JP2019069705A - 乗物用シート - Google Patents
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Abstract
Description
シートクッション4は、乗員の着座が可能な上面視で略矩形の部材であり、上述の基本構成4F,4P,4Sを有している。そしてシートクッション4では、シートパッド4P(詳細後述)が、シートフレーム4F上に配置されてシートカバー4S(詳細後述)で被覆されている。ここでシートフレーム4F(図示省略)は、典型的に上方視で略矩形の枠体であり、金属や硬質樹脂などの剛性に優れる素材にて形成できる。またシートパッド4Pの表側となる上面には、後述する着座部4Paが設けられており、この着座部4Paの適宜の位置に乗員が着座することとなる。この種のシート構成では、シートパッド4Pの着座性等を向上させるなどして、乗物用シート2の性能向上を図ることが望まれている。特に乗員が着座部4Paに着座した際に、この着座部4Paが部分的に乗員側に過度に突出することは、シートの着座性向上の観点などから極力回避すべきである。そこで本実施例では、後述する構成によって、シートパッド4Pが乗員からの押圧を受けた際に着座部4Paが部分的に乗員側に大きく突出することを極力回避しつつ、乗物用シート2の性能向上を図ることとした。以下、各構成について詳述する。
シートパッド4Pは、図2を参照して、シートクッション4の外形をなす上面視で略矩形の部材であり、後述する付属部材50が取付けられている。ここでシートパッド4Pの材質は、乗員を弾性的に支持可能である限り特に限定しないが、ポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂を例示できる。そしてシートパッド4Pの表側となる上面は、着座部4Paと、右側土手部4Pbと、左側土手部4Pcと、後側土手部4Pdとに区分けでき、さらに後述する複数の溝部(31〜34,36,38)が設けられている。ここで着座部4Pa(詳細後述)は、シート幅方向である左右方向の中央に形成されている部位であり、後述する複数の領域(11〜13)に区分けされている。また各土手部4Pb,4Pcは、着座部4Paの右方と左方において相対的に上側に突出している部位であり、旋回走行時等に乗員の側方を支持することができる。そして後側土手部4Pdは、着座部4Paの後側に位置する部分であり、上方視においてシート幅方向に長尺とされた略矩形とされている。この後側土手部4Pdは、左右の土手部4Pb,4Pcと同様に上方に突出しており、後述する着座部4Paよりも一段高くされている。そして後側土手部4Pdの前面側は、前方に向かうにつれて次第に下方に向けて傾斜している。また後側土手部4Pdの右側は、右側土手部4Pbの後部につながっているとともに、後側土手部4Pdの左側は、左側土手部4Pcの後部につながっている。
着座部4Paは、図2を参照して、左右の土手部4Pb,4Pcの間で適度な幅寸法を有して前後方向に延びているとともに、前方領域10と、第一領域11と、第二領域12と、中央領域13とに区分けされている。前方領域10は、着座部4Paの前部を構成する領域であり、上方視においてシート幅方向に長尺とされた略矩形をなし、さらに前方領域10の表面は概ね平坦とされている。また前方領域10の前縁は左右に直線的に延び、前方領域10の後縁は、後方に向けて凸の円弧形状をなして左右に延びている。そして第一領域11と第二領域12と中央領域13は、前方領域10を除く着座部4Pa部分を構成する領域であり、シート前後方向において前方領域10と後側土手部4Pdとの間に配置されている。
第一領域11と第二領域12は、図2を参照して、左右対称となるように着座部4Paの左右に分かれて配置されている。第一領域11は、着座部4Paの右側に配置されている前後に長尺な上方視で略矩形の領域であり、前方に向かうにつれて次第に左側に張出している。また第二領域12は、着座部4Paの左側に配置されている前後に長尺な上方視で略矩形の領域であり、前方に向かうにつれて次第に右側に張出している。そして第一領域11の後部(HP)と第二領域12の後部(HP)は、各々、着座状態の乗員臀部が配置される部分であり、この乗員臀部からの押圧によって下方(裏側)に向けて凹み変形することが予定されている。また図3及び図4を参照して、第一領域11の表面と第二領域12の表面とは、各々、概ね平坦とされて前後方向に延長しているとともに、概ね上下の高さ位置が同一となるように設定されている。すなわちシートパッド4Pが押圧を受けていない自由状態を基準として、第一領域11表面の高さ位置T1と第二領域12表面の高さ位置T2は、前方領域10表面の高さ位置と概ね同位置となるように設定されている。
中央領域13は、図2を参照して、シート幅方向において第一領域11と第二領域12の間に配置されている領域であり、凹み部位20と、前側盛り上がり部位21と、後側盛り上がり部位22とを有している。この中央領域13は、前後に長尺な上方視で略台形の領域であり、前方に向かうにつれて次第に左右の寸法が小さくされている。そして中央領域13後部側の左右の寸法は、第一領域11の後部(HP)と第二領域12の後部(HP)の離間寸法よりも短寸とされており、乗員臀部等からの押圧を受けにくくされている。また中央領域13は、前後の寸法が第一領域11及び第二領域12と同一であり、図5に示すように前方領域10と後側土手部4Pdの間に配置されている。
そして図4に示す凹み部位20(中央領域部分)の高さ位置T3は、着座する乗員の体格に応じた第一領域11と第二領域12の凹み度合を考慮して設定できる。すなわち図7に示す乗員着座時を基準として、第一領域11の最も凹んでいる箇所(図7では頂点P1)と第二領域12の最も凹んでいる箇所(図7では頂点P2)を結ぶようにシート幅方向に延びる仮想線VLを想定する。そして中央領域13では、乗員の着座時において凹み部位20の最も表側に突出している箇所が、仮想線VLと同位置又は仮想線VLよりも下側に位置するように設定することができる。例えば本実施例では、図4に示す凹み部位20の高さ位置T3を、第一領域11の高さ位置T1から所定の高さ(Tx)分だけ低く設定している。この所定の高さ(Tx)は、図7に示す自由状態の第一領域11の高さ位置T1と乗員着座時に最も凹んでいる箇所(頂点P1)の高さ位置との差分(Tx)と概ね同一である(図7では、便宜上、中央領域13の表面と仮想線VLとを若干上下にずらしているが、実際にはこれらは重なっている)。なお本実施例においては、凹み部位20の表面が平坦であるため、最も表側に突出する箇所とは凹み部位20の表面全面となる。ここで第一領域11と第二領域12の凹み度合は、例えば各種の乗員模型(マネキン)を実際に着座させることで測定できる。この種の乗員ダミーとして、例えばSAE規格に準拠した乗員模型を用いることができ、AM95乗員模型とJF05乗員模型との間に位置するサイズの乗員模型を適宜用いることができる。
また前側盛り上がり部位21は、図2及び図6を参照して、凹み部位20に比して上方に盛り上がっている部分であり、中央領域13の前端に設けられている。この前側盛り上がり部位21は、図6に示すように左右に延びる前縁側が最も上方に突出しており、この最も突出している前縁部分の高さ位置T4は、第一領域11の表面(及び第二領域の表面)と概ね同位置となるように設定できる。そして前側盛り上がり部位21の前縁部分から凹み部位20に至る前側盛り上がり部位21部分は傾斜面21aとなっている。この傾斜面21aは、後方に向かうにつれて次第に下方に直線的に傾斜しており、上方に向けて突出する出っ張り部分が実質的に生じていない状態とされている。また後側盛り上がり部位22も、凹み部位20に比して上方に盛り上がっている部分であり、中央領域13の後端に設けられている。この後側盛り上がり部位22は、左右に延びる後縁側が最も上方に突出しており、この最も突出している後縁部分の位置T5は、第一領域11の表面(及び第二領域の表面)と同一又はこれらよりもやや低い高さ位置となるように設定できる。そして後側盛り上がり部位22の後縁部分から凹み部位20に至る後側盛り上がり部位22部分は傾斜面22aとなっている。この傾斜面22aは、前方に向かうにつれて次第に下方に直線的に傾斜しており、上方に向けて突出する出っ張り部分が実質的に生じていない状態とされている。
図2を参照して、複数の溝部(第一吊り込み溝31〜第四吊り込み溝34,左右一対の分割溝部36,38)は、それぞれシートパッド4Pの表側に設けられている線状の凹み箇所である。ここで各吊り込み溝31〜34は、後述するシートカバー4Sの一部を引込み状に係止可能な溝部であり、これら各吊り込み溝31〜34の底面には、係止部材40を複数又は単数配設することができる(図2では、便宜上、一部の係止部材にのみ符号40を付す)。各係止部材40は、対応する吊り込み溝の底面から上方に突出する断面U字状の部材であり、図3及び図5に示すシートカバー4S側の係止部42を挟持して係止可能である。
左右一対の分割溝部36,38は、着座部4Pa内で前後に延びている溝部であり、シートカバー4Sの一部を配置することが可能である。これら左右の分割溝部36,38は、それぞれ本発明の分割部に相当する溝部であり、隣り合う領域同士を区画している。すなわち右側の分割溝部36は、第一領域11と中央領域13を分割するように前後に延びている溝部であり、中央領域13の表面よりも更に裏側に向けて凹んでいる。また左側の分割溝部38は、第二領域12と中央領域13を分割するように前後に延びている溝部であり、中央領域13の表面よりも更に裏側に向けて凹んでいる。そして左右一対の分割溝部36,38の深さ寸法は、シートカバー4Sでシートパッド4Pを被覆した状態において、後述するシートカバー4Sの一部である縫い代を配置可能な寸法に設定されている。
付属部材50は、図2を参照して、例えば乗員を感知可能なセンサ機能を備えた面状の部材であり、図3に示すようにシートパッド4Pとシートカバー4Sの間に配置することができる。この付属部材50は、図2を参照して、面状の本体部52と、帯状の接続部54を有している。そこで本実施例では、付属部材50の本体部52を、中央領域13の凹み部位20に配設しつつ、第一領域11の後部(HP)と第二領域12の後部(HP)の間に配置しておく。このように凹み部位20に付属部材50の本体部52を配置することで、この本体部52がシートカバー4S側に浮き出る(ハイライトが生じる)といった不具合を極力回避することができる。また接続部54は、本体部52の後端から後方に延設されており、第四吊り込み溝34上を通過して後側土手部4Pdの貫通孔H内に引き込まれたのち、シートクッション4裏側の図示しない制御部につなげられている。
シートカバー4Sは、図1を参照して、シートパッド4Pを被覆して意匠面を構成する面材であり、複数の表皮ピース(SPa〜SPg)と、後述する複数の縫合部61〜66及び係止部42とを有している。ここで各表皮ピースSPa〜SPgの材質として、例えば布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)を用いることができ、各表皮ピースの裏面には、ウレタンラミなどのパッド材や不織布などの裏基布(図示省略)を適宜取付けることもできる。そして着座部4Paは、図3及び図5を参照して、前表皮ピースSPaと、右表皮ピースSPbと、左表皮ピースSPcと、中央表皮ピースSPdで覆われている。前表皮ピースSPaは前方領域10を被覆し、右表皮ピースSPbは第一領域11を被覆し、左表皮ピースSPcは第二領域12を被覆し、中央表皮ピースSPdは中央領域13を被覆している。さらに右側土手部4Pbは右土手表皮ピースSPeで覆われており、左側土手部4Pcは左土手表皮ピースSPfで覆われており、後側土手部4Pdは後土手表皮ピースSPgで覆われている。
図3〜図6を参照して、シートカバー4Sでシートパッド4Pを被覆しつつ、シートカバー4Sの一部である各縫合部61〜66を、対応する溝部31〜34,36,38に係止又は配置する。このとき図4を参照して、第五縫合部65と第六縫合部66とは、係止部が取付けられておらず、対応する分割溝部36,38内に単に配置される。これとは異なり、第一縫合部61〜第四縫合部64は、図3及び図5に示すように対応する吊り込み溝31〜34に引き込まれた状態で係止される。すなわち図3を参照して、下方に引き込まれた第一縫合部61と第二縫合部62には係止部42が取付けられており、この係止部42が、対応する吊り込み溝31,32の係止部材40に係止される。
図7を参照して、シートクッション4に乗員が着座することにより、シートパッド4Pの着座部4Paの一部が、乗員からの押圧を受けて下方(裏側)に撓み変形する。すなわち本実施例では、乗員臀部Xからの押圧によって、第一領域11と第二領域12の双方が凹み変形しつつ乗員臀部Xを支持することとなる。このとき第一領域11と第二領域12とは、対応する分割溝部36,38によって中央領域13から分断されている。このため乗員の着座時において、第一領域11と第二領域12とが、中央領域13から実質的に独立して(極力邪魔されることなく)スムーズに撓みながら凹み変形することとなる。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4F シートフレーム
4P シートパッド
4S シートカバー
4Pa 着座部
4Pb 右側土手部
4Pc 左側土手部
4Pd 後側土手部
10 前方領域
11 第一領域
12 第二領域
13 中央領域
20 凹み部位(本発明の第一領域と第二領域との間に配置する中央領域部分)
21 前側盛り上がり部位(本発明の中央領域の吊り込み溝側の端部)
21a (前側盛り上がり部位の)傾斜面
22 後側盛り上がり部位(本発明の中央領域の吊り込み溝側の端部)
22a (後側盛り上がり部位の)傾斜面
31 第一吊り込み溝
32 第二吊り込み溝
33 第三吊り込み溝(本発明の吊り込み溝)
34 第四吊り込み溝(本発明の吊り込み溝)
36 右側の分割溝部(本発明の分割部)
38 左側の分割溝部(本発明の分割部)
40 係止部材
42 係止部
50 付属部材
52 本体部
54 接続部
61 第一縫合部
62 第二縫合部
63 第三縫合部(本発明のシートカバーの一部)
64 第四縫合部(本発明のシートカバーの一部)
65 第五縫合部
66 第六縫合部
SEW 縫合線
SPa 前表皮ピース
SPb 右表皮ピース
SPc 左表皮ピース
SPd 中央表皮ピース
SPe 右土手表皮ピース
SPf 左土手表皮ピース
SPg 後土手表皮ピース
VL 仮想線
X 乗員臀部
P1 頂点(本発明の第一領域の最も凹んでいる箇所)
P2 頂点(本発明の第二領域の最も凹んでいる箇所)
Claims (6)
- 乗員を弾性的に支持可能なシートパッドを備えるとともに、該シートパッドの表側には、乗員の着座が可能な着座部が設けられている乗物用シートにおいて、
前記着座部は、シート幅方向において、第一領域と、第二領域と、該第一領域と該第二領域との間に形成された中央領域とに区分けされ、該第一領域と該第二領域の双方は、着座状態の乗員の押圧にて表側とは反対の裏側に向けて凹み変形可能とされており、
前記着座部が押圧されていない自由状態において、凹み変形が予定されている前記第一領域と前記第二領域との間に配置する中央領域部分は、該第一領域と該第二領域に比して裏側に向けて凹んだ形状とされている乗物用シート。 - 前記シートパッドが乗員からの押圧を受けた状態において、前記第一領域と前記第二領域の最も凹んでいる箇所同士を結ぶようにシート幅方向に延びる仮想線を想定した場合、前記中央領域部分は、前記仮想線と同位置又は該仮想線よりも裏側に位置している請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記第一領域と前記第二領域と前記中央領域とは、前記シートパッドの表側に設けられている溝状または切目状の分割部によって分断されて区分けされている請求項1又は2に記載の乗物用シート。
- 前記乗物用シートは、前記シートパッドを被覆するシートカバーを備えているとともに、該シートカバーの一部は、前記シートパッドの表側でシート幅方向に延びている吊り込み溝に引き込み状に係止されており、
前記吊り込み溝は、シート幅方向と直交する方向から前記第一領域と前記第二領域と前記中央領域とに隣接して設けられており、
前記中央領域の吊り込み溝側の端部は、前記中央領域部分よりもシートカバー側に向けて盛り上がっている請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シート。 - 前記中央領域の吊り込み溝側の端部から前記中央領域部分に至る前記中央領域の表面は傾斜面又は湾曲面となっている請求項4に記載の乗物用シート。
- 前記乗物用シートは、前記シートパッドを被覆するシートカバーと、該シートカバーと前記シートパッドの間に配設される付属部材とを備え、該付属部材の少なくとも一部は、前記中央領域部分の表面に配設されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
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