JP2019060606A - 光熱変換分析装置および液体セル - Google Patents
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Abstract
【課題】反射型光熱変換分析装置において、励起光が通過する部品においてもわずかに吸収され、光学特性を劣化し信号の雑音となる課題があった。そこで、サンプル液に含有する試料を小型・高感度に分析が可能である反射型の光熱変換分析装置を実現することを目的とする。【解決手段】励起光を発する励起光源と、検出光を発する検出光源と、検出光を受光して検出光の強度を検知する検出器と、を備える光熱変換分析装置で用いられる液体セルに、前記測定対象試料を透過した検出光の少なくとも一部を反射する反射部材を備える。この反射部材の検出光に対する反射率を、励起光に対する反射率より大きくする。【選択図】 図1
Description
本発明は、熱レンズ効果を用いた光熱変換分析装置および当該装置に用いられる液体セルに関するものである。
測定対象の試料を混ぜたサンプルに特定の波長の光を集光して照射すると、そのサンプルは光を吸収し、温度が局所的に上昇する。この温度上昇に応じてサンプルの屈折率が変化する。多くの物質では、温度上昇により屈折率は低下するため、光の集光部近傍のサンプル液は凹レンズが生じたような光学効果が起こる。この効果は一般的に熱レンズ効果と言われている。この効果を積極的に利用し、非蛍光物質の試料の濃度を高感度に測定する装置として光熱変換分析装置が知られている。光熱変換分析装置としては、透過型装置と反射型装置がある。透過型装置は、検出器がサンプルに対して光源と反対側の光路に配置され、サンプルを透過した検出光を検出するものである。一方、反射型装置は、検出器がサンプルに対して光源側の光路に配置され、サンプルに対して光源と反対側の空間で反射した検出光を検出するものである。反射型装置では、熱レンズ効果を生じるサンプルを検出光が二度通過するため、検出感度を向上させることが可能である。
特許文献1には、試料を通過したレーザ光をミラーで折り返し、再び試料を通過させ、その反射光を用いて分析する反射光学系を用いた光熱変換分析装置が開示されている。
光熱変換分析装置で分析可能な試料の濃度下限は、装置の固有のノイズで決まる。励起光源から出射した励起光はサンプル以外の試料セルや対物レンズなどの光学素子にも僅かに吸収される。それにより、各光学素子は発熱し、熱レンズ効果が生じる。これら熱レンズ効果を生じた光学素子を検出光が透過するため、検出信号に各光学素子の熱レンズ効果に起因したノイズが発生する。特に反射型装置では、検出光が試料セルや光学素子を2度通るため、このようにサンプル以外で発生する熱レンズ効果に起因するノイズが分析感度低下の大きな原因となる。
本発明は上記従来技術の課題を踏まえなされたものであり、試料の高感度分析が可能である反射型光熱変換分析装置およびこれに用いられる液体セルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の光熱変換分析装置は、励起光を発する励起光源と、前記励起光とは異なる波長の検出光を発する検出光源と、前記検出光を受光して当該検出光の強度を検知する検出器と、測定対象試料を格納する液体セルと、前記測定対象試料を透過した検出光の少なくとも一部を反射する反射部材と、を備え、前記反射部材の前記検出光に対する反射率は、前記反射部材の前記励起光に対する反射率より大きいことを特徴とする。
本発明によれば、反射型光熱変換分析装置において、サンプルを高感度に分析することが可能となる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。
本実施例の光熱変換分析装置は、蛍光を使わずにサンプル内の微量成分を検出することができるため、汎用の装置のみならず、例えば生化学自動分析装置、免疫自動分析装置、などの臨床検査用自動分析装置にも用いることができる。
なお、以下では測定対象となる試料をサンプル液と称する。
図1は、本実施例の光熱変換分析装置を示す構成図である。図1の光熱変換分析装置は、励起光を発生するレーザである励起光源101、検出光を発生するレーザである検出光源102、フィルタや波長板や集束レンズからなり励起光や検出光を選択または集束する光学系、検出光を受光してその強度を検出する検出器111、および光源や検出器などの各部品を制御する制御部を有する。ここで、励起光と検出光の波長は異なるものとし、図中、励起光L1の光線を一点鎖線、検出光L2の光線を実線で記載している。
より具体的には、光学系は、励起光を透過し検出光を反射する第一フィルタ103および第二フィルタ104、4分の1波長板105、励起光および検出光を所定の位置に集束させる第1の集束レンズ106を含む。励起光源101、検出光源102はそれぞれ駆動回路202,204によって動作制御される。また、検出器111は、ピンホール115、検出光をピンホール115に集束させる第2の集光レンズ118、ピンホール115を通過した光を検出する受光素子116を含む。なお、検出器111は、ピンホール115と受光素子116だけで構成する一般的な検出器に限らず、非点収差法やナイフエッジ法などを用いた検出器でも良い。また、図1のように検出器111の前に励起光を遮断する第三のフィルタ110を備えてもよい。受光素子16で検出された電気信号は電流―電圧変換回路201、ロックインアンプ203を介して制御部であるコンピュータ205に入力される。
光熱変換分析装置の制御部は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、図1のように光熱変換分析装置に接続されたコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。
光熱変換分析装置の動作を説明する。
コンピュータ205で設定された駆動回路202からの信号に基づき、励起光源101から特定周波数f0で強度変調された励起光L1が出射し、第一のフィルタ103を通過する。一方、検出光L2はコンピュータ205で設定された駆動回路204からの信号に基づき、検出光源102から連続波として出射され、第一のフィルタ103で反射し、第一のフィルタ103を通過した励起光L1と同一光軸上に合わされる。合わされた光は第二のフィルタ104と第一の4分の1波長板105を通過する。第一の4分の1波長板105を通過した励起光L1と検出光L2は第一の集光レンズ106で液体セル107内に格納されたサンプル液109中に集光される。
図2は、液体セル107近傍の励起光L1と検出光L2の光路の概略図である。
励起光L1は、液体セル107内のサンプル液109中のある一点に集光される。検出光L2は、液体セル107内のサンプル液109を通過後、液体セル107に設けた反射部材108に集光される。反射部材108は液体セル107の内壁に設けられている。また、別の例として、液体セルが透明であれば反射部材108は液体セルの外壁に設けられてもよいし、液体セル外部に設けられてもよい。ただし、この場合には励起光L1が液体セルを通過することになるため液体セル自体で励起光L1を吸収し発熱する可能性があるため、反射部材108は液体セルの中に設けられることが好ましい。集光された検出光の少なくとも一部は反射部材108によって反射される。
図3(a)と図3(b)は、反射部材108の反射率の波長依存性の例である。
図3(a)と図3(b)に示すように反射部材108の検出光L2に対する反射率は、励起光L1に対する反射率より大きい。反射しない光の大半は反射部材108を透過し、液体セル107外部に放出される。反射部材108は、例えば屈折率の異なる複数の誘電体を積層し、各層の厚みや材料を変えた誘電体多層膜反射鏡を用いてもよい。
サンプル液109を透過した検出光L2の大半は、反射部材108で反射され、再び第一の集光レンズ106と第一の4分の1波長板105を通過した後、今度は第二のフィルタ104で反射され、第三のフィルタ110と第二の集光レンズ118とピンホール115を通過後、受光素子116に照射される。
次に、サンプル液109に含有する試料の濃度の測定方法について説明する。
第二のフィルタ104と第一の4分の1波長板105を通過した励起光L1は第一の集光レンズ106で集光され、サンプル液109に照射される。
図4(a)は、サンプル液109内に熱レンズが発生しているときの液体セル107内での検出光L2の光路を説明する図である。図4(b)は、サンプル液109内に熱レンズが発生しているときの、検出光L2が検出器111に照射されるまでの光路を説明する図である。なお、熱レンズが生じた時の検出光L2の光線の軌跡を図中破線で表記している。
サンプル液109に励起光L1を吸収する試料を含有する場合、試料の濃度に応じてサンプル液109は励起光L1の一部を吸収して発熱し、熱レンズが形成される。励起光L1によりサンプル液109内部に熱レンズが形成される場合、図4(a)の破線の光線で示すように熱レンズを通過した検出光L2の集光角度が小さくなる。反射部材108で反射された検出光L2は再び熱レンズを通過し、図4(a)に示す第一の集光レンズ106を通過し弱発散光として第一の4分の1波長板105を通過し、第二のフィルタ104で反射される。第二のフィルタ104で反射された検出光L2は第三のフィルタ110を通過し第二の集光レンズ118で集光される。ピンホール115は熱レンズが生じない時の検出光L2の集光点近傍に配置されている。そのため、弱発散光として第二の集光レンズ118を通過した検出光L2はピンホール115の位置で光束が十分に集光されておらず、光束の一部がピンホール115で欠損され、受光素子116上に照射される。つまり、ピンホール115を通過し、受光素子116で検出される検出光L2の光量は、励起光L1がサンプル液109に吸収される光量に比例した変化を生じる。つまり、試料に励起光L1の一部が吸収されると熱レンズが生じこれによって、検出器111で検出される検出光L2は弱くなる。
検出器111で受光された特定周波数f0で強度変調された検出光L2の電流信号は図1に示す電流―電圧変換回路201で電圧信号に変換された後、ロックインアンプ203に入力される。ロックインアンプ203は、さらに励起光源101の駆動回路202から励起光L1の変調周波数f0をリファレンス信号として入力することで、検出器111で受光された検出光L2に含まれる信号を高精度に抽出し、その信号をコンピュータ205に出力する。これらの手順によりサンプル液109に含まれる測定対象の試料濃度を分析する。
なお、励起光源101がガスレーザなどの直接高速に変調できない光源の場合は、励起光源101から出力された励起光L1をチョッパ等の光強度を高速に変調可能な装置を励起光源101と第一のフィルタ103との間に配置しても良い。この時、ロックインアンプ203には駆動回路202からのリファレンス信号の代わりにチョッパ制御装置からのリファレンス信号を用いる。
本実施例1においては、反射部材108が波長選択性を持っており、励起光L1の大部分が反射部材108を透過する。そのため、従来課題であった反射部材108からの励起光L1の反射光量が少ない。それにより、反射した励起光L1により各光学素子に生じる熱レンズ効果を低減でき、結果として背景ノイズを低減できる。
次に、反射部材108からの熱を断熱または放熱することによって背景ノイズを低減する例について説明する。実施例2の基本構成は実施例1と同様であるため、以下では、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
図5は実施例2における試料セル近傍の説明する図である。これを用いて反射部材108の設置位置について説明する。
図5(a)では、反射部材108とサンプル液109の間に断熱部材112を有する構成である。図5(a)において、反射部材108は励起光L1の一部を吸収し、発熱する。それにより、反射部材108に接するサンプル液109が温められ、背景ノイズとなる熱レンズ効果を生じる。そこで、本実施例2では反射部材108とサンプル液109の間に断熱部材112を挟む。断熱部材112を反射部材108とサンプル液109の界面に挿入することで、反射部材108が吸収した励起光L1による熱が反射部材108からサンプル液109に伝わり難くなるため、背景ノイズが低減し、検出感度をさらに向上することができる。
また、図5(b)に示すように、反射部材108の背面に放熱部材114を固定した構造でもよい。これにより、励起光L1により発熱した反射部材108の熱は、背面固定した放熱部材114に伝わり、サンプル液109に伝わり難くなるため、背景ノイズが低減し、検出感度をさらに向上することができる。
なお、図5(a)の断熱部材112と図5(b)の放熱部材114を合わせて用いてもよい。
次に、測定対象試料の種類によって励起光の波長を変える例について説明する。実施例3の基本構成は実施例1と同様であるため、以下では、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
本実施例では、励起光源として励起光の波長が変更可能な波長可変励起光源を用い、また、反射部材として、反射率の波長依存性を任意に調整可能な反射部材113を用いる。
サンプル液109に含まれる測定対象の試料が異なると、サンプル液109に吸収され易い励起光L1の波長が異なる。そこで、本実施例では、光熱変換分析装置で分析するサンプル液109に含まれる測定対象の試料に合わせた励起光の波長に変更可能な波長可変励起光源を用いる。
また、実施例1や実施例2で説明した図2に示す誘電体多層膜反射鏡を用いた反射部材108は、特定の励起光L1の波長の反射率が低く(=透過率が高く)、特定の検出光L2の波長の反射率が高く設計されている。そのため、異なる励起光L1の波長に対しては、反射率が増加し、それに伴ってノイズが増加することで検出感度が低下する。
そこで本実施例では、反射部材108として、反射率の波長依存性を任意に調整可能な反射部材113を用いる。
図6(a)は本実施例における反射部材113の構造を説明する図である。図6(b)は反射部材113の反射率の波長依存性を説明する図である。
図6(a)に示すように、反射率の波長依存性を任意に調整可能な反射部材113は、例えば液体セル107に固定された反射部材113bと光軸方向に位置調整可能な反射部材113aの2つの部材が積層されて構成されている。反射部材113aと反射部材113bとの間には間隙がある。反射部材113aと反射部材113bとの間隙を広げると、反射部材113を透過する励起光L1の波長はλ1からλ2に波長が長くなる。したがって、この間隙を調整して、励起光L1の反射率が低く、検出光L2の反射率が高くなるようにすればよい。本実施例の液体セルは、反射部材113a、113bの少なくともいずれかを積層方向(反射部材の平面に垂直な方向)に可動とする位置調整機構を設ける。
なお、反射部材の間隔を調整する機構は例えば半導体加工技術を用いたMEMSアクチュエータを用いても良い。また、位置調整可能な反射部材113aは複数あって、位置調整可能な反射部材が多段になっていても良い。また、反射部材113aと反射部材113bとの間の間隙には液体などが満たされていても良い。
このように、サンプル液109に含まれる測定対象の試料の吸収スペクトルにあわせた励起光L1と反射部材113を用いることで、幅広い種類の試料を高感度に検出できる。
101:励起光源、102:検出光源、103:第一のフィルタ、104:第二のフィルタ、105:第一の4分の1波長板、106:第一の集光レンズ、107:液体セル、108:反射部材、109:サンプル液、110:第三のフィルタ、111:検出器、112:断熱部材、113:反射部材、115:ピンホール、116:受光素子、118:第二の集光レンズ、201:電流‐電圧変換回路、202:励起光源の駆動回路、203:ロックインアンプ、204:検出光源の駆動回路、205:コンピュータ、L1:励起光、L2:検出光、300:光熱変換分析装置
Claims (11)
- 励起光を発する励起光源と、
前記励起光とは異なる波長の検出光を発する検出光源と、
前記検出光を受光して当該検出光の強度を検知する検出器と、
測定対象試料を格納する液体セルと、
前記測定対象試料を透過した検出光の少なくとも一部を反射する反射部材と、を備え、
前記反射部材の前記検出光に対する反射率は、前記反射部材の前記励起光に対する反射率より大きいことを特徴とする光熱変換分析装置。 - 請求項1に記載の光熱変換分析装置において、
前記反射部材は前記液体セルに設けられていることを特徴とする光熱変換分析装置。 - 請求項1に記載の光熱変換分析装置において、
前記反射部材は前記液体セルの内壁に設けられ、
前記測定対象試料と前記反射部材の間に断熱部材を備えることを特徴とする光熱変換分析装置。 - 請求項1に記載の光熱変換分析装置において、さらに、
前記反射部材の背面に設けられた放熱部材を備えることを特徴とする光熱変換分析装置。 - 請求項1に記載の光熱変換分析装置において、
前記反射部材は反射率の波長依存性が可変であることを特徴とする光熱変換分析装置。 - 請求項5に記載の光熱変換分析装置において、
前記反射部材は、複数の反射部材が積層された構造であり、
前記複数の反射部材の少なくとも1つを積層方向に可動とする位置調整機構を備えることを特徴とする光熱変換分析装置。 - 励起光を発する励起光源と、前記励起光とは異なる波長の検出光を発する検出光源と、前記検出光を受光して当該検出光の強度を検知する検出器と、を備える光熱変換分析装置で用いられる、測定対象試料を格納する液体セルであって、
当該液体セルは、前記測定対象試料を透過した検出光の少なくとも一部を反射する反射部材と、を備え、
前記反射部材の前記検出光に対する反射率は、前記反射部材の前記励起光に対する反射率より大きいことを特徴とする液体セル。 - 請求項7に記載の液体セルにおいて、
前記反射部材は前記液体セルの内壁に設けられ、
前記測定対象試料と前記反射部材の間に断熱部材を備えることを特徴とする液体セル。 - 請求項7に記載の液体セルにおいて、さらに、
前記反射部材の背面に設けられた放熱部材を備えることを特徴とする液体セル。 - 請求項7に記載の液体セルにおいて、
前記反射部材は反射率の波長依存性が可変であることを特徴とする液体セル。 - 請求項10に記載の液体セルにおいて、
前記反射部材は、複数の反射部材が積層された構造であり、
前記複数の反射部材の少なくとも1つを積層方向に可動とする位置調整機構を備えることを特徴とする液体セル。
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