JP2019064843A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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特許文献1に記載の石英ルツボは、壁体の内表面が実質的に気泡を含有しない透明ガラス層からなり、ルツボ側壁部から湾曲部および底部を含む任意の部位の赤外線透過率が30%〜80%であり、各部分における任意の複数箇所の赤外線透過率の差が、30%以下とされている。
特に、シリコン単結晶中において、OSF領域が支配する結晶成長速度と、L/DL領域が支配する結晶成長速度との間の結晶成長速度で形成され、空孔優勢領域(Pv領域)と、格子間シリコン優勢領域(Pi領域)とが混在した無欠陥領域における結晶成長速度のマージンは、石英ルツボの赤外線透過率の影響を受けやすい。
石英ルツボの個体差による石英ルツボの赤外線透過率の違いは、シリコン単結晶の無欠陥領域における結晶成長速度のマージンに大きく影響し、石英ルツボの赤外線透過率が異なることにより、無欠陥領域における引き上げ速度のマージンが安定せず、無欠陥領域にある単結晶の取得率が減少してしまうという課題がある。
この発明によれば、第3工程のシリコン単結晶の引上げの進行に伴って、シリコン単結晶を取り巻く熱環境が変化しない場合は、石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、熱遮蔽体の下端との距離を維持して単結晶を引き上げることができる。
一方、石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、熱遮蔽体の下端との距離を維持すると、かえって熱環境が大きく変化する場合は、あえてこれを増減させて熱環境の変化を相殺させることができる。したがって、シリコン単結晶の引上げが進行してもシリコン単結晶の引き上げ軸方向の温度勾配を安定化させ、シリコン単結晶の長手方向において安定して無欠陥領域における結晶速度のマージンを確保することができる。
この発明によれば、石英ルツボの気泡層の厚さに基づいて、赤外線透過率を推定しているので、赤外線透過率の取得が簡易となる。
この発明によれば、第2工程において調整する範囲をこの範囲とすることにより、シリコン単結晶の引き上げ装置内のホットゾーンを大きく変更することなく、シリコン単結晶の引き上げを安定して行うことができる。
図1には、結晶面内位置と、結晶成長速度の変化によって生じる欠陥領域が示されている。図1の左側は赤外線透過がない場合、図1の右側は赤外線透過がある場合である。結晶成長速度を速くすると、OSF(Oxidation Induced Stacking Fault)領域、さらには、COP(Crystal Originated Pattern Defect)領域が増大する。
一方、結晶成長速度を遅くすると、L/DL(Large Dislocation Loop)領域が増大する。
本発明は、このような知見に基づいて、案出されたものである。以下に本発明の実施の形態について詳述する。
図2には、本発明の実施形態に係るシリコン単結晶10の製造方法を適用できるシリコン単結晶の引き上げ装置1の構造の一例を表す模式図が示されている。引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶10を引き上げる装置であり、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3とを備える。
ルツボ3は、内側の石英ルツボ3Aと、外側の黒鉛ルツボ3Bとから構成される二重構造であり、回転および昇降が可能な支持軸4の上端部に固定されている。
ルツボ3の上方には、支持軸4と同軸上で逆方向または同一方向に所定の速度で回転するワイヤなどの引き上げ軸7が設けられている。この引き上げ軸7の下端には種結晶8が取り付けられている。
水冷体11は、たとえば、銅などの熱伝導性の良好な金属からなり、内部に流通される冷却水により、シリコン単結晶10を強制的に冷却する。この水冷体11は、育成中のシリコン単結晶10の冷却を促進し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸7方向の温度勾配を制御する役割を担う。
熱遮蔽体12は、育成中のシリコン単結晶10に対して、ルツボ3内のシリコン融液9やヒーター5やルツボ3の側壁からの高温の輻射熱を遮断するとともに、結晶成長界面である固液界面の近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配を制御する役割を担う。
また、熱遮蔽体12は、シリコン融液9からの蒸発物を炉上方から導入した不活性ガスにより、炉外に排気する整流筒としての機能もある。
ガス導入口13からチャンバ2内に導入された不活性ガスは、育成中のシリコン単結晶10と熱遮蔽体12との間を下降し、熱遮蔽体12の下端とシリコン融液9の液面との隙間を経た後、熱遮蔽体12の外側、さらにルツボ3の外側に向けて流れ、その後にルツボ3の外側を下降し、排気口14から排出される。
ルツボ3内にシリコン融液9が形成されると、引き上げ軸7を下降させて種結晶8をシリコン融液9に浸漬し、ルツボ3および引き上げ軸7を所定の方向に回転させながら、引き上げ軸7を徐々に引き上げ、これにより種結晶8に連なったシリコン単結晶10を育成する。
シリコン単結晶10の引き上げ装置1を構成し、シリコン原料が投入される石英ルツボ3Aは、図3に示すように、透明層31および気泡層32の2層構造とされる。なお、石英ルツボ3Aとしては、2層構造だけでなく、気泡層32の外側に透明層が設けられた3層構造のものもある。
透明層31は、石英ルツボ3Aの内面に形成される。透明層31は、気泡をほとんど含まないガラス質層から構成され、気泡層32よりもヒーター5から放射された赤外線を透過する。
気泡層32は、石英ルツボ3Aの外面に形成される。気泡層32は、内部に多層の気泡を含む層から構成され、ヒーター5から放射された赤外線を、内部の気泡によって反射、散乱させる。
具体的には、赤外線透過率と気泡層32の厚さとの関係は、図4に示す赤外線透過率測定装置20を用いて測定することにより、求めることができる。
赤外線透過率測定装置20は、電源21、ハロゲンヒーター22、およびレーザーパワーメーター23を備える。石英ルツボ3Aを砕いたサンプルを、レーザーパワーメーター23の検出素子上に配置し、電源21を入れてハロゲンヒーター22を点灯させ、レーザーパワーメーター23により検出されたレーザー強度を測定する。なお、レーザーパワーメーター23の検出素子と、ハロゲンヒーター22との距離は、たとえば43mmに設定する。
具体的には、赤外線透過率=サンプルを配置した場合の測定値/サンプルを配置していない場合の測定値×100(%)で与えられる。
気泡層32の厚さの異なる石英ルツボ3Aを複数準備し、それぞれのサンプルについて、赤外線透過率測定装置20により赤外線透過率を測定した。
石英ルツボ3Aの気泡層32の厚さと、赤外線透過率とは、図5に示すように、比例関係にあることが確認された。石英ルツボ3Aの赤外線透過率は、図5に示すように、40%以上、70%以下の範囲となる。
前述したように無欠陥領域における結晶成長速度のマージンは、石英ルツボ3Aの赤外線透過率によって変化する。そこで、ヒーター5からの赤外線を遮蔽する熱遮蔽体12の位置と、無欠陥領域における結晶成長速度のマージンの関係を調べた。
図6に示すように、シリコン融液9の液面と、熱遮蔽体12の下端との距離(以下、明細書中では液面Gapと呼称し、図面では単にGapと記載する)を変化させ、その際の無欠陥領域における結晶成長速度のマージンを測定した。
以上の結果から、液面Gapを変化させることによって、シリコン単結晶10に到達する石英ルツボ3Aの赤外線透過量を変化させ、石英ルツボ3Aの赤外線透過率変化による赤外線透過量の変化を相殺できる。
石英ルツボ3Aの赤外線透過率には、個体差があり、ばらつきがあるが、ばらつきがあっても、図8を参照することにより、容易に最適な液面Gapを求めることができる。
たとえば、図8における点P3の場合は、石英ルツボ3Aの赤外線透過率が80%程度であるので、液面Gapを基準点P1における最適な液面Gap(基準距離)の96%とすることにより、最適な液面Gapが得られる。一方、点P2の場合は、石英ルツボ3Aの赤外線透過率が40%程度であるので、液面Gapを基準点P1における最適な液面Gapの103%とすることにより、最適な液面Gapが得られる。
前述したように、石英ルツボ3Aの気泡層32の厚さと、赤外線透過率とは比例関係にあり、さらに赤外線透過率と最適な液面Gapが比例関係にあることから、石英ルツボ3Aの気泡層32の厚さを非破壊で測定できれば、液面Gapをどの程度に設定すれば最適な液面Gapになるのかを把握でき、容易に無欠陥領域における結晶成長速度マージンを最大にすることができる。
次に、図10に示すように、レーザー発振器43から出射したレーザー光を、ミラー44を用いて屈折させて、石英ルツボ3Aの透明層31に斜めから入射させる。
そして、反射する光をCCDカメラ45で撮像し、反射する光の画像位置から透明層31の厚さを算出する。
石英ルツボ3Aの肉厚から透明層31の厚さの差分をとって、気泡層32の厚さを算出する。なお、レーザー光が石英ルツボ3Aの透明層31に進入する際の屈折率、および透明層31から気泡層32に進入する際の屈折率については、予めレーザー光の進路を肉厚断面方向から観察することにより求めることができる。
次に、シリコン単結晶10の製造方法について、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、図9および図10に示す測定方法により、石英ルツボ3Aの気泡層32の厚さを測定する(工程S1:第1工程)。
次に、図5の関係に基づいて、測定された石英ルツボ3Aの気泡層32の厚さに応じた赤外線透過率を算出する(工程S2)。
液面Gapの設定が終了したら、無欠陥領域における結晶成長速度マージンを把握して、シリコン単結晶10の引き上げ速度の設定を行う(工程S4)。なお、引き上げ速度の狙い値は、無欠陥領域における結晶成長速度マージンの中央値とするのが好ましい。
第3工程S5におけるシリコン単結晶10の引き上げは、引き上げられたシリコン単結晶10を取り巻く熱環境が変化しない場合には、液面Gapを維持してシリコン単結晶10の引き上げを行う。
一方、液面Gapを維持すると、かえって熱環境が大きく変化する場合は、これを増減させてシリコン単結晶10の引き上げを行い、熱環境の変化を相殺させる。
このような本実施の形態によれば、以下の効果がある。
第1工程S1により、シリコン単結晶10の引き上げに際して用いる石英ルツボ3Aの赤外線透過率のばらつきを取得することができる。そして、第2工程S3により、石英ルツボ3Aの赤外線透過率の個体差に応じて、液面Gapを調整することにより、熱遮蔽体12によるヒーター5からの赤外線の遮蔽量を調整して、第3工程S5により、シリコン単結晶10の引き上げを行うことができる。したがって、石英ルツボ3Aの赤外線透過率が異なる場合であっても、無欠陥領域における結晶成長速度のマージンが大きく変動することなく、シリコン単結晶10の引き上げを行うことができる。
第2工程S3において調整する範囲をこの範囲とすることにより、シリコン単結晶10の引き上げ装置1内のホットゾーンを大きく変更することなく、シリコン単結晶10の引き上げを安定して行うことができる。
まず、赤外線透過率が50%の石英ルツボ3Aを準備し、シリコン単結晶の引き上げ装置1にセットし、石英ルツボ3Aを用いたときの無欠陥領域における結晶成長マージンが最大となるように、熱遮蔽体12の液面Gapを設定し、シリコン単結晶10の引き上げを行った(参考例)。
そして、赤外線透過率が70%の石英ルツボ3Aをそのまま使用して、熱遮蔽体12の液面Gapを、最初の液面Gapの96%に設定して、シリコン単結晶10の引き上げを行った(実施例)。
なお、参考例、比較例、実施例ともに、シリコン単結晶10を10本引き上げている。
不良品と判定された試料のインゴットブロックは、さらに枚葉の試料を採取していき、OSF、L/DLがなくなるまで枚葉の試料を採取していく。そして、シリコン単結晶10の中の不良品長さを、シリコン単結晶10の10本分の総引き上げ長さで除して不良率を算出した。結果を図12に示す。
これに対して、液面Gapを96%に変更して熱遮蔽体12をシリコン融液9の液面に近づけた実施例では、不良率を1.0%まで低下できることが確認された。
したがって、石英ルツボ3Aの赤外線透過率に応じて、液面Gapを変更することにより、無欠陥結晶の不良率を低減できるといえる。
Claims (4)
- シリコン原料が投入される石英ルツボと、前記石英ルツボ中のシリコン原料を溶融するヒーターと、前記石英ルツボの上部に配置され、前記ヒーターからの赤外線を遮蔽する熱遮蔽体とを備えた引き上げ装置を用い、種結晶を前記石英ルツボの上方に引き上げて、シリコン単結晶を製造するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記石英ルツボの赤外線透過率を取得する第1工程と、
取得された赤外線透過率に基づいて、前記石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、前記熱遮蔽体の下端との距離を調整する第2工程と、
前記シリコン単結晶を引き上げる第3工程と、
を実施することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記第3工程は、前記第2工程により調整された前記石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、前記熱遮蔽体の下端との距離を基準として、前記石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、前記熱遮蔽体の下端との距離を維持または増減させることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記第1工程は、前記石英ルツボの気泡層の厚さに基づいて、赤外線透過率を推定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記第2工程は、基準となる赤外線透過率における、前記石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、前記熱遮蔽体の下端との基準距離に対して、96%以上、103%以下の範囲で、前記石英ルツボ中のシリコン融液の液面と、前記熱遮蔽体の下端との距離を調整することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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