以下、実施の形態において、被検査基板上に形成されたパターンを撮像する(被検査画像を取得する)手法の一例として、電子ビームによるマルチビームを被検査基板に照射して2次電子像を撮像する場合について説明する。但し、これに限るものではない。被検査基板上に形成されたパターンを撮像する手法として、例えば、1本の電子ビームによるシングルビームを被検査基板に照射して2次電子像を撮像する(被検査画像を取得する)場合であってもよい。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、電子ビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、ビームセパレーター214、投影レンズ224,226、偏向器228、及びマルチ検出器222が配置されている。
検査室103内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、検査対象となる基板101が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてXYステージ105に配置される。また、XYステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、XYステージ105上には、後述するマークが形成されたマークステージ217が配置されている。マークステージ217表面の高さ位置は基板101面と実質的に同じ高さ位置に配置される。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、マーク測定回路130、遅延時間テーブル作成回路132、トラッキング位置演算回路134、補正回路136、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146に接続される。DACアンプ144は、主偏向器208に接続され、DACアンプ146は、副偏向器209に接続される。
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。照明レンズ202、縮小レンズ205、対物レンズ207、及び投影レンズ224,226は、例えば電磁レンズが用いられ、共にレンズ制御回路124によって制御される。また、ビームセパレーター214もレンズ制御回路124によって制御される。一括ブランキング偏向器212、及び偏向器228は、それぞれ少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208、及び副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ144を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ146を介して、偏向制御回路128によって制御される。
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m1列×縦(y方向)n1段(m1,n1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a〜20d(図1の実線)が形成される。
形成されたマルチビーム20a〜20dは、その後、クロスオーバー(C.O.)を形成し、マルチビーム20の各ビームのクロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214を通過した後、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、成形アパーチャアレイ基板203と縮小レンズ205との間に配置された一括ブランキング偏向器212によって、マルチビーム20a〜20d全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチビーム20a〜20dは、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチビーム20a〜20dを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用のマルチビーム20a〜20dが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20a〜20dは、対物レンズ207により試料101面上に焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。かかる場合に、主偏向器208によって、マルチビーム20が走査するマスクダイの基準位置にマルチビーム20全体を一括偏向する。実施の形態1では、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行う。そのため、主偏向器208は、さらにXYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するようにマルチビーム20全体を一括偏向する。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率(1/a)を乗じたピッチで並ぶことになる。このように、電子ビームカラム102は、一度に2次元状のm1×n1本のマルチビーム20を基板101に照射する。基板101の所望する位置にマルチビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子300)(図1の点線)が放出される。
基板101から放出されたマルチ2次電子300は、対物レンズ207によって、マルチ2次電子300の中心側に屈折させられ、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。制限アパーチャ基板206を通過したマルチ2次電子300は、縮小レンズ205によって光軸とほぼ平行に屈折させられ、ビームセパレーター214に進む。
ここで、ビームセパレーター214はマルチビーム20が進む方向(光軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチビーム20(1次電子ビーム)には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子300は斜め上方に曲げられる。
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子300は、投影レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子300を検出する。マルチ検出器222は、図示しないダイオード型の2次元センサを有する。そして、マルチビーム20の各ビームに対応するダイオード型の2次元センサ位置において、マルチ2次電子300の各2次電子がダイオード型の2次元センサに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを後述する画素毎に生成する。また、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行うため、上述したようにトラッキング偏向が行われる。かかるトラッキング偏向に伴う偏向位置の移動に合わせて、偏向器228は、マルチ2次電子300をマルチ検出器222の受光面における所望の位置に照射させるように偏向する。
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332内は、例えば、2次元状の横(x方向)m2列×縦(y方向)n2段(m2,n2は2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。実施の形態1では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。
図4は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。図4において、各マスクダイ33は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、測定用画素36(単位照射領域)となる。図4の例では、8×8列のマルチビームの場合を示している。1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。図4の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な複数の測定用画素28(1ショット時のビームの照射位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う測定用画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。図4の例では、隣り合う4つの測定用画素28で囲まれると共に、4つの測定用画素28のうちの1つの測定用画素28を含む正方形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。図4の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素36で構成される場合を示している。
実施の形態1におけるスキャン動作では、マスクダイ33毎にスキャン(走査)される。図4の例では、ある1つのマスクダイ33を走査する場合の一例を示している。マルチビーム20がすべて使用される場合には、1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)m1×n1個のサブ照射領域29が配列されることになる。1つ目のマスクダイ33にマルチビーム20が照射可能な位置にXYステージ105を移動させる。そして、主偏向器208によって、XYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行いながら、トラッキング偏向されている状態で、副偏向器209によって、当該マスクダイ33を照射領域34として当該マスクダイ33内を走査(スキャン動作)する。マルチビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素28を照射することになる。図4の例では、副偏向器209によって、各ビームは、1ショット目に担当サブ照射領域29内の最下段の右から1番目の測定用画素36を照射するように偏向される。そして、1ショット目の照射が行われる。続いて、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当サブ照射領域29内の下から2段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。同様に、3ショット目に担当サブ照射領域29内の下から3段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。4ショット目に担当サブ照射領域29内の下から4段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。次に、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括して最下段の右から2番目の測定用画素36の位置にビーム偏向位置をシフトさせ、同様に、y方向に向かって、測定用画素36を順に照射していく。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のビームショットに応じたマルチ2次電子300が一度に検出される。
以上のように、マルチビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36から2次電子が放出され、検出器222にて検出される。実施の形態1では、検出器222の単位検出領域サイズは、各測定用画素36から上方に放出された2次電子を測定用画素36毎(或いはサブ照射領域29毎)に検出する。
以上のようにマルチビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。なお、ステップアンドリピート動作で各マスクダイ33のスキャンを行っても良いし、XYステージ105を連続移動させながら各マスクダイ33のスキャンを行う場合であってもよい。照射領域34がマスクダイ33よりも小さい場合には、当該マスクダイ33中で照射領域34を移動させながらスキャン動作を行えばよい。
基板101が露光用マスク基板である場合には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のチップ領域を例えば上述したマスクダイ33のサイズで短冊状に複数のストライプ領域に分割する。そして、ストライプ領域毎に、上述した動作と同様の走査で各マスクダイ33を走査すればよい。露光用マスク基板におけるマスクダイ33のサイズは、転写前のサイズなので半導体基板のマスクダイ33の4倍のサイズとなる。そのため、照射領域34が露光用マスク基板におけるマスクダイ33よりも小さい場合には、1チップ分のスキャン動作が増加する(例えば4倍)ことになる。しかし、露光用マスク基板には1チップ分のパターンが形成されるので、4チップよりも多くのチップが形成される半導体基板に比べてスキャン回数は少なくて済む。
以上のように、画像取得機構150は、マルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子300を検出する。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
上述したように、電子ビーム検査において、XYステージ105を連続移動させながら画像取得を行う場合、ステージ位置に応じてビームの照射位置を補正する(トラッキング制御を行う)必要がある。しかし、レーザ測長システム122によってステージ位置を測定したその瞬間に、かかるステージ位置から得られるマルチビーム20のトラッキング偏向位置に主偏向器208によってマルチビーム20の偏向位置を合わせることは困難である。よって、ビームの偏向制御遅延というタイムラグが生じてしまう。かかるビームの偏向制御遅延は、XYステージ105の移動方向によっても異なる場合がある。よって、かかる点に考慮した偏向制御遅延時間を正確に把握しておく必要がある。そこで、実施の形態1では、マーク106を使って、かかる偏向制御遅延時間を高精度で求める手法について以下に説明する。
図5は、実施の形態1におけるマーク測定回路の内部構成を示す構成図の一例である。図5において、マーク測定回路130内には、座標設定部40、移動方向設定部42、速度設定部44、エッジ位置測定部46、判定部48、及び判定部49が配置される。座標設定部40、移動方向設定部42、速度設定部44、エッジ位置測定部46、判定部48、及び判定部49といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。座標設定部40、移動方向設定部42、速度設定部44、エッジ位置測定部46、判定部48、及び判定部49内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリに記憶される。
図6は、実施の形態1における遅延時間テーブル作成回路の内部構成を示す構成図の一例である。図6において、遅延時間テーブル作成回路132内には、差分演算部60,61、加算部62,63、遅延時間演算部64、テーブル作成部68、及びリニア誤差演算部66が配置される。差分演算部60,61、加算部62,63、遅延時間演算部64、テーブル作成部68、及びリニア誤差演算部66といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。差分演算部60,61、加算部62,63、遅延時間演算部64、テーブル作成部68、及びリニア誤差演算部66内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリに記憶される。
図7は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図7において、実施の形態1における検査方法は、マーク座標設定工程(S101)と、ステージ移動方向設定工程(S102)と、ステージ速度設定工程(S104)と、ステージ移動工程(S106)と、マークスキャン工程(S108)と、マージエッジ位置測定工程(S110)と、判定工程(S112)と、ステージ速度変更工程(S114)と、判定工程(S116)と、ステージ移動方向変更工程(S118)と、遅延テーブル作成工程(S120)と、遅延時間演算工程(S122)と、トラッキング位置演算工程(S202)と、補正工程(S204)と、画像取得工程(S206)と、参照画像作成工程(208)と、比較工程(S210)と、いう一連の工程を実施する。
かかる工程群のうち、実施の形態1における電子ビーム画像取得方法は、マーク座標設定工程(S101)と、ステージ移動方向設定工程(S102)と、ステージ速度設定工程(S104)と、ステージ移動工程(S106)と、マークスキャン工程(S108)と、マージエッジ位置測定工程(S110)と、判定工程(S112)と、ステージ速度変更工程(S114)と、判定工程(S116)と、ステージ移動方向変更工程(S118)と、遅延時間演算工程(S120)と、遅延テーブル作成工程(S122)と、トラッキング位置演算工程(S202)と、補正工程(S204)と、画像取得工程(S206)と、いう一連の工程を実施する。
マーク座標設定工程(S101)として、座標設定部40は、マークステージ217上に形成されたマーク座標を設定する。
図8は、実施の形態1におけるマークの一例を示す図である。図8では、マークステージ217上の一部を示している。図8の例では、マークステージ217上に、マルチビーム20のうち2×3本のビーム21の照射位置とマークパターン12とが示されている。図8に示すように、マークパターン12として、マルチビーム20のx方向のビーム間ピッチPx未満のサイズの孤立ラインパターンが形成される。図8の例では、XYステージ105が±x方向に移動する場合において、マークパターン12として、ステージ移動方向に直交する方向に延びる孤立ラインパターンが用いられる。マークパターン12のx方向の幅はマルチビーム20のx方向のビーム間ピッチPx未満の値となる2Wとし、y方向の長さはマルチビーム20のy方向のビーム間ピッチPyの2倍未満に構成される。かかるサイズにより、マルチビーム20を使ってマークパターン12を±x方向にスキャンする場合に、1本のビームでスキャンできる。言い換えれば、2本以上のビームでスキャンされないように、1本のビームでスキャンできる。マーク座標として、マークパターン12の例えば中心位置P0(x0,y0)を用いればよい。マーク座標として、主にx座標(ステージ移動方向の座標)が必要となるため、y座標はマークパターン12の中心からずれた位置でも構わない。
ステージ移動方向設定工程(S102)として、移動方向設定部42は、マークパターン12をスキャンする場合におけるXYステージ105の移動方向を設定する。ここでは、XYステージ105を例えば±x方向に移動する場合を想定しているため、+x方向、或いは−x方向が設定される。
ステージ速度設定工程(S104)として、速度設定部44は、XYステージ105の連続移動速度を設定する。連続移動するXYステージ105の移動速度を可変にしてマークパターン12をスキャンするため、ここでは、予め設定された複数の移動速度の中から1つを設定することになる。
ステージ移動工程(S106)として、ステージ制御回路114による制御のもと、駆動機構142は、XYステージ105を設定された方向に連続移動(等速移動)させる。なお、予め、図4に示すようにマルチビーム20の偏向座標系の中心、言いかえれば、マルチビーム20の照射領域34の中心Aがマークパターン12上を通過可能な位置からXYステージ105を設定された方向に等速移動させる。
図9は、実施の形態1におけるステージ移動とマークスキャンの仕方を説明するための図である。図9の例では、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合における、マルチビーム20の照射領域34の中心Aを照射可能なマルチビーム20の中心ビームが担当するサブ照射領域29と、マークパターン12と、の位置関係の一例を示している。図9(a)に示すように中心Aを含む中心ビーム21が担当するサブ照射領域29のx方向側に外れた位置にマークパターン12が位置する状態から、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動することによって、図9(b)に示すように中心Aがマークパターン12の中心位置P0(x0,y0)と一致する瞬間が訪れる。その後、XYステージ105の移動によって、図9(c)に示すように中心Aを含む中心ビーム21が担当するサブ照射領域29の−x方向側に外れた位置にマークパターン12が移動する。
ここで、ビーム偏向制御系は、トラッキング制御系とビーム位置制御系から成り立つ。そして、その座標系は、トラッキング制御座標系+ビーム位置制御座標系が成り立つものとする。また、トラッキング制御座標系とビーム位置制御座標系の原点は一致するものとする。マークパターン12の中心位置P0(x0,y0)が、マルチビーム20の偏向座標系の中心、言いかえれば、マルチビーム20の照射領域34の中心Aと一致したとき、偏向制御回路128がDACアンプ144を用いて照射領域34の中心Aに、マルチビーム20の中心ビームが偏向されるようにマルチビーム20の一括偏向制御を開始する。その際、レーザ測長システム122による干渉計データを用いて偏向制御を開始する場合、マルチビーム20の偏向座標系において、t秒後のマークパターン12の中心位置P(t)は、次の式(1)で定義できる。
(1) P(t)=P0+v・t
そして、かかるt秒後の幅2Wのマークパターン12の左エッジの位置PL(t)と、右エッジの位置PR(t)は、次の式(2−1)(左エッジ)及び式(2−2)(右エッジ)で定義できる。
(2−1) PL(t)=P0+v・t−W
(2−2) PR(t)=P0+v・t+W
図10は、マークパターンの左右のエッジ位置を検出するための偏向座標系上の移動速度とスキャン時間とを説明するための図である。図10において、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合、相対的に左右エッジ位置は+x方向に速度vで等速移動することになる(正方向)。逆に、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合、相対的に左右エッジ位置は−x方向に速度vで等速移動することになる(逆方向)。ここで、幅2Wのマークパターン12の左右(x方向)のエッジ位置を検出するためには、DACアンプ146は、マークパターン12の幅の2Wよりも大きい距離でスキャンする必要がある。かかるスキャン時間は画素サイズと画素あたりの滞留時間(Dwell Time)によって決まる。ここで、中心ビームが2Wの距離をスキャンする時間をΔtとして、スキャン方向を+x方向(正方向)とすると、上述した偏向制御を開始してから時間t1で左エッジにビームを照射し、Δt後に右エッジにビームを照射する場合、左エッジの位置PL(t1,v)と、右エッジの位置PR(t1+Δt,v)は、マルチビーム20の偏向座標系において、次の式(3−1)(左エッジ)及び式(3−2)(右エッジ)で定義できる。
(3−1) PL(t1,v)=P0+v・t1−W
(3−2) PR(t1+Δt,v)=P0+v・(t1+Δt)+W
一方、実際の検査装置100では、レーザ測長システム122による位置データ取得から実際に偏向制御を開始するまでの偏向制御遅延時間αと、トラッキング制御用のDACアンプ144のリニア誤差係数Te及びビーム位置偏向用のDACアンプ146のリニア誤差Deがマルチビーム20の偏向座標系における目標点の位置に含まれてしまう。そのため、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)、式(3−1)(左エッジ)は、次の式(4−1)(左エッジ)で定義できる。同様に、式(3−2)(右エッジ)は、次の式(4−2)(右エッジ)で定義できる。
(4−1) PL(t1,v)=P0・Te+v・t1・Te+α・v−W・De
(4−2) PR(t1+Δt,v)=P0・Te+v・(t1+Δt)・Te
+α・v+W・De
よって、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)は、次の式(5)で定義できる。左右エッジの和は、次の式(6)で定義できる。
(5) PR(t1+Δt,v)−PL(t1,v)=v・Δt・Te+2W・De
(6) PR(t1+Δt,v)+PL(t1,v)
=2P0・Te+v・(2t1+Δt)・Te+2α・v
また、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)、左エッジの位置PL(t1,−v)と、右エッジの位置PR(t1+Δt,−v)は、マルチビーム20の偏向座標系において、次の式(7−1)(左エッジ)及び式(7−2)(右エッジ)で定義できる。
(7−1) PL(t1,−v)=P0・Te−v・t1・Te−α・v−W・De
(7−2) PR(t1+Δt,−v)=P0・Te−v・(t1+Δt)・Te
−α・v+W・De
よって、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)は、次の式(8)で定義できる。左右エッジの和は、次の式(9)で定義できる。
(8) PR(t1+Δt,v)−PL(t1,v)=−v・Δt・Te+2W・De
(9) PR(t1+Δt,v)+PL(t1,v)
=2P0・Te−v・(2t1+Δt)・Te−2α・v
よって、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)の左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)(式(5))から、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)の左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)(式(8))を差し引いた差分Aは、次の式(10)で定義できる。
(10) A=2v・Δt・Te
同様に、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)の左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)(式(6))から、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)の左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)(式(9))を差し引いた差分Bは、次の式(11)で定義できる。
(11) B=2v・(2t1+Δt)・Te+4α・v
マークパターン12の中心位置P0(x0,y0)が、マルチビーム20の偏向座標系の中心、言いかえれば、マルチビーム20の照射領域34の中心Aと一致したときに、マークパターン12の左エッジが照射されるようにスキャンを開始すれば、t1=0で近似できる。その結果、差分Bは、次の式(12)で定義できる。
(12) B=2v・Δt・Te+4α・v
ビームをスキャンする距離(幅)を一定にすれば、スキャン時間Δtは、一定かつ既知の値である。また、ステージ速度vも既知の値である。よって、ステージの移動方向およびステージ速度vの組合せを可変にしながら、ステージの移動方向毎かつステージ速度毎に、マークパターン12の左右エッジの位置を測定すれば、DACアンプ146のリニア誤差Deに関わらず、トラッキング制御用のDACアンプ144のリニア誤差係数Teと偏向制御遅延時間αとを求めることができる。
マークスキャン工程(S108)として、制御計算機110による制御のもと、画像取得機構150は、電子ビームを用いて、図形パターンが形成された基板を載置するためのステージを移動しながらステージ上に配置されたマークパターン12をスキャンする。具体的には、ステージ移動工程(S106)において、マルチビーム20の照射領域34の中心Aがマークパターン12上を通過可能な位置からXYステージ105を設定されたステージ移動方向とステージ速度とで等速移動させている。そのため、画像取得機構150は、偏向制御回路128による制御のもと主偏向器208を使って、マークパターン12をマルチビーム20の照射領域34内に捉え、マークパターン12の中心位置P0(x0,y0)が、マルチビーム20の偏向座標系の中心、言いかえれば、主偏向器208でトラッキング制御によりビームを偏向していない状態でのマルチビーム20の照射領域34の中心Aと一致したときに、副偏向器209を使って、マークパターン12の左エッジが照射されるようにマルチビーム20の中心ビーム21でスキャンする。このように、マルチビーム20のうち1本のビームで孤立ラインパターンをスキャンする。
そして、マルチビーム20の照射によってマークステージ217から放出されたマルチ2次電子300をマルチ検出器222で検出する。検出されたデータは、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。マルチビーム20の中心ビーム21によってスキャンされた際に得られた2次電子の像がマークパターン12の測定画像となる。その他のビームの照射に伴う2次電子データは無視すればよい。このようにして、画像取得機構150は、マークステージ217上に形成されたマークパターン12の測定画像を取得する。
マージエッジ位置測定工程(S110)として、エッジ位置測定部46(測定部)は、電子ビーム(中心ビーム21)を用いて、図形パターンが形成された基板101を載置するためのXYステージ105を移動しながらXYステージ105上に配置されたマークパターン12をスキャンすることによってマークパターン12のエッジ位置を測定する。具体的には、エッジ位置測定部46は、中心ビーム21によるスキャンによって得られた2次電子像からマークパターン12の左右エッジの位置を測定する。
図11は、実施の形態1におけるマークパターンの検出強度データの一例を示す図である。マークステージ217上でマークパターン12の左側から右側に中心ビーム21を走査することによって、図11に示すように、マークパターンの有無による検出データの差が生じる。これにより、マークパターン12の左右エッジの位置が検出できる。
判定工程(S112)として、判定部48は、予め設定された複数のステージ速度のすべての速度でマークパターン12のスキャンが行われたかどうかを判定する。予め設定されたすべての速度でマークパターン12のスキャンが行われた場合は判定工程(S116)に進む。まだ、予め設定されたすべての速度でマークパターン12のスキャンが行われていない場合はステージ速度変更工程(S114)に進む。
ステージ速度変更工程(S114)として、速度設定部44は、現状の設定されているステージ速度を、予め設定された複数のステージ速度の中からまだ設定されていない速度に変更する。
そして、ステージ移動工程(S106)に戻り、予め設定されたすべての速度でマークパターン12のスキャンが行われるまで、ステージ移動工程(S106)からステージ速度変更工程(S114)までの各工程を繰り返す。実施の形態1では、ステージの移動速度を可変にして、速度毎に得られるマークパターン12のエッジ位置を測定する。そのため、かかる各工程の繰り返しにより、XYステージ105の一方の移動方向における複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置を取得できる。
判定工程(S116)として、判定部49は、予め設定された複数のステージ移動方向のすべての移動方向でマークパターン12のスキャンが行われたかどうかを判定する。予め設定されたすべての移動方向でマークパターン12のスキャンが行われた場合は遅延時間演算工程(S120)に進む。まだ、予め設定されたすべての移動方向でマークパターン12のスキャンが行われていない場合はステージ移動方向変更工程(S118)に進む。
ステージ移動方向変更工程(S118)として、移動方向設定部42は、現状の設定されているステージ移動方向を、予め設定された複数のステージ移動方向の中からまだ設定されていないステージ移動方向に変更する。具体的には、XYステージ105が±x方向に移動する場合に、例えば−x方向から+x方向にステージ移動方向に変更する。
そして、ステージ速度設定工程(S104)に戻り、予め設定されたすべての速度でマークパターン12のスキャンが行われるまで、ステージ速度設定工程(S104)からステージ移動方向変更工程(S118)までの各工程を繰り返す。実施の形態1では、XYステージ105の移動方向を正方向と負方向(逆方向)に移動させながら、それぞれの方向についてマークパターン12のエッジ位置を測定する。かかる各工程の繰り返しにより、XYステージ105の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置を取得できる。XYステージ105の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置の各データは、遅延時間テーブル作成回路132に出力される。
遅延テーブル作成工程(S120)として、まず、差分演算部60は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)における、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)を演算する。スキャン方向は、x方向なので、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)は、x方向の値を使って演算される。
同様に、差分演算部60は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)における、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)を演算する。スキャン方向は、x方向なので、左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)は、x方向の値を使って演算される。
次に、加算部62は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)における、左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)を演算する。スキャン方向は、x方向なので、左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)は、x方向の値を使って演算される。
同様に、加算部62は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)における、左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)を演算する。スキャン方向は、x方向なので、左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)は、x方向の値を使って演算される。
次に、差分演算部61は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)の左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)から、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)の左右エッジの差(右エッジ−左エッジ)を差し引いた差分Aを演算する。
次に、加算部63は、XYステージ105の移動速度毎に、XYステージ105が−x方向に速度vで等速移動する場合(正方向)の左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)から、XYステージ105が+x方向に速度vで等速移動する場合(逆方向)の左右エッジの和(右エッジ+左エッジ)を差し引いた差分Bを演算する。
次に、テーブル作成部68は、XYステージ105の移動速度毎に、得られた差分Aと差分Bとを対応させた遅延テーブルを作成する。
図12は、実施の形態1における遅延テーブルの一例を示す図である。図12において、縦軸に、差分Aと差分Bを示し、横軸にXYステージ105の移動速度を示している。図12の例では、3つのXYステージ105の移動速度に対して、それぞれ取得された差分Aと差分Bを1次比例で近似したグラフを示している。ここでは1次比例で近似した場合を示しているがこれに限るものではない。2次以上の関数で近似してもよい。作成された遅延テーブルは、記憶装置109に格納される。
以上のように、偏向制御遅延時間αを演算する基データとなる遅延テーブルを基板101の画像取得前に予め作成しておく。かかる遅延テーブルを取得した後に、基板101の検査を開始する。まずは、検査用に用いる画像取得のためのXYステージ105の移動速度vを設定する。スキャン速度Δtは、画素36への照射時間から得られる。
遅延時間演算工程(S122)として、リニア誤差演算部66は、遅延テーブルを読み出し、式(10)からXYステージ105の移動速度vに応じたトラッキング制御用のDACアンプ144のリニア誤差係数Teを演算する。
ここで、DACアンプ144のリニア誤差係数Teは、マークパターン12のx方向の位置を変えながら、各位置でXYステージが停止している状態でも測定可能である。よって、予めXYステージが停止している状態で測定されたリニア誤差係数Teを用いても構わない。
次に、遅延時間演算部64は、XYステージ105の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置の情報を用いて、偏向器を制御する偏向制御系で生じる偏向制御の開始が遅延する偏向制御遅延時間αを演算する。ここで、偏向制御回路128及びDACアンプ144,146は、偏向制御系の一例である。具体的には遅延テーブルを読み出し、XYステージ105の移動速度vに応じた差分Bを演算し、得られたリニア誤差係数Teを式(12)に代入して、XYステージ105の移動速度vに応じた偏向制御遅延時間αを演算すればよい。
トラッキング位置演算工程(S202)として、トラッキング位置演算回路134は、主偏向器208でトラッキング制御を行うための基準位置となるトラッキング位置x’を演算する。ここでは、照射領域34の中心位置Aを合わせる基板101の座標を演算する。
補正工程(S204)として、補正回路136(補正部)は、偏向制御遅延時間αを用いて、マルチビーム20(電子ビーム)の偏向位置を補正する。具体的には、マルチビーム20の照射領域34の中心位置Aを合わせるトラッキング位置x’を補正する。かかる補正は、トラッキング位置x’に対して、ステージ速度vと偏向制御遅延時間αとを乗じた値を加算すればよい。これにより、偏向制御遅延時間αにより遅れた位置をトラッキング位置x’にすることができる。また、補正回路136(補正部)は、リニア誤差係数Teを用いて、合わせてDACアンプ144のリニア誤差を補正すると好適である。かかる補正は、偏向制御遅延時間αが補正されたトラッキング位置x’に対して、さらに、ステージ速度vとトラッキング時間とリニア誤差係数Teとを乗じた値を加算すればよい。かかる補正により、実際にトラッキングしている位置と偏向制御上の位置とを一致させることができる。
なお、偏向制御遅延時間αを用いた補正により、偏向制御遅延時間αよりも遅い例えば機械振動等による偏向誤差も同時に補正できる。
画像取得工程(S206)として、画像取得機構150は、補正された偏向位置で基板101面に形成された図形パターンの画像を取得する。画像を取得する手法は、上述した通りである。そして、上述したように、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
参照画像作成工程(208)として、参照画像作成回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、マスクダイ毎に、参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力され、比較回路108内の図示しないメモリに格納される。
比較工程(S210)として、比較回路108は、基板101から測定された測定画像と、対応する参照画像とを比較する。ここでは、被検査画像として、マスクダイ画像を用いる。比較回路108は、被検査画像となるマスクダイ画像と参照画像となるマスクダイ画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。
そして、位置合わせされた被検査画像と参照画像とを、画素毎に比較する。所定の判定閾値を用いて所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥候補と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
上述したダイ−データベース検査の他に、ダイ−ダイ検査を行っても良い。ダイ−ダイ検査を行う場合、同一基板101上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する。そのため、画像取得機構150は、マルチビーム20(電子ビーム)を用いて、同じ図形パターン同士(第1と第2の図形パターン)が異なる位置に形成された基板101から一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)のそれぞれの2次電子画像である測定画像を取得する。かかる場合、取得される一方の図形パターンの測定画像が参照画像となり、他方の図形パターンの測定画像が被検査画像となる。取得される一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)の画像は、同じチップパターンデータ内にあっても良いし、異なるチップパターンデータに分かれていてもよい。検査の仕方は、ダイ−データベース検査と同様で構わない。
以上のように、実施の形態1によれば、ビームの偏向位置のずれを抑制した画像を取得できる。そのため、高精度なパターン検査ができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、マルチビームを用いた検査装置について説明したが、上述した偏向制御遅延によるビームの偏向位置のずれは、マルチビームに限るものではない。実施の形態2では、シングルビームを用いた検査装置に適用する場合について説明する。
図13は、実施の形態2における検査装置の構成を示す概念図である。図13において、検査装置400は、画像取得機構450と制御系回路460を備えている。検査装置400は、電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置400は、電子ビーム画像取得装置の一例である。画像取得機構450は、電子ビームカラム402(電子鏡筒)、検査室403、検出回路406、チップパターンメモリ423、ステージ駆動機構442、及びレーザ測長システム422を備えている。電子ビームカラム402内には、電子銃501、縮小レンズ505、偏向器512、制限アパーチャ基板506、対物レンズ507、主偏向器508、副偏向器509、及び検出器522が配置されている。
検査室403内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ405が配置される。XYステージ405上には、検査対象となる基板401が配置される。基板401には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板401が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板401が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板401が半導体基板である場合を主として説明する。基板401は、例えば、パターン形成面を上側に向けてXYステージ105に配置される。また、XYステージ405上には、検査室403の外部に配置されたレーザ測長システム422から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー516が配置されている。また、XYステージ405上には、後述するマークが形成されたマークステージ517が配置されている。マークステージ517表面の高さ位置は基板401面と実質的に同じ高さ位置に配置される。検出器522は、電子ビームカラム402の外部で検出回路406に接続される。検出回路406は、チップパターンメモリ423に接続される。
制御系回路460では、検査装置400全体を制御する制御計算機410が、バス420を介して、位置回路407、比較回路408、参照画像作成回路412、ステージ制御回路414、レンズ制御回路424、ブランキング制御回路426、偏向制御回路428、マーク測定回路130、遅延時間テーブル作成回路132、トラッキング位置演算回路434、補正回路436、磁気ディスク装置等の記憶装置409、モニタ417、メモリ418、及びプリンタ419に接続されている。また、偏向制御回路428は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ444,446に接続される。DACアンプ444は、主偏向器508に接続され、DACアンプ446は、副偏向器509に接続される。
また、チップパターンメモリ423は、比較回路408に接続されている。また、XYステージ405は、ステージ制御回路414の制御の下に駆動機構442により駆動される。駆動機構442では、例えば、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ405が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYステージ405は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ405の移動位置はレーザ測長システム422により測定され、位置回路407に供給される。レーザ測長システム422は、ミラー516からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ405の位置を測長する。
電子銃5201(放出源)から放出された1本の電子ビーム500は、縮小レンズ505によって、縮小され、制限アパーチャ基板506に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、偏向器512によって、1本の電子ビーム500が偏向された場合には、制限アパーチャ基板506の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板506によって遮蔽される。一方、偏向器512によって偏向されなかった1本の電子ビーム500は、図13に示すように制限アパーチャ基板506の中心の穴を通過する。かかる偏向器512のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ基板506は、偏向器512によってビームOFFの状態になるように偏向された1本の電子ビーム500を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板506を通過した1本の電子ビーム500が検査用のビームとなる。制限アパーチャ基板506を通過した1本の電子ビーム500は、対物レンズ507により試料401面上に焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器508及び副偏向器509によって、偏向され、基板101上の照射位置に照射される。かかる場合に、主偏向器508によって、電子ビーム500が走査するマスクダイの基準位置に電子ビーム500を偏向する。実施の形態2では、実施の形態1と同様、XYステージ405を連続移動させながらスキャンを行う。そのため、主偏向器508は、さらにXYステージ405の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器509によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するように電子ビーム500を偏向する。基板401の所望する位置に電子ビーム500が照射されたことに起因して基板401から電子ビーム500に対応する、反射電子を含む2次電子600(図13の点線)が放出される。基板401から放出された2次電子600は、検出器522で検出される。
実施の形態4におけるスキャン動作では、マスクダイ33毎にスキャン(走査)される。図4に示したある1つのマスクダイ33を1本の電子ビーム500で順に走査する。具体的には、主偏向器508によって、XYステージ405の移動に追従するように、トラッキング偏向を行いながら、トラッキング偏向されている状態で、副偏向器509によって、当該マスクダイ33内を画素毎に順にビームが照射されるように走査(スキャン動作)する。このように、実施の形態2では、シングルビームを用いるので、マルチビーム20を用いる実施の形態1に比べて、スキャン動作に時間がかかる。
実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図は、図7と同様である。以下、特に説明しない点の内容は、実施の形態1と同様である。
マーク座標設定工程(S101)として、座標設定部40は、マークステージ517上に形成されたマーク座標を設定する。
図14は、実施の形態2における偏向領域とマークの一例を示す図である。図14(a)では、主偏向器208により偏向可能な主偏向領域14と、±x方向にトラッキング制御するトラッキング偏向領域16の一例とを示している。図14(b)では、マークステージ517上のマークパターン12を示している。マークパターン12は、実施の形態1と同様、ステージ移動方向に直交する方向(例えばy方向)に延びる孤立ラインパターンが用いられる。実施の形態2では、シングルビームを用いるため、マークパターン12のy方向の長さに制限はない。また、マークパターン12のx方向の幅サイズは、実施の形態1と同様、2Wを用いればよい。但し、Wの値は、実施の形態1と異なっても構わない。マーク座標として、マークパターン12の例えば中心位置P0(x0,y0)を用いればよい。マーク座標として、主にx座標(ステージ移動方向の座標)が必要となるため、y座標はマークパターン12の中心からずれた位置でも構わない。
ステージ移動方向設定工程(S102)として、移動方向設定部42は、マークパターン12をスキャンする場合におけるXYステージ405の移動方向を設定する。ここでは、XYステージ405を例えば±x方向に移動する場合を想定しているため、+x方向、或いは−x方向が設定される。
ステージ速度設定工程(S104)として、速度設定部44は、XYステージ405の連続移動速度を設定する。連続移動するXYステージ405の移動速度を可変にしてマークパターン12をスキャンするため、ここでは、予め設定された複数の移動速度の中から1つを設定することになる。
ステージ移動工程(S106)として、ステージ制御回路414による制御のもと、駆動機構442は、XYステージ405を設定された方向に連続移動(等速移動)させる。なお、電子ビーム500の偏向座標系の中心、言いかえれば、主偏向器208で偏向可能な主偏向領域14の中心部のトラッキング偏向領域16がマークパターン12上を通過可能な位置からXYステージ405を設定された方向に等速移動させる。
マークスキャン工程(S108)として、制御計算機410による制御のもと、画像取得機構450は、電子ビーム500を用いて、図形パターンが形成された基板を載置するためのステージを移動しながらステージ上に配置されたマークパターン12をスキャンする。
図15は、実施の形態2におけるステージ移動とマークスキャンの仕方を説明するための図である。図15の例では、XYステージ405が−x方向に速度vで等速移動する場合における、主偏向領域14の中心部のトラッキング偏向領域16と、マークパターン12と、の位置関係の一例を示している。図15(a)に示すようにトラッキング偏向領域16のx方向側に外れた位置にマークパターン12が位置する状態から、XYステージ405が−x方向に速度vで等速移動することによって、図15(b)に示すようにトラッキング偏向領域16のx方向中心がマークパターン12の中心位置P0(x0,y0)と一致する瞬間が訪れる。その後、XYステージ405の移動によって、図15(c)に示すようにトラッキング偏向領域16の−x方向側に外れた位置にマークパターン12が移動する。そして、画像取得機構450は、偏向制御回路428による制御のもと、マークパターン12の中心位置P0(x0,y0)が、電子ビーム500の偏向座標系の中心、言いかえれば、主偏向器208でトラッキング制御によりビームを偏向していない状態となるトラッキング偏向領域16のx方向中心と一致したときに、副偏向器509を使って、マークパターン12の左エッジが照射されるように電子ビーム500でスキャンする。
そして、電子ビーム500の照射によってマークステージ217から放出された2次電子600を検出器522で検出する。検出されたデータは、測定順に検出回路406に出力される。検出回路406内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ423に格納される。電子ビーム500によってスキャンされた際に得られた2次電子の像がマークパターン12の測定画像となる。このようにして、画像取得機構150は、マークステージ517上に形成されたマークパターン12の測定画像を取得する。
マージエッジ位置測定工程(S110)として、エッジ位置測定部46(測定部)は、電子ビーム500を用いて、図形パターンが形成された基板401を載置するためのXYステージ405を移動しながらXYステージ405上に配置されたマークパターン12をスキャンすることによってマークパターン12のエッジ位置を測定する。具体的には、エッジ位置測定部46は、電子ビーム500によるスキャンによって得られた2次電子像からマークパターン12の左右エッジの位置を測定する。
そして、XYステージ405の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置の測定が完了するまで、ステージ速度設定工程(S104)からステージ移動方向変更工程(S118)までの各工程を繰り返す。ステージ速度設定工程(S104)からステージ移動方向変更工程(S118)までの各工程の内容は、実施の形態1と同様である。但し、マルチビーム20の中心ビーム21を電子ビーム500と読み替え、その他の構成の符号を実施の形態2の対応する構成の符号に読み替える。XYステージ405の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置の各データは、遅延時間テーブル作成回路132に出力される。
遅延テーブル作成工程(S120)の内容は、実施の形態1と同様である。但し、各構成の符号を実施の形態2の対応する構成の符号に読み替える。作成された遅延テーブルは、記憶装置409に格納される。
以上のように、偏向制御遅延時間αを演算する基データとなる遅延テーブルを基板401の画像取得前に予め作成しておく。かかる遅延テーブルを取得した後に、基板401の検査を開始する。まずは、検査用に用いる画像取得のためのXYステージ405の移動速度vを設定する。スキャン速度Δtは、画素36への照射時間から得られる。
遅延時間演算工程(S122)として、リニア誤差演算部66は、遅延テーブルを読み出し、式(10)からXYステージ405の移動速度vに応じたトラッキング制御用のDACアンプ444のリニア誤差係数Teを演算する。
ここで、DACアンプ444のリニア誤差係数Teは、マークパターン12のx方向の位置を変えながら、各位置でXYステージが停止している状態でも測定可能である。よって、予めXYステージが停止している状態で測定されたリニア誤差係数Teを用いても構わない。
次に、遅延時間演算部64は、XYステージ405の両方向の移動方向におけるそれぞれ複数のステージ速度でのマークパターン12の左右エッジの位置の情報を用いて、偏向器を制御する偏向制御系で生じる偏向制御の開始が遅延する偏向制御遅延時間αを演算する。ここで、偏向制御回路428及びDACアンプ444,446は、偏向制御系の一例である。具体的には遅延テーブルを読み出し、XYステージ405の移動速度vに応じた差分Bを演算し、得られたリニア誤差係数Teを式(12)に代入して、XYステージ405の移動速度vに応じた偏向制御遅延時間αを演算すればよい。
トラッキング位置演算工程(S202)として、トラッキング位置演算回路434は、主偏向器508でトラッキング制御を行うための基準位置となるトラッキング位置x’を演算する。ここでは、主偏向器208が偏向するトラッキング偏向領域16の中心位置(トラッキング位置x’)を合わせる基板401の座標を演算する。
補正工程(S204)として、補正回路436(補正部)は、偏向制御遅延時間αを用いて、電子ビーム500の偏向位置を補正する。具体的には、トラッキング位置x’に対して、ステージ速度vと偏向制御遅延時間αとを乗じた値を加算すればよい。これにより、偏向制御遅延時間αにより遅れた位置をトラッキング位置x’にすることができる。また、補正回路436(補正部)は、リニア誤差係数Teを用いて、合わせてDACアンプ444のリニア誤差を補正すると好適である。かかる補正は、偏向制御遅延時間αが補正されたトラッキング位置x’に対して、さらに、ステージ速度vとトラッキング時間とリニア誤差係数Teとを乗じた値を加算すればよい。かかる補正により、実際にトラッキングしている位置と偏向制御上の位置とを一致させることができる。
なお、偏向制御遅延時間αを用いた補正により、偏向制御遅延時間αよりも遅い例えば機械振動等による偏向誤差も同時に補正できる。
画像取得工程(S206)として、画像取得機構450は、補正された偏向位置で基板401面に形成された図形パターンの画像を取得する。画像を取得する手法は、上述した通りである。そして、上述したように、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路407からの各位置を示す情報と共に、比較回路408に転送される。
参照画像作成工程(208)として、参照画像作成回路412は、基板401にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、マスクダイ毎に、参照画像を作成する。作成方法は実施の形態1と同様である。
比較工程(S210)として、比較回路408は、基板401から測定された測定画像と、対応する参照画像とを比較する。比較工程(S210)の内容は、実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態2によれば、シングルビームの偏向位置のずれを抑制した画像を取得できる。そのため、高精度なパターン検査ができる。
以上の説明において、一連の「〜回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107(407)、比較回路108(408)、参照画像作成回路112(412)、マーク位置測定回路130、遅延時間テーブル作成回路132、トラッキング位置演算回路134(434)、及び補正回路136(436)等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。