本願で開示する炊飯器は、被炊飯物を入れる内鍋と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、ユーザの操作を受け付ける操作部と前記操作部が配置されている部分の筐体を振動させる加振器と、前記加振器の振動によってユーザに対する音声情報を報知する音声情報伝達手段とを備え、前記音声情報の伝達タイミングに対応して前記加振器を200Hz以下の応答信号で振動させる。
本願で開示する炊飯器は、上記のようにユーザの操作を受け付ける操作部が配置された部分の炊飯器の筐体を振動させる加振器を備え、この加振器を振動させてユーザに対して音声情報を報知すると共に、音声情報の伝達タイミングに対応して、加振器を200Hz以下の応答信号で振動させる。このように構成することで、ユーザに対する音声情報の報知と共に、ユーザの操作部への操作に対する振動によるアンサーバックを行うことができる。なお、アンサーバックとしての振動を生じさせる応答信号を200Hz以下の周波数の信号とすることによって、音声情報として伝達される人の声の周波数帯域と応答信号とを区別することができ、ユーザが、応答信号を音声情報の一部として誤って受け取ってしまうことを防止することができる。
本願で開示する炊飯器において、前記音声情報の種類に応じて、前記加振器を前記応答信号で振動させるタイミングを異ならせることが好ましい。このようにすることで、伝達される音声情報の種類に応じて、ユーザに異なる触感による明瞭なアンサーバックを行うことができる。
また、前記音声情報を報知する直前に、前記加振器を前記応答信号で振動させることが好ましい。このようにすることで、ユーザに音声情報と振動によるアンサーバックとを一対の関連あるものとして認識させることができる。
さらに、前記音声情報が間欠的に印加される2つの音声信号により伝達されるものであり、先に印加される音声信号と後に印加される音声信号との合間のタイミングで前記加振器を前記応答信号で振動させることが好ましい。このようにすることで、アンサーバックとしての加振器の振動タイミングと音声情報の報知とが分離してしまって、ユーザが両者の関連性を把握しにくくなることを防止することができる。
さらにまた、前記先に印加される音声信号が印加される前と、前記2つの音声信号が印加される合間とに、前記加振器を異なる位相の前記応答信号で振動させることが好ましい。このようにすることで、音声信号が印加されていないタイミングで印加されるアンサーバックの振動を、ユーザが一体のものとして把握することができるようになる。
なお、前記応答信号の周波数が、100Hz以上、150Hz以下であることが好ましい。このようにすることで、ユーザに対して、音声情報とは異なる応答信号をより確実に伝達することができる。
また、本願で開示する炊飯器において、前記操作部が前記蓋体の上面に配置され、前記加振器が、前記蓋体の上面を構成する筐体の内側面に接して配置されていることが好ましい。このようにすることで、ユーザによる操作部への操作が容易となるとともに、操作部を操作したことのアンサーバックを確実に報知でき、さらに、音声情報をより明瞭にユーザに伝達することができる。
さらに、前記操作部が、ユーザのタッチ位置を検出可能なタッチパネルとして構成されていることが好ましい。デザイン性が高く、また、炊飯器の外殻における突出部となる操作ボタンなどを廃止できるタッチパネルを用いて、より確実に操作を行うことができる炊飯器を実現できる。
以下、本願で開示する炊飯器の実施形態として、内鍋内部の圧力を圧力弁により調節して圧力炊飯を行う炊飯器を例示して説明する。なお、本実施形態で例示する炊飯器は、高い蓄熱性によっておいしいお米を炊くことができる、非金属製の内鍋を備えた炊飯器である。
(実施の形態)
図1は、本実施形態にかかる炊飯器の外観を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態にかかる炊飯器の断面構成を示す垂直方向断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の炊飯器は、米と水、さらに、具入り炊飯モードでは野菜や豆類、肉類などの各種の具である被炊飯物を入れる内鍋30と、この内鍋30を内鍋収容部20aに収容することができる炊飯器本体20と、炊飯器本体20の内鍋収容部20aの上方を開閉可能に覆う蓋体10とを有している。なお、図1、および、図2は、いずれも内鍋収容部20aに内鍋30が収容された状態で、かつ、内鍋収容部20aを覆う蓋体10が閉じた状態を示している。
本実施形態で例示する炊飯器では、デザイン上の観点から、また、汚れが付着しにくく、かつ、拭き取り掃除が容易となることを考慮して、炊飯器の上面をほぼ平坦な面として凹凸を無くしている。より、具体的には、蓋体の表面から突出する操作ボタンを配置せず、ユーザが近づいたことを感知する人感センサ11と、炊飯器の動作状況や操作指示状況などを表示する液晶などの画像表示デバイスを用いた表示部、および、メニューなどの文字表示部分をユーザがタッチして選択を行うことができるタッチ入力部とを兼ねた入力装置12が配置されている。
蓋体10の後方側、すなわち、図1における右上奥方向の側には、炊飯器内部の圧力を調節する調圧機構の上端部分に位置する、蒸気放出口13aを備えた調圧キャップ13が配置されている。また、蓋体10の前方側、すなわち、図1における左下手前方向の側には、蓋体10のロックを解除するロックボタン14が配置されている。
本実施形態にかかる炊飯器では、人感センサ11が赤外線などによってユーザが近くにいることを検知した場合には、入力装置12と、入力装置12の周囲の領域に配置されたタッチセンサとして構成された操作パネル15とが動作して、入力装置12の表示画面と操作パネル15の操作ボタンが表示される。本実施形態の炊飯器では、入力装置12と操作パネル15とが、ユーザからの炊飯器への操作を伝達する操作部を構成する。
ユーザは、入力装置12の画面に表示された文字情報や、操作パネル15上に表示された操作ボタンをタッチすることで、炊飯、保温などの炊飯器の動作の指示や、白米炊飯モードや具入り炊飯モードなどの調理メニューの選択、保温時間や吸水開始までの時間などのタイマー設定を行うことができる。なお、入力装置12と操作パネル15との詳細は、図3を用いて後述する。
本実施形態にかかる炊飯器では、蓋体10の後方側の角部近傍部分に、ユーザに音声情報を伝達する音声情報伝達手段としての加振器40が、蓋体10の外殻を構成する筐体の裏側面に接触して配置されている。また、加振器40は、ユーザによる入力装置12や操作パネル15へのタッチ操作に対応して蓋体10の筐体を振動させる、振動発生手段としても機能する。加振器40の構成やその配置位置の詳細については、図4等を用いて後述する。
なお、本実施形態にかかる炊飯器では、蓋体10は、蓋体10の本体部分である蓋体本体50と、蓋体本体50の上面を覆うようにして別途取り付けられる板状の上面プレート60とで構成されている。
図2に示すように、蓋体10の内部には、蓋体10が閉じた状態で内鍋30内部の圧力を一気圧以上の所定の圧力に調整可能な、圧力調整手段である圧力弁16が配置されている。図2では、本実施形態の炊飯器の圧力弁16として、一例であるボール状圧力弁を図示している。なお、図2では、切断面の関係から一つのボール状圧力弁16しか示されていないが、重さの異なる2種類のボール状圧力弁と、これら2つの圧力弁の動作を規制する規制手段を備えることにより、内鍋内部の気圧を、最も気圧の高い高圧状態と、高圧状態よりは低く大気圧よりも高い気圧である低圧状態、大気圧の状態である一気圧状態との3種類の圧力状態とすることができる。
なお、圧力調整手段として圧力弁を用いる場合には、弁の数や形状は上記説明したものに限られず、円板や矩形板などの板状の圧力弁など他の形状の圧力弁を1つ、2つ、もしくは、3つ以上用いるなど、さまざまな形態を採ることができる。さらに、圧力調整手段としては、弁を用いる以外にも、例えば、内鍋内部の圧力を測定する圧力センサと、この圧力センサで検出される圧力の値に基づいて適宜開閉動作を行う、ピエゾ素子などの電動素子または機械的に動作する各種の開閉手段を用いた通気口を用いるなど、さまざまな形態が考えられる。
内鍋30内部の圧力を低下させるために圧力弁16が開放された場合は、内鍋30内部で発生した蒸気が、蓋体10の上面に形成された調圧キャップ13を経由して、調圧キャップ13に形成された蒸気放出口13aを介して外部に放出される。調圧キャップ13は、蓋体10内部に形成されて内鍋30方向に向かう経路17に接続されているため、圧力炊飯時に調圧キャップ13まで上がってきた蒸気が調圧キャップ13内で気液分離して生じた「おねば」は、内鍋30内に戻されるようになっている。
蓋体10の上面における手前側中央部分のロックボタン14は、蓋体10が閉じている状態で押し込まれると、蓋体10のロックが外れ、図示しないバネ機構により蓋体10全体が後方側に開くようになっている。なお、安全性を高める観点から、炊飯工程の実行中に誤ってユーザがロックボタン14に触れてもロックは解除されず、操作パネル15に表示される操作ボタンから炊飯プログラムの停止が指示されていない状態では蓋体10が開かないような設定とすることができる。
また、蓋体10内部の入力装置12の下側に位置する部分には、入力装置12への表示画像の制御と入力装置12表面でのユーザのタッチ位置の検出、操作パネル15に各種操作ボタン類を表示するとともに、操作パネル15におけるユーザのタッチ位置を検出して操作内容を判別する検出回路など、ユーザからの操作を受け付ける操作部を制御する各種の制御回路が搭載された回路部18が配置されている。さらに、本実施形態の炊飯器において、ユーザにより設定された炊飯モードに従って所定の炊飯プログラムに従った炊飯工程を実行する制御手段が、マイコンを含む制御回路(図示せず)として、回路部18を構成する回路基板上に搭載されている。また、ユーザに伝達される音声情報を報知するための音声信号を生成するとともに、ユーザの操作部への操作に対応するアンサーバックとしての応答信号を生成し、音声信号と応答信号とによって所定のタイミングで加振器40を振動させる音声情報伝達手段の信号発生部45も、回路部18の回路基板上に搭載されている。
本実施形態の炊飯器では、回路部18に配置されたマイコンを含む制御回路が、後述する温度センサからの出力に基づいて加熱手段23(23a、23b、23c)への電力供給を制御して、内鍋30の温度制御を行うとともに、前記した圧力調整手段である圧力弁16を制御して、内鍋30内部の圧力を所定の値に調整する。
なお、加熱手段と圧力調整手段とを制御する制御手段である制御回路が、入力装置12の下側の回路部18に配置されていることは一例に過ぎない。加熱手段の調整と圧力調整手段の調整とが、それぞれ別の回路基板上に搭載された電気回路で行われる場合もあり、また、加熱手段と圧力調整手段とを制御する制御回路が、蓋体10内の表示パネル12の下部ではなく、例えば炊飯器本体20内部に配置された回路基板上に配置される場合もある。同様に、音声情報伝達手段の一部である信号発生部45も、回路部18の回路基板上に配置されている場合に限られず、加振器40の配置位置である蓋体10の後方側角部近傍に信号発生部を配置する構成を採用することができる。
蓋体10は、炊飯器本体20のユーザから見て背面側(後方側)に当たる位置の上部に配置されたヒンジ機構21により炊飯器本体20に対して回動することで、内鍋収容部20aを開閉することができる。なお、ヒンジ機構21には、ヒンジ軸の周りに配置された図示しないコイルバネが設けられていて、蓋体10は、常に上方へと開く方向に付勢されている。このため、ユーザがロックボタン14を押下して蓋体10を開こうとした際には、蓋体10はユーザからみて後方側に自ら開くように動作する。
蓋体10が炊飯器本体20の上面に押しつけられた状態でロックされた際、蓋体10の内側表面に配置された円環状(ドーナツ状)のパッキン材19が、内鍋30の内側面30aの上端部近傍と内鍋30の上端面部分30bとに当接して、蓋体10は、内鍋30の内部の空間を気密状態で封鎖することができる。本実施形態の炊飯器では、内鍋30は、内鍋収容部20aの底部に配置された弾性支持機構22によって蓋体10側に付勢されているため、気密状態を確実に維持することができ、内鍋30内部を例えば1.25気圧などの一気圧以上の所定の高圧状態とすることができる。
炊飯器本体20の内鍋収容部20aの底面と側面の裏側部分には、加熱手段23としての第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、加熱ヒータ23cが設けられている。
第1のワークコイル23aは、内鍋30の底面31に対向するように内鍋収容部20aの底面の裏側に配置されている。内鍋収容部20aの底面中央には、内鍋30の底面中央部の温度を検出する温度センサであるセンターセンサ24が配置されているため、第1のワークコイル23aは、平面視すると中央に穴の開いた円環状になっている。
第2のワークコイル23bは、内鍋30の底面31と側面32との境界に位置する傾斜部分33に対向するように配置されている。第2のワークコイル23bも第1のワークコイル23aと同様に円環状となっている。
これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bは、高周波コイルとも称されるIHコイルであり、コイルに流れる電流により渦電流が生じて誘導加熱が起きるように、内鍋30の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに対向する部分の外面側には、図示しない発熱体が配置されている。発熱体は、銀もしくはステンレスなどの金属薄膜がコーティングされたもの、もしくは、金属箔が転写されたものなどとして非金属製の内鍋30の表面に形成されている。そして、第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに電流を流すことによって発熱体が発熱し、この発熱体の発熱が非金属製の内鍋30の温度を上昇させる。
なお、本実施形態では、発熱体が内鍋30の外表面の、ワークコイル23a、23bに対向する部分に形成された例を示したが、発熱体はワークコイル23からの誘導起電力により発熱して非金属製の内鍋30の温度を上昇させることができる、いずれの位置に配置することもできる。
内鍋30の側面32に対向する内鍋収容部20aの側壁部分の裏側には、側面ヒータ23cが配置されている。この側面ヒータ23cは、電流が流れることにより発熱してその輻射熱で内鍋を温めるものであり、炊飯工程後の保温工程において内鍋30を保温するために使用される。また、炊飯時に側面ヒータ23cに電流を流すことで、側面ヒータ23cを第1のワークコイル23aおよび第2のワークコイル23bとともに、内鍋30の加熱に使用することができる。
本実施形態の炊飯器では、これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cが加熱手段23を構成しており、蓋体10の回路部18に搭載された制御回路により、それぞれに流れる電流量や電流を流す時間の長さが制御されることで、加熱手段23のオンとオフ、また、オンの場合の発熱量の制御が行われる。なお、加熱手段23として、上記の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cの他にも、内鍋収容部20aの周囲の他の部分や蓋体10の内部に、加熱のための誘導加熱コイルやヒータなどを配置することも可能である。
また、本実施形態の炊飯器では、内鍋収容部20aの底部、具体的には、内鍋30の底面31から傾斜部分33にかかる部分と対向する位置に配置された保護枠として、内鍋30と同様のセラミックなどの非金属材料により構成される、かまど部材25が配置されている。このように、発熱体が配置されている内鍋30の部分に対向する位置の内鍋収容部20aに、非金属製の保護枠であるかまど部材25を配置することで、この保護枠部分を樹脂で構成する場合よりも耐熱性が向上する。このため、内鍋30の最高温度としてより高い温度を許容することができ、非金属製の内鍋30の蓄熱効果をより強く発揮させることができる。この結果、本実施形態にかかる炊飯器では、一層おいしいお米を炊くことができる。
炊飯器本体20の背面側に配置されたヒンジ機構21の下部には、炊飯器に電力を供給するために商用電源に接続される、図示しない電源プラグに接続された電源コードを収納するコードリール27などが配置されている。
本実施形態の炊飯器に用いられている内鍋30は、基体が焼き物であるいわゆる土鍋であり、基体部分はコーディエライト系の材料で形成されていて、成分としてSiO2を含んでいる。この基体部分の両面にリチア系の釉薬が塗布され、外表面には発熱体である銀ペーストがコーティングされている。また、内鍋30の被炊飯物に接触する内表面には、アルミ溶射膜を介してフッ素コーティングが施されている。なお、上記内鍋30の構成は例示であり、本実施形態の炊飯器として用いられる非金属製の内鍋としては、セラミックやガラス素材などの非金属製鍋、また、アルミやステンレスの金属層にセラミックや中空ガラスビーズなどの非金属部材の層をコーティングした内鍋などを好適に用いることができる。さらに、本実施形態にかかる炊飯器では、内鍋として、従来周知の銅やアルミ、ステンレスなどの金属層により形成される金属製内鍋を用いることもできる。
また、本実施形態の炊飯器では、センターセンサ24以外にも、例えば蓋体10の内鍋収容部20aと対向する部分や、炊飯器本体20の内鍋30の側面32と対向する部分などに1または2以上の温度センサを配置することができる。本実施形態の炊飯器に用いられるセンターセンサ24をはじめとする各温度センサは、例えばサーミスタに代表される熱的電気素子を用いて構成されるものなどの従来周知の各種の温度センサを、そのまま用いることができる。また、上記したように、内鍋収容部20a内部の圧力を検出可能な圧力センサを配置し、内鍋30内部の圧力数値を制御手段が把握する構成とすることもできる。
なお、図1および図2を用いて説明した本実施形態の炊飯器の全体の形状や、各部材の具体的な構成や配置はあくまで一例に過ぎず、本発明にかかる炊飯器において、上記図1および図2に例示した構成とは異なるさまざまな構成を採用することができる。
図3は、本実施形態にかかる炊飯器の蓋体の前方側の部分を示す平面図である。
図3では、人感センサ11が、ユーザが近くにいることを検知して、入力装置12と操作パネル15とが動作し、入力装置12の表示画面と操作パネル15上とに、ユーザが操作内容を指示するための文字情報などの各種の情報表示と、操作ボタンとが表示された状態を示している。また、図3では、説明のために、入力装置12の表示画面における全ての表示セグメントがON状態となって表示項目が全て表示された状態を示している。入力装置12の表示画面での表示内容は、ユーザのタッチ動作によって変化するものであり、実際の炊飯器の動作状態では図3に示したように全ての表示項目が同時に表示されることはない。
本実施形態の炊飯器では、操作パネル15は、入力装置12とロックボタン14との間の第1の領域15aと、入力装置12の左側に位置する第2の領域15bと、入力装置12の右側に位置する第3の領域15cとの3つの領域に分かれて配置されている。なお、第1の領域15a、第2の領域15b、第3の領域15cは、それぞれ、人感センサ11がユーザの接近を感知すると所定の画像が表示される表示パネルとしての機能と、ユーザがタッチした位置を検出するタッチセンサとしての機能とを備えるタッチパネルである。本実施形態の炊飯器において、操作パネル15の3つの領域15a、15b、15cは、それぞれを別々の3つのタッチパネルで構成することができる。また、3つの領域15a、15b、15cを備えた1枚の大きなタッチパネルで構成することができる。なお、入力装置12と操作パネル15(15a、15b、15c)とにおいてタッチ位置を検出するセンサの方法としては特に限定はなく、静電容量方式をはじめとして、抵抗膜式、光学式などの従来知られている各種の原理に基づいたタッチセンサを使用することができる。
入力装置12の表示画面は、上段側の部分に「炊込み」「おこわ」などの各炊飯メニューの文字表示12aと音声ガイド機能のON/OFF表示や、保温工程種別などが表示され、下段には、タイマー機能を設定する時計表示12b、時刻・分を表示する時間表示部分12c、炊飯メニューに対応したアイコン12dの表示部分が設定されている。
入力装置12とロックボタン14との間の操作パネル15の第1の領域15aには、「予約」「炊飯」「取消」の3つの主操作ボタンが配置されている。入力装置12の左側の操作パネル15の第2の領域15bには、「音声ガイド」「火かげん」「保温選択」「仕上り」の4つの操作ボタンが表示される。なお、「火かげん」ボタンと「仕上り」ボタンの上側には、それぞれのボタンの選択時に設定される程度を示す指標が配置されている。入力装置12の右側の操作パネル15の第3の領域15cには、「もどる・すすむ」ボタンと、「時・分」ボタンとが配置されている。これら2つのボタンは、それぞれのボタンの左側/右側をタッチすることで、選択されている炊飯メニューを随時右方向、左方向に変更したり、時刻表示と分表示の設定対象を変更したりすることができる。
ユーザは、自らの接近を人感センサ11が感知することで表示されたタッチパネル上の各種のメニュー表示や操作ボタンをタッチして、炊飯メニューの選択や一部のこだわり炊飯メニューでの炊きあがり加減の調整、炊飯完了時間や吸水開始時間などのタイマー設定、現在時刻の設定、保温の有無を含めた保温時間の設定、その他、音声でのガイダンスを行うか、電子音、もしくは、メロディを鳴らすかという音声情報の種類の選択など、炊飯器の動作の設定を行うことができる。
次に「音声ガイド」モード時において、音声情報をユーザに報知する音声情報報知手段について説明する。
本実施形態の炊飯器では、蓋体10における入力装置12と操作パネル15が配置されている部分の下方に配置された回路部18に搭載された、信号発生部45と、蓋体10の外殻を構成する筐体の内側面に接触して配置された加振器40とによって、音声報知手段が構成されている。
図4は、本実施形態にかかる炊飯器の、蓋体の構成を示す平面図である。
図4に示すように、蓋体10の上面には、既に説明した人感センサ11、入力装置12、調圧キャップ13、ロックボタン14、操作パネル15が配置されている。また、蓋体10の右側奥の角部には、加振器40が配置されている。なお、蓋体10の上面プレート60への加振器40の取付機構の具体例については、図6〜図9を用いて後に詳述する。
図5は、加振器の原理を説明する要部断面図である。
図5に示すように、加振器40は、環状のコイル41と、ポールピース42を備えた円板状のマグネット43、マグネット43の周囲に環状の溝部分を介して対向するヨーク部材44とを有している。コイル41は、マグネット43とヨーク部材44との間の溝部分内に、図5では図示しないスプリング部材によって上下方向に移動可能な状態で吊り下げられている。
コイル41に、図5中矢印Aとして示す方向の電流が流れると、矢印Bとして示す磁界との作用によって、コイル41に矢印Cとして示す上方向の力が加わる。コイル41を流れる電流の方向と強さを変化させることで、コイル41をマグネット43およびヨーク部材44に対して所望の周波数と振幅で上下に振動させることができる。このため、コイル41またはスプリング部材に接触して配置された部材を、同様に所望の周波数と振幅で振動させることができる。本実施形態の炊飯器の場合には、加振器40と蓋体10を構成する上面プレート60の裏側面とが接触して配置されているため、信号発生部45から出力された音声信号によって上面プレート60を振動させて、空気中を伝搬する音波に変化させることで音声情報を報知するとともに、応答信号によって、200Hz以下の周波数で上面プレート60を振動させて、ユーザの操作に対するアンサーバックを行う。
このように、本実施形態にかかる炊飯器では、炊飯器の外殻を構成する筐体を振動板として音声を発することができるため、筐体の内部にスピーカーを配置した場合のような籠もった音声ではなく、明瞭に聞き取ることができる高音質で、かつ、より大きな音量の音声によってユーザに音声情報を報知することができる。
なお、本実施形態にかかる炊飯器において、音声情報を報知するために蓋体10の筐体に接触して配置された加振器40は、振動スピーカーとも称される部材であり、直径が20数mmから30mm程度、厚さが20mm程度から40mm程度のものを良好に使用することができる。また、加振器40で蓋体10の筐体を振動させて音声信号を音波に変換する仕組みは、振動板を振動させる通常のスピーカーと同様の原理に基づくものであるため、音声信号を生成する信号発生部45は、従来のスピーカーを用いて音声ガイドを行うために搭載されていた音声信号の生成回路をそのまま使用することができる。さらに、アンサーバックとして加振器40を振動させる応答信号は、周波数帯域が200Hz以下である以外は音声信号と同様であるため、音声情報報知手段の信号発生部45で生成させることができる。
次に、本実施形態にかかる炊飯器における、加振器を蓋体の上面を構成する筐体に固着する具体的手段の一例としての加振器取付構成例について図6〜図9を用いて説明する。
本実施形態で開示する炊飯器では、上述したように、蓋体10が、内部に内鍋30内部の圧力を調整する圧力調整手段や、内鍋30内部の蒸気を外部に放出する蒸気放出機構、さらに、炊飯器を所定の炊飯プログラムで動作させる制御回路が配置された回路部18などの各種の機構部材を備えた蓋体本体50と、この蓋体本体50の上面を覆う上面プレート60とで構成されている。
図6は、加振器を取り付ける蓋体の上面プレートの裏側面の構成を説明する斜視図である。
図6に示すように、本構成例で説明する上面プレート60は、炊飯器の外形に合わせて略矩形状に形成された板状部材であり、蓋体10の上面となる上面プレート60表面に対する裏側面61には、略格子状に裏側面61から突出するように設けられたリブによって加振器を固着する加振器固着部分62が形成されている。
なお、上面プレート60の裏側面61には、図示を省略した複数のねじ受け部が突出するように形成されていて、上面プレート60を蓋体本体に被せた状態で蓋体本体50の側からねじ止めして、蓋体本体50と上面プレート60とを一体化して蓋体10を構成するようになっている。また、上面プレート60には、調圧キャップ13を露出させるための第1の開口部63と、ロックボタン14を露出させるための第2の開口部64とが、それぞれ、蓋体本体50に配置された蒸気放出機構の調圧キャップ13とロックボタン14との配置位置に対応して形成されている。さらに、上述したように、本実施形態の炊飯器では、ユーザの操作を受け付けるために蓋体10の上面に入力装置12や操作パネル15が配置されており、上面プレート60には、表面の側に入力装置12と操作パネル15とを備えた入力手段65が配置されている。なお、図面の煩雑化を避けるために、図6では、入力手段65はその配置領域を点線で示すのみとしている。
図7は、上面プレートの裏側面に形成された加振器固着部分の構成を説明するための要部拡大斜視図である。
図7に示すように、本構成例の加振器固着部分62では、上面プレート60の裏側面61から、縦方向(炊飯器の前後方向)に互いに略平行に延在する複数本の縦リブ62aと、横方向(炊飯器の左右方向)に互いに略平行に延在する複数本の横リブ62bとが、上面プレート60の裏側面61に対して垂直に形成されていて、これら複数本の縦リブ62aと横リブ62bとが略直交して、格子状の平面的に形成されたリブが形成されている。
なおここで平面的に形成されたリブとは、図7に示した格子状のリブのように、少なくとも2以上の方向に延在する複数のリブが互いに接続されて、リブの形成領域が所定の面積を占めるようになっているものを言う。
本構成例では、さらに、加振器固着部分62において加振器支持部62cが格子状のリブと一体に形成されている。加振器支持部62cは、加振器を加振器固着部分62に固着するためのねじを受けるねじ受け部62c1と、加振器と加振器固着部分62とをしっかりと接触させた状態で固着するための把持部62c2とから構成されている。
このように本構成例では、加振器を上面プレート60に固着する加振器固着部分62を複数の縦リブ62aと複数の横リブ62bとで形成された格子状のリブで構成することで、加振器が固着される部分の上面プレート60の剛性を効果的に高めることができる。また、加振器固着部分62において加振器が実際に取り付けられる部分である加振器支持部62cを格子状のリブと一体的に形成することで、加振器の振動を格子状のリブを介して上面プレート60のより広い領域に直接伝達することができる。
また、本構成例では、格子状のリブによって形成された加振器固着部分62の横方向の幅について、炊飯器の前方側、すなわち、入力装置12や操作パネル15が配置されている側の幅W1を、後方側、すなわち、蓋体10を開閉自在とするヒンジ機構が配置されている側の幅W2よりも大きく形成している。このようにすることで、加振器の振動に伴って振動する加振器固着部分62の振動を蓋体10の前方側により強く伝達することができる。この結果、特にユーザに音声情報を伝達する場合には、加振器によって上面プレート60を振動させることによって生じる音声情報を、炊飯器を操作するユーザの方向により大きな音量で伝達することができる。
加振器固着部分62は、上面プレート60とは別部材で形成した後に、上面プレート60の裏側面61に接着して配置することができる。しかし、加振器固着部分62と上面プレート60を一体的に形成することで、加振器固着部分62に伝わった加振器の振動をより確実に上面プレート60に伝達することができるようになる。
なお、上面プレート60と所定の高さを有するリブによって構成された加振器固着部分62とを樹脂成型によって一体的に形成するためには、加振器固着部分62において特に背が高くなる加振器支持部62cの把持部62c2の形成のための抜き型部分が必要となる。図6、図7に示す本構成例の加振器固着部分62でも、上面プレート60における加振器支持部62cの内側部分(図中左側の部分、使用時のユーザから見た場合には右側の部分)に縦リブ62aが形成されていないのはこのためである。また、上面プレート60が蓋体本体と組み合わされる際に、蓋体本体の形状、特に蓋体本体内に配置される各種の機構部材の配置位置とその形状とから、上面プレート60の裏側面61において、リブの配置が制限される領域が存在する。
これらのことを踏まえて、上面プレート60の裏側面61に形成されるリブは、加振器が固着される部分の上面プレート60の剛性を向上するという観点と、加振器の振動を上面プレート60のより広い領域に確実に伝達するという観点とから、広い面積に連続して形成することが好ましい中で、一体成型を行う上での形状面での制約や、蓋体10に配置される他の部材との干渉を避けるという制約とを加味して、適宜好ましいリブ形状に設定することとなる。
本構成例では、加振器固着部分62を縦リブ62aと横リブ62bとが略直交する格子状のリブで構成した。しかし、本実施形態にかかる炊飯器において、蓋体の上面を構成する筐体の剛性を向上すると共に、加振器の振動をより広範囲に伝達することができる加振器固着部分は、図6および図7で示した格子状のリブによる構成には、限定されない。例えば、2組の互いに平行な複数のリブ同士が直交するのではなく斜めに交差して、多数の菱形、または、平行四辺形が形成されるようなリブ構成、多数の六角形が密接に並んだいわゆるハニカム構造、または、複数の同心円(半円、扇形を含む)が、径方向に延長する部材によって互いに接続された形態など、全体として平面的に構成された加振器固着部分を採用することができる。また、格子状のリブの一部分が埋められて部分的に市松模様となっているもの、一定の高さを持った筐体部分に連続してリブが形成されたものなど、筐体の剛性を向上させると共に加振器の振動を筐体のより広い領域に伝達することができる様々な形態の加振器固着部分を採用することができる。
このように、本実施形態にかかる炊飯器では、蓋体の上面を構成する筐体に、平面的に形成されたリブなどによって構成された加振器固着部分を形成することで、より良好に加振器の振動を蓋体の上面を構成する筐体に伝達することができ、特にユーザに音声情報を伝達する場合に、より大音量、高音質での音声ガイドを行うことができる。
図8に、加振器を加振器固着部分に固着した状態を示す。また、図9に、加振器が固着された状態の加振器支持部の拡大図を示す。
図8に示すように、本構成例で用いられている加振器70は、鋼製のヨーク71とその内部に配置された図示されない一定の厚みを持った円板状のマグネットと、このマグネットの周囲に配置された中空円筒状の図示されないコイルと、コイルに固着されたアルミ合金製のスプリング部材72とで振動部分が構成されている。なお、この振動部分は、図5を用いて説明した加振器40のそれぞれの構成部分対応している。そして、振動部分のスプリング部材72が、取付金具75にねじ74で固着されることで、リード線76からコイルに印加される音声信号、または、応答信号に応じて生じるコイルとマグネットとの間の振動を、取付金具75を介して外部に伝達する構成となっている。
本構成例の加振器70において取付金具75は、スプリング部材72がねじ止めされるプレート部分75aと、プレート部分75aの両端部からプレート部分75aに対して垂直な方向に延在する一対の脚部75bと、一対の脚部75bそれぞれの先端部に形成された固着部75cとで構成され、全体として略「コ」の字状となっている。
この固着部75cを、ねじ77で加振器支持部62cのねじ受け部62c1にねじ止めして、上面プレート60の加振器固着部分62に加振器70が固着される。
本構成例では、加振器70の振動をより強く加振器固着部分62に伝達させるために、図9に示すように、加振器支持部62cのねじ受け部62c1の直径を大きくしてねじ穴の周囲の壁面の厚さを増大させると共に、ねじ受け部62c1に連続して形成された把持部62c2を設け、取付金具70の脚部75bの先端部分を、固着部75cが延在する方向以外の三方から覆うようにしている。また、ねじ受け部62c1の上面プレート60の裏面側61となる底部に、把持部62c2の底部を延在させて一体的な肉厚部分を形成することで、ねじ受け部62c1と把持部62c2に伝わった取付金具75の振動を、効率よく上面プレート60に伝達できるようにしている。
なお、図8で示したように、本構成例では、加振器70の振動部分が略「コ」の字状の取付金具75の脚部75bに包まれるようにスプリング部材72をプレート部分75aの脚部75bが延在する側に配置してねじ止めする構成としている。このため、蓋体10が閉じられた炊飯器の実使用状態では、取付金具75のプレート75a上にコイルやマグネットで構成される振動部分が載る状態となる。これは、上面プレート60を蓋体本体に取り付けた際に、蓋体本体内部の機構部材との干渉を避けるためであって、本実施形態で説明する炊飯器において必須の構成ではない。
例えば、取付金具の脚部の長さを図8に図示したものよりも短くして、図8に示した状態において取付金具のプレート部の上側に振動部分をねじ止めして、炊飯器の実使用状態では上面プレートの加振器固着部分に固着された取付金具に、コイルやマグネットなどの振動部分がぶら下がるような構成とすることができる。さらに、加振器の取付金具を、脚部を有さない構成、すなわち、プレート部とその両端部に固着部とを設けた平板状の形状として、取付金具のより多くの面積を加振器固着部分に接触させる構成とすることもできる。
本構成例として示したように、蓋体の上面を構成する上面プレートの加振器固着部分に加振器の取付金具を固着することで、上面プレートの剛性を高めると共に、加振器を上面プレートに容易に取り付けることができ、加振器の振動を確実に、かつ、上面プレートのより広い面積に伝達して、特にユーザに音声情報を伝達する場合には、より大きな音量、より高い音質でユーザに伝達することができる。
ここで、本実施形態にかかる炊飯器における、加振器に印加される信号のタイミングについて説明する。
図10は、加振器に印加される応答信号と音声信号との印加タイミングを説明する図である。図10(a)は、電子音などの短い音声信号が所定の間隔を隔てて間欠的に印加される場合を示す。図10(b)は、メロディや言葉など、一定の長さを有する連続的な音声信号が印加される場合を示す。
図10(a)は、例えばユーザの操作を受け付けた場合などに、2つまたはそれ以上の電子音を所定の間隔を隔てて間欠的に発する場合、例えば「ピ・ポ」や「ピ・ポ・パ」などの音声を発する場合を示している。
このような音声情報を報知する際には、所定の周波数による第1の音声信号82と、これと同じ、またはこれとは異なる周波数の第2の音声信号84との間には、音声信号82、84の長さとほぼ同じ程度の間隔が設けられて音声信号が間欠的に印加されることが多い。
ここで、本実施形態の炊飯器では、ユーザに対する振動としてのアンサーバックを行うための応答信号として、例えば第1の応答信号81を第1の音声信号82の直前に、また、第2の応答信号83を第2の音声信号84の直前に印加する。このとき、第1の応答信号81と、第2の応答信号83は、一周期(一例として130Hz)の信号の半周期分を逆の位相となるように印加している。このようにすることで、ユーザは、触覚で把握するアンサーバックとしての応答信号と聴覚で把握する音声情報としての音声信号とを同時に知覚することができ、2つの信号を関連づけて、同じ情報を別の手段で伝達する信号であると認識することができる。
図10(b)は、ユーザの操作を受け付けた場合に、「チャラン」などの連続音や「開始」または「停止」などの言葉を音声信号として発する場合を示している。
このように連続した音声信号86を印加して加振器を振動させる場合には、人間の話し声やそれに準じた周波数以上の周波数を有する電子音としての音声信号が一定時間以上連続して加振器に印加されることになる。本実施形態にかかる炊飯器では、この場合には、応答信号85を音声信号86の直前に半周期分の信号として印加している。
このようにすることで、ユーザは、触覚で把握するアンサーバックとしての応答信号と聴覚で把握する音声情報としての音声信号とを同時に知覚することができ、2つの信号を関連づけて、同じ情報を別の手段で伝達する信号であると認識することができる。
例えば、図10(a)のように、2つの音声信号が間欠的に印加される場合に、2つの音声信号82、84が印加される間の間隙部分で応答信号を印加せずに、第2の音声信号84の印加後に第2の応答信号を印加した場合には、第1の応答信号81と第2の応答信号との間隔が長くなりすぎて、一つの操作のアンサーバックとして把握することが困難になってしまう。この場合、一連の音声信号はその音のパターンから経験的に一つの音声情報としてユーザに把握されることから、ユーザが、応答信号と音声信号とが対応しているものと把握しにくくなってしまう。
なお、応答信号が印加される間隔が長くなりすぎると、ユーザが1つの操作のアンサーバックとして把握できなくなることは、図10(b)に示した、一定の印加時間を要する連続した音声信号が印加される場合も同様である。このため、図10(b)に示す場合のように、連続して音声信号が印加される場合には、応答信号は1つのタイミングで印加されることが好ましい。
このように、本実施形態にかかる炊飯器では、その周波数の差異から音声信号とは同時に加振器に印加することができない応答信号を印加するタイミングを、音声信号の種類に応じて異ならせることで、音声信号の形態にかかわらず音声信号と関連された振動であるとユーザが認識できるアンサーバックの振動を加振器に印加することができる。
なお、図10(a)を用いた説明において、第1の応答信号81と第2の応答信号83とを位相が異なる信号として加振器に印加する場合を示したが、本実施形態にかかる炊飯器において、第1の応答信号と、第2の応答信号とを同じ位相の信号として印加することができる。
また、図10(a)では、第1の音声信号82と第2の音声信号84との2つの音声信号が間欠的に印加される場合を例示したが、3つ以上の音声信号を間欠的に加振器に印加することもできる。なお、この場合には、必ずしも応答信号の数を音声信号の数と一致させる必要は無く、むしろ、応答信号の数が多くなるとユーザが一連の振動全体が一つのアンサーバックであると認識しづらくなることを考慮して、音声信号の数にかかわらず応答信号は一つ、または、二つに限ることが好ましい場合がある。
図10(a)、図10(b)では、応答信号として、周波数が130Hzの信号を半波長単位で印加する例を示して説明した。
発明者らが確認したところ、蓋体10の上面プレート60を加振器40で振動させた場合に、ユーザがその振動を人間の話し声や、一般的な音声情報として用いられる電子音と区別して知覚できる周波数の上限は百数十Hz程度であることがわかった。
この上限の周波数については、個人差があるものの、200Hzよりも高い周波数となると、その振動音を音声情報として知覚してしまうことが多いことがわかった。
もちろん、応答信号の周波数をより一般的に人間の可聴周波数範囲の下限である20Hz以下とすれば、ユーザが応答信号による振動を音声情報と混同することはなくなるが、応答信号の周波数が低すぎる場合には、ユーザが振動として知覚しづらくなることがわかった。このため、本実施形態にかかる炊飯器において用いられる応答信号は、200Hz以下の信号であり、100Hz以上、150Hz以下であることがより好ましい。このような検討結果を踏まえて、上記実施形態では、応答信号の周波数として130Hzを選択している。
なお、応答信号が130Hzである場合には、ユーザはその振動を音として聴覚により認識することとなるが、この場合の振動は「ブー」という低温のブザー音に似た音となるため、ユーザは経験としてこの応答信号を会話や電子音などの音声信号とは区別して把握することができ、音声情報の乱れとして把握することはないと考えることができる。 また、応答信号を半波長の信号とすることで、130Hzの信号の場合には応答信号の印加時間が約3.8m秒となり、操作に対する音声信号のレスポンスとしてこの程度のタイムラグであれば、感覚的に許容範囲であることが確認できている。ただし、音声信号による音声情報が発せられるまでのタイムラグが大きいか小さいかは、当然ながらユーザによって異なるものであるため、例えば、応答信号として一波長分の信号を印加することも可能である。
なお、ユーザが操作パネルなどを操作したことのアンサーバックとしての応答信号であることから、ユーザが操作を行ってから短いタイミングで応答信号によって上面プレート60が振動することが好ましい。この、ユーザによる操作から上面プレートの振動までのタイムラグは、一例として0.1秒以下とすることができる。
次に、本実施形態にかかる炊飯器における、音声情報伝達手段として、また、振動によるアンサーバックを行うための手段としての加振器の他の配置場所について説明する。
上述したように、本実施形態にかかる炊飯器では、蓋体10の上面を構成する上面プレート60の左奥の角部近傍に加振器40を配置した。
蓋体10の上面プレート60を振動させて音声を発することによって、ユーザに直接、すなわち、ユーザとの間に音波を遮る部材が配置されていない状態で、音声情報を報知することができる。なお、蓋体10上面10aの左奥の部分に加振器を配置したのは、炊飯器では蓋体10のほぼ中央部が中心となるように炊飯器本体20内に内鍋30が収容されるため、蓋体10の中央部分の、その下方に内鍋30が配置される部分には、調圧キャップ13などの内鍋30の状態を制御する部材を優先的に配置する必要があり加振器40を配置するスペースとしては好ましくない一方、蓋体10の角部、特に、奥側の角部部分には、比較的自由なスペースがあるからである。本実施形態にかかる炊飯器では、加振器40によって蓋体10の上面10a全体が振動して音声を発するため、加振器40を蓋体10の中央部分に配置する必要は無く、角部に配置しても音声情報の明瞭さや音量への影響が小さいからである。
なお、蓋体10の奥側の角部であれば、図4に示したように左側の角部に限らず、右側の角部に配置することも同様に好ましい。
また、本実施形態にかかる炊飯器では、ユーザによる操作部への操作入力へのアンサーバックとして、蓋体10の筐体を周波数が200Hz以下の応答信号によって振動させるものである。この場合は、音声情報の伝達とは異なり、ユーザが操作するタッチパネルに近い位置に加振器を配置することがより好ましい。
図11に、本実施形態にかかる炊飯器における加振器の配置位置を説明するための斜視図を示す。
図11に、加振器40aとして示すように操作パネル15aの周辺領域に、また、加振器40bとして示すように操作パネル15bの周辺領域に、さらに、加振器40cとして示すように操作パネル15cの周辺領域に、追加の加振器を配置することができる。なお、アンサーバックとしての振動のみをユーザに伝える加振器を配置する場合には、音声情報を筐体に伝達する加振器とは異なり加振器により生じる音の音質を考慮する必要はないため、加振器40a、40b、40cとして小さなサイズの加振器を利用することができる。このため、下部に内鍋30が配置される蓋体10の中央部分に配置されている操作部としての入力装置12や操作パネル15の近傍であっても、加振器40a、40b、40cを配置することが可能となる。
なお、図11では、加振器40a、40b、40cとして、それぞれ2個ずつを配置した図を例示したが、加振器の数は図11に示したものに限られず、操作パネル15のそれぞれの領域に一つずつ対応して配置する構成、操作パネル近傍に一つのみの加振器を配置する構成、筐体の後方部分に配置された加振器40のみで、音声情報の報知と、振動によるアンサーバックとを行う構成の、いずれをも採用することができる。
なお、本実施形態で示した炊飯器では、蓋体10または炊飯器本体20の筐体を加振器40で振動させて音声を発するものであるため、加振器40の振動を正確に筐体に伝達することが、より高音質、かつ、大きな音量での音声を発する上で重要となる。このためには、加振器40が接触して配置されている部分の筐体が、高い剛性を備えていることが好ましい。
図12は、加振器を筐体に配置する第2の構成例を示す断面図である。
図12に示すように、デザインの観点、または、機能的な必要性によって、筐体が曲面状の湾曲部分Rとして構成されている部分が存在する場合には、この湾曲部分Rの内側面に加振器40を接触させて配置することが好ましい。平坦面の筐体部分よりも湾曲面となっている筐体部分の方が、剛性が高くなるからである。
なお、図11に示したように、本実施形態の炊飯器では、蓋体10上面10aの奥側の角部近傍に加振器40を配置している。蓋体10の奥側の角部の近傍部分は、蓋体10の上面と背面と側面との3つの面が交わる部分であるため、特に剛性が高く、より剛性が高い部分に加振器40を接触させて配置すべきであるという観点からも、蓋体10上面10aの奥側の角部近傍を加振器40の配置場所とすることは好ましい選択である。
図13は、加振器を筐体に配置する第3の配置構成例を示す断面図である。
上述のように、加振器40は筐体においてより剛性の高い部分に配置することが好ましい。図13に示すように、加振器40を筐体の肉厚が周辺部分の肉厚よりも厚い部分に配置することで、加振器40の振動をより良好に筐体に伝達することができる。
図11に示したように、加振器40a、40b、40cなどを平面的に形成されている筐体10の中央部近傍に配置する場合には、図13に断面を示すように、筐体の肉厚が厚い部分を形成して、その厚肉部分の内面側に加振器40を接触させて配置することが好ましい。
例えば、本実施形態の炊飯器の場合、蓋体10の筐体は、厚さt1=2mmのABSポリカーボネート樹脂により形成されているが、加振器40の配置部分の肉厚をt2=2.5〜4mmとすることで、加振器40の振動を、より良好に筐体に伝達することができる。このように、加振器40が配置される部分の肉厚t2を周辺部分の肉厚t1の1.2倍から2倍程度とすることが好ましい。
次に、本実施形態にかかる炊飯器のさらなる変形例を説明する。
図14は、本実施形態にかかる炊飯器において、加振器の配置場所のさらなる変形例を説明するための斜視図である。
図14に示すさらなる変形例の炊飯器は、蓋体10の上面を構成する上面プレート60と蓋体本体50の側面との間に、弾性を有する樹脂部材90を環状に配置している。なお、蓋体10の上面10aの構成は、図1に示した本実施形態の炊飯器の構成と同じであるため、同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
図14に示すように、加振器40がその内側面に接触して配置された蓋体10の上面プレート60と蓋体本体50との間に蓋体10の筐体よりも剛性の低い部材90を配置することで、加振器40が接触配置されている部分をより大きく振動させることができる。この結果、加振器40により生じる振動が、より高音質で、かつ、大音量の音声としてユーザに報知される。また、アンサーバックとしての振動を、確実にユーザに伝達することができる。
なお、図14に示す変形例では、加振器40が配置された蓋体10の上面プレート60全体を囲んで蓋体10の筐体よりも剛性の低い部材90を配置した例を示したが、蓋体10の上面10aのうち、加振器40が接触する部分の周囲のみを取り囲むように剛性の低い部材を配置することで、加振器が接触して配置されている部分をその周辺部分に対して大きく振動させることができ、加振器により生成される音声の音質と音量の向上効果、さらに、アンサーバックとしての振動を確実に伝達する効果を得ることができる。
炊飯器では、図2を用いて説明したように、蓋体10の内側面に内鍋30の上端部と接するようにゴム製などの円環状のパッキン材19が配置される。このパッキン材19は、内鍋30内部の空間の気圧を外部空間から隔離したり、内鍋30内部の蒸気や水分などが、蓋体10と炊飯器本体20との間の部分に滲み出してくることを防止したりするためのものである。しかし、環状のパッキン材19を有していることで、炊飯器本体20に対してロックされて状態であっても、上下方向に外力を加えると蓋体10を上下方向に動かすことができる裕度がある。このため、加振器40を蓋体に10に取り付けること自体が、図14に示したような、加振器40の配置部分の周囲を取り囲んで剛性の低い部材を配置することによる効果と類似する効果を得ることに繋がる。
なお、図11〜図14を用いて説明した、加振器の配置位置に関する各バリエーションにおいて、加振器に印加される音声信号と応答信号との関係については、図10を用いて説明した、大きな一つの加振器を加振器固着部分に取り付けた実施例に基づくものと同様とすべきであることは言うまでも無い。
以上説明したように、本実施形態にかかる炊飯器は、音声信号伝達手段として信号生成部と加振器とを備え、さらに、ユーザによる操作部への操作に対応して操作部を振動させる加振器を、炊飯器の筐体に接触して配置することにより、高音質で、かつ、大きな音量で音声情報を、また、アンサーバックとしての振動をユーザに報知することができる。
特に、ユーザによる操作部の操作に対するアンサーバックを振動によって伝えることができるため、聴力に障害があるユーザでも操作部を操作したことを確実に認識することができる。
なお、上記説明では、炊飯器として、蓋体の表面の操作部に操作ボタンが配置されず、タッチパネルを用いてユーザが炊飯器を操作する構成のものを例示した。
しかし、本実施形態にかかる炊飯器として、操作パネルなどの操作部は、タッチパネルによるものには限られず、所定のストロークでの押下に伴ってスイッチがONされる操作ボタンを供えた操作部とすることができる。
さらに、上記実施形態において、ユーザによる操作を受け付ける操作部と、操作部への操作へのアンサーバックとして筐体を振動させる加振器とを蓋体に備えた形態の炊飯器を例示して説明した。しかし、本実施形態にかかる炊飯器において、操作部が蓋体にあることは必須ではなく、炊飯器本体の前面側部分に操作部を備えた炊飯器とすることもできる。なお、この場合には、操作部への操作のアンサーバックとして振動する加振器も、炊飯器本体に配置すべきことは言うまでもない。
また、上記実施の形態では、炊飯器として、加熱炊飯を行い、さらに、非金属製の内鍋を備えたものを例示したが、これらの炊飯器の構成は、本願で開示する炊飯器において必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、圧力炊飯工程において、高圧状態を1.25気圧、低圧状態を1.05気圧として説明したが、圧力炊飯時におけるそれぞれの工程での圧力の数値は、炊飯器の圧力調整手段の構造や加熱手段、内鍋の材料、大きさ(炊飯可能量)、形状などの諸条件を勘案して適宜設計すべき数値である。さらに、圧力炊飯を行う炊飯器であるか否かは、本実施形態にかかる炊飯器として必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、追い炊き工程の途中に強制的な減圧を行って、内鍋の上部の「おねば」を撹拌する工程を含むものを例示したが、このような「おねば」の撹拌工程も必須のものではない。
なお、上記実施形態において加振器を蓋体の上面を構成する筐体に固着する構成を説明した取付構成例では、蓋体が蓋体の上面を構成する筐体である上面プレートと、蓋体本体とで構成されるものを例示した。この場合において、上記の実施形態で説明した炊飯器が、デザイン上蓋体の上面が略平坦面として形成されているため、上面プレートが板状の部材である旨を説明した。しかし、炊飯器の蓋体の形状が、例えばその上面が上方に凸の緩やかな湾曲形状である場合には、上面プレートも全体的に緩やかな湾曲面となることは言うまでもない。また、上面プレートは蓋体の側面の上端部側まで延在して覆うような形状とすることができ、この場合の上面プレートは、平板状または湾曲面状のものには限られず、底面部分と比較的高さの低い側面部分とを備えた浅い皿状の部材として構成することができる。