JP2019044837A - ワッシャ - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑性能を向上させることができるワッシャを提供する。【解決手段】クランク軸30の軸線方向の力を受ける摺動面210に油溝が形成された部分円環形状のワッシャ200であって、油溝は、摺動面210のクランク軸30の回転方向上流側端部から下流側端部まで潤滑油を案内可能な根幹油溝240と、根幹油溝240から内周面又は外周面の少なくともいずれか一方へ延びるように形成され、一端が根幹油溝240で開放されると共に他端が延びる方向に対して閉塞される外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260と、を具備する。【選択図】図10
Description
本発明は、クランク軸の軸線方向の力を受ける摺動面に油溝が形成された部分円環形状のワッシャの技術に関する。
従来、クランク軸の軸線方向の力を受ける摺動面に油溝が形成された部分円環形状のワッシャの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載のワッシャ(半割ワッシャ)の油溝は、ワッシャの外周面から内周面までに亘って上下に延びるように形成される。当該油溝に進入した潤滑油は、クランク軸の回転に引き摺られ、摺動面の油溝よりも回転方向下流側へ供給される。
しかし、特許文献1に記載の油溝は、その一端(例えば、外周面側端部)から進入した潤滑油が他端(内周面側端部)へと流れてしまい、摺動性能が十分に向上しない可能性があった。特許文献1に記載のワッシャは、この点に関して改善の余地があった。
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、潤滑性能を向上させることが可能なワッシャを提供するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、クランク軸の軸線方向の力を受ける摺動面に油溝が形成された部分円環形状のワッシャであって、前記油溝は、前記摺動面の前記クランク軸の回転方向上流側端部から下流側端部まで潤滑油を案内可能な根幹油溝と、前記根幹油溝から内周面又は外周面の少なくともいずれか一方へ延びるように形成され、一端が前記根幹油溝で開放されると共に他端が前記延びる方向に対して閉塞される枝油溝と、を具備するものである。
請求項2においては、前記根幹油溝は、前記クランク軸の回転方向に沿った円弧状に形成されるものである。
請求項3においては、前記枝油溝は、前記摺動面のうち、前記クランク軸の回転方向上流側端部を含む前記摺動面の少なくとも一部の領域に形成されるものである。
請求項4においては、前記枝油溝は、前記一端から前記クランク軸の回転方向下流側に延びるように形成されるものである。
請求項5においては、前記枝油溝は、前記根幹油溝から前記内周面へ延びるように形成される内周側枝油溝と、前記根幹油溝から前記外周面へ延びるように形成される外周側枝油溝と、を具備するものである。
請求項6においては、前記内周側枝油溝は、前記外周側枝油溝に対して前記根幹油溝を挟んで対になるように設けられるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、潤滑性能を向上させることができる。
請求項2においては、潤滑油を根幹油溝の回転方向下流側へスムーズに案内することができる。
請求項3においては、摺動面の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
請求項4においては、摺動面に潤滑油をより供給し易くすることができる。
請求項5においては、摺動面の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
請求項6においては、根幹油溝よりも内周側及び外周側へバランスよく潤滑油を供給できる。
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
以下では、図1及び図2を用いて、第一実施形態に係るワッシャ100が使用される軸受装置1の構成の概要について説明する。
第一実施形態に係るワッシャ100は、軸受装置1で使用される。第一実施形態において、軸受装置1は、エンジンに設けられる。軸受装置1は、主として軸受部10、軸受キャップ20、クランク軸30、主軸受40及びワッシャ100を具備する。
軸受部10は、シリンダブロック(不図示)の下部に形成されて、後述するクランク軸30を上方から支持する部分である。軸受部10には、軸受孔11、受座12及び内部油路13が形成される。
軸受孔11は、後述する主軸受40を収容する部分である。軸受孔11は、軸受部10を前後方向に貫通するように形成される。軸受孔11は、正面視において下方が開放された半円状に形成される。
受座12は、軸受孔11の径方向外側に形成される凹状部である。受座12は、軸受部10の前側と後側にそれぞれ形成される。前側の受座12は、軸受部10の前面から後方へ凹むように形成される。後側の受座12は、軸受部10の後面から前方へ凹むように形成される。受座12は、正面視(背面視)において、軸受孔11の周縁部に隣接する半円環状に形成される。受座12は、その軸線が軸受孔11の軸線と一致するように配置される。
図2に示す内部油路13は、前記エンジンのオイルポンプ(不図示)から潤滑油をクランク軸30側へ供給するためのものである。内部油路13は、軸受部10の内部を上下方向に延びるように形成される。内部油路13の下端は、軸受孔11に開口される。
軸受キャップ20は、軸受部10の下方に配置される部分である。軸受キャップ20は、ブロック状に形成される。軸受キャップ20は、その上面が軸受部10の底面に当接するように配置される。軸受キャップ20には、軸受孔21が形成される。
軸受孔21は、後述する主軸受40を収容する部分である。軸受孔21は、軸受キャップ20の上部を前後方向に貫通するように形成される。軸受孔21は、正面視において上方が開放された半円状に形成される。
クランク軸30は、正面視において時計回りに回転するように、前記エンジンのコンロッド(不図示)に連結される。クランク軸30は、主としてクランクジャーナル31、クランクアーム32及びスラストカラー33を具備する。
クランクジャーナル31は、クランク軸30の回転軸を構成する部分である。クランクジャーナル31は、円柱状に形成される。クランクジャーナル31は、軸線方向を前後方向へ向けて配置される。
クランクアーム32は、クランクジャーナル31とクランクピン(不図示)とを連結する部分である。クランクアーム32は、上下方向に延びる板状に形成される。クランクアーム32は、板面を前後方向へ向けた状態で、クランクジャーナル31の前端及び後端にそれぞれ配置される。なお、図1においては、前側のクランクアーム32の図示を省略している。
スラストカラー33は、円環板状に形成される部分である。スラストカラー33は、クランクジャーナル31の外周面側に当該クランクジャーナル31と一体的に形成される。スラストカラー33は、クランクジャーナル31の前端及び後端にそれぞれ配置される。
主軸受40は、クランク軸30を回転可能に支持するものである。主軸受40は、半円筒状に形成される。主軸受40は、クランク軸30のクランクジャーナル31の上下にそれぞれ配置される。上側の主軸受40は、開放側を下方に向けて配置される。下側の主軸受40は、開放側を上方に向けて配置される。これにより、上側の主軸受40及び下側の主軸受40は、クランクジャーナル31を上下方向からそれぞれ支持するように配置される。上側の主軸受40には、潤滑油路41及び貫通孔42が形成される。そして、上側の主軸受40及び下側の主軸受40には、面取り部43が形成される。
潤滑油路41は、上側の主軸受40の内周面に形成される溝である。潤滑油路41は、上側の主軸受40の周方向に沿って延びるように形成される。
貫通孔42は、潤滑油路41から上側の主軸受40の外周面に貫通する孔である。貫通孔42は、上側の主軸受40の左右中央部に形成される。貫通孔42は、上下方向に延びて、軸受部10に形成される内部油路13と連通する。
面取り部43は、上側の主軸受40及び下側の主軸受40の互いの当接面の内側において切り欠かれた部分である(図6参照)。面取り部43は、前記当接面と主軸受40の内周面とを接続するような斜面として形成される。こうして、面取り部43は、クランクジャーナル31と上側の主軸受40及び下側の主軸受40との間に、正面視において頂点を外方へ向けた略二等辺三角形状となる空間を形成する。前記空間は、クランクジャーナル31の左右両側に形成される。前記空間の内部は、クランク軸30の軸方向に沿って潤滑油が流通可能となる。
次に、図1から図5までを用いてワッシャ100の構成について説明する。
図1及び図2に示すワッシャ100は、クランク軸30の軸線方向の力を受けるものである。ワッシャ100は、半円環板状に形成される。ワッシャ100は、一方側の板面がクランク軸30のスラストカラー33と対向するように、軸受部10の前側の受座12及び後側の受座12にそれぞれ嵌合される。ワッシャ100は、開放側を下方に向けて配置される。ワッシャ100は、その軸線がクランク軸30の軸線と一致するように配置される。ワッシャ100は、摺動面110、周方向端面120、スラストリリーフ130、上流側縦溝140、下流側縦溝150、内周側油溝160及び外周側油溝170を具備する。なお、以下においては、前側のワッシャ100を例に挙げて説明する。
図1から図3までに示すように、摺動面110は、ワッシャ100の前側の板面であって、スラストカラー33と対向する面である。摺動面110は、クランク軸30の回転の際にスラストカラー33と摺動するように形成される。また、摺動面110は、クランク軸30の軸線方向の力を受けるように形成される。
図3に示すように、周方向端面120は、ワッシャ100の周方向における端面である。周方向端面120は、ワッシャ100の左右両側の周方向端部それぞれに形成される。周方向端面120は、水平方向に対して平行となるように形成される。
スラストリリーフ130は、正面視において周方向端面120と隣接する部分に形成される面取り部である。スラストリリーフ130は、摺動面110側に形成される。スラストリリーフ130は、ワッシャ100の周方向において周方向端面120側に向かうに従い薄肉となるように形成される。
上流側縦溝140は、潤滑油を適宜案内するものである。上流側縦溝140は、摺動面110が凹むことにより形成される。上流側縦溝140は、その一端(下端)がワッシャ100の内周面で開放されるように形成される。上流側縦溝140は、その他端(上端)がワッシャ100の外周面で開放されるように形成される。当該上流側縦溝140は、上下方向に延びるように形成される。上流側縦溝140は、摺動面110のうちクランク軸30の回転方向上流側(以下、単に上流側という)の領域(正面視においてワッシャ100の中心よりも左側の領域)に形成される。なお、図3(a)においては、説明のため、上流側縦溝140、後述する下流側縦溝150、内周側油溝160及び外周側油溝170の深さを誇張して図示している。
下流側縦溝150は、摺動面110のうちクランク軸30の回転方向下流側(以下、単に下流側という)の領域(正面視においてワッシャ100の中心よりも右側の領域)に形成される点を除いて、上流側縦溝140と同様に構成される。
このような上流側縦溝140及び下流側縦溝150により、摺動面110は、3つの領域に区画される。なお、以下においては、摺動面110のうち、上流側縦溝140よりも上流側の領域、すなわち前記3つの領域のうち最も上流側に位置し、摺動面110の上流側端部を含む領域を「第一領域111」と称する。また、摺動面110のうち、上流側縦溝140と下流側縦溝150との間の領域を「第二領域112」と称する。また、摺動面110のうち、下流側縦溝150よりも下流側の領域を「第三領域113」と称する。
内周側油溝160は、潤滑油を適宜案内するものである。内周側油溝160は、摺動面110が凹むことにより形成される。内周側油溝160は、内周面から外周面へ向けて延びるような正面視直線状に形成される。また、内周側油溝160は、その一端(内周側端部)から他端(外周側端部)に向かうにつれて下流側へ延びるように形成される。内周側油溝160は、その一端が内周面で開放されるように形成される。内周側油溝160の他端は、内周側油溝160が延びる方向に対して閉塞する(摺動面110の径方向中途部で途切れる)ように形成される。このような内周側油溝160は、その幅b1(図5参照)が、例えば1mm程度となるように形成される。
また、図4に示すように、内周側油溝160は、その一端(内周側端部)から下流側に向かって延びる内周面の接線方向(図4に示す接線L11参照)に対して傾斜するように形成される。より詳細には、内周側油溝160は、前記接線方向に対する正面視反時計回り方向の傾斜角度θ11が0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さい角度となるように形成される。なお、図4に示す範囲R1は、このような傾斜角度θ11の角度範囲を示すものであり、ワッシャ100の中心C1及び内周側油溝160の一端(内周側端部)を通る径方向に沿った仮想線L12と、接線L11と、により規定される範囲である。第一実施形態に係る内周側油溝160は、前記傾斜角度θ11が25°となるように形成される。
また、図5に示すように、内周側油溝160は、摺動面110の径方向の中央部(図5に点線で示す仮想線L13参照)を跨がないように、その長さD1が適宜の長さに設定されている。より詳細には、内周側油溝160の長さD1は、以下の数式1を満たすように形成される。
0.1≦D1/D2<1.0・・・数式1
なお、前記数式1にあるD2は、内周側油溝160の一端(内周側端部)から摺動面110の径方向中央部までの、内周側油溝160の長さ方向に沿った長さである。以下においては、上記数式1における「D1/D2」を「溝長さ比D1/D2」と称する。第一実施形態に係る内周側油溝160は、溝長さ比D1/D2が0.4程度となるように形成される。
0.1≦D1/D2<1.0・・・数式1
なお、前記数式1にあるD2は、内周側油溝160の一端(内周側端部)から摺動面110の径方向中央部までの、内周側油溝160の長さ方向に沿った長さである。以下においては、上記数式1における「D1/D2」を「溝長さ比D1/D2」と称する。第一実施形態に係る内周側油溝160は、溝長さ比D1/D2が0.4程度となるように形成される。
図3に示すように、このような内周側油溝160は、回転方向に間隔をあけて複数形成される。また、内周側油溝160は、摺動面110の第一領域111及び第二領域112に形成される。一方、内周側油溝160は、摺動面110の第三領域113には形成されない。
また、図5に示すように、内周側油溝160は、その幅b1と、隣接する内周側油溝160との間隔b2と、が適宜の長さに設定されている。より詳細には、内周側油溝160の幅b1及び隣接する内周側油溝160との間隔b2は、以下の数式2を満たすように設定される。
0.1≦b1/(b1+b2)<1.0・・・数式2
なお、以下においては、前記数式2における「b1/(b1+b2)」を「溝幅比b1/(b1+b2)」と称する。本実施形態に係る内周側油溝160は、溝幅比b1/(b1+b2)が0.17程度となるように形成される。
0.1≦b1/(b1+b2)<1.0・・・数式2
なお、以下においては、前記数式2における「b1/(b1+b2)」を「溝幅比b1/(b1+b2)」と称する。本実施形態に係る内周側油溝160は、溝幅比b1/(b1+b2)が0.17程度となるように形成される。
外周側油溝170は、潤滑油を適宜案内するものである。外周側油溝170は、摺動面110が凹むことにより形成される。外周側油溝170は、外周面から内周面へ向けて延びるような正面視直線状に形成される。また、外周側油溝170は、その一端(外周側端部)から他端(内周側端部)に向かうにつれて下流側へ延びるように形成される。外周側油溝170は、その一端が外周面で開放されるように形成される。外周側油溝170の他端は、外周側油溝170が延びる方向に対して閉塞する(摺動面110の径方向中途部で途切れる)ように形成される。このような外周側油溝170は、内周側油溝160に対応する、すなわち内周側油溝160に対して摺動面110の径方向中央部を挟んで対になるように設けられる。
具体的には、外周側油溝170は、その幅、傾斜角度θ12及び長さD3が、内周側油溝160の幅b1(1mm程度)、傾斜角度θ11(25°)及び長さD1(溝長さ比D1/D2が0.4程度となる長さ)と同一となるように形成される。なお、外周側油溝170の傾斜角度θ12は、図4に示すように、外周側油溝170の一端(外周側端部)から下流側に向かって延びる外周面の接線方向(図4に示す接線L14参照)に対する正面視時計回り方向への傾斜角度を指す。また、外周側油溝170は、内周側油溝160が形成される領域と同じ領域(第一領域111及び第二領域112)に複数形成される。第一実施形態に係る外周側油溝170は、内周側油溝160に対して回転方向にずれないように配置される。
このように構成される軸受装置1においては、図2に示すように、主軸受40の前端部と、ワッシャ100の内周面と、クランクジャーナル31と、前側のスラストカラー33とに囲まれた領域に、内周隙間Gが形成される。
次に、図2及び図6を用いて、潤滑油が流れる流路について説明する。なお、以下においては、前側のワッシャ100を例に挙げて説明する。
前記エンジンのオイルポンプ(不図示)から吐出された潤滑油は、軸受部10の内部油路13を流通する。次いで、潤滑油は、主軸受40の貫通孔42を流通し、潤滑油路41に供給される。潤滑油路41に供給された潤滑油の一部は、当該潤滑油路41に沿って(主軸受40の周方向に沿って)流通すると共に、主軸受40の内周面(当該内周面とクランクジャーナル31の外周面との間)に供給される。また、潤滑油路41に供給された潤滑油の他の一部は、クランク軸30の内部油路(不図示)を流通して前記クランクピンに供給される。また、潤滑油路41に供給された潤滑油の他の一部は、上側と下側の主軸受40の当接面同士の隙間(特に、面取り部43により形成された前記空間)を前後方向へ流通して、内周隙間Gに流出する。
内周隙間Gに流出した潤滑油は、クランク軸30の回転に伴って、内周隙間Gをクランク軸30の回転方向(正面視時計回り方向)に沿って流通する。内周隙間Gを流通する潤滑油の一部は、上流側縦溝140に進入し、当該上流側縦溝140から第二領域112に供給される。当該潤滑油は、第二領域112を下流側に流通する。
また、上流側縦溝140に進入しなかった内周隙間Gを流通する潤滑油は、内周隙間Gを回転方向に沿って流通する。当該潤滑油の一部は、下流側縦溝150に進入し、当該下流側縦溝150から第三領域113に供給される。当該潤滑油は、第三領域113を下流側に流通する。
また、上流側縦溝140及び下流側縦溝150に進入しなかった内周隙間Gを流通する潤滑油の一部は、クランク軸30の回転に引き摺られて当該クランク軸30の下方(下側の主軸受40の前面及び軸受キャップ20の前面)を流通した後、ワッシャ100の上流側の周方向端面120に到達し、上流側のスラストリリーフ130に進入する。また、内周隙間Gを流通する潤滑油の他の一部は、重力方向に流れ落ちる。
ここで、上流側のスラストリリーフ130とスラストカラー33との隙間は、上流側から下流側へ向かうにつれて小さくなる。また、上流側のスラストリリーフ130は、その下流側端部におけるスラストカラー33との隙間が微細なものとなる(図2に示す摺動面110とスラストカラー33との隙間参照)。このため、上流側のスラストリリーフ130に進入した潤滑油は、上流側のスラストリリーフ130とスラストカラー33との隙間を下流側へ向けて進むにつれて(隙間が小さくなるにつれて)、内周面側及び外周面側へ流されることとなる。これにより、上流側のスラストリリーフ130からワッシャ100の内周面及び外周面へ潤滑油が流され易くなってしまう。このため、ワッシャ100に上流側のスラストリリーフ130を形成しても、当該スラストリリーフ130から第一領域111には、潤滑油が供給され難い可能性がある。
そこで、第一実施形態に係るワッシャ100は、摺動面110に内周側油溝160及び外周側油溝170を形成し、第一領域111に潤滑油を供給し易くしている。具体的には、ワッシャ100の内周面を流通する潤滑油(例えば、上流側のスラストリリーフ130から内周面に流された潤滑油等)は、内周面を下流側へと流通する。当該潤滑油の一部は、一端(内周側端部)が内周面で開放された内周側油溝160(第一領域111に形成された内周側油溝160)へ進入し、当該内周側油溝160を他端(外周側端部)へ向けて流通する。当該潤滑油は、内周側油溝160の他端でせき止められる。こうして内周側油溝160に保持された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて当該内周側油溝160から第一領域111に供給される。
これによれば、内周側油溝160を介してワッシャ100の内周面から第一領域111に潤滑油を供給できる。これにより、上流側のスラストリリーフ130から第一領域111へ潤滑油が供給され難い場合でも、第一領域111において潤滑油が不足するのを抑制できる。また、内周側油溝160は、その他端(外周側端部)が閉塞しているため、一端(内周側端部)から進入した潤滑油を内部で保持して第一領域111へと供給し易くすることができる。これにより、潤滑性能を向上させることができる。なお、内周側油溝160から第一領域111に供給された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて第一領域111を下流側へと流通する。
また、ワッシャ100の外周面を流通する潤滑油(例えば、上流側のスラストリリーフ130から外周面に流された潤滑油等)は、外周面を下流側へ流通する。当該潤滑油の一部は、一端(外周側端部)が外周面で開放された外周側油溝170(第一領域111に形成された外周側油溝170)へ進入し、当該外周側油溝170を他端(内周側端部)へ向けて流通する。当該潤滑油は、外周側油溝170の他端でせき止められる。こうして外周側油溝170に保持された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて当該外周側油溝170から第一領域111に供給される。
これによれば、外周側油溝170を介してワッシャ100の外周面から第一領域111に潤滑油を供給できる。これにより、上流側のスラストリリーフ130から第一領域111へ潤滑油が供給され難い場合でも、第一領域111において潤滑油が不足するのを抑制できる。また、外周側油溝170は、その他端(内周側端部)が閉塞しているため、一端(外周側端部)から進入した潤滑油を内部で保持して第一領域111へと供給し易くすることができる。また、外周側油溝170が内周側油溝160に対して摺動面110の径方向中央部を挟んで対になるように設けられることにより、ワッシャ100の内周面及び外周面から摺動面110へ同じように潤滑油を案内できる。これによって、内周面及び外周面からバランスよく潤滑油を供給できる。なお、外周側油溝170から第一領域111に供給された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて第一領域111を下流側へと流通する。
以上によれば、上流側のスラストリリーフ130から潤滑油が供給され難い第一領域111にも潤滑油を確実に供給することができる。このため、摺動面110の全域に潤滑油が行き渡り易くなって摺動面110全域に油膜を形成することができる。これにより、摺動面110とスラストカラー33とが強く接触して摩耗するのを抑制できると共に焼き付きが発生するのを抑制できる。
また、内周側油溝160及び外周側油溝170は、一端から下流側へ延びるように形成されている。これによれば、ワッシャ100の内周面及び外周面を下流側へ流れる潤滑油の流通方向に沿うように内周側油溝160及び外周側油溝170を形成できる。これによって、内周側油溝160及び外周側油溝170の一端に潤滑油を進入させ易くすることができるため、第一領域111に潤滑油を供給し易くすることができる。特に、内周側油溝160においては、その傾斜角度θ11を0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さくすることで、第一領域111に潤滑油をより供給し易くすることができる。
また、内周側油溝160は、前記数式1にあるように、溝長さ比D1/D2を0.1以上、かつ1.0よりも小さくなるようにしている。これによれば、内周側油溝160の長さD1を確保しつつ、内周側油溝160が摺動面110の径方向中央部を跨がないようにすることができる。これにより、内周側油溝160に進入した潤滑油が摺動面110の外周側の近くまで案内されるのを抑制できるため、摺動面110の内周側に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、内周側油溝160は、前記数式2にあるように、溝幅比b1/(b1+b2)を0.1以上、かつ1.0よりも小さくなるようにしている。これによれば、摺動性能の低下を抑制しつつ、潤滑性能を向上できる。
具体的には、溝幅比b1/(b1+b2)を0.1以上にすることで、内周側油溝160の幅b1が小さくなり過ぎないようにしつつ、隣接する内周側油溝160の間隔b2が大きくなり過ぎない(離れ過ぎない)ようにすることができる。これにより、内周側油溝160に進入する潤滑油の量を確保することができる。このため、第一領域111に供給する潤滑油の量を確保することができる。
また、溝幅比b1/(b1+b2)を1.0よりも小さくすることで、内周側油溝160の幅b1が大きくなり過ぎないようにしつつ、隣接する内周側油溝160の間隔b2が小さくなり過ぎない(近付き過ぎない)ようにすることができる。これにより、摺動面110のスラストカラー33と摺動する部分(内周側油溝160等が形成されない部分)の面積、すなわち摺動面積を確保することができる。以上によって、内周側油溝160を形成することに起因する摺動性能の低下を抑制しつつ、潤滑性能を向上できる。
以上の如く、第一実施形態に係るワッシャ100は、クランク軸30の軸線方向の力を受ける摺動面110に油溝が形成された部分円環形状のワッシャ100であって、前記油溝は、内周面から外周面へ向けて延びるように形成され、一端が前記内周面で開放されると共に他端が前記外周面へ向けて延びる方向に対して閉塞される内周側油溝160と、前記外周面から前記内周面へ向けて延びるように形成され、一端が前記外周面で開放されると共に他端が前記内周面へ向けて延びる方向に対して閉塞される外周側油溝170と、を具備し、前記外周側油溝170は、前記内周側油溝160に対して前記摺動面の径方向中央部を挟んで対になるように設けられるものである。
このように構成することにより、内周面及び外周面を流通する潤滑油を、内周側油溝160及び外周側油溝170の一端からそれぞれ進入させて摺動面110へ供給できる。これによれば、内周側油溝160及び外周側油溝170から摺動面110に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑性能を向上させることができる。
また、前記内周側油溝160は、前記内周側油溝160の前記一端から直線状に延びるように形成されると共に、前記内周側油溝160の前記一端から前記クランク軸30の回転方向下流側に向かって延びる前記内周面の接線方向に対する傾斜角度θ11が0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さくなるように形成されるものである。
このように構成することにより、傾斜角度θ11を最適な角度に設定できるため、潤滑油を内周側油溝160に進入させ易くすることができる。
また、前記内周側油溝160は、その長さをD1とし、前記内周側油溝160の前記一端から前記摺動面110の径方向中央部までの、前記内周側油溝160の長さ方向に沿った長さをD2とした場合、以下の関係を満たすものである。
0.1≦D1/D2<1.0
0.1≦D1/D2<1.0
このように構成することにより、内周側油溝160の長さを確保しつつ、内周側油溝160に進入した潤滑油が摺動面110の外周側の近くまで案内されるのを抑制できる。これにより、摺動面110の内周側に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、前記内周側油溝160は、互いに間隔をあけて複数形成されるものであり、前記内周側油溝160の幅をb1とし、前記内周側油溝160の間隔をb2とした場合、以下の関係を満たすものである。
0.1≦b1/(b1+b2)<1.0
0.1≦b1/(b1+b2)<1.0
このように構成することにより、摺動面110に供給する潤滑油の量及び摺動面110の摺動面積を確保することができる。これによって、内周側油溝160を形成することに起因する摺動性能の低下を抑制しつつ、潤滑性能を向上できる。
また、一端が前記内周面で開放されると共に他端が前記外周面で開放される上流側縦溝140及び下流側縦溝150(開放溝)をさらに具備し、前記内周側油溝160及び外周側油溝170は、前記上流側縦溝140及び下流側縦溝150よりも前記クランク軸30の回転方向上流側に形成されるものである。
このように構成することにより、内周側油溝160及び外周側油溝170に進入した潤滑油を上流側縦溝140及び下流側縦溝150の上流側に供給しつつ、上流側縦溝140及び下流側縦溝150に進入した潤滑油を上流側縦溝140及び下流側縦溝150の下流側に供給できる。これにより、摺動面110の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
なお、第一実施形態に係る内周側油溝160及び外周側油溝170は、本発明に係る油溝の実施の一形態である。
また、第一実施形態に係る上流側縦溝140及び下流側縦溝150は、本発明に係る開放溝の実施の一形態である。
また、第一実施形態に係る上流側縦溝140及び下流側縦溝150は、本発明に係る開放溝の実施の一形態である。
ここで、第一領域111に対して上流側縦溝140を挟んで下流側に隣接する第二領域112は、第一領域111の次に潤滑油が供給され難い。そこで、第一実施形態においては、第二領域112にも内周側油溝160及び外周側油溝170を形成している。これによって、第二領域112にも潤滑油を供給し易くすることができる。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、第一実施形態に係るワッシャ100は、半円環状に形成されるものとしたが、半円環状以外の部分円環状(例えば1/4円環状)であってもよい。
また、ワッシャ100は、必ずしもスラストリリーフ130を具備する必要はない。
また、内周側油溝160及び外周側油溝170は、正面視直線状に形成されるものとしたが、一端が内周面及び外周面で開放されると共に他端が内周側油溝160及び外周側油溝170が延びる方向に閉塞されていれば、その形状は特に限定されるものではない。内周側油溝160及び外周側油溝170は、例えば、図7(a)に示す第一変形例に係るワッシャ100Aの内周側油溝160A及び外周側油溝170Aのように正面視円弧状に形成されるものであってもよい。
また、外周側油溝170は、必ずしも内周側油溝160に対して回転方向の位置を合わせて配置される必要はない。外周側油溝170は、例えば、図7(b)に示す第二変形例に係るワッシャ100Bの外周側油溝170Bのように、内周側油溝160Bに対して回転方向にずれて配置されるものであってもよい。このように構成することで、内周側油溝160B及び外周側油溝170Bの回転方向の位置(潤滑油を供給する位置)を、摺動面110の内周側及び外周側でずらすことができるため、第一領域111及び第二領域112の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、内周側油溝160及び外周側油溝170の数は特に限定されるものではなく、摺動面110に少なくとも1つ以上形成されていればよい。
また、内周側油溝160及び外周側油溝170の幅は、1mm程度であるものとしたが、これに限定されるものではなく、摺動面110の内径や外径等に応じて適宜の幅とすることができる。また、内周側油溝160と外周側油溝170の幅は、互いに異なる幅とすることもできる。
また、内周側油溝160の傾斜角度θ11は、25°であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の角度を選択することができる。なお、傾斜角度θ11は、0°より大きく、かつ、90°よりも小さいことが望ましい。また、外周側油溝170の傾斜角度θ12は、必ずしも内周側油溝160の傾斜角度θ11と同一角度である必要はなく、内周側油溝160の傾斜角度θ11とは異なる角度であってもよい。
また、内周側油溝160の溝長さ比D1/D2は、0.4程度であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の溝長さ比を選択することができる。なお、溝長さ比D1/D2は、0.1以上、かつ1.0よりも小さいことが望ましい。また、外周側油溝170の長さD3は、必ずしも内周側油溝160の長さD1と同一である必要はなく、内周側油溝160の長さD1とは異なる長さであってもよい。
また、内周側油溝160の溝幅比b1/(b1+b2)は、0.17程度であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の溝幅比を選択することができる。なお、溝幅比b1/(b1+b2)は、0.1以上、かつ1.0よりも小さいことが望ましい。
また、内周側油溝160及び外周側油溝170が形成される領域は、第一領域111及び第二領域112に限定されるものではなく、任意の領域を選択することができる。なお、内周側油溝160及び外周側油溝170が形成される領域は、少なくとも第一領域111を含んでいることが望ましい。よって、内周側油溝160及び外周側油溝170は、第一領域111にのみ形成されるものであったり、第一領域111及び第三領域113に形成されるものであったり、第一領域111から第三領域113まで(摺動面110の全域)に形成されるものであることが望ましい。
また、ワッシャ100は、内周側油溝160及び外周側油溝170の少なくともいずれか一方を具備していればよく、必ずしも第一実施形態のように内周側油溝160及び外周側油溝170を両方具備している必要はない。
また、ワッシャ100は、必ずしも上流側縦溝140及び下流側縦溝150を具備する必要はない。この場合、内周側油溝160及び外周側油溝170は、摺動面110のうち上流側端部を含む少なくとも一部の領域、例えば、摺動面110の上流側端部から回転方向中央部までの領域に形成されることが望ましい。
また、ワッシャ100は、その外周面に形成され、一端が摺動面110の外周面側端部で開放される溝部を具備していてもよい。このような溝部によれば、ワッシャ100の外周面に落下してきた潤滑油を摺動面110に案内することができる。これにより、摺動面110に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑特性をより向上させることができる。
次に、図8から図10までを用いて、第二実施形態に係るワッシャ200について説明する。なお、以下においては、軸受部10の前側に配置されるワッシャ200について説明する。
図8に示すように、ワッシャ200は、摺動面210、周方向端面220、スラストリリーフ230、根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260を具備する。
摺動面210、周方向端面220及びスラストリリーフ230は、第一実施形態に係る摺動面110、周方向端面120及びスラストリリーフ130と同様に構成される。
根幹油溝240は、摺動面210の上流側端部から下流側端部まで潤滑油を案内するものである。根幹油溝240は、摺動面210が凹むことにより形成される。根幹油溝240は、クランク軸30の回転方向に沿った正面視半円環状に形成され、摺動面210の略全域に形成される。根幹油溝240は、その一端が上流側のスラストリリーフ230で開放されるように形成される。根幹油溝240は、その他端が下流側のスラストリリーフ230で開放されるように形成される。根幹油溝240は、その幅が、例えば、1mm程度となるように形成される。
外周側枝油溝250は、潤滑油を適宜案内するものである。外周側枝油溝250は、摺動面210が凹むことにより形成される。外周側枝油溝250は、根幹油溝240から外周面へ向けて延びるような正面視直線状に形成される。また、外周側枝油溝250は、その一端(内周側端部)から他端(外周側端部)に向かうにつれて下流側へ延びるように形成される。外周側枝油溝250は、その一端が根幹油溝240で開放されるように形成される。外周側枝油溝250は、その他端が外周側枝油溝250が延びる方向に対して閉塞する(摺動面210の径方向中途部で途切れる)ように形成される。このような外周側枝油溝250は、その幅が根幹油溝240と同一の幅(1mm程度)となるように形成される。
また、図9に示すように、外周側枝油溝250は、その一端(内周側端部)から下流側に向かって延びる根幹油溝240の接線方向(図9に示す接線L21参照)に対して傾斜するように形成される。より詳細には、外周側枝油溝250は、前記接線方向に対する正面視反時計回り方向の傾斜角度θ21が0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さい角度となるように形成される。なお、図9に示す範囲R2は、このような傾斜角度θ21の角度範囲を示すものであり、ワッシャ200の中心C2及び外周側枝油溝250の一端(外周側端部)を通る径方向に沿った仮想線L22と、接線L21と、により規定される範囲である。第二実施形態に係る外周側枝油溝250は、前記傾斜角度θ21が25°となるように形成される。
このように形成される外周側枝油溝250は、図8に示すように、回転方向に間隔をあけて複数形成される。また、外周側枝油溝250は、摺動面210の特定の領域にのみ形成されるのではなく、摺動面210の全域に亘って間隔をあけて形成される。こうして、第二実施形態に係る外周側枝油溝250は、摺動面210の上流側端部を含む少なくとも一部の領域(全域)に形成される。
内周側枝油溝260は、潤滑油を適宜案内するものである。内周側枝油溝260は、摺動面210が凹むことにより形成される。内周側枝油溝260は、根幹油溝240から内周面へ向けて延びるような正面視直線状に形成される。また、内周側枝油溝260は、その一端(外周側端部)から他端(内周側端部)に向かうにつれて下流側へ延びるように形成される。内周側枝油溝260は、その一端が根幹油溝240で開放されるように形成される。内周側枝油溝260の他端は、内周側枝油溝260が延びる方向に対して閉塞する(摺動面210の径方向中途部で途切れる)ように形成される。このような内周側枝油溝260は、外周側枝油溝250に対応する、すなわち外周側枝油溝250に対して根幹油溝240を挟んで対になるように設けられる。
具体的には、内周側枝油溝260は、その幅、傾斜角度θ22及び長さが、外周側枝油溝250の幅(1mm程度)、傾斜角度θ21(25°)及び長さと同一となるように形成される。なお、内周側枝油溝260の傾斜角度θ22は、図9に示すように、内周側枝油溝260の一端(内周側端部)から下流側に向かって延びる根幹油溝240の接線方向(図9に示す接線L23参照)に対する正面視時計回り方向への傾斜角度を指す。また、内周側枝油溝260は、外周側枝油溝250が形成される領域と同じ領域(摺動面210の全域)に複数形成される。第二実施形態に係る内周側枝油溝260は、外周側枝油溝250に対して上流側に位置をずらして配置される。
次に、図10を用いて、前側のワッシャ200の周方向端面220に到達した潤滑油が流れる流路について説明する。なお、潤滑油は、主軸受40の貫通孔42及び潤滑油路41を流通し、内周隙間G(図2参照)を回転方向に沿って流通し、ワッシャ200の周方向端面220に到達する。
ワッシャ200の周方向端面220に到達した潤滑油は、上流側のスラストリリーフ230に進入する。前述の如く、上流側のスラストリリーフ230に進入した潤滑油は、下流側へ進むにつれて内周面及び外周面へ流され易い(図6参照)。
第二実施形態においては、根幹油溝240の一端(上流側端部)が上流側のスラストリリーフ230で開放されている。このような根幹油溝240により、上流側のスラストリリーフ230(根幹油溝240が開放される部分)とスラストカラー33との隙間を確保できるため、上流側のスラストリリーフ230から根幹油溝240へ潤滑油を進入させ易くすることができる。これによって、上流側のスラストリリーフ230からワッシャ200の内周面及び外周面へ潤滑油が流れるのを抑制することができる。
根幹油溝240に進入した潤滑油は、根幹油溝240を下流側へ流通する。当該潤滑油の一部は、一端が根幹油溝240で開放された外周側枝油溝250へ進入し、当該外周側枝油溝250を他端へ向けて流通する。当該潤滑油は、外周側枝油溝250の他端でせき止められる。こうして、外周側枝油溝250に保持された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて当該外周側枝油溝250から、摺動面210の根幹油溝240よりも外周側に供給される。
これによれば、外周側枝油溝250を介して摺動面210に潤滑油を供給できるため、ワッシャ200の周方向端面220に到達した潤滑油を摺動面210に供給し易くすることができる。これにより、潤滑性能を向上させることができる。
また、根幹油溝240を下流側へ流通する潤滑油の他の一部は、一端が根幹油溝240で開放された内周側枝油溝260へ進入し、当該内周側枝油溝260を他端へ向けて流通する。当該潤滑油は、内周側枝油溝260の他端でせき止められる。こうして、内周側枝油溝260に保持された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて当該内周側枝油溝260から、摺動面210の根幹油溝240よりも内周側に供給される。
これによれば、内周側枝油溝260を介して摺動面210に潤滑油を供給できるため、ワッシャ200の周方向端面220に到達した潤滑油を摺動面210に供給し易くすることができる。これにより、潤滑性能を向上させることができる。
また、根幹油溝240は、回転方向に沿った正面視円弧状に形成されている。これによれば、上流側のスラストリリーフ230を回転方向に沿って流れる潤滑油の流通方向に沿うように根幹油溝240を形成できるため、潤滑油をスムーズに案内することができる。
また、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、一端から下流側へ延びるように形成されている。これによれば、根幹油溝240を下流側へ流れる潤滑油の流通方向に沿うように外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260を形成できる。これによって、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260の一端に潤滑油を進入させ易くすることができるため、摺動面210に潤滑油を供給し易くすることができる。特に、外周側枝油溝250においては、その傾斜角度θ21を0°よりも大きく、かつ、90°よりも小さくすることで、摺動面210に潤滑油をより供給し易くすることができる。
また、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、摺動面210の全域に形成されているため、摺動面210の上流側端部から下流側端部までに亘って外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260から潤滑油を適宜供給できる。これにより、摺動面210の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
以上の如く、第二実施形態に係るワッシャ200は、クランク軸30の軸線方向の力を受ける摺動面210に油溝が形成された部分円環形状のワッシャ200であって、前記油溝は、前記摺動面210の前記クランク軸30の回転方向上流側端部から下流側端部まで潤滑油を案内可能な根幹油溝240と、前記根幹油溝240から内周面又は外周面の少なくともいずれか一方へ延びるように形成され、一端が前記根幹油溝240で開放されると共に他端が前記延びる方向に対して閉塞される枝油溝(外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260)と、を具備するものである。
このように構成することにより、根幹油溝240を流通する潤滑油を、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260の一端から進入させて摺動面210へ供給できる。これによれば、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260から摺動面210に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑性能を向上させることができる。
また、前記根幹油溝240は、前記クランク軸30の回転方向に沿った円弧状に形成されるものである。
このように構成することにより、潤滑油を根幹油溝240の下流側へスムーズに案内することができる。
また、前記枝油溝(外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260)は、前記摺動面210のうち、前記クランク軸30の回転方向上流側端部を含む前記摺動面210の少なくとも一部の領域(全域)に形成されるものである。
なお、「少なくとも一部の領域」は、摺動面210の全域又は一部の領域を指す。
なお、「少なくとも一部の領域」は、摺動面210の全域又は一部の領域を指す。
このように構成することにより、摺動面210の上流側端部から下流側端部までに亘って潤滑油を適宜供給することができるため、摺動面210の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、第二実施形態においては、上述の如く摺動面210の全域に外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成されていたが、少なくとも摺動面210のうち上流側端部を含む一部の領域に外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成されていれば、当該外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260から一部の領域に供給された潤滑油を、スラストカラー33の回転によって下流側へと流通できる。これにより、摺動面210の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、第二実施形態においては、上述の如く摺動面210の全域に外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成されていたが、少なくとも摺動面210のうち上流側端部を含む一部の領域に外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成されていれば、当該外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260から一部の領域に供給された潤滑油を、スラストカラー33の回転によって下流側へと流通できる。これにより、摺動面210の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、前記枝油溝(外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260)は、前記一端から前記クランク軸30の回転方向下流側に延びるように形成されるものである。
このように構成することにより、潤滑油を外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260に進入させ易くすることができるため、摺動面210に潤滑油をより供給し易くすることができる。
また、前記枝油溝は、前記根幹油溝240から前記内周面へ延びるように形成される内周側枝油溝260と、前記根幹油溝240から前記外周面へ延びるように形成される外周側枝油溝250と、を具備するものである。
このように構成することにより、摺動面210の根幹油溝240よりも外周側及び内周側のそれぞれに潤滑油を供給することができる。これにより、摺動面210の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、前記内周側枝油溝260は、前記外周側枝油溝250に対して前記根幹油溝240を挟んで対になるように設けられるものである。
このように構成することにより、摺動面210の根幹油溝240よりも外周側及び内周側へ同じように潤滑油を案内できるため、根幹油溝240よりも内周側及び外周側へバランスよく潤滑油を供給できる。
なお、第二実施形態に係る外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、本発明に係る枝油溝の実施の一形態である。
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、第二実施形態に係るワッシャ200は、半円環状に形成されるものとしたが、半円環状以外の部分円環状(例えば1/4円環状)であってもよい。
また、ワッシャ200は、必ずしもスラストリリーフ230を具備する必要はない。この場合、根幹油溝240は、その一端及び他端が上流側及び下流側の周方向端面220でそれぞれ開放されていればよい。
また、根幹油溝240は、正面視円弧状に形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、正面視直線状の溝を適宜繋いだような形状に形成されるものであってもよい。
また、根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260の数は特に限定されるものではない。根幹油溝240は、摺動面210に少なくとも1つ形成されていればよい。また、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、少なくともいずれか一方が摺動面210に少なくとも1つ形成されていればよい。
また、根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260の幅は、1mm程度であるものとしたが、これに限定されるものではなく、摺動面210の内径や外径等に応じて適宜の幅とすることができる。また、根幹油溝240、内周側枝油溝260及び外周側枝油溝250の幅は、互いに異なる幅とすることもできる。
また、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、正面視直線状に形成されるものとしたが、一端が根幹油溝240で開放されると共に他端が外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が延びる方向に閉塞されていれば、その形状は特に限定されるものではない。外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、例えば、図11(a)に示す第一変形例に係るワッシャ200Aの外周側枝油溝250A及び内周側枝油溝260Aのように正面視円弧状に形成されるものであってもよい。
また、内周側枝油溝260は、必ずしも外周側枝油溝250に対して回転方向の位置をずらして配置される必要はない。内周側枝油溝260は、例えば、図11(b)に示す第二変形例に係るワッシャ200Bの内周側枝油溝260Bのように、外周側枝油溝250Bに対して回転方向の位置を合わせて配置されるものであってもよい。
また、外周側枝油溝250の傾斜角度θ21は、25°であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の角度を選択することができる。なお、傾斜角度θ21は、0°より大きく、かつ、90°よりも小さいことが望ましい。また、内周側枝油溝260の傾斜角度θ22は、必ずしも外周側枝油溝250の傾斜角度θ21と同一角度である必要はなく、外周側枝油溝250の傾斜角度θ21とは異なる角度であってもよい。
また、内周側枝油溝260の長さは、必ずしも外周側枝油溝250と同一の長さである必要はなく、外周側枝油溝250の長さとは異なる長さであってもよい。
また、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成される領域は、摺動面210の全域に限定されるものではなく、任意の領域を選択することができる。なお、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260が形成される領域には、摺動面210のうち上流側端部を含む少なくとも一部の領域、例えば、摺動面210の上流側端部から回転方向中央部までの領域が含まれることが望ましい。
また、ワッシャ200は、第一実施形態にあるような上流側縦溝140及び下流側縦溝150を具備していてもよい。この場合、根幹油溝240は、摺動面210のうち、上流側縦溝140及び下流側縦溝150以外の領域(第一領域111から第三領域113に相当する領域)に形成される。また、この場合、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260は、摺動面210のうち、少なくとも上流側縦溝140よりも上流側の領域(第一領域111に相当する領域)に形成されるのが望ましい。
また、ワッシャ200は、その外周面に形成され、一端が摺動面210の外周面側端部で開放される溝部を具備していてもよい。このような溝部によれば、ワッシャ200の外周面に落下してきた潤滑油を摺動面210に案内することができる。これにより、摺動面210に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑特性をより向上させることができる。
次に、図12及び図13を用いて、第三実施形態に係るワッシャ300について説明する。なお、以下においては、軸受部10の前側に配置されるワッシャ300について説明する。
図12に示すように、ワッシャ300は、摺動面310、周方向端面320、スラストリリーフ330、上流側縦溝340、下流側縦溝350、内周側油溝360及び外周側油溝370を具備する。
摺動面310、周方向端面320、スラストリリーフ330、上流側縦溝340及び下流側縦溝350は、第一実施形態に係る摺動面110、周方向端面120、スラストリリーフ130、上流側縦溝140及び下流側縦溝150と同様に構成される。なお、以下においては、摺動面310のうち、上流側縦溝340よりも上流側の領域を「第一領域311」と称する。また、摺動面310のうち、上流側縦溝340と下流側縦溝350との間の領域を「第二領域312」と称する。また、摺動面310のうち、下流側縦溝350よりも下流側の領域を「第三領域313」と称する。
内周側油溝360は、潤滑油を適宜案内するものである。内周側油溝360は、摺動面310が凹むことにより形成される。内周側油溝360は、上流側のスラストリリーフ330から下流側へ向けて延びるような、クランク軸30の回転方向に沿った正面視円弧状に形成される。内周側油溝360は、その一端(上流側端部)がスラストリリーフ330で開放されるように形成される。内周側油溝360の他端(下流側端部)は、内周側油溝360が延びる方向に対して閉塞する(摺動面310の径方向中途部で途切れる)ように形成される。すなわち、内周側油溝360の他端は、第一領域311に位置する。このような内周側油溝360は、その幅が、例えば1mm程度となるように形成される。
また、内周側油溝360は、その一端(上流側端部)から他端(下流側端部)に向かうにつれてその深さが浅くなるように形成される。また、内周側油溝360の一端(上流側端部)の摺動面310に対する深さは、0.03mm以上、かつ0.1mm以下となるように形成される。
外周側油溝370は、内周側油溝360の径方向外側方(左方)に間隔をあけて配置される点を除いて、内周側油溝360と同様に構成される。
次に、図13を用いて、前側のワッシャ300の周方向端面320に到達した潤滑油が流れる流路について説明する。なお、潤滑油は、主軸受40の貫通孔42及び潤滑油路41を流通し、内周隙間G(図2参照)を回転方向に沿って流通し、ワッシャ300の周方向端面320に到達する。
ワッシャ300の周方向端面320に到達した潤滑油は、上流側のスラストリリーフ330に進入する。前述の如く、上流側のスラストリリーフ330に進入した潤滑油は、下流側へ進むにつれて内周面及び外周面へ流され易い(図6参照)。
第三実施形態においては、内周側油溝360及び外周側油溝370の一端(上流側端部)が上流側のスラストリリーフ330で開放されている。このような内周側油溝360及び外周側油溝370により、上流側のスラストリリーフ330(内周側油溝360及び外周側油溝370が開放される部分)とスラストカラー33との隙間を確保できるため、上流側のスラストリリーフ330から内周側油溝360及び外周側油溝370へ潤滑油を進入させ易くすることができる。これによって、上流側のスラストリリーフ330からワッシャ300の内周面及び外周面へ潤滑油が流れるのを抑制することができる。
内周側油溝360及び外周側油溝370に進入した潤滑油は、内周側油溝360及び外周側油溝370を他端へ向けて流通する。当該潤滑油は、内周側油溝360及び外周側油溝370の他端から第一領域311に供給される。
これによれば、内周側油溝360及び外周側油溝370に進入した潤滑油を第一領域311(摺動面310)へ確実に案内できるため、上流側のスラストリリーフ330から第一領域311に潤滑油を供給し易くすることができる。これにより、潤滑性能を向上させることができる。なお、内周側油溝360及び外周側油溝370から第一領域311に供給された潤滑油は、スラストカラー33の回転に引き摺られて第一領域311を下流側へと流通する。
また、第二領域312には、ワッシャ300の内周面及び外周面、並びに第一領域311から上流側縦溝340に進入した潤滑油が供給される。また、第三領域313には、ワッシャ300の内周面及び外周面、並びに第二領域312から下流側縦溝350に進入した潤滑油が供給される。
第三実施形態に係る内周側油溝360及び外周側油溝370は、回転方向に沿った正面視円弧状に形成されている。これにより、上流側のスラストリリーフ330を回転方向に沿って流れる潤滑油の流通方向に沿うように内周側油溝360及び外周側油溝370を形成できるため、潤滑油をスムーズに案内することができる。
また、他端が第一領域311に位置する内周側油溝360及び外周側油溝370によれば、上流側縦溝340及び下流側縦溝350からは潤滑油が供給され難い第一領域311にも、潤滑油を確実に供給することができる。これにより、摺動面310の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、その深さが一端から他端に向かうにつれて浅くなるように形成されている。これにより、内周側油溝360及び外周側油溝370の他端へと流通する潤滑油を、第一領域311へスムーズに潤滑油を進入させることができる。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、その一端(上流側端部)の摺動面310に対する深さが0.03mm以上となるように形成されている。これにより、内周側油溝360及び外周側油溝370とスラストカラー33との隙間を確保できるため、スラストリリーフ330から内周側油溝360及び外周側油溝370に潤滑油を進入させ易くすることができる。また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、その一端(上流側端部)の摺動面310に対する深さが0.1mm以下となるように形成されている。これにより、ワッシャ300の内周側油溝360及び外周側油溝370が形成される箇所の厚みを確保して、剛性が局所的に低下するのを抑制できる。
以上の如く、第三実施形態に係るワッシャ300は、クランク軸30の軸線方向の力を受ける摺動面310に内周側油溝360及び外周側油溝370(油溝)が形成された部分円環形状のワッシャ300であって、前記摺動面310のうち前記クランク軸30の回転方向上流側端部に形成され、回転方向下流側から上流側に向かうにつれて厚みが薄くなるように前記摺動面310の一部が傾斜した上流側のスラストリリーフ330を具備し、前記内周側油溝360及び外周側油溝370は、前記スラストリリーフ330から前記クランク軸30の回転方向下流側へ延びるように形成され、一端が前記スラストリリーフ330で開放されると共に他端が前記延びる方向に対して閉塞されるものである。
このように構成することにより、上流側のスラストリリーフ330から内周側油溝360及び外周側油溝370の一端に進入させた潤滑油を摺動面310へ供給できる。内周側油溝360及び外周側油溝370から摺動面310に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑性能を向上させることができる。
また、前記内周側油溝360及び外周側油溝370は、前記クランク軸30の回転方向に沿った円弧状に形成されるものである。
このように構成することにより、潤滑油を内周側油溝360及び外周側油溝370の下流側へスムーズに案内することができる。
また、一端が内周面で開放されると共に他端が外周面で開放される上流側縦溝340及び下流側縦溝350(開放溝)をさらに具備し、前記内周側油溝360及び外周側油溝370は、前記内周側油溝360及び外周側油溝370の他端が前記上流側縦溝340及び下流側縦溝350よりも前記クランク軸30の回転方向上流側に位置するものである。
このように構成することにより、内周側油溝360及び外周側油溝370に進入した潤滑油を上流側縦溝340及び下流側縦溝350の上流側に供給しつつ、上流側縦溝340及び下流側縦溝350に進入した潤滑油を上流側縦溝340及び下流側縦溝350の下流側に供給できる。これにより、摺動面310の全域に潤滑油を供給し易くすることができる。
また、前記内周側油溝360及び外周側油溝370は、前記一端から前記他端に向かうにつれて深さが浅くなるように形成されるものである。
このように構成することにより、内周側油溝360及び外周側油溝370を流通する潤滑油を摺動面310にスムーズに供給することができる。
また、前記油溝(内周側油溝360及び外周側油溝370)は、前記ワッシャ300の径方向に間隔をあけて複数形成されるものである。
このように構成することにより、スラストリリーフ330から進入可能な油溝(内周側油溝360及び外周側油溝370)の数を増やすことができるため、摺動面310に潤滑油を供給し易くすることができる。
なお、第三実施形態に係る内周側油溝360及び外周側油溝370は、本発明に係る油溝の実施の一形態である。
また、第三実施形態に係る上流側縦溝340及び下流側縦溝350は、本発明に係る開放溝の実施の一形態である。
また、第三実施形態に係る上流側縦溝340及び下流側縦溝350は、本発明に係る開放溝の実施の一形態である。
以上、本発明の第三実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、第三実施形態に係るワッシャ300は、半円環状に形成されるものとしたが、半円環状以外の部分円環状(例えば1/4円環状)であってもよい。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、正面視円弧状に形成されるものとしたが、一端が上流側のスラストリリーフ330で開放されると共に他端が内周側油溝360及び外周側油溝370が延びる方向に閉塞されていれば、これに限定されるものではない。内周側油溝360及び外周側油溝370は、例えば、図14(a)に示す第一変形例に係るワッシャ300Aの内周側油溝360A及び外周側油溝370Aのように正面視直線状に形成されるものであってもよい。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、必ずしも第一領域311(摺動面310の上流側端部近傍)にのみ形成される必要はない。内周側油溝360及び外周側油溝370は、例えば、図14(b)に示す第二変形例に係るワッシャ300Bの内周側油溝360B及び外周側油溝370Bのように第三領域313(摺動面310の下流側端部近傍)に形成されていてもよい。このように構成することで、ワッシャ300Bは、摺動面310を後方に向けた場合でも、上流側に内周側油溝360B及び外周側油溝370Bが配置されることとなるため、後側の受座12にも適用可能となる。これにより、ワッシャ300Bを幅広く用いることができる。
また、第三実施形態においては、スラストリリーフ330で開放される2つの油溝(内周側油溝360及び外周側油溝370)を例示したが、スラストリリーフ330で開放される油溝の数は少なくとも1つ以上であればよい。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370の幅は、1mm程度であるものとしたが、これに限定されるものではなく、摺動面310の内径や外径等に応じて適宜の幅とすることができる。また、内周側油溝360及び外周側油溝370の幅は、互いに異なる幅とすることもできる。
また、内周側油溝360及び外周側油溝370は、その一端から他端までに亘って深さが変わらないものであってもよい。この場合、内周側油溝360及び外周側油溝370の深さは、0.03mm以上、かつ0.1mm以下であることが望ましい。
また、ワッシャ300は、必ずしも上流側縦溝340及び下流側縦溝350を具備する必要はない。この場合、内周側油溝360及び外周側油溝370は、その他端が摺動面310のうち上流側の領域(正面視においてワッシャ300の中心よりも左側の領域)に位置するのが望ましい。
また、ワッシャ300は、その外周面に形成され、一端が摺動面110の外周面側端部で開放される溝部を具備していてもよい。このような溝部によれば、ワッシャ300の外周面に落下してきた潤滑油を摺動面310に案内することができる。これにより、摺動面310に潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑特性をより向上させることができる。
以上、本発明の第一実施形態から第三実施形態までを説明したが、本発明に係るワッシャは、第一実施形態から第三実施形態までに係るワッシャ100・200・300の油溝を適宜組み合わせることも可能である。以下では、図15から図17までを用いて、油溝の組み合わせについて説明する。
図15に示す第四実施形態に係るワッシャ400は、第一実施形態に係る内周側油溝160及び外周側油溝170と、第二実施形態に係る根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260と、を組み合わせることで形成されたものである。このようなワッシャ400によれば、上流側のスラストリリーフ130に進入した潤滑油を根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260によって摺動面110へ供給しつつ、内周面及び外周面を流通する潤滑油を内周側油溝160及び外周側油溝170によって摺動面110へ供給することができる。これにより、潤滑油を摺動面110へ供給し易くすることができるため、潤滑特性を効果的に向上させることができる。
図16に示す第五実施形態に係るワッシャ500は、第一実施形態に係る内周側油溝160及び外周側油溝170と、第三実施形態に係る内周側油溝360及び外周側油溝370と、を組み合わせることで形成されたものである。このようなワッシャ500によれば、上流側のスラストリリーフ130に進入した潤滑油を第三実施形態に係る内周側油溝360及び外周側油溝370によって摺動面110へ供給しつつ、内周面及び外周面を流通する潤滑油を第一実施形態に係る内周側油溝160及び外周側油溝170によって摺動面110へ供給することができる。これにより、潤滑油を摺動面110へ供給し易くすることができるため、潤滑特性を効果的に向上させることができる。
図17に示す第六実施形態に係るワッシャ600は、第二実施形態に係る根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260と、第三実施形態に係る内周側油溝360及び外周側油溝370と、を組み合わせることで形成されたものである。このようなワッシャ600によれば、上流側のスラストリリーフ230に進入した潤滑油を根幹油溝240、外周側枝油溝250及び内周側枝油溝260、内周側油溝360及び外周側油溝370によって摺動面210へ供給することができる。これにより、上流側のスラストリリーフ230から摺動面210へ潤滑油を供給し易くすることができるため、潤滑特性を効果的に向上させることができる。
なお、本発明に係るワッシャは、第一実施形態から第三実施形態までに係るワッシャ100・200・300の油溝(内周側油溝160・360、外周側油溝170・370、根幹油溝240、外周側枝油溝250、内周側枝油溝260)が全て形成されたものであってもよい。
30 クランク軸
200 ワッシャ
210 摺動面
240 根幹油溝
250 外周側枝油溝(枝油溝)
260 内周側枝油溝(枝油溝)
200 ワッシャ
210 摺動面
240 根幹油溝
250 外周側枝油溝(枝油溝)
260 内周側枝油溝(枝油溝)
Claims (6)
- クランク軸の軸線方向の力を受ける摺動面に油溝が形成された部分円環形状のワッシャであって、
前記油溝は、
前記摺動面の前記クランク軸の回転方向上流側端部から下流側端部まで潤滑油を案内可能な根幹油溝と、
前記根幹油溝から内周面又は外周面の少なくともいずれか一方へ延びるように形成され、一端が前記根幹油溝で開放されると共に他端が前記延びる方向に対して閉塞される枝油溝と、
を具備する、
ワッシャ。 - 前記根幹油溝は、
前記クランク軸の回転方向に沿った円弧状に形成される、
請求項1に記載のワッシャ。 - 前記枝油溝は、
前記摺動面のうち、前記クランク軸の回転方向上流側端部を含む前記摺動面の少なくとも一部の領域に形成される、
請求項1又は請求項2に記載のワッシャ。 - 前記枝油溝は、
前記一端から前記クランク軸の回転方向下流側に延びるように形成される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のワッシャ。 - 前記枝油溝は、
前記根幹油溝から前記内周面へ延びるように形成される内周側枝油溝と、
前記根幹油溝から前記外周面へ延びるように形成される外周側枝油溝と、
を具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のワッシャ。 - 前記内周側枝油溝は、
前記外周側枝油溝に対して前記根幹油溝を挟んで対になるように設けられる、
請求項5に記載のワッシャ。
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