以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
<熱膨張性シート100>
図1に、本実施形態に係る造形物を製造するための熱膨張性シート100の断面構成を示す。熱膨張性シート100は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートに垂直な方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
図1に示すように、熱膨張性シート100は、基材101と、熱膨張層102と、インク受容層103とを、この順に備えている。なお、図1は、造形物が造形される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート100の断面を示している。
基材101は、熱膨張性シート100の元となるシート状の媒体である。基材101は、熱膨張層102とインク受容層103とを支持する支持体であって、熱膨張性シート100の強度を保持する役割を担う。基材101として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材101の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層102は、基材101の上側に積層されており、規定の温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層102は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5〜50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層102は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層103は、熱膨張層102の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層103は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層103は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層103の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている汎用的な材料を用いることができる。
造形システム1は、このような熱膨張性シート100に造形物を造形することができる。熱膨張性シート100の表面又は裏面のうちの膨張させたい部分には、カーボン分子が印刷される。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート100において、カーボン分子が印刷された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層102が膨張して隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層102の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート100に造形物が造形される。
図2に、一例として、建物の外壁材として用いられるレンガを模した造形物10が熱膨張性シート100に造形された場合を示す。このように、熱膨張性シート100における膨張させる箇所及び高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を造形することができる。造形は、造型とも呼ぶ。また、造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
<造形システム1>
次に、図3を参照して、熱膨張性シート100に造形物10を造形する造形システム1について説明する。図3に示すように、造形システム1は、画像処理装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
画像処理装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置(端末装置)であって、印刷装置40及び膨張装置50を制御する制御ユニットである。図4に示すように、画像処理装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、画像処理装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。また、図4に示すように、記憶部32は、造形データ321を記憶している。
造形データ321は、熱膨張性シート100に造形物を造形するために必要となるデータである。造形データ321は、印刷装置40によって熱膨張性シート100に印刷される画像のデータ、具体的には、造形物の立体形状を造形するための画像である濃淡画像(造形用画像)のデータと、造形物に着色するための画像であるカラー画像(着色用画像)のデータと、を含んでいる。
濃淡画像は、熱膨張性シート100における膨張させる部分と膨張の度合いとを白黒の濃淡によって示す画像である。濃淡画像200aは、熱膨張性シート100を熱膨張させるために所定の電磁波が照射されると熱を帯びる材料で熱膨張性シート100に印刷される画像である。図5に、一例として濃淡画像200aを示す。濃淡画像200aにおいて、黒色及び斜線が付された部分は、熱膨張性シート100における膨張させる部分を示している。また、濃淡画像200aにおいて、色が濃い(濃度が高い及び輝度が低い)ほど膨張の度合いが大きく、色が薄い(濃度が低い及び輝度が高い)ほど膨張の度合いが小さいことを示している。このように、濃淡画像200aでは、造形すべき造形物の立体形状を熱膨張性シート100上に形成することができるように、熱膨張性シート100のうちのより大きく膨張させる部分により高い濃度で濃淡のパターンが描かれている。
なお、記憶部32は、濃淡画像のデータとして、熱膨張性シート100の表面(インク受容層103側の面)に印刷される画像データ(表面発泡データ)と、熱膨張性シート100の裏面(基材101側の面)に印刷される画像データ(裏面発泡データ)と、を記憶している。
カラー画像は、図示しないが、濃淡画像によって造形された造形物に着色するための色彩を示す画像である。例えば図2に示したレンガを模した造形物10を造形する場合には、カラー画像は、レンガを構成する複数のブロックに相当する部分を、レンガを模した色彩に着色するための画像である。カラー画像は、カラーインクのうちの少なくとも1色のインクで、熱膨張性シート100の表面に印刷される。
記憶部32は、図5に示した濃淡画像200aを含む、様々な造形物を造形するための濃淡画像(以下では「濃淡画像200」と総称する。)、及びカラー画像のデータを記憶している。このような濃淡画像及びカラー画像のデータは、記録媒体駆動部35によって記録媒体から読み取られて、又は、通信部36を介して外部の機器から取得されて、予め記憶部32に記憶される。或いは、濃淡画像及びカラー画像は、操作部33を介してユーザによって生成又は編集されることもできる。
図4に戻って、操作部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部33を操作することによって、造形データ321を生成又は編集する操作を入力し、また造形物10の造形処理を開始する指令を入力することができる。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。例えば、表示部34は、造形データ321を表示する。また、表示部34は、必要に応じて、印刷装置40又は膨張装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、造形データ321を可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。画像処理装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40、膨張装置50、及びその他の外部の機器と通信する。
図4に示すように、制御部31は、機能的に、受付手段として機能する受付部311と、判定手段として機能する判定部312と、生成手段として機能する生成部313と、出力手段(印刷制御手段)として機能する出力部314と、を備える。制御部31において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
受付部311は、造形対象となる造形物の指定をユーザから受け付ける。具体的に説明すると、ユーザは、操作部33を操作して、造形データ321として画像データが用意された複数の造形物のうちから、造形すべき所望の造形物を指定することができる。例えば図2に示した外壁材を模した造形物10を造形する場合、ユーザは、造形対象として外壁材を指定する。受付部311は、このようにしてユーザから入力された造形物の指定を受け付ける。受付部311は、制御部31が操作部33と協働することによって実現される。
判定部312は、受付部311によってユーザから造形物の指定を受け付けると、指定された造形物を造形するための濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否かを判定する。特定の条件とは、熱膨張性シート100が膨張する際に熱膨張性シート100が変形し易いか否かを判定するための条件である。判定部312は、制御部31が記憶部32と協働することによって実現される。
具体的に説明すると、熱膨張性シート100は、印刷装置40によって濃淡画像200が印刷された後、膨張装置50において電磁波を照射されることにより膨張する。このとき、熱膨張性シート100の内部では、熱膨張層102が膨張することによって応力が生じる。このような応力が原因で、熱膨張性シート100が歪む、反る等、熱膨張性シート100が意図しない形状に変形することがある。
図6に、一例として、濃度が高い領域、すなわち膨張の度合いが大きい領域が一方向(図6ではX方向)に細長い形状をしている濃淡画像200bを示す。熱膨張性シート100が膨張する際の応力は、特に熱膨張性シート100における膨張する部分と膨張しない部分との境界付近に強く生じる。そのため、濃淡画像200bに従って熱膨張性シート100が膨張する場合、図6において曲線の矢印で示すように、X方向に働く応力よりもY方向に働く応力の方が大きくなる。その結果、熱膨張性シート100は、X方向に反り易くなる。
特に、基材101は、その流れ目の方向、すなわち基材101を構成する繊維の方向に沿って反り易いという特性を有する。濃淡画像200の縦横の長さのうちの長い方の長さの方向が基材101の流れ目の方向である場合、すなわち図6の例では基材101の流れ目の方向がX方向である場合に、熱膨張性シート100はX方向により反り易くなる。
図7に、濃淡画像200bが印刷された熱膨張性シート100を膨張させた場合において、熱膨張性シート100が変形する様子を模式的に示す。膨張時にY方向に強く応力が働いた結果、熱膨張性シート100は、図7に示すように、点線で示す平面状から、熱膨張性シート100のY方向の両端部が熱膨張性シート100の表面に垂直な方向に弓なりに曲がり易くなる。このように熱膨張性シート100が変形すると、そこに造形される造形物の質を悪化させるおそれがある。
一方で、図8に、濃度が高い領域が細長くない、すなわちX方向とY方向とに同程度の長さの形状をしている濃淡画像200cを示す。濃淡画像200cに従って熱膨張性シート100が膨張する場合、図8において曲線の矢印で示すように、X方向にもY方向にも同程度の応力が働く。そのため、このように濃度が高い領域が細長い形状ではない場合、濃度が高い領域が細長い形状である場合に比べて、熱膨張性シート100は変形し難くなる。
また、図9から図11に、濃度が高い領域が細長い形状をしている別の例として、濃淡画像200d,200e,200fを示す。図9に示す濃淡画像200d及び図10に示す濃淡画像200eのように、濃度が高い領域が細長い形状であってもその大きさ(面積)が相対的に小さい場合には、膨張する部分の大きさが小さくなるため、生じる応力も小さくなる。或いは、図11に示す濃淡画像200fのように、濃度が高い領域が細長い形状であってもその濃度が相対的に低い場合には、膨張の度合いが小さくなるため、生じる応力も小さくなる。そのため、このように濃度が高い領域が小さい又は濃度が低い場合、濃度が高い領域が大きい又は濃度が高い場合に比べて、熱膨張性シート100は変形し難くなる。
このように、熱膨張性シート100の変形のし易さは、濃淡画像200における濃淡の分布の態様によって変化する。そのため、判定部312は、指定された濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否かを判定することにより、指定された濃淡画像200が熱膨張に伴って熱膨張性シート100を所定の許容度を超えて、すなわちそこに製造される造形物の品質を低下させる程度に歪ませる又は反らせる画像であるか否かを判定する。そのために、判定部312は、指定された濃淡画像200が熱膨張に伴って熱膨張性シート100を所定の許容度を超えて歪ませる又は反らせる歪み度合いを判定する。ここで、歪み度合いは、熱膨張性シート100の歪み又は反りの大きさを示す尺度である。
具体的に説明すると、判定部312は、指定された造形物を造形するための濃淡画像200から、濃度が相対的に高い領域を抽出する。濃度が相対的に高い領域とは、濃淡画像200における他の領域に比べて輝度値(画素値又は濃度値とも呼ぶ。)が低い、すなわち濃い(黒に近い)領域である。一例として、指定された造形物を造形するための濃淡画像200が、図5に示した濃淡画像200aである場合、判定部312は、濃度が相対的に高い領域として、図12において破線で示す高濃度領域210を抽出する。
判定部312は、濃淡画像200に含まれる各画素の輝度値が、予め設定された閾値より高いか低いかを判定する。そして、判定部312は、輝度値が閾値よりも高い領域を、高濃度領域210として抽出する。或いは、判定部312は、周知のエッジ検出のアルゴリズムによって、高濃度領域210を抽出しても良い。例えば、判定部312は、Sobelオペレータを適用することで、横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)のそれぞれについて濃度の勾配を見積もり、濃度が鋭く変化している部分をエッジとして検出する。そして、判定部312は、検出したエッジによって囲まれる領域を、高濃度領域210として抽出する。
濃淡画像200から高濃度領域210を抽出すると、判定部312は、高濃度領域210の形状、大きさ及び濃度に基づいて、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否かを判定する。具体的に説明すると、判定部312は、高濃度領域210の形状、大きさ及び濃度が、それぞれ第1、第2、及び第3の基準を満たしているか否かを判定する。そして、判定部312は、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合に、高濃度領域210の形状、大きさ及び濃度に基づいて歪み度合いを判定する。
第1の基準として、判定部312は、高濃度領域210の形状が熱膨張性シート100を変形させ易い細長い形状であるか否かを判定する。そのために、判定部312は、高濃度領域210の縦方向の長さと横方向の長さのうちの長い方の長さに対する短い方の長さの比率が第1の基準値よりも小さいか否かを判定する。
具体的に図12に示した濃淡画像200aでは、高濃度領域210の縦方向の長さと横方向の長さとはそれぞれLy及びLxに相当し、そのうちの長い方の長さはLxであり、短い方の長さはLyである。判定部312は、長い方の長さLxに対する短い方の長さLyの比率としてLy/Lxを計算し、計算した比率Ly/Lxが第1の基準値よりも小さいか否かを判定する。第1の基準値は、例えば0.5、0.3等、1よりも小さい値に予め設定されている。
例えば、図6、図9から図11に示した濃淡画像200b,200d〜200fのように、高濃度領域210が一方向に長い形状である場合には、比率Ly/Lxは、1より大きく小さい値になる。これに対して、図8に示した濃淡画像200cのように、高濃度領域210が細長い形状でない場合には、比率Ly/Lxは、1に近い値になる。このように、判定部312は、高濃度領域210における縦横の長さの比率に基づいて、高濃度領域210の形状が細長い形状であるか否かを判定する。このとき、判定部312は、計算した比率がより小さくなるほど、熱膨張性シート100の歪み度合いがより大きいと判定する。
なお、濃淡画像200における濃淡の分布によっては、複数の高濃度領域210が抽出される。例えば図13に示す濃淡画像200gのように、濃度が高い領域がX方向に複数並んで配置されている場合、X方向に互いに離れた複数の高濃度領域210が抽出される。このように複数の高濃度領域210が抽出された場合、判定部312が比率を計算するための高濃度領域210の縦横の長さは、自由に定義することができる。一例として、図13に示すように、横方向(X方向)の長さLxを、全ての高濃度領域210のうちのX座標の最大値と最小値との差として定義し、縦方向(Y方向)の長さLyを、全ての高濃度領域210のうちのY座標の最大値と最小値との差として定義することができる。或いは、判定部312は、平滑化(スムージング)処理によって全ての高濃度領域210を1つの高濃度領域210に繋ぎ合わせた画像を生成し、平滑化された画像における1つの高濃度領域210の縦横の長さを用いても良い。
次に、判定部312は、高濃度領域210の大きさ及び濃度を判定する。図9から図11を参照して述べたように、高濃度領域210の大きさが相対的に小さい場合、及び、高濃度領域210の濃度が相対的に低い場合には、熱膨張性シート100に働く応力も小さくなるため、熱膨張性シート100が変形し難くなる。そのため、判定部312は、高濃度領域210の大きさ及び濃度が熱膨張性シート100を変形させる程度であるか否かを判定する。
より詳細には、熱膨張性シート100の変形し易さは、熱膨張性シート100の面上における高濃度領域210が占める割合に応じて変わる。例えば、熱膨張性シート100に対する高濃度領域210が占める面積の比率が小さい場合には、高濃度領域210が熱膨張性シート100に与える影響は小さい。これに対して、熱膨張性シート100に対する高濃度領域210が占める面積の比率が大きいほど、熱膨張性シート100を変形させ易くなる。
そのため、判定部312は、第2の基準として、濃淡画像200が印刷される熱膨張性シート100の大きさ(サイズ)に対する高濃度領域210の大きさ(面積)の比率を計算し、計算した比率が第2の基準値よりも大きいか否かを判定する。そして、判定部312は、計算した比率が第2の基準値よりも大きい場合に、高濃度領域210の大きさが熱膨張性シート100を変形させる程度であると判定する。第2の基準値は、適宜の値に予め設定されている。このとき、判定部312は、計算した比率がより大きくなるほど、熱膨張性シート100の歪み度合いがより大きいと判定する。
更に、高濃度領域210の濃度がより高い(すなわち黒に近い)ほど、熱膨張性シート100を変形させ易くなる。そのため、判定部312は、第3の基準として、高濃度領域210に含まれる各画素の輝度値の平均を計算し、計算した平均が第3の基準値よりも小さいか否かを判定する。そして、判定部312は、計算した平均が第3の基準値よりも小さい場合、すなわち濃度が相対的に高い場合に、高濃度領域210の濃度が熱膨張性シート100を変形させる程度であると判定する。第3の基準値は、適宜の値に予め設定されている。このとき、判定部312は、計算した輝度値の平均がより小さくなるほど、熱膨張性シート100の歪み度合いがより大きいと判定する。
なお、図13に示した濃淡画像200gのように複数の高濃度領域210が抽出された場合には、判定部312は、第2の基準として複数の高濃度領域210の面積の総和を用い、第3の基準として複数の高濃度領域210の全体における輝度値の平均を用いることができる。具体的に説明すると、判定部312は、第2の基準として、複数の高濃度領域210の面積の総和の、熱膨張性シート100のサイズに対する比率が第2の基準値よりも大きいか否かを判定する。更に、判定部312は、第3の基準として、複数の高濃度領域210の全体における輝度値の平均が第3の基準値よりも小さいか否かを判定する。或いは、複数の高濃度領域210に対して平滑化(スムージング)処理を実行する場合には、平滑化後の高濃度領域210の面積と輝度値の平均とを用いても良い。
図4に戻って、生成部313は、判定部312によって濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしていると判定された場合、すなわち濃淡画像200が熱膨張性シート100を所定の許容度を超えて歪ませる又は反らせる画像であると判定された場合、濃淡画像200に抑制パターン220を付した印刷画像250を生成する。抑制パターン220は、熱膨張性シート100が膨張する際における熱膨張性シート100の変形(すなわち歪み又は反り)を抑制するためのパターンである。生成部313は、制御部31が記憶部32と協働することによって実現される。
図14に、指定された造形物を造形するための濃淡画像200が、図6に示した濃淡画像200bである場合における印刷画像250の例を示す。濃淡画像200bでは、高濃度領域210が横方向(X方向)に細長い形状をしているため、熱膨張性シート100が膨張する際、縦方向(Y方向)に応力が強く働く。このような縦方向に生じる応力による熱膨張性シート100の変形を妨げるため、生成部313は、濃淡画像200bの少なくとも片側(図14の例では両側)の余白領域に、高い濃度の色(すなわち黒又は黒に近い色)で抑制パターン220を付加する。
生成部313は、高濃度領域210が一方向に長い形状をしている場合には、抑制パターン220として、この一方向に垂直な方向に長い形状のパターンを、濃淡画像200のこの一方向における少なくとも片側の余白領域に付加する。図14に示したように高濃度領域210の形状が横方向(X方向)に細長い場合には、一方向とは横方向(X方向)であり、一方向に垂直な方向とは縦方向(Y方向)である。そのため、図14の例では、生成部313は、縦方向の長さが横方向の長さよりも長い、すなわち縦方向(Y方向)に細長いパターンを、抑制パターン220として付加する。
このように、抑制パターン220として、高濃度領域210の長さ方向とは垂直な方向に長いパターンを付加することにより、熱膨張性シート100が膨張する際、高濃度領域210によって生じる応力の方向(図14の例では縦方向)とは垂直な方向にも応力が生じる。縦横の両方向に応力が生じることで、図7に示したように熱膨張性シート100が一方向のみに反って変形することが妨げられ、その結果として、熱膨張性シート100の変形が抑制される。
抑制パターン220の形状、大きさ及び濃度は、目的に応じて様々に設定可能である。例えば、生成部313は、図15に示すように片側の余白領域のみに抑制パターン220を付加しても良いし、図16に示すように抑制パターン220として互いに離れた複数のパターンを付加しても良い。
或いは、生成部313は、抑制パターン220として、高濃度領域210の形状、大きさ又は濃度に応じて異なる形状、大きさ又は濃度のパターンを、濃淡画像200に付加しても良い。言い換えると、生成部313は、判定部312によって判定された歪み度合いに対応したパターンを濃淡画像200に付加しても良い。例えば高濃度領域210の形状がより細長い、面積がより大きい、又は濃度がより高い場合、すなわち歪み度合いがより大きい場合には、高濃度領域210によって生じる応力がより強くなる。この場合、生成部313は、抑制パターン220によって生じる応力をより強くして熱膨張性シート100の変形を抑制するため、抑制パターン220として、形状がより細長い、面積がより大きい、又は濃度がより高いパターンを濃淡画像200に付加しても良い。
なお、判定部312及び生成部313は、このような濃淡画像200から印刷画像250を生成する処理を、熱膨張性シート100の表面に印刷される濃淡画像200のデータ(表面発泡データ)と、熱膨張性シート100の裏面に印刷される濃淡画像200のデータ(裏面発泡データ)と、のそれぞれについて実行する。すなわち、判定部312は、表面用の濃淡画像200と裏面用の濃淡画像200とのそれぞれについて、濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否かを判定する。そして、生成部313は、表面用の濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしていると判定部312によって判定された場合に、表面用の濃淡画像200に抑制パターン220を付加した表面用の印刷画像250を生成し、裏面用の濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしていると判定部312によって判定された場合に、裏面用の濃淡画像200に抑制パターン220を付加した裏面用の印刷画像250を生成する。
図4に戻って、出力部314は、生成部313によって生成された印刷画像250を印刷装置40に出力して、印刷装置40に、印刷画像250を熱膨張性シート100に印刷させる。具体的に説明すると、出力部314は、生成部313によって生成された印刷画像250のデータと対応するカラー画像のデータとを含む印刷データを生成する。そして、出力部314は、通信部36を介して印刷装置40と通信し、生成した印刷データを印刷装置40に出力する。このとき、出力部314は、印刷データと共に、この印刷データに従って印刷を実行する指令と印刷時の設定情報とを含む印刷制御データを印刷装置40に出力する。これにより、出力部314は、印刷装置40に、印刷画像250を熱膨張性シート100に印刷させる。言い換えると、出力部314は、熱膨張に伴う熱膨張性シート100の歪み又は反りを抑制するための抑制パターン220を、濃淡画像200とともに熱膨張性シート100に印刷させる印刷制御手段として機能する。出力部314は、制御部31が通信部36と協働することによって実現される。
<印刷装置40>
図3に示した造形システム1の説明に戻る。印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に画像を印刷する印刷ユニットである。印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷装置40は、印刷手段として機能する。
図17に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図17に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート100が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に狭持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート100の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート100の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート100を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、いずれも図示しないが、CPU等の制御部と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶部と、を備えている。制御部において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、印刷装置40の動作を制御する。また、印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して画像処理装置30と接続されている。印刷装置40は、制御部の制御のもと、フレキシブル通信ケーブル46を介して画像処理装置30から印刷データ及び印刷制御データを取得する。そして、印刷装置40は、取得した印刷データ及び印刷制御データに従って、熱膨張性シート100に印刷を実行する。
具体的に説明すると、印刷装置40は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート100を搬送させる。また、印刷装置40は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。そして、印刷装置40は、印刷ヘッド42に、搬送される熱膨張性シート100に向けてインクを噴射させて、印刷画像250(抑制パターン220が付加された濃淡画像200)及びカラー画像を印刷する。
より詳細に説明すると、印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面及び裏面に、画像処理装置30によって生成された表面用及び裏面用の印刷画像250を、カーボンブラックを含む黒色インクで印刷する。例えば図18に示すように、印刷装置40は、抑制パターン220が両側の余白領域に付加された印刷画像250を、熱膨張性シート100に印刷する。カーボンブラックを含む黒色インクは、電磁波を熱に変換する材料の一例であって、発熱(帯熱)インクとも呼ぶ。また、印刷装置40は、熱膨張性シート100の表面に、カラー画像を、カラーインクのうちの少なくとも1色のインクで印刷する。カラーインクとは、具体的には、シアンC、マゼンタM、イエローY及びカーボンブラックを含まないブラックKのインクである。
<膨張装置50>
膨張装置50は、熱膨張性シート100の表面又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張性シート100の表面又は裏面に印刷された印刷画像250を発熱させて、熱膨張性シート100のうちの印刷画像250が印刷された部分を膨張させる膨張ユニットである。膨張装置50は、膨張手段として機能する。
図19に、膨張装置50の構成を模式的に示す。図19において、X方向は、膨張装置50の幅方向に相当し、Y方向は、膨張装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。図19に示すように、膨張装置50は、筐体51と、挿入部52と、トレイ53と、換気部54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、電源部69と、制御部70と、を備える。
挿入部52は、開閉式の扉を備えており、熱膨張性シート100を筐体51の内部に挿入するための機構である。ユーザは、挿入部52を開き、トレイ53をスライドさせて手前側に引き出した後、熱膨張性シート100をその表面又は裏面を上に向けてトレイ53の上に設置する。そして、熱膨張性シート100が設置されたトレイ53を筐体51の内部に戻し、挿入部52を閉めると、熱膨張性シート100は、照射部60によって電磁波を照射可能な位置に配置される。
トレイ53は、熱膨張性シート100を筐体51内の適正な位置に設置するための機構である。トレイ53は、熱膨張性シート100を検出するセンサを備えており、熱膨張性シート100が設置されたか否か、及び、熱膨張性シート100が設置された場合にその熱膨張性シート100のサイズを検出する。
換気部54は、膨張装置50における奥側の端部に設けられており、膨張装置50の内部を換気する。換気部54は、少なくとも1つのファンを備えており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。
搬送モータ55は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータであって、照射部60を熱膨張性シート100の表面又は裏面に沿って移動させる。筐体51の内部には、Y方向に、すなわち熱膨張性シート100の表面又は裏面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。照射部60は、搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、熱膨張性シート100との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。搬送モータ55は、熱膨張性シート100と照射部60とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
具体的に説明すると、照射部60は、熱膨張性シート100の奥側の端部に対応する第1の位置P1と、熱膨張性シート100の手前側の端部に対応する第2の位置P2と、の間で往復移動する。搬送モータ55は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向かう第1の方向、及び、第2の位置P2から第1の位置P1に向かう第2の方向に移動させる。第1の位置P1は、照射部60の初期位置(ホームポジション)である。照射部60は、膨張装置50が動作していない時には第1の位置P1で待機している。
照射部60は、電磁波を照射する機構であって、トレイ53の上に配置された熱膨張性シート100に電磁波を照射する。図19に示すように、照射部60は、ランプヒータ61と、反射板62と、温度センサ63と、冷却部64と、バーコードリーダ65と、を備える。
ランプヒータ61は、例えば照射源としてハロゲンランプを備えており、電磁波として、熱膨張性シート100に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。照射部60及びランプヒータ61は、このような波長域の光を照射することにより、熱膨張性シート100にエネルギーを照射する照射手段として機能する。
カーボンブラックを含む黒色インクによる印刷画像250が印刷された熱膨張性シート100に光(エネルギー)を照射すると、印刷画像250が印刷された部分では、印刷画像250が印刷されていない部分に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート100のうちの印刷画像250が印刷された部分が主に加熱され、熱膨張剤が膨張を開始する温度に達すると膨張する。照射部60は、搬送モータ55によって搬送されながら光(エネルギー)を照射することにより、熱膨張性シート100を熱膨張させる熱膨張手段として機能する。なお、ランプヒータ61によって照射される光は、電磁波であれば良く、上記波長域の光であることに限らない。
反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から照射された光を熱膨張性シート100に向けて反射する機構である。温度センサ63は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板62の温度を測定する測定手段として機能する。冷却部64は、少なくとも1つのファンを備えており、照射部60に送風することによって、照射部60及び筐体51の内部を冷却する。
バーコードリーダ65は、熱膨張性シート100の裏面に設けられているバーコードを読み取る読取手段として機能する。バーコードは、熱膨張性シート100を識別するための識別子であって、熱膨張性シート100が造形物を造形するための専用のシートであることを示す識別子である。熱膨張性シート100の裏面には、図示しないが、その縁部に沿って複数のバーコードが付されている。バーコードリーダ65は、光源及び光学センサを備え、周知の方式でバーコードを光学的に読み取る。バーコードリーダ65は、照射部60に取り付けられており、照射部60と共に移動する。
電源部69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、膨張装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気部54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却部64は、電源部69から電力を得て動作する。
制御部70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられている。制御部70は、CPU、ROM及びRAMを備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して膨張装置50の各部と接続されている。制御部70において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、膨張装置50全体の動作を制御する。
また、制御部70は、いずれも図示しないが、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリと、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスと、画像処理装置30と通信するための通信インタフェースと、を備える。
<膨張処理>
制御部70は、印刷装置40によって印刷画像250、すなわち抑制パターン220が付加された濃淡画像200が印刷された熱膨張性シート100に電磁波を照射することにより、熱膨張性シート100を膨張させる。
図20に、膨張装置50が膨張処理を実行する様子を示す。膨張処理において、制御部70は、照射部60に電源電圧を供給してランプヒータ61を点灯させる。そして、制御部70は、照射部60に電磁波を照射させている状態で搬送モータ55を駆動させる。これにより、制御部70は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けて、すなわち第1の方向に、規定の距離だけ移動させる。このように、制御部70は、照射部60を熱膨張性シート100の端から端まで移動させることで、熱膨張性シート100の表面又は裏面の全体に亘って電磁波を照射させる。
規定の距離は、熱膨張性シート100のサイズに応じて異なる。例えば、熱膨張性シート100のサイズがA3サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの距離である。或いは、熱膨張性シート100のサイズがA4サイズであれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの半分の距離である。
照射部60によって電磁波が照射されると、熱膨張性シート100のうちの、カーボンブラックを含む黒色インクで印刷画像250が印刷された部分は発熱し、規定の温度にまで加熱されると膨張する。
規定の温度は、熱膨張層102に含まれる熱膨張剤が膨張を開始する温度であって、例えば80℃から120℃程度の温度である。制御部70は、所定の強度で電磁波を照射している照射部60を所定の速度で移動させることによって、熱膨張性シート100のうちの印刷画像250が印刷された部分を規定の温度以上に加熱する。所定の強度及び所定の速度は、熱膨張性シート100を規定の温度以上に加熱できるように予め設定されている。
このように、制御部70は、搬送モータ55によって照射部60を第1の方向に移動させながら、照射部60に電磁波を照射させることによって、熱膨張性シート100を膨張させる。熱膨張性シート100のうちの印刷画像250が印刷された部分は、濃度に応じた高さに膨張する。これによって、熱膨張性シート100に所望の造形物が造形される。このとき、熱膨張性シート100のうちの濃淡画像200が印刷された部分だけでなく、抑制パターン220が印刷された部分も膨張するため、熱膨張性シート100の不要な変形を抑制しつつ熱膨張性シート100を膨張させることができる。なお、熱膨張性シート100のうちの抑制パターン220が印刷された部分は、熱膨張性シート100を膨張装置50から取り出した後、例えば余白領域をカットすることによって除去することができる。
このような膨張処理によって、照射部60は第2の位置P2に到達する。膨張処理を実行した後、制御部70は、図示しないが、照射部60を第2の位置P2から第1の位置P1に向けて移動させながら、すなわち照射部60を初期位置に戻しながら、必要に応じて、換気部54による換気処理、又は冷却部64による冷却処理を実行する。具体的に説明すると、制御部70は、換気部54を駆動させて、膨張処理によって加熱された筐体51内の空気が外部に排出する。また、制御部70は、冷却部64を駆動させて、膨張処理によって加熱された照射部60及び熱膨張性シート100を冷却する。
<造形システム1の処理フロー>
以上のように構成された造形システム1において実行される処理の流れについて、フローチャートを参照して説明する。
まず、図21を参照して、画像処理装置30において実行される印刷画像生成処理の流れについて説明する。図21に示す印刷画像生成処理において、制御部31は、受付部311として機能し、造形システム1によって造形すべき造形物の指定を受け付ける(ステップS1)。ユーザは、操作部33を操作して、造形システム1が造形可能な複数の造形物のうちから、所望の造形物を指定することができる。
造形物の指定を受け付けると、制御部31は、判定部312として機能し、指定された造形物を造形する際に抑制パターン220の印刷が必要か否かを判定する(ステップS2)。ステップS2における判定処理の詳細については、図22に示すフローチャートを参照して説明する。
図22に示す判定処理が開始すると、制御部31は、指定された造形物を造形するための濃淡画像200から高濃度領域210を抽出する(ステップS21)。具体的に説明すると、制御部31は、濃淡画像200に含まれる各画素の輝度値を予め設定された閾値と比較することにより、或いはエッジ検出等の手法によって、濃淡画像200を、濃度が相対的に高い領域と濃度が相対的に低い領域とに分ける。そして、制御部31は、周囲に比べて相対的に濃度が高い領域を高濃度領域210として抽出する。
高濃度領域210を抽出すると、制御部31は、高濃度領域210の形状が一方向に長い形状であるか否かを判定する(ステップS22)。具体的に説明すると、制御部31は、高濃度領域210の縦方向の長さと横方向の長さのうちの長い方の長さに対する短い方の長さの比率を計算する。そして、制御部31は、計算した比率が第1の基準値よりも小さい場合に、高濃度領域210の形状が熱膨張性シート100を変形させ易い細長い形状であると判定する。
高濃度領域210の形状が細長い形状である場合(ステップS22;YES)、制御部31は、熱膨張性シート100を変形させる程度に高濃度領域210のサイズが大きく、且つ、濃度が高いか否かを判定する(ステップS23)。具体的に説明すると、制御部31は、熱膨張性シート100のサイズに対する高濃度領域210の面積の比率を計算する。そして、計算した比率が第2の基準値よりも大きい場合に、判定部312は、熱膨張性シート100を変形させる程度に高濃度領域210が大きいと判定する。また、制御部31は、高濃度領域210に含まれる各画素の輝度値の平均を計算する。そして、計算した平均が第3の基準値よりも小さい場合に、判定部312は、熱膨張性シート100を変形させる程度に高濃度領域210の濃度が高いと判定する。
熱膨張性シート100を変形させる程度に高濃度領域210のサイズが大きく、且つ、濃度が高い場合(ステップS23;YES)、制御部31は、抑制パターン220の印刷が必要であると判定する(ステップ24)。これに対して、高濃度領域210の形状が細長い形状ではない場合(ステップS22;NO)、或いは、高濃度領域210の形状が細長い形状であっても、熱膨張性シート100を変形させる程度に高濃度領域210のサイズが小さい又は濃度が高くない場合(ステップS23;NO)、制御部31は、抑制パターン220の印刷が不要であると判定する(ステップ25)。以上によって、図22に示す判定処理は終了する。
図22に示した判定処理の結果、抑制パターン220の印刷が必要であると判定した場合(ステップS2;YES)、制御部31は、生成部313として機能し、濃淡画像200に抑制パターン220を付加した印刷画像250を生成する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部31は、例えば図14から図16に示したように、濃淡画像200の少なくとも片側の余白領域に、抑制パターン220を付加することによって、印刷画像250を生成する。
これに対して、抑制パターン220の印刷が必要でないと判定した場合(ステップS2;NO)、制御部31は、ステップS3の処理をスキップする。言い換えると、制御部31は、抑制パターン220の印刷が必要でない場合、濃淡画像200に抑制パターン220を付加せず、濃淡画像200をそのまま印刷画像250として生成する。
印刷画像250を生成すると、制御部31は、出力部314として機能し、生成した印刷画像250のデータと対応するカラー画像のデータとを含む印刷データを印刷装置40に出力する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部31は、通信部36を介して印刷装置40と通信し、生成した印刷データを、印刷制御データと共に印刷装置40に出力する。ステップS4において、制御部31は、出力部314として機能する。以上によって、図21に示した印刷画像生成処理は終了する。
次に、図23に示すフローチャート及び図24(a)〜(e)に示す熱膨張性シート100の断面図を参照して、印刷装置40及び膨張装置50において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
第1に、ユーザは、造形物が造形される前の熱膨張性シート100を準備する。そして、ユーザは、熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の表面に変換層104を印刷する(ステップS100)。変換層104は、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちの、熱膨張性シート100の表面に印刷すべき印刷画像250のデータ(表面発泡データ)に従って、熱膨張性シート100の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図24(a)に示すように、インク受容層103上に変換層104が形成される。
第2に、ユーザは、変換層104が印刷された熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の表面に照射部60によって電磁波を照射する(ステップS200)。熱膨張性シート100の表面に印刷された変換層104は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図24(b)に示すように、熱膨張性シート100のうちの変換層104が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
第3に、ユーザは、表面が加熱されて膨張した熱膨張性シート100を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の表面にカラーインク層105を印刷する(ステップS300)。具体的に説明すると、印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちのカラー画像のデータに従って、熱膨張性シート100の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローYのうちの少なくとも1色のインクを吐出する。その結果、図24(c)に示すように、インク受容層103及び変換層104の上にカラーインク層105が形成される。
なお、印刷装置40は、カラーインク層105において黒又はグレーの色の画像を印刷する場合には、シアンC、マゼンタM及びイエローYの3色のインクを混色して形成するか、或いはカーボンブラックを含まない黒色のインクを更に使用することによって形成する。これによって、カラーインク層105が形成された部分が膨張装置50において加熱されることを回避する。
第4に、ユーザは、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100を裏返して、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に照射部60によって電磁波を照射し、熱膨張性シート100を裏面から加熱する。これにより、膨張装置50は、カラーインク層105中に含まれる溶媒を揮発させて、カラーインク層105を乾燥させる(ステップS400)。カラーインク層105を乾燥させることによって、後の工程で熱膨張性シート100を膨張させ易くする。
第5に、ユーザは、カラーインク層105が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に変換層106を印刷する(ステップS500)。変換層106は、熱膨張性シート100の表面に印刷された変換層104と同様に、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、画像処理装置30から出力された印刷データのうちの、熱膨張性シート100の裏面に印刷すべき印刷画像250のデータ(裏面発泡データ)に従って、熱膨張性シート100の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図24(d)に示すように、基材101の裏面に変換層106が形成される。
第6に、ユーザは、変換層106が印刷された熱膨張性シート100を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート100の裏面に、照射部60によって電磁波を照射する(ステップS600)。熱膨張性シート100の裏面に印刷された変換層106は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図24(e)に示すように、熱膨張性シート100のうちの変換層106が印刷された部分が盛り上がって膨張する。
なお、図24(a)〜(e)では、理解を容易にするため、変換層104及びカラーインク層105は、インク受容層103の上に形成されているように示されている。しかしながら、より正確には、カラーインク及び黒色インクは、インク受容層103の内部に吸収されるため、インク受容層103の中に形成される。
以上のように、熱膨張性シート100のうちの変換層104,106が形成された部分が膨張することによって、熱膨張性シート100にカラーの造形物が造形される。変換層104,106は、その濃度が濃い部分ほど大きく加熱されるため、より大きく膨張する。そのため、目標となる高さに応じて変換層104,106の濃淡を調整することで、様々な形状の造形物を得ることができる。
なお、熱膨張性シート100を表面から加熱する処理と裏面から加熱する処理とのうちのどちらか一方を省略しても良い。例えば、熱膨張性シート100の表面のみを加熱して膨張させる場合には、図23におけるステップS500,S600は省略される。これに対して、熱膨張性シート100の裏面のみを加熱して膨張させる場合には、図23におけるステップS100,S200は省略される。また、ステップS300におけるカラー画像の印刷は、ステップS600における熱膨張性シート100を裏面から加熱する処理の後で実行されても良い。
また、モノクロの立体画像を形成する場合には、印刷装置40は、ステップS300において、カラー画像の代わりにモノクロ画像を印刷しても良い。この場合、インク受容層103及び変換層104の上には、カラーインク層105の代わりに黒インクによる層が形成される。
以上説明したように、本実施形態に係る造形システム1において、画像処理装置30は、造形物を造形するための濃淡画像200に、熱膨張性シート100の変形を抑制するための抑制パターン220を付加した印刷画像250を生成する。そして、印刷装置40は、抑制パターン220を含む印刷画像250を熱膨張性シート100に印刷し、膨張装置50は、抑制パターン220を含む印刷画像250が印刷された熱膨張性シート100に電磁波を照射して膨張させる。このように、濃淡画像200に抑制パターン220を付加して印刷することによって、熱膨張性シート100が膨張する際に、熱膨張性シート100が反る等の不要な変形を抑制することができる。その結果、熱膨張性シート100に所望の造形物を精度良く製造することができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、判定部312は、高濃度領域210の形状、大きさ及び濃度に基づいて、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否か、すなわち抑制パターン220の印刷が必要であるか否かを判定した。しかしながら、本発明において、判定部312は、より簡易な構成として、高濃度領域210の大きさ又は濃度を判定する処理を省略し、高濃度領域210の形状のみに基づいて、抑制パターン220の印刷が必要であるか否かを判定しても良い。すなわち、例えば一方向に長い形状のように、熱膨張性シート100が膨張時に変形し易い形状である場合、判定部312は、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしていると判定しても良い。また、高濃度領域210の大きさと濃度とのうちのどちらか一方のみを判定に用いても良い。
或いは、判定部312は、高濃度領域210の形状、大きさ又は濃度以外の条件を用いて、抑制パターン220の印刷が必要であるか否かを判定しても良い。例えば、判定部312は、濃淡画像200における濃淡の分布が経験的又は実験的に熱膨張性シート100が変形し易いことが判明している分布に該当する場合に、抑制パターン220の印刷が必要である、すなわち濃淡の分布が特定の条件を満たしていると判定しても良い。
また、画像処理装置30が判定部312の機能を備えておらず、画像処理装置30以外の外部の装置が判定部312の機能を備えていても良い。外部の装置は、画像処理装置30とは遠隔に設置されたサーバ等である。例えば、濃淡画像200が外部の装置において生成された場合、外部の装置は、生成された濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしているか否かを判定し、生成された濃淡画像200と共に判定結果を画像処理装置30に提供しても良い。
上記実施形態では、画像処理装置30は、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、濃淡画像200に抑制パターン220を付加した印刷画像250を生成する生成部313の機能を備えていた。しかしながら、本発明において、画像処理装置30は、生成部313の機能を備えていなくても良い。すなわち、出力部314は、濃淡画像200における濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、抑制パターン220と濃淡画像200とをそれぞれ印刷装置40に出力して、印刷装置40に、抑制パターン220を濃淡画像200とともに熱膨張性シート100に印刷させても良い。
また、画像処理装置30は、抑制パターン220の候補として、予め決められた複数のパターンの画像を記憶部32に備えており、生成部313又は出力部314が、判定部312による判定結果に応じて、複数のパターンの中から、濃淡画像200と共に印刷する抑制パターン220を選択しても良い。この場合、例えば高濃度領域210の形状がより細長い、面積がより大きい、又は濃度がより高い場合、すなわち歪み度合いがより大きい場合には、生成部313又は出力部314は、抑制パターン220として、形状がより細長い、面積がより大きい、又は濃度がより高いパターンを選択する。このように、生成部313又は出力部314は、予め決められた複数のパターンの中から、歪み度合いに対応した抑制パターン220を選択しても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート100は、基材101と熱膨張層102とインク受容層103とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート100の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート100は、インク受容層103を備えなくても良いし、表面又は裏面に剥離可能な剥離層を備えていても良い。或いは、熱膨張性シート100は、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態では、画像処理装置30と印刷装置40と膨張装置50とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、画像処理装置30と印刷装置40と膨張装置50とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
上記実施形態では、膨張装置50は、照射部60を移動させる移動手段として搬送モータ55を備えており、位置が固定された熱膨張性シート100に対して、照射部60を移動させながら電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート100を膨張させた。しかしながら、膨張装置50は、熱膨張性シート100を搬送する搬送機構を備えており、搬送される熱膨張性シート100に対して、位置が固定された照射部60から電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート100を膨張させても良い。このように、膨張装置50は、熱膨張性シート100と照射部60とを相対的に移動させることができれば、どのような方式で熱膨張性シート100を膨張させても良い。
印刷装置40の印刷方式は、インクジェット方式に限らない。例えば、印刷装置40は、レーザー方式のプリンタであって、トナーと現像剤とによって画像を印刷しても良い。また、変換層104,106は、電磁波を熱に変換しやすい材料であれば、カーボンブラックを含む黒インク以外の材料によって形成されても良い。この場合、変換層104,106は、印刷装置40以外の手段によって形成されるものであっても良い。
上記実施形態において、画像処理装置30の制御部31は、CPUを備えており、CPUの機能によって、受付部311、判定部312、生成部313及び出力部314として機能した。しかし、本発明に係る画像処理装置30において、制御部31は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、受付部311、判定部312、生成部313及び出力部314として機能しても良い。この場合、各処理を個別のハードウェアで実行しても良いし、各処理をまとめて単一のハードウェアで実行しても良い。また、各処理のうち、一部を専用のハードウェアによって実行し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実行しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた画像処理装置30として提供できることはもとより、プログラムの適用により、画像処理装置30を制御するコンピュータに、上記実施形態で例示した画像処理装置30による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した画像処理装置30による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像における前記濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、前記濃淡画像に、前記熱膨張性シートが膨張する際における前記熱膨張性シートの変形を抑制するための抑制パターンを付加した印刷画像を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記印刷画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷する印刷手段と、
前記印刷手段によって前記印刷画像が印刷された前記熱膨張性シートに電磁波を照射することにより、前記熱膨張性シートを膨張させる膨張手段と、
を備えることを特徴とする造形システム。
(付記2)
前記濃淡画像における濃度が相対的に高い領域である高濃度領域の形状に基づいて、前記濃淡の分布が前記特定の条件を満たしているか否か判定する判定手段、
を更に備え、
前記生成手段は、前記判定手段によって前記特定の条件が満たされていると判定された場合に、前記濃淡画像に前記抑制パターンを付加した前記印刷画像を生成する、
ことを特徴とする付記1に記載の造形システム。
(付記3)
前記特定の条件は、前記高濃度領域の縦方向の長さと横方向の長さとのうちの長い方の長さに対する短い方の長さの比率が第1の基準値よりも小さい場合に、満たされる、
ことを特徴とする付記2に記載の造形システム。
(付記4)
前記生成手段は、前記高濃度領域が一方向に長い形状をしている場合には、前記抑制パターンとして、前記一方向に垂直な方向に長い形状のパターンを、前記濃淡画像の前記一方向における少なくとも片側の余白領域に付加することにより、前記印刷画像を生成する、
ことを特徴とする付記2又は3に記載の造形システム。
(付記5)
前記判定手段は、前記高濃度領域の形状と、前記高濃度領域の大きさ又は濃度と、に基づいて、前記濃淡の分布が前記特定の条件を満たしているか否か判定する、
ことを特徴とする付記2から4のいずれか1つに記載の造形システム。
(付記6)
前記特定の条件は、前記高濃度領域の縦方向の長さと横方向の長さとのうちの長い方の長さに対する短い方の長さの比率が第1の基準値より小さく、且つ、前記熱膨張性シートの大きさに対する前記高濃度領域の大きさの比率が第2の基準値よりも大きい場合に、満たされる、
ことを特徴とする付記5に記載の造形システム。
(付記7)
前記特定の条件は、前記高濃度領域の縦方向の長さと横方向の長さとのうちの長い方の長さに対する短い方の長さの比率が第1の基準値より小さく、且つ、前記高濃度領域における輝度値の平均が第3の基準値よりも小さい場合に、満たされる、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の造形システム。
(付記8)
前記生成手段は、前記抑制パターンとして、前記高濃度領域の形状、大きさ又は濃度に応じて異なる形状、大きさ又は濃度のパターンを前記濃淡画像に付加することにより、前記印刷画像を生成する、
ことを特徴とする付記2から7のいずれか1つに記載の造形システム。
(付記9)
膨張装置において電磁波が照射されることにより膨張する熱膨張性シートに、印刷装置において電磁波を熱に変換する材料で印刷される印刷画像を生成する画像処理装置であって、
前記熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像における前記濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、前記濃淡画像に、前記熱膨張性シートが膨張する際における前記熱膨張性シートの変形を抑制するための抑制パターンを付加した前記印刷画像を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記印刷画像を前記印刷装置に出力して、前記印刷装置に、前記印刷画像を前記材料で前記熱膨張性シートに印刷させる出力手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
(付記10)
熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像における前記濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、前記濃淡画像に、前記熱膨張性シートが膨張する際における前記熱膨張性シートの変形を抑制するための抑制パターンを付加した印刷画像を生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成された前記印刷画像を、電磁波を熱に変換する材料で前記熱膨張性シートに印刷する印刷ステップと、
前記印刷ステップで前記印刷画像が印刷された前記熱膨張性シートに電磁波を照射することにより、前記熱膨張性シートを膨張させて造形物を製造する膨張ステップと、
を含むことを特徴とする造形物の製造方法。
(付記11)
膨張装置において電磁波が照射されることにより膨張する熱膨張性シートに、印刷装置において電磁波を熱に変換する材料で印刷される印刷画像を生成するコンピュータを、
前記熱膨張性シートにおける膨張させる部分と膨張の度合いとを濃淡によって示す濃淡画像における前記濃淡の分布が特定の条件を満たしている場合、前記濃淡画像に、前記熱膨張性シートが膨張する際における前記熱膨張性シートの変形を抑制するための抑制パターンを付加した前記印刷画像を生成する生成手段、
前記生成手段によって生成された前記印刷画像を前記印刷装置に出力して、前記印刷装置に、前記印刷画像を前記材料で前記熱膨張性シートに印刷させる出力手段、
として機能させるためのプログラム。
(付記12)
コンピュータを、
熱膨張性シートを熱膨張させるために所定の電磁波が照射されると熱を帯びる材料で前記熱膨張性シートに印刷される画像が、前記熱膨張に伴って前記熱膨張性シートを所定の許容度を超えて歪ませるまたは反らせる画像か否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記熱膨張性シートに印刷される前記画像が前記熱膨張性シートを前記所定の許容度を超えて歪ませるまたは反らせる画像であると判定された場合に、前記熱膨張に伴う前記熱膨張性シートの歪みまたは反りを抑制するための抑制パターンを前記画像とともに前記熱膨張性シートに印刷させる印刷制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
(付記13)
コンピュータを、
熱膨張性シートを熱膨張させるために所定の電磁波が照射されると熱を帯びる材料で前記熱膨張性シートに印刷される画像が、前記熱膨張に伴って前記熱膨張性シートを所定の許容度を超えて歪ませるまたは反らせる歪み度合いを判定する判定手段、
前記判定された歪み度合いに対応した、前記熱膨張に伴う前記熱膨張性シートの歪みまたは反りを抑制するための抑制パターンを前記画像とともに前記熱膨張性シートに印刷させる印刷制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。