以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具(サッシ)の枠体に収められるガラスや障子の面内方向を意味し、「見込方向」とは、室内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建具1を示す正面図である。本実施形態の建具1は、防火仕様の縦辷り窓である。まず、建具1の全体構成について説明する。本実施形態の建具1は、建物開口部に固定される枠体10と、枠体10の内側に開閉可能に取り付けられる障子20と、を備える。
枠体10は、上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14が矩形に枠組みされて構成される。上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
図2は、本実施形態の建具1の縦断面図である。上枠11の内部は、見込方向で複数の空間に区画されており、室外側から室内側の順に中空部11a,11b,11cが形成される。中空部11cには金属製の上枠芯材11dが配置される。また、上枠11の室内側下部には、下方に延びる延出部11eが形成され、延出部11eの室外側の見付面にはクッション材11fが配置される。同様に、下枠12の内部にも、見込方向に複数の中空部12a,12b,12cが形成され、中空部12bには金属製の下枠芯材12dが配置される。また、下枠12の室内側上部には、上方に延びる延出部12eが形成され、該延出部12eにもクッション材12fが配置される。
図3は、本実施形態の建具1の横断面図である。吊元側縦枠13の内部も、見込方向で区画された複数の中空部13a,13b,13cが形成され、中空部13bには金属製の縦枠芯材13dが配置される。また、吊元側縦枠13の室外側には見付方向戸先側に延びる延出部13eが形成され、該延出部13eにもクッション材13fが配置される。
戸先側縦枠14の内部にも、見込方向で区画された複数の中空部14a,14b,14cが形成され、中空部14bには金属製の縦枠芯材14dが配置される。戸先側縦枠14の室外側にも見付方向吊元側に延びる延出部14eが形成され、該延出部14eにもクッション材14fが配置される。
図3に示すように、枠体10の内側の隅(内隅)には枠側コーナー金具46がそれぞれ配置される(図2において図示省略)。枠側コーナー金具46は、4隅のそれぞれに配置される。枠側コーナー金具46自体は、枠体10の見込面に配置されるが、ネジ等の締結部材を介して枠体10の内側の芯材(上枠芯材11d、下枠芯材12d、縦枠芯材13d及び縦枠芯材14d)に締結固定される。より具体的には、枠体10の戸先側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材13dが連結される。同様に、戸先側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材13dが連結される。
障子20は、ガラス25と、ガラス25を囲うように構成される框体30と、を含むように構成される。
ガラス25は、室外側に配置される室外側ガラス25aと、室外側ガラス25aに対して隙間をあけて室内側に配置される室内側ガラス25bと、を備える複層ガラスである。室外側ガラス25aと室内側ガラス25bの間にはスペーサ26等が配置される。
框体30は、上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34が矩形に枠組みされて構成される。上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
上框31の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部31a,31b,31cが形成される。最も室内側に位置する中空部31cには、金属で形成される室内側上框芯材31dが配置される。中空部31bにも、金属製の室外側上框芯材31eが配置される。室内側上框芯材31d及び室外側上框芯材31eは、何れも上框31の長手方向に沿って延びている。上框31の室外側上部には、上枠11の一部と見込方向で対向する延出部31fが形成される。延出部31fの室内側にはクッション材31gが設けられる。また、延出部31fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部31hが形成される。
下框32の内部にも、室外側から室内側に向かって複数の中空部32a,32b,32cが形成される。最も室内側に位置する中空部32cには、金属で形成される室内側下框芯材32dが配置される。中空部32bにも、金属製の室外側下框芯材32eが配置される。室内側下框芯材32d及び室外側下框芯材32eは、何れも下框32の長手方向に沿って延びている。下框32の室外側下部には、下枠12の一部と見込方向で対向する延出部32fが形成される。延出部32fの室内側にはクッション材32gが設けられる。また、延出部32fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部32hが形成される。
吊元側縦框33の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部33a,33b,33cが形成される。最も室内側に位置する中空部33cには、金属で形成される室内側縦框芯材33dが配置される。中空部33bにも、金属製の室外側縦框芯材33eが配置される。室内側縦框芯材33d及び室外側縦框芯材33eは、何れも吊元側縦框33の長手方向に沿って延びている。吊元側縦框33の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部33fが形成される。延出部33fの室内側にはクッション材33gが設けられる。また、延出部33fの戸先側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部33hが形成される。
戸先側縦框34の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部34a,34b,34cが形成される。最も室内側に位置する中空部34cには、金属で形成される室内側縦框芯材34dが配置される。中空部34bにも、金属製の室外側縦框芯材34eが配置される。室内側縦框芯材34d及び室外側縦框芯材34eは、何れも戸先側縦框34の長手方向に沿って延びている。戸先側縦框34の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部34fが形成される。延出部34fの室内側にはクッション材34gが設けられる。また、延出部34fの吊元側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部34hが形成される。
本実施形態では、框体30内部の室外側に位置する芯材(室外側上框芯材31e、室外側下框芯材32e、室外側縦框芯材33e及び室外側縦框芯材34e)と、室内側に位置する芯材(室内側上框芯材31d、室内側下框芯材32d、室内側縦框芯材33d及び室内側縦框芯材34d)と、が框芯材連結金具67によって連結されている。框芯材連結金具67は、框体30の外側面の形状に応じて段差状に形成されるプレート部材である。框芯材連結金具67は、框体30(上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34)の外部に配置され、框体30の内部で異なる中空部に配置される室外側の芯材と室内側の芯材にネジ等の締結部材によってそれぞれ締結される。これによって見込方向に複数の中空部が形成される樹脂製の框体30が火災発生時の高温環境下で室外側と室内側に分離する事態が確実に防止されている。
障子20は、上枠11に連結されるとともに上框31(框体30)に連結される上アーム部材61及び下枠12に連結されるとともに下框32(框体30)に連結される下アーム部材62によって開閉可能に枠体10の内側に支持される。本実施形態では、上アーム部材61及び下アーム部材62は、何れも框体30に対して金属により板状に成形される補強材65を介して連結される。
障子20の戸先側には、ハンドル55に連動するスライドロック機構50が配置される。スライドロック機構50は、ハンドル55操作に連動して上下方向に移動するスライドプレート51と、スライドプレート51の戸先側の見込面に形成されるロックピン52と、を備える。スライドプレート51は、戸先側縦框34の中空部34cを形成する外周側面のうち、戸先側縦枠14と対向する面に設けられる。戸先側縦枠14の内側の見込面には、ロックピン52が嵌合するロックピン受け金具15が固定される。本実施形態では、ロックピン52は、上下方向で複数個所に形成されており、ロックピン受け金具15もロックピン52の数に応じて上下方向に間隔をあけて複数固定される。また、スライドプレート51は、戸先側縦框34の戸先側にスライド嵌合された状態でハンドル55に連結されている。
下框32には、通常使用時の障子20の下がりを防止するための受け樹脂部材35が下框32の下面に固定されている。受け樹脂部材35は、例えばポリアセタール(POM)樹脂により、その下部が室内側から室外側に向かうにつれて下側に近づくように傾斜した形状で成形される。また、障子20の左右方向において中央よりも戸先側に位置している。この受け樹脂部材35により、重みによって障子20が下がったとしても、受け樹脂部材35が下枠12に接触し、障子20のそれ以上の下方への移動が規制される。
本実施形態の建具1は、受け樹脂部材35とは別に火災発生時の障子20の下がりや框体30の室内外への分離を防止する構成を更に備える。これらの障子20の下がりや框体30の室内外への分離を防止する構成について説明する。
図4は、本実施形態の建具1が備える障子20の戸先面を示す側面図である。図4に示すように、障子20の戸先側には、火災発生時の障子20の下がりを防止する障子下がり防止金具56と、障子20の室外側と室内側の分離を防止する分離防止金具57と、が配置される。本実施形態では、障子下がり防止金具56は、障子20が閉鎖位置にある状態でロックピン受け金具15の上方に位置するように上下2箇所に配置される。また、分離防止金具57も上下2箇所に配置されており、上側の分離防止金具57は、下側の障子下がり防止金具56よりも戸先側縦框34の長手方向中央寄りに位置しており、下側の分離防止金具57も下側の障子下がり防止金具56よりも戸先側縦框34の長手方向中央寄りに位置している。
図5は、本実施形態の障子20の戸先面の上部に配置された障子下がり防止金具56及び分離防止金具57を示す斜視図である。なお、図5では、ロックピン受け金具15が固定される戸先側縦枠14の図示を省略している。
まず、障子下がり防止金具56に関連するスライドロック機構50の構成について説明する。本実施形態のスライドロック機構50は、戸先側縦框34の戸先面(見込面)34iに形成される嵌合溝34kに嵌合固定されるスライドプレート51が上下方向に移動することによってロックピン52が上下動し、ロックピン受け金具15とロックピン52の係合・解除が行われる。
ロックピン受け金具15は、上下2箇所に形成される設置面15aに形成される締結孔15bを通じてネジ(図示省略)が戸先側縦枠14の中空部14bに位置する縦枠芯材14dに締結されることにより、戸先側縦枠14の見込面に固定される。上下の設置面15aの間には、障子20を閉鎖位置で固定するためにロックピン52をロックピン受け金具15の内側で保持する切欠き部15cが形成される。
切欠き部15cは、ロックピン受け金具15の室外側の端面から見込方向で室内側に延びた後、上方に延びる形状に形成される。本実施形態では、ロックピン52がロックピン受け金具15に係合して切欠き部15cの端面によって障子20の開放が制限される係合位置が、切欠き部15cから離脱可能となる解除位置よりも上方に位置する関係となっている。従って、スライドプレート51が移動し、ロックピン52が係合位置から切欠き部15cの室外側の入口の高さまで下がることによって障子20が開放可能となる。
本実施形態のロックピン受け金具15は、上側の設置面15aの下端から閉鎖位置の障子20の戸先側に屈曲する金具受け部15dを有する。この金具受け部15dが、障子下がり防止金具56を下から受け止めることで障子20の下がりが防止される。
次に、障子下がり防止金具56について説明する。図6は、本実施形態の障子下がり防止金具56及びその周囲を示す拡大横断面図である。障子下がり防止金具56は、戸先面34iに固定される固定面56aと、固定面56aから戸先側縦枠14側に略90度で屈曲する接触片56bと、を備える。
図6に示すように、障子下がり防止金具56は、固定面56aが戸先側縦框34の戸先面34iに対向した状態でネジ81を介して戸先側縦框34の中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eに連結される。この状態では障子下がり防止金具56とロックピン受け金具15は接触していないものの、上下方向視では接触片56bがロックピン受け金具15の金具受け部15dに重なる位置関係となる。
障子下がり防止金具56は、スライドプレート51に接触しない位置関係で戸先側縦框34に固定されており、スライドプレート51が移動しても連動して移動しない。障子下がり防止金具56は、火災発生時に框体30が溶融して障子20が下がろうとすると戸先側縦枠14に固定されているロックピン受け金具15の金具受け部15dによって接触片56bが受け止められて障子20の戸先側がそれ以上下がらないようになっている。
障子下がり防止金具56の高さは、火災発生時に障子20の戸先側が下がってロックピン52の位置が下がったとしても、ロックピン52とロックピン受け金具15の係合が解除可能にならないように設定されている。即ち、図5に示すロックピン52のロック位置から切欠き部15cの入口から室外側に離脱可能になる高さまでの距離よりも、障子下がり防止金具56の接触片56bとロックピン受け金具15の金具受け部15dの距離が短くなるように設定されている。これによって、ハンドル55等の操作ではなく火災発生時の溶融等によって障子20が下がっても、ロックピン52が切欠き部15cから離脱可能な高さまで下がる前に、障子20の下がりが止められることになる。
次に、分離防止金具57について説明する。本実施形態では、耐熱性を有する材料で構成されるスライドプレート51を利用して障子20の室内外の分離を防止する。本実施形態では、耐熱性を有する材料としてアルミニウム材(金属)製のスライドプレート51が用いられる。なお、アルミニウム材は、アルミニウムを主成分とする金属材料である。
図5に示すように、スライドプレート51には、該スライドプレート51の移動方向と同じ方向で細長いプレート側スリット53が形成される。分離防止金具57は、戸先面34iに固定される固定面57aと、スライドプレート51に干渉しないように固定面57aから戸先側縦枠14側に段差状となる段差部57cと、段差部57cの室内側端部から吊元側に略90度で屈曲してプレート側スリット53に差し込まれる差込片57bと、を備える。本実施形態の固定面57aは、戸先面34iの形状に応じて屈曲するように形成されている。
プレート側スリット53の長手方向の長さは、スライドプレート51の可動範囲に応じて設定されている。プレート側スリット53は、スライドプレート51がロック位置から解除位置に移動しても差込片57bがスライドプレート51に接触しないように、スライドプレート51の可動範囲よりも上下方向に長くなっている。
図7は、本実施形態の分離防止金具57及びその周囲を示す拡大横断面図である。図7に示すように、分離防止金具57は、固定面57aが戸先側縦框34の戸先面34iに対向した状態でネジ82を介して戸先側縦框34の中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eに連結される。
本実施形態の室外側縦框芯材34eには、戸先側縦框34の内側の見込面に配置されるガラス外れ止め部材40がネジ45を介して連結されている。ガラス外れ止め部材40は、ガラス25の室外側への移動を規制する部材であり、内側の底面には加熱発泡材38が配置される。
火災発生時に戸先側縦框34が溶融して框体30が室外側と室内側に分離しそうになったとしても、室外側縦框芯材34eに連結される分離防止金具57により、スライドプレート51の見込方向の移動が規制される。溶融によって中空部34bと中空部34cの境目の壁部が裂けて戸先側縦框34が室内外に分離する事態の発生を効果的に防止できる。
以上説明した上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を奏する。
建具1は、障子20の戸先側に配置される樹脂製の戸先側縦框34と、障子20が閉鎖位置にある状態で戸先側縦框34に対向する戸先側縦枠14に固定されるロックピン受け金具(係合部材)15と、戸先側縦框34にスライド移動可能に配置され、ロックピン受け金具15に係合するロックピン(被係合部材)52を有するスライドプレート(スライド部材)51と、金属製の分離防止金具57と、を備える。分離防止金具57は、戸先側縦框34に固定される固定面(固定部)57aと、スライドプレート51に形成されるプレート側スリット53に差し込まれる差込片(差込部)57bと、を有する。プレート側スリット53は、ロックピン52がロックピン受け金具15に係合する係合位置から係合が解除されて障子20を開くことができる解除位置までのスライドプレート51の移動範囲で差込片57bが接触しない形状に形成される。即ち、プレート側スリット53は、差込片57bが差し込まれた状態でロックピン52がロックピン受け金具15に係合する係合位置から係合が解除されて障子20を開くことができる解除位置までスライドプレート51の移動を許容する形状に設定される。
これにより、火災発生時に樹脂製の戸先側縦框34が溶融しても、プレート側スリット53に差し込まれる金属製の分離防止金具57の差込片57bによってスライドプレート51の戸先側縦框34からの離脱が防止されるとともに該スライドプレート51を介して框体30(障子20)の室外側と室内側への分離を防止することができる。また、通常の使用範囲では分離防止金具57の差込片57bによってスライドプレート51の移動が妨げられることもない。
また、本実施形態では、建具1は、戸先側縦框34の内側に形成される中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eを更に備え、固定面57aは、戸先側縦框34の外部に室外側縦框芯材34eに連結された状態で固定される。
これにより、室外側縦框芯材34eに連結支持される分離防止金具57によってスライドプレート51の見込方向の移動を規制できるので、より確実の障子20の室外側と室内側への分離を防止することができる。
戸先側縦框34の内側には、相対的に室外側に位置する中空部34bと相対的に室内側に位置する中空部34cが少なくとも形成され、スライドプレート51は、戸先側縦框34の中空部34cに対応する位置に設けられ、分離防止金具57の固定面57aは、中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eに固定される。
これにより、中空部34bと中空部34cを区画する壁部が割ける事態の発生を確実に防止することができる。
また、本実施形態では、建具1は、戸先側縦框34の内側の面に配置されるガラス外れ止め部材40を更に備え、室外側縦框芯材34eは、ガラス外れ止め部材40にも連結固定される。
これにより、ガラス25の外れ止めを行っているガラス外れ止め部材40にも室外側縦框芯材34eされているので、ガラス25の室外側への移動を強固に固定でき、障子20の室外側と室内側の分離をより一層強固に防止することができる。
また、上記実施形態の構成によれば、以下のような効果も奏する。
建具1は、障子20の戸先側に配置される樹脂製の戸先側縦框34と、戸先側縦框34の内側に形成される中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eと、障子20が閉鎖位置にある状態で戸先側縦框34に対向する戸先側縦枠14に固定される金属製のロックピン受け金具(係合部材)15と、戸先側縦框34にスライド移動可能に配置され、ロックピン受け金具15に係合するロックピン(被係合部材)52を有するスライドプレート(スライド部材)51と、金属製の障子下がり防止金具56と、を備える。障子下がり防止金具56は、戸先側縦框34の外部に室外側縦框芯材34eに連結された状態で固定される固定面56aと、障子20が閉鎖位置にある状態でロックピン受け金具15の上方に位置し、上下方向視でロックピン受け金具15に重なる接触片(接触部)56bと、を有する。
これにより、火災によって樹脂部分が溶融したとしても、戸先側縦框34に固定される障子下がり防止金具56の接触片56bが、戸先側縦枠14に固定される金属製のロックピン受け金具15に下から支持され、障子20の戸先側がそれ以上下がらなくなる。これによって火災発生時に障子20が下がってロックピン52とロックピン受け金具15の係合が解除されて障子20が意図せず開く事態の発生を防止することができる。
また、本実施形態では、障子20が閉鎖位置にある状態では接触片56bとロックピン受け金具15の間に隙間が形成され、火災によって障子20の戸先側が下がったときに初めて接触片56bがロックピン受け金具15に接触するように構成される。
これにより、通常時の障子20の開閉動作時に接触片56bとロックピン受け金具15が接触しないので、接触片56bが障子20の開閉動作を妨げることもない。
上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において上記実施形態と共通又は同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
まず、上記実施形態の障子下がり防止金具56とは異なる形状の障子下がり防止金具256を適用した第1変形例について説明する。図8は、第1変形例の障子下がり防止金具256及びその周囲を示す斜視図である。なお、図8では、ロックピン受け金具15が固定される戸先側縦枠14の図示を省略している。
図8に示すように、障子下がり防止金具256は、スライドプレート51の上方に固定され、スライドプレート51とは一体的に移動せずに障子20の下がりを防止する。
第1変形例の障子下がり防止金具256は、戸先面34iの室外側に固定される第1固定面256aと、戸先面34iの室内側に固定される第2固定面256bと、第2固定面256bに対して戸先側縦枠14側に略90度で屈曲する接触片256cと、を備える。
図9は、第1変形例の障子下がり防止金具256及びその周囲を示す拡大横断面図である。図9に示すように、第1固定面256aは、上記実施形態の固定面56aと同様にネジ81を介して戸先側縦框34の中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eに連結される。
一方、第2固定面256bは、戸先面34iの形状に応じて第1固定面256aよりも見付方向吊元側に位置しており、第1固定面256aに対して段差状に形成される。そして、第2固定面256bは、ネジ85を介して戸先側縦框34の中空部34cに配置される室内側縦框芯材34dに連結される。
接触片256cは、上下方向視でロックピン受け金具15の金具受け部15dに重なる位置関係となる。通常の使用範囲では、接触片256cと金具受け部15dの間にはクリアランスが設定される。なお、このクリアランスを決めるロックピン受け金具15に対する接触片256cの高さ等の位置関係は、上記実施形態の障子下がり防止金具56の接触片56bと同様である。
このように、第1変形例では、障子下がり防止金具256が、戸先側縦框34の外側で室内側縦框芯材(第2框芯材)34dに連結された状態で固定される第2固定面256bを更に有する。
これにより、第1実施形態の障子下がり防止金具56と同様の効果を奏するとともに、見込方向で隣接する中空部33b,33cにそれぞれ配置される室内側縦框芯材34dと室外側縦框芯材34eが障子下がり防止金具256によって連結されるので、障子下がり防止金具256によっても、框体30の室内側の分離も防止することができる。
図8に示すように、第1変形例では、分離防止金具57も室外側縦框芯材34eに連結されており、スライドプレート51、室外側縦框芯材34e、室内側縦框芯材34d、障子下がり防止金具256、分離防止金具57が連関して障子20の分離を防止している。
また、第1変形例でも、室外側縦框芯材34eは、ガラス外れ止め部材40にも連結固定されており、障子下がり防止金具256によってもガラス外れ止め部材40が強固に保持される。
次に、スライドプレート51を利用して障子20の室内外の分離を防止しつつ、障子20の下がりを防止する第2変形例について説明する。図10は、第2変形例の障子下がり防止金具(分離防止金具)357及びその周囲を示す斜視図である。なお、図10では、ロックピン受け金具15が固定される戸先側縦枠14の図示を省略している。
図10に示すロックピン受け金具15は、上下2箇所に配置されるロックピン受け金具15のうち下側に配置されるものである。スライドプレート51におけるロックピン受け金具15の近傍には、該スライドプレート51の移動方向と同じ方向で細長いプレート側スリット53が形成される。
第2変形例の障子下がり防止金具(分離防止金具)357は、戸先面34iに固定される固定面357aと、固定面56aからスライドプレート51を越えるように屈曲する段差部357cと、プレート側スリット53に差し込まれる差込片357bと、上下方向視でロックピン受け金具15の金具受け部15dに重なる接触片357dと、を備える。
固定面357aは、上記実施形態の固定面57aと同様にネジ81を介して戸先側縦框34の中空部34bに配置される室外側縦框芯材34eに連結される。段差部357cの室内側からは、差込片357bと接触片357dが上下に分かれてそれぞれの方向に屈曲している。より具体的には、差込片357bは、段差部357cの上半分から吊元側に略90度で屈曲してプレート側スリット53に差し込まれる。接触片357dは、段差部357cの下半分から室外側に延びた後、折り返すように室外側に屈曲しており、下端面がロックピン受け金具15の金具受け部15dに対向する。
このように、第2変形例の障子下がり防止金具357は、障子20が閉鎖位置にある状態でロックピン受け金具15の上方に位置し、上下方向視でロックピン受け金具15に重なる接触片357dを更に有するとともに、プレート側スリット53に差し込まれる差込片357bを有し、分離防止金具としての機能も有する。
この構成によっても上記実施形態及び第1変形例と同様に、障子20の下がりを防止しつつ、障子20の室外側と室内側への分離を防止することができる。
次に、上記実施形態や変形例とは異なる形状の分離防止金具54及び室外側縦框芯材454を備える建具1について説明する。図11は、第3変形例の分離防止金具54及びその周囲を示す斜視図である。
図11に示すように、第3変形例では、戸先側縦框34の戸先面34iには、スライドプレート51の移動方向と平行な方向で細長い框側スリット34jが形成される。そして、第3変形例の分離防止金具54は、スライドプレート51の見込面に固定される固定面54aと、固定面54aの室外側端部から吊元側に略90度で屈曲して框側スリット34jに差し込まれる差込片54bと、を備える。
図12は、第3変形例の分離防止金具54及びその周囲を示す拡大横断面図である。図12に示すように、固定面54aは、スライドプレート51にネジ83によって固定されており、スライドプレート51と一体的に移動する。固定面54a及びネジ83は、スライドプレート51の移動を妨げないように、他の部材に接触しない形状となっている。
ここで、第3変形例で用いられる室外側縦框芯材434について説明する。第3変形例の室外側縦框芯材434は、中空部33bの吊元側の内壁に対向する固定面434aと、固定面434aの室外側端部から戸先側に屈曲する室外側面434bと、固定面434aの室内側端部から戸先側に屈曲する室内側面434cと、を備える。そして、第3変形例では、框側スリット34jに差し込まれた差込片54bの先端が室内側面434cの先端よりも室外側に位置した状態となっている。差込片54bの吊元側の先端と室内側面434cの戸先側の先端は見込方向で互いに対向する位置関係となっている。
このように、第3変形例の建具1の分離防止金具54は、固定面54aがスライドプレート51に固定され、差込片54bが、戸先側縦框34に形成される框側スリット34jに差し込まれ、戸先側縦框34の内部で室外側縦框芯材34eと見込方向で対向する。
これによっても、上記実施形態や変形例と同様に、障子20の室外側と室内側への分離を防止することができる。火災によって戸先側縦框34が室外側と室内側に分離しようとしても、框側スリット34jに差し込まれる分離防止金具54の差込片54bが戸先側縦框34の内部で室外側縦框芯材34eに接触してそれ以上の分離が妨げられるのである。
次に、上記実施形態の分離防止金具57とは形状が異なる第4変形例について説明する。図13は、第4変形例の分離防止金具457の斜視図である。なお、図13に示す分離防止金具457は、上記実施形態の分離防止金具57と同じ場所に配置することができるものである。
図13に示すように、第4変形例の分離防止金具457は、戸先側縦框34に固定される固定面457aと、プレート側スリット53に差し込まれる差込片57bと、から構成されており、その基本的な機能は上記実施形態の分離防止金具57と同様である。
第4変形例では、固定面457aが2重になっている。固定面457aは、板状部材の端部を折り返すように構成されており、この折り返して2重になっている部分を貫通する締結孔457dが形成される。折り返した面457cが戸先側縦框34に対面接触する。締結孔457dは、見込方向に細長い長孔となっており、分離防止金具457の取付位置を見込方向で調整可能となっている。固定面457aの折り返された側の反対側である室内側に差込片457bが形成される。
第4変形例の構成では、折り返しによって固定面457aが厚くなっているので、戸先側縦框34に取り付けた状態でも、スライドプレート51に干渉しない位置関係となっている。本構成によっても、上記実施形態や変形例のように、障子20の室内外の分離を効果的に防止することができる。このように、分離防止金具の構成も事情に応じて適宜変更することができる。
なお、上記実施形態や第1変形例から第3変形例の障子下がり防止金具及び分離防止金具のネジを締結するための締結孔を第4変形例で説明した締結孔457dと同様の長孔とすることもできる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、係合位置や解除位置において、差込片(差込部)57bがプレート側スリット(差込孔)53に接触する構成や、框側スリット(差込孔)34jに差込片(差込部)457bが接触する構成であってもよい。即ち、差込孔は、スライド部材の移動を許容する形状であればよい。
障子下がり防止金具及び分離防止金具は、上記実施形態及び変形例で説明した組み合せに限られず、その組み合わせは事情に応じて適宜変更することができる。また、場合によっては、上記実施形態や変形例の障子下がり防止金具や分離防止金具の一部を省略することもできる。例えば、上記実施形態や変形例から分離防止金具を省略し、障子20の下がりを防止する機能を有するものだけを備える構成としてもよい。
また、上記実施形態で説明した上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34の構成に限られず、框体の構成は適宜変更することができる。例えば、框体(上框、下框、吊元側縦框及び戸先側縦框)の見込方向室内側及び室外側の何れか一側又は両方にアルミ形材等の金属製のカバー部材を配置する構成としてもよい。