JP2019053856A - 銀ペースト - Google Patents

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Abstract

【課題】厚みが厚く、断面形状が矩形により近い塗膜を一度の印刷で形成可能な銀ペーストを提供する。【解決手段】本発明により、銀粒子と、バインダと、溶剤とを含む銀ペーストが提供される。この銀ペーストにおいて、バインダは、エチルセルロースとアクリル樹脂とを含む。そして、せん断速度を、20/s、10/s、0.01/sの順に変化させて印加したときの前記銀ペーストの粘度について、せん断速度10/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(i)と、せん断速度0.01/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(ii)とを測定し、これらの粘度の変化量:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)};を静止後立上り粘度としたとき、静止後立上り粘度は、300Pa・s以上1500Pa・s以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、銀ペーストに関する。
電気・電子部品用の電子素子においては、導線を用いることなく、絶縁性基板に導線に相当する導電性材料からなる粉末を印刷して導体膜を形成し、この導体膜により配線する技術が広く採用されている。導体膜を形成するための導電性材料は、一般に導電性粉末とバインダと有機溶剤とを含んだ導電性ペーストの形態で基材に供される。
導電性ペーストは、用途によって様々な種類のものが使い分けられている。例えば、特に高い電気伝導性(低抵抗率特性)が要求される用途では、導電性材料として銀粉末を含む銀ペーストが用いられている。また、導電性ペーストから形成される導体膜は、緻密で断面積が大きいものほど抵抗が低下する。そのため、同じ場所で2回以上の重ね印刷をして、形成される導体膜の断面積を増大することが行われている。
特開平06−251618号公報 特開平07−220523号公報 特開2003−59336号公報
ところで、一つの導体膜を形成するために2回以上の印刷を重ねて行う場合、導体膜の形成工程が2倍以上に増え、生産性が悪くなるという課題があった。そのため、一回の印刷および焼成でより厚みの厚い厚膜を形成することができる銀ペーストが求められている。ここで、一度に厚みの厚い塗膜の印刷を行うと、塗膜が自重を支えきれずにダレが生じ易い、すなわち断面の角が取れて丸みを帯び易いという問題が生じる。塗膜の断面形状において角が取れると、断面積の拡大による低抵抗化の効果が損なわれてしまう。この問題に対応するために、銀粒子の含有率を高くして(すなわち、高コンテントにして)バインダおよび溶剤の量を少なくするペースト設計が有効である。しかしながら、バインダおよび溶剤の量を削減すると、銀ペーストの流動性や印刷性が極端に低下するといった背反が生じ得る。例えば銀ペーストの調製や印刷自体が困難となったり、印刷が可能であっても形成される塗膜の表面形態が乱れたりして、導体膜の低抵抗化には限界があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、厚みが厚く、断面形状が矩形により近い塗膜を一度の印刷で形成可能な銀ペーストを提供することにある。
上記の従来技術の課題を解決するために、ここに開示される技術は、銀粒子と、バインダと、溶剤とを含む銀ペーストを提供する。この銀ペーストにおいて、上記バインダは、エチルセルロース(以下、「EC」と示す場合がある。)とアクリル樹脂とを含む。そして、せん断速度を20/s、10/s、0.01/sの順に変化させて印加したときの上記銀ペーストの粘度について、せん断速度10/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(i)と、せん断速度0.01/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(ii)とを測定し、これらの粘度の変化量:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)};を静止後立上り粘度としたとき、上記静止後立上り粘度は、300Pa・s以上1500Pa・s以下である。
本発明者らは、銀ペーストにおけるバインダとして、ECと、このECに対する相溶性を有するアクリル繍脂とを併用することで、バインダ量を低減した場合でも、厚膜印刷に適したレオロジー特性を発現しうる銀ペーストを実現しうることを見出した。そしてこのレオロジー特性は、単なるバインダ配合ではなく、上記の静止後立上り粘度によってより適切に表しうることを見出し、本願発明を完成させるに至った。すなわち、上記の静止後立上り粘度を満たす銀ペーストは、印刷後の静置時には塗膜の平坦化(レベリング)に適した粘度低下を示すとともに、塗膜のダレを抑制するに適した粘度回復特性を備えるものとして提供される。これにより、厚膜を印刷した場合であっても、断面形状が矩形により近い塗膜を形成可能な銀ペーストが実現される。
なお、特許文献1〜3には、導電性ペーストのバインダとして、エチルセルロースとアクリル樹脂とを使用する構成が開示されている。しかしながら、特許文献1は、印刷により形成される塗膜の厚みを最大値で評価しており、断面形状を矩形とすることにまでは至っていない技術について開示している。また、特許文献2は、厚みが250μmの塗膜について、平坦度が30〜150μmと凹凸が著しく発生することが開示されている。そして特許文献3では、印刷法として凹版印刷のみを対象としているため、厚みの厚い塗膜を形成できる導電性ペーストについては何ら開示していない。
ここで開示される銀ペーストの好ましい一態様では、当該銀ペーストの全体に占める上記銀粒子の割合が、94質量%以上であることを特徴とする。かかる構成により、形成される電極の緻密性を高めつつ、一度の印刷で形成できる塗膜の厚みをより厚く(例えば、30μm以上)することができる。このように銀粒子の割合の高い高コンテントな銀ペーストであっても、良好な印刷性を確保できる点において好ましい。
ここで開示される銀ペーストの好ましい一態様では、上記エチルセルロースと上記アクリル樹脂との合計に占める上記アクリル樹脂の割合は、30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。ここに開示される技術において、断面の矩形性の高い塗膜を印刷するために、エチルセルロースとアクリル樹脂との割合の規定は絶対的なものではないが、エチルセルロースとアクリル樹脂との割合を上記の範囲とすることで、断面の矩形性の高い塗膜を印刷できる銀ペーストを好適に調製することができる。
ここで開示される銀ペーストの好ましい一態様では、上記アクリル樹脂の重量平均分子量(以下、単に「Mw」と示す場合がある。)は、15000以下であることを特徴とする。本発明者の検討によると、アクリル樹脂のMwは比較的小さいことが好ましい。これにより、アクリル樹脂のエチルセルロースに対する相溶性が高められ、銀ペーストの粘度回復特性が高められると考えられる。その結果、たとえ少ないバインダ量であっても、塗膜のダレに対する抵抗が好適に作用して、厚膜印刷した場合であっても塗膜のダレを好適に防止することができる。
ここで開示される銀ペーストの好ましい一態様では、当該銀ペーストが線状に印刷され、乾燥されてなる印刷体の略台形の横断面において、上記台形の下底と脚とのなす角度が50°以上であることを特徴とする。ここに開示される技術によると、このように、塗膜の断面形状を矩形により近いものとすることができる。このことにより、一回の印刷で形成できる塗膜の断面積を拡大することができ、より低抵抗な導体膜を形成することができる。
ここで開示される銀ペーストの好ましい一態様では、さらに分散剤を含むことができる。また、さらにレオロジー調整剤を含むことができる。これにより、上記の静止後立上り粘度を実現する銀ペーストを簡便に調整できるために好ましい。
一実施形態に係る銀粉末を用いて形成される積層チップインダクタの構成を概略的に説明する断面図である。 銀ペーストのせん断速度と粘度時間依存性との関係を例示するグラフである。 (a)(b)は、銀ペーストの静止後立上り粘度の測定について説明する図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、銀ペーストの構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、銀ペーストの供給方法や、電子素子の製造方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A〜B」との表記は、A以上B以下を意味する。
[銀ペースト]
ここに開示される銀ペーストは、本質的な構成として、銀粒子と、バインダと、溶剤とを含む。このようなペーストの形態で銀粒子を所望の基材に所望の形態で供給し、焼成することで、銀粒子が焼結してなる導体膜を形成することができる。ここで、ここに開示される銀ペーストは、基材等に供給された後に、銀ペーストの表面が平坦化されながらも、その端部において塗膜の形状の変化、崩れ等が抑制されることが望まれる。
[静止後立上り粘度]
そこで、ここに開示される銀ペーストは、銀ペーストの印刷を模した下記のせん断履歴に基づいて算出される静止後立上り粘度が、300Pa・s以上1500Pa・s以下となるように、銀粒子と、バインダと、溶剤との配合バランスが調製される。
ここで「静止後立上り粘度」とは、銀ペーストが印刷された後の、基材の上でのレベリング(平坦化)やタレなどの挙動を表す、低剪断領域での粘度回復現象を評価する指標である。本明細書では、銀ペーストの粘度測定において、せん断速度を20/s、10/s、0.01/sの順に3段階に変化させて印加したときに、せん断速度10/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(i)と、せん断速度0.01/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(ii)とを測定し、これらの粘度の変化量:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)};を静止後立上り粘度とする。
この静止後立上り粘度が300Pa・s以上であることで、印刷後の静止状態にある銀ペーストが、レベリングするに十分な程度に粘性が低下されているとともに、ダレを防止するに十分な粘度回復特性を備えていると評価することができる。静止後立上り粘度は、350Pa・s以上が好ましく、400Pa・s以上がより好ましく、450Pa・s以上が特に好ましく、例えば500Pa・s以上とすることができる。静止後立上り粘度の上限は特に制限されないが、静止後立上り粘度が過剰に高すぎると、印刷後の銀ペーストの表面が平坦化するレベリング特性が低下する傾向にある。かかる観点から、静止後立上り粘度の上限は、例えば、1500Pa・s以下とすることができる。
このようなレオロジー特性を備える銀ペーストについて、発明者は種々の検討から、銀粒子、バインダおよび溶剤の配合を一義的に決定することはできないことを知見している。銀粒子、バインダおよび溶剤は、上記静止後立上り粘度を満たすように、例えば以下のように構成することができる。以下、銀ペーストの構成要素について説明する。
[銀粉末]
ここに開示される銀粉末は、電子素子等における導線たる電気伝導性(以下、単に「導電性」という場合がある。)の高い導体膜を形成するため材料である。銀(Ag)は、金(Au)ほど高価ではなく、酸化され難くかつ導電性に優れることから導電性材料として好ましい。銀粉末は、銀を主成分とする粉末(粒子の集合)であればその組成は特に制限されず、所望の導電性やその他の物性を備える銀粉末を用いることができる。ここで主成分とは、銀粉末を構成する成分のうちの最大成分であることを意味する。銀粉末としては、例えば、銀および銀合金ならびにそれらの混合物または複合体等から構成されたものが一例として挙げられる。銀合金としては、例えば、銀−パラジウム(Ag−Pd)合金、銀−白金(Ag−Pt)合金、銀−銅(Ag−Cu)合金等が好ましい例として挙げられる。例えば、コアが銀以外の銅や銀合金等の金属から構成され、コアを覆うシェルが銀からなるコアシェル粒子等を用いることもできる。銀粉末は、その純度(含有量)が高いほど導電性が高くなる傾向があることから、純度の高いものを使用することが好ましい。銀粉末は、純度95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。ここに開示される技術によると、例えば、純度が99.5%程度以上(例えば99.8%程度以上)の銀粉末を使用することでも、極めて低抵抗の導体膜を形成することが可能とされる。なお、かかる観点において、ここに開示される技術においては、例えば、純度99.99%以下(例えば、99.9%以下)の銀粉末を用いても、十分に低抵抗の導体膜を形成することが可能である。
なお、銀粒子の形状は特に限定されず、球形、平板状、針状、不定形状等の各種の形状であってよい。例えばスクリーン印刷法により線状の導体膜を形成する目的の銀ペーストについては、球形のものを用いることが好ましい。
また、銀粒子は、複数の銀粒子の集合である銀粉末の形態で用いることができる。ここで、銀粉末の平均粒子径は特に限定されない。しかしながら、現時点における電子素子の製造に好適に用いることができるとの観点から、平均粒子径を所定の範囲のものとすることも好ましい態様である。銀粉末の平均粒子径が小さすぎると、より低温で焼結が進行するものの、凝集しやすくなり焼成時の銀粒子の充填性が低下するために好ましくない。したがって、銀粉末の平均粒子径は、例えば0.5μm以上を目安とすることが好適である。平均粒子径は0.7μm以上であることが好ましく、1μm以上がより好ましく、1.2μm以上が特に好ましい。また、銀粉末の平均粒子径が大きすぎると、焼結のために高温に長時間晒す必要があり、また低温で焼結を実現するとの要望を満たさないという点で好ましくない。したがって、銀粉末の平均粒子径は、例えば5μm以下を目安とすることができる。平均粒子径は4.5μm以下であることが好ましく、4μm以下がより好ましく、3.5μm以下が特に好ましい。
なお、本明細書における「平均粒子径」とは、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布における累積体積50%時の粒径(D50)を採用している。
また、銀粉末としては、粒度分布のシャープな(狭い)ものが好ましい。例えば、平均粒子径が10μm以上の粒子を実質的に含まないような銀粉末を好ましく用いることができる。さらに、粒度分布がシャープであることの指標として、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布における小粒径側からの累積10%体積時の粒径(D10)と累積90%体積時の粒径(D90)との比(D10/D90)が採用できる。粉末を構成する粒径が全て等しい場合はD10/D90の値は1となり、逆に粒度分布が広くなる程このD10/D90の値は0に近づくことになる。D10/D90の値が0.15以上、例えば0.15以上0.5以下であるような、比較的狭い粒度分布の粉末の使用が好ましい。
また他の側面において、銀粉末は、平均粒子径の異なる2つの粒子群を混合して用いることもできる。この場合、例えば、第1の粒子群の平均粒子径(D50)を2μm〜5μm(例えば2μm)の範囲とし、第2の粒子群の平均粒子径(D50)を0.5μm〜2μm(例えば0.5μm)の範囲とすることが好適例として挙げられる。このとき各粒子群の粒度分布は、上記のとおりシャープなものであることが好ましい。そして、例えば、第1の粒子群が65〜90質量%(例えば、70質量%)の割合で、第2の粒子群が35〜10質量%(例えば、30質量%)の割合となるように混合する。これにより、充填性の良好な銀粉末を用意することができる。
このような平均粒子径および粒度分布特性を有する銀粉末は、充填性がよく緻密な導体膜を形成し得る。このことは、抵抗率のより低い導体膜を形成するにあたって有利である。
なお、必ずしもこれに限定されるものではないが、緻密な導体膜を形成し、ペースト供給後の形状維持特性を高めるとの観点から、銀ペーストの全体に占める銀粒子の割合は高いことが好ましい。例えば、銀ペーストにおける銀粒子の含有量は、94質量%以上であることが好ましく、94.5質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、95.5質量%以上が特に好ましく、例えば96質量%以上とすることができる。このように高コンテントの銀ペーストとすることで、基材等に供給された後に銀粒子同士がアンカー効果を発揮し、塗膜の形状の変化、崩れ等を抑制することができる。なお、このような高コンテントの銀ペーストについては、その反面、残部の6質量%以下の構成要素で、銀粉末の印刷を可能とする流動性および供給性を付与する必要がある。この場合、バインダおよび溶剤は、以下のように構成することが好ましい。
[バインダ]
バインダは、銀ペーストを、印刷,乾燥等を行うことで成膜ないしは焼成する段階において、銀粒子同士、および、銀粒子と基材とを結合させる役割を担う成分である。そして、銀粒子が焼成により一体化された後は、バインダは、不要な抵抗成分となり得る。また、バインダは、銀ペーストの粘性およびレオロジー特性を好適に調整し、基材に供給する際の銀ペーストの流動性、および、基材に供給された後の銀ペーストの形状安定性を望ましい態様に整える機能をも有する。ここに開示される銀ペーストは、印刷が可能であって、かつ、印刷後の印刷体(塗膜であり得る。)の表面が概ね平坦に均されるものの、その端部において印刷体の形状崩壊、換言するとダレが抑制されていることが求められる。換言すると、印刷体の断面形状を矩形に近い形状に維持できることが求められる。
したがって、バインダとしては、銀ペーストの焼成温度よりも低い温度で消失し、導体膜中に残存しない成分であることが好ましい。このようなバインダとしては、一般には、バインダ機能を有する有機化合物を特に制限なく用いられるが、ここに開示される技術では、エチルセルロース(EC)と、アクリル樹脂とを併用するようにしている。また、ここに開示される銀ペーストは、銀粒子の焼結温度で消失されない無機バインダ(例えば、ガラスフリット)を含まないことが好ましい。
ECは、セルロースの水酸基をエチルエーテル化したセルロース誘導体であり、アクリル樹脂との相溶性を有する。またECは、焼成残差が少ない点においても銀ペーストのバインダとして好ましい。ECのエーテル化度は特に限定されない。例えば、エトキシ基を25%〜55%程度含有するものを好ましく用いることができる。
アクリル樹脂としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを主モノマー成分とする重合体を使用することができる。典型的には、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとする重合体とすることができる。アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する、他のモノマー成分を副モノマーとしてさらに含んでもよい。ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルおよび/またはメタクリルの意味で使用される。また、主モノマーとは、アクリル樹脂を構成するモノマー成分のうちに占める質量割合が最も大きい成分をいう。主モノマーは、典型的には、アクリル樹脂を構成するモノマー成分のうち50質量%以上を占める成分であり、例えば60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、実質的に100質量%を占めることができる。副モノマー成分とは、アクリル樹脂を構成するモノマー成分のうち、主モノマー成分以外のモノマー成分である。かかるアクリル樹脂の一例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、アクリル樹脂は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、所望の機能を発現する官能基が導入されていてもよい。しかしながら、このような官能基の導入は必須ではなく、例えば、カルボキシ基やエポキシ基、アミノ基等の特徴的な官能基が導入されていないものであってよい。
アクリル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が比較的小さいものが、上記の静止後立上り粘度を好適に満足させられるために好ましい。アクリル樹脂のMwが小さくなることで、エチルセルロースとの相溶性がさらに高められ、印刷時のせん断により破壊された銀ペースト中のバインダ構造が再構築されやすくなり、このことが粘度回復に好適に寄与するものと考えられる。アクリル樹脂のMwは、例えば、15000以下とすることが適切であり、10000以下(例えば10000未満)とすることが好ましく、例えば、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下とすることがより好適な例として挙げられる。アクリル樹脂のMwの下限は厳密には制限されないが、より少ないバインダ量でバインダ機能(例えば、銀粒子の結着機能)を十分に発揮するためには、例えば、Mwは1000以上であることが好ましい。
溶剤は、バインダである上記のエチルセルロースおよびアクリル樹脂を溶解または分散させることができ、沸点がおよそ200℃以上(典型的には約200℃〜260℃)の有機溶剤を好ましく用いることができる。溶剤の沸点は、およそ230℃以上(典型的にはほぼ230℃〜260℃)であることがより好ましい。このような有機溶剤としては、ブチルセロソルブアセテート,ブチルカルビトールアセテート(BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール(BC:ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のエーテル系溶剤、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン,キシレン,ミネラルスピリット,ターピネオール,メンタノール,テキサノール等の有機溶剤を好適に用いることができる。特に好ましい溶剤成分として、ブチルカルビトール(BC)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等が挙げられる。
なお、ここに開示される銀ペーストは、本発明の目的から逸脱しない範囲において、上記以外の種々の添加剤を含ませることができる。かかる添加剤の好適例として、例えば、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、レオロジー調整剤等の添加剤が挙げられる。
銀ペーストにおける銀粒子、バインダおよび溶剤は、上記の静止後立上り粘度を満たすように配合することができる。ここで、例えば、銀粒子の割合を銀ペースト全体の94質量%以上とする高コンテント銀ペーストとする場合、バインダおよび溶剤の配合の調整は重要となりうる。
ここで、バインダおよび溶剤は、銀粒子を分散させる分散系を構築する。バインダおよび溶剤の合計に占めるバインダの割合は、例えば、15質量%以上75質量%以下とすることが好ましい。バインダを15質量%以上とすることで、塗膜形成時に銀粒子を結着させることができ、形状維持特性を好適に高めることができる。バインダは、18質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が特に好ましい。しかしながら、バインダ量の増大は溶剤量の減少につながり、バインダの過度な含有は銀ペーストの流動性および印刷性の低下を招くために75質量%以下が適切である。バインダは、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。なお、バインダと溶剤とは、予めその少なくとも一部を混合してビヒクルの形態で銀ペーストに含むことができる。
またバインダにおいて、ECとアクリル樹脂とは共に含まれていればよく、例えば、ここに開示される銀ペーストにおいて、その配合割合が上記の静止後立上り粘度を満たすための決定的な要素とはならないことが確認されている。しかしながら、好適な一例として、銀粒子の割合を94質量%以上の高コンテント銀ペーストとする場合などは、例えば、エチルセルロースとアクリル樹脂との合計に占めるアクリル樹脂の割合は、30質量%以上90質量%以下程度の範囲で調整することが好ましい。アクリル樹脂の割合が、30質量%未満の場合は静止後立上り粘度が低くなりすぎる傾向にあるために好ましくない。アクリル樹脂は、例えば、35質量%以上がより好ましい。また、アクリル樹脂の割合が、90質量%を超過する場合は、銀ペースト自体の粘性が高くなりすぎて印刷性が低下するために好ましくない。例えば、アクリル樹脂は、85質量%以下がより好ましい。
このような銀ペーストは、上述した材料を所定の配合(質量比率)となるよう秤量し、均質になるよう混合することで調製することができる。材料の撹拌混合は、例えば三本ロールミル、ロールミル、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー等公知の種々の撹拌混合装置を用いて実施することができる。
ペーストの好適な粘度は、目的とする電極の厚み(延いては、ペースト印刷体の厚み)等によっても異なるため厳密には限定されない。例えば、積層部品の内部電極を形成するために適した形状(例えば厚みが50μm程度)の塗膜を形成する場合には、25℃、10rpmにおける銀ペーストの粘度を300Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは350Pa・s以上450Pa・s以下となるように調製するとよい。これによって、電極パターンを、位置精度と形状精度とを高めて印刷することができる。
この銀ペーストは、例えば基材上に厚みのある線状に供給したとき、従来の銀ペーストよりも、角が崩れて(ダレて)丸みを帯びることが抑制される。その結果、例えば、断面形状が矩形により近い形態となり得る。例えば、この銀ペーストを厚さ50μm以上の線状に印刷して得られる塗膜(乾燥物)の断面形状を台形に見立てたとき、その台形の下底と脚とのなす角度は50°以上と急峻に立ち上がったものとなり得る。立上がり角度は、例えば、52°以上とすることができ、54°以上であってよく、56°以上、58°以上、60°以上、62°以上等であり得る。ここに開示される銀ペーストによると、このように厚膜を印刷した場合であっても、断面の矩形性が高い塗膜を得ることができる。
かかる銀ペーストは、基材上に供給したのち、焼成することで、導体膜を獲ることができる。焼成温度は、銀粒子の焼結温度に併せて決定することができる。例えば、600℃〜900℃程度の温度範囲で10分間から1時間程度焼成することが例示される。なお、焼成に先立って、50〜150℃で15〜30分間ほど静置して溶剤を除去するようにしてもよい。これにより、基材上に、銀粒子が緻密に焼結してなる導体膜を、例えば厚みが厚くても矩形性の高い形状で形成することができる。
以上の銀ペーストにより得られる導体膜は、厚みが厚い場合であっても断面形状の矩形性が高く維持される。その結果、導体膜は、抵抗率が同じであっても、より抵抗の低い導体膜となりうる。したがって、ここに開示される銀ペーストは、例えば、様々な構成および用途の電子素子の電極形成用ペーストとして好ましく利用することができる。そのような電子素子としては、特に制限されるものではないが、例えば、積層インダクタ、積層チップビーズ、積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:MLCC)、積層セラミックバリスタ、積層PTCサーミスタ、積層NTCサーミスタ等が挙げられる。
図1は、積層チップインダクタ1の構造を模式的に示した断面図である。なお、図1における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、図面中の符号X、Zは、それぞれ左右方向、上下方向を表す。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎない。
積層チップインダクタ1は、本体部10と、本体部10の左右方向Xの両側面部分に設けられた外部電極20とを備えている。本体部10は、複数の磁性体層12が上下方向Zに積層され一体化された構造を有する。磁性体層12は、例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等のスピネルフェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の六方晶フェライト、イットリウム鉄ガーネット等のファーネットフェライト、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Cr系合金等のメタル系材料で構成されている。各磁性体層12の間には、コイル導体を構成する内部電極層14が備えられている。コイル導体は、上述の導電性ペーストを用いて、各磁性体層12の間に形成されている。磁性体層12を挟んで上下方向Zに隣り合う2つのコイル導体は、磁性体層12に設けられたビアホールを通じて導通されている。このことにより、内部電極層14は、3次元的なコイル形状(螺旋状)に構成されている。コイル導体の両端はそれぞれ外部電極20と接続されている。
このような積層チップインダクタ1は、例えば、以下の手順で製造することができる。すなわち、まず、上記したメタル系材料からなる粉末とバインダ樹脂と有機溶剤とを含む磁性体ペーストを調製し、これをキャリアシート上に供給して、グリーンシートを形成する。そしてこのグリーンシートの所定の位置に、レーザ照射等によりビアホールを形成する。次いで、ここに開示される銀ペーストを、所定の位置に、所定の電極パターン(コイルパターン)で印刷する。必要であれば、ビアホールに、スルーホール用に調製した銀ペーストを印刷してもよい。このような電極パターン付きグリーンシートを複数枚(例えば100枚以上)作製し、これらを積層、圧着後、所望のサイズにカットして、未焼成の本体部10を作製する。次いで、これらを乾燥、焼成することによって、グリーンシートが一体的に焼成され、モノシリックな磁性体が形成される。これにより、複数の磁性体層12の間に内部電極22が挟まれた形態の本体部10が形成される。そして、本体部10の両端部に適当な外部電極形成用ペーストを塗布し、焼成することによって、外部電極20を形成する。このようにして、積層チップインダクタ1を製造することができる。
ここで、ここに開示される銀ペーストは、一回の印刷にて厚みの厚い電極パターンを断面の矩形性を高く維持して印刷することができる。したがって、より少ない印刷工程数で、形状精度の高い電極パターンを高品質に形成することができる。この電極パターンから作成される内部電極22は、例えば2μΩ・cm以下の低い抵抗率を実現し得る。そして誘電体層12は、直流重畳特性に優れた誘電体材料から構成されている。内部電極22は2μΩ・cm以下の低抵抗率を実現し得ることから、例えば、電極によるジュール熱の損失が小さく、大電流を流すことが可能な電源回路に用いられるチップインダクタ1が提供される。また、チップインダクタ1は直流抵抗が低く抑えられていることから、パワーインダクタ、チョーク用インダクタ等に適用することができる。チップの形状は、例えば、1608形状(1.6mm×0.8mm)、2012形状(2.0mm×1.25mm)、2520形状(2.5mm×2.0mm)等とすることができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[銀ペーストの調製]
銀粉末、バインダ、溶剤および添加剤を下記の表1に示す割合で配合し、3本ロールミルで均一に混合することで、例1〜12の銀ペーストを調製した。
銀粉末としては、平均粒子径が2.6μmの球形粉末を用いた。樹脂としては、エチルセルロース(EC)と、重量平均分子量Mwが5000のアクリル樹脂とを適宜選択して用いた。ただし、例11では、アクリル樹脂として重量平均分子量Mwが14000のものを用いた。溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いた。なお、樹脂量および溶剤量は、後述の銀ペーストの10rpm粘度が400±100Pa・sと印刷に適した粘度となるように調整した。
[10rpm粘度]
例1〜12の銀ペーストについて、デジタル回転粘度計(ブルックフィールド社製、DV−III ULTRA)を用い、室温(25℃)にて、SC4−14スピンドルで回転速度を10rpmで一定としたときの粘度を測定し、その結果を下記の表1の「10rpm粘度」の欄に示した。
[レオロジー特性]
例1〜12の銀ペーストについて、レオメータ(Thermo Scientific社製、HAAKE RheoStress 6000)を用い、室温(25℃)にて、せん断速度を以下のプログラムで変化させたときの、銀ペーストの粘度の時間依存性を調べた。そして、その結果から、下記のとおり定義される静止後粘度の「立上り」と「傾き」とを算出し、表1の当該欄に示した。なお、センサーは、直径25mmのコーンプレートを用い、プレート間距離0.052mm、測定試料体積0.04mLの条件で測定を実施した。
<ステップシェアレートプログラム>
測定に際しては、せん断速度を3通りにステップ状に変化させ、各せん断速度における粘度の時間依存性(回転粘度カーブ)を調べた。せん断速度は、20/s、10/s、0.01/sの順に変化させた。各せん断速度でのシェア時間はそれぞれ1秒間とした。なお、レオメータは、センサーの回転速度を各ステップで一定に制御し、トルクを検出する、回転数制御(CR)モードで測定を実施した。ここで、せん断速度「20/s」は印刷過程でペーストにシェア(せん断)が加わった状態を模擬し、「10/s」はペーストが印刷装置から媒体に印刷(転写)されてシェアが開放された状態を模擬し、「0.01/s」は印刷されたペーストのレベリング(平坦化)過程を模している。このステップシェアレートプログラムによって、銀ペーストの印刷時の粘度回復挙動を的確にシミュレートすることができる。なお、レオメータの仕様によっては、せん断速度の切り替えに際して0〜2秒間程度(例えば、本例においては1.2〜1.8秒間程度)のインターバルが発生し得る。ステップシェアレートプログラムにおけるこのようなインターバルの介在は許容される。
<データ解析>
まず、上記ステップシェアレートプログラムにより、せん断速度10/sで1秒間のシェアを印加した直後の回転粘度(i)と、せん断速度0.01/sで1秒間のシェアを印加した直後の回転粘度(ii)とを測定し、これらの粘度変化量を「静止後粘度立上り」:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)};とした。
また、この静止後粘度立上りを測定時間間隔tで除すことで、「静止後粘度傾き」:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)}/t;とした。これらの値を算出し、表1の当該欄に示した。なお、測定時間間隔tは、インターバルの実測値を含む。
なお、参考のために、例1、3、11の銀ペーストについての粘度の時間依存性を図2に示した。また、参考のために、図3に、(a)例1および(b)例11の粘度の時間依存性について、静止後粘度立上がりと傾きとの算出方法について説明する図を示した。
[印刷断面矩形性]
例1〜12の銀ペーストを用い、アルミナ基板に線状の電極をスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン製版には、#325のステンレスメッシュ(開口率43%)を用い、線幅400μmの細線を、約50μmの膜厚となるように1回だけ印刷し、120℃で10分間乾燥させることで例1〜12の印刷体を形成した。
得られた細線状の印刷体について、幅方向の断面形状をレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−9510)を用いて測定した。その結果を基に、略台形状の断面の下辺と脚との為す角度を下記のように測定して「立上角度」とした。
すなわち、印刷体(電極)の断面形状の測定に際し、まず、レーザ顕微鏡を走査することで、電極の表面高さ情報を取得し、電極の断面形状プロファイルを得た。なおこのとき、断面形状プロファイルには、電極の幅方向の両側に電極が形成されていない基板の表面を含むようにした。
そして断面形状プロファイルのうち、断面形状の両端2点の基板の表面位置を直線で結ぶことでベースラインとした。また、このベースラインを、台形の下辺とした。
次いで、断面形状プロファイルにおいて、ベースラインの位置を極小点、表面高さが最も高い位置を極大点としたとき、極小点と極大点との間に現れる変極点における接線を、台形の脚とした。そしてこの脚と下辺との為す角(脚の傾きに等しい角度である。)を「立上角度」とした。その結果を表1の当該欄に示した。
なお、変極点とは、断面形状プロファイルを曲線y=f(x)で表したとき、f''(a)=0の前後でf''(x)の符号が変わる点(a,f(a))である。変極点の特定に際しては、上記「立上角度」を求めるとの趣旨に反しない範囲において、断面形状プロファイルをスムージングするなどしてもよい。
また、例1の印刷体についての立上角度を基準「Ref」として、例2〜12の印刷体の立上角度について評価し、その結果を表1の「評価」欄に示した。なお、評価欄に記載の記号は、例1の印刷体の立上角度(Ref)に対する立上角度の増加量が、以下の通りであったことを示す。
×:+5°未満
△:+5°以上10°以下
○:+10°以上
Figure 2019053856
[評価]
銀ペーストなどの電子ペーストは、塗布後に十分にレベリングするために、塗布時のせん断によってレベリングのためのある程度の時間は粘度が下がった状態を保持することが求められる。その一方で、厚膜の印刷体がダレないためには、塗布時よりも十分に小さいせん断で粘度が瞬間的に回復することが求められる。
表1に示すように、例1〜12のサンプルは、静止後粘度の立上りが低い順に並べて記載されている。しかしながら、例1〜12のサンプルにおいて10rpm粘度の値はバラバラに配列されている。このことから、10rpm粘度がおおよそ同じ銀ペーストであっても、その構成によって印刷体の断面形状の立上角度、すなわち粘度回復挙動が異なってくることがわかった。なお、完全に相関しているわけではないが、印刷体の断面の立上角度は、おおよそ静止後粘度の立上りが大きくなるにつれて徐々に大きくなり、その後に徐々に小さくなる傾向がある。つまり、印刷体にダレが起こりやすいか否かは、静止後粘度の立ち上がり、換言すると、粘度の回復性に大きく相関することが確認できた。具体的には、静止後粘度の立上りが大きいほど印刷体の断面の矩形性が高くなるが、静止後粘度の立上りが過度に大きくなると矩形性はやや低くなる傾向があることがわかった。そして、粘度の立上りが概ね300Pa・s以上の場合に、印刷体の断面の矩形性が高い良好な印刷が行えることが分かった。
詳細にみると、例1は、バインダとして、従来より汎用されているECのみを用いた例である。一方、例12は、バインダとしてアクリル樹脂のみを用いた例である。例12では、銀ペーストの粘度が高くなりすぎて印刷に供することができないことが分かった。つまり、アクリル樹脂を単独で用いた銀ペーストは、印刷には向かないことがわかった。
また、例1、3の比較から解るように、例3は、例1に調整剤を添加したペーストである。この調整剤は、一般に、ペーストにおける粒子の沈降防止、ペーストのダレ防止、の機能を発現させるためにペーストに添加されるもの(市販品)である。そのため、表1の結果からも、調整剤は、銀ペーストの「10rpm粘度」には大きな影響を与えないが、「粘度の立上り」を上昇させる役割があることが解る。しかしながら、例3の銀ペーストは調整剤を0.2%と比較的多量に含むものの、粘度の立上りが203Pa・sにしかならず、調整剤の添加だけでは印刷体の断面の矩形性を効果的に高めることはできていないことが解る。
そして例えば、例1、2、4の比較から、バインダとしてECとアクリル樹脂とを併用することで、調整剤を添加せず、銀ペーストの印刷性を維持した状態で、「粘度の立上り」を上昇させる傾向があることがわかった。これは、せん断によって切断された銀ペースト中のバインダのネットワーク構造が、アクリル樹脂の添加により再度樹脂ネットワークを形成しやすくなることによるものであると考えられる。しかしながら、粘度の立上りが(例2)88Pa・s、(例4)257Pa・sでは、印刷体の断面の矩形性を効果的に高めることはできないことも確認できた。
また例えば、例4、5、6に示されるように、バインダとしてECとアクリル樹脂とを併用し、その割合を調整することで、粘度の立上りを300Pa・s以上に効果的に高めることができ、その結果、印刷体の断面の矩形性も高くなることが確認できた。ただし、これらの例から解るように、粘度の立上りは、単純にECとアクリル樹脂との割合で決まるものではないことも確認できた。換言すると、印刷体の矩形性は、単に銀ペーストの回転粘度や組成によって決定されるわけではなく、銀粉末のコンテントと、バインダおよび溶剤の配合により決定されるレオロジー特性の影響を強く受けることがわかった。
さらに、例4、9の比較から、これらの例におけるECとアクリル樹脂の比率は同じであるが、銀粉末量と、バインダおよび溶剤の割合とを適切に調整することで、例9では96%という高コンテントの銀ペーストの印刷体について、高い矩形性を実現する印刷が可能であることがわかった。
一方で、例5、6と例7、8との比較や、例4と例11との比較などから、ECとアクリル樹脂の併用に加えて調整剤を加えることでも、粘度の立上りを好適に高めて、印刷体の断面の矩形性を高くできることが確認できた。調整剤の添加は必須ではないものの、印刷体の断面の矩形性を容易に高めるとの観点からは、調整剤の添加は好適であることがわかった。
また、例10、11の比較から、アクリル樹脂としてMwが14000の樹脂を用いた例10では、10rpm粘度は高くなったものの、粘度の立上りについては若干低下し、印刷体の矩形性がやや劣るという結果となった。このことから、アクリル樹脂としては、分子量がより小さい方が、粘度回復挙動が早くなりやすいと考えられる。アクリル樹脂のMwは14000以下であってもよいが、アクリル樹脂のMwは10000以下、例えば5000以下のようにより小さい方が好ましいことがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。例えば、上記例では銀ペーストの配合を一定のものとしたが、かかる銀ペーストにおけるバインダおよび分散剤は、焼成により焼失する成分であり、また印刷法および印刷条件にもよるため、ここに開示される技術に本質的な影響を与えるものでないことは当業者に理解される。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 積層チップインダクタ
10 本体部
12 磁性体層
14 内部電極層
20 外部電極

Claims (6)

  1. 銀粒子と、バインダと、溶剤とを含む銀ペーストであって、
    前記バインダは、エチルセルロースとアクリル樹脂とを含み、
    せん断速度を、20/s、10/s、0.01/sの順に変化させて印加したときの前記銀ペーストの粘度について、せん断速度10/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(i)と、せん断速度0.01/sで1秒間のせん断を印加した直後の回転粘度(ii)とを測定し、これらの粘度の変化量:{回転粘度(ii)−回転粘度(i)};を静止後立上り粘度としたとき、
    前記静止後立上り粘度は、300Pa・s以上1500Pa・s以下である、銀ペースト。
  2. 当該銀ペーストの全体に占める前記銀粒子の割合が、94質量%以上である、請求項1に記載の銀ペースト。
  3. 前記エチルセルロースと前記アクリル樹脂との合計に占める前記アクリル樹脂の割合は、30質量%以上90質量%以下である、請求項1または2に記載の銀ペースト。
  4. 前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、15000以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀ペースト。
  5. 当該銀ペーストが、線状に印刷され、乾燥されてなる印刷体の略台形の横断面において、
    前記台形の下底と脚とのなす角度が50°以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀ペースト。
  6. さらにレオロジー調整剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀ペースト。
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