1mL/分にてカラムに通液した。
次いで、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)、20mMリン酸ナトリウム/1M塩化ナトリウムバッファー(pH7.5)、及び20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を、それぞれ5カラム容量、流速1mL/分にてカラムに順次通液した。
その後、50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)を、流速1mL/分にてカラムに通液し、カラム内に捕捉されていたモノクローナル抗体を溶出させ、Abs.280>100mAuの溶出フラクションを回収した。
そして、分光光度計を用い、回収したフラクション中に含有される抗体濃度(mg/mL)を測定した。また、Cygnus Technologies社製 CHO HCP ELISA kit,3Gを用い、回収したフラクション中に含有されるHost Cell Protein(HCP)の濃度(ng/mL)を測定した。さらにHCPの濃度を抗体濃度で除することにより、単位抗体量当たりのHCP量を算出し、以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
また、各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から抗体含量と抗体収率(YieId)を求めた。また、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めた。精製前後での単量体と凝集体の比率より凝集体除去率を算出した。結果を表1、2に示す。
(HCPの評価基準)
4000ppm以下:良
4000ppm超:不良
(凝集体除去率の評価基準)
80%以上:良
80%未満:不良
試験例6 (圧密線流速の測定)
各実施例および比較例で得られたアフィニティクロマトグラフィー用充填剤を内径16mm、充填高さ100mmとなるようにカラム容器に充填し、このカラムをGEヘルスケアバイオサイエンス社製AKTA pilotに接続した。次いで、線流速100cm/hrで純水の通液を開始して、線流速を50cm/hrずつ1分間毎に段階的に上げていき、一定線流速で流している1分間のあいだに0.05MPaを超える経時的な圧力増加が見られたときの線流速を圧密流速として記録した。3000cm/hrでもこのような圧力増加が見られない場合、測定を中止し、>3000cm/hrと記録した。また、カラムの絶対圧力が1.9MPaに達した場合、上記のような経時的な圧力増加が見られない場合でも測定を中止し、1.9MPaに達したときの線流速を記録した。そして、圧密線流速について以下の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
(圧密線流速の評価基準)
2000cm/hr以上:良
2000cm/hr未満:不良
表1、2中の各記号は以下の化合物を意味する。
(A) DVB:ジビニルベンゼン、TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
(B) EVB:1−エチル−4−ビニルベンゼン、OCAC:n−オクチルアクリレート、CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、IBMA:イソブチルメタクリレート
(B’) LauMA:ラウリルメタクリレート
(C) ST:スチレン、GMA:グリシジルメタクリレート、HBAGE:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、GLM:グリセロールモノメタクリレート、VBGE:(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル
Figure 2019070528
Figure 2019070528

Claims (17)

  1. (成分A)ポリビニルモノマーに由来するモノマー単位と、(成分B)炭素数1〜8のアルキル基を側鎖に有するモノマー単位と、を有するポリマーを含み、
    前記ポリマー中における成分Aと成分Bとの含有割合〔(A):(B)〕が、質量比で95:5〜50:50であり、
    成分Aの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、0.5〜40質量%であることを特徴とする、
    多孔質担体。
  2. 成分Aが、芳香族系多官能モノマーに由来するモノマー単位及び多官能(メタ)アクリレート類に由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の多孔質担体。
  3. 成分Aが、ジビニルベンゼンに由来するモノマー単位、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の多孔質担体。
  4. 成分Bが、モノビニルモノマーに由来するモノマー単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  5. 成分Bが、炭素数1〜8のアルキル基を有する芳香族系モノマーに由来するモノマー単位及び炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  6. 前記アルキル基が2価の連結基を介して前記ポリマーの主鎖に結合している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  7. 前記アルキル基の炭素数が2〜8である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  8. 成分Bが、アルキルビニルベンゼンに由来するモノマー単位である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  9. 前記ポリマーが、さらに(成分C)成分A及び成分Bを除く単官能モノマーに由来するモノマー単位を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  10. 成分Cの含有量が、前記ポリマー中の全モノマー単位に対して、20〜99.5質量%である、請求項9に記載の多孔質担体。
  11. 成分Cが、グリシジル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、グリセロールモノ(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルに由来するモノマー単位、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位、ビニルベンジルグリシジルエーテルに由来するモノマー単位、及びスチレンに由来するモノマー単位から選ばれる1種以上である、請求項9又は10に記載の多孔質担体。
  12. 粒子状、モノリス状、板状、繊維状又は膜状である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多孔質担体。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の多孔質担体にアフィニティリガンドを結合させたことを特徴とする、
    アフィニティクロマトグラフィー用多孔質担体。
  14. 請求項13に記載のクロマトグラフィー用多孔質担体を用いる、
    標的物の精製方法。
  15. 請求項13に記載のクロマトグラフィー用多孔質担体と、アフィニティリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、
    前記リガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉した担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含む、
    標的物の精製方法。
  16. 前記工程Bが、アフィニティリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式により解離する工程である、請求項15に記載の精製方法。
  17. 請求項14〜16のいずれか1項に記載の精製方法により精製された、抗体。
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